説明

給湯システム

【課題】簡易な構成により、ヒートポンプ加熱式の貯湯装置と瞬間加熱式の給湯器とを組合わせた給湯システムを提供する。
【解決手段】貯湯コントローラ50は、タンク混合制御基板50aとタンク加熱制御基板50cを備え、タンク混合制御基板50aは、給湯器制御基板20aと給湯器リモコン21間の通信を傍受して、給湯器100が運転モードに設定されているか否かを認識すると共に、目標給湯温度を認識して湯/水混合制御を実行する。タンク加熱制御基板は50cは、室外機制御基板80aに対して暖房運転の実行を指示する信号を送信することによって、ヒートポンプ70を作動させて貯湯タンク31内の湯水を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯装置と瞬間加熱式の給湯器を備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプにより加熱する貯湯装置(ヒートポンプ貯湯ユニット)の下流側に、瞬間加熱式の給湯器(バックアップ給湯器)を直列に接続した給湯システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された給湯システムにおいては、瞬間加熱式の給湯器は貯湯装置に対して補助加熱源としての役割を果たしており、給湯システムのリモコンは貯湯装置のコントローラに接続されている。そして、貯湯装置と給湯器は相互に通信可能に接続され、貯湯装置のコントローラから出力される燃焼開始指令を給湯器のコントローラが受けて、給湯器が燃焼動作を開始する構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125226号公報(第9−11頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された給湯システムは、リモコンが貯湯装置のコントローラに接続され、貯湯装置のコントローラが瞬間加熱式の給湯器の燃焼作動を制御する構成となっている。そして、この構成を実現するためには、貯湯装置専用のリモコンを備える必要があると共に、貯湯装置と給湯器の各コントローラに、燃焼作動の開始/停止や作動条件等の指示信号等を相互に送受信するための制御プログラムを実装する必要がある。
【0006】
そのため、給湯システムの構成が複雑になって、製造工数が多くなると共にメンテナンスが難しくなるという不都合がある。
【0007】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、簡易な構成により、ヒートポンプ加熱式の貯湯装置と瞬間加熱式の給湯器とを組合わせた給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプユニットとを有するヒートポンプ加熱式の貯湯装置と、前記貯湯タンクと出湯先とを接続した出湯管の途中に配置されて、該出湯管を流通する湯水を加熱する加熱手段を有する瞬間加熱式の給湯器とを用いて構成された給湯システムに関する。
【0009】
そして、前記給湯器は、前記出湯管を流通する湯水を目標給湯温度まで加熱する給湯運転を実行する運転モードと、該給湯運転を禁止する待機モードとを切換えて、前記給湯器の作動を制御する給湯器コントローラと、該給湯器コントローラとの間で第1通信仕様による通信を行って前記給湯器を遠隔操作する給湯器リモコンとを備え、前記ヒートポンプユニットは、第2通信仕様による通信を行う室外機と室内機から成る空調装置の、該室外機用のヒートポンプと該ヒートポンプの制御及び該第2通信仕様による通信を行う機能を有する該室外機用のコントローラを転用して構成され、前記貯湯装置は、前記第1通信仕様による通信を行う第1通信回路と、前記第2通信仕様による通信を行う第2通信回路と、前記給湯器コントローラと前記給湯器リモコン間の通信を前記第1通信回路を介して傍受して、前記給湯器の運転状態を認識するリモコン通信傍受手段と、前記リモコン通信傍受手段により、前記給湯器が前記運転モードであることが認識されているときに、暖房運転の実行を指示する信号を前記第2通信回路を介して前記室外機用のコントローラに送信することにより、前記室外機用のコントローラを介して前記室外機用のヒートポンプを作動させて前記貯湯タンク内の湯水を加熱する貯湯温度制御手段とを有する貯湯コントローラを備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記給湯器コントローラと前記貯湯コントローラとの間での通信は実行されない。そして、前記貯湯コントローラは、前記給湯器コントローラと前記給湯器リモコン間の通信を前記リモコン通信傍受手段により傍受することによって、前記給湯器の作動状態を認識し、前記給湯器が運転モードであるときに、前記室外機用のコントローラに対して暖房運転の実行を指示する信号を送信して、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する。
【0011】
この場合、前記給湯器コントローラと前記貯湯コントローラとの間で通信を行うための専用の通信線を設ける必要がなく、また、前記給湯器コントローラに、前記貯湯タンクコントローラから給湯運転の実行及び停止の指示を受けるためのプログラムを実装する必要もない。そのため、前記給湯器及び前記給湯器リモコンに一般的な流通品を用いた簡易な構成とすることができる。
【0012】
さらに、前記ヒートポンプユニットは、空調機の室外機用のヒートポンプとコントローラを用いて構成され、前記貯湯コントローラから前記室外機用のコントローラに対して、暖房運転の実行を指示する信号を送信することによって、前記室外機用のヒートポンプが作動して前記貯湯タンク内の湯水が加熱される。そのため、前記ヒートポンプユニットについても、一般的な流通品である前記室外機用のヒートポンプ及びコントローラを用いた簡易な構成とすることができる。
【0013】
このように、本発明の給湯システムは、前記貯湯コントローラを、一般的な流通品である給湯器及び給湯器リモコンと、一般的な流通品である空調機の室外機のヒートポンプ及びコントローラに組合わせた簡易な構成で実現できるため、製造工数及びメンテナンス工数の低減が期待できる共に、製造コスト及び部品交換等のメンテナンスコストの低減も期待することができる。
【0014】
また、前記貯湯装置は、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度を検出する貯湯温度センサと、前記貯湯タンクと接続された給水管と前記出湯管とを連通する給水分岐管と、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の流量と、前記給水分岐管から前記出湯管に供給される水との混合比を変更する混合比変更手段とを備え、前記貯湯コントローラは、前記リモコン通信傍受手段により前記給湯器が前記運転モードであることが認識され、且つ、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度が、前記リモコン通信傍受手段により認識された前記目標給湯温度よりも高いときは、前記混合比変更手段の下流側に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度となるように、前記混合比変更手段により前記混合比を制御する湯水混合制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
かかる本発明によれば、前記給湯器が運転モードであって、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度が目標給湯温度よりも高いときは、前記湯水混合制御手段により、前記混合比変更手段の下流側に供給される湯水の温度が目標給湯温度となるように、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の流量と、前記給水分岐管から前記出湯管に供給される水との混合比が制御される。そして、この場合は、前記給湯器に供給される湯水の温度が目標給湯温度となるため、前記給湯器の給湯運転は実行されない。そのため、前記給湯器による給湯運転よりも、前記貯湯タンク内の湯による給湯を優先して行うことができる。
【0016】
また、前記湯水混合制御手段は、前記リモコン通信傍受手段により前記給湯器が前記運転モードであることが認識され、且つ、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いときには、前記湯水混合手段の下流側に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度から前記給湯器の最小加熱量での昇温分を減じた温度以下となるように、前記混合比変更手段により前記混合比を制御することを特徴とする。
【0017】
かかる本発明によれば、前記給湯器において、前記出湯管を流通する湯水が前記加熱手段により最小加熱量で加熱されたときに、目標給湯温度を超える湯が前記出湯管に供給されることを回避することができる。
【0018】
また、前記湯水混合制御手段は、前記混合比変更手段による前記混合比の制御によって、前記湯水混合手段の下流側に供給される湯の温度が変化するときに、該変化の速度を、前記給湯器の前記給湯運転における前記出湯管から供給される湯水の温度変化に対する応答速度よりも遅くすることを特徴とする。
【0019】
かかる本発明によれば、前記湯水混合手段の下流側に供給される湯の温度が変化したときに、前記給湯運転の応答遅れにより、前記給湯器から前記出湯管に供給される湯の温度のオーバーシュートやアンダーシュートが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の給湯システムの構成図。
【図2】各コントローラ間の接続態様の説明図。
【図3】給湯器制御基板の作動フローチャート。
【図4】タンク混合制御基板の作動フローチャート。
【図5】タンク加熱制御基板の作動フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1を参照して、本実施の形態の給湯システムは、給湯器本体10と給湯器リモコン21からなる瞬間加熱式の給湯器100と、タンクユニット30とヒートポンプユニット60からなるヒートポンプ加熱式の貯湯装置110とにより構成されている。
【0022】
ヒートポンプユニット60は、室外機と室内機とからなる空調装置の室外機用ヒートポンプ70と室外機コントローラ80とを用いて構成されている。ヒートポンプ70は、圧縮機71、凝縮器72、減圧器73、及び蒸発器74を、冷媒循環路75で接続して構成され、室外機コントローラ80によりその作動が制御される。
【0023】
凝縮器72は、貯湯タンク31の上部に接続された加熱往き管64及び貯湯タンク31の下部に接続された加熱戻り管67と接続され、冷媒循環路75内の冷媒と加熱往き管64及び加熱戻り管67内の湯水とを熱交換させることによって、貯湯タンク31内の湯水を加熱する。
【0024】
次に、タンクユニット30は、タンクユニット30の全体的な作動を制御する貯湯コントローラ50と、貯湯タンク31と、加熱戻り管67に設けられて、貯湯タンク31に貯められた湯水を凝縮器72を経由して循環させる循環ポンプ65と、貯湯タンク31から凝縮器72に供給される湯水の温度を検出する戻りサーミスタ41と、加熱戻り管67を流通する湯水の流量を検出する加熱流量センサ45と、加熱往き管64に設けられて、凝縮器72から貯湯タンク31に供給される湯の温度を検出する往きサーミスタ66とを備えている。
【0025】
また、タンクユニット30は、貯湯タンク31の上部に接続された出湯管2と、貯湯タンク31の下部に接続された給水管1と、給水管1と出湯管2を連通する給水分岐管7と、給湯器本体10をバイパスして出湯管2を給湯器10の上流側と下流側で連通する出湯バイパス管37とを備えている。
【0026】
さらに、タンクユニット30は、貯湯タンク31からヒートポンプユニット60に供給される湯水の温度を検出する戻りサーミスタ41、貯湯タンク31の上部の湯水の温度を検出する貯湯サーミスタ42(本発明の貯湯温度センサに相当する)と、出湯管2の給水管1との接続箇所Xの上流側の付近に設けられた入湯サーミスタ33と、給水管1の通水流量を検出する入水流量センサ43と、貯湯タンク31から出湯管2に出湯される湯の流量を検出する貯湯タンク流量センサ46と、給水管1に設けられた入水サーミスタ44と、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯水の流量を変更する湯量可変弁34と、給水管1から出湯管2に供給される水の流量を変更する水量可変弁35と、給水管1に設けられた逆止弁付きの減圧弁40と、出湯管2と給水管1との接続箇所Xと出湯バイパス管37との間に設けられた混合サーミスタ36と、出湯バイパス管37を開閉するバイパス弁38と、出湯バイパス管37と出湯管2との接続箇所Yの下流側に供給される湯水の温度を検出する給湯出口サーミスタ39とを備えている。
【0027】
なお、湯量可変弁34と水量可変弁35とにより、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯水と、給水分岐管7から出湯管2に供給される水との混合比を変更する構成が、本発明の混合比変更手段に相当する。
【0028】
次に、給湯器本体10は、給湯器本体10の全体的な作動を制御する給湯器コントローラ20と、出湯管2の途中に設けられた熱交換器11と、熱交換器11を加熱するガスバーナ12と、熱交換器11をバイパスして、出湯管2を熱交換器11の上流側と下流側で連通する給湯バイパス管13と、出湯管2と給湯バイパス管13の接続箇所Zの下流側で、浴槽(図示しない)と出湯管2を接続した湯張り管18とを備えている。
【0029】
出湯管2には、給湯バイパス管13の開度を変更するバイパスサーボ弁14と、給湯器10に供給される湯水の流量を調節する水量サーボ15と、熱交換器11及び給湯バイパス管13に供給される湯水の流量を検出する給湯流量センサ23と、出湯管2と給湯バイパス管13の接続箇所Zの下流側に供給される湯の温度を検出する給湯器サーミスタ16と、逆止弁17とが設けられている。また、湯張り管18には、湯張り管18の通水流量を検出する湯張り流量センサ24と、湯張り管18を開閉する湯張り弁19とが備えられている。
【0030】
次に、図2を参照して、給湯器コントローラ20は、CPU、メモリ等が実装された給湯器制御基板20aを備え、給湯器制御基板20aと給湯器リモコン21は、リモコンケーブル22で接続されている。そして、給湯器制御基板20aは、リモコンケーブル22を介して給湯器リモコン21に電源(例えば、無極性の直流電源)を供給し、給湯器制御基板20aと給湯器リモコン21は、この電源ラインに信号を重畳させる第1通信仕様com1により双方向の通信を行う。
【0031】
室外機コントローラ80は、CPU、メモリ等が実装された室外機制御基板80aを備え、室外機制御基板80aは、室外機ケーブル81を介して供給される電源(例えば、AC100Vの商用交流電源)により作動すると共に、この電源ラインに信号を重畳させる第2通信仕様com2により双方向の通信を行う機能を有している。
【0032】
ここで、このように、室外機ケーブル81を介して電源供給を受ける機能と、第2通信仕様com2により双方向の通信を行う機能は、本来は、室外機制御基板80aが、室内機と接続されて空調装置を構成するときに、室内機から電源供給を受けると共に室内機との間で第2通信仕様com2により双方向の通信を行うためのものである。
【0033】
貯湯コントローラ50は、CPU、メモリ等が実装されたタンク混合制御基板50a及びタンク加熱制御基板50cを備えている。タンク混合制御基板50aは、リモコンケーブル22と接続され、第1通信仕様com1により給湯器リモコン21及び給湯器制御基板20aから送信される信号を受信する第1通信回路50bを備えている。また、タンク加熱制御基板50cは、室外機ケーブル81と接続され、第2通信仕様com2により室外制御基板80aに信号を送信する第2通信回路50dを備えている。
【0034】
次に、図3〜図5に示したフローチャートに従って、給湯器制御基板20a、タンク混合制御基板50a、及び、タンク加熱制御基板50cによる制御処理について説明する。なお、図3〜図5に示したフローチャートは、出湯先がカラン3である一般給湯運転を行う場合の処理を示しており、出湯先が浴槽(図示しない)である湯張り給湯運転については補足して説明する。
【0035】
先ず、給湯器制御基板20aは、給湯器本体10の電源がONされたときに作動を開始し、メモリに保持された給湯器100の制御用プログラムをCPUで実行することにより、図3に示したフローチャートによる処理を行う。給湯器制御基板20aは、STEP1で、給湯器リモコン21との通信を開始し、STEP2で給湯器100を待機モードに設定する。待機モードでは、給湯器本体10の給湯運転が禁止され、給湯器リモコン21の運転スイッチ(運転モードと待機モードの切換えを指示するスイッチ)以外の操作が無効となる。
【0036】
続くSTEP3で、給湯器制御基板20aは、給湯器リモコン21との通信により運転スイッチがONしたことを検知したときに、STEP4に進んで運転モードに設定する。運転モードでは、給湯器本体10の給湯運転が可能となり、給湯器リモコン21の全てのスイッチの操作が有効となる。
【0037】
STEP5で、給湯器制御基板20aは、給湯流量センサ23の検出流量により給湯器本体10への通水の有無を判断する。そして、通水有りと判断したときはSTEP6に進み、給湯器制御基板20aは、目標給湯温度が、給湯器サーミスタ16により検出される湯水の温度と、給湯流量センサ23により検出される湯水の流量と、ガスバーナ12による加熱量とにより算出した出湯管2から供給される湯水の温度(給水温度)と、給湯器本体20の最小能力温度(ガスバーナ12を最小加熱量で作動させたときの温度上昇分)との和以上であるか否かを判断する。
【0038】
そして、目標給湯温度が出湯管2から供給される湯水の温度と最小能力温度の和以上であるときはSTEP7に進み、給湯器制御基板20aは、給湯器サーミスタ16により検出される湯の温度が目標給湯温度となるようにガスバーナ12の燃焼量を調節する給湯運転を実行する。
【0039】
続くSTEP8で、給湯器制御基板20aは、給湯器リモコン21との通信により運転スイッチがONしたか否かを判断し、運転スイッチがONしていないときにはSTEP5に戻る。また、運転スイッチがONしていたときには、STEP2に分岐する。
【0040】
一方、STEP5で給湯器本体10への通水無しと判断したとき、及び目標給湯温度が出湯管2から供給される湯水の温度と最小能力温度との和よりも低いときにはSTEP20に分岐し、給湯器制御基板20aは給湯運転を停止する。続くSTEP21で、給湯器制御基板20aは、給湯器リモコン21との通信により運転スイッチがONしたか否かを判断し、運転スイッチがONしていないときにはSTEP5に戻る。また、運転スイッチがONしたときにはSTEP2に分岐する。
【0041】
次に、タンク混合制御基板50aは、タンクユニット30の電源がONされたときに作動を開始し、メモリに保持されたタンクユニット30の混合制御用プログラムをCPUで実行することにより、図4に示したフローチャートによる処理を行う。
【0042】
タンク混合制御基板50aは、STEP30で、混合サーミスタ36の検出温度が、混合設定温度となるように、湯量可変弁34と水量可変弁35の開度を変更して、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯と給水管1から出湯管2に供給される水の混合比を調節する湯/水混合制御を停止する。また、タンク混合制御基板50aは、続くSTEP31でバイパス弁38を開弁する。
【0043】
次のSTEP32で、タンク混合制御基板50aは、給湯器制御基板20aと給湯器リモコン21間で送受信される信号を第1通信回路50bを介して傍受することにより、給湯器100が運転モードに設定されているか否かを認識し、また、目標給湯温度等を認識する。なお、STEP32で、タンク混合制御基板50aが給湯器制御基板20aと給湯器リモコン21間で送受信される信号を第1通信回路50bを介して傍受する構成は、本発明のリモコン通信傍受手段に相当する。
【0044】
そして、STEP33で給湯器100が運転モードに設定されているか否かを判断し、運転モードに設定されているときはSTEP34に進み、運転モードに設定されていないとき(待機モードに設定)には、STEP30に分岐する。
【0045】
STEP34で、タンク混合制御基板50aは、入水流量センサ43による検出流量により、給水管1から貯湯タンク31に通水されているか否かを判断する。そして、給水管1から貯湯タンク31に通水されているときはSTEP35に進み、通水されていないときはSTEP30に戻る。
【0046】
STEP35で、タンク混合制御基板50aは、貯湯サーミスタ42により検出される貯湯タンク31内の上部の湯水の温度(貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯の温度)が、目標給湯温度よりも低いときはSTEP36に進む。タンク混合制御基板50aは、STEP36で、混合設定温度から給湯器本体20のガスバーナ12を最小加熱量で運転させたときの温度上昇分(最小能力温度)を減じて、混合設定温度を決定する。
【0047】
そして、続くSTEP37で、タンク混合制御基板50aは、バイパス弁38を閉弁し、STEP38で混合設定温度が変化したときは、続くSTEP39で混合設定温度を、所定速度で変化させる。ここで、この所定速度は、給湯器本体10の給湯運転における、出湯管2から供給される湯水の温度の変化に対する出湯温度の応答速度よりも遅い速度に設定される。そして、これにより、貯湯タンク31の湯切れが生じて、給湯器本体10の給湯運転が開始されるときに、給湯器本体10から出湯管に供給される湯の温度が不安定となる(オーバーシュートやアンダーシュートの発生)ことを抑制している。
【0048】
ここで、出湯管2から給湯器本体10に供給される湯水の温度が急激に変化したときに、給湯運転による出湯管2への出湯温度の制御がこの急激な温度変化に対応することができないと、給湯器本体10から出湯管2への出湯温度が不安的になる。そこで、STEP39の処理により、混合設定温度を給湯運転における出湯温度の応答速度よりも遅い速度で変化させることによって、給湯器本体10から出湯管2への出湯温度が不安定になることを抑制することができる。
【0049】
続くSTEP40で、タンク混合制御基板50aは、湯/水混合制御を実行してSTEP32に進む。この場合は、湯/水混合制御により混合設定温度とされた湯が、給湯装置本体10に供給されて、給湯運転により目標給湯温度まで追加熱されて出湯先(カラン3)に供給される。
【0050】
なお、湯張り給湯運転時には、混合設定温度=目標湯張り温度−最小能力温度とされ、給湯器本体10で目標湯張り温度まで追加熱された湯が、湯張り管18を経由して浴槽に供給される。
【0051】
一方、STEP35で、貯湯サーミスタ42により検出される貯湯タンク31内の上部の湯の温度が、目標給湯温度よりも高いときはSTEP50に分岐する。そして、タンク混合制御基板50aは、目標給湯温度を混合設定温度に決定し(混合設定温度=目標給湯温度)、STEP51でバイパス弁38を開弁してSTEP40に進む。
【0052】
この場合は、湯/水混合制御により目標給湯温度とされた湯が、主として出湯バイパス管37を経由して出湯先(カラン3)に供給される。なお、湯張り運転を実行するときには、バイバス弁38が閉弁されて、混合設定温度=目標湯張り温度とされ、湯/水混合制御により目標湯張り温度とされた湯が、給湯器本体10を経由して湯張り管18に供給される。
【0053】
なお、STEP35〜STEP40、及びSTEP50〜STEP51の処理により、タンク混合制御基板50aが、湯/水混合制御を実行する構成は、本発明の湯水混合制御手段に相当する。
【0054】
次に、タンク加熱制御基板50cは、タンクユニット30の電源がONされたときに作動を開始し、メモリに保持されたタンク加熱用プログラムをCPUで実行することにより、図5に示したフローチャートによる処理を行う。
【0055】
タンク加熱制御基板50cは、図5のSTEP60で、室外機制御基板80aに対して、暖房運転の停止(暖房OFF)を指示する信号を送信し、STEP61で循環ポンプ65をOFFする。この暖房OFFを指示する信号を受信した室外機制御基板80aは、ヒートポンプ70の作動を停止する。
【0056】
続くSTEP62で、タンク加熱制御基板50cは、給湯器100が運転モードであるか否かを判断し、運転モードであるときはSTEP63に進み、運転モードでないとき(待機モード)にはSTEP60に戻る。なお、タンク加熱制御基板50cはタンク混合制御基板50aと通信可能に接続されており、タンク加熱制御基板50cは、タンク混合制御基板50aから送信される信号により、給湯器100が運転モードに設定されているか否かを認識する。
【0057】
続くSTEP63で、タンク加熱制御基板50cは、貯湯サーミスタ42の検出温度が35℃よりも低いか否かを判断する。そして、貯湯サーミスタ42の検出温度が35℃よりも低いときはSTEP64に進み、貯湯サーミスタ42の検出温度が35℃以上であるときにはSTEP62に分岐する。
【0058】
続くSTEP64で、タンク加熱制御基板50cは、室外機制御基板80aに対して、暖房運転の開始(暖房ON)を指示する信号を送信し、STEP65で圧縮機71の回転速度を指示する信号を送信する。そして、この暖房ONを指示する信号、及び圧縮機71の回転速度を指示する信号を受信した室外機制御基板80aは、ヒートポンプ70を作動させる。
【0059】
続くSTEP66で、タンク加熱制御基板50cは循環ポンプ65を作動させる。これにより、加熱戻り管67及び加熱往き管64を経由して循環する貯湯タンク31内の湯水が、ヒートポンプ70の凝縮器72で加熱される。
【0060】
次にSTEP67で、タンク加熱制御基板50cは、給湯器100が運転モードに設定されているか否かを判断し、運転モードに設定されているときはSTEP68に進む。一方、給湯器100が運転モードに設定されていないときにはSTEP60に分岐する。この場合は、STEP60〜STEP61の処理により、貯湯タンク31内の湯水の加熱が停止する。
【0061】
STEP68で、タンク加熱制御基板50cは、戻りサーミスタ41の検出温度(戻り温度)が40℃よりも高いか否かを判断する。そして、戻り温度が40℃以下であるときはSTEP67に分岐し、この場合は貯湯タンク31内の湯水の加熱が継続される。一方、戻り温度が40℃よりも高いときにはSTEP60に分岐し、この場合はSTEP60〜STEP61の処理により、貯湯タンク31内の湯水の加熱が停止する。
【0062】
タンク加熱制御基板50cが、図5のフローチャートによる処理を実行することによって、給湯器100が運転モードであるときに、貯湯タンク31内の湯水の温度が35℃から40℃の範囲内に維持される。
【0063】
なお、STEP60〜STEP68の処理により、タンク加熱制御基板50cが、暖房運転の開始及び停止を指示する信号を室外機制御基板80aに送信して、ヒートポンプユニット70の作動を制御することにより、貯湯タンク31内の湯を所定の温度範囲(本実施形態では35℃〜40℃)に保温する構成は、本発明の貯湯温度制御手段に相当する。
【0064】
なお、STEP63及びSTEP68における設定温度(35℃〜40℃)を、湯の使用量に応じて変更するようにしてもよい。この場合、設定温度に応じて、STEP65における圧縮機の回転速度の指示を変更するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、湯量可変弁34と水量可変弁35を備えて湯/水混合制御を行う例を示したが、湯量可変弁34及び水量可変弁35を備えない場合であっても、簡易な構成により、ヒートポンプ加熱式の貯湯装置と瞬間加熱式の給湯器とを組合わせた給湯システムを提供する、という本発明の効果を得ることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、ガスバーナ12を備えた給湯器100を示したが、石油を燃料とするバーナを備えた給湯器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…給水管、2…出湯管、7…給水分岐管、10…給湯器本体、20…給湯器コントローラ、20a…給湯器制御基板、21…給湯器リモコン、30…タンクユニット、34…湯量可変弁、35…水量可変弁、42…貯湯サーミスタ、50…貯湯コントローラ、50a…タンク混合制御基板、50b…第1通信回路、50c…タンク加熱制御基板、50d…第2通信回路、60…ヒートポンプユニット、70…ヒートポンプ、80…室外機コントローラ、80a…室外機制御基板、100…給湯器、110…貯湯装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプユニットとを有するヒートポンプ加熱式の貯湯装置と、
前記貯湯タンクと出湯先とを接続した出湯管の途中に配置されて、該出湯管を流通する湯水を加熱する加熱手段を有する瞬間加熱式の給湯器と
を用いて構成された給湯システムにおいて、
前記給湯器は、前記出湯管を流通する湯水を目標給湯温度まで加熱する給湯運転を実行する運転モードと、該給湯運転を禁止する待機モードとを切換えて、前記給湯器の作動を制御する給湯器コントローラと、該給湯器コントローラとの間で第1通信仕様による通信を行って前記給湯器を遠隔操作する給湯器リモコンとを備え、
前記ヒートポンプユニットは、第2通信仕様による通信を行う室外機と室内機から成る空調装置の、該室外機用のヒートポンプと該ヒートポンプの制御及び該第2通信仕様による通信を行う機能を有する該室外機用のコントローラを転用して構成され、
前記貯湯装置は、
前記第1通信仕様による通信を行う第1通信回路と、
前記第2通信仕様による通信を行う第2通信回路と、
前記給湯器コントローラと前記給湯器リモコン間の通信を前記第1通信回路を介して傍受して、前記給湯器の運転状態を認識するリモコン通信傍受手段と、
前記リモコン通信傍受手段により、前記給湯器が前記運転モードであることが認識されているときに、暖房運転の実行を指示する信号を前記第2通信回路を介して前記室外機用のコントローラに送信することにより、前記室外機用のコントローラを介して前記室外機用のヒートポンプを作動させて前記貯湯タンク内の湯水を加熱する貯湯温度制御手段と
を有する貯湯コントローラを備えたことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の給湯システムにおいて、
前記貯湯装置は、
前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度を検出する貯湯温度センサと、
前記貯湯タンクと接続された給水管と前記出湯管とを連通する給水分岐管と、
前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の流量と、前記給水分岐管から前記出湯管に供給される水との混合比を変更する混合比変更手段とを備え、
前記貯湯コントローラは、前記リモコン通信傍受手段により前記給湯器が前記運転モードであることが認識され、且つ、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度が、前記リモコン通信傍受手段により認識された前記目標給湯温度よりも高いときは、前記混合比変更手段の下流側に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度となるように、前記混合比変更手段により前記混合比を制御する湯水混合制御手段とを備えたことを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項2記載の給湯システムにおいて、
前記湯水混合制御手段は、前記リモコン通信傍受手段により前記給湯器が前記運転モードであることが認識され、且つ、前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いときには、前記湯水混合手段の下流側に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度から前記給湯器の最小加熱量での昇温分を減じた温度以下となるように、前記混合比変更手段により前記混合比を制御することを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項3記載の給湯システムにおいて、
前記湯水混合制御手段は、前記混合比変更手段による前記混合比の制御によって、前記湯水混合手段の下流側に供給される湯の温度が変化するときに、該変化の速度を、前記給湯器の前記給湯運転における前記出湯管から供給される湯水の温度変化に対する応答速度よりも遅くすることを特徴とする給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−158146(P2011−158146A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19231(P2010−19231)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】