説明

給湯システム

【課題】膨張水を有効活用すると共に、排水用立て管の設置が不要な給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システムS1は、所定の熱源で加熱水WH1を生成して加熱水WH1を貯留する一方で、加熱水WH1を生成する際に膨張水EWが発生する第1貯留タンク10と、第1貯留タンク10で発生した膨張水EWを貯留する第2貯留タンク50と、加熱水WH1を含む湯WH2を浴槽8に供給する湯供給系統と、第2貯留タンク50と浴槽8とを連通させて、第2貯留タンク50内の膨張水EWを浴槽8の排水口9から外部に排水させる膨張水排水管51とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅に設置される家庭用の貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅に設置される家庭用の給湯システムとして、料金の割安な深夜時間帯に、所定の熱源、例えば電気ヒータにより貯湯タンク内の水を沸き上げて湯を生成し、その湯を貯湯する電気給湯システムが知られている。このような電気給湯システムでは、貯湯タンク内の水の沸き上げに伴い、水が膨張して体積が増加する。その結果、所謂膨張水が発生する。膨張水が発生すると、貯湯タンクに設けられた逃し弁が開き、膨張水は逃し弁から排水用立て管を通って外部に排水されている。これにより、貯湯タンクの破損が防止される。
【0003】
膨張水は、貯湯タンク内の水を沸き上げる度に発生する高温の湯であるため、熱エネルギーが大きく、そのため、膨張水を外部に捨てるのではなく有効利用することが求められている。
【0004】
膨張水を有効利用する技術として、例えば特許文献1のものが知られている。特許文献1の給湯システムは、貯湯タンク内で発生した膨張水を貯留する膨張水貯留タンクと、膨張水貯留タンクと浴槽とを連通させる膨張水落とし込み配管とを含む。この給湯システムでは、膨張水を膨張水落とし込み配管を通して浴槽に供給して湯張りに用いることで、膨張水の有効活用を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−225255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の給湯システムでは、膨張水の排水系統について明記していないが、膨張水が湯張りに用いられず、膨張水貯留タンクがいっぱいになった場合、膨張水を排水用立て管を通して外部に排水して膨張水の漏水を防止していると考えられる。
【0007】
排水用立て管は、マンション等の集合住宅において上下階を貫通するようにして設置する必要があるため、設置費用は多額となる。そのため、集合住宅の住人が他の給湯システム(例えばガス瞬間式給湯システム)から電気給湯システムへ変更したいと希望しても、排水用立て管の設置費用がネックとなり、電気給湯システムの使用を断念せざるを得ないことが多い。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、膨張水を有効活用すると共に、排水用立て管の設置が不要な給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る給湯システムは、浴槽に湯を張る機能を備えた給湯システムであって、所定の熱源で加熱水を生成して前記加熱水を貯留する一方で、前記加熱水を生成する際に膨張水が発生する第1貯留タンクと、前記第1貯留タンクで発生した前記膨張水を貯留する第2貯留タンクと、前記加熱水を含む湯を前記浴槽に供給する湯供給系統と、前記第2貯留タンクと前記浴槽とを連通させて、前記第2貯留タンク内の前記膨張水を前記浴槽の排水口から外部に排水させる膨張水排水管とを含む。
【0010】
本発明に係る給湯システムによれば、膨張水は膨張水排水管を通して浴槽の排水口から外部に排水されるので、膨張水を外部に排水するために従来使用されている排水用立て管の設置が不要となる。これにより、給湯システムの設置費用を大きく抑えることが可能である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、給湯システムは、前記膨張水排水管に接続され、前記膨張水排水管の開閉を行う第1排水弁と、前記第2貯留タンクに設けられ、前記膨張水の水位を検出する水位センサと、前記水位センサからの信号に基づき、前記膨張水の水位が上限水位に達したことが検出された場合、前記第1排水弁を制御して該第1排水弁を開状態とすることにより、前記膨張水を前記膨張水排水管を通して前記排水口から排水させる第1制御を行う制御部とを含む。
【0012】
この構成によれば、制御部は、水位センサからの信号に基づき、膨張水の水位が上限水位に達したことを検出すると、第1排水弁を開状態として膨張水を膨張水排水管を通して浴槽の排水口から排水させるので、膨張水が第2貯留タンクから漏水することが防止される。これにより、給湯システムの安全性を向上させることができる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記湯供給系統は、前記制御部による制御によって前記加熱水と水の元供給源から供給される水とを混合させて前記湯を生成する混合弁を含み、前記制御部は、前記浴槽に湯を張る湯張り制御を行うことが可能に構成されており、前記湯張り制御を行うにあたり、まず、前記第1排水弁を開状態として前記膨張水を前記浴槽に供給させ、次に、前記混合弁を制御して前記湯を前記浴槽に供給させる。
【0014】
この構成によれば、膨張水を、外部に排水することなく、浴槽の湯張りに有効活用することができる。
【0015】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、給湯システムは、前記第1貯留タンクと前記第2貯留タンクとを連通させて前記加熱水を前記第2貯留タンクに排水させる加熱水排水管と、前記加熱水排水管に接続されて該加熱水排水管の開閉を行う第2排水弁とをさらに含み、前記制御部は、前記第1貯留タンク内の前記加熱水を排水させる第2制御を行うことが可能に構成されており、前記第2制御を行うに当たり、前記第1排水弁および前記第2排水弁の両方を開状態とすることにより、前記加熱水を、まず、前記加熱水排水管を通して、次に、前記膨張水排水管を通して前記浴槽の前記排出口から排水させる。
【0016】
制御部による、第1貯留タンク内の加熱水を排水する第2制御は、例えば給湯システムのメンテナンス時に実行される。従来、メンテナンス時の加熱水の外部への排水は排水用立て管を通して行われているが、この第2制御においても、加熱水は膨張水排水管を通して浴槽の排水口から外部に排水されるので、排水用立て管の設置が不要となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る給湯システムによれば、膨張水を有効活用することができると共に、排水用立て管の設置を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な給湯システムを示す構成図である。
【図2】排水用立て管を用いた膨張水および加熱水の排水系統を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る給湯システムを概念的に示す構成図である。
【図4】本実施形態に係る給湯システムを具体的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る給湯システムの説明に先立ち、図1を参照して一般的な給湯システムS100の構成について説明する。給湯システムS100は、浴槽8、シングルレバー式の混合栓Z1およびサーモスタット式の混合栓Z2に給湯する貯湯タンクユニットU100として構成されており、ユーザが設定した温度かつ湯量の湯を浴槽8に自動的に張る湯張り機能を備えた給湯器である。貯湯タンクユニットU100は、貯湯タンク10(第1貯留タンク)、元配管20、分岐管21、第1配管23、第2配管24、第3配管25、湯水混合三方弁30(混合弁)、制御部Cおよびリモコン装置50を含む。
【0021】
なお、シングルレバー式混合栓Z1は、例えば開栓頻度が高い台所に配置され、ひとつのレバー操作で出水・止水が可能な混合栓であり、ユーザは、レバー位置を「水」から「湯」への移動レンジの適宜な位置に設定して、好みの湯温で出水させることが可能である。また、サーモスタット式混合栓Z2は、例えば浴室に配置され、内臓のサーモスタットエレメントにより湯と水の量を調節して一定温度に保つ混合栓であり、ユーザは、温度調整ハンドルを好みの温度に設定して、温水を出水させることが可能である。
【0022】
貯湯タンク10は、300〜560リットル程度の内容量を有する加熱水の貯留タンクであって、タンク内には水を加熱するための電気ヒータ61が取り付けられている。電気ヒータ61は、ON/OFFに切換え可能であり、制御部Cに制御されてONの状態にされると貯湯タンク10内の水をジュール熱で加熱する。例えば、深夜電力時間帯の終了時刻に合わせて、貯湯タンク10内の水の全量が所定温度(例えば60〜90℃)に昇温されるように、電気ヒータ61は通電制御される。また、昼間時間帯(深夜電力時間帯外)でも、貯湯タンク10内の加熱水が所定温度以下になると、追い炊きのために電気ヒータ61に通電され、貯湯タンク10内の水が加熱される。
【0023】
貯湯タンク10内部には、サーミスタ等からなる5つの温度センサ11〜15が上下方向に並ぶように配置されている。温度センサ11〜15は、貯湯タンク10内に貯留されている加熱水の量を計測するために利用される。すなわち、深夜電力時間帯に貯湯タンク10内の水を沸き上げる場合に、温度センサ11〜15の全てが所定の湯温を検知したときに、水の全量が昇温されたと判定する。また、昼間時間帯に貯湯タンク10内の加熱水が使用されると、タンク下層部から徐々に水に入れ替わっていくことになるが、温度センサ11〜15の検知結果に基づくタンク上下方向の温度分布により、貯湯タンク10内に残存している加熱水量を推定することができる。
【0024】
元配管20は、商用の水元供給源に接続された配管であり、前記水元供給源からの水WLが流通する。元配管20には、手動の止水弁19が接続されており、ユーザが止水弁19を開状態とすることで、水WLを下流側の分岐管21に供給することができる。
【0025】
分岐管21は、貯湯タンク10の底部に接続され、元配管20からの水WL2を貯湯タンク10へ供給するための配管である。なお、元配管20には、貯湯タンクユニットU100に含まれない、第1分岐管221および第2分岐管222からなる分岐管22が接続されている。第1分岐管221は、シングルレバー式混合栓Z1に接続され、元配管20から分流される水WL3をシングルレバー式混合栓Z1に直接供給する。第2分岐管222は、サーモスタット式混合栓Z2に接続され、元配管20から分流される水WL4をサーモスタット式混合栓Z2に直接供給する。
【0026】
第1配管23は、貯湯タンク10の上部に接続され、貯湯タンク10内の加熱水を浴槽8に導くための配管である。第2配管24は、元配管20から分流される水WL1を浴槽8に導くための配管である。第3配管25は、第1配管23からの加熱水および第2配管24からの水を浴槽8に導くための配管である。第1配管23の下流端、第2配管24の下流端および第3配管25の上流端には、湯水混合三方弁30が接続されている。
【0027】
湯水混合三方弁30は、第1入力ポート31、第2入力ポート32および出力ポート33を有し、第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度調整が可能な三方弁である。第1入力ポート31には、第1配管23の下流端が接続され、第2入力ポート32には、第2配管24の下流端が接続され、出力ポート33には、第3配管25の上流端が接続されている。第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が適宜調整されることにより、貯湯タンク10から第1配管23で導出される加熱水WH1に、第2配管24から供給される水WL1が設定温度に応じて適量加えられると、前記設定温度の湯WH2が出力ポート33から第3配管25に導出される。
【0028】
第3配管25は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から導出された湯WH2を浴槽8に供給するための配管であり、第3配管25の開閉を行うことが可能な風呂注湯弁26が設けられている。第3配管25は第1分岐管27および第2分岐管29に分岐される。風呂注湯弁26によって開状態とされた第3配管25を通る湯WH2は、第1分岐管27および第2分岐管29を通って浴槽8に供給される。なお、第1配管23、第2配管24、第3配管25および湯水混合三方弁30が湯供給系統を構成している。
【0029】
第1配管23からは、該第1配管23とシングルレバー式混合栓Z1、サーモスタット式混合栓Z2とを接続する第4配管35が分岐している。第4配管35には、湯水混合三方弁28が接続されている。第4配管35の下流端は、湯水混合三方弁28の一方の入力ポートに接続され、また、元配管20から分岐した第5配管37の下流端が湯水混合三方弁28の他方の入力ポートに接続されている。さらに、シングルレバー式混合栓Z1に接続される第3分岐管253およびサーモスタット式混合栓Z2に接続される第4分岐管254と、湯水混合三方弁28の出力ポートとを第6配管38で連通させている。湯水混合三方弁28において湯WH1と水WL5とが混合されて生成された湯WH3が混合栓Z1,Z2に供給される。
【0030】
制御部Cは、マイクロプロセッサや各種回路を含み、貯湯タンクユニットU100の各部の動作、例えば、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の動作を制御して浴槽8への湯張りを行うものである。
【0031】
リモコン装置50は、浴室に設置される第1リモコン51と、台所に設置される第2リモコン52とを含む。第1リモコン51および第2リモコン52は、複数の操作ボタンを有するリモコンパネルである。操作ボタンは、ユーザが、例えば、浴槽8の湯張り開始の指示を与えたり、浴槽8に張られる湯WH2の風呂温度および湯量等の設定を行ったりするためのボタンである。制御部Cは、そのような指示や設定に従い、貯湯タンクユニットU100を制御する。
【0032】
上記の第2分岐管29には、熱交換器35が設けられていると共に、熱交換器35の下流側において風呂循環ポンプP1が設けられている。また、貯湯タンク10の上部に接続された上流端部と貯湯タンク10の下部に接続された下流端部とを有する加熱水循環配管34が熱交換器35を通るように配設されている。加熱水循環配管34には、熱交換器35の下流側において加熱水循環ポンプP2が設けられている。
【0033】
上記のように構成された給湯システムS100において、浴槽8に湯を張る場合の給湯経路は次の通りとなる。ユーザが、リモコン装置50によって、例えば温度42℃、湯量200リットルの湯を張るように設定すると、制御部Cは、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整して、第3配管23からの加熱水WH1と第1配管24からの水WL1とを混合させることにより、前記設定温度(42℃)の湯WH2を生成させる。湯WH2は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から第4配管25に導入され、制御部Cによって開状態とされた風呂注湯弁26を通り、次に第1分岐管27および第2分岐管29を通って浴槽8に供給される。湯WH2は、浴槽8に所定湯量である200リットルの湯が張られるまで供給され続ける。図略の湯張りカウンターによって浴槽8に所定湯量の湯が張られたことが検知されると、風呂注湯弁26が閉止されて、湯WH2の浴槽8への供給は停止される。これにより、湯張りは完了する。
【0034】
また、制御部Cは、ユーザが設定した湯量の湯WH2を浴槽8に張り終えた後、浴槽8の湯WH2の温度が設定温度よりも低下している場合、湯張り中に低下した温度分を補うために、浴槽8の湯WH2を熱交換器35によって昇温させる。具体的には、制御部Cは、風呂循環ポンプP1を作動させて浴槽8内の湯WH2を、第2分岐管29、第1分岐管27、浴槽8の順に循環させる。また、制御部Cは、加熱水循環ポンプP2を作動させて貯湯タンク10内の加熱水WH1を加熱水循環配管34内を循環させる。このとき、熱交換器35において、第2分岐管29内を流れる湯WH2は、加熱水循環配管34内を流れる加熱水WH1から熱を受けて昇温する。これにより、湯張り中に低下した温度分が補われる。
【0035】
ところで、貯湯式の電気給湯システムS100では、第2配管21から貯湯タンク10内に導入された水WL2を電気ヒータ61によって加熱して沸き上げるとき、水WL2は膨張してその体積が増加し、これに伴い、貯湯タンク10内の圧力が上昇する。給湯システムS100では、貯湯タンク10の破損を防止するために、貯湯タンク10の上部に逃し弁配管40を接続し、この逃し弁配管40に逃し弁41を配置している。逃し弁41は、貯湯タンク10内の圧力が所定値以上になると、機械的に開弁して、沸き上げられて生成された加熱水WH1の一部を外部に排水する。これにより、貯湯タンク10内の圧力を前記所定値以下に維持している。この排水された温水が、所謂膨張水EWである。
【0036】
上記構成の給湯システムS100がマンション等の集合住宅に設置されたメーターボックス内に収納されている場合、膨張水EWは、同じくメーターボックス内に設けられた排水ピット43に排水される。排水ピット43に排水された膨張水EWは、排水管46を通って排水用立て管47に排水される。
【0037】
また、貯湯タンク10内の加熱水WH1は、給湯システムS100のメンテナンス時に全量が排水される。そのための排水管として、貯湯タンク10の下部に接続された加熱水排水管42が用いられている。加熱水排水管42は、排水ピット43に導かれていると共に、手動の排水弁45を有する。ユーザは、給湯システムS100のメンテナンスを行うとき、止水弁19を閉状態とすると共に、排水弁45を手動で開弁して、貯湯タンク10内の加熱水WH1を、加熱水排水管42、排水ピット43、排水管46の順に通して排水用立て管47に排水させる。
【0038】
膨張水EWを排水させたり、メンテナンス時に加熱水WH1を排水させたりするために用いられる排水用立て管47は、図2に示すように、マンション等の集合住宅において上下階を貫通するようにして設置する必要があるため、設置費用は多額となる。そのため、集合住宅の住人が他の給湯システム(例えばガス瞬間式給湯システム)から上記構成の給湯システムS100のような電気給湯システムへ変更したいと希望しても、排水用立て管47の設置費用がネックとなり、電気給湯システムの使用を断念せざるを得ないことが多い。
【0039】
そこで、本発明は、以下に示す給湯システムS1により、排水用立て管47の設置を不要として、マンション等の集合住宅であっても電気給湯システムを設置することが可能な構成を提供する。
【0040】
(給湯システムS1)
図3は、本実施形態に係る給湯システムS1を概念的に示す構成図である。なお、図3と、給湯システムS1の具体的な構成を示す図4とにおいて、図1に示す構成要素と同一のものに対しては同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0041】
給湯システムS1は、浴槽8と、貯湯タンクユニットU1とを含む。貯湯タンクユニットU1は、第1配管23、第2配管24、第3配管25および湯水混合三方弁30を含む湯供給系統と、加熱水WH1が生成される貯湯タンク10と、膨張水EWを排水させるための逃し弁配管40とを含む。
【0042】
貯湯タンクユニットU1は、さらに、膨張水タンク50(第2貯留タンク)と、膨張水排水管51と、加熱水排水管53とを含む。
【0043】
膨張水タンク50は、逃し弁配管40を通して排水される膨張水EWを貯留するためのタンクである。
【0044】
膨張水排水管51は、膨張水タンク50と浴槽8とを連通させて、膨張水タンク50内の膨張水EWを浴槽8の排水口9から外部に排水させるための配管である。
【0045】
加熱水排水管53は、貯湯タンク10と膨張水タンク50とを連通させて、貯湯タンク10内の加熱水WH1を膨張水タンク50内に排水させるための配管である。
【0046】
上記構成の給湯システムS1によれば、膨張水タンク50に貯留された膨張水EWを、浴槽8に連通された膨張水排水管51を通して浴槽8の排水口9から外部に排水することができるので、膨張水EWを外部に排水するために従来使用されている排水用立て管47(図1、図2)の設置が不要となる。
【0047】
また、上記構成の給湯システムS1によれば、給湯システムS1のメンテナンスのために貯湯タンク10内の加熱水WH1を全量排水させるとき、まず、貯湯タンク10内の加熱水WH1を、加熱水排水管53を通して膨張水タンク50内に排水し、次に、膨張水タンク50内の加熱水WH1を、膨張水排水管51を通して浴槽8の排水口9から外部に排水する。このように加熱水WH1を排水させることで、従来使用されている排水用立て管47の設置が不要となる。
【0048】
給湯システムS1は、上記したように排水用立て管47を必要としないので、給湯システムS1の設置費用を大きく抑えることができる。その結果、ユーザはガス瞬間式等の給湯システムから電気式の給湯システムS1に変更し易くなる。
【0049】
以下、図4を参照しながら、給湯システムS1の具体的な構成、主に膨張水EWおよび加熱水WH1の排水系統について説明する。
【0050】
逃し弁配管40に連通された膨張水タンク50は、容量が15リットル程度のタンクであり、逃し弁配管40からの膨張水EWを貯留する。膨張水タンク50には、膨張水EWの水位LSを検出するための水位センサ55が設けられている。水位センサ55は、2つの高水位検出ロッド56および低水位検出ロッド57を含む。高水位検出ロッド56および低水位検出ロッド57からの信号は、制御部Cに出力される。また、膨張水タンク50は、密閉部材、例えば蓋部材63によって密閉されており、膨張水EWに埃等が混入することを防止している。なお、蓋部材63には、図略の微小な通気孔が形成されており、この通気孔により、膨張水EWによる膨張水タンク50内の圧力上昇を抑制している。
【0051】
膨張水排水管51は、上流端部が膨張水タンク50の底部に接続されていると共に、下流端部が第3配管25の第2分岐管29における浴槽8と風呂循環ポンプP1との間の部分に接続ざれた配管である。膨張水排水管51には、前記上流端部寄りの位置で第1排水弁52が接続されている。第1排水弁52は、制御部Cによる制御によって膨張水排水管51の開閉を行う弁体である。
【0052】
貯湯タンク10内の加熱水WH1を膨張水タンク50に排水するための加熱水排水管53には、第2排水弁54が接続されている。第2排水弁54は、制御部Cによる制御によって加熱水排水管53の開閉を行う弁体である。
【0053】
(制御部Cの湯張り制御)
制御部Cは、湯水混合三方弁30、風呂注湯弁26、風呂循環ポンプP1および第1排水弁52を制御して浴槽8に湯を張る湯張り制御を行うことが可能に構成されている。具体的には、制御部Cは、リモコン装置50を介してユーザからの湯張り指令を受け取ると、まず、風呂注湯弁26を閉状態とすると共に、第1排水弁52を開状態とし、風呂循環ポンプP1を駆動させる。風呂循環ポンプP1の駆動により、膨張水タンク50内の膨張水EWは、膨張水排水管51を通って第2分岐管29内に流入する。第2分岐管29内に流入した膨張水EWは、風呂循環ポンプP1によって熱交換器35、第1分岐管27、浴槽8の順に送水される。
【0054】
膨張水EWの浴槽8への供給は、膨張水EWが無くなるまで行われる。水位センサ55の低水位検出ロッド57が膨張水EWを検知しなくなったとき、制御部Cは、風呂循環ポンプP1を停止すると共に、第1排水弁52を閉状態とする。これにより、膨張水EWの浴槽8への供給が停止される。
【0055】
制御部Cは、次に、湯水混合三方弁30を制御して第1配管23からの加熱水WH1と第2配管24からの水WL1とを混合させてユーザが設定した温度の湯WH2を生成すると共に、風呂注湯弁26を開状態とする。これにより、湯WH2は、第3配管25の第1分岐管27および第2分岐管29を通って浴槽8に供給される。湯WH2の浴槽8への供給は、ユーザが設定した湯量に達するまで行われる。湯WH2の供給量が前記設定湯量に達すると、制御部Cは、湯水混合三方弁30および風呂注湯弁26を閉状態とする。なお、湯WH2の浴槽8への湯張りが終了した後、湯温が設定温度よりも低下している場合、上記したように、浴槽8内の湯WH2を熱交換器35によって昇温させる。
【0056】
膨張水EWの発生量は、一般的に、貯湯タンク10が沸き上げる加熱水WH1の3%程度を占めると考えられており、日平均300リットルを沸き上げると仮定すると、膨張水EWの発生量は年間で、300リットル/日×0.03×365日=3.3トン/年となる。3.3トンもの膨張水EWを捨てることは資源の無駄である。しかしながら、給湯システムS1の制御部Cによる湯張り制御によれば、膨張水EWを、外部に排水することなく、浴槽8の湯張りに有効活用することができる。
【0057】
(制御部Cの第1制御)
また、制御部Cは、第1排水弁52および風呂循環ポンプP1を制御して、膨張水タンク50内の膨張水EWを外部に排水させる第1制御を行うことが可能に構成されている。具体的には、制御部Cは、高水位検出ロッド56からの信号に基づき、膨張水EWの水位LSが上限水位に達したことが検出された場合、第1排水弁52を開状態とすると共に、風呂循環ポンプP1を駆動する。このとき、風呂注湯弁26は閉状態に維持されている。
【0058】
風呂循環ポンプP1の駆動により、膨張水タンク50内の膨張水EWが膨張水排水管51を通って第2分岐管29内に流入する。そして、第2分岐管29内に流入した膨張水EWは、熱交換器35、第2分岐管27、浴槽8の順に送水され、最後に浴槽8の排水口9から外部に排水される。
【0059】
制御部Cは、低水位検出ロッド57からの信号に基づき、膨張水タンク50内に膨張水EWが無くなったことが検出されると、風呂循環ポンプP1を停止させると共に、第1排水弁52を閉状態にする。これにより、膨張水EWの排水が完了する。
【0060】
給湯システムS1の制御部Cによる第1制御によれば、膨張水EWを浴槽8の排水口9から排水させることができるので、膨張水EWを排水させるために従来用いられている排水用立て管47を不要とすることができる。
【0061】
また、膨張水EWは上記した湯張りに用いられるが、ユーザが夏期などにシャワーを主に使用することで浴槽8への湯張りが長期間実施されない場合、膨張水EWが上限水位に達し易くなる。膨張水EWが上限水位を超えると、膨張水タンク50から漏水してしまう。しかしながら、給湯システムS1の制御部Cによる第1制御によれば、高水位検出ロッド56からの信号に基づき、上限水位に達した膨張水EWを、膨張水排水管51を通して浴槽8の排水口9から排水させることができる。これにより、膨張水EWが膨張水タンク50から漏水することを防止することができる。その結果、給湯システムS1の安全性が向上する。
【0062】
(制御部Cの第2制御)
さらに、制御部Cは、第1排水弁52、第2排水弁54および風呂循環ポンプP1を制御して、貯湯タンク10内の加熱水WH1を全量排水させる第2制御を行うことが可能に構成されている。この第2制御は、例えば1年に1回程度の給湯システムS1のメンテナンス時や、給湯システムS1を新たに設置して給湯システムS1を試運転させるときに実行される。
【0063】
ユーザは、制御部Cによって第2制御を行わせる前に、止水弁19を手動で閉状態にすると共に、逃し弁41を開状態にする必要がある。次に、ユーザが制御部Cに設けられた図略の排水ボタンを押すと、制御部Cは第2制御を開始する。制御部Cは、まず、第1排水弁52および第2排水弁54を開状態とすると共に、風呂循環ポンプP1を駆動させる。これにより、貯湯タンク10内の加熱水WH1が重力によって加熱水排水管53を通って膨張水タンク50内に流入し、膨張水タンク50内に流入した加熱水WH1は、風呂循環ポンプP1による吸引によって膨張水排水管51を通って第2分岐管29に流入する。
【0064】
第2分岐管29内に流入した加熱水WH1は、熱交換器35、第1分岐管27、浴槽8の順に送水され、最後に浴槽8の排水口9から外部に排水される。制御部Cは、低水位検出ロッド57からの信号に基づき、加熱水WH1が膨張水タンク50から無くなったことを、例えば5秒間連続して検知すると、風呂循環ポンプP1を停止すると共に、第1排水弁52および第2排水弁54を閉状態とする。これにより、貯湯タンク10内の加熱水WH1の全量排水が完了する。
【0065】
給湯システムS1の制御部Cによる第2制御によれば、給湯システムS1のメンテナンス時に加熱水WH1は膨張水排水管51を通して浴槽8の排水口9から外部に排水されるので、加熱水WH1を外部に排水させるために従来用いられている排水用立て管47を不要とすることができる。
【0066】
(制御部Cの水張り制御)
給湯システムS1のメンテナンス後や、給湯システムS1を新たに設置して給湯システムS1を試運転させた後に、貯湯タンク10内で加熱水WH1を生成するために、貯湯タンク10に水WL2を送水して水張りを行う必要がある。制御部Cは、第1排水弁52、第2排水弁54および風呂循環ポンプP1を制御して、貯湯タンク10に水WL2を張る水張り制御を行うことが可能に構成されている。ユーザは、制御部Cに水張り制御を行わせる前に止水弁19および逃し弁41を開状態にする必要がある。そして、ユーザが制御部Cに設けられた図略の水張りボタンを押すと、制御部Cは水張り制御を開始する。
【0067】
制御部Cは、まず、第1排水弁52を開状態とすると共に、第2排水弁54を閉状態とし、風呂循環ポンプP1を駆動させる。元配管20から分岐管21を通る水WL2は、所定の送水圧で貯留タンク10内に送水される。貯留タンク10が水WL2で満たされると、水WL2は逃し弁配管40を通って膨張水タンク50内に流入する。
【0068】
膨張水タンク50内に流入した水WL2は、風呂循環ポンプP1の駆動によって膨張水排水管51を通って第2分岐管29内に送水される。そして、水WL2は、熱交換器35、第1分岐管27、風呂8の順に送水され、最後に浴槽8の排水口9から外部に排水される。
【0069】
ユーザは、膨張水タンク50内で水泡が発生しなくなったことを目視で確認したとき、前記水張りボタンを再度押す。そして、制御部Cは、風呂循環ポンプP1を停止すると共に、第1排水弁52を閉状態にする。これにより、貯湯タンク10への水張りが完了する。なお、水泡が発生しなくなるまで水WL2の送水を行うことは、貯湯タンク10内で水WL2を沸き上げて加熱水WH1を生成するときに発生する、いわゆる析出溶存空気の発生を抑制するために重要である。
【0070】
以上説明した給湯システムS1では、電気ヒータ61により水WL2を沸き上げる場合について説明したが、水WL2の沸き上げは、ヒートポンプユニットや化石燃料を用いて行うことができる。
【0071】
また、給湯システムS1をメーターボックス内に設置した場合につき説明したが、給湯システムS1は、マンション等の集合住宅のバルコニーや屋内に設置してもよい。また、給湯システムS1は、集合住宅だけでなく、戸建て住宅に設置することもできる。
【符号の説明】
【0072】
8 浴槽
9 排水口
10 貯湯タンク(第1貯留タンク)
23 第1配管
24 第2配管
25 第3配管
30 湯水混合三方弁(混合弁)
40 逃し弁配管
41 逃し弁
50 膨張水タンク(第2貯留タンク)
51 膨張水排水管
52 第1排水弁
53 加熱水排水管
54 第2排水弁
55 水位センサ
C 制御部
EW 膨張水
WH1 加熱水
WH2 湯
WL,WL1 水
S1 給湯システム
U1 貯湯タンクユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に湯を張る機能を備えた給湯システムであって、
所定の熱源で加熱水を生成して前記加熱水を貯留する一方で、前記加熱水を生成する際に膨張水が発生する第1貯留タンクと、
前記第1貯留タンクで発生した前記膨張水を貯留する第2貯留タンクと、
前記加熱水を含む湯を前記浴槽に供給する湯供給系統と、
前記第2貯留タンクと前記浴槽とを連通させて、前記第2貯留タンク内の前記膨張水を前記浴槽の排水口から外部に排水させる膨張水排水管と、
を備えた給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、前記膨張水排水管に接続され、前記膨張水排水管の開閉を行う第1排水弁と、
前記第2貯留タンクに設けられ、前記膨張水の水位を検出する水位センサと、
前記水位センサからの信号に基づき、前記膨張水の水位が上限水位に達したことが検出された場合、前記第1排水弁を制御して該第1排水弁を開状態とすることにより、前記膨張水を前記膨張水排水管を通して前記排水口から排水させる第1制御を行う制御部と、
をさらに備えた給湯システム。
【請求項3】
請求項2に記載の給湯システムにおいて、前記湯供給系統は、前記制御部による制御によって前記加熱水と水の元供給源から供給される水とを混合させて前記湯を生成する混合弁を含み、
前記制御部は、前記浴槽に湯を張る湯張り制御を行うことが可能に構成されており、前記湯張り制御を行うにあたり、まず、前記第1排水弁を開状態として前記膨張水を前記浴槽に供給させ、次に、前記混合弁を制御して前記湯を前記浴槽に供給させる給湯システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の給湯システムにおいて、前記第1貯留タンクと前記第2貯留タンクとを連通させて前記加熱水を前記第2貯留タンクに排水させる加熱水排水管と、
前記加熱水排水管に接続されて該加熱水排水管の開閉を行う第2排水弁と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1貯留タンク内の前記加熱水を排水させる第2制御を行うことが可能に構成されており、前記第2制御を行うに当たり、前記第1排水弁および前記第2排水弁の両方を開状態とすることにより、前記加熱水を、まず、前記加熱水排水管を通して、次に、前記膨張水排水管を通して前記浴槽の前記排出口から排水させる給湯システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−220605(P2011−220605A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90172(P2010−90172)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】