説明

給湯システム

【課題】報知が必要な時期にのみ報知を行い、報知が不要な時期には報知を行わないようにすることで、浴室の使用者の使い勝手を向上させた給湯システムを提供することを目的とする。
【解決手段】浴室13に給湯可能な貯湯タンクユニット2と、浴室13の温度を検出する浴室温度検出手段7と、居室12の温度を検出する居室温度検出手段6と、屋外温度を検出する屋外温度検出手段5と、屋外温度が所定値以下で、かつ居室12の温度と浴室13の温度との温度差が所定値以上である場合に、浴室13の使用者に対して入浴に注意を促す注意喚起情報を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽に給湯可能な給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、冬季の入浴の際、暖かい居室から寒冷な浴室への移動に伴う室温の急激な変化により、入浴者の血圧が急激に上昇・下降し、体に大きな負担を及ぼすことが知られている。従来、例えば特許文献1には、居室と浴室との温度差等を監視し、必要に応じて入浴者に注意喚起の報知を行う入浴監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−254996号公報
【非特許文献】
【0004】
「話のたまご」、[online]、1999年12月、東京ガス株式会社 広報部、東京ガスホームページ、[平成22年6月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.tokyo-gas.co.jp/tamago/9912.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1によれば、一般的に、屋外温度(外気温度)が低いほど人間の血圧は高くなるので、冬季の方が血圧の変化による健康リスクが高いと考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載の手法では、夏季のように比較的温暖で健康リスクが低い時期であっても、入浴者に報知を行ってしまうことが考えられる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、報知が必要な時期にのみ報知を行い、報知が不要な時期には報知を行わないようにすることで、浴室の使用者の使い勝手を向上させた給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る給湯システムは、浴槽に給湯可能な給湯機と、浴槽が設置された浴室の温度を検出する浴室温度検出手段と、居室の温度を検出する居室温度検出手段と、屋外温度を検出する屋外温度検出手段と、屋外温度が所定値以下で、かつ居室の温度と浴室の温度との温度差が所定値以上である場合に、浴室の使用者に対して入浴に注意を促す注意喚起情報を報知する報知手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、報知が必要な時期にのみ報知を行い、報知が不要な時期には報知を行わないようにすることで、浴室の使用者の使い勝手を向上させた給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯システムの構成を説明するための図である。
【図2】図1に示す給湯システムの制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1の給湯システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す居室温度検出手段および浴室温度検出手段の設置場所の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における給湯システムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における給湯システム100の構成を説明するための図である。図1に示す給湯システム100は、給湯熱源として機能するヒートポンプユニット1と、ヒートポンプユニット1で加熱された温水を蓄える貯湯タンク(図示省略)を有する貯湯タンクユニット2と、貯湯タンクユニット2を遠隔操作するための居室用リモコン3および浴室用リモコン4とを備えている。ヒートポンプユニット1、貯湯タンクユニット2、居室用リモコン3および浴室用リモコン4は、相互に通信線11を介して電気的に接続されている。給湯システム100では、貯湯タンクユニット2から建物10の浴室13に設置された浴槽(図示省略)等への給湯が行われる。
【0012】
ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とは、当該給湯システム100が使用される建物10の屋外に設置されている。居室用リモコン3は建物10の居室12に設置され、浴室用リモコン4は建物10の浴室13に設置されている。また、貯湯タンクユニット2には、外気温度、より具体的には建物10の屋外の温度を検出するための屋外温度検出手段(センサ)5が内蔵されている。更に、居室用リモコン3には、居室12内の温度を検出するための居室温度検出手段(センサ)6が内蔵されており、浴室用リモコン4には、浴室13内の温度を検出するための浴室温度検出手段(センサ)7が内蔵されている。
【0013】
図2は、図1に示す給湯システム100の制御ブロック図である。図2に示すように、ヒートポンプユニット1には、貯湯タンクユニット2との通信を行うためのヒートポンプユニット通信部52と、当該ヒートポンプユニット1の各部位の制御を行うためのヒートポンプユニット演算部(制御部)51とが内蔵されている。
【0014】
貯湯タンクユニット2には、居室用リモコン3および浴室用リモコン4との通信を行うためのタンクユニット通信部22、上記屋外温度検出手段5、居室12の温度と浴室13の温度とを比較し結果を返すための温度比較部24、ヒートポンプユニット1との通信を行う対ヒートポンプユニット通信部25、および当該貯湯タンクユニット2の各部位の制御を行うためのタンクユニット演算部(制御部)21がそれぞれ内蔵されている。
【0015】
居室用リモコン3には、貯湯タンクユニット2および浴室用リモコン4との通信を行うための居室用リモコン通信部32、上記居室温度検出手段6、情報を表示するための居室用リモコン表示部34、報知音などを発するための居室用リモコン発音部35、湯張りなどの操作を行うための居室用リモコン操作部36、および当該居室用リモコン3の各部位の制御を行うための居室用リモコン演算部31がそれぞれ内蔵されている。
【0016】
また、浴室用リモコン4にも、居室用リモコン3と同様に、貯湯タンクユニット2および居室用リモコン3との通信を行うための浴室用リモコン通信部42、上記浴室温度検出手段7、情報を表示するための浴室用リモコン表示部44、報知音などを発するための浴室用リモコン発音部45、湯張りなどの操作を行うための浴室用リモコン操作部46、および浴室用リモコン4の各部位の制御を行うための浴室用リモコン演算部41がそれぞれ内蔵されている。
【0017】
次に、図3は、本発明の実施の形態1の給湯システム100の動作を示すフローチャートである。ここでは、居室用リモコン3または浴室用リモコン4で湯張り開始操作が行われてから湯張りが終了するまでの所定の検出期間内において屋外温度、浴室温度および居室温度の検出を行い、かつ、湯張り終了後に、上記検出期間内に検出された各温度のうち最低値を用いて各判定を行ったうえで必要に応じて音声および表示による報知を行う場合を例にして動作説明を行う。
【0018】
図3に示すように、まず、ステップS1では、居室用リモコン操作部36または浴室用リモコン操作部46を用いて湯張り開始操作が行われたか否かが判定される。その結果、湯張り開始操作が行われた場合には、ステップS2にて屋外の温度が屋外温度検出手段5を用いて検出される。
【0019】
次に、ステップS3では、居室温度検出手段6を用いて居室12の温度が検出されたうえで、居室用リモコン通信部32およびタンクユニット通信部22を経由して、検出された居室12の温度が温度比較部24に送信される。
【0020】
次に、ステップS4では、上記ステップS3と同様に、浴室温度検出手段7を用いて浴室13の温度が検出されたうえで、浴室用リモコン通信部42およびタンクユニット通信部22を経由して、検出された浴室13の温度が温度比較部24に送信される。
【0021】
上記のステップS2〜S4の処理は、ステップS5にて湯張りが終了したことが検出されるまで繰り返し実行される。これにより、上記検出期間中における屋外温度、浴室温度および居室温度の履歴が取得される。
【0022】
次に、以上のステップS2〜S4の処理により得た情報を基に、現在の温度環境が入浴者の健康に負担が大きい温度環境であるか否かが判断される。具体的には、まず、ステップS6では、ステップS2の処理により得た上記検出期間中の屋外温度の最低値を基に、現在の季節が判断される。ここでは、一例として、冬季を11月から1月と仮定し、気象庁のホームページに掲載されている1971年から2000年までの東京都・東京地区の平均温度から、冬季の屋外温度(外気温度)は9℃以下であるものとする。
【0023】
上記ステップS6において屋外温度の最低値が9℃度以下であると判定された場合には、現在の温度環境が入浴者の健康に負担の大きい温度環境(冬季など)であると判断され、次のステップS7に進む。一方、上記ステップS6において屋外温度の最低値が9℃以下ではないと判定された場合には、現在の温度環境が入浴者の健康への負担の小さい温度環境(夏季など)であると判断され、図3のフローチャートの処理が直ちに終了される。
【0024】
次に、ステップS7では、上記ステップS3およびS4の処理によりそれぞれ得た温度が温度比較部24にて比較され、居室12と浴室13との温度差が算出される。温度比較部24は、上記ステップS3およびS4にて検出された居室12の温度の最低値と浴室13の温度の最高値同士を比較し、両室の温度差が入浴者の健康に負担の大きい値であるか否かを判断する。法研社発行の「高血圧・動脈硬化」(2007年7月12日発行)によると、部屋間の温度差は5℃以内に収めることが理想的であるとされている。
【0025】
そこで、上記ステップS7において上記温度差が5℃以上であると判定された場合には、現在の温度環境が入浴者の健康に負担の大きい温度環境であると判断され、次のステップS8に進む。一方、上記ステップS7において上記温度差が5℃以下であると判定された場合には、現在の温度環境が入浴者の健康への負担の小さい温度環境であると判断され、図3のフローチャートの処理が直ちに終了される。
【0026】
上記のステップS6およびS7の判定がともに成立した場合、すなわち、これらのステップS6およびS7のそれぞれにおいて現在の温度環境が入浴者の健康への負担の大きい温度環境であると判断された場合には、ステップS8にて、居室用リモコン3および浴室用リモコン4を用いて、浴室13の使用者に対して入浴に注意を促す注意喚起情報の報知が実行される。
【0027】
具体的には、上記ステップS8における注意喚起情報の報知は、居室用リモコン3に内蔵されている居室用リモコン表示部34および居室用リモコン発音部35、並びに浴室用リモコン4に内蔵されている浴室用リモコン表示部44および浴室用リモコン発音部45を用いて、上記ステップS5の判定成立時、すなわち湯張り終了時に行われる。このタイミングで行うことで、使用者が入浴を開始するタイミングにあわせて報知することができる。居室用リモコン表示部34および浴室用リモコン表示部44では、警告表示または画面点滅などが行われ、また、居室用リモコン発音部35および浴室用リモコン発音部45では、警告音が発せられ、入浴者の注意が喚起される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の制御によれば、屋外温度が所定値(例えば、上記の9℃)以下で、かつ居室12の温度と浴室13の温度との温度差が所定値(例えば、上記の5℃)である場合に、上記注意喚起情報が報知される。すなわち、居室12の温度と浴室13の温度との温度差だけでなく、現在の季節が入浴者の健康への負担の大きい時期であるか否かを考慮して、上記注意喚起情報の報知の要否が判断される。これにより、夏季などのように比較的温暖で健康リスクが低い時期において、入浴者に上記注意喚起情報の不必要な報知を行ってしまうのを回避することができる。このため、報知が必要な時期にのみ報知を行い、報知が不要な時期には報知を行わないようにすることで、浴室13の使用者の使い勝手を向上させた給湯システムを得ることが可能となる。
【0029】
ところで、上述した実施の形態1においては、居室用リモコン3に居室温度検出手段6が内蔵され、浴室用リモコン4に浴室温度検出手段7が内蔵されている構成を例に挙げて説明を行った。しかしながら、本発明における居室温度検出手段および浴室温度検出手段の設置場所は、上記に限定されるものではなく、例えば、以下の図4に示すものであってもよい。図4は、図1に示す居室温度検出手段6および浴室温度検出手段7の設置場所の変形例を説明するための図である。尚、図4において、上記図1と同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0030】
図4に示す構成では、居室温度検出手段6および浴室温度検出手段7がそれぞれ居室用リモコン3および浴室用リモコン4から離れた位置に設置されている。このような構成によれば、居室温度検出手段6および浴室温度検出手段7を、居室12および浴室13内の任意の箇所に設置することが可能である。居室温度検出手段6等を居室用リモコン3等に内蔵している場合、居室用リモコン3等の実際の設置環境によっては、居室用リモコン3等が設置されている場所の温度が各部屋の温度を正確に表示しない場合が考えられる。そのような場合に、図4に示すように、居室温度検出手段6等を居室用リモコン3等から分離できる形態とすることにより、居室用リモコン3等の設置場所とは独立して、温度検出箇所を決定することができ、使い勝手が向上する。
【0031】
また、上述した実施の形態1においては、上記ステップS6およびS7の判定がともに成立した場合に、居室用リモコン表示部34および浴室用リモコン表示部44による警告表示等を用いた視覚的な報知を行い、かつ、居室用リモコン発音部35および浴室用リモコン発音部45による警告音を用いた聴覚的な報知を行っている。しかしながら、本発明における注意喚起情報の報知は、視覚的な報知および聴覚的な報知のうちの少なくとも一方を用いたものであればよい。
【0032】
また、上述した実施の形態1においては、上記ステップS3およびS4の処理によりそれぞれ得た温度のうち、居室12の温度の最低値と浴室13の最高値同士を比較したが、これに替えて、例えば居室12の温度の最高値と浴室13の温度の最低値を比較(入浴によるヒートショックの最悪条件想定)したり、温度の測定誤差も考慮し、平均値を用いて比較するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒートポンプユニット
2 貯湯タンクユニット
3 居室用リモコン
4 浴室用リモコン
5 屋外温度検出手段
6 居室温度検出手段
7 浴室温度検出手段
10 建物
12 居室
13 浴室
24 温度比較部
31 居室用リモコン演算部
34 居室用リモコン表示部
35 居室用リモコン発音部
41 浴室用リモコン演算部
44 浴室用リモコン表示部
45 浴室用リモコン発音部
100 給湯システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に給湯可能な給湯機と、
前記浴室の温度を検出する浴室温度検出手段と、
居室の温度を検出する居室温度検出手段と、
屋外温度を検出する屋外温度検出手段と、
前記屋外温度が所定値以下で、かつ前記居室の温度と前記浴室の温度との温度差が所定値以上である場合に、前記浴室の使用者に対して入浴に注意を促す注意喚起情報を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記浴室温度検出手段および前記報知手段を備え、前記給湯機を遠隔制御する浴室用リモコンと、
前記居室温度検出手段および前記報知手段を備え、前記給湯機を遠隔制御する居室用リモコンと、
を備え、
所定の検出期間内に検出された前記浴室の温度、前記居室の温度、および前記屋外温度を利用して、前記報知手段による前記注意喚起情報の報知実施の要否を判断する判断手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の給湯システム。
【請求項3】
前記所定の検出期間とは、前記浴室内の浴槽に前記給湯機で湯張りを開始したときから該湯張りを終了したときまでであることを特徴とする請求項2記載の給湯システム。
【請求項4】
前記報知手段による前記注意喚起情報の報知実施を前記湯張り終了時以降に行うことを特徴とする請求項2または3に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17880(P2012−17880A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153934(P2010−153934)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】