説明

給湯システム

【課題】比較的高温のアルカリ水や酸性水において菌の繁殖を抑制する。
【解決手段】給湯システム(10)に、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)に温水を供給するための給湯回路(12)と、給湯回路(12)に酸性水及びアルカリ水のうちの少なくとも一方を供給するイオン水供給部(60)とを設ける。イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、貯水タンク(61)の水中に電気分解を起こすための電流経路を形成する電極対(64,65)、及び該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)を有する電極ユニット部(62)と、貯水タンク(61)内と給湯回路(12)とを繋ぐイオン水路(63)とを含む。電極ユニット部(62)は、上記電極対(64,65)間の電流経路にストリーマ放電を行うための放電場を形成し、上記ストリーマ放電によって過酸化水素を生成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給湯システムに関し、特に給湯システムにより供給される酸性水やアルカリ水を殺菌するための対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗浄効果を有するアルカリ水と、殺菌効果を有する酸性水とを使い分ける装置が知られている。この種の装置として、特許文献1には、電解槽と、電解槽で生成されるアルカリ水と酸性水との一方をミストノズルに供給するノズル通路とを備えるミストサウナ装置が開示されている。このミストサウナ装置によれば、目的に応じてアルカリ水又は酸性水を浴室に噴霧することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水道水には、殺菌用として添加された塩素や、塩素が水道水と反応することにより形成される次亜塩素酸が含まれている。この次亜塩素酸には、塩素と同様、殺菌作用がある。しかし、これらの塩素や次亜塩素酸は、例えば40℃以上の高温で加熱されると分解され易い。そうなると、加熱された水中で菌が繁殖してしまうおそれが生じる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的高温のアルカリ水や酸性水において菌の繁殖を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、給湯システム(10)と対象とし、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)に温水を供給するための給湯回路(12)と、該給湯回路(12)に酸性水及びアルカリ水のうちの少なくとも一方を供給するイオン水供給部(60)とを備え、該イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、該貯水タンク(61)の水中に電気分解を起こすための電流経路を形成する電極対(64,65)、及び該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)を有する電極ユニット部(62)と、上記貯水タンク(61)内と上記給湯回路(12)とを繋ぐイオン水路(63)とを含み、上記電極ユニット部(62)は、上記電極対(64,65)間の電流経路にストリーマ放電を行うための放電場を形成し、上記ストリーマ放電によって過酸化水素を生成するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、上記貯水タンク(61)の水中に電極対(64,65)が配置されている。この電極対(64,65)に直流電圧を印加すると、上記電極対(64,65)間に電流経路が形成されるとともに電流経路に放電場が形成される。そして、この電流経路の形成により、上記貯水タンク(61)の水中で電気分解が起きき、この放電場の形成により、水中ストリーマ放電が起きる。これにより、上記電極対(64,65)における放電電極(64)の近傍で酸性水が生成され、上記電極対(64,65)における対向電極(65)の近傍でアルカリ水が生成される。又、上記放電場では、水中ストリーマ放電により、過酸化水素が生成される。この過酸化水素は、貯水タンク(61)内の水中で拡散するため、酸性水及びアルカリ水の両方に過酸化水素が含まれる。
【0008】
上記酸性水及びアルカリ水の少なくとも一方は、イオン水路(63)を通じて給湯回路(12)に供給される。そして、該給湯回路(12)を流れた酸性水又はアルカリ水は、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)へ供給される。浴室の利用対象(例えばシャワー等)に供給されるのが酸性水である場合、殺菌効果を有する酸性水により、浴槽や人体の皮膚表面等が殺菌される。また、浴室の利用対象に供給されるのがアルカリ水である場合、洗浄効果を有するアルカリ水により、浴室の壁や浴槽等が洗浄される。
【0009】
そして、第1の発明では、上記酸性水やアルカリ水に含まれる過酸化水素によって、酸性水及びアルカリ水が殺菌・浄化される。また、上記ストリーマ放電により、水酸ラジカル等の活性種も生成する。この活性種によって酸性水及びアルカリ水に含まれる有害物質が酸化分解されて除去される。
【0010】
更に、過酸化水素は、比較的高温の条件下においても、水中に残留し易い。具体的に、過酸化水素は、水温が約40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。従って、本発明の給湯システム(10)では、利用対象(U1,U2)に供給される水温が比較的高温であっても、過酸化水素によって水の殺菌・浄化を充分に行うことができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記イオン水路(63)は、上記貯水タンク(61)のうち酸性水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐ酸性水路(63a)、及び上記貯水タンク(61)のうちアルカリ水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐアルカリ水路(63b)を含み、上記酸性水路(63a)又は上記アルカリ水路(63b)を選択的に開放する水路開閉機構(80)を更に備えていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、水路開閉機構(80)によって、酸性水路(63a)又はアルカリ水路(63b)のうちのいずれか一方が開放される。水路開閉機構(80)により酸性水路(63a)の方が開放された場合、貯水タンク(61)内の酸性水が酸性水路(63a)を通じて利用対象(U1,U2)へ供給される。一方、水路開閉機構(80)によりアルカリ水路(63b)の方が開放された場合、貯水タンク(61)内のアルカリ水がアルカリ水路(63b)を通じて利用対象(U1,U2)へ供給される。つまり、第2の発明では、水路開閉機構(80)を切り替えることにより、酸性水又はアルカリ水が利用対象(U1,U2)へ供給される。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記給湯回路(12)は、水を加熱する加熱部(32b,42b)と、該加熱部(32b,42b)により加熱された温水を上記貯水タンク(61)へ供給する温水路(21)と、を含むことを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、イオン水供給部(60)の貯水タンク(61)内に、加熱部(32b,42b)により加熱された温水が供給される。そして、イオン水供給部(60)では、比較的高温となる温水中で過酸化水素が生成される。その結果、イオン水供給部(60)から給湯回路(12)を通じて利用対象(U1,U2)へ通じる水路には、過酸化水素を含み且つ高温の温水が流れる。過酸化水素水は、高温条件下では菌に対する活性が高まるため、上記イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)へ通じる水路における温水の殺菌効果が向上する。
【0015】
第4の発明は、第1から第3の発明のうちいずれか1つにおいて、上記電極ユニット部(62)は、上記ストリーマ放電の放電場を上記貯水タンク(61)の底部寄りに形成するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、ストリーマ放電が行われる放電場付近の水は、ジュール熱により高温となるため、貯水タンク(61)内の水中を上方へ移動する。すると、貯水タンク(61)内の水のうち上側にある比較的低温の水は、下方へ移動する。すなわち、貯水タンク内の水は対流する。ここで、第4の発明では、放電場が、貯水タンク(61)の底部寄りの位置に形成されるため、貯水タンク内の水は、貯水タンク内の全体に亘って対流する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、過酸化水素水を含む酸性水又はアルカリ水が、浴室の利用対象(U1,U2)に供給される温水に添加されるため、利用対象(U1,U2)に供給される比較的高温の酸性水又はアルカリ水において菌などの有害物質が繁殖するのを抑制できる。
【0018】
上記第2の発明によれば、過酸化水素水を含む酸性水又はアルカリ水を選択的に利用対象(U1,U2)へ供給することができる。これにより、浴室において、殺菌効果を有する酸性水と洗浄効果を有するアルカリ水とを目的に応じて使い分けることができる。
【0019】
上記第3の発明によれば、貯水タンクに温水が供給されるため、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)に至るまでの水路において、過酸化水素による酸性水又はアルカリ水の殺菌効果を向上できる。
【0020】
上記第4の発明によれば、貯水タンク(61)内の全体に亘って水が対流するため、貯水タンク(61)内で生成される過酸化水素水を水中に均一に混合できる。従って、過酸化水素を利用対象(U1,U2)へ安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施形態1に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るイオン水供給部の全体構成図であり、イオン水供給部が動作する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るイオン水供給部の全体構成図であり、イオン水供給部が動作して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係るイオン水供給部の全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係るイオン水供給部の全体構成図である。
【図8】図8は、実施形態2の変形例に係る電極ユニット部の全体構成図であり、電極ユニット部が動作する前の状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係るイオン水供給部の全体構成図である。
【図10】図10は、実施形態2の変形例に係る電極ユニット部の全体構成図であり、電極ユニット部が動作して気泡が形成された状態を示すものである。
【図11】図11は、実施形態の変形例において、複数の開口が形成された蓋部の平面図である。
【図12】図12は、その他の実施形態に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【図13】図13は、その他の実施形態に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0023】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る給湯システム(10)の全体構成について、図1を参照しながら説明する。給湯システム(10)は、利用対象としての浴槽(U1)やシャワー(U2)へ温水を供給するシステムである。そして、実施形態1に係る給湯システム(10)では、利用者が操作パネル(図示省略)等を操作することにより、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される温水を酸性又はアルカリ性にすることができる。給湯システム(10)は、いわゆるヒートポンプ式の給湯器であり、熱源ユニット(30)と給湯ユニット(40)とを有している。
【0024】
熱源ユニット(30)は、圧縮機(31)と加熱熱交換器(32)と膨張弁(33)と室外熱交換器(34)とを備えている。熱源ユニット(30)では、圧縮機(31)、加熱熱交換器(32)、膨張弁(33)、及び室外熱交換器(34)が冷媒配管を介して順に接続され、閉回路となる冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
【0025】
加熱熱交換器(32)は、一次側伝熱部(32a)と二次側伝熱部(32b)とを有している。一次側伝熱部(32a)は、圧縮機(31)と膨張弁(33)との間の高圧ラインに接続されている。二次側伝熱部(32b)は、給湯ユニット(40)側の第1循環流路(13)に接続されている。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒と、二次側伝熱部(32b)を流れる水とが熱交換する。熱源ユニット(30)では、二次側伝熱部(32b)を流れる水と比較すると、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の方が温度が高くなる。このため、加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ付与される。つまり、二次側伝熱部(32b)は、第1循環流路(13)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。室外熱交換器(34)の近傍には、ファン(35)が設けられている。室外熱交換器(34)では、その内部を流れる冷媒と、ファン(35)が送風する室外空気とが熱交換する。
【0026】
冷媒回路(11)では、圧縮機(31)が運転されて冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(31)で圧縮された冷媒が、一次側伝熱部(32a)で放熱し、膨張弁(33)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(34)で蒸発し、圧縮機(31)に吸入される。この冷凍サイクルは、冷媒としての二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルである。
【0027】
給湯ユニット(40)は、給湯タンク(41)と内部熱交換器(42)とを備えている。
【0028】
給湯タンク(41)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成されている。給湯タンク(41)には、円筒形の周壁部(41a)と、周壁部(41a)の上側を閉塞する頂壁部(41b)と、周壁部(41a)の下側を閉塞する底壁部(41c)とが形成されている。給湯タンク(41)には、第1循環流路(13)と第2循環流路(14)と供給流路(15)とが接続されている。また、給湯タンク(41)には、該給湯タンク(41)内へ水道水を適宜補給する、給水路(20)も接続されている。給湯タンク(41)及び供給流路(15)は、浴槽(U1)及びシャワー(U2)に温水を供給するための給湯回路(12)を構成している。
【0029】
第1循環流路(13)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第1循環流路(13)の終端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の上部に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)が設けられている。第1ポンプ(43)は、第1循環流路(13)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)の下流側に二次側伝熱部(32b)が接続されている。
【0030】
第2循環流路(14)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第2循環流路(14)の終端は、給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)が設けられている。第2ポンプ(44)は、第2循環流路(14)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)の下流側に内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)が接続されている。
【0031】
内部熱交換器(42)は、第1伝熱管(42a)と第2伝熱管(42b)とを有している。第1伝熱管(42a)は、第2循環流路(14)に接続されている。第2伝熱管(42b)は、供給流路(15)の第3循環流路(16)に接続されている。
【0032】
供給流路(15)は、主供給路(17)、第1分岐路(18)、第2分岐路(19)、及び第3循環流路(16)を含んでいる。
【0033】
主供給路(17)の始端は給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。主供給路(17)の終端側は、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分岐している。主供給路(17)には、第3ポンプ(45)が設けられている。第3ポンプ(45)は、主供給路(17)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。
【0034】
第1分岐路(18)の終端は、第3循環流路(16)を介して浴槽(U1)と連通している。つまり、第1分岐路(18)は、浴槽(U1)側へ温水を供給するための浴槽側供給路を構成している。第1分岐路(18)には、第1開閉弁(46)が設けられている。第2分岐路(19)の終端は、シャワー(U2)と接続している。つまり、第2分岐路(19)は、シャワー(U2)へ温水を供給するシャワー側供給路を構成している。第2分岐路(19)には、第2開閉弁(47)が設けられている。
【0035】
第3循環流路(16)は、浴槽(U1)内の水を循環させる浴槽循環流路を構成している。第3循環流路(16)は、供給循環路(16a)と返送循環路(16b)とを有している。供給循環路(16a)の流出端は、浴槽(U1)の内部における上方寄りに開口している。返送循環路(16b)の流入端は、浴槽(U1)の内部における下方寄りに開口している。供給循環路(16a)には、第4ポンプ(48)が設けられている。第4ポンプ(48)は、主供給路(17)側の水、又は返送循環路(16b)側の水を浴槽(U1)内へ供給する搬送機構である。返送循環路(16b)には、内部熱交換器(42)の第2伝熱管(42b)が接続され、該第2伝熱管(42b)の下流側に第3開閉弁(49)が設けられている。
【0036】
内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水と、第2伝熱管(42b)を流れる水とが熱交換する。給湯ユニット(40)では、返送循環路(16b)を流れる水と比較すると、第2循環流路(14)を流れる水の温度の方が高くなる。このため、内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ付与される。つまり、第2伝熱管(42b)は、第3循環流路(16)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。
【0037】
〈イオン水供給部の詳細構造〉
図1及び図2に示すように、給湯システム(10)は、イオン水供給部(60)を備えている。イオン水供給部(60)は、電気分解によって酸性水とアルカリ水とを生成するとともに、水中でのストリーマ放電によって過酸化水素等の浄化成分を生成して上記酸性水及びアルカリ水へ付与する。そして、イオン水供給部(60)は、この酸性水及びアルカリ水を給湯回路(12)へ供給する。イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、電極ユニット部(62)と、イオン水路(63)とを備えている。
【0038】
貯水タンク(61)は、密閉型の容器状に形成されている。貯水タンク(61)の上部には、主供給路(17)から分岐する温水路(21)が繋がっている。貯水タンク(61)の下部には、主供給路(17)における第3ポンプ(45)の下流側の部分へと連通するイオン水路(63)が繋がっている。上記温水路(21)には、第5ポンプ(50)が設けられている。第5ポンプ(50)は、主供給路(17)を流れる温水を貯水タンク(61)内へ供給する搬送機構である。
【0039】
貯水タンク(61)内の空間は、イオン交換膜(61a)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画されている。イオン交換膜(61a)は垂直方向に延びるように配置されている。詳しくは後述するが、貯水タンク(61)内で行われる電気分解により、第1室(S1)では酸性水が生成され、第2室(S2)ではアルカリ水が生成される。従って、第1室(S1)には酸性水が貯留され、第2室(S2)では酸性水が貯留される。
【0040】
電極ユニット部(62)は、電極対(64,65)と電源部(70)と絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0041】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものであり、且つ、水中で電気分解を行って酸性水及びアルカリ水を生成するためのものである。電極対は、放電電極(64)及び対向電極(65)で構成されている。放電電極(64)は板状に形成され、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。放電電極(64)は、箱状に形成された絶縁ケーシング(71)の内部に収容された状態で、第1室(S1)に配置されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)に対向するように第2室(S2)に配置されている。放電電極(64)及び対向電極(65)は、貯水タンク(61)の底部付近に配置される。
【0042】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)の正極側に放電電極(64)が接続され、負極側に対向電極(65)が接続されている。又、上記電源部(70)の負極側はアースと接続されている。この電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0043】
絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(右面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の右側方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0044】
ケース本体(72)は、角形筒状の筒壁部(72a)と、該筒壁部(72a)の左側開口部を閉塞する左側壁部(72b)とを有している。放電電極(64)は、左側壁部(72b)の内面に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と左側壁部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0045】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。この開口(74)は、図2に示すように、貯水タンク(61)の底部寄りに配置される。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0046】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0047】
イオン水路は(63)は、酸性水路(63a)とアルカリ水路(63b)とを備えている。酸性水路(63a)は、貯水タンク(61)内の第1室(S1)と主供給路(17)とを繋いでいて、アルカリ水路(63b)は、貯水タンク(61)内の第2室(S2)と主供給路(17)とを繋いでいる。
【0048】
〈水路開閉機構の詳細構造〉
給湯システム(10)は、水路開閉機構(80)を備えている。この水路開閉機構(80)は、貯水タンク(61)内で生成される酸性水又はアルカリ水を、選択的に主供給路(17)へ供給するためのものである。水路開閉機構(80)は、酸性水路開閉弁(81)と、アルカリ水路開閉弁(82)と、制御部(83)とを備えている。
【0049】
酸性水路開閉弁(81)及びアルカリ水路開閉弁(82)は、例えば電磁弁で構成されている。酸性水路開閉弁(81)は酸性水路(63a)に設けられ、アルカリ水路開閉弁(82)はアルカリ水路(63b)に設けられている。酸性水路開閉弁(81)は、制御部(83)から送信される信号に応じて、酸性水路(63a)を全開にする開状態と、酸性水路(63a)を全閉にする閉状態とに切り替えられる。アルカリ水路開閉弁(82)は、制御部(83)から送信される信号に応じて、アルカリ水路(63b)を全開にする開状態と、アルカリ水路(63b)を全閉にする閉状態とに切り替えられる。
【0050】
制御部(83)は、外部からの信号に基づいて、酸性水路開閉弁(81)又はアルカリ水路開閉弁(82)を選択的に開放するためのものである。制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し且つアルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信するか、又は、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し且つアルカリ水路開閉弁(82)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信するように構成されている。
【0051】
−給湯システムの運転動作−
給湯システム(10)の基本的な運転動作について図1を参照しながら説明する。この給湯システム(10)では、浴槽内へ温水を供給する「給湯運転」と、浴槽内の水を循環させながら加熱する「追い炊き運転」とが行われる。
【0052】
〈給湯運転〉
給湯運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)及び第3ポンプ(45)が運転され、第2ポンプ(44)及び第4ポンプ(48)が停止状態となる。また、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(47)が開放状態となり、第3開閉弁(49)は閉鎖状態となる。
【0053】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)へ流出する。この水は、加熱熱交換器(32)の二次側伝熱部(32b)を流れる。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ放出され、この水が所定温度まで加熱される。加熱された水は、第1循環流路(13)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。これにより、給湯タンク(41)内部には、所定温度の温水が蓄えられる。
【0054】
第3ポンプ(45)が運転されると、給湯タンク(41)内の水(温水)は、主供給路(17)に流出し、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分流する。第1分岐路(18)を流れた水は、第3循環流路(16)の供給循環路(16a)に流入する。この水は、貯水タンク(61)を通過した後、浴槽(U1)内へ放出される。これにより、浴槽(U1)内に所定温度の温水が供給される。一方、第2分岐路(19)を流れた水は、シャワー(U2)側に供給される。
【0055】
〈追い炊き運転〉
追い炊き運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)、第2ポンプ(44)、及び第4ポンプ(48)が運転される。また、第1開閉弁(46)が閉鎖状態となり、第2開閉弁(47)及び第3開閉弁(49)が開放状態となる。
【0056】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)を流れる。これにより、第1循環流路(13)の水は、加熱熱交換器(32)で加熱されて給湯タンク(41)へ返送される。
【0057】
第2ポンプ(44)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、第2循環流路(14)へ流出する。この水は、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を流れる。内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ放出される。第1伝熱管(42a)で放熱した水は、第2循環流路(14)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。
【0058】
第4ポンプ(48)が運転されると、浴槽(U1)の水は第3循環流路(16)の返送循環路(16b)へ吸い込まれる。返送循環路(16b)を流れた水は、内部熱交換器(42)で加熱された後、貯水タンク(61)を通過して浴槽(U1)へ供給される。これにより、浴槽(U1)内の水の温度が徐々に高くなっていく。
【0059】
−イオン水供給部の運転動作−
本実施形態の給湯システム(10)では、イオン水供給部(60)が運転されることで、貯水タンク(61)内で酸性水及びアルカリ水が生成されるとともに、給湯回路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0060】
第5ポンプ(50)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、温水路(21)を通じて貯水タンク(61)へ流入する。この水が所定量に達し、上記絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態(図2を参照)になると、電極ユニット部(62)が作動する。この作動により、上記電源部(70)から電極対(64,65)へ所定の直流電圧(例えば1kV)が印加され、電極対(64,65)の間に電界が形成される。上述したように、上記放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0061】
上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流密度が上昇すると、この開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。このストリーマ放電により、対向電極(65)に導通する水から、気泡(B)を介して、放電電極(64)に導通する水へ電子が移動する。このように、電子が対向電極(65)から放電電極(64)へ移動するため、貯水タンク(61)内の水中で電気分解が行われる。
【0062】
上記対向電極では、次式(1)に示すような反応が行われる。この反応により、第2室(S2)内で水酸化物イオン(OH)が生成される。その結果、PH(水素イオン指数)が上昇し、第2室(S2)内でアルカリ水が生成される。
【0063】
4HO+4e → 2H+4OH(1)
一方、上記気泡(B)における気液界面の近傍では、次式(2)に示すような反応が行われる。この反応により、第1室(S1)内で水素イオン(H)が生成される。その結果、PH(水素イオン指数)が減少し、第1室(S1)内で酸性水が生成される。
【0064】
2HO → O+4H+4e(2)
また、以上のように気泡(B)でストリーマ放電が行われると、気泡(B)における気液界面の近傍(すなわち第1室(S1)内)では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。これらの活性種や過酸化水素は、イオン交換膜(61a)の微細孔を通過して第2室(S2)にも拡散する。従って、第1室(S1)で形成される酸性水及び第2室(S2)で形成されるアルカリ水の双方に、上記活性種や過酸化水素が含まれることになる。
【0065】
また、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。しかも、ストリーマ放電が行われる放電場としての気泡(B)は、貯水タンク(61)の底部寄りに形成されるため、ジュール熱により高温となる気泡(B)付近の水は、貯水タンク(61)の底部付近から上昇する一方、貯水タンク(61)内の水のうち上側にある比較的低温の水は、下方へ移動する。すなわち、貯水タンク(61)内の水は、上下方向において比較的広範囲に亘って対流するため、水中の活性種や過酸化水素の拡散を更に促すことができる。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯水タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0066】
また、貯水タンク(61)には、温水路(21)からの温水が貯留されている。これにより、貯水タンク(61)内に比較的温度の低い水が貯留されるような場合と比べて、上記開口(74)における水の温度が上昇しやすくなる。その結果、気泡(B)が発生しやすくなるため、過酸化水素を効率的に生成することができる。
【0067】
−水路開閉機構の運転動作−
浴槽(U1)やシャワー(U2)へ酸性水を供給する場合、制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し、且つ、アルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信する。これにより、酸性水路開閉弁(81)が開状態となり且つアルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となるため、貯水タンク(61)内の酸性水のみが主供給路(17)へ供給される。この酸性水は、給湯システム(10)の給湯運転時に、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される。これにより、殺菌効果を有する酸性水で、浴槽(U1)、浴室の壁、人体の皮膚表面などを殺菌することができる。
【0068】
一方、浴槽(U1)やシャワー(U2)へアルカリ水を供給する場合、制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し、且つ、アルカリ水路開閉弁(82)が開状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信する。これにより、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となり且つアルカリ水路開閉弁(82)が開状態となるため、貯水タンク(61)内のアルカリ水のみが主供給路(17)へ供給される。このアルカリ水は、給湯システム(10)の給湯運転時に、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される。これにより、洗浄効果を有するアルカリ水で、浴槽(U1)、浴室の壁、人体の皮膚表面などを洗浄することができる。
【0069】
上述のように水路開閉機構(80)を切り替えることにより、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される水を、酸性水又はアルカリ水のいずれかに切り替えることができる。従って、目的に応じて、酸性水とアルカリ水とを使い分けることができる。
【0070】
また、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される上記酸性水やアルカリ水は、給湯運転により比較的高温の温水となっている。水道水には、殺菌効果を有する塩素や次亜塩素酸が含まれているものの、これらの塩素や次亜塩素酸は、例えば40℃以上の高温下では分解され易い。そうなると、十分に殺菌されていない水が浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給されてしまう虞が生じる。
【0071】
これに対して、実施形態1では、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される比較的温度の高い酸性水やアルカリ水には、過酸化水素が含まれている。過酸化水素は、例えば40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。従って、実施形態1における給湯システム(10)では、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される水を十分に殺菌・浄化することができる。
【0072】
また、実施形態1では、貯水タンク(61)で貯留される温水中でストリーマ放電が行われ、過酸化水素が生成される。この過酸化水素は、給湯回路(12)を通じて浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される。過酸化水素は、高温条件下では菌に対する活性が高まるため、イオン水供給部(60)から浴槽(U1)やシャワー(U2)へ通じる水路における温水の殺菌効果が向上する。
【0073】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、貯水タンク(61)の水中において、電気分解を行い酸性水とアルカリ水とを生成するとともに、ストリーマ放電を行い過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。具体的に、過酸化水素であれば、水温が約40℃の条件下で約1時間放置されても、約4%程度しか濃度が低下しない。このため、上記実施形態1では、貯水タンク(61)の水温が高温となっても、充分な殺菌効果を得ることができる。更に、実施形態1では、水路開閉機構(80)を切り替えることにより、十分に殺菌された酸性水又はアルカリ水を、目的に応じて使い分けることができる。
【0074】
実施形態1では、貯水タンク(61)内に貯留される温水中でストリーマ放電が行われる。これにより、ストリーマ放電が行われる放電場としての気泡(B)が発生しやすくなるため、過酸化水素を効率的に生成することができる。更に、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)へ通じる水路には、過酸化水素を含む温水が流れる。過酸化水素は、高温条件下において菌に対する活性が高まる。従って、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)に至る水路を流れる水の殺菌効果を向上できる。
【0075】
実施形態1では、ストリーマ放電が行われる放電場としての気泡(B)が、貯水タンク(61)の底部付近に形成される。これにより、貯水タンク(61)内の水が上下方向において広範囲に亘って対流するため、貯水タンク(61)内の水中において過酸化水素を均一に混合できる。
【0076】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0077】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0078】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と比べて、イオン水供給部(60)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0079】
図7に示すように、実施形態2に係るイオン水供給部(60)には、ストリーマ放電を行って過酸化水素を生成するための2つの電極ユニット部(62)を設け、更に、電気分解を行って酸性水とアルカリ水とを生成するための電気分解ユニット部(85)を設けた。
【0080】
電気分解ユニット部(85)は、陽極(86)及び陰極(87)で構成された電極対(86,87)と、陽極(86)と陰極(87)との間に電圧を印加する電源部(88)とを備えている。陽極(86)は第1室(S1)内に配置される一方、陰極(87)は第2室(S2)内に配置される。電源部(88)により陽極(86)と陰極(87)との間に電圧が印加されると、貯水タンク(61)内で電気分解が起こり、第1室(S1)内では酸性水が、第2室(S2)内ではアルカリ水が、それぞれ生成される。
【0081】
2つの電極ユニット部(62)は、一方の電極ユニット部(62)が第1室(S1)に配置され、他方の電極ユニット部(62)が第2室(S2)に配置されている。つまり、第1室(S1)に配置された電極ユニット部(62)は、第1室(S1)内に貯留される酸性水中でストリーマ放電を行う。一方、第2室(S2)に配置された電極ユニット部(S2)は、第2室(S2)内に貯留されるアルカリ水内でストリーマ放電を行う。なお、第1室(S1)に配置される電極ユニット部(62)の電極対(64,65)間では電気分解が行われるため、放電電極(64)近傍では水素イオンが生成され、対向電極(65)近傍では水酸化物イオンが生成される。しかし、これらの水素イオン及び水酸化物イオンは、第1室(S1)内で拡散して中和されるため、第1室(S1)における酸性水の生成にはほとんど寄与しない。同様に、第2室(S2)に配置される電極ユニット部(62)でも電気分解が行われて水素イオン及び水酸化物イオンが生成されるが、これらは第2室(S2)におけるアルカリ水の生成にほとんど寄与しない。
【0082】
実施形態2に係るイオン水供給部(60)では、電気分解ユニット部(85)によって、第1室(S1)内で酸性水が生成され、第2室(S2)内でアルカリ水が生成される。そして、第1室(S1)内に設けられた電極ユニット部(62)によって第1室(S1)内で過酸化水素が生成され、第2室(S2)内に設けられた電極ユニット部(62)によって第2室(S2)内で過酸化水素が生成される。これらの過酸化水素によって、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される温水が十分に殺菌・浄化される。
【0083】
〈実施形態2の変形例〉
実施形態2の変形例は、上記実施形態2と、電極ユニット部の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態2と異なる点を主として説明する。
【0084】
図8に示すように、実施形態2の変形例における電極ユニット部(62)は、貯水タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、電極ユニット部(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。この電極ユニット部(62)は、図9に示すように、貯水タンク(61)における第1室(S1)側の底部と、第2室(S2)側の底部とに取り付けられている。
【0085】
絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0086】
ケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯水タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯水タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0087】
蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0088】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2の変形例では、放電電極(64)のうち貯水タンク(61)とは反対側の端部が、貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0089】
放電電極(64)のうち貯水タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図8に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯水タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0090】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯水タンク(61)の壁部に固定されて電極ユニット部(62)を保持する固定部を構成している。電極ユニット部(62)が貯水タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0091】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯水タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯水タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0092】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0093】
−イオン水供給部の運転動作−
実施形態2の変形例の給湯システム(10)においても、イオン水供給部(60)が運転されることで、給湯回路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0094】
イオン水供給部(60)の運転の開始時には、図8に示すように、2つの電極ユニット部(62)は、ともに絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0095】
図8に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、図10に示すように、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、第1室(S1)に設けられた電極ユニット部(62)は、第1室(S1)内に貯留される酸性水中で水酸ラジカルや過酸化水素を生成し、第2室(S2)に設けられた電極ユニット部(62)は、第2室(S2)内に貯留されるアルカリ水中で水酸ラジカルや過酸化水素を生成する。そして、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0096】
なお、上記実施形態2の変形例において、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図11に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0097】
《その他の実施形態》
上述した実施形態においては、以下のような他の構成とすることもできる。
【0098】
〈給湯システムの構成〉
上記実施形態の給湯システム(10)を図11に示すような、他の方式としてもよい。
【0099】
具体的に、図12に示す例の給湯システム(10)は、加熱熱交換器(32)と第1ポンプ(43)とが、熱源ユニット(30)や給湯ユニット(40)と異なるユニット(ハイドロボックス(30a))に収容されている。また、この例では、給湯タンク(41)の内部に、コイル型熱交換器(13a)が収容されている。コイル型熱交換器(13a)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)寄りに配設されている。コイル型熱交換器(13a)では、熱媒体としての水が流れる伝熱管が、給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように螺旋状に形成されている。コイル型熱交換器(13a)は、一端が第1循環流路(13)の始端に接続し、他端が第1循環流路(13)の終端に接続している。
【0100】
図12に示す給湯システム(10)では、加熱熱交換器(32)で加熱された水が、コイル型熱交換器(13a)を流れる。これにより、コイル型熱交換器(13a)の伝熱管を流れる水の熱が、伝熱管の外部へ放出される。その結果、給湯タンク(41)内に貯留された水が加熱され、温水が生成される。
【0101】
〈電極ユニット部の構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0102】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0103】
〈イオン水供給部の配置〉
上記各実施形態では、イオン水供給部(60)を主供給路(17)に接続しているが、この限りでなく、例えば図13に示すように、イオン水供給部(60)を第3循環流路(16)に接続してもよい。これにより、給湯運転時だけでなく、追い炊き運転時であっても、浴槽(U1)に過酸化水素を含む酸性水又はアルカリ水を供給できる。
【0104】
〈イオン交換膜〉
上記各実施形態では、貯水タンク(61)内の空間を、イオン交換膜(61a)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画しているが、この限りでなく、例えば、イオン交換膜(61a)の代わりに、板状に形成された絶縁性の仕切板を用いても良い。この場合、仕切板に、第1室(S1)と第2室(S2)とを連通させるための少なくとも1つの開口を設ければ良い。これにより、該開口を介して電極対(64,65)間に電流経路が形成されるため、ストリーマ放電や電気分解が行われる。更に、イオン交換膜(61a)や仕切板が設けられていなくても良い。イオン交換膜(61a)や仕切板を設けなくとも、陽極としての放電電極(64)付近では酸性水が生成され、陰極としての対向電極(65)付近ではアルカリ水が生成される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本発明は、浴槽やシャワーに酸性水やアルカリ水を供給する給湯システムに有用である。
【符号の説明】
【0106】
10 給湯システム
12 給湯回路
32b 二次側伝熱部(加熱部)
42b 第2伝熱管(加熱部)
60 イオン水供給部
61 貯水タンク
62 電極ユニット部
63 イオン水路
63a 酸性水路
63b アルカリ水路
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
70 電源部(直流電源)
80 水路開閉機構
U1 浴槽(利用対象)
U2 シャワー(利用対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設けられた利用対象(U1,U2)に温水を供給するための給湯回路(12)と、
上記給湯回路(12)に酸性水及びアルカリ水のうちの少なくとも一方を供給するイオン水供給部(60)とを備え、
上記イオン水供給部(60)は、
貯水タンク(61)と、
上記貯水タンク(61)の水中に電気分解を起こすための電流経路を形成する電極対(64,65)、及び該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)を有する電極ユニット部(62)と、
上記貯水タンク(61)内と上記給湯回路(12)とを繋ぐイオン水路(63)とを含み、
上記電極ユニット部(62)は、上記電極対(64,65)間の電流経路にストリーマ放電を行うための放電場を形成し、上記ストリーマ放電によって過酸化水素を生成するように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記イオン水路(63)は、
上記貯水タンク(61)のうち酸性水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐ酸性水路(63a)、及び上記貯水タンク(61)のうちアルカリ水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐアルカリ水路(63b)を含み、
上記酸性水路(63a)又は上記アルカリ水路(63b)を選択的に開放する水路開閉機構(80)を更に備えていることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記給湯回路(12)は、
水を加熱する加熱部(32b,42b)と、
上記加熱部(32b,42b)により加熱された温水を上記貯水タンク(61)へ供給する温水路(21)と、を含むことを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1つにおいて、
上記電極ユニット部(62)は、上記ストリーマ放電の放電場を上記貯水タンク(61)の底部寄りに形成するように構成されていることを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−77918(P2012−77918A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220388(P2010−220388)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】