説明

給紙装置及びそれを備えたコレーター

【課題】給紙装置について、装置管理者に高度な技術や過剰な手間を求めることなく適正で安定的な給紙を実現できるようにする。
【解決手段】用紙束を積載する給紙トレー20と、モータ15で回転駆動されて給紙トレー20の用紙束から用紙を送り出す給紙ローラ23と、上面を給紙ローラ23の周面に密着可能に対向配置されて給紙ローラ23とともに捌き機構21を構成する捌き板22と、駆動手段で回転駆動され捌き機構21下流側で用紙をさらに下流側に搬送する送りローラ25とを備えて、サブ制御装置11で駆動制御されて用紙を一枚ずつ給紙する給紙装置3において、その捌き機構21に、給紙ローラ23と捌き板22の間に生じた圧力を捌き圧として検出して検出信号をサブ制御装置11に出力する圧力センサ14を付設して、サブ制御装置11で検知した捌き圧データを基に捌き圧の調整を行うことを特徴とするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及びそれを備えたコレーターに関し、殊に、用紙を分離するための捌き機構を備えて用紙束から一枚ずつ給紙する給紙装置及びこの給紙装置を複数備えて複数種類の用紙を一つに丁合するコレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
コレーター(丁合機)や複写機等が有している給紙装置には、給紙トレーに積んだ用紙束から一枚ずつ用紙を分離して給紙するための捌き機構が設けられており、この捌き機構では、摩擦力を発揮する捌き板の上面に給紙ローラを押圧しながら回転駆動させることで、給紙ローラが接触している一番上の用紙だけを分離して送り出すようになっている。
【0003】
この捌き機構で用紙を確実に分離しながら正確なタイミングで給紙を行うためには、捌き板と給紙ローラとの間の捌き圧を適正に維持する必要がある。即ち、捌き圧が弱すぎると重送が生じやすくなり、捌き圧が強すぎるとそれが抵抗となって用紙の送り出しが遅くなったり給紙ミスを生じたりしてしまう。また、用紙の厚さや紙質・滑りやすさ等の特性に応じて適正な捌き圧は異なることが知られているが、新聞折込チラシ用のコレーターでは、特性・状態の異なる多種類のチラシを短時間で端の揃った一つのチラシ束に丁合することが要求されることから、各給紙装置の捌き圧を的確に設定・維持するために充分なる知識と経験が必要とされている。
【0004】
そこで、特許第4674373号公報に記載されているように、捌き機構から送り出された用紙について給紙開始から下流側の送りローラに到達するまでの時間を計測し、その到達時間と予め設定した基準到達時間との差の平均値を算出し、その値で給紙開始のタイミングを調整することにより、下流側で各用紙を揃えるようにしたコレーターが提案されている。
【0005】
また、特開平9−150990号公報には、捌き機構から送り出された用紙の搬送速度を検知して、この搬送速度が所定値となるように制御手段が捌き機構に設けた捌き圧調整手段を操作するものとして、用紙の種類に関わらず安定した給紙を確保しやすいものとした給紙装置も提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの装置は用紙の給紙速度のみに注目しながら給紙タイミングや捌き圧を調整することで丁合後の用紙束を揃えようとするものであり、用紙の特性に応じて様々に変動する実際の捌き圧に基づいてこれを調整しようとするものではないため、用紙の種類多くてそれが変動しやすい給紙作業の場合には、短時間で的確な調整を行うことが実際には困難であるとともに、重送や給紙ミスの発生を確実に防止できるものではないため、安定的な給紙・丁合を実現するための手段としては未だ不充分である。
【0007】
そのため、上述した技術を新聞折込チラシ用のコレーターに適用した場合でも、作業者が各棚の給紙装置に設けた捌き圧調整用のダイヤルを用いながらチラシの種類毎に捌き圧の微妙な調整を行わざるを得ないものであり、その際に充分な知識と経験が必要であることは従来通りである。また、このようなコレーターでは、給紙ローラと捌き板が常に摩耗し続けるため定期的に基準点を調整することが必要となり、これを的確に行わないと実際の捌き圧とダイヤル目盛りとの差が拡大して、捌き圧を適正に調整することがさらに困難な状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4674373号公報
【特許文献2】特開平9−150990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、給紙装置について、装置管理者に高度な技術や過剰な手間を求めることなく適正で安定的な給紙を実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、用紙束を積載する給紙トレーと、駆動手段で回転駆動されて給紙トレーの用紙束から一枚ずつ用紙を送り出す給紙ローラと、上面を給紙ローラの周面に密着可能に対向配置されて給紙ローラとともに用紙を一枚ずつ分離する捌き機構を構成する捌き板と、駆動手段で回転駆動されて捌き機構下流側で用紙をさらに下流側に搬送する送りローラとを備えて、制御手段で駆動制御されながら用紙を一枚ずつ給紙する給紙装置において、その捌き機構には、給紙時に給紙ローラと捌き板の間に生じた圧力を捌き圧として検出し検出信号を制御手段に出力する圧力センサが付設されており、制御手段で検知した捌き圧データを基に捌き圧の調整を行うものとされている、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、実際の捌き圧を検知しながらこれを基に捌き圧を調整する方式としたことで、捌き圧の調整が短時間で的確に行えるとともに適正で安定的な給紙を実現しやすいものとなり、且つ、捌き圧を定量的に知ることにより製造時の原点出しや使用に伴う給紙ローラ等の摩耗への対応、さらにはメンテナンス時の調整原点出しの場合など、各作業時において捌き圧についての知識と経験が殆ど不要なものとなる。
【0012】
また、この給紙装置において、その捌き機構には捌き圧を調整するための捌き圧調整手段が付設されており、この捌き圧調整手段を操作しながら捌き圧の調整を行うものとされていることを特徴としたものとすれば、迅速な調整作業を可能として適正な給紙状態を確保しやすいものとなる。この場合、その捌き圧の調整は、制御手段が前記捌き圧データを基に所定の算出方法を用いて実際の捌き圧を所定レベルまたは設定値にするように捌き圧調整手段を操作しながら自動にて行われる、ことを特徴としたものとすれば、給紙作業中の実際の捌き圧を設定値に自動的に一致させたり、新聞折込チラシ用のコレーターのように多種類の用紙を給紙するケースで用紙の種類や状態が変化して捌き圧が変動するケースであっても良好な給紙状態を確保できる捌き圧に自動調整させたりすることができる。
【0013】
さらに、上述の捌き圧調整手段を備えた給紙装置において、用紙が送りローラに到達したことを検出して制御手段に検出信号を出力する用紙センサが配設されており、その制御装置が、給紙ローラの駆動手段への通電開始から用紙の先端が送りローラに到達したことを検知するまでの到達時間を計測してこの到達時間を予め定めた基準到達時間に収束させるように捌き圧調整手段を操作しながら捌き圧の調整を行うものとされている、ことを特徴としたものとすれば、調整により変動する捌き圧を定量的に検知可能としながら、基準到達時間よりも短い時間で到達している場合は捌き圧を上げ、長い時間で到達している場合は捌き力を下げるものとして、捌き圧の調整と給紙タイミングの調整とが同時にしかも的確に行われるものとなる。
【0014】
この場合、その制御手段による捌き圧の調整は、実際の到達時間を1回で基準到達時間に一致させるように行われるのではなく、複数回に亘って徐々に基準到達時間に収束させるように行われることを特徴としたものとすれば、緩めの演算で徐々に修正する方式としたことにより、1枚1枚用紙の位置がずれやすい給紙作業において修正を1回で行うことによる過剰な変動を招きにくくなって、スムースで安定的な作業を実現しやすいものとなる。
【0015】
さらにまた、上述した到達時間を基に調整を行う給紙装置において、その送りローラの下流側には、用紙の重送発生を検出して制御手段に検出信号を出力する重送センサが配設されており、重送の発生を検知した制御手段が、そのときの捌き圧を予め定めた所定の割合で増加させることで少なくとも重送を生じないレベルの捌き圧に一旦上昇させた後、前記基準到達時間に収束させるように調整を継続することを特徴としたものとすれば、適切な捌き圧の調整と重送の確実な回避とを同時に実現しやすいものとなる。
【0016】
加えて、上述した給紙装置において、通常の捌き圧の設定では搬送経路で詰まりを生じる畏れのある厚物の用紙を給紙する場合に、給紙ローラと捌き板の間隔を用紙の厚さと同等以上に開いて用紙を捌き機構内に受け入れ、その後間隔を狭めて用紙を挟み込みつつ検知している捌き圧が所定レベルになった時点で挟み込みを停止するものとして、給紙する用紙の厚さに適応した給紙ローラと捌き板の間隔にして給紙を行うことを特徴としたものとすれば、従来は経験が必要とされた厚物の用紙における対応が自動的且つ的確に行われるものとなる。
【0017】
また加えて、上述した給紙装置において、手動操作で捌き圧の調整を実施するためのマニュアル式捌き圧調整手段が設けられており、その手動による調整量が制御装置に記憶されて、次回以降の捌き圧の設定又は/及び捌き圧の調整の際に前記調整量が自動的に反映されることを特徴としたものとすれば、作業者による操作の手間を一層軽減可能なものとなる。
【0018】
さらに加えて、上述した給紙装置において、捌き圧調整手段に連結されてこれを手動操作するためのダイヤルが設けられ、このダイヤルには駆動手段が連結されて自動調整による捌き圧設定値の変化がダイヤルの目盛り表示に自動的に反映されるものとされ、このダイヤルを用いて捌き圧の手動調整が行えることに加え現在の捌き圧設定値をダイヤルによる目盛り表示で確認可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、従来から使い慣れた捌き圧調整用のダイヤルを用いて直感的に短時間で調整を行えるとともに捌き圧の状態を一目で確認できるものとなる。
【0019】
そして、上述した給紙装置を有した棚を縦方向に複数段備えてその棚から給紙された複数種類の用紙を一つに丁合する装置であって、所定のプログラムを格納した制御手段とこの装置についての所定の表示及び所定の操作を行うためのメインパネルを備えた新聞折込チラシ用のコレーターとすれば、多種類のチラシを丁合するために複数配置した各給紙装置における捌き圧の調整作業が、手間を要することなく容易に行えるものとなる。
【0020】
そしてまた、このコレーターにおいて、その給紙装置にはタッチパネル式の操作が可能なディスプレイを有した操作パネルが各々配設され、そのディスプレイにその給紙装置の各種状態が表示可能であるとともにその給紙装置についての各種操作を行うためのスイッチ類の画像表示が可能とされており、メインパネルと操作パネルの間でその給紙装置について行った操作の結果が互いに反映されて内容の共通した表示となる、ことを特徴としたものとすれば、捌き圧の自動調整機能により経験の少ない作業者でも適正かつ安定的な給紙による良好な丁合を実現しやすいものとなり、且つ、各棚の給紙装置で捌き圧を始めとするその棚の状態を確認しながら的確な作業を遂行しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0021】
実際の捌き圧を検知しながらその値を基に捌き圧の設定値を調整する方式の本発明によると、装置管理者に対し高度な技術や過剰な手間を求めることなく適正で安定的な給紙を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における実施の形態の正面図である(一部拡大図)。
【図2】図1のコレーターの構成を説明するための機能ブロック図である。
【図3】図1のコレーターの給紙装置の構成を説明するための部分縦断面図である。
【図4】(A)及び(B)は捌き機構に対する圧力センサの付設例を示す拡大した部分縦断面図である。
【図5】図1のコレーターにおける捌き圧調整手段の構成の一例を示す部分斜視図である。
【図6】(A)及び(B)は図5の捌き圧調整手段の変形例を示す部分拡大図である。
【図7】図5の捌き圧調整手段に連結している捌き圧調整用ダイヤルの変形例を示す部分斜視図である。
【図8】図1のコレーターの応用例を示す正面図である(一部拡大図)。
【図9】図1のコレーターにおける給紙時の捌き圧の変動状況を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態の給紙装置3a,3b,3c,・・・を各々有した棚を縦方向に複数段かつ前後両面に備えてなるコレーター1Aを示しており、図2はその構成を機能ブロック図で示したものである。このコレーター1Aは、新聞折込チラシの丁合作業を行うことを想定したものであるが、複数種類の用紙を一つに丁合する作業である限り、他の分野においてもそのまま使用することも可能である。
【0025】
コレーター1Aには、ディスプレイ51と操作キー52を有したメインパネル5A及びメイン制御装置10Aを備えており、メインパネル5Aで装置の各種状態を表示するとともに各種設定や各種操作を行えるようになっており、メイン制御装置10Aは記憶手段を有しているとともにコレーター用の制御プログラムが格納されたものであり、装置の各種設定を記憶するとともに各給紙装置30Aの統括的な制御を行っている。また、給紙装置3a,3b,3c,・・・は、ディスプレイ32、捌き圧調整用のダイヤル31、ボタン類・ランプ類を有した操作パネル30Aを各々備えている。
【0026】
給紙装置3a,3b,3c,・・・は、図2の機能ブロック図及び図3の部分縦断面図に示すように、用紙束(チラシ束)を積載する給紙トレー20、図示しない駆動手段で回転駆動されて給紙トレー20の用紙束から用紙を一枚ずつ送り出す給紙ローラ23及び補助ローラ24、上面を給紙ローラ23の周面に対し密着可能に対向配置されて給紙ローラ23とともに捌き機構21を構成する捌き板22、図示しない駆動手段で回転駆動されて用紙をさらに下流に搬送する送りローラ25、その各種制御を行うサブ制御装置11を各々備えており、メイン制御装置10A及びサブ制御装置11で駆動制御されて用紙を一枚ずつ給紙するようになっている。
【0027】
また、図3に示すように、捌き機構21から送りローラ25に亘ってへ字状のレバー13aが揺動可能な状態に軸支されて配設されており、その基端側の磁石の動きを検出するホール素子またはリードスイッチ13bとともに、送りローラ25の位置に用紙が到達したことを検出して給紙ミス等の発生を検知するための用紙センサ(所謂ミス検センサ)13を構成している。
【0028】
そして、本発明においては、各給紙装置3a,3b,・・・の捌き機構21に、給紙の際に給紙ローラ23と捌き板22の間に生じた圧力を捌き圧として検出し、その検出信号を制御手段であるサブ制御装置11に出力する圧力センサ14が付設され(図4参照)、サブ制御装置11が検知した捌き圧データをその給紙装置のディスプレイ32及びメインパネルのディスプレイ51に表示可能とされており、操作者が各給紙装置3a,3b,・・の実際の捌き圧を定量的に認識してこれを調整作業に用いることを可能としており、捌き圧の設定及び調整が比較的容易に行われるものとして、経験豊富な作業者と経験の少ない作業者との差が生じにくくした点を特徴としている。
【0029】
即ち、従来は作業者の経験と勘に頼っていた捌き圧の調整作業において、その実際の捌き圧の値を定量的に知ることが可能となるため、機械製造時の原点出しに始まり、ユーザ使用中の給紙ローラ等の摩耗に対応しながら適正な捌き状態を確保することや、メンテナンス時の調整原点出しなど、総ての作業者において捌き圧に関する経験と知識が殆ど問われないものとなって、経験の差による完成度の違いを無くすことを実現している。
【0030】
この捌き圧を検出するための圧力センサ14には、例えば電磁式、ひずみゲージ式、音叉式、可動コイル式、静電容量式などの荷重測定部品を使用することができ、図4(A)のように捌き板22の下面と基台部28a上面との間に圧力センサ14Aを直接配置した捌き機構21aや、図4(B)のように捌き板22が載っている基台部28bの内側に圧力センサ14を配置した捌き機構21b等が想定される。
【0031】
また、本実施の形態の給紙装置3a,3b,・・・には、図5の部分斜視図に示すように、その捌き機構21に捌き圧を調整するためのサーボモータやステップモータ等の詳細な駆動制御が可能なモータ16を有してなる捌き圧調整手段18が各々配設されており、サブ制御装置11が検知した捌き圧データを基に捌き圧調整手段18を操作しながら捌き圧を自動調整するようになっている。その調整の内容としては、サブ制御装置11が検知している捌き圧データを基に、所定の計算方法(演算)を用いて実際の捌き圧を設定値または所定の適正レベルに維持する方向のフィードバック的な制御でモータ16の駆動を操作すること等が挙げられる。
【0032】
このような構成としたことで、本実施の形態の極めて多種類のチラシを丁合する新聞折込チラシ用のコレーター1Aのように、殆ど毎日チラシの種類が変わるとともに同じ棚でも作業途中でチラシの種類や状態が変わって実際の捌き圧が度々変動するような場合であっても、これが適正な状態に自動調整されるため作業者の手間を要することなく、適正かつ安定的な給紙状態を実現しやすいものとなる。また、適正な捌き圧になった時点でそのことをディスプレイ表示やブザー・音声等で報知する機能を備えたものとすることにより、作業者にとって一層便利なものとなる。
【0033】
このような捌き圧調整手段18は、サブ制御装置11で制御されて精密な操作が可能なモータ16により駆動されて動作するものであるが、その捌き圧を変更させる部分の構成としては、図5に示した傾斜板のスライド動作で捌き板22を上下動させる方式の作動部18bのほか、図6(A),(B)に示すようにネジの回転動作で捌き板22を俯仰させて捌き圧を上昇させる方式の作動部18c,18d等が好適である。
【0034】
さらに、前述した実施の形態の給紙装置3a,3b,・・・の応用例として、図3に示した用紙センサ13が送りローラ25に用紙が到達したのを検出する機能を利用して、サブ制御装置11が、給紙ローラ23を駆動させるモータ15への通電開始から送りローラ25に用紙が到達したのを検知するまでの到達時間を計測するものとし、その到達時間と予め実験等で適正な給紙を実現可能なものとして定めた基準到達時間とを比較してその差を求める等しながら、その後の給紙で差が小さくなっていくように、即ち基準到達時間に収束させるようにして、捌き圧調整手段18を操作しながら自動的に捌き圧の調整を行う方式としても良い。
【0035】
この機能は、上述したように予め経験や実績等により得られた捌き圧の設定値にて給紙作業を行うことを基本としているものの、実際にはこのような想定とは異なってしまうこともあり得ることから、このような想定外のケースにも的確に対処可能な安全装置として上述した機能に追加して設けられるものである。これにより、捌き圧を調整することと、捌き圧を調整することで変更される給紙タイミングを調整することが、同時且つ的確に行われるものとなる。この場合、検知した到達時間を1回で基準到達時間にもっていくように調整するのではなく、1回につき差のうち何割か(例えば30%)だけを修正するものとして、複数回に亘って徐々に基準到達時間に収束させるように調整することが、過剰な変動を回避しながらスムースで安定的な調整作業を確保する観点で推奨される。
【0036】
尚、この場合も、圧力センサ14で実際の捌き圧を検知していることで、その調整が的確且つ迅速に行われることになる。また、上述した機能を応用して、アラームが鳴っても運転を停止しないテスト運転時等において、下流側で用紙が揃う適切な給紙スピード・タイミングとなるように各捌き圧を手動にて調整し、そのときの捌き圧をその用紙に対する基準値として設定したり、そのときの到達時間を基準到達時間として設定したりすることもできる。
【0037】
ところで、新聞折込チラシ用のコレーターにおいては、その給紙装置の送りローラ下流側に用紙の重送発生を検出して制御手段に検出信号を出力する重送センサが配設されているのが通常であり、上述した実施の形態においても、図示は省略しているが送りローラ25の下流側に重送センサが配設されており、重送の発生を検出してサブ制御装置11及びメイン制御装置10Aに検出信号を出力するようになっている。
【0038】
前述した応用例では、重送発生を検知したサブ制御装置11が、そのときの捌き圧を予め定めた所定の割合で増加させて、少なくとも重送を生じないレベルの捌き圧に一旦上昇させた後、前述した基準到達時間に収束させるように捌き圧の調整を継続するものとして、適正な捌き圧の調整と重送の確実な回避の実現とを同時に実現できるようになっている。尚、重送発生を検知した場合は、その時点で運転を停止するのが一般的であるが、この場合、停止しながらも前述の調整動作は実行される設定とすれば良い。
【0039】
さらにまた、上述した実施の形態・応用例のさらなる応用例として、通常の捌き圧の設定では機械の搬送経路に詰まりを生じる畏れのあるような厚物の用紙を給紙する場合に、所定の厚さや重さ以上の用紙を検出する厚物検出手段で厚物の用紙を検出、または厚物の用紙を積載する際に給紙装置に予め設定しておく等して、サブ制御装置11が捌き板調整手段18を操作しながら捌き機構21の手前に用紙が来た時点で、給紙ローラ23と捌き板22の間隔を、用紙の厚さと同等以上に開いてこれを捌き機構21内に受け入れ、或いは、作業者が厚物と判断した場合に前記間隔を開く操作を行った後で手動にて用紙を差し込むものとして、その後、間隔を狭めて用紙を挟みつつ検知している捌き圧が所定レベルになった時点で挟み込みを停止する構成としても良い。
【0040】
この場合、用紙を挟み込んで所定の圧力レベルで停止してから、予め設定した所定幅だけ間隔を広げてその厚物の用紙に対して適切な捌き機構21の間隔にすることが好ましい。以上のような構成とすることで、従来は経験が必要とされた折り畳んだチラシ等の厚物の用紙における対応作業が、経験を要することなく的確に行えるものとなり、作業者による操作の手間を軽減できるようになる。また、この場合も前述同様に到達時間の長短で間隔の調整量を加減することも可能である。
【0041】
再度図5を参照して、上述した実施の形態及び応用例に共通して、その給紙装置には、手動操作で捌き圧の調整を実施するためのマニュアル式の捌き圧調整手段18が設けられているが、その操作パネル30Aには、このマニュアル式捌き圧調整手段の一部を構成するダイヤル31が配設されている。これにより、捌き圧の設定及び予め設定された捌き圧の調整が手動で行えるようになっているが、これに加え、その手動による調整量データはサブ制御装置11に記憶されて次回の捌き圧の設定又は/及び調整の際に、その調整量が自動的に反映されるようになっていることから、その後の作業者の手間を大きく軽減可能としている。
【0042】
また、このダイヤル31には歯車31a,18a,16aを介して捌き圧調整手段18の一部を構成しているモータ16が連結されており、自動調整による捌き圧設定値の変化がその連結を介してダイヤル31の目盛り表示に自動的に反映されるようになっており、この古くから使い慣れたダイヤル31を用いて直感的に素早く捌き圧を調整できることに加え、現在の捌き圧の設定値を従来通り目盛り表示にて確認できるようになっている。
【0043】
ところで、新聞折り込みチラシの丁合作業においては、特別に捌き圧を変える必要のある特殊なチラシやその日のインク乾燥状等により平均的捌き圧に対して当日のみ捌き圧を変更する必要のあるチラシも含まれるが、このような場合には捌き圧の一定圧自動調整機能を解除する方式としても良い。
【0044】
また、図5に示したように、ダイヤル31を手動操作する際は、操作に伴いモータ16を回すことになってしまう。そこで、図7に示すように、例えばダイヤル32の中心に配置したボタン32aを手で押すことにより、ダイヤル32の中心から延設された軸棒34の先端が、モータ支持部19のモータ16を載せた基台19cをレール19b上でスライド移動させて歯車18aと歯車16aとのリンクを切断するものとし、ボタン32から手を離すことでばね19dの復元力により元の位置に戻ってリンクが接続される構成にする等して、モータ16を動かすことなく手動操作できるようにすれば良い。また、前記機械式の回避方式以外にも、歯車とモータをマイクロクラッチによって接続し、電気的に締結解除する方式も可能である。
【0045】
図8は、上述した実施の形態・応用例の他の応用例を示すものであり、給紙装置4a,4b,・・・の各操作パネル30Cにタッチパネル式の操作が可能なディスプレイ33が配設されているとともに、そのメインパネル5Cがタッチパネル式の操作が可能なディスプレイ54を備えて本体のメイン制御装置10Aとの間で無線によるデータ通信が実施可能なタブレット端末からなるものとした点を特徴としている。
【0046】
このように、給紙装置4a,4b,・・・における各操作パネル30Cのディスプレイ33を、従来例よりも大きな画面でタッチパネル式の操作が可能なものとしたことで、図のように実体的なランプ類・スイッチ類を必要最小限の数に抑えられるとともに、捌き圧調整用の実体的なダイヤルも省略することができ、ディスプレイ33上で捌き圧の設定値(実測値)を数字で示しながら+−の方向に数字を変化させる仮想の調整用ボタン・早送りボタン等が表示可能なものとなっている。そのため、定量的な判断及び操作が可能となって操作の経験が少なくても短時間で的確な捌き圧の調整を行いやすいものとなっている。
【0047】
このコレーター1C及び前述した実施の形態・応用例に共通して、メインパネル5A,5Cと操作パネル30A,30Cの間でその給紙装置について行った操作の結果は、互いに反映されるとともに内容の共通した表示となるようになっており、どちらを見ても給紙装置の状態の確認でき、どちらを用いても操作が行えるものとしている。
【0048】
ところで、制御装置が検知している捌き圧データの変動は、図9のグラフに示されるような状況になることが想定されており、図示したように用紙を挟み込んでいない状態と挟み込んでいる状態とでは圧力が顕著に変化することから、捌き圧の管理・調整のための基準として使用すべきデータ部分は、捌き板と給紙ローラの間に用紙が挟まっている状態の部分が好ましいことが理解できる。
【0049】
また、一定の捌き圧に維持する管理を実行するものの場合は、用紙を抜いた状態ではその分を補うように調整されてその次に給紙ミスとなってしまうため、給紙ミスを検知・報知する状態で折り込み中に限って自動調整されるような設定が好ましい。さらに、装置の運転中に用紙切れとなって給紙ミスが出た場合も用紙が給紙ローラの下から無くなるため、このようなケースでは自動調整を停止する設定としても良い。加えて、適正な捌き圧(基準圧)を取得する際には、上述したようにコレーターの機能のうち運転を止めずに警告だけ出すテストモードで行うことにより、短時間で目的を達成することができる。
【0050】
尚、上述の説明においては、各給紙装置における捌き圧の調整の主体はそのサブ制御装置であり、メイン制御装置は統括的な制御・管理を行うものとして記載したが、そのメイン制御装置が、新聞折込チラシ用のコレーターのように多数の給紙装置を有して各々フィードバック制御的な管理を並列的に行うだけの処理能力に余裕がある場合は、サブ制御装置を使用しない中央制御方式も可能である。しかし、各給紙装置にサブ制御装置を設けて制御機能を持たせることにより、その近くに駆動手段に対するドライバを配置できるようになり、多数の配線を機械全体に張り巡らせることなく給紙装置毎に配線の殆どを纏めることが可能となるため、コレーターを全体としてすっきりと纏まった状態にできるというメリットがある。
【0051】
また、上述の説明において、一枚の用紙を給紙する間の捌き圧設定値は単一である場合を説明したが、用紙が分離された後で強い捌き力が加わったままでいると用紙の搬送における抵抗になって搬送速度を遅らせる要因となることが知られている。そこで、1回の給紙動作のうち、給紙ローラの駆動開始から用紙が分離されるまでの間の捌き力設定値と、分離した後に給紙ローラの駆動が停止するまで又は給紙ローラの下から用紙が完全に脱出するまでの間の捌き力設定値とが異なる設定、即ち、後者が前者よりも弱くなる設定の制御方式とすることで、確実な捌きと迅速な給紙の両立が可能なものとなる。
【0052】
以上、述べたように、給紙装置について、本発明により、装置管理者に高度な技術や過剰な手間を求めることなく適正で安定的な給紙を実現できるようになった。
【符号の説明】
【0053】
1A,1C コレーター、3,3a,3b,3c,4a,4b,4c 給紙装置、5A,5C メインパネル、10A メイン制御装置、11 サブ制御装置、12 ドライバ、13 用紙センサ、14,14a,14b 圧力センサ、16 モータ、18 捌き圧調整手段、20 給紙トレー、21,21a,21b 捌き機構、22 捌き板、23 給紙ローラ、25 送りローラ、30A,30C 操作パネル、32,33,51,52 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束を積載する給紙トレーと、駆動手段で回転駆動されて前記給紙トレーの用紙束から一枚ずつ用紙を送り出す給紙ローラと、上面を前記給紙ローラの周面に密着可能に対向配置されて前記給紙ローラとともに用紙を一枚ずつ分離する捌き機構を構成する捌き板と、駆動手段で回転駆動されて前記捌き機構下流側で用紙をさらに下流側に搬送する送りローラとを備えて、制御手段で駆動制御されながら用紙を一枚ずつ給紙する給紙装置において、
前記捌き機構には、給紙時に前記給紙ローラと前記捌き板の間に生じた圧力を捌き圧として検出し検出信号を前記制御手段に出力する圧力センサが付設されており、前記制御手段で検知した捌き圧データを基に捌き圧の調整を行うものとされている、ことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記捌き機構には捌き圧を調整するための捌き圧調整手段が付設されており、該捌き圧調整手段を操作しながら捌き圧の調整を行うものとされている、ことを特徴とする請求項1に記載した給紙装置。
【請求項3】
前記捌き圧の調整は、前記制御手段が前記捌き圧データを基に所定の算出方法を用いて実際の捌き圧を所定レベルまたは設定値にするように前記捌き圧調整手段を操作しながら自動にて行われる、ことを特徴とする請求項2に記載した給紙装置。
【請求項4】
前記用紙が前記送りローラに到達したことを検出して前記制御手段に検出信号を出力する用紙センサが配設されており、前記制御装置が、前記給紙ローラの駆動手段への通電開始から前記用紙の先端が前記送りローラに到達したことを検知するまでの到達時間を計測して該到達時間を予め定めた基準到達時間に収束させるように前記捌き圧調整手段を操作しながら捌き圧の調整を行うものとされている、ことを特徴とする請求項2または3に記載した給紙装置。
【請求項5】
前記捌き圧の調整は、実際の前記到達時間を1回で前記基準到達時間に一致させるように行われるのではなく、複数回に亘って徐々に前記基準到達時間に収束させるように行われる、ことを特徴とする請求項4に記載した給紙装置。
【請求項6】
前記送りローラの下流側には、前記用紙の重送発生を検出して前記制御手段に検出信号を出力する重送センサが配設されており、重送の発生を検知した前記制御手段が、そのときの捌き圧を予め定めた所定の割合で増加させることで少なくとも重送を生じないレベルの捌き圧に一旦上昇させた後、前記基準到達時間に収束させるように調整を継続する、ことを特徴とする請求項4または5に記載した給紙装置。
【請求項7】
通常の捌き圧の設定では搬送経路で詰まりを生じる畏れのある厚物の用紙を給紙する場合に、前記給紙ローラと前記捌き板の間隔を前記用紙の厚さと同等以上に開いて前記用紙を前記捌き機構内に受け入れ、その後前記間隔を狭めて前記用紙を挟み込みつつ検知している捌き圧が所定レベルになった時点で挟み込みを停止するものとして、給紙する前記用紙の厚さに適応した前記給紙ローラと前記捌き板の間隔にして給紙を行うものとされている、ことを特徴とした請求項2,3,4,5または6に記載した給紙装置。
【請求項8】
手動操作で捌き圧の調整を実施するためのマニュアル式捌き圧調整手段が設けられており、その手動による調整量が前記制御装置に記憶されて、次回以降の捌き圧の設定又は/及び捌き圧の調整の際に前記調整量が自動的に反映される、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7に記載した給紙装置。
【請求項9】
前記捌き圧調整手段に連結されてこれを手動操作するためのダイヤルが設けられ、該ダイヤルには駆動手段が連結されて自動調整による捌き圧設定値の変化が前記ダイヤルの目盛り表示に自動的に反映されるものとされ、前記ダイヤルを用いて捌き圧の手動調整が行えることに加え現在の捌き圧設定値を前記ダイヤルによる目盛り表示で確認可能とされている、ことを特徴とする請求項2,3,4,5,6または7に記載した給紙装置。
【請求項10】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9に記載した給紙装置を有した棚を縦方向に複数段備えて前記棚から給紙された複数種類の用紙を一つに丁合する装置であって、所定のプログラムを格納した制御手段と前記装置についての所定の表示及び所定の操作を行うためのメインパネルを備えた新聞折込チラシ用のコレーター。
【請求項11】
前記給紙装置にはタッチパネル式の操作が可能なディスプレイを有した操作パネルが各々配設され、前記ディスプレイにその給紙装置の各種状態が表示可能であるとともにその給紙装置についての各種操作を行うためのスイッチ類の画像表示が可能とされており、前記メインパネルと前記操作パネルの間でその給紙装置について行った操作の結果が互いに反映されて内容の共通した表示となる、ことを特徴とする請求項10に記載したコレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−23332(P2013−23332A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159452(P2011−159452)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(594041391)株式会社丸山機械製作所 (11)
【Fターム(参考)】