統合アンテナ
【課題】局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる統合アンテナを提供する。
【解決手段】グランド板と、グランド板の一面上における中央部に配置され、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、第2のアンテナ及び第3のアンテナは、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、第2のアンテナと第3のアンテナとで異なる。
【解決手段】グランド板と、グランド板の一面上における中央部に配置され、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、第2のアンテナ及び第3のアンテナは、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、第2のアンテナと第3のアンテナとで異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数で動作する複数のアンテナが同一のグランド上に配置された統合アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
異なる周波数で動作する複数のアンテナが同一のグランド上に配置された統合アンテナとして、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1に示される統合アンテナでは、グランド板の中央部付近に、天頂方向(z軸方向)に指向性を有する第1のアンテナが配置され、グランド板の端部付近に、水平方向に指向性を有する第2のアンテナが配置されている。
【特許文献1】特開2005−260566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される統合アンテナに対し、例えば第2のアンテナと同一構成の第3のアンテナが、第1のアンテナを間に挟んで第2のアンテナと対称配置(x軸対称の配置)とされ、第2のアンテナと第3のアンテナとがダイバーシチアンテナとすることで、感度の向上を図るようにした統合アンテナが考えられる。
【0005】
しかしながら、本発明者が確認したところ、このような構造の統合アンテナでは、第1のアンテナがグランド板の中央部付近に配置されているにも関わらず、第1のアンテナのxz面の指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じることが明らかとなった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる統合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
詳細は後述するが、本発明者は、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じる原因が、第1のアンテナに流れる電流によって、第1のアンテナを間に挟んで配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナの各水平部に誘起電流が生じ、この誘起電流による電波が第1のアンテナの電波と干渉することによるものとの考えに至った。具体的には、第2のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相が同位相であると、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じることを確認した。
【0008】
この知見に基づき、請求項1に記載の発明は、グランド板と、グランド板の一面上における中央部に配置され、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、第2のアンテナ及び第3のアンテナは、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、第2のアンテナと第3のアンテナとで異なることを特徴とする。
【0009】
このように本発明では、グランド板の中央部に、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナを配置している。したがって、従来同様、第1のアンテナの指向性のピークをほぼ垂直方向とすることができる。
【0010】
また、水平部を有する第2のアンテナ及び第3のアンテナには、第1のアンテナに流れる電流(電流に伴う放射された電波)によって誘起された誘起電流が流れることとなる。これに対し、本発明では、第2のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相が異なるようにしている。したがって、垂直方向に指向性を有する第1のアンテナがグランド板の中央部に配置され、第1のアンテナとは動作周波数の異なる第2のアンテナ及び第3のアンテナが、第1のアンテナを間に挟むように配置された構成でありながら、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0011】
なお、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部としては、グランド板の一面と平行な形態に限定されず、グランド板の一面とのなす角度が90°以外の形態(垂直以外の形態)とすれば良い。このような形態であれば、第1のアンテナに流れる電流によって誘起電流が生じることとなる。
【0012】
具体的には、請求項2に記載のように、第2のアンテナにおける給電側とは異なる端部から最短距離の部位までの電気長と、第3のアンテナにおける給電側とは異なる端部から最短距離の部位までの電気長とが異なる構成としても良い。
【0013】
誘起電流は、給電側とは異なる端部への進行波と端部からの反射波との合成波である。したがって、第2のアンテナと第3のアンテナとで、端部から最短距離の部位までの電気長が異なる構成とすると、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相を異なるものとすることができる。その際、例えば請求項3に記載のように、第2のアンテナの形状と第3のアンテナの形状を互いに異なるものとしても良い。
【0014】
また、請求項4に記載のように、第1のアンテナの電気的中心から第2のアンテナの水平部までの最短距離と、第1のアンテナの電気的中心から第3のアンテナの水平部までの最短距離とが異なる構成としても良い。
【0015】
このような構成とすると、第1のアンテナから放射された電波の位相が、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とで異なることとなる。これにより、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相を異なるものとすることができる。
【0016】
請求項5に記載のように、水平部の長手方向において、第2のアンテナの水平部と第3のアンテナの水平部とが略平行とされた構成とすると良い。さらには、請求項6に記載のように、第2のアンテナの水平部と第3のアンテナの水平部とが、グランド板の一面に平行な同一平面に配置された構成とすると良い。このような構成とすると、アンテナの構造や配置を簡素化することができる。そして、統合アンテナの体格を小型化することも可能である。
【0017】
また、請求項1〜6いずれかに記載の発明においては、請求項7に記載のように、第1のアンテナとして、VICS用アンテナ、GPS用アンテナ、及びETC用アンテナのいずれかを採用し、第2のアンテナ及び第3のアンテナとしてDCM用アンテナを採用した構成としても良い。これによれば、車両に搭載される統合アンテナとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
先ず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が本発明を創作するに至った経緯を説明する。図1は、後述する実施形態においても基本となる統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【0019】
図1に示す統合アンテナ1では、グランド板3の一面3aの中央部に、一面3aに対して垂直方向に指向性(換言すれば、天頂方向に指向性)を有する第1のアンテナ5が配置されている。
【0020】
このように、グランド板3の一面3aに対して垂直方向(z軸方向)に指向性を有する第1のアンテナ5をグランド板3の中央部に配置すると、第1のアンテナ5の指向性のピークをほぼ垂直方向とすることができる。この点については、本出願人による特開2005−260566号公報に記載されているので、ここでの説明は省略する。
【0021】
また、グランド板3の一面3aの中央部周辺に位置する周辺部には、第1のアンテナ5を間に挟む態様(y軸方向において、間に挟む態様)で第2のアンテナ7と第3のアンテナ9が配置されている。第2のアンテナ7と第3のアンテナ9は、第1のアンテナ5とは異なる周波数であって互いにほぼ等しい周波数で動作するように構成されており、2つのアンテナ7,9を適宜切り替えることで、ダイバーシチ効果(例えば空間ダイバーシチ効果)が得られるようになっている。
【0022】
また、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9は、グランド板3の一面3aに沿う成分を含む水平部11,13をそれぞれ有している。ここで、水平部11,13とは、アンテナ7,9(を構成する各エレメント)のうち、グランド板3の一面3aとのなす角度が90°以外(垂直以外)の部分である。すなわち、水平部11,13とは、第1のアンテナに流れる電流によって誘起電流15,17が生じる部分である。
【0023】
このような構成の統合アンテナ1について、本発明者は詳細な検討を行った。図2は、指向性の解析に用いた統合アンテナの具体的な構成例を示す斜視図である。図3は、図2における各アンテナの位置関係を示す平面図である。図4は、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の解析結果を示す図である。図4においては、第1のアンテナ5を微小ダイポールとしたものを破線で、破線に示す構成に対し第2のアンテナ及び第3のアンテナも微小ダイポールとし、最短距離の部位における誘起電流の位相を同位相としたものを一点鎖線で、一点鎖線に示す構成に対し誘起電流の位相を逆位相としたものを実線で示している。図5は、全てのアンテナを微小ダイポールとしたときの、第1のアンテナの指向性の解析結果を示す図であり、(a)は最短距離の部位における誘起電流の位相が同位相、(b)が最短距離の部位における誘起電流の位相が逆位相の場合である。
【0024】
検討に当たり、第1のアンテナ5を、周波数(中心周波数)が2.5GHzのVICS用アンテナとし、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナとした。そして、配置スペースの制約(例えば高さ20mm以下)を考慮し、図2に示すように、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9として、同一構成の逆Lアンテナ(逆L字状のモノポールアンテナ)を採用した。具体的には、グランド板3の垂直な垂直部19,21(換言すればモノポール部)の長さ(高さ)を20mm程度とし、水平部11,13(換言すれば、伝送線路部)の長さを70mm程度した。また、逆Lアンテナの主偏波を垂直偏波とするために、給電位置をグランド板3の端部(端面)から15mm以上離れた位置とした。そして、図2及び図3に示すように、水平部11,13をグランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置し、その長手方向において、x軸を中線として水平部11,13同士が完全に対向するように互いに平行に配置した。すなわち、水平部11,13をx軸対称(線対称)の配置とした。
【0025】
また、解析を簡素化するために、第1のアンテナ5を微小ダイポールとし、図3に示すように、第1のアンテナ5の電気的中心23(電気長の中心)を、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より詳しくは図3に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置した。そして、第1のアンテナ5の電気的中心23を、各軸の原点と一致させた。すなわち、水平部11における電気的中心23から最短距離の部位25(以下、最短部位25と示す)までの距離L1と、水平部13における電気的中心23から最短距離の部位27(以下、最短部位27と示す)までの距離L2とが、互いに等しい構成とした。
【0026】
このような構成の統合アンテナ1について指向性の解析を行ったところ、図4に破線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力が急激に低下する部位が生じることが明らかとなった。なお、仰角とは、グランド板3の一面3aに沿うx軸方向(水平方向)を0°としたときの角度である。
【0027】
次に、本発明者は、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を、水平部11,13と同位置の微小ダイポールに置き換えて、同様の解析を行った。その結果、図4に一点鎖線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で逆Lアンテナと同程度の放射電力の低下が確認された。このことは、図5(a)からも明らかである。なお、図5(a)に示す符号29は、局部的な電力低下部である。このように、微小ダイポールに置き換えた場合にも、逆Lアンテナと同様の結果を示した。すなわち、微小ダイポールへの置き換えで、逆Lアンテナの結果を再現することができた。
【0028】
図2及び図3に示す構成、及び、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を微小ダイポールに置き換えた構成においては、上述したように、電気的中心23から最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から最短部位27までの距離L2が等しくなっている。また、水平部11,13がx軸対称となっている。したがって、電流が流れて第1のアンテナ5から放射された電波の電磁界の影響により、水平部11,13に誘起される誘起電流15,17は、各最短部位25,27において位相が互いに等しくなっている。このような関係において、誘起電流15,17に基づく電波が第1のアンテナ5から放射された電波と干渉し、互いに打ち消し合って、放射電力が低下する部位が生じるのではないかと考えた。すなわち、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに異なるものとすれば、局部的な放射電力の低下を抑制できるのではないかと考えた。なお、最短部位25,27は、第1のアンテナ5の電気的中心23に対して最短距離に位置するので、第1のアンテナ5の電波との干渉に際して影響が大きいものと考えられる。
【0029】
そこで、本発明者は、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9を微小ダイポールに置き換えた構成において、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに逆位相(位相が180°ずれた状態)として、同様の解析を行った。その結果、図4に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、同位相の場合よりも抑制(8dB程度落ち込みを抑制)できることを見出した。このことは、図5(b)に示す電力低下部29からも明らかである。また、図5(a)と図5(b)との比較から、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに異なるもの(例えば逆位相)とすると、電力低下部29がxz面からy軸方向にずれることも見出した。本発明は、この知見に基づくものであり、以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図6は、第1実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。図7は、図6における各アンテナの位置関係を示す平面図である。なお、以下において、上述(図1〜図3)した構成と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0031】
本実施形態に係る統合アンテナ1は、その基本構造が図1に示した統合アンテナ1と同じであり、例えば90mm角のグランド板3上に、3つのアンテナ5,7,9が配置されて構成されている。
【0032】
第1のアンテナ5としては、グランド板3の一面3aに垂直な方向(天頂方向)に指向性を有するものであれば採用することができる。本実施形態においては、第1のアンテナ5として図6に示すようにスロットアンテナを採用しており、これにより、周波数(中心周波数)が2.5GHzのVICS用アンテナが構成されている。そして、第1のアンテナ5は、グランド板3の一面3aにおける中央部に配置されている。
【0033】
第2のアンテナ7としては、第1のアンテナ5とは異なる周波数で動作し、水平部11を有しているものであれば採用することができる。本実施形態においては、第2のアンテナ7として例えば図6に示すように逆L字型のモノポールアンテナを採用しており、これにより、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナが構成されている。そして、第2のアンテナ7は、グランド板3の一面3aにおける中央部周辺の周辺部に配置されている。
【0034】
第3のアンテナ9としては、第1のアンテナ5とは異なる周波数で動作し、水平部13を有しているものであれば採用することができる。本実施形態においては、第3のアンテナ9として、水平部13の先端が折り曲げられて接地された折り返しモノポールアンテナを採用しており、これにより、第2のアンテナ7同様、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナが構成されている。そして、第3のアンテナ9は、グランド板3の一面3aにおける中央部周辺の周辺部に、第2のアンテナ7との間に第1のアンテナ5を挟む態様で配置されている。すなわち、y軸方向において、第2のアンテナ7(水平部11)、第1のアンテナ5(電気的中心23)、第3のアンテナ9(水平部13)の順で配置されている。
【0035】
このように、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9は、第1のアンテナ5とは異なる周波数であって互いにほぼ等しい周波数(中心周波数)で動作するように構成されており、2つのアンテナ7,9を適宜切り替えることで、ダイバーシチ効果(例えば空間ダイバーシチ効果や指向性ダイバーシチ効果)が得られるようになっている。なお、中心周波数がほぼ同じであれば、帯域は特に限定されない。したがって、中心周波数及び帯域がほぼ同じ構成としても良いし、中心周波数が同じで帯域の異なる構成としても良い。
【0036】
また、本実施形態においても、配置スペースの制約(高さ20mm以下)を考慮し、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の垂直部19,21の長さ(高さ)が20mm程度となっており、図6及び図7に示すように、水平部11,13がグランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置されている。すなわち、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の指向性が、グランド板3の一面3aに沿う方向(水平方向)となっている。また、第1のアンテナ5の電気的中心23が、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より具体的には図7に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置されている。そして、電気的中心23から水平部11の最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から水平部13の最短部位27までの距離L2が等しくなっている。
【0037】
さらに、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ7の電気長がほぼ等しく構成されており、第2のアンテナ7における給電側の端部31(給電点)から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33(給電点)から最短部位27までの電気長とが異なる長さとなっている。そして、これにより、第2のアンテナ7における給電側の端部31とは異なる端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33とは異なる端部37から最短部位27までの電気長とが異なる長さとなっている。
【0038】
次に、このように構成される統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性について図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。図8においては、本実施形態に係る統合アンテナの測定結果を実線で示し、比較対象の測定結果を破線で示している。なお、比較対象は、本実施形態に係る統合アンテナ1を、第2のアンテナ7も第3のアンテナ9同様に折り返しモノポールアンテナとし、第2のアンテナ7における給電側の端部31とは異なる端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33とは異なる端部37から最短部位27までの電気長とが互いに等しい構成としたものである。また、測定に当たり、第1のアンテナ5の電気的中心23を、各軸の原点と一致させている。
【0039】
図8に破線で示すように、比較対象では、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力の急激な低下が確認された。これに対し、本実施形態に係る統合アンテナ1では、図8に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、比較対象よりも抑制できることが確認された。
【0040】
このように放射電力低下を抑制できる理由としては、以下のことが考えられる。第1のアンテナ5に流れる電流によって、水平部11,13には誘起電流15,17が生じる。この誘起電流15,17は、給電側とは異なる端部35,37への進行波と該端部35,37からの反射波との合成波である。したがって、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9とで、端部35,37から最短部位25,27までの電気長が異なる構成とすると、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なることとなる。これにより、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下が抑制されるものと考えられる。
【0041】
以上より、本実施形態に係る統合アンテナ1によれば、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の形状を互いに異なる形状とする例を示した。しかしながら、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9を、同一構成としても良い。例えば図9に示す統合アンテナ1においては、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9として、同一構成の逆Lアンテナを採用している。そして、水平部11,13がグランド板3の一面3aに沿う同一平面に配置され、且つ、その長手方向において互いに平行となっている。また、第1のアンテナ5の電気的中心23と各水平部11,13における最短部位25,27までの距離L1,L2が等しくなっている。さらには、給電側の端部31,33は、一方が他方に対してx軸に沿ってずれ、これにより、第2のアンテナ7における給電側の端部33から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部35から最短部位27までの電気長とが、互いに異なる長さとなっている。そして、第2のアンテナ7における端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における端部37から最短部位27までの電気長とが、異なる長さとなっている。このような構成の統合アンテナ1としても、本実施形態に示した統合アンテナ1と同様乃至はそれに準ずる効果を発揮することができる。図9は、変形例を示す平面図である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図10及び図11に基づいて説明する。図10は、第2実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。図11は、図10における各アンテナの位置関係を示す平面図である。なお、上述した構成と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0044】
第1実施形態においては、第2のアンテナ7における給電側の端部31(給電点)から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33(給電点)から最短部位27までの電気長とを異なる長さとすることで、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相を異なる位相とし、局部的に生じる放射電力の低下を抑制する例を示した。これに対し、本実施形態においては、第1のアンテナ5の電気的中心23から第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27までの距離L2とを異なる長さとすることで、局部的に生じる放射電力の低下を抑制する点を特徴とする。
【0045】
一例として図10及び図11に示すように、本実施形態に係る統合アンテナ1では、VICS用アンテナである第1のアンテナ5として、第1実施形態と同じスロットアンテナを採用している。また、DCM用アンテナである第2のアンテナ7と第3のアンテナ9として、逆Lアンテナを採用している。
【0046】
第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の水平部11,13は、グランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置され、その長手方向において、水平部11,13はx軸対称となっている。第1のアンテナ5の電気的中心23は、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より詳しくは図11に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置されている。しかしながら、本実施形態においては、電気的中心23の位置が、y軸方向において、第3のアンテナ9(水平部13)側に偏っている。すなわち、図11に示すように、電気的中心23から第2のアンテナ7の最短部位25までの距離L1が、電気的中心23から第3のアンテナ9の最短部位27までの距離L2よりも長くなっている。
【0047】
次に、このように構成される統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性について図12を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。図12においては、第2実施形態に係る統合アンテナの測定結果を実線で示し、比較対象の測定結果を破線で示している。なお、比較対象は、本実施形態に係る統合アンテナ1を、距離L1,L2が互いに等しい構成(電気的中心が各軸の原点上)としたものである。
【0048】
図11に破線で示すように、比較対象では、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力が急激に低下することが確認された。これに対し、本実施形態に係る統合アンテナ1では、図12に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、比較対象よりも抑制できることが確認された。
【0049】
このように放射電力低下を抑制できる理由としては、以下のことが考えられる。距離L1,L2が互いに異なる長さであると、電流が流れて第1のアンテナ5から放射される電波の位相は、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とで異なることとなる。また、第2のアンテナ7における端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における端部37から最短部位27までの電気長は、互いに等しい長さとなっている。したがって、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なることとなり、その結果、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下が抑制されるものと考えられる。
【0050】
また、本発明者は、電気的中心23の効果的なずれ量についても検討した。その解析結果を図13に示す。その際、図11に示すように、各軸の原点を電気的中心の基準点23aとし、基準点23aと電気的中心23とのy軸方向のずれを差Dとした。そして、差Dと、電力最大値(Max)と局部的に電力低下した部位の電力値(Min)との電力差との関係について精査した。図13に示すように、電気的中心23を基準点23aからy軸方向に少なくとも5mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上ずらすと、局部的な電力の低下を効果的に抑制することができる。
【0051】
以上より、本実施形態に係る統合アンテナ1によれば、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、第1のアンテナ5(電気的中心23)が、第3のアンテナ9(水平部13)側に偏って配置される例を示した。しかしながら、第1のアンテナ5(電気的中心23)が、第2のアンテナ7(水平部11)側に偏って配置された構成としても良い。
【0053】
また、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の構成が同一である例を示した。しかしながら、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9とを、互いに異なる形状としても良い。また、第1実施形態(変形例を含む)に示した構成と本実施形態に示した構成とを組み合わせた構成としても良い。その場合、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なるように組み合わせれば良い。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0055】
z軸方向に指向性を有する第1のアンテナ5は、y軸方向(又はx軸方向)において、少なくとも第2のアンテナ7と第3のアンテナ9との間に配置されれば良い。本実施形態においては、第2のアンテナ7の水平部11と第3のアンテナ9の水平部13が、グランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置される例を示したが、一面3aと平行でない同一平面に配置された構成(例えば垂直部19,21の長さが異なる構成や水平部11,13がグランド板3の一面3aの平行でない構成)としても良いし、同一平面に配置されない構成としても良い。また、本実施形態においては、長手方向において、水平部11,13が互いに平行である例を示したが、平行でない構成(例えばハの字状の配置)としても良い。さらには、本実施形態においては、第1のアンテナ5の電気的中心23が水平部11,13の対向領域間に配置される例を示したが、電気的中心23が水平部11,13の対向領域間に配置されない構成としても良い。
【0056】
本実施形態においては、第1のアンテナ5がVICS用アンテナであり、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9がDCM用アンテナである例を示したが、アンテナの適用例としては上記例に限定されるものではない。例えば第1のアンテナ5を、GPS用やETC用のアンテナとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】基本となる統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図2】指向性の解析に用いた統合アンテナの具体的な構成例を示す斜視図である。
【図3】図2における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図4】第1のアンテナにおけるxz面の指向性の解析結果を示す図である。
【図5】全てのアンテナを微小ダイポールとしたときの、第1のアンテナの指向性の解析結果を示す図であり、(a)は最短距離の部位における誘起電流の位相が同位相、(b)が最短距離の部位における誘起電流の位相が逆位相の場合を示している。
【図6】第1実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図8】第1実施形態に係る統合アンテナにおいて、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。
【図9】変形例を示す平面図である。
【図10】第2実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図11】図10における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図12】第2実施形態に係る統合アンテナにおいて、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。
【図13】電気的中心のずれ量と電力差との関係の解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・統合アンテナ
3・・・グランド板
5・・・第1のアンテナ
7・・・第2のアンテナ
9・・・第3のアンテナ
11,13・・・水平部
15,17・・・誘起電流
23・・・電気的中心
25,27・・・最短部位(最短距離の部位)
31,33・・・周辺部(給電側とは異なる周辺部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数で動作する複数のアンテナが同一のグランド上に配置された統合アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
異なる周波数で動作する複数のアンテナが同一のグランド上に配置された統合アンテナとして、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1に示される統合アンテナでは、グランド板の中央部付近に、天頂方向(z軸方向)に指向性を有する第1のアンテナが配置され、グランド板の端部付近に、水平方向に指向性を有する第2のアンテナが配置されている。
【特許文献1】特開2005−260566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される統合アンテナに対し、例えば第2のアンテナと同一構成の第3のアンテナが、第1のアンテナを間に挟んで第2のアンテナと対称配置(x軸対称の配置)とされ、第2のアンテナと第3のアンテナとがダイバーシチアンテナとすることで、感度の向上を図るようにした統合アンテナが考えられる。
【0005】
しかしながら、本発明者が確認したところ、このような構造の統合アンテナでは、第1のアンテナがグランド板の中央部付近に配置されているにも関わらず、第1のアンテナのxz面の指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じることが明らかとなった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる統合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
詳細は後述するが、本発明者は、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じる原因が、第1のアンテナに流れる電流によって、第1のアンテナを間に挟んで配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナの各水平部に誘起電流が生じ、この誘起電流による電波が第1のアンテナの電波と干渉することによるものとの考えに至った。具体的には、第2のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相が同位相であると、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に放射電力が急激に低下する部位が生じることを確認した。
【0008】
この知見に基づき、請求項1に記載の発明は、グランド板と、グランド板の一面上における中央部に配置され、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、第2のアンテナ及び第3のアンテナは、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、第2のアンテナと第3のアンテナとで異なることを特徴とする。
【0009】
このように本発明では、グランド板の中央部に、グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナを配置している。したがって、従来同様、第1のアンテナの指向性のピークをほぼ垂直方向とすることができる。
【0010】
また、水平部を有する第2のアンテナ及び第3のアンテナには、第1のアンテナに流れる電流(電流に伴う放射された電波)によって誘起された誘起電流が流れることとなる。これに対し、本発明では、第2のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相が異なるようにしている。したがって、垂直方向に指向性を有する第1のアンテナがグランド板の中央部に配置され、第1のアンテナとは動作周波数の異なる第2のアンテナ及び第3のアンテナが、第1のアンテナを間に挟むように配置された構成でありながら、第1のアンテナの指向性において、仰角方向に局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0011】
なお、グランド板の一面に沿う成分を含む水平部としては、グランド板の一面と平行な形態に限定されず、グランド板の一面とのなす角度が90°以外の形態(垂直以外の形態)とすれば良い。このような形態であれば、第1のアンテナに流れる電流によって誘起電流が生じることとなる。
【0012】
具体的には、請求項2に記載のように、第2のアンテナにおける給電側とは異なる端部から最短距離の部位までの電気長と、第3のアンテナにおける給電側とは異なる端部から最短距離の部位までの電気長とが異なる構成としても良い。
【0013】
誘起電流は、給電側とは異なる端部への進行波と端部からの反射波との合成波である。したがって、第2のアンテナと第3のアンテナとで、端部から最短距離の部位までの電気長が異なる構成とすると、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相を異なるものとすることができる。その際、例えば請求項3に記載のように、第2のアンテナの形状と第3のアンテナの形状を互いに異なるものとしても良い。
【0014】
また、請求項4に記載のように、第1のアンテナの電気的中心から第2のアンテナの水平部までの最短距離と、第1のアンテナの電気的中心から第3のアンテナの水平部までの最短距離とが異なる構成としても良い。
【0015】
このような構成とすると、第1のアンテナから放射された電波の位相が、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とで異なることとなる。これにより、第2のアンテナの水平部における最短距離の部位と、第3のアンテナの水平部における最短距離の部位とにおいて、誘起電流の位相を異なるものとすることができる。
【0016】
請求項5に記載のように、水平部の長手方向において、第2のアンテナの水平部と第3のアンテナの水平部とが略平行とされた構成とすると良い。さらには、請求項6に記載のように、第2のアンテナの水平部と第3のアンテナの水平部とが、グランド板の一面に平行な同一平面に配置された構成とすると良い。このような構成とすると、アンテナの構造や配置を簡素化することができる。そして、統合アンテナの体格を小型化することも可能である。
【0017】
また、請求項1〜6いずれかに記載の発明においては、請求項7に記載のように、第1のアンテナとして、VICS用アンテナ、GPS用アンテナ、及びETC用アンテナのいずれかを採用し、第2のアンテナ及び第3のアンテナとしてDCM用アンテナを採用した構成としても良い。これによれば、車両に搭載される統合アンテナとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
先ず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が本発明を創作するに至った経緯を説明する。図1は、後述する実施形態においても基本となる統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【0019】
図1に示す統合アンテナ1では、グランド板3の一面3aの中央部に、一面3aに対して垂直方向に指向性(換言すれば、天頂方向に指向性)を有する第1のアンテナ5が配置されている。
【0020】
このように、グランド板3の一面3aに対して垂直方向(z軸方向)に指向性を有する第1のアンテナ5をグランド板3の中央部に配置すると、第1のアンテナ5の指向性のピークをほぼ垂直方向とすることができる。この点については、本出願人による特開2005−260566号公報に記載されているので、ここでの説明は省略する。
【0021】
また、グランド板3の一面3aの中央部周辺に位置する周辺部には、第1のアンテナ5を間に挟む態様(y軸方向において、間に挟む態様)で第2のアンテナ7と第3のアンテナ9が配置されている。第2のアンテナ7と第3のアンテナ9は、第1のアンテナ5とは異なる周波数であって互いにほぼ等しい周波数で動作するように構成されており、2つのアンテナ7,9を適宜切り替えることで、ダイバーシチ効果(例えば空間ダイバーシチ効果)が得られるようになっている。
【0022】
また、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9は、グランド板3の一面3aに沿う成分を含む水平部11,13をそれぞれ有している。ここで、水平部11,13とは、アンテナ7,9(を構成する各エレメント)のうち、グランド板3の一面3aとのなす角度が90°以外(垂直以外)の部分である。すなわち、水平部11,13とは、第1のアンテナに流れる電流によって誘起電流15,17が生じる部分である。
【0023】
このような構成の統合アンテナ1について、本発明者は詳細な検討を行った。図2は、指向性の解析に用いた統合アンテナの具体的な構成例を示す斜視図である。図3は、図2における各アンテナの位置関係を示す平面図である。図4は、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の解析結果を示す図である。図4においては、第1のアンテナ5を微小ダイポールとしたものを破線で、破線に示す構成に対し第2のアンテナ及び第3のアンテナも微小ダイポールとし、最短距離の部位における誘起電流の位相を同位相としたものを一点鎖線で、一点鎖線に示す構成に対し誘起電流の位相を逆位相としたものを実線で示している。図5は、全てのアンテナを微小ダイポールとしたときの、第1のアンテナの指向性の解析結果を示す図であり、(a)は最短距離の部位における誘起電流の位相が同位相、(b)が最短距離の部位における誘起電流の位相が逆位相の場合である。
【0024】
検討に当たり、第1のアンテナ5を、周波数(中心周波数)が2.5GHzのVICS用アンテナとし、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナとした。そして、配置スペースの制約(例えば高さ20mm以下)を考慮し、図2に示すように、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9として、同一構成の逆Lアンテナ(逆L字状のモノポールアンテナ)を採用した。具体的には、グランド板3の垂直な垂直部19,21(換言すればモノポール部)の長さ(高さ)を20mm程度とし、水平部11,13(換言すれば、伝送線路部)の長さを70mm程度した。また、逆Lアンテナの主偏波を垂直偏波とするために、給電位置をグランド板3の端部(端面)から15mm以上離れた位置とした。そして、図2及び図3に示すように、水平部11,13をグランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置し、その長手方向において、x軸を中線として水平部11,13同士が完全に対向するように互いに平行に配置した。すなわち、水平部11,13をx軸対称(線対称)の配置とした。
【0025】
また、解析を簡素化するために、第1のアンテナ5を微小ダイポールとし、図3に示すように、第1のアンテナ5の電気的中心23(電気長の中心)を、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より詳しくは図3に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置した。そして、第1のアンテナ5の電気的中心23を、各軸の原点と一致させた。すなわち、水平部11における電気的中心23から最短距離の部位25(以下、最短部位25と示す)までの距離L1と、水平部13における電気的中心23から最短距離の部位27(以下、最短部位27と示す)までの距離L2とが、互いに等しい構成とした。
【0026】
このような構成の統合アンテナ1について指向性の解析を行ったところ、図4に破線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力が急激に低下する部位が生じることが明らかとなった。なお、仰角とは、グランド板3の一面3aに沿うx軸方向(水平方向)を0°としたときの角度である。
【0027】
次に、本発明者は、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を、水平部11,13と同位置の微小ダイポールに置き換えて、同様の解析を行った。その結果、図4に一点鎖線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で逆Lアンテナと同程度の放射電力の低下が確認された。このことは、図5(a)からも明らかである。なお、図5(a)に示す符号29は、局部的な電力低下部である。このように、微小ダイポールに置き換えた場合にも、逆Lアンテナと同様の結果を示した。すなわち、微小ダイポールへの置き換えで、逆Lアンテナの結果を再現することができた。
【0028】
図2及び図3に示す構成、及び、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9を微小ダイポールに置き換えた構成においては、上述したように、電気的中心23から最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から最短部位27までの距離L2が等しくなっている。また、水平部11,13がx軸対称となっている。したがって、電流が流れて第1のアンテナ5から放射された電波の電磁界の影響により、水平部11,13に誘起される誘起電流15,17は、各最短部位25,27において位相が互いに等しくなっている。このような関係において、誘起電流15,17に基づく電波が第1のアンテナ5から放射された電波と干渉し、互いに打ち消し合って、放射電力が低下する部位が生じるのではないかと考えた。すなわち、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに異なるものとすれば、局部的な放射電力の低下を抑制できるのではないかと考えた。なお、最短部位25,27は、第1のアンテナ5の電気的中心23に対して最短距離に位置するので、第1のアンテナ5の電波との干渉に際して影響が大きいものと考えられる。
【0029】
そこで、本発明者は、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9を微小ダイポールに置き換えた構成において、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに逆位相(位相が180°ずれた状態)として、同様の解析を行った。その結果、図4に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、同位相の場合よりも抑制(8dB程度落ち込みを抑制)できることを見出した。このことは、図5(b)に示す電力低下部29からも明らかである。また、図5(a)と図5(b)との比較から、最短部位25,27における誘起電流15,17の位相を互いに異なるもの(例えば逆位相)とすると、電力低下部29がxz面からy軸方向にずれることも見出した。本発明は、この知見に基づくものであり、以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図6は、第1実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。図7は、図6における各アンテナの位置関係を示す平面図である。なお、以下において、上述(図1〜図3)した構成と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0031】
本実施形態に係る統合アンテナ1は、その基本構造が図1に示した統合アンテナ1と同じであり、例えば90mm角のグランド板3上に、3つのアンテナ5,7,9が配置されて構成されている。
【0032】
第1のアンテナ5としては、グランド板3の一面3aに垂直な方向(天頂方向)に指向性を有するものであれば採用することができる。本実施形態においては、第1のアンテナ5として図6に示すようにスロットアンテナを採用しており、これにより、周波数(中心周波数)が2.5GHzのVICS用アンテナが構成されている。そして、第1のアンテナ5は、グランド板3の一面3aにおける中央部に配置されている。
【0033】
第2のアンテナ7としては、第1のアンテナ5とは異なる周波数で動作し、水平部11を有しているものであれば採用することができる。本実施形態においては、第2のアンテナ7として例えば図6に示すように逆L字型のモノポールアンテナを採用しており、これにより、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナが構成されている。そして、第2のアンテナ7は、グランド板3の一面3aにおける中央部周辺の周辺部に配置されている。
【0034】
第3のアンテナ9としては、第1のアンテナ5とは異なる周波数で動作し、水平部13を有しているものであれば採用することができる。本実施形態においては、第3のアンテナ9として、水平部13の先端が折り曲げられて接地された折り返しモノポールアンテナを採用しており、これにより、第2のアンテナ7同様、周波数(中心周波数)が860MHzのDCM用アンテナが構成されている。そして、第3のアンテナ9は、グランド板3の一面3aにおける中央部周辺の周辺部に、第2のアンテナ7との間に第1のアンテナ5を挟む態様で配置されている。すなわち、y軸方向において、第2のアンテナ7(水平部11)、第1のアンテナ5(電気的中心23)、第3のアンテナ9(水平部13)の順で配置されている。
【0035】
このように、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9は、第1のアンテナ5とは異なる周波数であって互いにほぼ等しい周波数(中心周波数)で動作するように構成されており、2つのアンテナ7,9を適宜切り替えることで、ダイバーシチ効果(例えば空間ダイバーシチ効果や指向性ダイバーシチ効果)が得られるようになっている。なお、中心周波数がほぼ同じであれば、帯域は特に限定されない。したがって、中心周波数及び帯域がほぼ同じ構成としても良いし、中心周波数が同じで帯域の異なる構成としても良い。
【0036】
また、本実施形態においても、配置スペースの制約(高さ20mm以下)を考慮し、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の垂直部19,21の長さ(高さ)が20mm程度となっており、図6及び図7に示すように、水平部11,13がグランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置されている。すなわち、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の指向性が、グランド板3の一面3aに沿う方向(水平方向)となっている。また、第1のアンテナ5の電気的中心23が、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より具体的には図7に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置されている。そして、電気的中心23から水平部11の最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から水平部13の最短部位27までの距離L2が等しくなっている。
【0037】
さらに、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ7の電気長がほぼ等しく構成されており、第2のアンテナ7における給電側の端部31(給電点)から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33(給電点)から最短部位27までの電気長とが異なる長さとなっている。そして、これにより、第2のアンテナ7における給電側の端部31とは異なる端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33とは異なる端部37から最短部位27までの電気長とが異なる長さとなっている。
【0038】
次に、このように構成される統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性について図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。図8においては、本実施形態に係る統合アンテナの測定結果を実線で示し、比較対象の測定結果を破線で示している。なお、比較対象は、本実施形態に係る統合アンテナ1を、第2のアンテナ7も第3のアンテナ9同様に折り返しモノポールアンテナとし、第2のアンテナ7における給電側の端部31とは異なる端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33とは異なる端部37から最短部位27までの電気長とが互いに等しい構成としたものである。また、測定に当たり、第1のアンテナ5の電気的中心23を、各軸の原点と一致させている。
【0039】
図8に破線で示すように、比較対象では、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力の急激な低下が確認された。これに対し、本実施形態に係る統合アンテナ1では、図8に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、比較対象よりも抑制できることが確認された。
【0040】
このように放射電力低下を抑制できる理由としては、以下のことが考えられる。第1のアンテナ5に流れる電流によって、水平部11,13には誘起電流15,17が生じる。この誘起電流15,17は、給電側とは異なる端部35,37への進行波と該端部35,37からの反射波との合成波である。したがって、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9とで、端部35,37から最短部位25,27までの電気長が異なる構成とすると、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なることとなる。これにより、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下が抑制されるものと考えられる。
【0041】
以上より、本実施形態に係る統合アンテナ1によれば、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の形状を互いに異なる形状とする例を示した。しかしながら、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9を、同一構成としても良い。例えば図9に示す統合アンテナ1においては、第2のアンテナ7及び第3のアンテナ9として、同一構成の逆Lアンテナを採用している。そして、水平部11,13がグランド板3の一面3aに沿う同一平面に配置され、且つ、その長手方向において互いに平行となっている。また、第1のアンテナ5の電気的中心23と各水平部11,13における最短部位25,27までの距離L1,L2が等しくなっている。さらには、給電側の端部31,33は、一方が他方に対してx軸に沿ってずれ、これにより、第2のアンテナ7における給電側の端部33から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部35から最短部位27までの電気長とが、互いに異なる長さとなっている。そして、第2のアンテナ7における端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における端部37から最短部位27までの電気長とが、異なる長さとなっている。このような構成の統合アンテナ1としても、本実施形態に示した統合アンテナ1と同様乃至はそれに準ずる効果を発揮することができる。図9は、変形例を示す平面図である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図10及び図11に基づいて説明する。図10は、第2実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。図11は、図10における各アンテナの位置関係を示す平面図である。なお、上述した構成と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0044】
第1実施形態においては、第2のアンテナ7における給電側の端部31(給電点)から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における給電側の端部33(給電点)から最短部位27までの電気長とを異なる長さとすることで、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相を異なる位相とし、局部的に生じる放射電力の低下を抑制する例を示した。これに対し、本実施形態においては、第1のアンテナ5の電気的中心23から第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25までの距離L1と、電気的中心23から第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27までの距離L2とを異なる長さとすることで、局部的に生じる放射電力の低下を抑制する点を特徴とする。
【0045】
一例として図10及び図11に示すように、本実施形態に係る統合アンテナ1では、VICS用アンテナである第1のアンテナ5として、第1実施形態と同じスロットアンテナを採用している。また、DCM用アンテナである第2のアンテナ7と第3のアンテナ9として、逆Lアンテナを採用している。
【0046】
第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の水平部11,13は、グランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置され、その長手方向において、水平部11,13はx軸対称となっている。第1のアンテナ5の電気的中心23は、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の間、より詳しくは図11に破線で囲まれた水平部11と水平部13の対向領域内に配置されている。しかしながら、本実施形態においては、電気的中心23の位置が、y軸方向において、第3のアンテナ9(水平部13)側に偏っている。すなわち、図11に示すように、電気的中心23から第2のアンテナ7の最短部位25までの距離L1が、電気的中心23から第3のアンテナ9の最短部位27までの距離L2よりも長くなっている。
【0047】
次に、このように構成される統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性について図12を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る統合アンテナ1において、第1のアンテナ5におけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。図12においては、第2実施形態に係る統合アンテナの測定結果を実線で示し、比較対象の測定結果を破線で示している。なお、比較対象は、本実施形態に係る統合アンテナ1を、距離L1,L2が互いに等しい構成(電気的中心が各軸の原点上)としたものである。
【0048】
図11に破線で示すように、比較対象では、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近で放射電力が急激に低下することが確認された。これに対し、本実施形態に係る統合アンテナ1では、図12に実線で示すように、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下を、比較対象よりも抑制できることが確認された。
【0049】
このように放射電力低下を抑制できる理由としては、以下のことが考えられる。距離L1,L2が互いに異なる長さであると、電流が流れて第1のアンテナ5から放射される電波の位相は、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とで異なることとなる。また、第2のアンテナ7における端部35から最短部位25までの電気長と、第3のアンテナ9における端部37から最短部位27までの電気長は、互いに等しい長さとなっている。したがって、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なることとなり、その結果、第1のアンテナ5のxz面の指向性において、仰角60°付近での放射電力低下が抑制されるものと考えられる。
【0050】
また、本発明者は、電気的中心23の効果的なずれ量についても検討した。その解析結果を図13に示す。その際、図11に示すように、各軸の原点を電気的中心の基準点23aとし、基準点23aと電気的中心23とのy軸方向のずれを差Dとした。そして、差Dと、電力最大値(Max)と局部的に電力低下した部位の電力値(Min)との電力差との関係について精査した。図13に示すように、電気的中心23を基準点23aからy軸方向に少なくとも5mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上ずらすと、局部的な電力の低下を効果的に抑制することができる。
【0051】
以上より、本実施形態に係る統合アンテナ1によれば、局部的に生じる放射電力の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、第1のアンテナ5(電気的中心23)が、第3のアンテナ9(水平部13)側に偏って配置される例を示した。しかしながら、第1のアンテナ5(電気的中心23)が、第2のアンテナ7(水平部11)側に偏って配置された構成としても良い。
【0053】
また、本実施形態においては、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9の構成が同一である例を示した。しかしながら、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9とを、互いに異なる形状としても良い。また、第1実施形態(変形例を含む)に示した構成と本実施形態に示した構成とを組み合わせた構成としても良い。その場合、第2のアンテナ7の水平部11における最短部位25と、第3のアンテナ9の水平部13における最短部位27とにおいて、誘起電流15,17の位相が異なるように組み合わせれば良い。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0055】
z軸方向に指向性を有する第1のアンテナ5は、y軸方向(又はx軸方向)において、少なくとも第2のアンテナ7と第3のアンテナ9との間に配置されれば良い。本実施形態においては、第2のアンテナ7の水平部11と第3のアンテナ9の水平部13が、グランド板3の一面3aと平行な同一平面に配置される例を示したが、一面3aと平行でない同一平面に配置された構成(例えば垂直部19,21の長さが異なる構成や水平部11,13がグランド板3の一面3aの平行でない構成)としても良いし、同一平面に配置されない構成としても良い。また、本実施形態においては、長手方向において、水平部11,13が互いに平行である例を示したが、平行でない構成(例えばハの字状の配置)としても良い。さらには、本実施形態においては、第1のアンテナ5の電気的中心23が水平部11,13の対向領域間に配置される例を示したが、電気的中心23が水平部11,13の対向領域間に配置されない構成としても良い。
【0056】
本実施形態においては、第1のアンテナ5がVICS用アンテナであり、第2のアンテナ7と第3のアンテナ9がDCM用アンテナである例を示したが、アンテナの適用例としては上記例に限定されるものではない。例えば第1のアンテナ5を、GPS用やETC用のアンテナとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】基本となる統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図2】指向性の解析に用いた統合アンテナの具体的な構成例を示す斜視図である。
【図3】図2における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図4】第1のアンテナにおけるxz面の指向性の解析結果を示す図である。
【図5】全てのアンテナを微小ダイポールとしたときの、第1のアンテナの指向性の解析結果を示す図であり、(a)は最短距離の部位における誘起電流の位相が同位相、(b)が最短距離の部位における誘起電流の位相が逆位相の場合を示している。
【図6】第1実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図8】第1実施形態に係る統合アンテナにおいて、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。
【図9】変形例を示す平面図である。
【図10】第2実施形態に係る統合アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図11】図10における各アンテナの位置関係を示す平面図である。
【図12】第2実施形態に係る統合アンテナにおいて、第1のアンテナにおけるxz面の指向性の測定結果を示す図である。
【図13】電気的中心のずれ量と電力差との関係の解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・統合アンテナ
3・・・グランド板
5・・・第1のアンテナ
7・・・第2のアンテナ
9・・・第3のアンテナ
11,13・・・水平部
15,17・・・誘起電流
23・・・電気的中心
25,27・・・最短部位(最短距離の部位)
31,33・・・周辺部(給電側とは異なる周辺部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド板と、
前記グランド板の一面上における中央部に配置され、前記グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、
前記第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、前記グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に前記第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、
前記第2のアンテナ及び前記第3のアンテナは、前記グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、
前記水平部における前記第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、前記第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、前記第2のアンテナと前記第3のアンテナとで異なることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項2】
前記第2のアンテナにおける給電側とは異なる端部から前記最短距離の部位までの電気長と、前記第3のアンテナにおける給電側とは異なる端部から前記最短距離の部位までの電気長とが異なることを特徴とする請求項1に記載の統合アンテナ。
【請求項3】
前記第2のアンテナの形状と前記第3のアンテナの形状が互いに異なることを特徴とする請求項2に記載の統合アンテナ。
【請求項4】
前記第1のアンテナの電気的中心から前記第2のアンテナの水平部までの最短距離と、前記第1のアンテナの電気的中心から前記第3のアンテナの水平部までの最短距離とが異なることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項5】
前記水平部の長手方向において、前記第2のアンテナの水平部と前記第3のアンテナの水平部とが略平行とされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項6】
前記第2のアンテナの水平部と前記第3のアンテナの水平部とが、前記グランド板の一面に平行な同一平面に配置されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項7】
前記第1のアンテナは、VICS用アンテナ、GPS用アンテナ、及びETC用アンテナのいずれかであり、
前記第2のアンテナ及び前記第3のアンテナは、DCM用アンテナであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項1】
グランド板と、
前記グランド板の一面上における中央部に配置され、前記グランド板の一面に垂直な方向に指向性を有する第1のアンテナと、
前記第1のアンテナとは異なる周波数であって互いに略同一の周波数で動作し、前記グランド板の一面上における中央部周辺の周辺部に、お互いの間に前記第1のアンテナを挟む態様で配置された第2のアンテナ及び第3のアンテナと、を備える統合アンテナであって、
前記第2のアンテナ及び前記第3のアンテナは、前記グランド板の一面に沿う成分を含む水平部をそれぞれ有し、
前記水平部における前記第1のアンテナの電気的中心から最短距離の部位において、前記第1のアンテナに流れる電流によって誘起される誘起電流の位相が、前記第2のアンテナと前記第3のアンテナとで異なることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項2】
前記第2のアンテナにおける給電側とは異なる端部から前記最短距離の部位までの電気長と、前記第3のアンテナにおける給電側とは異なる端部から前記最短距離の部位までの電気長とが異なることを特徴とする請求項1に記載の統合アンテナ。
【請求項3】
前記第2のアンテナの形状と前記第3のアンテナの形状が互いに異なることを特徴とする請求項2に記載の統合アンテナ。
【請求項4】
前記第1のアンテナの電気的中心から前記第2のアンテナの水平部までの最短距離と、前記第1のアンテナの電気的中心から前記第3のアンテナの水平部までの最短距離とが異なることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項5】
前記水平部の長手方向において、前記第2のアンテナの水平部と前記第3のアンテナの水平部とが略平行とされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項6】
前記第2のアンテナの水平部と前記第3のアンテナの水平部とが、前記グランド板の一面に平行な同一平面に配置されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項7】
前記第1のアンテナは、VICS用アンテナ、GPS用アンテナ、及びETC用アンテナのいずれかであり、
前記第2のアンテナ及び前記第3のアンテナは、DCM用アンテナであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の統合アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−33571(P2009−33571A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196587(P2007−196587)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]