説明

絶縁トロリー線集電装置

【課題】集電子が複数の絶縁トロリー線間を移る際、その集電子片が乗り移る先の絶縁トロリー線の溝内に確実に安定して収容することが可能な絶縁トロリー線集電装置を提供する。
【解決手段】移動する負荷Fに取付けられる集電子1を造営材Zに取付けられる絶縁トロリー線2に摺接させて前記移動する負荷Fに電気を供給する絶縁トロリー線集電装置である。集電子1は、絶縁トロリー線2に摺接する集電子片11と、集電子片11に設けられる軸30を受ける集電子1側の回転座3と、負荷Fに設けられる軸40を受ける負荷F側の回転座4と、両端部が前記集電子1側の回転座3と負荷F側の回転座4とにそれぞれ回動可能に連結されるアーム5と、を備え、アーム5の側面の両側から弾性的に当接して該アーム5および負荷F側の回転座4が前記負荷Fに設けられる軸40の回りに回転するのを抑えるばね片60を有する回転抑制部6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンやホイスト等の移動する負荷に電気を供給する絶縁トロリー線集電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーンやホイスト等の移動する負荷に電気を供給する絶縁トロリー線集電装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。絶縁トロリー線集電装置は、天井等の造営材に取付けられる絶縁トロリー線と、移動する負荷に取付けられる集電子とで主体が構成され、集電子が絶縁トロリー線の導体に摺接して、導体から集電子を介して移動する負荷に電気を供給するものである。集電子は、絶縁トロリー線に摺接する集電子片と、集電子片に設けられる軸を受ける集電子側の回転座と、負荷に設けられる軸を受ける負荷側の回転座と、両端部が前記集電子側の回転座と負荷側の回転座とにそれぞれ回動可能に連結されるアームと、を備えている。
【0003】
この集電子は、移動する負荷に追従しながら絶縁トロリー線に摺接するのであるが、負荷の移動経路と絶縁トロリー線の配置経路とは一致しないため、集電子が絶縁トロリー線から外れることがないように、移動する負荷に対して位置および向きが可動となるように上記のような構成とするものである。
【0004】
絶縁トロリー線は、移動する負荷の移動経路に沿って配置されるが、種々の制約から、連続した一つの絶縁トロリー線ではなく、所々で分断された複数の絶縁トロリー線で構成されることが一般的に良く行われている。この場合、集電子は、分断された複数の絶縁トロリー線間を移って摺接する必要がある。
【0005】
絶縁トロリー線は、絶縁枠体に形成される溝の底部に導体を配置して構成してあり、前記溝の内壁が集電子片のガイドとなる。集電子が、一絶縁トロリー線から、別の分断されている絶縁トロリー線へと乗り移る場合には、その集電子片が乗り移る先の絶縁トロリー線の溝内に収容される必要があるが、集電子は上述したように負荷に対して位置および角度が一定の範囲内で可動となっていて、集電子片が乗り移る先の絶縁トロリー線の溝内に確実に収容され得ないものであった。
【特許文献1】実公平7−22965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、集電子が複数の絶縁トロリー線間を移る際、その集電子片が乗り移る先の絶縁トロリー線の溝内に確実に安定して収容することが可能な絶縁トロリー線集電装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係るにあっては、移動する負荷Fに取付けられる集電子1を造営材Zに取付けられる絶縁トロリー線2に摺接させて前記移動する負荷Fに電気を供給する絶縁トロリー線集電装置であって、集電子1は、絶縁トロリー線2に摺接する集電子片11と、集電子片11に設けられる軸30を受ける集電子1側の回転座3と、負荷Fに設けられる軸40を受ける負荷F側の回転座4と、両端部が前記集電子1側の回転座3と負荷F側の回転座4とにそれぞれ回動可能に連結されるアーム5と、を備え、アーム5の側面の両側から弾性的に当接して該アーム5および負荷F側の回転座4が前記負荷Fに設けられる軸40の回りに回転するのを抑えるばね片60を有する回転抑制部6を設けて成ることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、回転抑制部6によって集電子1(すなわち負荷F側の回転座4、アーム5、集電子1側の回転座3、集電子片11)が負荷Fに設けられる軸40回りに回転して集電子片11が下向きとなってしまうのを抑えて、集電子片11の姿勢を維持することができ、これによって乗り移る先の絶縁トロリー線2の溝22内に確実に安定して収容することが可能となるものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、両側のばね片60間から脱したアーム5をばね片60間に入れるのをガイドする曲げ部62をばね片60の端部に設けて成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、回転抑制部6のばね片60間から脱したアーム5がばね片60の先端部から再び両ばね片60間に入り易くなるものである。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、一方のばね片60の曲げ部62を一方の半部に形成すると共に、他方のばね片60の曲げ部62を他方の半部に形成して成ることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、隣接する回転抑制部6のばね片60が互いに当接するようにして固定しても、当接するばね片60の曲げ部62が干渉するのを回避することが可能となる。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、回転抑制部6を、両ばね片60と該両ばね片60を連結する連結片61とからなる上方に開口する略コ字状に形成して、該連結片61に固着具挿通穴61aを穿設し、負荷Fに、該負荷Fの表面に取付けられる取付片71と、取付片71から負荷Fの表面から離れる方向に突出する少なくとも二つの突出片72と、少なくとも二つの突出片72の突出端部間に架設されると共に固着穴73aが穿設される被着片73とからなる取付ベース7を固定し、回転抑制部6の連結片61の固着具挿通穴61aを取付ベース7の被着片73の固着穴73aに連通させて、負荷Fに設けられる軸40に形成した雄ねじ部41を前記連通した固着具挿通穴61aと固着穴73aとに挿通すると共に、雄ねじ部41にナット42を螺着して前記軸40を取付ベース7に締結固定して成ることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成とすることで、集電子1を取付ベース7に取付けるための固着具(雄ねじ部41とナット42)で回転抑制部6を取付けることができて、回転抑制部6を取付ベース7に取付けるための固着具を別に設ける必要がないと共に、回転抑制部6の取付ベース7に対する位置決めも容易に行うことが可能となるものである。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、取付ベース7の被着片73に複数の固着穴73aを並設すると共に、各固着穴73aに対応する回転抑制部6をそれぞれ隣接する回転抑制部6のばね片60が当接するように取付けて成ることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成とすることで、隣接して当接する各回転抑制部6が互いに回転抑制部6が回転するのを防止することとなり、各回転抑制部6の回転防止のための手段を特に設ける必要がないものである。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、集電子片11を集電子片ケーシング10に設けると共に、集電子1側の回転座3に受けられる軸30を前記集電子片ケーシング10に回動自在に枢支し、負荷F側の回転座4と集電子片ケーシング10とを自在に伸長して復元力が生じるセンタリング部材8で連結して成ることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成とすることで、センタリング部材8の復元力によって集電子片11の向きを維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、集電子が負荷側に固定される軸回りに回転して、集電子片が下向きとなってしまうのを抑えて、集電子片が所定の方向を向くように姿勢を維持することができて、乗り移る先の絶縁トロリー線の溝内に確実に安定して収容することが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0021】
絶縁トロリー線装置は、図1〜図3に示すように、クレーンやホイストといった搬送機をはじめとする移動する負荷Fに電気を供給するための装置であって、天井等の造営材Zに固定される絶縁トロリー線2と、移動する負荷Fに取付けられる集電子1とで主体が構成される。
【0022】
絶縁トロリー線2は、図4に示すように、断面コ字状をした長尺の絶縁枠体20内の溝22の底部に、長手方向の全長に亘って長尺の給電体としての導体21を内装して構成してあり、天井等の造営材ZにハンガーH等を介して吊り下げ固定され、負荷Fの移動経路に沿って配置される。なお、絶縁トロリー線2を造営材Zに固定するにあたっては、図1〜図3や図5(a)に示すようにハンガーHを介して吊り下げ固定するものに限定されない。この絶縁トロリー線2は、通常は複数本(本実施形態では4本)平行に並設すると共に、負荷Fに前記各絶縁トロリー線2に対応する集電子1をそれぞれ設けるものである。
【0023】
また絶縁トロリー線2は、負荷Fの移動経路や配置される部屋等の種々の制約から、長手方向に複数に分断してあって、分断した複数の絶縁トロリー線2間を集電子1が乗り移って移動するように設けられることが一般的に良く行われている。絶縁トロリー線2の端部には、集電子1の後述する集電子片11が乗り入れ易いように、ピックアップガイド27が設けてある。ピックアップガイド27は、絶縁トロリー線2の端部に接続されるピックアップ本体28で主体が構成されるもので、ピックアップ本体28は天井等の造営材Zに取付けられる取付ベース25にピックアップガイド取付ねじ26によって取り付けて支持される。本実施形態ではピックアップ本体28は、並設している複数本の絶縁トロリー線2の絶縁枠体20の溝22に対応するガイド溝28aをそれぞれ形成していると共に、ガイド溝28aに誘い込むためのガイド溝28aよりも幅広の誘い込み溝28bをガイド溝28aの溝22方向の外側に形成してある。
【0024】
集電子1は、絶縁トロリー線2の導体21と摺接する集電子片11を備え、集電子片11に接続されるリード線12を介して導体21からの電気を負荷Fに供給するものである。集電子1は負荷Fに対して位置(上下位置、左右位置、前後位置)および角度が一定の範囲内で可動となっていて、移動する負荷Fに追従しながら集電子片11が絶縁トロリー線2の導体21から外れないように摺接させることを可能とするもので、本実施形態では集電子片11の絶縁トロリー線2と摺接しない側の端部を集電子片ケーシング10に収容すると共に、集電子片ケーシング10を移動する負荷Fに対して可動としてある。集電子片ケーシング10には、集電子片11が露出する側と反対側の端部に、後述する回転座に挿通される軸30の端部が枢支される枢支部13が形成してあり、この枢支部13に軸30の端部が枢支されて集電子片ケーシング10に対して回動可能となっている。そして、前記軸30を受ける回転座(これを集電子1側の回転座3とする)と、一端が前記集電子1側の回転座3に回動自在に軸支されると共に他端が別の回転座(これを負荷F側の回転座4とする)に回動自在に軸支されるアーム5と、前記負荷F側の回転座4が固定されると共に負荷Fに取付けられる後述する取付ベース7と、上記集電子片ケーシング10および軸30とで集電子1の主体が構成される。
【0025】
集電子1側の回転座3は、集電子片ケーシング10に枢支される軸30が挿入される略筒状をしたもので、内部に挿入された前記軸30および集電子片ケーシング10が該集電子1側の回転座3内で軸30回りに回転自在となっている。軸30は抜け止め手段(図示せず)を備えており、集電子1側の回転座3から抜け落ちるのが防止されている。また集電子1側の回転座3および後述する負荷F側の回転座4には、外側面にアーム5の端部を枢支する枢支部31が突設してある。枢支部31は、各回転座3、4の筒状の側面から互いに相手の回転座4、3を向く方に向けて突出しており、この枢支部31には該枢支部31の突出方向と直交し且つ回転座3、4の筒方向(内部に挿入される軸30方向)と直交する方向に貫通する枢支穴32が形成してあり、この枢支穴32にアーム5の長手方向の端部に形成される支軸50が挿通される。アーム5に形成される前記支軸50は、アーム5の長手方向の両端部に該長手方向と直交する方向を向くように且つ両端部の支軸50が平行となるように形成してある。そして、アーム5の集電子1側の端部の支軸50を前記集電子1側の回転座3の枢支部31の枢支穴32に挿通すると共に、アーム5の負荷F側の端部の支軸50を前記負荷F側の回転座4の枢支部31の枢支穴32に挿通してあり、これにより、アーム5は両側の回転座3、4に対して回動自在に枢支されている。さらに本実施形態では、両回転座に枢支部31およびその枢支穴32が筒方向に並ぶように二個並設してあると共に、両回転座3、4の枢支部31間にそれぞれアーム5を上述したように設けることで計二本の同じ長さのアーム5を設けてあり、これにより両回転座3、4は互いに平行を保ったままアーム5と回転座3、4の為す角度が変化自在となって両回転座3、4が互いに筒方向に平行移動することができる。
【0026】
負荷F側の回転座4は、負荷Fに取付られる取付ベース7に固定される軸40が内部に挿通される略筒状をしたもので、上述した集電子1側の回転座3と略同様の形状をしている。図7(a)に示すように集電子1すなわち、負荷F側の回転座4、アーム5、集電子1側の回転座3、集電子片ケーシング10が負荷F側に固定される軸40回りに回転自在となっている。負荷F側に固定される軸40は抜け止め手段(図示せず)を備えており、負荷F側の回転座4から抜け落ちるのが防止されている。
【0027】
負荷Fに取付けられる取付ベース7は、負荷Fの表面に取付けられる取付片71と、取付片71から負荷Fの表面から離れる方向に突出する少なくとも二つの突出片72と、少なくとも二つの突出片72の突出端部間に架設される被着片73とからなるもので、本実施形態では、間隔を隔てて負荷Fの表面に取付けけられる二つの取付片71と、二つの取付片71の対向する端部からそれぞれ負荷Fの表面から離れる方向に連設される二つの突出片72と、両突出片72の突出端部間に架設される被着片73とからなる、長手方向と直交する断面における形状がハット状をしたものである。取付片71には、負荷Fにビス等の固着具により固定するための固着具挿通穴71aが穿設してある。このような取付ベース7の構成により、取付ベース7を負荷Fの表面に固定した状態で、取付ベース7の被着片73を負荷Fの表面から空間をあけて位置させることができる。
【0028】
そして、取付ベース7の被着片73には、負荷F側に取付けられる軸40を挿通して固定するための固着穴73aが穿設してある。また、負荷F側に取付けられる軸40には、負荷F側の回転座4から突出する部分に雄ねじ部41が形成してあり、前記取付ベース7の被着片73の固着穴73aに前記軸40に形成した雄ねじ部41を挿通すると共に、雄ねじ部41にナット42を螺着して前記軸40を取付ベース7に締結固定する。本実施形態ではこの時、負荷F側の軸40とともに以下に説明する回転抑制部6を取付ベース7に締結固定するものである。
【0029】
回転抑制部6は、図6に示すように、連結片61と、連結片61の両端部からそれぞれ連設されるばね片60とからなる断面略コ字状をしたものである。回転抑制部6は、図7(b)に示すように前記ばね片60がアーム5の側面(図中の斜線部51)の両側から弾性的に当接することで、図7(a)に示すようにアーム5および負荷F側の回転座4が前記負荷F側の軸40の回りに回転するのを抑えるものである。
【0030】
回転抑制部6の連結片61には固着具挿通穴61aが穿設してあり、この連結片61を取付ベース7の被着片73上に重ねて合わせて、連結片61の固着具挿通穴61aを被着片73の固着穴73aに連通させ、負荷F側の軸40の雄ねじ部41を上述したようにナット42により締結固定すると共に、回転抑制部6も固定するものである(図8(a)参照)。これにより、集電子1を取付ベース7に取付けるための固着具(雄ねじ部41とナット42)で回転抑制部6を取付けることができて、回転抑制部6を取付ベース7に取付けるための固着具を別に設ける必要がないと共に、回転抑制部6の取付ベース7に対する位置決めも容易に行うことが可能となるものである。
【0031】
絶縁トロリー線2は、上述したように複数本(本実施形態では4本)平行に並設するもので、前記絶縁トロリー線2の本数に合わせて集電子1の数が決まり、この集電子1の数に合わせて該集電子1が取付けられる取付ベース7の被着片73の長さを変えるものである。すなわち、取付ベース7の被着片73の長さは、一つの集電子1の取付け幅×集電子1の数となり、本実施形態では図8(a)に示すように集電子1の取付け幅四つ分の長さとなると共に、各集電子1の取付け部分にそれぞれ固着穴73aが穿設してある。集電子1の取付け幅は回転抑制部6の連結片61の幅(両ばね片60間の距離)となる。そして、各集電子1ごとの回転抑制部6の連結片61を取付ベース7の被着片73上に重ねて、連結片61の固着具挿通穴61aを被着片73の固着穴73aにそれぞれ連通させ、軸40の雄ねじ部41をナット42により締結固定するのであるが、この時、図8(b)(c)に示すように隣接する回転抑制部6のばね片60が互いに当接するようにして固定することで、各回転抑制部6自体の回転防止のための手段を特に設けずに済むものである。すなわち、回転抑制部6を他の回転抑制部6と当接させずに固定した場合には、集電装置を使用するにつれて回転抑制部6を締結固定しているナット42が緩んで回転抑制部6が取付ベース7に対して回転してしまうが、隣接する回転抑制部6のばね片60が互いに当接するようにして固定することで、当接する回転抑制部6が互いに回転抑制部6が回転するのを防止することになる。本実施形態では、取付ベース7の被着片73には、並設される回転抑制部6の両外端のばね片60の外面に当接して位置決めする規制片74が突設してあり、回転抑制部6の取付ベース7に対する位置決めおよび回転防止をより一層確実にしてある。
【0032】
上記のような回転抑制部6を設けることで、例えば図5(b)に示すように絶縁トロリー線2を壁面に横向きに配置した場合、負荷Fの側面に横向きに取付ベース7を固定すると共に、取付ベース7に集電子1をその集電子片11が横向きとなるように取付けることとなるが、この時図7(a)に示すように集電子1すなわち負荷F側の回転座4、アーム5、集電子1側の回転座3、集電子片ケーシング10が負荷F側に固定される軸40回りに回転自在となっていて、集電子1の自重によって集電子片11が下向きとなるように回転してしまうのを、回転抑制部6によって集電子1が前記軸40回りに回転するのを抑えて、集電子片11が下向きにならず所定の方向を向くように姿勢を維持することができて、乗り移る先の絶縁トロリー線2の溝22内に確実に安定して収容することが可能となる。この結果、乗り移る際の集電子1の速度が120m/分でも安定して乗り移ることが可能となった。
【0033】
回転抑制部6は、上記のように負荷F側に固定される軸40回りの集電子1の回転は抑えるが、アーム5の回転座3、4に対する回動に対してはフリーとなっていて、負荷Fに追従する集電子1が絶縁トロリー線2から外れないように負荷Fに対する自由度を有している。そして、アーム5が回転座3、4に対して上方に回動した際、アーム5(本実施形態では取付ベース7から遠い方のアーム5)が回転抑制部6のばね片60から脱する場合がある。この時、回転抑制部6のばね片60間から脱したアーム5がばね片60の先端部から再び両ばね片60間に入る際に入り易いようにガイドすべく、ばね片60の先端部に曲げ部62が設けてある。曲げ部62は、図6に示すように、各ばね片60の先端部に、もう一方のばね片60から遠ざかる方向に傾斜するように屈曲して形成してある。本実施形態では、一方のばね片60の曲げ部62を一方の半部に形成すると共に、他方のばね片60の曲げ部62を他方の半部に形成して、側面視において互い違い千鳥状となるように形成してある。これにより、図8(b)(c)に示すように、隣接する回転抑制部6のばね片60が互いに当接するようにして固定する際、当接するばね片60の曲げ部62が干渉するのを回避することが可能となる。
【0034】
また本実施形態では、負荷F側の回転座4と、集電子片ケーシング10の前記負荷F側の回転座4側の端部とを、自在に伸長して復元力が生じるセンタリング部材8で連結してある。センタリング部材8は、本実施形態のようにコイルばねやその他ゴムのようなものでもよく、特に限定されない。
【0035】
集電子片ケーシング10は上述したように、図9(a)に示すように集電子1側の回転座3の軸40回りに左右方向に回転自在となると共に、図9(b)に示すように集電子片ケーシング10の枢支部13において上下方向に回転自在となっており、センタリング部材8を設けなければ特に復元力が生じないため、集電子片11の向きが任意に変化するものの変化したままとなってしまう。そこで本実施形態のようにセンタリング部材8を設けたことで、センタリング部材8の復元力によって集電子片11の向きが維持されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の絶縁トロリー線集電装置の一実施形態の要部の側面図である。
【図2】同上の斜め上方から見た斜視図である。
【図3】同上の下面図(但し集電子は便宜上上面を示している)である。
【図4】同上の絶縁トロリー線の断面図である。
【図5】(a)は絶縁トロリー線を天井から下向きに固定する場合の絶縁トロリー線集電装置の正面図であり、(b)は絶縁トロリー線を壁面に横向きに固定する場合の絶縁トロリー線集電装置の正面図である。
【図6】同上の回転抑制部を示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図7】(a)は集電子のアームの負荷側の回転座の軸回りの回転を説明する平面図であり、(b)はアームの回転抑制部のばね片が当接する部分を示す側面図である。
【図8】集電子の取付ベースへの取付けを示し、(a)は集電子と取付ベースの斜視図であり、(b)は回転抑制部を並設した斜視図であり、(c)は(b)のA部拡大図である。
【図9】(a)は集電子片ケーシングの集電子側の回転座の軸回りの回転を示す平面図であり、(b)は集電子片ケーシングの枢支部における回転を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 集電子
11 集電子片
2 絶縁トロリー線
3 集電子側の回転座
30 集電子側の軸
4 負荷側の回転座
40 負荷側の軸
5 アーム
6 回転抑制部
60 ばね片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する負荷に取付けられる集電子を造営材に取付けられる絶縁トロリー線に摺接させて前記移動する負荷に電気を供給する絶縁トロリー線集電装置であって、集電子は、絶縁トロリー線に摺接する集電子片と、集電子片に設けられる軸を受ける集電子側の回転座と、負荷に設けられる軸を受ける負荷側の回転座と、両端部が前記集電子側の回転座と負荷側の回転座とにそれぞれ回動可能に連結されるアームと、を備え、アームの側面の両側から弾性的に当接して該アームおよび負荷側の回転座が前記負荷に設けられる軸の回りに回転するのを抑えるばね片を有する回転抑制部を設けて成ることを特徴とする絶縁トロリー線集電装置。
【請求項2】
両側のばね片間から脱したアームをばね片間に入れるのをガイドする曲げ部をばね片の端部に設けて成ることを特徴とする請求項1記載の絶縁トロリー線集電装置。
【請求項3】
一方のばね片の曲げ部を一方の半部に形成すると共に、他方のばね片の曲げ部を他方の半部に形成して成ることを特徴とする請求項2記載の絶縁トロリー線集電装置。
【請求項4】
回転抑制部を、両ばね片と該両ばね片を連結する連結片とからなる上方に開口する略コ字状に形成して、該連結片に固着具挿通穴を穿設し、負荷に、該負荷の表面に取付けられる取付片と、取付片から負荷の表面から離れる方向に突出する少なくとも二つの突出片と、少なくとも二つの突出片の突出端部間に架設されると共に固着穴が穿設される被着片とからなる取付ベースを固定し、回転抑制部の連結片の固着具挿通穴を取付ベースの被着片の固着穴に連通させて、負荷に設けられる軸に形成した雄ねじ部を前記連通した固着具挿通穴と固着穴とに挿通すると共に、雄ねじ部にナットを螺着して前記軸を取付ベースに締結固定して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の絶縁トロリー線集電装置。
【請求項5】
取付ベースの被着片に複数の固着穴を並設すると共に、各固着穴に対応する回転抑制部をそれぞれ隣接する回転抑制部のばね片が当接するように取付けて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の絶縁トロリー線集電装置。
【請求項6】
集電子片を集電子片ケーシングに設けると共に、集電子側の回転座に受けられる軸を前記集電子片ケーシングに回動自在に枢支し、負荷側の回転座と集電子片ケーシングとを自在に伸長して復元力が生じるセンタリング部材で連結して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の絶縁トロリー線集電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−301577(P2008−301577A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142362(P2007−142362)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】