説明

網戸清掃具

【課題】 網目の寄りや損傷などを生ずることなく、網戸に付着している汚れを効率よく確実に払拭して網戸を清掃できる網戸清掃具の提供。
【解決手段】 ブラシ部材及び取手付き本体を備え、前記ブラシ部材が、長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体から形成された所定長を有するブラシ部材の前記所定の長さにわたって外方に立毛が突出している有毛部材であり、前記取手付き本体が、ブラシ部材をブラシ部材の長さ方向の中心線を回転軸として回転させるための回転用保持手段を有し、ブラシ部材が、取手付き本体の前記回転用保持手段によって、ブラシ部材の長さ方向の中心線を回転軸にして回転可能に取手付き本体に保持されている網戸清掃具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸清掃具に関する。より詳細には、本発明は、取手付き本体に、外方に突出する多数の立毛を有するブラシ部材を回転可能に取り付けてなる網戸清掃具に関する。本発明の網戸清掃具は、外方に突出した多数の立毛を有するブラシ部材を網戸の表面上で回転させながら当該立毛を網目の中に侵入させて網戸の清掃を行うことで、網目の寄りや損傷などを生ずることなく、網戸に付着している汚れを効率よく確実に払拭することができ、しかもブラシ部材の消耗や汚れがひどくなったときに、ブラシ部材を新しいものに取り替えて繰り返して使用することができる。
【背景技術】
【0002】
網戸の清掃に当たっては、網戸にホースなどで水を吹き付ける方法や、網戸を雑巾で拭く方法が従来から一般的に採用されている。ホースなどで水を吹き付ける方法は、汚れが比較的きれいに落ち、しかも網戸の網目の寄りや損傷が生じにくいという点で優れているが、網戸を建物から取り外して清掃を行う必要があり、日常的に簡単に行うことはできない。また、網戸を雑巾などで拭く方法は、網戸を建物から取り外さずに簡便に実施できるが、清掃作業にかなりの時間や労力を要し、手などが汚れ易く、更に労力のわりには汚れが落ちにくく、しかも網目の寄りや損傷を生じ易いという欠点がある。
【0003】
上記の点から、網戸の清掃を簡単に、効率よく行えるようにし、また網戸の網目の寄りや損傷が生ずるのを防ぎながら網戸の清掃を行えるようにするために、洗浄剤を含浸させた含水性ジェルで網戸清掃用ローラの表面を被覆した清掃用具(特許文献1を参照)、操作ハンドルを備えた基台部にパイルが高密度で植毛された植毛布を取り付けた拭き掃除具(特許文献2を参照)、略矩形の圧縮性を有するスポンジ板の上面に保持坂を配置し、スポンジ板の下面に汚れ拭き取り用の拭布を取り付けた網戸用清掃具(特許文献3を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の清掃用具は、含水性ジェルで拭き取られた汚れが含水性ジェルに過度に吸着し、汚れを吸着した含水性ジェルは粘着性が低下して汚れの拭き取り能が低下してしまい清掃が円滑に行われなくなる。しかも、ローラ表面を被覆している含水ジェルは再生できないことから、繰り返して使用することができず、利用者にとってコスト負担が大きい。
また、上記特許文献2の拭き掃除具は、該拭き掃除具を網戸の表面上で摺動させて植毛布部分で網戸を擦りながら清掃を行うものであるため、拭き掃除具の移動方向とそれを横切る方向とで汚れの落ち具合が異なり、しかも網戸の網目の寄りや損傷を生じ易い。
上記特許文献3の網戸用清掃具も、特許文献2の拭き掃除具と同様に、網戸用清掃具を網戸の表面上で摺動させて表面の拭布で網戸を擦りながら清掃を行うものであるため、拭き掃除具の移動方向とそれを横切る方向とで汚れの落ち具合が異なり易く、その上網戸の網目の寄り、損傷などが起こり易い。
【0005】
【特許文献1】特開平11−99119号公報
【特許文献2】特開2002−17619号公報
【特許文献3】特開2003−477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、網戸の清掃を行う際の作業者の労力の軽減を図りながら、短時間で簡単に且つ効率よく網戸を清掃することのできる網戸清掃具を提供することである。
本発明の目的は、網目の寄り、損傷などを生ずることなく、網戸を円滑に清掃することのできる網戸清掃具を提供することである。
本発明の目的は、上記した優れた特性と併せて、汚れの除去に方向性が生じず、網戸全体をきれいに掃除することのできる網戸清掃具を提供することである。
更に、本発明の目的は、使い勝手が良く、しかも部品、特にブラシ部が消耗したときに、当該部品を簡単に且つ短時間で取り替えることができ、それによって繰り返して使用することのできる、経済的な網戸清掃具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、網戸の網目に接触して網目に付着した汚れを落とすブラシ部材を、長さ方向に沿って多数の立毛を設けた立毛線状体を用いて形成し、立毛線状体から形成した当該ブラシ部材を取手付き本体に回転可能に保持させると、網戸の清掃効率が高く、しかも使い勝手の良い網戸清掃具が得られることに思い至った。そして、当該網戸清掃具の性能や使い勝手などについて更に検討したところ、当該網戸清掃具による場合は、本体に設けた取手を片手で持ちながら当該網戸清掃具を網戸の網目の表面に軽く接触させながら移動させると、ブラシ部材が移動に伴って回転して、ブラシ部材の表面に放射状に立設している立毛が網戸の網目の中に入り込んで網目に付着している汚れを効率よく掻き落とすこと、しかもその際に網目を形成している縦方向の線および横方向の線の両方が同時に清掃されて、汚れの落ち具合に方向性が生じず、網戸全体を均一に清掃できることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、本発明者らが想到した当該網戸清掃具を用いて網戸の清掃を行った場合には、網目に摺動力がかからないことにより、網目の寄りや損傷が生じないこと、さらにはブラシ部材を形成している立毛線状体の立毛などが消耗したり、汚れがひどくなったときには、ブラシ部材を新しいものと取り替えるだけで、網戸清掃具を再度繰り返して使用できることを見出した。
さらに、本発明者らは、ブラシ部材を形成している立毛線状体における立毛の一部を捲縮繊維から形成するとブラシ部材における洗浄液の保持能が高まること、一方立毛線状体における立毛を捲縮のない剛毛から形成した場合はブラシ部材に捲縮繊維から形成した布帛を被せることで洗浄液の保持能が向上することを見出した。
また、本発明者らは、当該網戸清掃具における取手付き本体の取手部を、洗浄液を収容できるボトル形状にしておき、当該ボトル形状の取手部に洗浄液を収容して、網戸の清掃時に取手部をなす前記ボトルからブラシ部材に洗浄液を供給しながら網戸を清掃できることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) ブラシ部材および取手付き本体を備え;
前記ブラシ部材は、長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を用いて形成された所定の長さを有する有毛部材であって、当該ブラシ部材の形成に用いた立毛線状体の立毛がブラシ部材の外周でブラシ部材の前記所定の長さにわたって外方に突出しており;
前記取手付き本体は、ブラシ部材をブラシ部材の長さ方向の中心線を回転軸として回転させるための回転用保持手段を有し;且つ
ブラシ部材が、取手付き本体の前記回転用保持手段によって、ブラシ部材における前記所定の長さ方向の中心線を回転軸にして回転可能に取手付き本体に保持されている;
ことを特徴とする網戸清掃具である。
【0010】
そして、本発明は、
(2) ブラシ部材が、直線状の線状体の周囲に、外方に突出する立毛を当該線状体の長さ方向に沿って設けた所定の長さの立毛線状体からなり、取手付き本体が、ブラシ部材をなす前記直線状の立毛線状体をその両端で回転可能に保持するための回転用保持手段を有し、ブラシ部材をなす直線状の立毛線状体が、その両端で取手付き本体の前記回転用保持手段によって、立毛線状体の直線状の線状部を回転軸として回転可能に保持されている前記(1)の網戸清掃具;および、
(3) ブラシ部材が、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を、その立毛が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻いて形成した円筒形のブラシ部材であり、取手付き本体が、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に挿入される棒状の回転用保持手段を有し、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に取手付き本体の前記棒状の回転用保持手段を挿入して、当該ブラシ部材を取手付き本体に回転可能に保持してなる請求項1に記載の網戸清掃具;
である。
【0011】
さらに、本発明は、
(4) 取手付き本体が、前記回転用保持手段として回転可能なローラ状芯材部を有し、当該ローラ状芯材部の表面に、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を、立毛が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻き付けることによって回転可能なブラシ部材を形成してなる前記(1)の網戸清掃具;および、
(5) 回転可能なローラ状芯材部の表面が平らであるか、または回転可能なローラ状芯材部の表面に立毛線状体をスパイラル状に巻き付けるためのスパイラル状の誘導溝が形成されている前記(4)の網戸清掃具;
である。
【0012】
そして、本発明は、
(6) 立毛線状体の長さ方向に沿って設けた立毛が、立毛先端がカットされた房状の立毛群からなる前記(1)〜(5)のいずれかの網戸清掃具;
(7) ブラシ部材を形成する立毛線状体における立毛の一部が捲縮繊維からなっている前記(1)〜(6)のいずれかの網戸清掃具;
(8) ブラシ部材を形成する立毛線状体における立毛が非捲縮繊維から形成されており、ブラシ部材が捲縮繊維からなる筒状の布帛で覆われている前記(1)〜(7)のいずれかの網戸清掃具;および、
(9) 取手付き本体における取手部分が、洗浄液を収容可能なボトル形状をなしており、ボトル形状をなす取手内に収容した洗浄液が網戸清掃時にブラシ部材に供給される構造を有する前記(1)〜(8)のいずれかの網戸清掃具;
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の網戸清掃具は、網戸の清掃時に、ブラシ部材が網戸表面を回転しながら移動し、その際にブラシ部材の表面に放射状に立設している多数の立毛が網戸の網目に侵入して網戸に付着している汚れを掻き落とすため、汚れの落ち具合に方向性を生ずることなく、網戸全体を簡単に且つ効率よくきれいに清掃することができる。
本発明の網戸清掃具を用いて網戸の清掃を行うと、網目に摺動力がかからないために、網目の寄りや損傷が生じない。
本発明の網戸清掃具は、ブラシ部材を形成している立毛線状体の立毛などが消耗したり、汚れがひどくなった際に、ブラシ部材を新しいものと取り替えることによって、繰り返して使用することができる。
【0014】
本発明の網戸清掃具のうち、ブラシ部材を形成している立毛線状体における立毛の一部を捲縮繊維から形成したもの、およびブラシ部材における立毛が剛毛から形成され且つブラシ部材に捲縮繊維から形成した布帛を被せたものは、洗浄液の保持能が高く、網戸の清掃をより良好に行うことができる。
また、本発明の網戸清掃具のうち、取手付き本体の取手部を、洗浄液を収容できるボトル形状にしたものは、当該ボトル形状の取手部に洗浄液を収容しておくことによって、網戸の清掃時に取手部をなす前記ボトルからブラシ部材に洗浄液を供給しながら網戸をきれいに清掃することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の網戸清掃具は、ブラシ部材および取手付き本体を備えている。ブラシ部材は、ブラシ部材における多数の立毛が網戸の網目に侵入して網目に付着している汚れを掻き落とす作用をなす。また、取手付き本体は、ブラシ部材を回転可能に保持すると共に、網戸の清掃作業者が網戸清掃具を持って操作し易くするための取手(ハンドル)を有する。
【0016】
本発明の網戸清掃具におけるブラシ部材は、線状体の表面の長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を用いて形成された所定の長さを有する有毛部材である。当該ブラシ部材では、ブラシ部材の形成に用いた立毛線状体における多数の立毛が、ブラシ部材の外周でブラシ部材の前記所定の長さにわたって外方に突出した構造を有している。
【0017】
ブラシ部材を形成する立毛線状体に設けた立毛は、網戸の網目への立毛の侵入を容易にするために、先端がカットされた立毛(いわゆるカットパイル)にしておく。
ブラシ部材を形成する立毛線状体では、1本1本の立毛が集束されることなく個別に線状体に立設されていてもよいし、または先端がカットされた複数の立毛がその根本部分で収束されている房状の立毛群(房状のカットパイル)であってもよい。そのうちでも、房状の立毛群(房状のカットパイル)を有する後者の立毛線状体は、一般に製造が容易であり、しかも網戸の網目に付着した汚れの掻き落としがより効率よく行われ、さらに洗浄液の保持性が良好であることから好ましい。
【0018】
立毛線状体における立毛の設け方は、立毛線状体から形成するブラシ部材の形状および構造に応じて適当なものを選択することができ、代表例としては下記の(a)〜(c)の立毛線状体を挙げることができる。
(a) 線状体の外周を取り囲んでカットパイル状の房状の立毛群を例えば3列、4列、5列、6列、7列、8列、またはそれ以上の列数で線状体の長さ方向に沿って次々と立設して形成した立毛線状体(すなわち、カットパイル状の房状の立毛群が中心の線状体の周囲を取り囲んで、線状体の全周から外方に放射状に向いて立設されている立毛線状体)。
この(a)の立毛線状体では、線状体の外周を取り囲んで線状体の長さ方向に沿って3列以上の列数で設けた各列の房状の立毛群は、線状体の同じ横断面位置にあってもよいし[例えば、以下の実施例で説明する図1の(a)の立毛線状体を参照]、または異なる横断面位置にあってもよい。
(b) 線状体の外周の対向する2つの位置(180°隔たった位置)に線状体の長さ方向に沿って多数のカットパイル状の房状の立毛群を次々と立設した立毛線状体[例えば、以下の実施例で説明する図1の(b)の立毛線状体を参照]。
(c) 線状体の外周の1つの位置に、線状体の長さ方向に沿って、多数のカットパイルからなる房状の立毛群を一列状に次々と立設した立毛線状体[例えば、以下の実施例で説明する図1の(c)、(d)の立毛線状体を参照]。
立毛線状体における線状体は、直線状であってもよいし、またはコイル状に巻いたものであってもよい。すなわち、立毛線状体は、剛直で曲がりにくい直線状の線状体に立毛を設けたものであってもよいし、剛性を有するがコイル状に巻くことのできる線状体に立毛を設けたものであってもよいし、柔軟な線状体に立毛を設けたものであってもよく、立毛線状体から形成されるブラシ部材の形状などに応じて、それぞれに適した立毛線状体を用いるのがよい。
【0019】
立毛線状体における線状体の太さは特に制限されず、立毛線状体から形成するブラシ部材の形状などに応じて決めることができる。一般的には、立毛線状体における線状体の太さは、0.1〜2mm、特に0.5〜1mm程度にすることが、立毛線状体からのブラシ部材の形成が容易性、立毛線状体から形成されたブラシ部材の強度、形態安定性などの点から好ましい。
立毛線状体における線状体の材質は、プラスチック、金属、木材、それらの2種以上の複合体などのいずれであってもよい。
また、立毛線状体における線状体は、1本の線状体(棒状体)からなっていてもよいし、または複数の線状体を線状に集束したもの、線状に撚り合わせたものなどのいずれであってもよい。
【0020】
立毛線状体における立毛は、合成繊維、金属繊維、植物繊維、動物の毛、それらの複合のいずれからなっていてもよく、そのうちでもプラスチック繊維であることが、立毛線状体の製造が容易である点、網戸の清掃時に網目の寄りや損傷が生じにくい点などの点から好ましい。
立毛線状体における立毛をプラスチック繊維から形成する場合は、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維などの可撓性を有する合成繊維から形成することが好ましく、特にポリエステル繊維から形成することが好ましい。
立毛線状体における立毛は、捲縮のない真すぐな繊維から形成されていてもよいし、捲縮のない繊維と捲縮繊維の併用であってもよい。立毛の一部、特に立毛線状体における立毛の総本数の5〜80%、特に10〜50%を捲縮繊維にしておき、当該捲縮繊維製の立毛を立毛線状体の長さ方向に均一に分散させた立毛線状体からブラシ部材を形成すると、洗浄液の保持能が向上する。
【0021】
立毛線状体における立毛の太さ(直径)[房状の立毛群では房を形成している個々の繊維(立毛)の直径]は、0.001〜2mmであることが好ましく、0.003〜0.3mmであることがより好ましく、0.01〜0.1mmであることが更に好ましい。立毛が細すぎると、立毛が線状体から立設せずに寝てしまって網戸の網目の中に侵入しにくくなって清掃効率が低下する。一方、立毛が太すぎると、網戸の網目の中に挿入されにくくなって清掃効率が低下し、しかも立毛が太くなることで可撓性が低下して清掃時に網戸の網目の寄り、損傷などを生じ易くなる。
立毛線状体における立毛の本数(房状の立毛群からなる場合は房状の立毛群を形成する個々の繊維の本数)は、立毛線状体の長さ(長さ方向に沿った長さ)25mm当たり50〜3000本が好ましく、500〜2000本であることがより好ましい。また、1つの房状の立毛群の太さ(直径)(房の根元部分で最も密に集束した部分の直径)は、0.05〜1.5mm、特に0.1〜1mmであることが好ましい。立毛の本数および房状の立毛群の太さを前記のようにすることで、立毛線状体の製造が容易になり、立毛線状体からのブラシ部材の形成が容易になる。また、網戸の清掃性能が良好になり、しかも網戸の清掃によって汚れた網戸清掃具を洗浄液に浸けてブラシ部材に付着した汚れを落とす際に汚れが落ち易くなる。
【0022】
立毛線状体における立毛の長さ(線状体に把持されている立毛基部から立毛先端までの長さ)は、3〜20mm、特に5〜15mmであることから、立毛線状体から形成されたブラシ部材の清掃性能、耐久性などの点から好ましい。立毛が短すぎると、網戸の清掃時に網目の中に挿入しなくなって清掃性能が低下する。一方、立毛が長すぎると、立毛が立設せずに倒れた状態になって、網戸の清掃時に網目に侵入しにくくなって、やはり清掃性能が低下し易くなる。
立毛線状体では立毛の長さは全ての立毛群で同じにしてあってもよいし、または例えば1つの房状の立毛群中に長いものと短いものを混在させてもよい。
【0023】
立毛線状体では、立毛(房状の立毛群)は、立毛線状体の長さ方向に沿って等間隔で設けることが、当該立毛線状体から形成したブラシ部材を備える網戸清掃具を用いて網戸を清掃する際に、網戸全体を均一に清掃でき、しかも汚れたブラシ部材の洗浄を良好に行うことができるので好ましい。
立毛線状体における立毛間の距離(立毛が房状の立毛群からなる場合は、1つの房状の立毛群と、その隣に位置する房状の立毛群との間の距離)は、立毛線状体から形成されるブラシ部材の形状、立毛線状体における立毛の立設構造、立毛線状体における立毛(房状の立毛群)の太さなどに応じて適当な距離を採用できるが、一般的には、0.1〜10mm、特に0.2〜1mmであることが、立毛線状体の製造の容易性、立毛線状体から形成されたブラシ部材の清掃性能、洗浄液の保持性などの点から好ましい。
【0024】
立毛線状体では、立毛と線状体は、同じ素材から形成されていてもよいしまたは異なる素材から形成されていてもよい。また、立毛線状体は、一体成形によって製造されたものであってもよいし、または別途製造または入手した立毛(房状の立毛群)用繊維などを、適当な方法[例えば撚糸、編込み(ラッセル編)、熱融着、接着剤など]によって線状体に結合または取り付けて形成したものであってもよい。
【0025】
上記した立毛線状体から形成してなるブラシ部材としては、所定の長さを有し、当該ブラシ部材の形成に用いた立毛線状体の立毛(房状の立毛群)がブラシ部材の外周でブラシ部材の前記所定の長さにわたって外方に突出した構造を有するものであればいずれでもよい。
ブラシ部材では、ブラシ部材の外周でブラシ部材の長さにわたって外方に突出させた多数の立毛全体を、仮想の包囲面で立毛の先端に接触した状態で外側から包囲したときに、その仮想の包囲面が円筒形またはほぼ円筒形をなすようにしておくことが、汚れの落ち具合に方向性を生ずることなく網戸全体をきれいに清掃する上で好ましい。すなわち、網戸清掃具を構成するブラシ部材において、ブラシ部材を形成している立毛線状体の立毛(房状の立毛群)が、ブラシ部材の全長またはほぼ全長にわたって、ブラシ部材の周囲に同じ高さまたはほぼ同じ高さで放射状をなして外方に突出するようにすることが、清掃機能に優れる網戸清掃具が得られる点から好ましい。
【0026】
本発明の網戸清掃具は、上記した立毛線状体から形成したブラシ部材が、取手付き本体に回転可能に保持されている。すなわち、取手付き本体は、ブラシ部材をその長さ方向の中心線を回転軸として回転させるための回転用保持手段を有しており、ブラシ部材は当該回転用保持手段によって前記した方向に回転可能に取手付き本体に保持されている。
取手付き本体の構造および取手付き本体によるブラシ部材の回転保持機構は、ブラシ部材の形状や構造などに応じて各ブラシ部材に適合したものにする必要がある。
【0027】
限定されるものではないが、本発明の網戸清掃具の代表例としては、以下の(i)〜(iii)の網戸清掃具を挙げることができる。
(i) ブラシ部材が、直線状の線状体の周囲に、外方に突出する立毛(房状の立毛群)を、当該線状体の長さ方向に沿って設けた所定の長さの立毛線状体[例えば以下で説明する図1の(a)、(b)の立毛線状体]からなり、取手付き本体が、ブラシ部材をなす前記直線状の立毛線状体をその両端で回転可能に保持するための回転用保持手段を有し、ブラシ部材をなす立毛線状体が、その両端で取手付き本体の前記回転用保持手段によって、立毛線状体の直線状の線状部を回転軸として回転可能に保持されている網戸清掃具[以下これを「網戸清掃具(i)」ということがある](例えば、以下で説明する図2の網戸清掃具)。
(ii) ブラシ部材が、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛(房状の立毛群)を設けた立毛線状体を、その立毛(房状の立毛群)が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻いて形成した円筒形のブラシ部材[例えば以下で説明する図1の(d)の立毛線状体]であり、取手付き本体が、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に挿入される棒状の回転用保持手段を有し、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に取手付き本体の前記棒状の回転用保持手段を挿入して、当該ブラシ部材を取手付き本体に回転可能に保持してなる網戸清掃具[以下これを「網戸清掃具(ii)」ということがある](例えば以下で説明する図3の網戸清掃具)。
(iii) 取手付き本体が、前記回転用保持手段として回転可能なローラ状芯材部を有し、当該ローラ状芯材部の表面に、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛(房状の立毛群)を設けた立毛線状体[例えば以下で説明する図1の(c)の立毛線状体]を、立毛が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻き付けることによって回転可能なブラシ部材を形成してなる網戸清掃具[以下これを「網戸清掃具(iii)」ということがある](例えば以下で説明する図4、図5の網戸清掃具]。
【0028】
上記した網戸清掃具(i)は、直線状の立毛線状体自体を直線状のままでブラシ部材として直接用いるものである。
網戸清掃具(i)では、網戸の清掃作業時に撓んだり曲がったりしない硬質の材料からなる線状体の外周にカットパイルよりなる立毛(房状の立毛群)を例えば2列、4列、6列、8列またはそれ以上の列数で線状体の長さ方向に沿って次々と立設して形成した所定の長さの立毛線状体自体をブラシ部材として用いて、当該ブラシ部材(立毛線状体)を線状体の両端で、取手付き本体に設けた回転用保持手段によって、ブラシ部材(立毛線状体)をその中心の線状体を軸として取手付き本体に回転可能に保持されている。
網戸清掃具(i)では、ブラシ部材をなす立毛線状体が、線状体の外周にカットパイル状よりなる立毛(房状の立毛群)を4列以上の列数で且つ隣接する列間の距離が等しいかまたはほぼ等しくなるようにして立毛線状体の長さ方向に沿って設けたものを用いることが好ましい。それによって、ブラシ部材(立毛線状体)の外周の全体またはほぼ全体に立毛(房状の立毛群)が放射状で外方に突出した状態となり、網戸の清掃を効率良く行うことができる。
【0029】
網戸清掃具(i)では、ブラシ部材をなす立毛線状体における線状体の太さは特に制限されないが、一般的には、0.1〜2mm、特に0.5〜1mmにしておくことが、線状体の外周に複数列の立毛を設け易い点、取手付き本体の回転用保持手段による保持が円滑に行われる点、網戸清掃作業時の取扱性が良好になる点、汚れの付着したブラシ部材の洗浄の容易性などの点から好ましい。
また、網戸清掃具(i)では、ブラシ部材(立毛線状体)の長さは特に制限されないが、一般的には、10〜30cm、特に15〜20cm程度にしておくことが、網戸清掃時の取扱性、網戸の清掃効率などの点から好ましい。
【0030】
網戸清掃具(i)を構成する取手付き本体が有する回転用保持手段は、ブラシ部材をなす立毛線状体をその両端で回転可能に保持できる手段であればいずれでもよい。例えば、立毛線状体の線状体の端部を回転可能に且つ網戸清掃時に脱落しないように挿入して保持するための円形孔や円柱状穴を有する部分(部材)などを回転用保持手段として設ければよい。網戸清掃具(i)では、ブラシ部材(立毛線状体)を、取手付き本体に、取り外し可能に取り付けてもよいし、または取り外し不能に取り付けてもよい。ブラシ部材(立毛線状体)を取手付き本体から取り外し可能に取り付けた場合には、ブラシ部材(立毛線状体)が損傷したり、汚れがひどくなった時に、ブラシ部材(立毛線状体)を取手付き本体から取り外して、新しいものと取り替えて、網戸清掃具(i)を再度使用することができる。
網戸清掃具(i)における取手付き本体の材質は特に限定されず、例えば、合成樹脂、金属、木材などの1種または2種以上から形成することができる。取手付き本体においては、強度の必要な回転用保持手段およびそれを有する部材部分は、金属製または金属と合成樹脂の複合体などから形成しておくことが望ましい。
【0031】
網戸清掃具(ii)は、立毛線状体をスパイラル状に巻いて、立毛(房状の立毛群)が放射状をなして外方に突出するように円筒形またはほぼ円筒形のブラシ部材を予め作製しておき、当該円筒形のブラシ部材の中央の円筒形の空洞部に、取手付き本体に設けてなる棒状の回転用保持手段を挿入し、その棒状の回転用保持手段を軸として、網戸清掃時に前記円筒形のブラシ部材が回転するようにしたものである。
この網戸清掃具(ii)では、円筒形のブラシ部材を、線状体の周囲の一部にカットパイルからなる立毛(房状の立毛群)が線状体の長さ方向に沿って一列で配置された立毛線状体[例えば図1の(c)の立毛線状体]を用いて形成することが好ましい。線状体の長さ方向に沿って立毛(房状の立毛群)の列を複数列有する立毛線状体をスパイラル状に巻いて円筒形のブラシ部材を形成する場合は、線状体の周囲の一部に複数の立毛(房状の立毛群)の列を互いに近接配置して、複数の立毛列群が狭い帯状をなして線状体の長さ方向に沿って立設するものを用いるようにするのがよい。立毛線状体として、外周の離れた位置に複数の立毛(房状の立毛群)の列を有する立毛線状体を用いた場合、および線状体の全周に立毛(房状の立毛群)が放射状になって外方に突出している立毛線状体を用いた場合には、当該立毛線状体をスパイラル状に巻いたときに、スパイラル状をなす円筒形のブラシ部材の内側にも立毛が多数突出し、それが円筒形のブラシ部材の回転の邪魔をするようになる。
【0032】
網戸清掃具(ii)では、スパイラル状に巻いた立毛線状体よりなる円筒形のブラシ部材の直径、円筒形のブラシ部材の内径は特に制限されないが、一般的には、円筒形のブラシ部材の外径(立毛部分を含まない外径)は、8〜40mm、特に10〜25mmであることが、網戸清掃時の取扱性、網戸の清掃効率、汚れの付着したブラシ部材の洗浄容易性などの点から好ましい。
また、網戸清掃具(ii)では、ブラシ部材(円筒形のブラシ部材)の長さは特に制限されないが、一般的には、10〜30cm、特に15〜20cm程度にしておくことが、網戸清掃時の取扱性、網戸の清掃効率などの点から好ましい。
【0033】
網戸清掃具(ii)では、取手付き本体に設けた回転用保持手段(棒状体)は、立毛線状体から形成した円筒形のブラシ部材が、当該棒状の回転用保持手段を軸としてその回りを円滑に回転するように、滑らかな表面を有する断面が円形の棒状体であることが好ましい。
取手付き本体が有する棒状の回転用保持手段には、網戸の清掃作業時に、円筒形のブラシ部材が、棒状の回転用保持手段から抜け落ちないようにするために、脱落防止手段を棒状体の先端やその他適当な位置に設けておくことが好ましい。
網戸清掃具(ii)における取手付き本体の材質は特に限定されず、例えば、合成樹脂、金属、木材などの1種または2種以上から形成することができる。取手付き本体においては、強度の必要な棒状の回転用保持手段およびそれを有する部材部分は、金属製または金属と合成樹脂の複合体などから形成しておくことが望ましい。
【0034】
網戸清掃具(iii)は、取手付き本体に、ブラシ部材を回転させるための回転用保持手段として、回転可能なローラ状芯材部を設け、当該ローラ状芯材部の表面に、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛(房状の立毛群)を設けた立毛線状体を、立毛(房状の立毛群)が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻き付けたものである。取手付き本体のローラ状芯材部にスパイラル状に巻き付けられた立毛線状体は、網戸の清掃時にローラ状芯材部と一緒になって回転しながら、網目に侵入して網目に付着した汚れを掻き落とす。
【0035】
網戸清掃具(iii)では、取手付き本体のローラ状芯材部に巻き付ける立毛線状体として、線状体の周囲の一部に立毛(房状の立毛群)が線状体の長さ方向に沿って一列に配置された立毛線状体[例えば図1の(c)の立毛線状体]を用いることが好ましい。線状体の長さ方向に沿って立毛(房状の立毛群)の列を複数列有する立毛線状体を取手付き本体のローラ状芯材部に巻き付ける場合は、複数の立毛(房状の立毛群)の列を線状体の周囲の一部に互いに近接配置して、複数の立毛(房状の立毛群)の列が狭い帯状をなして線状体の長さ方向に沿って立設しているものを用いるようにするのがよい。立毛線状体として、外周の離れた位置に複数の立毛(房状の立毛群)の列を有する立毛線状体を用いた場合、および線状体の全周に立毛(房状の立毛群)が放射状になって外方に突出している立毛線状体を用いた場合には、当該立毛線状体を取手付き本体のローラ状芯材部に円滑に巻き付けることが困難になり、また巻き付け可能であっても巻き付けた後に立毛の突出方向が放射状外方に揃わずにまちまちになって、網戸の清掃性能が低下する。
【0036】
網戸清掃具(iii)では、取手付き本体における回転可能なローラ状芯材部の表面は、溝などのない平らな状態であってもよいし、または立毛線状体をスパイラル状に巻き付けるためのスパイラル状の誘導溝が形成されていてもよい。ローラ状芯材部の表面に立毛線状体をスパイラル状に巻き付けるための誘導溝を形成しておくと、当該誘導溝に沿って立毛線状体における線状体部分の一部、線状体部分の全部、または線状体部分の全部と立毛(房状の立毛群)の基部を埋め込みながら正確な位置で立毛線状体をローラ状芯材部の表面に巻き付けることができる。また、当該誘導溝の深さや溝幅などを調整することで、当該誘導溝への立毛線状体の埋め込み程度を調整でき、それによってローラ状芯材部の表面での立毛の長さおよび立毛(房状の立毛)の上部の広がり具合を調整することができる。さらに、ローラ状芯材部表面に設けたスパイラル状の誘導溝に沿って立毛線状体をローラ状芯材部に巻き付けたものでは、巻き付けた立毛線状体の位置ずれ、ローラ状芯材部からの脱落が生じにくいという長所も有する。
【0037】
網戸清掃具(iii)における取手付き本体の材質は特に限定されず、例えば、合成樹脂、金属、木材などの1種または2種以上から形成することができる。特に、取手付き本体におけるローラ状芯材部は、発泡していない合成樹脂(例えば非発泡ポリプロピレンなど)、非発泡のゴムまたはエラストマー、発泡した合成樹脂、ゴム、エラストマー(例えばポリウレタンフォーム、発泡ゴムなど)などから形成しておくと、網戸清掃具(iii)が重くなり過ぎず、取り扱い性が良好であり、しかもローラ状芯材部を容易に且つ低コストで製造することができる点から好ましい。
また、取手付き本体におけるローラ状芯材部の表面を布帛や柔軟性スポンジなどで被覆した後にその上に立毛線状体を巻き付けてもよい。
【0038】
網戸清掃具(iii)では、立毛線状体を巻き付ける取手付き本体のローラ状芯材部の直径(外径)は特に制限されないが、一般的には8〜40mm、特に10〜25mmであることが、ローラ状芯材部への立毛線状体の巻き付けの円滑性や容易性、網戸清掃時の網戸清掃具の取扱性、網戸の清掃効率、汚れの付着したブラシ部材の洗浄容易性などの点から好ましい。
また、網戸清掃具(iii)では、取手付き本体のローラ状芯材部の長さは特に制限されないが、一般的には、10〜30cm、特に15〜20cm程度にしておくことが、網戸清掃時の取扱性、網戸の清掃効率などの点から好ましい。
更に、取手付き本体のローラ状芯材部への立毛線状体の巻き付け密度(ローラ状芯材部に巻き付けた立毛線状体間の間隔)は、立毛線状体の形状、太さ、立毛長などに応じて調整できるが、一般的にはローラ状芯材部表面に巻き付けた立毛線状体の隣り合う立毛線状体間の距離が、1〜10mm、特に3〜5mmであることが好ましい。
【0039】
上記した網戸清掃具(i)〜(iii)を含めて、本発明の網戸清掃具では、ブラシ部材を形成している立毛線状体における立毛(房状の立毛群)が非捲縮繊維(捲縮のない真すぐな繊維)のみから形成されている場合に、立毛線状体から形成されたブラシ部材の洗浄液の保持能が低いことがあるので、そのような場合には、立毛線状体から形成されたブラシ部材に、ブラシ部材における立毛が布帛の外側に突出するようにして、目の粗い捲縮繊維製の布帛(編地、織地など)を被せて洗浄液の保持能を高めてもよい。
【0040】
さらに、本発明の網戸清掃具では、取手付き本体における取手部分を、洗浄液を収容可能なボトル形状にしてもよい。本体に設けた取手がボトル形状をなす網戸清掃具では、取手内に洗浄液を収容しておき、取手部分から洗浄液をブラシ部材に徐々に供給しながら網戸の清掃を行うことによって、網戸の清掃をより効率よく且つ円滑に行うことができる。
ボトル形状の取手からブラシ部材に洗浄液を徐々に供給するための手段としては、例えば、取手をなすボトルの口部に洗浄液が徐々に外部に浸み出すような多孔質部材を配置しておく方式、前記方式と併せて立毛線状体を巻き付ける取手付き本体のローラ状芯材部の表面部分を連続気泡の多孔質材料で形成しておいて、ボトル形状の取手から供給された洗浄液がブラシ部材全体に拡散・供給されるようにする方式などを挙げることができる。
取手付き本体の取手部分を、洗浄液の収容可能なボトル形状にする場合は、取手をなすボトルを透明なプラスチック材料などから形成しておくと、洗浄液の残留量(減り具合)を目視によって確認することができる。
【実施例】
【0041】
以下に図面を参照して、本発明の網戸清掃具について具体的に説明する。
図1の(a)〜(d)は、本発明の網戸清掃具におけるブラシ部材の形成に用い得る立毛線状体の具体例を模式的に示した図である。図1の(a)〜(d)において、Aは立毛線状体、1は線状体、2はカットパイルよりなる房状の立毛群を示す。
図1の(a)の立毛線状体は、線状体1の外周を取り囲んでカットパイルからなる房状の立毛群2を、線状体1の横断面においてほぼ60°の間隔で6列に線状体の長さ方向に沿って次々と等間隔に立設して形成した立毛線状体であり、房状の立毛群2が中心の線状体1を取り囲んで線状体の全周に外方に放射状に向いて立設されているものである。
図1の(a)の立毛線状体では、線状体1の外周を取り囲んで房状の立毛群2の列が6列設けられているが、それに限定されるものではなく、房状の立毛群2の列は、3列、4列、5列、6列、7列、8列、9列またはそれ以上の列数などのいずれであってもよい。
また、図1の(a)では、線状体1の長さ方向に沿った複数の列の房状の立毛群2は、線状体の同じ横断面位置に設けられているが、それに限定されるものではなく、各列の房状の立毛群2は、線状体1の同じ横断面位置にあってもよいし、または異なる横断面位置にあってもよい。
【0042】
図1の(b)の立毛線状体は、線状体1の外周の対向する2つの位置(180°隔たった位置)に、カットパイルからなる房状の立毛群2を、線状体1の長さ方向に沿って等間隔で2列に立設した立毛線状体である。
図1の(c)の立毛線状体は、線状体1の外周の1つの位置に線状体1の長さ方向に沿ってカットパイルからなる房状の立毛群2を一列に次々と等間隔で立設した立毛線状体である。
図1の(d)は、図1の(c)と同様の構造を有する立毛線状体(線状体1の長さ方向に沿って房状の立毛群2を一列に等間隔に設けた立毛線状体)を、スパイラル状に形成したものである。
【0043】
図1の(a)〜(d)に示す立毛線状体などでは、線状体1の太さは特に制限されず、立毛線状体から形成するブラシ部材の形状などに応じて決めることができるが、一般的には、0.1〜2mm、特に0.5〜1mm程度にするのが好ましい。図1の(a)〜(b)の立毛線状体は、直線状でそのままブラシ部材として用いられるものであることから、線状体1は、網戸の清掃時に撓んだり、変形したり、曲がったりせずに、直線状を保ち得る所定の太さおよび剛性を備えていることが必要である。
また、図1の(c)の立毛線状体は、スパイラル状に巻いてそれ自体で円筒形のブラシ部材として用いる場合[例えば図1の(d)の場合]には、立毛線状体における線状体1は、スパイラル状に巻かれた円筒形のブラシ部材が網戸の清掃時に変形しないような所定の剛性を有している必要がある。
さらに、図1の(c)の立毛線状体が、取手付き本体のローラ状芯材部の表面にスパイラル状に巻き付けて用いるものである場合は、ローラ状芯材部の表面への巻き付けが円滑に行われるように所定の可撓性を有していることが必要である。
【0044】
図1の(a)〜(d)に例示する立毛線状体における立毛2は、上述のように、合成繊維、金属繊維、植物繊維、動物の毛、それらの複合のいずれから形成されていてもよく、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維などの可撓性を有する合成繊維から形成することが好ましく、特にポリエステル繊維から形成されていることが好ましい。
立毛線状体における房状の立毛群2を形成する個々の立毛(立毛繊維)の太さおよび立毛の長さの好ましい範囲については上記したとおりである。
【0045】
図1の(a)〜(e)に例示する立毛線状体では、房状の立毛群2と線状体1は、同じ素材から形成されていてもよいしまたは異なる素材から形成されていてもよい。図1の(e)の立毛線状体では、線状体1を金属線にしておくと、スパイラル状の円筒形のブラシ部材への形成が容易であり、しかも円筒形状の保持が良好に行われ易い。
【0046】
立毛線状体[特に図1の(a)〜(d)に例示した立毛線状体]から形成したブラシ部材を、取手付き本体に回転可能に保持させることによって、図2〜図6の模式図で例示するような本発明の網戸清掃具が形成される。
図2〜図6において、Aは立毛線状体、Bは立毛線状体Aから形成したブラシ部材、Cは取手付き本体、3は取手付き本体における取手、4a〜4hは取手付き本体におけるブラシ部材Bを回転可能に保持するための回転用保持手段(軸受けよりなる回転用保持手段、棒状の回転用保持手段、ローラ状芯材部よりなる回転用保持手段)、5は回転可能なローラ状芯材部4f(回転用保持手段)の表面に設けた立毛線状体を巻き付ける際の誘導溝、6は捲縮繊維からなる筒状の編地、7は洗浄液、8は多孔質部材を示す。
【0047】
図2の網戸清掃具は、前記した網戸清掃具(i)に相当するものであって、ブラシ部材Bが、図1の(a)に示す所定の長さの直線状の立毛線状体(線状体1の外周を取り囲んで、房状の立毛群2が線状体1の外周にほぼ60°の間隔で6列に長さ方向に沿って等間隔に設けられている立毛線状体)自体から形成されている。そして、図2の網戸清掃具では、ブラシ部材Bが、ブラシ部材Bをなす前記立毛線状体Aの両端で、取手付き本体Cに設けた左右2つの軸受けよりなる回転用保持手段4a,4aによって、立毛線状体の直線状の線状部1を回転軸として回転可能に保持されている。
図2の網戸清掃具では、ブラシ部材Bは、取手付き本体Cの軸受け4a,4a(回転用保持手段)部分に着脱可能に保持されていてもよいし、着脱不能に保持されていてもよい。
【0048】
図3の網戸清掃具は、前記した網戸清掃具(ii)に相当するものであり、ブラシ部材Bが、図1の(e)の立毛線状体A(線状体1の長さ方向に沿って房状の立毛群2を一列に等間隔に設けた立毛線状体Aをスパイラル状に巻いて形成した円筒形の立毛線状体)からなっていて、当該円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に、取手付き本体Cの棒状の回転用保持手段4bが挿入され、それによってブラシ部材Bが当該棒状の回転用保持手段4bの回りを回転可能に保持されている。
図3の網戸清掃具では、円筒形のブラシ部材Bの中央の空洞部に棒状の回転用保持手段4bを挿入した後、ブラシ部材Bが当該棒状の回転用保持手段4bから脱落しないようにするための手段(図3には図示していない)を、例えば棒状の回転用保持手段4bの先端部などに設けてもよい。
図3の網戸清掃具では、棒状の回転用保持手段4bおよびそれに連なる棒状部を、金属棒などを図3のように折り曲げることによって製造しておくと便利であり、しかも強度の大きなものが得られる。
図3の網戸清掃具では、棒状の回転用保持手段4bの直径は、ブラシ部材Bの回転に支障が生じないようにしながら、円筒形のブラシ部材Bの内径よりは小さいが当該内径にできるだけ近い値にしておく(言い方を変えると、円筒形のブラシ部材Bの内径が、ブラシ部材Bの回転に支障しないようにしながら、棒状の回転用保持手段4bの直径よりも小さいが当該直径にできるだけ近くなるようにして円筒形のブラシ部材Bを形成する)ことが、ブラシ部材Bの回転が滑らかになり、しかも棒状の回転用保持手段4bからのブラシ部材Bの脱落が防止できる点から好ましい。
【0049】
図4の(a)〜(d)の網戸清掃具は、前記した網戸清掃具(iii)に相当するものであり、取手付き本体Cが、ブラシ部材Bの回転用保持手段として回転可能なローラ状芯材部4c,4d,4e,4fをそれぞれ有していて、当該ローラ状芯材部4c,4d,4e,4fの表面に、線状体1の周囲の一部に長さ方向に沿って房状の立毛群2を設けた立毛線状体A[例えば図1の(c)の立毛線状体]を、房状の立毛群2が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻き付けることによって回転可能なブラシ部材Bが形成される。
【0050】
図4の(a)の網戸清掃具では、ローラ状芯材部4aはポリプロピレンなどの合成樹脂やゴムなどから形成されていて、ローラ状芯材部4aの表面にはスパイラル状の誘導溝がなく、平らになっている。
図4の(b)の網戸清掃具では、ローラ状芯材部4bは、ポリウレタン発泡体などの合成樹脂やゴムの発泡体(多孔質体)から形成されている。
図4の(c)の網戸清掃具では、ローラ状芯材部4cの表面には、捲縮繊維などを用いて形成した布帛が被せられていて、その上に立毛線状体Bがスパイラル状に巻き付けられている。
図4の(d)の網戸清掃具は、ローラ状芯材部4dの表面に、立毛線状体Aをスパイラル状に巻き付けるためのスパイラル状の誘導溝5が形成されており、当該誘導溝5に沿って立毛線状体Aがローラ状芯材部4dの表面に巻き付けられる。
【0051】
図4の(a)〜(d)の網戸清掃具では、立毛線状体Aを巻き付けるローラ状芯材部4c,4d,4e,4fの直径(外径)は特に制限されないが、網戸清掃具(iii)についての説明箇所に記載したように、一般的には8〜40mm、特に10〜25mmであることが好ましく、またローラ状芯材部4c,4d,4e,4fの長さ(ローラ状芯材部の幅)は一般的には、10〜30cm、特に15〜20cm程度であることが好ましい。
更に、ローラ状芯材部4c,4d,4e,4fへの立毛線状体Aの巻き付け密度(ローラ状芯材部4c,4d,4e,4fに巻き付けた立毛線状体Aの隣り合う線状体の間隔)は、一般的には1〜10mm、特に3〜5mmであることが好ましい。
【0052】
図5は、取手付き本体Cがローラ状芯材部4gを有し、当該ローラ状芯材部4gの表面に捲縮繊維を含まない繊維からなる剛直な房状の立毛群2を有する立毛線状体Aを巻き付けたものにおいて、洗浄液の保持能を高めるために、巻き付けた立毛線状体Aの表面から捲縮繊維を用いて形成した目の粗い布帛(編地、織地、網など)6を被せ、当該布帛6の編目、織目から立毛(房状の立毛群)2を外方に突出させた網戸清掃具である。
【0053】
図6は、網戸清掃具を構成する取手付き本体Cにおける取手部分3を、洗浄液(洗浄水や洗剤入り洗浄水など)を収容可能なボトル形状にし、ボトル形状をなす当該取手内に洗浄液7を収容しておき、取手3内の洗浄液7を、多孔質部材8を通してブラシ部材Bに徐々に供給しながら網戸の清掃を行うようにしたものである。ボトル形状の取手3を、図6に示すように透明なプラスチック材料などから形成しておくと、ボトル形状の取手内に収容された洗浄液7の残留量(減り具合)を目視によって確認することができる。
【0054】
図6の網戸清掃具では、ブラシ部材Bが、ローラ状芯材部4hに立毛線状体Aを巻き付けたものとなっているが、それに限定されず、ブラシ部材Bが直線状の立毛線状体自体からなる図2に例示するような網戸清掃具においても、取手付き本体Cの取手3を洗浄液7を収容できるボトル形状にしてもよい。
取手3がボトル形状をなす図6に示す網戸清掃具において、ブラシ部材Bを、ローラ状芯材部に立毛線状体Aを巻き付けて形成すると共に、ローラ状芯材部を洗浄液の浸透、吸収が可能な多孔質材料から形成したり、ローラ表面を布帛で被覆した構造にすると、ボトル形状をなす取手3からブラシ部材Bに供給された洗浄液をブラシ部材Bで良好に保持し、網戸の清掃に有効に利用することができる。
【0055】
図2〜図6で例示した網戸清掃具をも含めて、本発明の網戸清掃具は、図7に示すように、網戸9の清掃時に網戸9の表面上を移動させると、網戸清掃具のブラシ部材Bが回転しながら、ブラシ部材Bの表面にある外方に突出した立毛が網目の中に侵入して、網目の寄りや損傷を生ずることなく、網目に付着した汚れを円滑に且つ効率良く掻き落として、網戸を清浄にする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の網戸清掃具は、外方に突出した多数の立毛を有するブラシ部材を網戸の表面上で回転させながら当該立毛を網目の中に侵入させて網戸の清掃を行うことで、網目の寄りや損傷などを生ずることなく、網戸に付着している汚れを効率よく確実に払拭することができ、しかもブラシ部材の消耗や汚れがひどくなったときに、ブラシ部材を新しいものに取り替えて繰り返して使用することができるので、網戸清掃具として有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の網戸清掃具におけるブラシ部材を形成するための立毛線状体の具体例を示す図である。
【図2】本発明の網戸清掃具の具体例を示す図である。
【図3】本発明の網戸清掃具の別の具体例を示す図である。
【図4】本発明の網戸清掃具の更に別の具体例を示す図である。
【図5】本発明の網戸清掃具の更に別の具体例を示す図である。
【図6】本発明の網戸清掃具の更に別の具体例を示す図である。
【図7】本発明の網戸清掃具を用いて網戸を清掃している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
A 立毛線状体
B ブラシ部材
C 取手付き本体
1 線状体
2 房状の立毛群
3 取手
4a 軸受けよりなる回転用保持手段
4b 棒状体よりなる回転用保持手段
4c〜4h ローラ状芯材部よりなる回転用保持手段
5 誘導溝
6 捲縮繊維を用いて形成した布帛
7 洗浄液
8 多孔質部材
9 網戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ部材および取手付き本体を備え;
前記ブラシ部材は、長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を用いて形成された所定の長さを有する有毛部材であって、当該ブラシ部材の形成に用いた立毛線状体の立毛がブラシ部材の外周でブラシ部材の前記所定の長さにわたって外方に突出しており;
前記取手付き本体は、ブラシ部材をブラシ部材の長さ方向の中心線を回転軸として回転させるための回転用保持手段を有し;且つ
ブラシ部材が、取手付き本体の前記回転用保持手段によって、ブラシ部材における前記所定の長さ方向の中心線を回転軸にして回転可能に取手付き本体に保持されている;
ことを特徴とする網戸清掃具。
【請求項2】
ブラシ部材が、直線状の線状体の周囲に、外方に突出する立毛を当該線状体の長さ方向に沿って設けた所定の長さの立毛線状体からなり、取手付き本体が、ブラシ部材をなす前記直線状の立毛線状体をその両端で回転可能に保持するための回転用保持手段を有し、ブラシ部材をなす直線状の立毛線状体が、その両端で取手付き本体の前記回転用保持手段によって、立毛線状体の直線状の線状部を回転軸として回転可能に保持されている請求項1に記載の網戸清掃具。
【請求項3】
ブラシ部材が、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を、その立毛が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻いて形成した円筒形のブラシ部材であり、取手付き本体が、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に挿入される棒状の回転用保持手段を有し、前記円筒形のブラシ部材の中央の空洞部に取手付き本体の前記棒状の回転用保持手段を挿入して、当該ブラシ部材を取手付き本体に回転可能に保持してなる請求項1に記載の網戸清掃具。
【請求項4】
取手付き本体が、前記回転用保持手段として回転可能なローラ状芯材部を有し、当該ローラ状芯材部の表面に、線状体の周囲の一部に長さ方向に沿って立毛を設けた立毛線状体を、立毛が放射状をなして外方に突出するようにスパイラル状に巻き付けることによって回転可能なブラシ部材を形成してなる請求項1に記載の網戸清掃具。
【請求項5】
回転可能なローラ状芯材部の表面が平らであるか、または回転可能なローラ状芯材部の表面に立毛線状体をスパイラル状に巻き付けるためのスパイラル状の誘導溝が形成されている請求項4に記載の網戸清掃具。
【請求項6】
立毛線状体の長さ方向に沿って設けた立毛が、立毛先端がカットされた房状の立毛群からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の網戸清掃具。
【請求項7】
ブラシ部材を形成する立毛線状体における立毛の一部が捲縮繊維からなっている請求項1〜6のいずれか1項に記載の網戸清掃具。
【請求項8】
ブラシ部材を形成する立毛線状体における立毛が非捲縮繊維から形成されており、ブラシ部材が捲縮繊維からなる筒状の布帛で覆われている請求項1〜7のいずれか1項に記載の網戸清掃具。
【請求項9】
取手付き本体における取手部分が、洗浄液を収容可能なボトル形状をなしており、ボトル形状をなす取手内に収容した洗浄液が網戸清掃時にブラシ部材に供給される構造を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の網戸清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93238(P2008−93238A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279737(P2006−279737)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000206934)株式会社マルテー大塚 (26)
【Fターム(参考)】