説明

網膜外層の障害を治療するための新規融合タンパク質

【課題】視機能を回復するとともに、低照度での光感受性を改善するのに有効な手段を提供する。
【解決手段】光受容体チャネルタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質であって、該蛍光タンパク質は可視光で励起される際に前記光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するものである、前記融合タンパク質を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受容体チャネルタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及びそれらの治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本邦に於ける年間失明者数は16000人におよび、その要因は、重度の外傷を除き、網膜内層の障害と、外層の障害に起因するものの大きく2つに分けられる。網膜色素変性、加齢黄斑変性といった疾患では、網膜外層が選択的に変性することが知られている。
【0003】
網膜の光受容とその情報伝達機構についてみると、入射した光、映像情報は網膜外層に位置する光受容細胞(視細胞)で受容され、網膜内層に伝達される。その情報は網膜内層に位置する、視神経を構成する神経節細胞によって脳に伝えられる。このように光すなわち映像を受容できる細胞は網膜において視細胞のみであり、視細胞が何らかの要因で変性、消失すると、その他の細胞が正常であったとしても失明に至る。
【0004】
視細胞の光受容様式によれば、視細胞に存在する光受容タンパク質で光受容後、様々なタンパク質の連鎖反応が必要であることが分かっている。このような様式から、従来、単一の遺伝子を導入することによって、光受容能を賦与することは不可能と考えられてきた。これに関連して、神経細胞に光受容能を与えるためには、最低限、3種類のタンパク質(すなわち、アレスチン、オプシン、G蛋白質αサブユニット)を1つの細胞に導入することが必要であることが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
Nagelら(非特許文献2)は、緑藻類クラミドモナス(Chamydomonas)より単離されたチャネルロドプシン-2(以下、「ChR2」とも称する)が光受容能と陽イオン選択的透過性を併せ持つこと、及びChR2遺伝子を導入することによって培養哺乳類細胞(HEK293、BHK)等に光受容能を与えることができることを報告した。
【0006】
本発明者らは、網膜外層の障害に起因する遺伝盲ラットにおいて、チャネルロドプシン-2遺伝子を残存する網膜神経細胞に導入し、視機能を再建することを試みたところ、遺伝子導入前は光に対する視覚野の応答(視覚誘発電位)は全く認められなかったのに対し、遺伝子導入後は光に対する応答が認められること、及び視覚野の応答が見られる最低照度は240luxであり、正常な網膜に比較して、光感受性が低いことを報告した(非特許文献3)。
【0007】
また、ここで使用されたものと同様のチャネルロドプシン-2とVenus(改変GFP)との融合タンパク質を神経細胞で発現することにより光応答性を獲得したことが特許文献1に記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006-217866
【非特許文献1】Zemelman BV et al., Neuron. 2002 Jan 3; 33(1): 15-22.
【非特許文献2】Nagel G et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Nov 25; 100(24): 13940-5.
【非特許文献3】Tomita H. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci., 48(8): 3821-6, 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、光受容体チャネルタンパク質遺伝子の導入によって視機能の回復がみられるものの、依然として、正常な視覚に比べて光感受性が低いという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、視機能を回復するとともに、上記光感受性の問題を解決するのに有効な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
夜行性動物には光を反射させる反射板(tapetum)が存在する。反射板は、網膜で視細胞に受容されなかった光を反射して、視細胞に再度の受容の機会を与える機能を有することが知られる。
【0012】
そこで本発明者らは、この反射板にヒントを得、入射した光を増幅する手段としてこれを人為的に作製することを試みた。具体的には、可視光の励起に伴って発光する蛍光タンパク質(ただし、この光は光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光である)を反射板様タンパク質として用い、このタンパク質と光受容体チャネルタンパク質との融合タンパク質としてラットの網膜にて発現させたところ、視機能の回復と共に、低照度での光感受性の改善が確認された。本発明はかかる知見を基礎とするものである。
【0013】
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1) 光受容体チャネルタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質であって、前記蛍光タンパク質は可視光で励起される際に前記光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するものである、前記融合タンパク質。
【0014】
(2) 光受容体チャネルタンパク質は、チャネルロドプシン-2(ChR2)である、上記(1)記載の融合タンパク質。
【0015】
(3) チャネルロドプシン-2は、クラミドモナス・レインハルトチイ(chlamydomonas reinhardtii)由来のものである、上記(2)記載の融合タンパク質。
【0016】
(4) 光受容体チャネルタンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、上記(1)記載の融合タンパク質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
【0017】
(5) 光受容体チャネルタンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、上記(1)記載の融合タンパク質。
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
【0018】
(6) 蛍光タンパク質はCyan蛍光タンパク質である上記(1)〜(5)のいずれか記載の融合タンパク質。
【0019】
(7) Cyan蛍光タンパク質はアネモニア・マジャノ(Anemonia majano)由来のものである上記(6)記載の融合タンパク質。
【0020】
(8) 蛍光タンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、上記(1)〜(5)のいずれか記載の融合タンパク質。
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の光学的性質を有するポリペプチド
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の光学的性質を有するポリペプチド
(9) 上記(1)〜(8)のいずれか記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0021】
(10) プロモーターと機能的に連結された、上記(9)記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(11) ウイルスベクターである上記(10)記載の発現ベクター。
【0022】
(12) 網膜外層の障害を患う被検体を治療するための医薬の製造における、上記(1)〜(8)のいずれか記載の融合タンパク質、又は上記(10)若しくは(11)記載の発現ベクターの使用。
【0023】
(13) 網膜外層の障害は、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症又は網膜はく離である、上記(12)記載の使用。
【0024】
(14) 上記(1)〜(8)のいずれか記載の融合タンパク質、又は上記(10)若しくは(11)記載の発現ベクターを有効成分として含む、網膜外層の障害を治療するための医薬組成物。
【0025】
(15) 網膜外層の障害は、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症又は網膜はく離である、上記(14)記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、視機能の回復と共に、低照度での光感受性の改善に有用な新規融合タンパク質が提供される。
【0027】
本発明の融合タンパク質は、網膜色素変性や加齢黄斑変性といった網膜外層の障害を患う被検体の治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について説明する。
本発明は、網膜外層の障害を患う被検体の治療に有用な融合タンパク質、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリペプチドを含む発現ベクター、及びそれらの治療用途に関する。
【0029】
1.融合タンパク質
1.1 光受容体チャネルタンパク質
本明細書で使用する「光受容体チャネルタンパク質」とは、入射した光を受容する機能と、受容した光を電気的信号に変換するチャネル機能とを備える任意のタンパク質をいう。すなわち、本発明において、光受容体チャネルタンパク質は、視機能に障害のある又は視機能を失った視細胞に代わって視機能を発揮するタンパク質である。
【0030】
光受容機能とチャネル機能とを備えるタンパク質として、現在までに種々のタンパク質が知られている。例えば、かかるタンパク質として、クラミドモナスなどの緑藻類を起源とするロドプシンファミリーのタンパク質(チャネルロドプシン-1、チャネルロドプシン-2など)、高度好塩菌由来のバクテリオロドプシン、ハロロドプシン、センサリーロドプシン、プロテオロドプシンなどを挙げることができ、これらを本発明において使用することができる。
【0031】
本発明において、特に好ましい光受容体チャネルタンパク質は、クラミドモナス・レインハルトチイ(Chlamydomonas reinhardtii)由来のChR2タンパク質又はその相同体若しくは変異体である。ChR2タンパク質は、400〜500nmの青色光に応答した脱分極(すなわち、陽イオンの透過)を引き起こすタンパク質として知られ、その遺伝子配列及びアミノ酸配列も公知である(GenBank登録番号AF461397)。ChR2タンパク質は、遺伝盲ラットの神経節細胞におけるその発現により、視機能を回復することが報告されている(非特許文献3参照)。
【0032】
ここで、「相同体」とは、異なる生物由来の同一機能をもつタンパク質(又は核酸)を指す。相同体タンパク質及びそれをコードする核酸の配列は、NCBI、EMBLなどの著名なデータベースにアクセスすることによって、例えばBLAST、FASTAなどのアルゴリズムを利用して検索することができる。またかかる相同体核酸又は遺伝子は定法に従って単離することができる。例えば、塩基配列情報を格納したデータベースを用いて特定した遺伝子を特異的に増幅するためのプライマーを設計、化学合成し、対象の生物から抽出したゲノムDNAを鋳型とする前記プライマーを用いたPCRによって、目的とするChR2遺伝子の相同体を増幅、単離することができる。なお、単離したChR2遺伝子の相同体によってコードされるポリペプチドが、ChR2遺伝子によってコードされるポリペプチドと同様な機能を有するか否かをアッセイする手法については後述する。
【0033】
ChR2遺伝子の塩基配列の一例を配列番号1に示し、配列番号1に示す塩基配列によってコードされるChR2タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。なお、ChR2遺伝子によりコードされるChR2タンパク質としては、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドに限定されず、配列番号2に示すアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、付加又は挿入を有し、かつ配列番号2に示すアミノ酸配列からなるChR2タンパク質と同等以上の生物学的活性を有するもの、或いは配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一の配列相同性を有し、かつ配列番号2に示すアミノ酸配列からなるChR2タンパク質と同等以上の生物学的活性を有するもの(以下、「ChR2変異型ポリペプチド」ともいう)を含む。
【0034】
本明細書において、ChR2変異型ポリペプチドの関連で使用する「数個」とは、10以下の整数、例えば2〜9、2〜7、2〜5の整数である。
【0035】
また「実質的に同一の配列相同性」とは、配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有することをいう。なお、相同性の%は、複数(2つ)のアミノ酸配列間の相同性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、BLASTなど)をデフォルトの設定で使用して算出した値をいう。
【0036】
本明細書において、ChR2タンパク質の関連で使用する「同等の生物学的活性」とは、例えば光感受性、チャネル機能といった生物学的な活性の強さが実質的に同一であることを指す。またこの用語は、実質的に同質の生物学的活性を有する場合を含んでもよく、ここでいう「同質」の生物学的活性とは、光感受波長や、例えばイオン透過活性の性質が同一であることをいう。
【0037】
また、ChR2遺伝子としては、配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに限定されず、配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるChR2タンパク質と同等以上の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、「ChR2変異型ポリヌクレオチド」ともいう)を含む。
【0038】
本明細書において使用する「ストリンジェントな条件」とは、これに限定されるものではないが、例えば30℃〜50℃で、3〜4×SSC(150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)、0.1〜0.5% SDS中で1〜24時間のハイブリダイゼーション、より好ましくは40℃〜45℃で、3.4×SSC、0.3%SDS中で1〜24時間のハイブリダイゼーション、そしてその後の洗浄を含む。洗浄条件としては、例えば、2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、および1×SSC溶液、0.2×SSC溶液による室温での連続した洗浄などの条件を挙げることができる。ただし、上記条件の組み合わせは例示であり、当業者であればハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記の又は他の要素(例えば、ハイブリダーゼーションプローブの濃度、長さ及びGC含量、ハイブリダイゼーションの反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0039】
ChR2変異型ポリヌクレオチドは、天然に生じたものであってもよいし、人為的に変異を導入したものであってもよい。人為的な変異は、例えば部位特異的変異導入法、PCRを利用した変異導入法などを用いて常法により導入することができる(Proc Natl Acad Sci USA., 1984 81:5662;Sambrook ら., Molecular Cloning A Laboratory Manual (1989) Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology 1995 John Wiley & Sons)。
【0040】
また上述したChR2変異型ポリペプチド、又はChR2変異型ポリヌクレオチド若しくはChR2遺伝子の相同体遺伝子によってコードされるポリペプチドが、ChR2タンパク質と同等の生物学的活性を有するか否かは、例えば、電気生理学的手法を用いた膜電位記録や蛍光プローブを用いた細胞内イオン濃度変化を調べることによってアッセイすることができる。
【0041】
また本発明において、ChR2タンパク質として、必ずしもChR2タンパク質の全長を使用する必要はなく、光感受性とチャネル機能とを有する限り、ChR2タンパク質の断片を使用してもよい。
【0042】
かかるChR2タンパク質断片として、これに限定されるものではないが、ChR2タンパク質のN末端断片(アミノ酸残基1〜315)を挙げることができる。この断片をコードするポリヌクレオチドの一例を配列番号3に示し、配列番号3に示すポリヌクレオチドによりコードされるChR2タンパク質断片のアミノ酸配列を配列番号4に示す。本発明のChR2タンパク質断片は、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるChR2断片の変異体、すなわち配列番号4に示すアミノ酸配列において、10個以下、例えば2〜9個、2〜7個、2〜5個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド、或いは配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチドも包含する。
【0043】
1.2 蛍光タンパク質
本発明で使用する「蛍光タンパク質」は、可視光(すなわち、390nm〜770nmの波長光)で励起される際に光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するか、或いは、イオン濃度の変化に伴って光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発する、任意の蛍光タンパク質である。すなわち、本発明の蛍光タンパク質は、使用する光受容体チャネルタンパク質に応じて選択されるものである。蛍光タンパク質の存在により、光受容体チャネルタンパク質は直接入射する光と共に、蛍光タンパク質が発する光も受容することができるため、低照度(約110〜240 lux)での光受容体チャネルタンパク質の光受容量を増大させることができる。
【0044】
本発明で使用することができる蛍光タンパク質として、これに限定されるものではないが、Cyan蛍光タンパク質、例えばアネモニア・マジャノ(anemonia majano)由来のCyan、改変GFPであるVenus(例えばNagai T et al., Nat Biotechnol. 2002 Jan;20(1):87-90参照)、Cherry(例えばShaner NC et al., Nat Biotechnol. 2004 Dec;22(12):1567-72.参照)、mCFPm(例えばZacharias, D.A. et al., Science 296, 913-916 (2002)参照)、CyPet(例えばNguyen, A.W. & Daugherty, P.S; Nat. Biotechnol. 23, 355-360 (2005)参照)などを挙げることができる。
【0045】
本発明において特に好ましい蛍光タンパク質は、アネモニア・マジャノ由来のCyan遺伝子又は当該Cyan遺伝子に対応する相同体遺伝子によりコードされるCyanである。Cyanは458nmに励起ピークをもち、480nmピークの蛍光を発するタンパク質として知られており、その遺伝子配列及びアミノ酸配列も公知である(GenBank登録番号AF168421)。Cyanが発する480nmピークの蛍光は光受容チャネルタンパク質ChR2の感受波長であるため、ChR2タンパク質との組合せにおいてCyanを使用することが特に好ましい。
【0046】
ここで、「Cyan遺伝子に対応する相同体遺伝子」とは、アネモニア・マジャノとは異なる生物から単離された、Cyan遺伝子に対応する相同遺伝子をいう。相同遺伝子の単離方法の例は上記の通りである。なお、単離したCyan遺伝子の相同体遺伝子がCyan遺伝子と同様な機能を有するか否かをアッセイする手法については後述する。
【0047】
Cyan遺伝子の塩基配列の一例を配列番号5に示し、配列番号5に示す塩基配列によってコードされるCyanのアミノ酸配列を配列番号6に示す。なお、Cyan遺伝子によりコードされるCyanとしては、配列番号6に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドに限定されず、配列番号6に示すアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、付加又は挿入を有し、かつ配列番号6に示すアミノ酸配列からなるCyanと同等の光学的性質を有するもの、或いは配列番号6に示すアミノ酸配列と実質的に同一の配列相同性を有し、かつ配列番号6に示すアミノ酸配列からなるCyanと同等の光学的性質を有するもの(以下、「Cyan変異型ポリペプチド」ともいう)を含む。ここで、ストリンジェントな条件は前述のとおりである。
【0048】
本明細書において、Cyan変異型ポリペプチドの関連で使用する「数個」とは、前記定義の通りである。
【0049】
本明細書において、Cyanの関連で使用する「同等の光学的性質」とは、例えば励起感度、発光強度、励起ピーク、発行波長などの光学的性質が実質的に同一であることを指す。
【0050】
また、Cyan遺伝子としては、配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドに限定されず、配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、配列番号6に示すアミノ酸配列からなるCyanと同等の光学的性質を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、「変異型ポリヌクレオチド」ともいう)を含む。
【0051】
また上述した変異型ポリペプチド、又は変異型ポリヌクレオチド若しくはCyan遺伝子の相同遺伝子によってコードされるポリペプチドが、Cyanと同等の光学的活性を有するか否かは、例えば、変異タンパク質を精製し、蛍光あるいは分光光度計で波長を測定することによってアッセイすることができる。
【0052】
1.3 融合タンパク質の製造
本発明の融合タンパク質は、光受容体チャネルタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質である。本発明の融合タンパク質において、蛍光タンパク質は、好ましくは、光受容体チャネルタンパク質のN末端又はC末端で融合される。
【0053】
本発明の融合タンパク質は、光受容体チャネルタンパク質遺伝子(例えば配列番号1)及び蛍光タンパク質遺伝子(例えば配列番号5)の配列情報に基づき、遺伝子工学的手法により、製造することができる。
【0054】
具体的には、プロモーターと機能的に連結された、光受容体チャネルタンパク質遺伝子及び蛍光タンパク質遺伝子を含む融合ポリヌクレオチド(又は「融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド」とも称する)を、宿主菌体内で複製維持が可能であり、これらのタンパク質を安定に発現させることができ、該遺伝子を安定に保持できる発現ベクターに組み込み、得られた組換え発現ベクターを用いて宿主を形質転換し、宿主において融合タンパク質を生産させることができる。組換え技術については、Sambrookら(上記)、Ausubelら(上記)を参照することができる。
【0055】
発現ベクターとしては、これに限定されるものではないが、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(例えばpET28、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、及び他のプラスミドDNA)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5、及び他のプラスミドDNA)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50、及び他のプラスミドDNA)、λファージ(λgt11、λZAP等)、哺乳動物用プラスミド(pCMV、pSV40)、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどの動物ウイルスベクター、バキュロウイルスベクターなどの昆虫ウイルスベクター等)、植物用ベクター(バイナリベクターpBI系等)、コスミドベクターなどを用いることができる。
【0056】
本明細書で使用する「機能的に連結された」とは、プロモーター配列が目的のポリヌクレオチド配列の転写を開始することができるような、プロモーター配列と目的のポリヌクレオチド配列との間の機能的な結合をいう。
【0057】
プロモーターは特に制限されず、宿主に応じて適するプロモーターを選択すればよく、また当該技術分野で公知の構成的プロモーター、誘導性プロモーターのいずれを用いてもよい。本発明においては、特に構成的プロモーターを用いることが好ましい。例えば本発明において使用することができるプロモーターとして、CMVプロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター、シナプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、CaMVプロモーター、解糖系酵素プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、GAPDHプロモーター、GAL1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーターなどを挙げることができる。
【0058】
融合ポリヌクレオチドの発現ベクターへの挿入は、例えば、融合ポリヌクレオチドにフランキングする制限酵素部位を作製又は連結し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することにより行う。発現ベクターは、プロモーター及び融合タンパク質DNAの他、必要に応じてエンハンサー及び他のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー(アンピシリン耐性マーカー、テトラサイクリン耐性マーカーなどの薬剤耐性遺伝子マーカー、LEU1、TRP1、URA3などの栄養要求性相補遺伝子マーカー、APH、DHFR、TKなどの優性選択マーカーなど)、リボソーム結合部位(RBS)などを含んでもよい。
【0059】
宿主を形質転換するには、プロトプラスト法、スフェロプラスト法、コンピテントセル法、ウイルス法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、ジーンボンバートメント法、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション等を用いて行うことができる。また形質転換に使用する宿主は、本発明の融合タンパク質を発現できるものであれば特に制限されるものではなく、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母(Saccharomyces cerevisiae等)、動物細胞(COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
【0060】
得られた形質転換体は、資化しうる炭素源、窒素源、金属塩、ビタミン等を含む培地を用いて適当な条件で培養する。形質転換体の培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、25〜37℃で3〜6時間行う。培養期間中、pHは中性付近に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は、必要に応じて、組換え発現ベクターに挿入した選択マーカーに応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0061】
本発明の融合タンパク質は、形質転換体の培養により得られた培養物(培養上清、培養細胞、培養菌体、細胞若しくは菌体のホモジェネートなど)から一般的な方法によって分取や精製を行い、限外濾過濃縮、凍結乾燥、噴霧乾燥、結晶化等によって、その活性を保持するかたちで得ることができる。
【0062】
また上記形質転換に使用される融合タンパク質発現用ベクターは、後述するように、本発明の治療用途おいて有効成分として使用することもできる。この場合には、例えば網膜、視細胞、神経節細胞、双極細胞への導入効率、該細胞内での複製維持、安定性、発現効率等に優れたベクターを用いればよい。このようなベクターとして、これに限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクター、(自立複製可能な)プラスミドなどを挙げることができる。
【0063】
本発明の融合タンパク質発現用ベクターは、例えばTomita H et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Aug;48(8):3821-6;及びSugano E et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005 Sep;46(9):3341-8に記載される方法に従って製造することができる。
【0064】
2.治療用途
本発明の融合タンパク質は、視機能の回復をもたらす光受容体タンパク質に、蛍光タンパク質を融合させたものである。蛍光タンパク質は、可視光で励起される際に光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するか、或いは、光受容体タンパク質の光受容に伴うイオン濃度の変化に起因して光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するものが選択されているため、光受容体チャネルタンパク質は直接入射する光と共に、蛍光タンパク質が発する光も受容でき、低照度での光受容体チャネルタンパク質の光受容量を増大させることができる。
【0065】
したがって、本発明の融合タンパク質、及び融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、網膜外層の障害を患う被検体の治療に有用である。
【0066】
「網膜外層の障害」とは、網膜外層に存在する視細胞が変性、消失するなどして視機能不全又は視機能障害を生じているが、視細胞以外の細胞は依然として正常なままであるか又は機能の一部が保持されている任意の疾患をいう。本発明において、このような疾患として、これに限定されるものではないが、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、網膜はく離などを挙げることができる。
【0067】
本明細書で使用する「被検体」とは、網膜外層の障害に起因して、失明している被検体、又は失明のリスクを有する被検体を意味する。本発明において、被検体はヒトに限らず、ヒトを除くその他の哺乳動物又は鳥類動物であってもよい。その他の哺乳動物としては、例えばマウス、ラット、サル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどが挙げられる。
【0068】
また本明細書で使用する「網膜外層の障害を患う被検体の治療」とは、網膜外層の障害に起因して失明している又は失明のリスクを有する被検体において、本発明の医薬の投与前と比較して、視機能を回復すると共に、低照度での光感受性を増大することを指す。
【0069】
2.1 医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明の融合タンパク質、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分とし、網膜外層の障害を患う被検体を治療するための医薬として製剤化される。すなわち、本発明の医薬は、治療上有効量の融合タンパク質又は発現ベクターを含むものである。「治療上有効量」とは、所与の症状や用法について治療効果を与え得る量を指し、その量は、動物を用いた試験、臨床試験の実施により当業者によって適宜決定されるが、投与対象の被検体の年齢、体重、性別、疾患の状態又は重篤度、投与方法などが考慮されるべきである。ウイルスの場合、ウイルス量は、例えば1012〜1013capsids/ml(例えば、約1013capsids/ml)である。
【0070】
本発明の医薬の製剤化に際し、上記有効成分は1以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化される。薬学的に許容される担体としては、これに限定されるものではないが、各種緩衝液、例えば生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩などの緩衝液を挙げることができる。
【0071】
また本発明の医薬は、本発明による効果を阻害しない限り、上記成分以外の他の治療成分を含有させてもよい。かかる治療成分として、例えば網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、又は網膜はく離の治療剤として公知の薬剤が挙げられる。
【0072】
本発明の医薬は、例えば局所投与用の注射剤、又は点眼剤若しくは洗眼剤に製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、例えばアンプル又は複数回投与容器中の単位投与剤形として提供することができる。あるいは、本発明の医薬は、好適なビヒクル、例えば発熱物質不含の滅菌水などで使用前に再構成するための凍結乾燥剤としてもよい。
【0073】
本発明の医薬の投与は、被検体の患部、すなわち網膜への直接的な注射、又は硝子体への直接的な接触によって行うことが好ましい。
【0074】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
1.融合タンパク質発現性アデノ随伴ウイルスベクターの作製
ChR2Cyan融合タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-ChR2Cyan)を作製するために、まず、プラスミドベクターpAAVST-ChR2Cyanを作製した。
【0076】
クラミドモナスよりmRNAを抽出し、cDNAを合成し、下記に示すF1、R1プライマーを用いてPCRを行い、ChR2のアミノ酸残基1〜315に対応するChR2断片を増幅した。フォワード、リバースにそれぞれEcoRI、BamHIを付加した下記プライマーF2、R2を用いて、増幅したChR2を再度PCRを行い、EcoRI、BamHIサイトを付加し、pAAVSTのEcoRI、BamHIサイトに導入した。
F1 プライマー: ACCATGGATTATGGAGGCGCCCTG(配列番号7)
R1 プライマー: CTTGCCGGTGCCCTTGTTGA(配列番号8)
F2 プライマー: TGAATTCCACCATGGATTATGGAGGCGCCCTG(配列番号9)
R2 プライマー: GTGGATCCTTGCCGGTGCCCTTGTTGA(配列番号10)
【0077】
こうして作製したプラスミドベクターpAAVST-ChR2Cyanのプラスミドマップを図1に示す。
【0078】
また対照として、ChR2とVenus(Ex:515、EM:528;すなわちChR2の感受波長域と重ならない光を発する)との融合タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-ChR2Venus)を作製するために、Tomita H et al(前述)に記載の方法に従い、プラスミドベクターpAAVST-ChR2Venusを作製した。
【0079】
こうして作製したプラスミドベクターpAAVST-ChR2Cyan又はpAAVST-ChR2Venusと、ウイルス複製および外皮タンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミドpAAV-RCと、ウイルス複製起点を含むプラスミドpHelperの計3種を、培養293細胞に導入することによって、それぞれAAV-ChR2Cyan、AAV-ChR2Venusのウイルスを産生させた。ウイルス粒子はSSCP法によって精製した(文献Auricchio A, Hildinger M, O’Connor E, Gao GP, Wilson JM. Isolation of highly infectious and pure adeno-associated virus type 2 vectors with a single-step gravity-flow column. Hum Gene Ther. 2001;12:71-76.)。ウイルス力価をProgen社のAAV2 Titration ELISAキット(Progen Biotechnik, Heidelberg)を用いて測定した。このキットはウイルス外皮蛋白質に対する抗体を用いたELISAによるものである。
【0080】
精製したウイルス液はいずれも5 x 1012capsids/ml以上のウイルス液が得られた。これをPhasphate buffered saline(PBS)で5 x 1012capsids/mlに調整し、以下の実験に使用した。
【0081】
2.遺伝盲ラットにおける視機能能回復に伴う低照度での光感受性増大の検証
遺伝盲ラットとして、遺伝的に視細胞変性を来すRoyal College of Surgeons(RCS)ラットを用いた。ケタミン塩酸塩(33mg/kg)、キシラジン塩酸塩(66mg/kg)を筋注し、麻酔した。また、眼には点眼麻酔剤を点眼した。10μlのマイクロシリンジを用いて、硝子体内にウイルス溶液を5μl注入した。右眼にはAAV-ChR2Cyanを、左眼にはAAV-ChR2Venusを投与した。注入後、6週間から1週間毎に視覚誘発電位を測定した。視覚誘発電位測定のための刺激光として、青色LEDを用い、刺激光の強弱はLEDに供給する電流値で調整した。刺激光の照度は、刺激光から10cm離れた場所で測定した。
【0082】
240lux以上の光刺激では、AAV-ChR2Cyan、AAV-ChR2Venusともに視覚誘発電位の振幅に有意な差は認められなかった。AAV-ChR2Venus投与眼で240lux未満の刺激で光刺激に対する反応は見られなかったのに対し、AAV-ChR2Cyan投与眼では110lux以上の刺激で視覚誘発電位が記録され、その振幅は有意に高かった(図2)。
【0083】
このように、光受容体チャネルタンパク質と、該タンパク質の感受波長の光を発する蛍光タンパク質との融合タンパク質は、これを導入した遺伝盲ラットにおいて、視機能の回復と共に、光受容体チャネルタンパク質の光感受性を有意に増大することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、実施例において使用したアデノ随伴ウイルスベクターAAV-ChR2Cyanの作製に使用したプラスミドベクターpAAVST-ChR2Cyanのプラスミドマップを示す。
【図2】図2は、本発明の融合タンパク質を発現する遺伝盲ラットにおいて、低照度での光感受性が改善されたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光受容体チャネルタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質であって、前記蛍光タンパク質は可視光で励起される際に前記光受容体チャネルタンパク質の感受波長の光を発するものである、前記融合タンパク質。
【請求項2】
光受容体チャネルタンパク質は、チャネルロドプシン-2(ChR2)である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
チャネルロドプシン-2は、クラミドモナス・レインハルトチイ(chlamydomonas reinhardtii)由来のものである、請求項2記載の融合タンパク質。
【請求項4】
光受容体チャネルタンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、請求項1記載の融合タンパク質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
【請求項5】
光受容体チャネルタンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、請求項1記載の融合タンパク質。
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の生物学的活性を有するポリペプチド
【請求項6】
蛍光タンパク質はCyan蛍光タンパク質である請求項1〜5のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Cyan蛍光タンパク質はアネモニア・マジャノ(Anemonia majano)由来のものである請求項6記載の融合タンパク質。
【請求項8】
蛍光タンパク質は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のポリペプチドである、請求項1〜5のいずれか1項記載の融合タンパク質。
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、かつ(a)のポリペプチドと同等の光学的性質を有するポリペプチド
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ(a)のポリペプチドと同等の光学的性質を有するポリペプチド
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
プロモーターと機能的に連結された、請求項9記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
ウイルスベクターである請求項10記載の発現ベクター。
【請求項12】
網膜外層の障害を患う被検体を治療するための医薬の製造における、請求項1〜8のいずれか1項記載の融合タンパク質、又は請求項10若しくは11記載の発現ベクターの使用。
【請求項13】
網膜外層の障害は、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症又は網膜はく離である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項記載の融合タンパク質、又は請求項10若しくは11記載の発現ベクターを有効成分として含む、網膜外層の障害を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
網膜外層の障害は、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症又は網膜はく離である、請求項14記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−213430(P2009−213430A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62402(P2008−62402)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:日本再生医療学会 刊行物名:日本再生医療学会雑誌 再生医療 (第7回日本再生医療学会総会 プログラム・抄録) 巻数:第7巻 増刊号 掲載頁:167頁 刊行物発行年月日:平成2008年2月22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、科学技術振興調整費による成果である特許出願、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】