説明

網膜活性化レーザ装置

本発明は、網膜活性化のために使用されるレーザ治療装置である。このレーザ治療装置は、50psから500nsまでの範囲内にあるパルス継続期間と、500nmから900nmまでの範囲内にある波長と、10μJから10mJまでの範囲内にあるパルスエネルギとを有する1つ又は一連のレーザパルスを発生させるレーザモジュールを備えている。このレーザ治療装置は、前記レーザモジュールの出力ビームプロフィルを修正して均一の治療効果を発生させる均一放射照度モジュールと、パルス毎の放射露光が8mJ/cmから8000mJ/cmの範囲内にある状態で、前記1つ又は一連のレーザパルスを網膜に配送するビーム配送及び観察モジュールとを更に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の目の網膜の機能を向上させることに有効なレーザ治療装置に関する。本発明は、例えば病因の一部としてブルッフ膜の機能が低下する早期の加齢黄斑変性症(AMD)等の眼疾患の治療、又は老化による劣化の治療に有効に使用されることが可能である。
【背景技術】
【0002】
人間の網膜の光覚及び信号伝達工程では、最善の機能性を確保するために、エネルギの供給及び廃棄物の除去に関しては、高水準のサポートが必要である。網膜色素上皮(RPE)として知られている上皮細胞の単分子層は、光覚と脈絡膜の血液供給からの信号伝達工程とを分離し、多数の双方向性のサポート機能を制御している。このPRE細胞は、ブルッフ膜として知られている基底膜に付着されており、この基底膜は、同RPE細胞と脈絡膜の血管との間における半透明の障壁として機能するコラーゲン層の細胞外基質である。非特許文献1は、ブルッフ膜の輸送機能の退化が通常の老化に伴う視覚機能の喪失又は低下、或いは例えば加齢黄斑変性症(AMD)等の病気に起因する更に速い低下の主な促進要素であることを示している。これらの輸送機能は生まれてから退化し始めるが、本格的な失明は、以後の人生においてRPE/ブルッフ膜/脈絡膜合成物が神経網膜を維持できない状態に退化し、結果として神経網膜の萎縮又は例えば脈絡膜新生血管(CNV)の成長等のストレス誘導反応が発生するまでは、発生しない。
【0003】
老化による視力の喪失の速度を低下させるために、食習慣及び環境の変化が勧められているが、網膜のための直接の治療は存在せず、しかも、現在のAMDのための治療は、殆ど例えばCNV’s等の晩期の合併症に注目している。現在のCNV’sのための治療は、光線力学的治療(PDT)(特許文献1に記載のように)と、新たな血管の成長を促進する成長因子を抑制する薬(anti−VEGF)の硝子体内注射とを含み、その光線力学的治療においては、光感受性薬が静脈に注射され、そしてCNVに向けられる光源により活性化される。
【0004】
レーザは、長年にわたって網膜疾患を治療するために使用されており、主にその組織を凝固する能力が使用されている。網膜層及び組織におけるレーザのエネルギの吸収度合は、使用される波長に高度に依存しており、網膜における主な吸収発色団の1つは、RPE細胞を着色する黒色素である。現在の網膜レーザ装置は、RPE細胞の黒色素によって強く吸収される波長を使用しているが、現在使用されているレーザパルスの継続期間は、RPE細胞から隣接構造への熱拡散の時間を与え、特に神経網膜に損傷を与えて、結果として治療部位における視覚機能が永久に喪失される。非特許文献2は、選択的な網膜治療(SRT)を用いることにより、短い継続期間のレーザパルスが、エネルギをRPEに封じ込むとともに、神経網膜への損傷を防止するように使用されることが可能であることを開示している。SRTは、RPEのレベルにおける創傷治癒反応を開始することにより、治療的有効性を発生させることをその目的として多数の晩期の網膜疾患に応用されているが、限られた成果しかなく、しかも、何故このような方法で好適な効果を得られるかは、説明されていない。
【0005】
SRT方法は、特許文献2において十分に説明されており、この公報において、レーザ読み取り装置が非常に短い照射時間を提供するように使用されている。この特許公報は、ナノ秒の継続露光が要求されることを記載しているが、記載された読み取り方法を使用してその要求される放射露光のレベルを実現することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5756541号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20040039378号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Marshall、Hussain、Guo、Ahir,「人間の網膜色素上皮細胞からのメタロプロテアーゼの発見、及びこれらによるブルッフ膜の透水係数への影響」、Invest Ophthalmol Vis Sci.,2002年2月,43(2):458−65
【非特許文献2】Roider、Norman、Michaud、Thomas、Flotte、Birngruber,「選択的な光凝固に対する網膜色素上皮の反応」,Arch Ophthalmology Vol 110,1992年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、人間の目の網膜の機能を向上させるレーザ装置を提供することにある。
別の目的は、以下の記載により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの形態において、これが唯一又は実に最も広い形態でなくてもよく、人間の目の網膜の機能を向上させるためのレーザ治療装置に存在する本発明は、50psから500nsまでの範囲内にあるパルス期間と、500nmから900nmまでの範囲内にある波長と、10μJから10mJまでの範囲内にあるパルスエネルギとを有する1つ又は一連のレーザパルスを発生させるレーザモジュールと、前記レーザモジュールの出力ビームのプロフィルを修正して均一の治療効果を発生させる均一放射照度モジュールと、パルス毎の放射露光が8mJ/cmから8000mJ/cmの範囲内にある状態で、前記1つ又は一連のレーザパルスを前記網膜に配送するビーム配送及び観察モジュールとを備える。
【0010】
好ましくは、前記パルス継続期間は約3nsである。また、前記波長は、約532nmである。
前記放射露光はパルス毎に20mJ/cmから300mJ/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0011】
このレーザシステムは、本願出願人の同時継続の国際特許出願No.PCT/AU2007/001622に記載の網膜活性化方法を実行することに適切である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】網膜活性化レーザ装置のブロック図。
【図2】図1の網膜活性化レーザ装置のレーザモジュールのブロック図。
【図3】図1の網膜活性化レーザ装置の均一放射照度モジュールのブロック図。
【図4】図1の網膜活性化レーザ装置のビーム配送及び観察モジュールのブロック図。
【図5】アルミニウム目標に適用されたレーザパルスのエネルギ分布プロフィルを示す図。
【図6】均一放射照度モジュールを通過した後の同レーザパルスのエネルギ分布プロフィルを示す図。
【図7】同じ目標域に発射されて異なるスペックルパターンを有する多波長レーザパルスの図表示。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の様々実施形態の説明において、共通の参照番号は類似の部材を示すように使用される。
図1には、網膜活性化レーザ装置1のブロック図が示されている。この網膜活性化レーザ装置1は、レーザモジュール2(図2においてより詳細に示されている)と、均一放射照度モジュール3(図3においてより詳細に示されている)と、ビーム配送及び観察モジュール4(図4においてより詳細に示されている)とによって構成されている。レーザビーム5は、レーザモジュール2によって発生し、均一放射照度のために均一放射照度モジュール3により操作され、そのビーム配送及び観察モジュール4により患者の目6に向けられる。ビーム配送及び観察モジュール4は、操作者7のための同時観察経路を含む。
【0014】
図2に示されるように、網膜活性化レーザ装置1の好ましい実施形態は、一般に1064nmのレーザパルスを発生させるQスイッチフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザ装置を使用している。レーザ空洞200は、100%反射の端面鏡201と部分反射の出力結合器202とを備える従来の設計である。レーザロッド203は、高圧電力供給装置205によって加圧されるフラッシュランプ204により励起される。パッシブなQスイッチ206は、空洞エネルギが非常に短い高エネルギのパルスとして配送されることを許容する。レーザ出力は、適切な周波数倍増水晶207により約532nmに変換される。
【0015】
レーザ出力の特定波長がレーザ媒質及び光学上の配置により決められることは望ましい。好ましい実施形態においては、レーザ出力の公称波長は532nmであるが、実際の波長は厳密に532nmでなくてもよい。
【0016】
フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザ装置は、レーザ空洞のための好ましい実施形態であるが、本発明はこの特定の空洞設計に限らない。500nmと900nmとの間にある波長と、10DJから10mJまでの間にあるパルスエネルギとを有し、50psから500nsまでの範囲内にあるパルスを発生させることのできる全てのレーザ空洞は適切である。これは、例えばEr:YAG、Nd:YLF及びEr:YLF等の固体材料を含む。別の要素を変更することもできる。例えば、パッシブなQスイッチの代わりに、アクティブなQスイッチを使用することができる。
【0017】
ビームは、半波長板209及び偏光鏡210により構成された光減衰器208に向けられている。この光減衰器は、半波長板209の回転により、レーザモジュール2から配送されたエネルギを好適に制御することができる。レーザモジュール2は、照準レーザ装置212からの出力をレーザモジュールの出力と同じ経路に(レーザ治療ビームと照準レーザビームとが同軸になるように)合成するビーム合成鏡211を更に備える。
【0018】
レーザモジュール2からのレーザ治療ビームの出力は、非均一な、且つ少し変化するエネルギ分布プロフィルを有する。これが直接に目標治療域に照射するように使用される際に、一部の領域は比較的に低い照射強度を受ける一方、他の領域は比較的に高い照射エネルギを受ける。これは、以下に図5及び図6を参照して実例よって説明される。この問題に対処するために、レーザ治療ビーム及び照準レーザビームは、均一放射照度モジュール3に向けられる。均一放射照度モジュール32は、治療レーザ及び照準レーザビームの焦点を光ファイバ301に合わせるファイバ焦点レンズ300を備えている。光ファイバ301の各端部は、正確な照準を促進する移動可能な接続部材302で終わる。
【0019】
レーザ光が光ファイバを通過するように向けられた際に、複数の伝播モードの間の干渉により、斑点(スペックル)と呼ばれる出力においてレーザエネルギの粒状の空間的分布が発生する可能性がある。図3に示されるように、パルス状のレーザ出力を光ファイバを通すことにより、そのファイバに進入するエネルギ分布プロフィルの構造は、光ファイバの長手方向に沿った多重内部反射に起因して喪失され、結果としてファイバの出力において斑点のプロフィルが発生する。このような単一のパルスは、スペックルパターンのピークの間におけるいくつかの領域が低い放射強度を受けることにより、治療のために使用されることが可能であり、結果として均一、しかし不完全な治療効果が得られる。
【0020】
しかしながら、レーザがエネルギ分布プロフィルにおいて多少の変化性を有するため、同様の目標治療域に向けられることが可能な別のパルスを発生させることにより、異なるスペックルパターンがその光ファイバによって発生する。レーザパルスにより発生するスペックルパターンがランダムな特性を有するために、2つ目のパルスのスペックルパターンにおける多数のピークは、1つ目のパルスにおいて低照射が発生した領域に発生し、結果として目標治療域の被覆範囲が改善される。同じ目標治療域に向けられる次のレーザパルスは、その被覆範囲を更に改善し、その被覆範囲が100%に接近する際に、連続パルスにより統計的に比較的に少量の改善が発生する。
【0021】
従って、配送されてスペックルパターンを有するレーザパルスの数を選択することにより、目標治療域において選択された被覆範囲において、均一な治療効果を発生させることができる。異なる光学特性、例えば開口数を有する光ファイバを使用することにより、レーザスペックルの粒状性を変更することもできる。レーザ治療点のサイズに関連する目標治療域の被覆範囲及び斑点の粒状性を選択することにより、創傷治癒反応及び治療的有用性を最適化することができる。好ましくは、パルスの数は1から5までの範囲内にあり、ファイバの開口数は0.1から0.35までの範囲内にある。
【0022】
本発明の別の実施形態において、パルス状のレーザは、非均一、しかし安定したエネルギ分布プロフィルを有し、また、この装置は、各パルスによって発生する様々なスペックルパターンの確率を向上させるために、光ファイバ振動器303を含むことができる。この振動器303は、図3に示されるように機械的にファイバに連結され、オフセット軸荷重を備えることにより振動を発生させる小さなモータであってもよく、代わりに圧電変換器を同じよう使用することもできる。ファイバにおける内部反射を変更するとともに連続的にスペックルパターンを変更する振動手段は、ファイバにおいて少量の連続変化側面又は角変位を発生させる。パルス重複率は、ランダムな異なるスペックルパターンを発生させるために、振動手段によるファイバの十分な動作を許容する十分に低い値でなければならない。フラッシュランプ励起レーザ空洞の場合は、このパルス重複率は、多重放電コンデンサを充電し、そして電気スイッチ及び制御システムによりフラッシュランプを通じてそれらのコンデンサを各別に放電することにより、得ることができる。例えば、オフセット軸荷重を有し、10000RPMの速度で非同期的に運転するモータは、約6ms毎に軸の一回の回転を発生させ、その結果、約33Hz又はより低いパルスの重複率により、各パルスにおいて異なるスペックルパターンを確保することができる。
【0023】
光ファイバの振動は、レーザ治療ビームと同じ光ファイバを通過する同軸照準レーザのスペックルパターンを大きく低減する、という更なる効果を有し、その結果、有効性を向上させる。
【0024】
均一放射照度モジュール3からの出力は、図4に示されるビーム配送及び観察モジュール4に向けられている。このビーム配送及び観察モジュール4は、光学ズームモジュール400を備えている。この光学ズームモジュール400は、レーザ治療ビーム401を大きさによって分けるとともに、対物鏡402を通じてレーザ治療ビーム401の焦点を患者の目6の網膜403に合わせる。目6の角膜405におけるコンタクトレンズ404は、一般に光学経路において角膜と目のレンズとの効果を中和するように使用される。通常、双眼顕微鏡408が使用される。折り畳みミラー406は、レーザ治療ビーム401及び照準レーザビーム407の波長において反射機能を有し、双眼観察経路の間に位置する。安全フィルタ409は、後方散乱レーザ線から使用者を保護している。
【0025】
光学ズームモジュール400は、光ファイバの出力をコンタクトレンズにより網膜に映すように予めセットされることが可能である。また、同モジュール400は、治療スポットの寸法選択を許容するように調整可能に製造されることも可能である。
【0026】
上述したように、レーザモジュール2からの出力は、非均一なエネルギ分布プロフィルを有するビームである。これは、図5に示されている。3nsのパッシブなQスイッチフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザパルスのエネルギ分布プロフィルは、塗装されたアルミニウム目標に適用されて非均一な分布プロフィルを表示する。目標治療域は、円形50により示されている。1つ、2つ、3つ、4つ及び5つのパルスに対応する目標域において発生する損傷は、連続的に示されており、単一のパルスからの損傷は一番上に示されており、一番下には5つのパルスが同じ目標域に配送された後の損傷が示されている。5つのパルスが目標域に配送された後においても、該領域の約50%はまだ作用されていないことが分かる。
【0027】
目標は色素性の上皮細胞層である場合、細胞の一部は完全の照射強度を受けないこととなる。そして、エネルギプロフィルが各パルスにより少し変化した場合であっても、更にパルスを同じ領域に供給することにより被覆範囲を大きく拡大することはない。
【0028】
図6は、レーザ治療ビームが均一放射照度モジュール3及びビーム配送及び観察モジュール4を通った後の1つ、2つ及び3つのパルスの同じ結果を示している。この場合も、目標治療域は円形50によって示されている。一番上の画像は、単一のパルスに起因する損傷である。2つ目の画像は、重複率が高く、且つ光ファイバの振動がない状態で、同じ目標域に配送される3つのパルスに起因する損傷を示している。一番下の画像は、重複率が比較的に低く、且つ光ファイバの振動がある状態で、同じ目標域に配送された5つのパルスによる損傷であり、この画像は、殆ど100%の治療域が作用されたことを示している。手動でレーザの発射を制御することにより、重複率がファイバの振動率と比較して低いことを確保している。
【0029】
図7は、共通の目標治療域50に発射され、異なるスペックルパターンを有する多波長レーザパルス(71−74)の図表示であり、図6における画像を更に説明するための図である。スペックルパターンのピークは、黒い点75により表現されており、レーザパルス71及び72の累積作用は、76によって示されている。レーザパルス73の追加により画像77に示される結果が得られ、レーザパルス74の追加により画像78に示される結果が得られる。各連続のパルスの異なるスペックルパターンのピークの累積作用により、治療域の被覆範囲を増大し、その被覆範囲の度合を目標治療域に配送されるパルスの数により決定できることが分かる。
【0030】
この技術が例えば人間の目のRPE等の色素性細胞層の治療に応用される際に、パルスの間に相加効果がないようにパルスの間隔を選択することができるため、連続のパルスにおける同じ位置に発生するスペックルパターンのピークは、それらの領域において増加された治療効果を発生させることはない。例えば、3nsのレーザパルス継続期間と1kHzのパルス重複率とが使用された場合、多重パルスによる付加的な熱効果が発生しない。パッシブなQスイッチフラッシュランプ励起レーザが図2に示されるように使用された場合、多重パルスは、フラッシュランプから放出されるエネルギを増大すること、又は多重放電コンデンサを充電し、そして電気スイッチ及び制御システムによりフラッシュランプを通じてそれらのコンデンサを各別に放電することにより得ることができる。
【0031】
50psから500nsまでの範囲内にあるパルス継続期間を使用することにより、RPE細胞は、細胞内のメラノソームの周囲における爆発性の気泡構造により殺され又は変性されることが可能であり、熱効果が完全に細胞に封じ込まれ、周囲の細胞又は構造への付随的な損傷が抑制される。パルスの長さが50ピコ秒よりも短い場合、レーザパルスが短すぎて、全てのパルスエネルギは、音波が光学経路を横断するために必要な時間よりも短い時間で沈積し、これによりビーム経路に沿って光切断等の機械的な損傷が発生する可能性がある。パルスの継続期間が約500ナノ秒よりも長い場合、特にメラノソームが光受容体と一緒にインターフェースの周囲に集められる位置には、熱効果を上述の細胞に完全に封じ込むことができない可能性があり、これにより、結果としてRPE/光受容体インターフェースに永久的な損傷を与えるおそれがある。
【0032】
上述した網膜活性化レーザ装置は、以下のように使用されて人間の目の網膜機能を向上させることができる。様々な診断技術は、治療される網膜疾患に基づき、レーザ治療に適切な患者を選択し、レーザ治療域を決定することに応用されることが可能である。例えば、糖尿病性黄斑浮腫のために、走査レーザ検眼鏡検査法及び断層映像法を用いて浮腫の領域を確認することが有効であり、早期AMDの場合は、暗適応テスト及び自己蛍光現像を用いて障害が起きた網膜機能を確認することができる。
【0033】
この技術はRPE細胞の移動及び分裂に依頼するため、網膜機能が低いと確認された領域を目標とせずに、RPE細胞が健康である領域を治療することが重要である。例えば、自己蛍光撮像により、障害が起きたRPE機能を示す超蛍光領域が確認された場合、レーザ治療は、その領域の中央部ではなく、該領域の外周に実行されるべきである。
【0034】
そして、1X Mainster網膜コンタクトレンズ、又は類似のものが患者の目に応用される。約0.1mJのエネルギが選択され、約400マイクロの網膜治療点のサイズが選択される。レーザは治療域の外周に発射され、治療点は、同治療点の直径の約半分の間隔をおいて分布している。可視気泡形成の閾値の直下にまでエネルギを徐々に増大することができる。各目標治療域に配送されるレーザパルスの数は、最善の医療効果及び最善の創傷治癒反応を提供するように選択されることが可能である。
【0035】
発明者は、この網膜活性化レーザ装置が広い範囲の治療のために有効であることを想定している。以上の説明は、そのレーザ装置の応用の一例を示しているが、同レーザ装置の応用はその治療に限ることを意味していない。本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、好ましい実施形態のために説明された1つ又は2つ以上の要素の代わりに具体的な光学要素を用いることができることを当業者は理解するであろう。上記実施形態の全文の目的は、本発明を好ましい特徴又は実施形態の特定の組合せに限定せずに本発明を説明することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ治療装置であって、
50psから500nsまでの範囲内にあるパルス継続期間と、500nmから900nmまでの範囲内にある波長と、10μJから10mJまでの範囲内にあるパルスエネルギとを有する1つ又は一連のレーザパルスを発生させるレーザモジュールと、
前記レーザモジュールの出力ビームのプロフィルを修正して均一の治療効果を発生させる均一放射照度モジュールと、
パルス毎の放射露光が8mJ/cmから8000mJ/cmの範囲内にある状態で、前記1つ又は一連のレーザパルスを前記網膜に配送するビーム配送及び観察モジュールと
を備えるレーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ治療装置において、前記レーザモジュールは、1つから5つまでのレーザパルスを発生させるレーザ治療装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ治療装置において、前記レーザモジュールは、3つのパルスを発生させるレーザ治療装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、パルスの継続期間は約3nsであるレーザ治療装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、前記レーザモジュールはQスイッチ固体レーザを含むレーザ治療装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、周波数倍増水晶を更に備えるレーザ治療装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、前記波長は約532nmであるレーザ治療装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、パルス毎に20mJ/cmから300mJ/cmの範囲内にある放射露光を発生させるレーザ治療装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、前記レーザモジュールは光減衰器を備えるレーザ治療装置。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ治療装置において、前記光減衰器は半波長板及び偏光鏡を備えるレーザ治療装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、前記均一放射照度モジュールは光ファイバを備えるレーザ治療装置。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ治療装置において、前記光ファイバは0.1から0.35までの範囲内にある開口数を有するレーザ治療装置。
【請求項13】
請求項11に記載のレーザ治療装置において、前記均一放射照度モジュールは光ファイバ振動器を更に備えるレーザ治療装置。
【請求項14】
請求項11に記載のレーザ治療装置において、前記均一放射照度モジュールは、オフセット荷重軸を有し前記光ファイバを機械的に振動させるモータを更に備えるレーザ治療装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載のレーザ治療装置において、前記ビーム配送及び観察モジュールは光学ズームモジュールを備えるレーザ治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−527715(P2010−527715A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509626(P2010−509626)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000763
【国際公開番号】WO2008/144828
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509118639)エレックス アールアンドディー プロプライエタリー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ELLEX R&D PTY LTD
【Fターム(参考)】