説明

綿棒容器

【課題】 包装を破るだけで薬液を含浸した綿棒を取り出せる手間いらずタイプの綿棒容器において、薬液が綿棒の軸を濡らすという事態を防止できる綿棒容器を提供する。
【解決手段】 綿棒容器10は容器本体20とその上面開口をシールするフィルム状の蓋体30を備える。容器本体20には綿棒1の綿球部2を入れる綿球部収納凹部21、綿棒1の軸尾3aを入れる軸尾収納凹部22、及び軸3の中間部分を入れる中間部分収納凹部23が形成される。中間部分収納凹部23には、綿棒1のネック部に向かって突出し、軸3を両側から挟んで保持するリブ24a、24b、24cと、軸3を下から支える枕部25a、25b、25c、25dが形成される。リブ24a、24cは中間部分収納凹部23の一方の内壁から、リブ24bは他方の内壁からと、互い違いにリブが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用の綿棒を封入する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外科医療では、軸端に綿球を取り付けた綿棒が頻繁に使用される。通常は、ビンや袋に詰められた未使用の綿棒の中から何個かを取り出し、それらの綿球部を万能つぼやステンレスバットなどの容器に入れる。そしてポピドンヨード、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルアミノエチルグリシン、消毒用エタノール、イソプロパノールといった消毒薬などの薬液を綿球部に含浸する。薬液が綿球部に十分含浸したら軸をつまんで綿棒を取り上げ、手術部位や創傷部などの患部に薬液を塗布する。
【0003】
このようにその都度綿棒に薬液を含浸させていたのでは、必要以上の数の綿棒に薬液を含浸させてしまう可能性がある。薬液含浸後の綿棒を空気中に放置しておくと、薬液が時間の経過とともに揮発したり成分が変質したりし、所期の薬効を得られなくなる。また空気中の細菌や胞子類が綿棒に付着し、繁殖するおそれもある。従って、医療行為が一段落すれば、使用した綿棒も使用しなかった綿棒も一緒に廃棄せざるを得ない。これは資源の無駄である。
【0004】
また、一刻を争う事態が発生したときに薬液含浸作業を行うと、急ぐあまりに薬液の調製を間違えたり、綿球部に注ぐ量を誤ったりして、不適切な綿棒を作ってしまう可能性も大きい。
【0005】
そして、万能つぼやステンレスバットなどの容器は使用の度に洗浄、滅菌、乾燥を行わねばならず、手間がかかる。また薬液はその都度計量、希釈などして調製することになるが、薬液の入った瓶の蓋の開け閉めが度重なると、薬液が空気中の水分を吸収して有効成分の濃度が低下したり、薬液成分が揮発したり、薬液成分が空気に触れて分解したりして薬液の効力が低下するという問題もある。
【0006】
これらの問題に対処するため、1本からせいぜい3本くらいの綿棒を薬液と共に容器に密封するというアイデアが生まれた。例えば特許文献1には綿球に消毒液をしみ込ませた綿棒を1本ずつ気密性樹脂製フィルム内に滅菌密封した包装形態が開示されている。特許文献2には1回の消毒作業に必要な量の消毒液と綿棒を袋状密封体に収納した包装形態が開示されている。特許文献3には薬液と綿棒を別の区画に収め、薬液側の区画に圧力をかけることにより薬液が綿棒側に出て含浸するようにした包装形態が開示されている。特許文献4には綿棒と薬液を隣接した状態で包装材料内に収納し、綿棒で隔離部を破断して綿棒を薬液に接触させるようにした包装形態が開示されている。特許文献5には容器内に薬液袋と綿棒を配置し、容器の上方開口を閉成する剥離材を剥離すると薬液袋が破れて薬液が綿棒に含浸する構造の包装形態が開示されている。
【特許文献1】実開平6−11721号公報(第6−7頁、図1−4)
【特許文献2】実用新案登録第2557914号公報(第2−3頁、図1−3)
【特許文献3】実用新案登録第3077988号公報(第3−4頁、図1−3)
【特許文献4】実開平7−39818号公報(第4−6頁、図1−2)
【特許文献5】特開平10−86977号公報(第3−5頁、図1−9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示された包装形態は、予め薬液を含浸させた状態の綿棒を包装している。この場合、綿棒の綿球部に含浸させた薬液が往々にして軸側にしみ出し、軸の外面を濡らす。薬液で濡れた箇所に指が触れると指が薬液で汚れるので、手を拭いたり洗ったりしなければならない。薬液が指に付着したにもかかわらず、それを気付かないでいると、あちこちに薬液をつけて回ることになる。また、薬液で濡れた軸をつまんでいると軸が滑って指から離れる可能性もある。さらに、保管時や輸送時に包装が外圧を受けると綿球部が押しつぶされて使用しづらく、また、綿球部から薬液が押し出されて薬液量不十分になってしまう可能性がある。特許文献1、2に開示された包装形態はいずれも、これらの問題に対し有効な対策が講じられていない。
【0008】
特許文献3、4、5に開示された包装形態では、綿棒と薬液とは別々の区画に封入されており、使用直前に薬液の区画を破って綿棒に含浸させる。この構成によれば、薬液が綿棒の軸を濡らす可能性は比較的低い。しかしながら正確に計量した薬液をノズルから綿球部に含浸させるのと異なり、手作業で綿球部に薬液を含浸させるので、軸の部分にまで薬液を広げてしまう可能性は否定できない。加えて、このような薬液分離方式の包装形態は、構造が複雑化して製造コストがかさむうえ、綿球部に薬液を含浸させた使用可能状態の綿棒が得られるまでに時間がかかるという問題もある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、包装を破るだけで薬液を含浸した綿棒を取り出せる、手間いらずタイプの綿棒容器において、薬液が綿棒の軸を濡らすという事態を防止できる綿棒容器を提供することを目的とする。また、綿棒の取り出しが容易な綿棒容器を提供することを目的とする。さらに、綿球部の外圧による変形を防止することで使い易く、且つ薬液量の減少を招くことなく所望量の薬液を含浸し続けさせることのできる綿棒容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するため、本発明では、軸の一端に薬液を含浸した綿球部が取り付けられた綿棒を入れる容器本体と、この容器本体の上面開口をシールするフィルム状の蓋体とを備えた綿棒容器において、前記容器本体は一端に綿球部収納凹部、他端に軸尾収納凹部を備え、この容器本体の内面には綿棒の軸を両側から挟んで保持するリブ及び前記軸を下から支える枕部を形成する。
【0011】
(2)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記リブは、平面的に見て、綿棒の綿球部を前記綿球部収納凹部の中央に保持する一方で、綿棒の軸尾を前記軸尾収納凹部の片側に寄せて保持するものとする。
【0012】
(3)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記リブは、前記容器本体の両側の内壁から互い違いに突出するものとする。
【0013】
(4)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記綿球部収納凹部と軸尾収納凹部の間に、綿棒の綿球部と軸尾の中間部分を収納する中間部分収納凹部を形成するとともに、この中間部分収納凹部は綿球部収納凹部及び軸尾収納凹部よりも浅く形成する。
【0014】
(5)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記枕部が綿棒の長さ方向に沿って複数箇所に形成されるとともに、これら複数の枕部は、軸尾側のものほど高く形成されている。
【0015】
(6)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記容器本体の上面に前記蓋体の溶着用凸条を、前記綿球部収納凹部、中間部分収納凹部、及び軸尾収納凹部を囲んでループ状に形成するとともに、この溶着用凸条には、綿球部収納凹部の中間部の位置に溶着面積拡張部を形成する。
【0016】
(7)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、前記容器本体を複数個、分断可能な接続部を介して連設する。
【0017】
(8)また本発明では、前記構成の綿棒容器において、連設する容器本体の個数を3とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)綿棒の軸を両側からリブで挟んでいるので、綿球部からしみ出した薬液が万一綿棒の軸の側面を伝わるようなことがあったとしても、それは軸の側面に接触するリブによってせき止められ、軸尾の方まで伝わらない。また、綿球部からしみ出した薬液が軸の下面を伝わってきたとしても、それは枕部によってせき止められ、軸尾の方まで伝わらない。従って、常に薬液に濡れていない軸をつまめることになり、指が薬液で汚れたり、薬液で軸が滑ったりすることがなく、適切且つ安全に綿棒を扱うことができる。
【0019】
(2)綿棒の軸尾が、平面的に見て、軸尾収納凹部の片側に寄せて保持されるから、軸尾収納凹部に指先を入れて軸尾を引き上げる動作を難なく行うことができる。
【0020】
(3)容器本体の両側の内壁から互い違いに突出するリブにより軸を挟んで保持するから、軸の弾性を利用して、無理のない、しかも安定した綿棒の保持を行うことができる。
【0021】
(4)綿棒の綿球部と軸尾の中間部分を収納する中間部分収納凹部は綿球部収納凹部及び軸尾収納凹部よりも浅い。これにより容器の容積が小さくなり、綿棒と共に封入される空気量が減るので、空気が薬液に及ぼす影響を小さくすることができる。また、加熱滅菌時の容器の変形を少なくすることができる。
【0022】
(5)複数の枕部は、軸尾側のものほど高く形成されているから、綿棒軸は軸尾側が高くなるように傾斜して支持され、軸尾の下に指先を入れやすく、綿棒の取り出しが一層容易になる。
【0023】
(6)容器本体の上面に形成された蓋体の溶着用凸条は、綿球部収納凹部の中間部の位置に溶着面積拡張部を有するから、軸尾の側から蓋体を剥離して行ったとき、溶着面積拡張部で剥離抵抗が増えるのを感じる。ここで剥離をやめれば、剥離されないで残った蓋体と容器本体とが一種のポケット部を構成する。このポケット部の存在により、綿球部収納凹部が下になるように綿棒容器を傾けるか、あるいは立てたとしても、綿棒容器の中から薬液がこぼれることはなくなる。
【0024】
また、容器が常に水平を保って運搬されれば良いが、往々にして、傾けられたり、倒立させられたり、天地反転されたりといった扱いを受ける。このような場合、綿球部からしみ出した薬液が、溶着用凸条に至るまでの容器本体の上面と、蓋体との間の隙間にしみ込む。隙間にしみ込んだ薬液が毛管現象で軸尾の方まで伝わると、軸尾の方から蓋体を剥離しても、その指先を汚すことになる。しかしながら本発明の構成によれば、そのような毛管現象によるしみ出しは溶着面積拡張部でせき止められ、軸尾の方まで伝わらない。従って指先を薬液で汚すことを懸念することなく蓋体を剥離することができる。
【0025】
(7)容器本体を複数個、分断可能な接続部を介して連設したから、箱詰めや保管に便利である。また、必要な個数の容器を切り離して綿棒を必要とする場所に運べば良いので、使い勝手が良い。
【0026】
(8)連設する容器本体の個数を3としたから、3個の容器を連設状態のまま綿棒を必要とする場所に運べば、1本目の綿棒で皮膚表面の垢、汚れ、有機物などを除去し、2本目の綿棒で油分を除去しながら消毒を行い、3本目の綿棒で消毒効果を徹底させるといった、質の高い消毒を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る綿棒容器の実施形態を図1〜8に基づき説明する。図1は蓋体で蓋をした状態の上面図、図2は蓋体を取り去った状態の上面図、図3は垂直断面図、図4は図3のA−A線の箇所の断面図、図5は図3のB−B線の箇所の断面図、図6は図3のC−C線の箇所の断面図、図7は蓋体を剥離するときの状況を示す上面図、図8は図7の状態の垂直断面図である。
【0028】
綿棒1を収納する綿棒容器10は、容器本体20とフィルム状の蓋体30により構成される。容器本体20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレンなどの合成樹脂シートを真空成形したり、アルミニウムなどの金属箔や紙、もしくはこれらの積層体、もしくはこれらと合成樹脂シートとの積層体をプレス成形したりして形成することができる。容器本体20には、保管時や輸送時に外部から加わる圧力に耐え得るよう、必要な強度を持たせるものとする。
【0029】
蓋体30は容器本体20に熱圧着や超音波溶着などの手段で溶着されるものであり、アルミニウムを蒸着したPETフィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムとアルミニウムなどの金属箔を積層し、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を高めたものを用いる。金属箔を両側から合成樹脂フィルムで挟み、3層以上にしたものを用いるのが好ましい。
【0030】
綿棒1は1個の綿棒容器10に1本ずつ入れられる。このように1本の綿棒1を収納した綿棒容器10を3個連設し、出荷時の荷姿とする。3個という数の意味は後で説明する。続いて、個々の綿棒容器10の構造につき説明する。
【0031】
容器本体20は隅丸矩形の細長い平面形状を備え、一端には綿棒1の綿球部2を収納する綿球部収納凹部21が形成され、他端には綿棒1の軸3の軸尾3aを収納する軸尾収納凹部22が形成されている。綿球部収納凹部21と軸尾収納凹部22の間には、綿棒1の綿球部2と軸尾3aの中間部分を収納する中間部分収納凹部23が形成されている。
【0032】
図3に見られる通り、中間部収納凹部23の深さは綿球部収納凹部21及び軸尾収納凹部22よりも浅い。綿球部収納凹部21が深いのは言うまでもなく綿球部2を収納するためであり、軸尾収納凹部22が深いのは軸尾3aの下に指を入れて軸尾3aを引き上げるためである。中間部収納凹部23は軸3を収納できさえすれば良い訳であるから深くする必要はなく、従って浅くする。このように凹部の深さを一定とせず、深くする必要のない箇所は浅くすることにより、綿棒容器10の容積を小さくできる。綿棒1と共に封入される空気量も減ることになり、空気が薬液に及ぼす影響を小さくすることができる。また、加熱滅菌時の綿棒容器10の変形を少なくすることができる。
【0033】
軸3のうち、綿球部2に隣接する箇所は、綿棒1のネック部である。ネック部は、中間部収納凹部23のうち、綿球部収納凹部21に隣接する箇所を通る。この箇所に、ネック部に向かって突出し、軸3を両側から挟んで保持するリブを形成する。
【0034】
実施形態では、綿棒1の長さ方向に沿って計3個のリブが互いに所定間隔を置いて形成されている。3個のリブとは、綿球部収納凹部21の方から順に、リブ24a、リブ24b、及びリブ24cである。これら3個のリブは中間部収納凹部23の両側の内壁から突出するものであるが、そのうちリブ24aと24cは図2において下側に位置する内壁から突出し、リブ24bは上側に位置する内壁から突出する。すなわち中間部収納凹部23の内壁から3個のリブ24a、24b、24cが互い違いに突出する。この状況は図2及び図4−6に見られる通りである。
【0035】
軸3はリブ24a、24cとリブ24bとの間に挟まれ、軸3自身の有する弾性によりたわんで、無理なく、安定して保持される。軸3が中間部収納凹部23から抜け出さないよう、リブ24a、24b、24cは上の方ほど軸3の上にせり出す、いわゆるオーバーハング形状にして、軸3に中間部収納凹部23の底面方向への付勢力が生じるようにしておくとよい。
【0036】
図2に見られるように、リブ24a、24b、24cは、綿棒1の綿球部2を綿球部収納凹部21の中央に保持する一方で、綿棒1の軸尾3aを軸尾収納凹部22の片側に寄せて保持する。これは軸尾収納凹部22に指先を入れて軸尾3aを引き上げる動作をしやすくするためである。実施形態の寄せ方によれば、綿球収納凹部21を向こう側に置き、軸尾収納凹部22を手前側に置いた場合、軸尾3aの向かって左側に空間が生じる。ここに右手の親指を入れて親指の腹で軸尾3aを引き上げ、右手の人差し指や中指と親指との間で軸3をつまんで保持することができる。
【0037】
中間部収納凹部23の底には、軸3を下から支える枕部が綿棒1の長さ方向に沿って複数箇所に形成されている。実施形態では4箇所に枕部25a、25b、25c、25dを配置する。枕部25a、25b、25cはそれぞれリブ24a、24b、24cに連続するように形成されている。残る1個の枕部25dは中間部収納凹部23の枕部25a、25b、25cから遠い方の端に形成される。
【0038】
枕部25a、25b、25cには、図4、5、6に見られるように、軸3を受け入れる半円形の凹部が形成されている。このため、中間部収納凹部23に軸3を押し込むと、軸3は枕部25a、25b、25cによって包まれるように支えられることになる。
【0039】
枕部25a、25b、25c、25dはそれぞれ支持面の高さが異なる。すなわち枕部25a、25b、25c、25dは、軸尾側のものほど支持面が高く形成され、綿棒1の軸3を、軸尾3aの側が高くなるように傾斜して支持する。これにより軸尾3aと軸尾収納凹部22の底との間の隙間が広がって指先を軸尾3aの下に入れやすくなり、綿棒1の取り出しが一層容易になる。
【0040】
容器本体20の上面には、蓋体30を熱圧着や超音波溶着などの手段で溶着するための溶着用凸条26が形成される。溶着用凸条26は、綿球部収納凹部21、中間部分収納凹部23、及び軸尾収納凹部22を囲むようにループ状に形成される。
【0041】
溶着用凸条26には、綿球部収納凹部21の中間部の位置に溶着面積拡張部26aが形成されている。実施形態では、溶着用凸条26から綿球部収納凹部21の方に向かい、綿球収納凹部21にまで届く張出部を、綿球部収納凹部21を両側から挟むように対称的に設け、これを溶着面積拡張部26aとしている。
【0042】
容器本体20は3個一組で連設される。容器本体20同士の境界には、個々の容器本体20に分断するための分断可能な接続部27が設けられる。接続部27は、例えばミシン目をもって分断可能な構造とすることができる。この部分を極く肉薄にしておいてもよい。
【0043】
蓋体30は容器本体20の上面を全面的にカバーするものであるが、容器本体20にならって、蓋体30も3個一組で連設されている。また蓋体30同士の境界には分断可能な接続部31が設けられている。接続部31にミシン目を設ける場合、このミシン目は容器本体20のミシン目と同時に形成することができる。
【0044】
蓋体30には個々にピールタブ32が形成される。ピールタブ32は軸尾3aの方の端に設けられている。
【0045】
綿棒容器10に綿棒1と薬液を封入する作業は次のようにして行われる。まず、蓋体30でシールしない状態の容器本体20に薬液未含浸の綿棒1を入れ、リブ24a、24b、24cの間に綿棒1のネック部を押し込んで保持させる。このように保持された綿棒1の綿球部2に適正に調製した薬液を所定量滴下し、含浸させる。そのうえで、容器本体20の上に蓋体30を置き、溶着用凸条26に蓋体30を溶着する。これにより、綿棒1と薬液は綿棒容器10に封じ込められたことになる。この後、綿棒容器1を加熱滅菌処理すれば、内部にまぎれ込んだ細菌などを熱により減少させることができる。
【0046】
綿棒容器10は次のように使用する。未開封の綿棒容器10から綿棒1を取り出すときは、蓋体30のピールタブ32をつまみ、容器本体20から剥離して行く。綿棒容器1を連設状態に置いたまま蓋体30を剥離する場合、蓋体30は接続部31のところで隣の容器の蓋体30から切り離されることになる。このようにして綿棒容器10の上面開口をシールした蓋体30を除去し、綿棒1を取り出す。
【0047】
図7に示すように軸尾3aの方から蓋体30を剥離して行くと、溶着面積拡張部26aに差し掛かったところで剥離抵抗が増えるのを感じる。ここで剥離をやめても、それまでに開けた綿球部収納凹部21の開口部分から綿球部2を取り出すことができる。剥離されないで残った蓋体30と容器本体20とは一種のポケットを構成する。このポケット部の存在により、綿球部収納凹部21が下になるように綿棒容器10を傾けるか、あるいは立てたとしても、綿棒容器10の中から薬液がこぼれることはなくなる。
【0048】
また、綿球部2からしみ出した薬液が、溶着用凸条26に至るまでの容器本体20の上面と、蓋体30との間の隙間にしみ込むと、しみ込んだ薬液は毛管現象で軸尾の方まで伝わろうとする。しかしながら溶着用凸条26の途中に溶着面積拡張部26aがあり、この溶着面積拡張部26aは綿球部収納凹部21まで届いているので、容器本体20と蓋体30の間にしみ込んだ薬液はこの箇所で綿球部収納凹部21に戻され、軸尾の方まで伝わらない。従って、軸尾の方から蓋体20を剥離するという手順を守れば、指先を汚すことがない。
【0049】
綿棒容器10を保管している間に、綿棒1の綿球部2から薬液がしみ出し、軸3を伝って軸尾3aの方に流れようとすることがある。そのような薬液は、軸3を包むように下から支える枕部25a、25b、25c、25dと、軸3に両側から接触するリブ24a、24b、24cによってせき止められ、軸尾3aの方まで伝わらない。従って、常に薬液で濡れていない軸3をつまめることになり、指が薬液で汚れたり、薬液で軸3が滑ったりすることがなく、適切且つ安全に綿棒1を扱うことができる。
【0050】
綿棒容器10は、分断可能な接続部27、31を利用して連設状態から1個だけ切り離すことができる。従って、綿棒1が3本も必要でないときは、綿棒容器10を1個か2個、必要な個数だけ切り離して必要とする場所に運ぶことができ、使い勝手が良い。
【0051】
一方で、綿棒容器10を3個連設状態のまま医療現場に運べば、次のような質の高い消毒を実施できる。すなわち1本目の綿棒1で皮膚表面の垢、汚れ、有機物などを除去する。2本目の綿棒1では油分を除去しながら消毒を行う。3本目の綿棒1で消毒効果を徹底させる。
【0052】
また綿棒容器10を棚などに保管する際は、3個連設のままにしておくのが便利である。
【0053】
容器本体20には前述のように必要な強度を持たせてあり、綿棒容器10は、保管時や輸送時に加わる通常の外圧に十分耐え得る設計となっている。そのため、保管時や輸送時に綿球部2が外圧によって変形し、薬液が押し出されて薬液量の減少を招くようなことがなく、所望量の薬液を綿球部2に含浸し続けさせることができる。
【0054】
以上本発明の実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨から逸脱しない範囲で種々の改変を加えて実施することができる。例えば綿棒の軸を両側から挟んで保持するリブは、実施形態では容器本体の両側の内壁から互い違いに突出させたが、軸の同じ箇所を両側から挟み付けるよう、軸を中心として対称的に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、外科医療資材としての綿棒を薬液含浸状態で供給する際に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】蓋体で蓋をした状態の綿棒容器の上面図
【図2】蓋体を取り去った状態の綿棒容器の上面図
【図3】綿棒容器の垂直断面図
【図4】図3のA−A線の箇所の断面図
【図5】図3のB−B線の箇所の断面図
【図6】図3のC−C線の箇所の断面図
【図7】蓋体を剥離するときの状況を示す上面図
【図8】図7の状態の垂直断面図
【符号の説明】
【0057】
1 綿棒
2 綿球部
3 軸
10 綿棒容器
20 容器本体
21 綿球部収納凹部
22 軸尾収納凹部
23 中間部分収納凹部
24a、24b、24c リブ
25a、25b、25c、25d 枕部
26 溶着用凸条
26a 溶着面積拡張部
27 接続部
30 蓋体
31 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の一端に薬液を含浸した綿球部が取り付けられた綿棒を入れる容器本体と、この容器本体の上面開口をシールするフィルム状の蓋体とを備えた綿棒容器において、
前記容器本体は一端に綿球部収納凹部、他端に軸尾収納凹部を備え、この容器本体の内面には綿棒の軸を両側から挟んで保持するリブ及び前記軸を下から支える枕部が形成されていることを特徴とする綿棒容器。
【請求項2】
前記リブは、平面的に見て、綿棒の綿球部を前記綿球部収納凹部の中央に保持する一方で、綿棒の軸尾を前記軸尾収納凹部の片側に寄せて保持するものであることを特徴とする請求項1に記載の綿棒容器。
【請求項3】
前記リブは、前記容器本体の両側の内壁から互い違いに突出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の綿棒容器。
【請求項4】
前記綿球部収納凹部と軸尾収納凹部の間に、綿棒の綿球部と軸尾の中間部分を収納する中間部分収納凹部が形成されるとともに、この中間部分収納凹部は綿球部収納凹部及び軸尾収納凹部よりも浅く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の綿棒容器。
【請求項5】
前記枕部が綿棒の長さ方向に沿って複数箇所に形成されるとともに、これら複数の枕部は、軸尾側のものほど高く形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の綿棒容器。
【請求項6】
前記容器本体の上面に前記蓋体の溶着用凸条が、前記綿球部収納凹部、中間部分収納凹部、及び軸尾収納凹部を囲んでループ状に形成されるとともに、この溶着用凸条には、綿球部収納凹部の中間部の位置に溶着面積拡張部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の綿棒容器。
【請求項7】
前記容器本体を複数個、分断可能な接続部を介して連設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の綿棒容器。
【請求項8】
前記容器本体の個数を3としたことを特徴とする請求項7に記載の綿棒容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−36227(P2006−36227A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214499(P2004−214499)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(399101201)健栄製薬株式会社 (3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】