説明

緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁治療用医薬組成物

本発明は、膀胱機能障害、特に緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁を治療するための、β-3-アドレナリン作用性受容体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱機能障害、特に緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁の治療のためのβ-3-アドレナリン受容体アゴニストの使用を説明する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
尿失禁の発生率は、老化統計の変化の結果、一貫して増加している。しかしながら、罹患者の大半は、依然として治療されていないか又は治療が適切にされていない。罹患者の尿失禁は、慢性尿路感染症などの医学的結果とは別に、罹患の心的負荷に関連している。高齢者一億人が尿失禁に罹患していると推定される。
下部尿路は、膀胱、尿道、対応する筋肉及び懸垂器官の靱帯(ligament of suspensory apparatus)からなる。膀胱の目的は、尿を溜め、かつこれを空にすることである。蓄尿機能を行う重要な要因は、単に膀胱筋肉(排尿筋)の弛緩のみではなく、膀胱頸部及び尿道平滑筋による並びに同じく尿道及び骨盤底の横紋筋により提供された閉鎖機構でもある。膀胱を空にする(排尿)期間、排尿筋は収縮し、その間尿道及び骨盤底は弛緩し、並びに膀胱括約筋を開放する。これらのプロセスは、副交感神経、交感神経及び体性神経系の複雑な制御を必要とする。
膀胱機能の問題点は、それらの病因、診断及び治療が異なる障害の不均質群である。International Continence Society(ICS)の標準的推奨において、尿失禁は、客観的に検出可能であり並びに社会的及び衛生上の問題がある尿の不随意排出(involuntary loss)と定義される。一般に尿失禁は、蓄尿相の間に膀胱内圧の意図的でない増加が存在する場合にのみ生じる。これは、排尿筋の節度のない収縮(急迫性尿失禁)又は尿道閉鎖機構の不全(緊張性尿失禁)の結果として生じる。
【0003】
ICSの定義に従い、過活動膀胱(OAB)は、排尿に必要な抑え難い命令(irresistible imperative)により特徴付けられ、これは通常排尿頻度の増加及び夜尿を伴う、急迫性尿失禁に関連してもしなくてもよい。病態生理学的に、この愁訴は、充満相の不随意収縮を基にし、その原因は事実上神経性又は非-神経性(特発性)であることがある。
急迫性尿失禁は、排尿の抑え難い切迫及び尿の不随意排出により特徴付けられる。
緊張性尿失禁は、一般に腹圧上昇時生じる、尿の不随意排出を特徴とする。これは、例えば排尿活動を同時に行うことなく、抱え上げ、咳、くしゃみ、駆け足の時に生じることがある。尿の排出は、膀胱括約筋及び骨盤底の機能不全に加え、懸垂器官の解剖学的欠損の様々な組合せの結果生じる。その結果、尿道の閉鎖圧は非常に低くなり、尿失禁が生じる。純粋な緊張性尿失禁は、女性、特に経産婦において頻発する。男性において、この型の尿失禁は通常、前立腺切除術又は他の小骨盤への外科的介入の後にのみ認められる。
いわゆる混合型尿失禁患者は、緊張性尿失禁及び急迫性尿失禁の両方の症状に罹患している。同じく主に女性が罹患する。
様々な形の膀胱機能障害、特に緊張性尿失禁又は混合型尿失禁の治療のために、様々な治療的方法が利用可能である。
【0004】
緊張性尿失禁は、主に保存的手法及び外科手技により治療される。今日まで、一般に利用可能な適当な薬物療法は存在しない。プシュードエフェドリン及びフェニルプロパノラミンなどのα-アドレナリン受容体アゴニストは、軽度の緊張性尿失禁の治療において、例え非常にわずかであっても、若干の作用を示す。これらの薬物の欠点は、尿道筋肉に選択性を有さず、並びに高血圧、頻脈、不整脈、睡眠障害、頭痛及び振戦などの多くの副作用を有することである。
混合型尿失禁の治療は、議論の対象であり、並びに緊張性尿失禁の構成要素を治療する侵襲的手法及び急迫性尿失禁の構成要素を治療するための薬物療法の組合せを含む。
1995年半ばから、選択的β-3-アドレナリン受容体アゴニストは、尿失禁の治療を促進することが報告されている(欧州特許第0 958 835号)。現在、β-3-アドレナリン作用性受容体アンタゴニストのクラスの化合物は、高度に有効であると同時に、混合型尿失禁の治療において忍容性がよいことがわかっている。加えてそれらの活性は、膀胱の蓄尿相に制限され、及び膀胱を障害なく空にすることが保証され、尿残留物のいかなる蓄積も伴わないものである。
【発明の開示】
【0005】
発明の問題点
緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁の治療における多くの期待される方法及び進歩にもかかわらず、有効で忍容性のよい療法を開発する挑戦が続いている。
本発明は、尿失禁の治療に貢献することを目指している。本発明は、緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁の治療に適していることが好ましい。
本発明は、β-3-アドレナリン受容体アゴニスト、又はこの範疇の活性物質由来の化合物を含有する医薬組成物の使用を提案するものである。
【0006】
発明の説明
本発明により、活性成分として、少なくとも1種のβ-3-アドレナリン受容体アゴニストを、医薬として有効量含有する新規医薬組成物を提供する。
a)活性成分
好ましい態様の説明において、明確にする目的のため、以降、専門用語を使用する。専門用語は、説明された態様及び同様の結果を実現するために同様の目的で同様の様式で作用する全ての技術的同等物を含むものである。医薬活性化合物が説明されるか又は請求される範囲で、in vivoにおいて生成される全ての活性代謝産物が含まれることが明白に意図されており、並びに化合物がそのエナンチオマー、ジアステレオマー又は互変異性体の形で生じることが可能である場合、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー又は互変異性体が含まれることが明白に意図されている。明らかに薬理学的に最も有効かつ副作用が最もない異性体が好ましい。同じくそれらの薬理学的に許容できる塩も含まれる。本説明の対象であるこれらの各化合物の医薬活性のある塩の例は、有機酸及び無機酸並びに塩基を含む、医薬として許容できる酸又は塩基から調製される塩を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい化合物が塩基である場合、塩は、医薬として許容できる酸から調製することができる。最も好ましい塩を選択するか、又は塩もしくは中性の化合物が使用されるかどうかを証明する場合、バイオアベイラビリティ、生成の容易さ、作業性又は貯蔵寿命のような特性がとりわけ考慮される。適当な医薬として許容できる酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシラート)、安息香酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、樟脳スルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸(メシラート)、ムチン酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などを含む。医薬として許容できる塩の例は、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシ酪酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、臭化物、ブチン-1,4-ジオン酸塩、カプロン酸塩、塩化物、クロロベンゾエート、クエン酸塩、二水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオエート、ヒドロキシ安息香酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、シュウ酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、フェニル酢酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、キシレンスルホン酸塩などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0007】
完全性に必要である限りは、先行技術が言及した化合物の合成法及びそれらの用量が、対応する点について言及された先行技術を参照し明白に含まれる。
本発明において使用されるβ-3-アドレナリン受容体アゴニストは、好ましくはフェノキシ酢酸誘導体である。これは好ましくは、以下の群から選択される:
【0008】
【化1】

【0009】
式中、1)X=Br、Y=H、R=OHである場合、
2-[2-ブロモ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、
2)X=Cl、Y=H、R=OHである場合、
2-[2-クロロ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、
3)X=Y=Cl、R=OHである場合、
2-[2,5-ジクロロ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、
4)X=Y=H、R=OHである場合、
2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]-2,5-ジメチルフェノキシ]酢酸、
5)X=OH;Y=H;R=OHである場合、
2-[2-ヒドロキシ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、
6)X=Cl;Y=H、R=OEtである場合、
エチル-2-[2-クロロ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸塩、
7)X=Cl;Y=Cl、R=OEtである場合、
エチル-2-[2,5-ジクロロ-4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸塩、
8)X=Me;Y=Me、R=OEtである場合、
(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸塩、
9)X=Me;Y=Me、R=OHである場合、
(-)-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸。
前述の化合物1〜9の詳細は、国際公開公報第00/02846号に見ることができる。
他のフェノキシ酢酸誘導体の好ましい例は、以下である:
10)
【0010】
【化2】

【0011】
ジナトリウム-([R,R]-5-2-[[2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]-アミノ]プロピル)-1,3-ベンゾジオキソール-2,2-ジカルボキシラート。
この物質に関する更なる情報は、J. Med. Chem.、44: 1456 (2001)又はJournal of Urology、165: 240 (2001)に記載されている。
11)
【0012】
【化3】

【0013】
2-[2-クロロ-4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)フェノキシ]酢酸。
この物質に関する更なる情報はMed. Chem.、46:105 (2003)に記載されている。
12)
【0014】
【化4】

【0015】
エチル[R-(R*,S*)]-[[8-[[2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]アミノ]-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-2-イル]オキシ]-酢酸 塩酸塩。
13)

【0016】
【化5】

【0017】
[1S-[1α,3β(S*)]]-3-[3-[[2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]アミノ]シクロヘキシル]フェノキシ]-酢酸 一ナトリウム塩。
14)
【0018】
【化6】

【0019】
7-{2-[2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-エチルアミノ]-プロピル}-2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-2-カルボン酸。
N-5984としても公知であるこの化合物の更なる情報は、文献にも記載されている。
これらの化合物に加え、β-3-アドレナリン受容体アゴニストから選択された下記の化合物も適している。
15)
【0020】
【化7】

【0021】
(4-{2-[2-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-エチルアミノ]-エトキシ}-フェニル)-酢酸。
CP-331684としても公知であるこの化合物の更なる情報は、文献にも記載されている。
16)


【0022】
【化8】

【0023】
5-(4-メトキシ-3,4-ジイオドベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2-オール。
この物質の更なる情報は、J. Med. Chem.、44: 1456 (2001) に記載されている。
17)
【0024】
【化9】

【0025】
4-(1-N-tert-ブチルアミノ-2-ヒドロキシ-ブトキシ)-1,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-2-オン。
CGP 12177Aとしても公知であるこの物質の更なる情報は、Journal of Urology、165: 240 (2001)又はJ. Med. Chem.、44: 1456 (2001) に記載されている。
18)
【0026】
【化10】

【0027】
SB 226552としても公知であるこの物質の更なる情報は、J. Med. Chem.、44:1456 (2001)に記載されている。
19)


【0028】
【化11】

【0029】
L755507としても公知であるこの物質の更なる情報は、J. Med. Chem.、44:1456 (2001)に記載されている。
20)
【0030】
【化12】

【0031】
L 770664としても公知であるこの物質の更なる情報は、J. J. Med. Chem.、44:1456 (2001)に記載されている。
21)
【0032】
【化13】

【0033】
4-N-(4-(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルスルホンアミド-フェニル)-2-ヒドロキシ-エチルアミノ)-ピペリジニル)-フェニル-n-ブチル-アミノスルホニル酢酸。
この物質の更なる情報は、J. Med. Chem.、44:1456 (2001)又はBioorg. Med. Chem. Lett.、9:2045 (2001)において認めることができる。
22)
【0034】
【化14】

【0035】
(式中、a)Ar=4-OHPh-O-、R1=オクチル、R2=H
b)Ar=4-OH,3-メチルスルホニルアミドフェニル-O、R1=2,5-ジFベンジル、R2=H
c)Ar=4-OH,3-メチルスルホニルアミドフェニル、R1=2,5-ジFベンジル、R2=H。)。
これらの物質の更なる情報は、Bioorg. Med. Chem. Lett.、11:3123 (2000)に記載されている。
23)
【0036】
【化15】

【0037】
この物質の更なる情報は、Bioorg. Med. Chem. Lett.、11:981 (2001)に記載されている。
24)
【0038】
【化16】

【0039】
n=0又は1
この物質の更なる情報は、Bioor. Med. Chem. Lett.、10:1971 (2000)に記載されている。
25)
【0040】
【化17】

【0041】
この物質の更なる情報は、Bioorg. Med. Chem. Lett.、11:757 (2001)に記載されている。
26)
【0042】
【化18】

【0043】
n=0又は1
この物質の更なる情報は、Bioor. Med. Chem. Lett.、10:1971 (2000)に記載されている。
27)
【0044】
【化19】

【0045】
この物質の更なる情報は、Bioor. Med. Chem. Lett.、10:1971 (2000)に記載されている。
28)
【0046】
【化20】

【0047】
この物質の更なる情報は、Bioorg. Med. Chem. Lett.、10:1531 (2000)に記載されている。
29)2-(3-{[2-(3-クロロフェニル)-2R-ヒドロキシル-エチルアミノ]エチルアミノ}フェニル)フラン-3-カルボン酸。
この化合物に関する更なる情報は、文献に記載されている。
30)2-(3-{[2-(3-クロロフェニル)-2R-ヒドロキシル-エチルアミノ]エチルアミノ}フェニル)チオフェン-3-カルボン酸。
この化合物に関する更なる情報は、文献に記載されている。
31)
【0048】
【化21】

【0049】
SB-418790としても公知のこの化合物に関する情報は、文献に記載されている。
32)
【0050】
【化22】

【0051】
SB-251023としても公知のこの化合物に関する情報は、文献に記載されている。
33)
【0052】
【化23】

【0053】
この化合物(R)-2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-4'-[2-[2-(ヒドロキシ-2-フェニルエチル)アミノ]エチル]アセトアニリドに関する更なる情報は、国際公開公報第03/037881号に記載されている。
34)(S)-4-[2-ヒドロキシ-3-[[2-[4-(5-カルバモイル-2-ピリジルオキシ)フェニル]-1,1-ジメチル-エチル]アミノ]-プロポキシ]-カルバゾール(LY 377604)。
35)
【0054】
【化24】

【0055】
この化合物は、名称SR 58611により知られている。
β-3-アドレナリン受容体アゴニストのカテコールアミン型が好ましい。最も好ましいのは:
(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]アセテート、
(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]アセテート-一塩酸塩、
(-)-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸、
又は、その他のそれらの薬理学的に許容できる塩である。
β-3-アドレナリン受容体アゴニストの特に興味深い例は、(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸塩、又は(-)-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸、それらのエナンチオマー又は他の立体異性体、及びそれらの薬理学的に活性のある塩である。
これらの化合物は、国際公開公報第00/02846号又は国際公開公報第2003024916号に開示されている。
これらの最後のふたつの化合物は、下記式IIにより表されているが、これは何らかの矛盾する事象において、特定された名称に優先する:


【0056】
【化25】

【0057】
式中、R=O-エチルの場合:(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]アセテート、好ましくは一水和物、
R=OHの場合:(-)-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸。
【0058】
b)用量
活性物質の最適投与量を決定するために、様々な基本的条件、例えば患者の年齢及び体重、疾患の性質及び病期、並びに化合物の効力などを考慮しなければならない。これは当業者の能力の範囲内のことであると考えられるが、これらの成分に関する文献により最適な投与量を決定することができる。特定された投与量は、調節相の終了後の用量を意味する。
以下に示された投与量は、特定された範囲内の自然数及び分数の両方の全ての数値を明白に含む。このデータは、成人に関連している。小児投与量は、これよりも少なくてよい。
1日1回又は1日2回よりも多く投与される投与量(例えば、1日3、4、5又は6回)も明白に本願明細書に含まれる。
場合によっては、特定された量よりもより少ない量で十分であり、別の場合はより多い総量が必要である。
総一日量は、治療計画に応じ、一回で(one go)又は数回の部分で服用される。この治療計画は、投与の間に1日よりも長い間隔をおいて処方されても良い。
1回又は複数回の投与量で投与される成人のβ-3-アゴニストの平均一日量は、約1mg〜1000mgであり、好ましくは10mg〜約750mg/日、好ましくは50〜500mg、より好ましくは80〜200mgである。
【0059】
c)製剤
本発明の組成物は、都合のよいことに、活性成分を適当な担体と組合せて含有する医薬組成物において投与される。このような医薬組成物は、方法により調製することができ、及び当該技術分野において周知の担体を含む。当業者は、一般に認められたテキストをこの目的で利用可能である。
本発明の組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内注射)、局所的、経口、鼻腔内、膣内、経皮、経直腸、経肺又は経鼻吸入で投与することができ、経口投与が特に好ましい。経口製剤で、胃液に抵抗性があるものが好ましい。この場合、胃液に抵抗性があるカプセル剤又は錠剤が好ましく、両方の場合において、胃液に抵抗性のあるコーティングを実行することができる。当業者は、先行技術において、胃液に抵抗性のある製剤の手順を認めるであろう。
様々な製剤の選択肢を以下に説明する。当業者は、それらから適当な製剤を選択することができる。
経口治療的投与に関して、本発明の組成物は、1種又は複数の担体と組合せることができ、嚥下するための錠剤、バッカル錠、舌下錠、糖衣錠、スプレー剤、散剤、香錠(pastille)、コート錠、顆粒剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、トローチ、チューインガム、食品などの形状で使用することができる。
散剤は、例えば活性物質の粒子の適当なサイズへの細粉により調製することができる。希釈散剤は、乳糖のような無毒の担体材料との粉末化された物質の細粉化、及び散剤としてのその送達により調製することができる。この目的のための他の適当な担体材料は、デンプン又はマンニトールのようなその他の炭水化物であることができる。これらの散剤は任意に、矯味矯臭剤、保存剤、分散剤、着色剤及び他の医薬用佐剤を含有することができる。
【0060】
カプセル剤は、先に説明された種類の散剤又はその他の散剤から調製することができ、これらはカプセル、好ましくはゼラチンカプセル内に配置され、その後密封される。
先行技術の公知の滑沢剤は、カプセルへ投入されるか、又はカプセルのふたつの部分を密封するために使用されることが可能である。経口摂取される場合、カプセル剤の有効性は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低-置換されたヒドロキシプロピルセルロース、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム及び他の物質などの、崩壊剤又は可溶化剤の添加により増加することができる。この活性物質は、カプセル剤とすることができるが、固形状だけでなく、例えば植物油、ポリエチレングリコール又はグリセロール中、界面活性剤を使用することにより、懸濁状のカプセル剤とすることができる。
【0061】
錠剤は、例えば粉末化された混合物を圧縮し、その後顆粒に処理することにより調製することができる。これらの錠剤は、例えばデンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖(例えば膣用錠剤)、塩化ナトリウム、溶解又は注射用の錠剤のための尿素、アミロース、先に説明されたような様々な型のセルロース及びその他などの、様々な賦形剤を含有しても良い。グリセロール又はデンプンを保湿剤として使用しても良い。
使用される崩壊剤は、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、ペクチン酸、粉末化した寒天、ゼラチンホルムアルデヒド、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、過酸化マグネシウム及びアミロースであることができる。
使用することができる崩壊防止剤又は溶解遅延剤(solution retardant)は、例えばショ糖、ステアリン、固形パラフィン(好ましくは50〜52℃の範囲の融点を有する)、ココアバター及び水素化された脂肪を含む。
他の崩壊剤は、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などであることができる。
適当な吸収促進剤は、特に第四級アンモニウム化合物、ラウリル硫酸ナトリウム及びサポニンを含む。
【0062】
エーテルを、例えば、結合剤、分配剤(distributor)として使用することができ、並びにセチルアルコール、グリセロールモノステアレート、デンプン、コーンスターチ、乳糖、湿潤剤(例えばアエロゾルOT、Pluronics、Tweens)、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン及び他のものを、親水化剤(hydrophilising agent)又は崩壊促進剤として使用することができる。
ショ糖、果糖、乳糖又はアスパルテームを、甘味剤として使用することができる一方で、ペパーミント、冬緑油、チェリー香料などを、矯味矯臭剤として使用することができる。
【0063】
以下を、追加の賦形剤として一般に使用することもできる:Aerosil、Aerosol OTエチルセルロース、Amberlite樹脂、XE-88、Amijel、Amisterol、アミロース、Avicel微晶質セルロース、ベントナイト、硫酸カルシウム、Carbowax 4000及び6000、カラゲナン、カストールワックス、セルロース、微晶質セルロース、クロスポビドン、デキストラン、デキストリン、リン酸二カルシウム、医薬用錠剤基剤、カオリン、乳糖(USP)、ラクトシル、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、顆粒状マンニトールN. F. メチルセルロース、Miglyol 812中性油、粉ミルク、粉砂糖、ナル-タブ(nal-tab)、ネオポール-アミロース(nepol-amylose)、Pofizer結晶ソルビトール、プラスドン、ポリエチレングリコール、ポリビニル酢酸フタル酸、ポリビニルピロリドン、Precirol、無希釈のフット油(foot oil)(水素化された)、溶融錠剤基剤、シリコーン、スタビリン、Starx 1500、シロイド、Waldhof錠基剤、タベレトール(tablettol)、タルカムセチラツム(talcum cetylatum)及びステアラツム(stearatum)、Tego金属セッケン、フルクトース及びタイロース。錠剤化用賦形剤K(M25)が特に適しており、以下の局方の必要要件を充たしている:DAB、Ph、Eur、BP及びNF。
先行技術で公知の他の賦形剤も使用することができる。
これらの錠剤は、例えば直接圧縮により製造することができる。
【0064】
液剤、シロップ剤、エリキシル剤など経口投与するために他の製剤を調製することも可能である。望ましいならば、この化合物はマイクロカプセル封入することができる。
非経口投与は、化合物の液体中の溶解、及び皮下、筋肉内又は静脈内経路による注射により実現することができる。適当な溶媒は、例えば、水又は油性媒体を含む。
坐剤を調製するために、この化合物は、ポリエチレングリコール、ココアバター、高次エステル(例えばモエリスチル(moerysthyl)、パルミテート)又はそれらの混合物などの、低融点及び水溶性又は水不溶性の材料と共に製剤することができる。
【0065】
前記リストは、単に例として提供され、当業者は他の賦形剤を考慮してよい。
様々な他の材料は、コーティング又はいくつかの他の方法における固形単位剤形の物理的形状の修飾として提供することができる。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラック、又は砂糖などで被覆される。既に言及されたように、胃液に対し抵抗性である製剤は、経口調製物に好ましい。従って胃液-抵抗性コーティングが、錠剤又はカプセル剤について好ましい。シロップ剤又はエリキシル剤の場合、ショ糖又は果糖を、甘味剤として使用することができ、メチルパラベン及びプロピルパラベンは、保存剤として存在することができ、並びにチェリー又はオレンジ香料のような着色剤及び矯味矯臭剤も存在することができる。
【0066】
前述の賦形剤は、それらが言及されたものに関連した製剤の使用に限定されず、他の製剤にも適用される。
当然、いずれかのこれらの剤形の調製において使用される材料は、使用される量で医薬として許容できかつ実質的に無毒でなければならない。加えて活性成分は、遅延された放出を伴う調製物及び装置中に組込むことができ、これはこれらに制限されるものではないが、所望の放出プロファイルを実現するために、浸透圧を基にしたものを含む。これらの各活性成分の1日1回用製剤が特に含まれる。
この種の組成物及び調製物は、活性化合物の少なくとも0.001%を含まなければならない。これらの組成物及び調製物の割合は、当然変動し、所定の剤形の0.1〜約100質量%の間で適当に製造することができる。この種の治療的に有用な組成物の活性化合物の量は、有効量が存在するようなものである。
【0067】
d)適応症
本発明のβ-3-アドレナリン受容体アゴニストとして列記された医薬組成物及び化合物の各々は、特に、これらに限定されるものではないが、以下に言及した各症候群を、個々の症候群及び言及された症候群以外との組合せを治療又は予防するために使用することができる:尿失禁、特に緊張性尿失禁、急迫性尿失禁、混合型尿失禁又は神経性もしくは非神経性起源の過活動膀胱及び更にそれらの亜適用症。
従って本発明は、その原因が臓器の機能障害又は疾患であるこれらの症候群、及び中枢神経系の疾患又は障害が原因であるものの両方を含む。従って、膀胱機能障害の各治療、特に全ての種類の尿失禁は、本発明により考慮することができる。
従って本発明の更なる態様は、先の段落に言及される膀胱機能障害のいずれかの適応症を治療又は予防するための薬物を調製するために、本発明の組成物を使用することを含む。
前記疾患又は障害は、哺乳類へ本発明の組成物の治療有効量を投与することにより治療される。ほとんどの症例において、これはヒトであるが、家畜動物(例えば畜牛)及びペット動物(例えば、イヌ、ネコ及びウマ)の治療も明白に対象とされる。獣医学用医薬品において使用するために、使用される用量は、本願明細書に特定されたものとは異なることができる。
過活動膀胱及び/又は急迫性尿失禁の適応の範囲内で、化合物1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)は別として、前述の全ての化合物が特に好ましい。
本発明の範囲内で、緊張性尿失禁及び/又は混合型尿失禁の適応症は、特に好ましいが、混合型尿失禁の適応症は、最も好ましい。
前記新規組成物は、最低量の有害な副作用で、前記疾患及び障害に罹患した患者への迅速な緩和を提供することが予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張性及び/又は混合型尿失禁から選択される膀胱機能障害の治療用医薬品を調製するための、任意にそれらの医薬として有効な塩の形でのβ-3-アドレナリン受容体アゴニストの使用。
【請求項2】
β-3-アドレナリン受容体アゴニストが、化合物1)〜35)、それらの代謝産物、任意にそれらのエナンチオマー又はそれらの薬理学的に許容できる塩のひとつであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
β-3-アドレナリン受容体アゴニストが、フェノキシ酢酸誘導体であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
β-3-アドレナリン受容体アゴニストが、(-)-エチル-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-アミノ}-エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]アセテート及び/又は(-)-2-[4-(2-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ}エチル)-2,5-ジメチルフェニルオキシ]酢酸及び/又はそれらのエナンチオマー及び/又はそれらの代謝産物及び/又はそれらの薬理学的に許容できる塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
β-3-アドレナリン受容体アゴニストが、10mg〜750mgの量で使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
医薬品が、経直腸、膣内、局所的、経口、舌下、鼻腔内、皮内又は非経口投与用であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
活性物質の少なくとも一部が、遅れて放出されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
活性物質の少なくとも一部が、即時放出されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
哺乳類における緊張性及び/又は混合型尿失禁から選択される膀胱機能障害を治療する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項記載の医薬品を哺乳類へ投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2007−509868(P2007−509868A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537123(P2006−537123)
【出願日】平成16年10月16日(2004.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011692
【国際公開番号】WO2005/046666
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】