説明

緊急地震速報対応交通信号機制御システム及び緊急地震速報対応交通信号機制御方法

【課題】大地震発生時における自動車事故を有効かつ確実に低減する。
【解決手段】開示される緊急地震速報対応交通信号機制御システムは、道路交通信号機に対して、地震発生地点での地震情報から生成された緊急地震速報を受信したとき、緊急地震速報の受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、予測到達時刻の所定時間前から道路交通信号機の表示を予測震度の大きさに応じて段階的に平常の表示から変更する制限表示を行わせるための制御信号を発生する制限表示開始制御部42と、地震動の終息時期から所定時間経過後に道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰させるための制御信号を発生する制限表示停止制御部43Aと、制限表示開始制御部からの制御信号と制限表示停止制御部からの制御信号とを道路交通信号機に出力する制御信号出力部44とを備えた地震速報処理部31Aを設けて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大地震発生時における自動車事故の低減を目的とする緊急地震速報対応交通信号機制御システム及び緊急地震速報対応交通信号機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平常時においては、道路交通は交通信号機システムの動作による交通制御に基づいて、自動車どうし、又は自動車と歩行者との衝突,接触等を有効に防止することができる状態に保たれている。
しかしながら、大地震発生時には、物理的,心理的原因に基づく自動車どうしや自動車と歩行者との衝突,接触等の事故、道路や橋梁等の損壊による自動車事故、道路周辺建造物の損壊等の各種の原因による交通事故の頻発が懸念される。
【0003】
このような事態の発生を防止するためには、大地震発生時、大きな地震動の到達以前に交通信号機システムを制御して、所要時間の通行の遮断や、一時停止、徐行等の交通制限を行うことが極めて有効であるが、従来、このような地震発生時における交通信号機システムの制御に基づく自動車事故の防止対策は全く行われていず、単に地震発生後における人手による交通整理等が行われる程度であった。
【0004】
近年において、気象庁等が中心となって、大地震の発生時、震源地における地震動の観測結果から、周辺各地における地震動の規模と到達時刻を予測して、事前に警報を行うことによって地震被害を軽減しようとすることが考えられて、緊急地震速報の実施が検討されている。
そこで、このような緊急地震警報を利用して、大地震発生時、地震被害が予想される地域において、交通信号機システムの制御に基づく自動車事故の防止対策を実現することができれば、極めて有効であると考えられるが、従来、このような緊急地震速報対応交通信号機制御システムは全く提案されていなかった。
【0005】
これに対して、特許文献1においては、ノンストップ料金収受システムにおいて、料金所を含む所定のエリア内に設置された地震動検出器が所定値以上の大きさの地震波を検出したとき、料金所を通過しようとする車双方向の通行を信号機等によって規制する。これによって料金収受に関する料金所と車との間の情報の授受を一時的に停止して、料金収受情報の不完全な授受を防止することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2においては、エレベータに地震感知器を設置して、感知された地震の震度からエレベータを地震管制運転すべきか否かを判断できるようにするとともに、別の場所で地震波から求めた地震規模を含むリアルタイム地震情報を受信して、リアルタイム地震情報に含まれる地震規模の情報からエレベータを地震運転すべきか否かを判断する。そして地震感知器によって地震を感知する以前は、リアルタイム地震情報における地震の規模に基づいてエレベータを地震管制運転するとともに、地震感知器により地震を感知した後は、地震感知器によって検知された地震規模の情報に基づいてエレベータを地震管制運転することによって、安全確実なエレベータの運転管制を行うことが開示されている。
【0007】
また、特許文献3においては、消防局において気象庁及びリアルタイム地震情報利用協議会から配信されるリアルタイム地震情報を受信して、消防局の所在地における地震震度相当値と主要動到達時間を計算する。そしてこれらの情報に基づいて消防関係者の一斉招集を行うとともに、消防局に設置した表示装置等を動作させ、さらに消防署,市役所等の防災機関及び他地域救援チームへの連絡を配信することが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4においては、地震発生の初期微動(P波)の情報をリアルタイム地震情報利用協議会が受信して、直ちに緊急地震速報として震源地近在の避難所に発信する。これによって、避難所では緊急地震速報を解析して所定値以上の予測震度の場合、住民への避難行動を勧告するとともに、管理する各水門へ地震対策を指示することによって、各水門では水門を閉鎖して、地震の主要動(S波)の到達及び予め定められた時間後に予測される津波の到来に備えることが開示されている。
【特許文献1】特開平10−134212号公報
【特許文献2】特開2004−284758号公報
【特許文献3】特開2005−222203号公報
【特許文献4】特開2005−273188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大地震発生時に多発が懸念される自動車どうしや自動車と歩行者との衝突,接触等の事故、道路や橋梁,道路周辺建造物の損壊等の各種の原因による交通事故を、緊急地震速報を利用して有効かつ確実に低減することが可能なシステムは、従来、全く提案されていなかった。
【0010】
この発明は上述の事情に鑑みてなされたものであって、大地震発生時に、自動車の交通に関連して発生する事故を確実に低減することが可能な、緊急地震速報対応交通信号機制御システム及び緊急地震速報対応交通信号機制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は緊急地震速報対応交通信号機制御システムに係り、道路交通信号機に対して、地震発生地点での地震情報から生成された緊急地震速報を受信したとき、該緊急地震速報の受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、上記予測到達時刻の所定時間前から道路交通信号機の表示を上記予測震度の大きさに応じて段階的に平常の表示から変更する制限表示を行わせるための制御信号を発生する制限表示開始制御手段と、上記地震動の終息時期から所定時間経過後に上記道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰させるための制御信号を発生する制限表示停止制御手段と、上記制限表示開始制御手段からの制御信号と制限表示停止制御手段からの制御信号とを上記道路交通信号機に出力する制御信号出力手段とを備えた地震速報処理手段を設けてなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システムに係り、上記地震動の終息時期が、緊急地震速報の受信地点における上記緊急地震速報による予測地震動到達時期から推定された時期であることを特徴としている。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システムに係り、上記地震動の終息時期が、受信地点に設けられた震度計の検知結果から求められた時期であることを特徴としている。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システムに係り、上記道路交通信号機の制限表示が、上記予測震度の大きい順に、停止表示と、一時停止表示と、徐行表示とからなることを特徴としている。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システムに係り、上記道路交通信号機に対して、上記制限表示の内容を音声及び/又は文字情報によって表示する副表示手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、緊急地震速報対応交通信号機制御方法に係り、緊急地震速報を受信したとき、地震発生地点での地震情報から受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、上記予想到達時刻の所定時間前に上記予測震度に応じて道路交通信号機の表示を平常の表示から制限表示に変更する制御を行うとともに、上記地震動の予測到達時刻から推定された地震動の終息時期から所定時間経過後、又は震度計の検知情報に基づく地震動の終息時期から所定時間経過後に上記道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰するように制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の緊急地震速報対応交通信号機制御システム又は緊急地震速報対応交通信号機制御方法によれば、地震発生時に配信される緊急地震速報を利用して、大地震発生時に多発が懸念される自動車どうしや自動車と歩行者との衝突,接触等の事故、道路や橋梁,道路周辺建造物の損壊等の各種の原因による交通事故を、有効かつ確実に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
道路交通信号機に対して、地震発生地点での地震情報から生成された緊急地震速報を受信したとき、緊急地震速報の受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、予測到達時刻の所定時間前から道路交通信号機の表示を予測震度の大きさに応じて段階的に平常の表示から変更する制限表示を行わせるための制御信号を発生する制限表示開始制御手段と、地震動の終息時期から所定時間経過後に道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰させるための制御信号を発生する制限表示停止制御手段と、制限表示開始制御手段からの制御信号と制限表示停止制御手段からの制御信号とを道路交通信号機に出力する制御信号出力手段とを備えた地震速報処理手段を設けて緊急地震速報対応交通信号機制御システムを形成する。
【実施例1】
【0019】
図1は、この発明の一実施例である緊急地震速報対応交通信号機制御システムの概略構成を示す模式図である。
図1において、未地震動区域1は、地震動がまだ及んでいない平常状態の区域を示している。地震動区域2は、地震発生3によって地震動が既に及んでいる区域を示している。道路交通信号機4は、地震発生3に応じて気象庁が配信する "緊急地震速報" によって制御されて、予め定められた地震時の制限表示を行う。
【0020】
以下、図1に示されたこの例の緊急地震速報対応交通信号機制御システムの動作を説明する。
地震発生時、図示されない気象庁が配信する "緊急地震速報" によって地震発生の情報を受信する。 "緊急地震速報" の受信地点は、各道路交通信号機の設置地点ごと、又は複数の道路交通信号機の管制をまとめて行う地点ごととする。
そして、 "緊急地震速報" による地震発生地点での地震情報から、当該受信地点での地震震度と地震動到達時刻とを予測し、予測震度が予め設定された値を超えたとき、未地震動区域1内の一又は複数の道路交通信号機4において、予測地震動到達時刻から所定時間前に平常の交通制御とは異なる制限表示を開始する。この場合の制限表示には、道路交通信号機に付属する速度指示表示板等への補助的な交通規制表示を含むものとする。
さらに、地震動の終息後に、当該受信地点における制限表示を解除する。
【0021】
図2は、この例の緊急地震速報対応交通信号機制御システムの具体的構成を示すブロック図である。
この例の緊急地震速報対応交通信号機制御システムは、地震計11と、地震観測網12と、気象庁(JMA)13と、気象業務支援センタ(JMBSC)14と、通信衛星15と、リアルタイム地震情報利用協議会(REIC)16と、配信プロバイダ17と、インターネット網(又は専用回線通信網、以下単にインターネット網という)18と、保守センタ19と、複数の交通信号機制御装置21A,21B,21Cとから概略構成されている。
【0022】
図2において、地震計11は、地震動の規模と発生時刻、及び地震動の伝搬方向等を検知するものであって、必要に応じて各地に配置されるものであり、従来の地震観測網を形成するものでもよく、又は "緊急地震速報" のために設置されたものでもよい。地震観測網12は気象庁,科学技術庁等に属するものであって、配下の複数の地震計11からの地震データを収集する機能を有している。気象庁13は、地震観測網12からの地震データを受信してこれを解析し、初期微動(P波)の発生を検知したとき、直ちに "緊急地震速報" を発生する。気象業務支援センタ14は、気象庁13が発生した "緊急地震速報" を、リアルタイム地震情報利用協議会16及び複数の配信プロバイダ17に送信する。通信衛星15は、気象業務支援センタ14から配信プロバイダ17を介して受信した "緊急地震速報" を交通信号機制御装置21A,21Cに配信する。リアルタイム地震情報利用協議会16は、気象業務支援センタ14から受信した "緊急地震速報" を、インターネット網18に送出する。配信プロバイダ17は、気象業務支援センタ14から受信した "緊急地震速報" を、インターネット網18に送出する。インターネット網18は、リアルタイム地震情報利用協議会16又は配信プロバイダ17からの "緊急地震速報" を、交通信号機制御装置21A,21B,21Cに送信する。保守センタ19は、インターネット網18を介して交通信号機制御装置21A,21B,21Cの保守を行う。なお、気象業務支援センタ14は、現在は "緊急地震速報" の通信経路に組み込まれていないが、近い将来に組み込まれることが予定されているものである。
【0023】
以下、図2に示された緊急地震速報対応交通信号機制御システムの概略の機能,動作を説明する。
地震計11は地震動の発生を検出する。地震観測網12は地震計11で検出された地震情報を収集する。気象庁13は、地震観測網12からの各地震計設置地点におけるP波の情報を解析して、得られた地震規模と地震発生時刻との情報から "緊急地震速報" を生成して、気象業務支援センタ14を経て各交通信号機制御装置21A,21B,21Cに配信するが、この場合の情報伝達ルートとしては、配信プロバイダ17から通信衛星15を経由する場合と、リアルタイム地震情報利用協議会16又は配信プロバイダ17を介して、インターネット網18を経由する場合とがある。交通信号機制御装置21A,21B,21Cは、伝達された "緊急地震速報" の解析結果に応じて、配下の道路交通信号機に対する地震発生時の制御を行う。各交通信号機制御装置が制御する道路交通信号機は1台に限らず、比較的近傍の複数の道路交通信号機を連携したものであってもよい。
【0024】
なお、上述の道路交通信号機には、一般道,高速道,トンネル等に設けられる補助信号機を含むものとする。また、道路交通信号機にバッテリー等の補助電源を設けることは、地震発生時における商用電源の停電対策として有効である。さらに、図2に示された地震計11は、地震動検出精度を向上させるためには、極力、多数のものを連携して動作させるようにすることが望ましい。
【0025】
この例の緊急地震速報対応交通信号機制御システムにおける、地震発生時における各交通信号機制御装置の制御は、概略、次のようなものである。
(1) 道路交通信号機の制限表示開始制御
(a) "緊急地震速報" に示される地震発生地点での地震情報から、当該交通信号機制御装置の設置地点での地震震度と到達時刻とを予測する。そして、予測震度が予め設定された値を超えたとき、地震動の予測到達時刻の所定時間前から、予測震度に対応して、道路交通信号機が予測震度の大きい順に、停止表示(赤色点灯)、一時停止表示(赤色点滅)、徐行表示(黄色点滅)等の段階的な制限表示を行うように制御する。
(b)この場合の制限表示には、制限速度指示表示板等への補助的な交通規制表示を含むものとする。
【0026】
(2) 道路交通信号機の制限表示停止制御
(a) "緊急地震速報" における地震動の終了情報を受信してから所定時間経過後に、道路交通信号機の制限表示停止の制御を行う。
(b) "緊急地震速報" に基づく地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機の制限表示停止の制御を行う。
(c)交通信号機制御装置に設置された震度計の震度検出結果によって求められた地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機の制限表示停止の制御を行う。
【0027】
各交通信号機制御装置の構成と動作は、 "緊急地震速報" の伝達経路と、地震発生時に必要とされる表示動作によって異なっている。以下、これら各種の場合に対応する交通信号機制御装置の具体的構成と動作例とを説明する。
【0028】
<交通信号機制御装置の具体的構成と動作例1>
図3は、この例における交通信号機制御装置の第1の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の交通信号機制御装置21Aは、衛星受信ルータ22と、ゲートウエイ23と、管制所24と、地震速報処理部31Aと、道路交通信号機32Aと、副表示装置33とから概略構成されている。
【0029】
衛星受信ルータ22は、通信衛星15からの "緊急地震速報" を中継して地震速報処理部31Aに伝達する。ゲートウエイ23は、インターネット網18からの "緊急地震速報" を管制所24に伝達する。管制所24は、交通信号機制御装置21A内に複数の地震速報処理部がある場合に設けられるものであって、受信した "緊急地震速報" をLAN(Local Area Network) を介して、配下の複数の地震速報処理部31Aに伝達し、各地震速報処理部が連携してそれぞれの道路交通信号機32Aを制御することによって、広域の交通管制を行うことが可能なようにする。地震速報処理部31Aは、衛星受信ルータ22又は管制所24からの "緊急地震速報" によって、交通信号機制御装置21Aが設置されている場所における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Aにおける地震発生時の制限表示開始の制御を行うとともに、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は地震動の予測到達時刻によって推定された地震動の終息時期から所定時間経過時における、道路交通信号機の制限表示の解除の制御を行う。道路交通信号機32Aは、地震速報処理部31Aらの制御情報に応じて所要の地震発生時の制限表示を開始し、地震速報処理部31Aからの制御情報に応じて制限表示を停止するとともに、副表示装置33における補助的な交通規制表示の開始と停止とを制御する。副表示装置33は、道路交通信号機32Aにおける制限表示に対応して、音声や文字等による補助的な交通規制表示を行う。
【0030】
以下、図3に示されたこの例の交通信号機制御装置21Aの動作を説明する。
地震速報処理部31Aは、通信衛星15からの "緊急地震速報" の情報を衛星受信ルータ22経由で受信したとき、又はインターネット網18からの "緊急地震速報" の情報をゲートウエイ23から管制所24経由で受信したとき、交通信号機制御装置21Aが設置されている地点における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Aにおける地震動発生時の制限表示開始の制御を行う。管制所24は、交通信号機制御装置21A内に複数の地震速報処理部がある場合に、配下にある各地震速報処理部31Aに "緊急地震速報" を伝達する。
【0031】
さらに、地震速報処理部31Aは、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は "緊急地震速報" に基づく地震動の予測到達時刻によって推定された地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機32Aの制限表示停止の制御を行う。
なおこの際における、道路交通信号機32Aの制限表示停止の制御は、交通信号機制御装置21Aにおいて手動によって行えるようにしてもよく、又は管制所からの管制所24を介する手動の制御によって行えるようにしてもよい。さらに上記各制限表示停止の契機を組み合わせて制御を行うようにしてもよい。
【0032】
副表示装置33は、主表示機器である道路交通信号機32Aにおける色光に基づく表示以外に、補助的な表示を行って地震動に基づく交通制限であることの周知を図るものであって、道路交通信号機32Aに付設されたスピーカ(不図示)による音声の表示や、制限速度指示表示板等の副表示機器(不図示)における文字表示等を行う。
【0033】
図4は、この例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の地震速報処理部31Aは、地震速報入力部41Aと、制限表示開始制御部42と、制限表示停止制御部43Aと、制御信号出力部44とから概略構成されている。
【0034】
地震速報入力部41Aは、衛星受信ルータ22からの "緊急地震速報" と管制所24からの "緊急地震速報" とを、制限表示開始制御部42と制限表示停止制御部43Aに伝達する。制限表示開始制御部42は、 "緊急地震速報" の情報に基づいて経験式等によって演算を行って、地震速報処理部42の設置地点における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Aにおいて制限表示を開始させるための制御信号を制御信号出力部44に送出する。制限表示停止制御部43Aは、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は "緊急地震速報" の情報に基づく地震動の予測到達時刻によって推定された地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機31Aにおける制限表示を停止させるための制御信号を制御信号出力部44に送出する。制御信号出力部44は、制限表示開始制御部42からの制限表示開始のための制御信号と、制限表示停止制御部43Aからの制限表示停止のための制御信号とを道路交通信号機32Aへ出力する。
【0035】
<交通信号機制御装置の具体的構成と動作例2>
図5は、この例における交通信号機制御装置の第2の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の交通信号機制御装置21Bは、ルータ25と、地震速報処理部31Bと、道路交通信号機32Bとから概略構成されている。
【0036】
ルータ25は、インターネット網18からの "緊急地震速報" を中継して地震速報処理部31Bに伝達する。地震速報処理部31Bは、ルータ25からの "緊急地震速報" によって、交通信号機制御装置21Bが設置されている地点における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Bにおける地震発生時の制限表示開始の制御を行うとともに、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過時における、道路交通信号機32Bの制限表示の解除の制御を行う。道路交通信号機32Bは、地震速報処理部31Bからの制御情報に応じて所要の地震発生時の制限表示を開始するとともに、地震速報処理部31Bからの制御情報に応じて制限表示を停止する。
【0037】
以下、図5に示されたこの例の交通信号機制御装置21Bの動作を説明する。
地震速報処理部31Bは、インターネット網18からの "緊急地震速報" の情報をルータ25経由で受信したとき、交通信号機制御装置21Bが設置されている地点における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Bにおける地震動発生時の制限表示開始の制御を行う。
さらに、地震速報処理部31Bは、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は "緊急地震速報" に基づく地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機32Bの制限表示停止の制御を行う。
なおこの際における道路交通信号機32Bの制限表示停止の制御は、交通信号機制御装置21Bにおいて手動によって行えるようにしてもよく、又は上記各制限表示停止の契機を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0038】
また、図5に示された交通信号機制御装置21Bにおいて、図3に示された構成例1の場合のように副表示装置を設けて、主表示機器である道路交通信号機32Bにおける色光に基づく表示以外に補助的な表示を行って、地震動に基づく交通制限であることの周知を図るようにしてもよい。
【0039】
図6は、この例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の地震速報処理部31Bは、地震速報入力部41Bと、制限表示開始制御部42と、制限表示停止制御部43Aと、制御信号出力部44とから概略構成されている。なおこれらのうち、制限表示開始制御部42と、制限表示停止制御部43Aと、制御信号出力部44とは、図4に示された構成例1の場合と同様なので以下においては詳細な説明を省略する。
地震速報入力部41Bは、ルータ22からの "緊急地震速報" を、制限表示開始制御部42と制限表示停止制御部43Aとに伝達する。
【0040】
<交通信号機制御装置の具体的構成と動作例3>
図7は、この例における交通信号機制御装置の第3の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の交通信号機制御装置21Cは、衛星受信ルータ22と、ルータ25と、震度計26と、地震速報処理部31Cと、道路交通信号機32Bとから概略構成されている。これらのうち、衛星受信ルータ22とルータ25は図3に示された構成例1の場合と同様であり、道路交通信号機32Bは、図5に示された構成例2の場合と同様なので、これらについての詳細な説明は省略する。
【0041】
震度計26は、交通信号機制御装置21Cが設置されている地点における、地震動に基づく震度を計測して地震速報処理部31Cに通知する。地震速報処理部31Cは、衛星受信ルータ22又はルータ25からの "緊急地震速報" によって、交通信号機制御装置21Cが設置されている地点における地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Bにおける地震発生時の制限表示開始の制御を行うとともに、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過後、又は震度計26による地震動発生検知時から所定時間経過後に、道路交通信号機32Bの制限表示停止の制御を行う。
【0042】
以下、図7に示されたこの例の交通信号機制御装置21Cの動作を説明する。
地震速報処理部31Cは、通信衛星15からの "緊急地震速報" の情報を衛星受信ルータ22経由で受信したとき、又はインターネット網18からの "緊急地震速報" の情報をルータ25経由で受信したとき、地震動の主要動の予測震度と予測到達時刻とを求めて、道路交通信号機32Bにおける地震動発生時の制限表示開始の制御を行う。
【0043】
さらに、地震速報処理部31Cは、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は "緊急地震速報" に基づく地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過後、又は震度計26による地震動発生検知によって求められた地震動の終息時期から所定時間経過後に道路交通信号機32Bの制限表示停止の制御を行う。
なお、道路交通信号機の制限表示停止の制御は、交通信号制御装置21Cにおいて手動によって行えるようにしてもよく、又は上記各制限表示停止の契機を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0044】
また、図7に示された交通信号機制御装置21Cにおいて、図3に示された構成例1の場合のように副表示装置を設けて、主表示機器である道路交通信号機32Bにおける色光に基づく表示以外に補助的な表示を行って、地震動に基づく交通制限であることの周知を図るようにしてもよい。
【0045】
図8は、この例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
この例の地震速報処理部31Cは、地震速報入力部41Cと、制限表示開始制御部42と、制限表示停止制御部43Bと、制御信号出力部44とから概略構成されている。これらのうち、制限表示開始制御部42と制御信号出力部44とは、図4に示された構成例1の場合と同様なので、以下においては詳細な説明を省略する。
【0046】
地震速報入力部41Cは、衛星受信ルータ22からの "緊急地震速報" と、ルータ25からの "緊急地震速報" とを、制限表示開始制御部42と制限表示停止制御部43Bに伝達する。制限表示停止制御部43Bは、 "緊急地震速報" における地震動の終了情報から所定時間経過時、又は "緊急地震速報" の情報に基づく地震動の予測到達時刻によって推定される地震動の終息時期から所定時間経過後、又は震度計26による地震動発生検知によって求められた地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機32Bにおける制限表示を停止させるための制御信号を制御信号出力部44に送出する。
【0047】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、 "緊急地震速報" を交通信号機制御装置に伝達するための手段は、各実施例に記載されたものに限らず、他の方法によるものであってもよい。また、道路交通信号機の制限表示開始制御は、交通信号機制御装置の設置地点に設けられた地震計の検知情報によって行うようにしてもよく、又は "緊急地震速報" に基づく予測制御と地震計の情報による制御とを組み合わせて行うようにしてもよい。また、図3に示された交通信号機制御装置21A、又は図5に示された交通信号機制御装置21Bにおいて、図7に示された交通信号機制御装置21Cの場合のように震度計を設けて、交通信号機制御装置の設置地点において震度計によって求められた地震動の終息時期から所定時間経過後に、道路交通信号機における制限表示停止の制御を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明の緊急地震速報対応交通信号機制御システム及び緊急地震速報対応交通信号機制御方法は、どのような地形,地質の場所における "緊急地震速報" に基づく道路交通信号機の予測制御に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の一実施例である緊急地震速報対応交通信号機制御システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】同実施例の緊急地震速報対応交通信号機制御システムの具体的構成を示すブロック図である。
【図3】同実施例における交通信号機制御装置の第1の具体的構成例を示すブロック図である。
【図4】同構成例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
【図5】同実施例における交通信号機制御装置の第2の具体的構成例を示すブロック図である。
【図6】同構成例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
【図7】同実施例における交通信号機制御装置の第3の具体的構成例を示すブロック図である。
【図8】同構成例における地震速報処理部の具体的構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
21A,21B,21C 交通信号機制御装置
22 衛星受信ルータ
23 ゲートウエイ
24 管制所
25 ルータ
26 震度計
31A,31B,31C 地震速報処理部(地震速報処理手段)
32A,32B 道路交通信号機
33 副表示装置
41A,41B,41C 地震速報入力部
42 制限表示開始制御部(制限表示開始制御手段)
43A,43B 制限表示停止制御部(制限表示停止制御手段)
44 制御信号出力部(制御信号出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路交通信号機に対して、地震発生地点での地震情報から生成された緊急地震速報を受信したとき、前記緊急地震速報の受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、前記予測到達時刻の所定時間前から道路交通信号機の表示を前記予測震度の大きさに応じて段階的に平常の表示から変更する制限表示を行わせるための制御信号を発生する制限表示開始制御手段と、前記地震動の終息時期から所定時間経過後に前記道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰させるための制御信号を発生する制限表示停止制御手段と、前記制限表示開始制御手段からの制御信号と制限表示停止制御手段からの制御信号とを前記道路交通信号機に出力する制御信号出力手段とを備えた地震速報処理手段を設けてなることを特徴とする緊急地震速報対応交通信号機制御システム。
【請求項2】
前記地震動の終息時期が、緊急地震速報の受信地点における前記緊急地震速報による予測地震動到達時期から推定された時期であることを特徴とする請求項1記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システム。
【請求項3】
前記地震動の終息時期が、受信地点に設けられた震度計の検知結果から求められた時期であることを特徴とする請求項1記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システム。
【請求項4】
前記道路交通信号機の制限表示が、前記予測震度の大きい順に、停止表示と、一時停止表示と、徐行表示とからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システム。
【請求項5】
前記道路交通信号機に対して、前記制限表示の内容を音声及び/又は文字情報によって表示する副表示手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一記載の緊急地震速報対応交通信号機制御システム。
【請求項6】
緊急地震速報を受信したとき、地震発生地点での地震情報から受信地点における地震動の予測到達時刻と予測震度とを求めて、前記予想到達時刻の所定時間前に前記予測震度に応じて道路交通信号機の表示を平常の表示から制限表示に変更する制御を行うとともに、前記地震動の予測到達時刻から推定された地震動の終息時期から所定時間経過後、又は震度計の検知情報に基づく地震動の終息時期から所定時間経過後に前記道路交通信号機における制限表示を解除して平常の表示に復帰するように制御を行うことを特徴とする緊急地震速報対応交通信号機制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−188173(P2007−188173A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3948(P2006−3948)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(593091739)中央システム技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】