説明

緑内障治療のためのEP2レセプターアゴニスト

本発明は、式


[Rは明細書において定義したとおりである]で示される新規化合物を提供し、該化合物は高眼圧の処置および/または哺乳類の眼に対する神経保護をもたらすのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本発明は、参照することにより本明細書の一部を構成する米国仮出願第60/712,586(出願日2005年8月29日)に基づき、その利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ヒトにおける緑内障および他の状態および適応の処置に有用な新規のEP2レセプターアゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の記載
眼圧降下剤は、術後およびレーザー線維柱帯切除術後の高眼圧の発現、緑内障、および術前合併症などの多くの様々な高眼圧状態の処置に有用である。
【0004】
緑内障は、眼圧の上昇によって特徴付けられる眼疾患である。その病因に基づいて、緑内障は原発性または続発性として分類されている。例えば、成人における原発性緑内障(先天性緑内障)は、開放隅角緑内障または急性もしくは慢性の閉塞隅角緑内障であり得る。続発性緑内障は、ブドウ膜炎、眼球腫瘍または拡大した白内障等の既に存在する眼疾患から生じる。
【0005】
原発性緑内障の根本原因はまだ分かっていない。眼圧の上昇は、房水流出の妨害に起因する。慢性開放隅角緑内障では、前房とその解剖学的構造は正常にみえるが、房水の排出が妨害されている。急性または慢性閉塞隅角緑内障では、前房が浅くなり、濾角(filtration angle)が狭くなり、虹彩がシュレム管の入り口で小柱網を閉塞させる。瞳孔の拡張により虹彩根が濾角の方へ押され、瞳孔閉鎖が生じて急性発作を引き起こすことがある。前房隅角が狭い眼の場合、種々の重篤度の急性閉塞隅角緑内障発作を引き起こしやすい。
【0006】
続発性緑内障は、後眼房から前眼房へ、その後シュレム管への房水の流れの何らかの妨害によって引き起こされる。前部の炎症性疾患は、膨隆虹彩における完全な虹彩後癒着を引き起こすことによって房水の逃げ道を阻止し、浸出液で排出チャネルが塞がれる。他の共通する原因として、眼球腫瘍、拡大した白内障、網膜中心静脈閉塞症、眼の外傷、手術方法および眼内出血がある。
【0007】
すべての種類をまとめると、緑内障は40歳以上の全人口の約2%であり、進行して急速に視力が低下するまでに何年もかかる。手術が望ましくない場合は、伝統的に、局所用β−アドレナリン受容体が緑内障処置に対して選択される薬物である。
【0008】
緑内障の続発症の一つは視神経頭に対する損傷であることが長年知られている。「陥凹」(“cupping”)と称されるこの損傷により、視神経円板の神経線維の領域が押し下げられる。この陥凹による視力の喪失は、進行性であり、この状態が効果的に処置されなければ失明につながる。
【0009】
残念ながら、薬物の投与によるあるいは房水の排出を促すための外科手術による眼圧の低下は、緑内障状態における神経への損傷を取り除くには必ずしも有効ではない。この見かけ上の矛盾は、Cioffi と Van Buskirk が“Microvasculature of the Anterior Optic Nerve”と題する報文[Surv. of Opthalmol. 38, Suppl., S107-16頁, 考察S116-17頁, 1994年5月]の中で取り上げられている。その要約では次のように述べられている:
「眼内圧上昇(IOP)の障害という緑内障の伝統的な定義は、臨床症状を探jんかし過ぎである。眼圧が正常のIOPより高くならない緑内障患者や、IOPの最大限の低下にもかかわらず視神経損傷が進行し続ける患者もいる。緑内障の病因において可能性のある別の要因としては、前部視神経の局所的な微小血管系の調節がある。微小血管の要因が重要であると考えられている一つの理由は、多くの微小血管の疾患が緑内障視神経ニューロパシーに関連しているということである」。
【0010】
Cioffiらに続いて、Matusiは、“Ophthalmologic aspects of Systemic Vasculitis”と題する報文[Nippon Rinsho, 52 (8), p. 2158-63, August 1994]を発表し、多くの微小血管疾患が緑内障性視神経ニューロパシーに関係しているという主張をさらに裏付けた。その要約では次のように述べられている:
「結節性多発動脈炎、巨大細胞血管炎及び大動脈炎症候群などの全身性血管炎の眼に関する所見を再検討した。全身性エリテマトーデスは全身性血管炎には類別されないが、眼に関するその所見は微小血管症性である。そこでこの報文には、眼に関するその所見の再検討を含めた。これらの疾患において最も一般的な眼底所見は、虚血性視神経ニューロパシー又は網膜血管閉塞である。そこで、視神経ニューロパシーと網膜及び脈絡膜血管閉塞の診断又は病因に関するいくつかのポイントを議論する。脈絡膜虚血は、フルオレセイン血管造影法がこの病変に適用されて以来、臨床的に診断できるようになった。脈絡膜動脈が閉塞すると、上層の網膜色素上皮が損傷を受ける。これは当該上皮のバリア機能の破壊を引き起こし、体液が脈絡膜血管系から知覚下網膜区域(subsensまたはy retinal spaces)に進入することを可能にする。これが網膜の漿液性剥離の病因である。網膜動脈閉塞は網膜血管床閉塞を形成した。このような低酸素網膜は網膜と虹彩の新血管新生を促進する血管形成因子を放出し、それらは血管新生緑内障を引き起こしうる」。
【0011】
B. Schwartzは、“Circulatory Defects of the Optic Disk and Retinin Ocular Hypertension and High Pressure Open-Angle Glaucoma”において、緑内障の進行に関係する視神経と網膜の進行性欠陥の測定について議論している[Surv. Ophthalmol., 38, Suppl. pp. S23-24, May 1994]。この著者は以下のとおり述べている:
「フルオレセイン欠如は視野喪失及び網膜神経繊維層喪失と有意に相関する。第2の循環性欠陥は網膜血管(特に網膜静脈)内のフルオレセイン流量の減少であり、年齢、心拡張期血圧、眼圧及び視野喪失が増大するほど、その流量が減少する。視神経乳頭と網膜の循環性欠陥は共に、処置されていない高眼圧眼に起こる。これらの観察結果は、視神経乳頭と網膜における循環性欠陥が高眼圧症及び開放隅角緑内障で起こり、この疾患の進行と共に増大することを示している」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、眼において緑内障または他の眼疾患の結果として視神経に起こる進行性の損傷を停止又は遅延させることができる神経保護効果を有する薬剤が今なお必要とされていることは明らかである。
【0013】
プロスタグランジンは当初、強力な眼昇圧物質であると考えられていた;しかし、ここ20年で蓄積された証拠では、プロスタグランジンのいくつかは効果の高い眼圧降下剤であり、緑内障を長期間医学的に管理するのに理想的に適していることが示されている。(例えば、Starr, M.S. Exp. Eye Res. 1971, 11, pp. 170-177;Bito, L. Z. Biological Protection with Prostaglandins Cohen, M. M., ed., BocRaton, Fla, CRC Press Inc., 1985, pp. 231-252;and Bito, L. Z., Applied Pharmacology in the Medical Treatment of Glaucomas Drance, S. M. and Neufeld, A. H. eds., New York, Grune & Stratton, 1984, pp. 477-505参照)。このようなプロスタグランジンとしては、PGF2α、PGF1α、PGE2、およびこれら化合物の特定の脂溶性エステル(C1〜C5アルキルエステル、例えば1−イソプロピルエステル等)が挙げられる。
【0014】
ある特定のEP2−レセプター選択的プロスタグランジンE2アゴニストは、Paralkar VM et al. Proc. Nat. Acad. Sci. vol 100 pp 6736-6740, 2003に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
本発明は、EP2レセプターアゴニスト活性を有する、次式で示されるN,N’−ジベンジルピリジルスルホンアミド化合物の治療的に有効な量を、高眼圧症の哺乳類に投与することによる、高眼圧症を処置するまたは上昇した眼圧(IOP)を低減する方法を提供する。
【化1】

[式中、
Rは、水素または1〜20個の炭素原子からなる脂肪族の直鎖または分岐鎖の基であるか、またはRは式(CHR1CHYX)nHで示される極性のエステル化基(ここにXはOまたはSであり;Yは、H、−OH、−COOH、CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)であるか、またはRは、
(i)次式で示されるアシルスルホンアミド基
【化2】

(i)次式で示されるスルホンアミド基
【化3】

および
(iii)
【化4】

からなる群から選択され、
1は、水素および1〜20個の炭素原子からなるアルキル基からなる群から選択される。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、治療上有効な量の上記式の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を非毒性で眼科的に許容し得る液体のビークルと混合して含有してなる、定量適用に適した容器にパッケージングされた眼科用溶液に関する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、内容物を定量でディスペンスするのに適した容器、およびその容器内の、上で定義した眼科用溶液を含有してなる医薬品に関する。
【0018】
最後に、上記式で示され、以下に開示され、本発明の方法において用いられる特定の化合物は新規であり自明でない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な記載
本発明は、そのような必要とする哺乳類(例えば、ヒト)における高眼圧症を処置するおよび/または哺乳類に対する神経保護をもたらすための、EP2−レセプターアゴニスト活性を有するN,N’−ジベンジルピリジルスルホンアミドの使用に関する。本発明にしたがって用いられる化合物は以下の構造式:
【化5】

[式中、
Rは、1〜20個の炭素原子からなる脂肪族の直鎖または分岐鎖の基であるか、またはRは式(CHR1CHYX)nHで示される極性のエステル化基(ここにXはOまたはSであり;Yは、H、−OH、−COOH、CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)であるか、またはRは、
(i)次式で示されるアシルスルホンアミド基
【化6】

(i)次式で示されるスルホンアミド基
【化7】

および
(iii)
【化8】

からなる群から選択され、
1は、水素および1〜20個の炭素原子からなるアルキル基からなる群から選択される]
で示される化合物およびその製薬的に許容し得る塩である。
【0020】
好ましくは、Rは低級アルキル基(即ち、C1〜C7アルキル、例えばC1〜C4アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル等)である。より好ましくは、Rはメチルまたはエチルまたはイソプロピル基である(例えば、メチルまたはイソプロピル基)。最も好ましくは、Rはイソプロピル基である。
【0021】
好ましくは、R1は、Hまたは低級アルキル基、即ちC1〜C7アルキル(例えば、C1〜C4アルキル基(メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、など)である。より好ましくは、Rはメチルまたはエチルまたはイソプロピル基、例えばメチルまたはイソプロピル基である。最も好ましくはRはイソプロピル基である。
【0022】
好ましくはXはOである。
【0023】
好ましくはYは水素である。
【0024】
Rが極性のエステル化基であるとき、(CH2CH2O)nH、例えばC24OHであってよい。
【0025】
以下の化合物を本発明の方法に用いることができる。
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸;
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸イソプロピルエステル;
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸n−ブチルエステル;
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸メチルエステル;
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸2−ヒドロキシエチルオキシエチル;
(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸2−ヒドロキシプロピル;およびこれら化合物の製薬的に許容し得る塩。
【0026】
製薬的に許容し得る塩は、基本骨格の活性を保持し、それが投与されるという状況に照らして、それが投与された患者に対して有害なまたは望ましくない効果をもたらさない任意の塩である。特には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛等の有機イオンとともに形成する塩である。
【0027】
上記化合物を含有する医薬組成物は、活性成分として本発明の少なくとも1つの化合物またはその製薬的に許容し得る塩の治療的有効量を、眼科的に許容し得る慣用的な医薬用賦形剤と混合し、局所的な眼科用途に適当な単位投与剤型を調製することにより製造することができる。治療上有効量は、液体製剤中、典型的には約0.0001〜約5%(w/v)、好ましくは約0.001〜約1.0%(w/v)である。
【0028】
眼科的適用に関し、溶液は、好ましくは主な媒体として生理食塩水を用いて調製する。このような眼科用溶液のpHは、適当な緩衝系を用いて、好ましくは4.5〜8.0の間に維持する。中性pHが好ましいがそうでなくてもよい。製剤は、慣用的な製薬的に許容し得る、保存剤、安定化剤および界面活性剤もまた含有してよい。
【0029】
本発明の医薬組成物に用いることができる好ましい保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられるがこれに限定されない。好ましい界面活性剤は、例えば、Tween80である。同様に、様々な好ましいビークルを本発明の眼科組成物に用いることができる。これらのビークルとしては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロクサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シクロデキストリンおよび精製水が挙げられるがこれに限定されない。
【0030】
浸透圧調節剤を必要に応じてまたは便宜上添加してもよい。具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリム等の塩類、または任意の他の適当な眼科的に許容し得る浸透圧調節剤が挙げられるがこれに限定されない。
【0031】
得られる調製物が眼科的に許容し得る限り、様々な緩衝剤およびpHの調整手段を用いることができる。従って、緩衝剤としては酢酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、およびホウ酸バッファーが挙げられる。必要に応じ、酸または塩基を用いてこれら製剤のpHを調整してもよい。
【0032】
同様に、本発明において用いるための眼科的に許容し得る酸化防止剤としては、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるがこれに限定されない。
【0033】
本眼科組成物が含有し得る他の賦形剤成分としては錯化剤がある。好ましい錯化剤としてはエデト酸二ナトリウムがあるが、他の錯化剤を代わりにまたは共に使用することもできる。
【0034】
通常、以下の量で成分を用いる:
【表1】

【0035】
本発明の活性化合物の実際の用量は、具体的な化合物と処置される状態に依存し、適当な用量の選択は十分に当業者の知識の範囲内である。
【0036】
本発明の方法において用いるための眼科製剤は、点眼器を備えた容器などの慣用的に定量適用に適した形態にパッケージングし眼に適用しやすくする。点眼適用に適当な容器は、通常、適当な無菌の非毒性のプラスチック材料でできており、一般的に約0.5〜約15mLの溶液を含む。1つのパッケージには1以上の単位用量が含まれていてもよい。
【0037】
特に、保存剤不含の溶液は、しばしば、約10単位用量まで、好ましくは約5単位用量までを含有する再密閉不可能な容器に製剤化され、ここで典型的な単位用量は1〜約8滴、好ましくは1〜約3滴である。1滴の用量は通常約20〜35μLである。
【0038】
本発明を、本発明の実施の具体的な形態を説明するものであって特許請求の範囲の限定を意図するものではない、以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0039】
実施例1
イヌにおける眼圧測定試験は、雌雄両方のビーグル犬にて圧平気動眼圧測定(applanation pneumatonometry)により行った。試験中、イヌは覚醒しており手で軽く抑えつけた。点眼ボトルを用い、イヌの片眼に約35μlの容量を局所投与し、対照としてもう片方の眼にビークル(5mMトリスHCl中、1%ポリソルベート80)を投与した。角膜麻酔による眼圧測定のため0.25%にてプロパラカインを用いた。眼圧測定は、5日間の試験期間の毎日、投薬直前および2、4、6時間後に行った。眼表面充血の測定を各眼圧測定の直前に行った。眼表面充血の等級付けは半定量的で臨床評価に用いられる5段階のスコアリングスケール(0=なし;0.5=微量;1=軽度;2=中程度;および3=重度)にしたがって評価した。
【0040】
眼圧試験にカニクイザル(Macaca fascicularis)を用いた。各動物を、網膜全周光凝固により一方的にレーザー処置して片方の眼に高眼圧を誘導した。覚醒したメスのサルを特注の椅子に座るよう訓練し圧平気動眼圧測定を行った。点眼ボトルを用いて薬物を片眼に35μLの容量で局所投与し、対照としてもう片方の眼にビークル(5mMトリスHCl中、1%ポリソルベート80)を投与した。角膜麻酔による眼圧測定のため0.25%にてプロパラカインを用いた。眼圧測定は、5日間の試験期間の毎日、投薬直前および2、4、6および24時間後に行った。
【0041】
これら試験の結果を図1〜8に示す。
【0042】
図1および図2は、(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸の5日間1日1回の投与は、軽度の眼表面充血が時間経過とともに減少し、イヌのIOPの減少に有効であることを示している。
【0043】
図3〜図5は、サルの眼に対する(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸の0.01%、0.03%または0.1%での1回投与により、上昇したIOPが24時間で減少し、高用量の2つについては、対照の正常眼圧の眼と同等のレベルまで減少したことを示している。
【0044】
図6および図7は、(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸のイソプロピルエステルの5日間1日1回投与は、眼表面充血が最小限であり、イヌのIOPの減少に有効であることを示している。
【0045】
図8は、サルの眼に対する(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸のイソプロピルエステルの1回投与により、上昇したIOPが24時間でほぼ対照の正常眼圧のレベルまで減少したことを示している。
【0046】
本発明の特定の態様に関して記載したが、多くの自明な修飾を行うことができるので、本発明は当然これらの態様に限定されるわけではなく、本発明が特許請求の範囲内に含まれるあらゆるそのような修飾を包含することを意図していることは理解されよう。例えば、本発明は、高眼圧の処置または哺乳類(例えばヒト)の眼の神経を保護するために、上記の一般式で示される化合物に加え、EP2レセプターアゴニスト活性を有する他の任意のN,N’−ジベンジルピリジルスルホンアミド化合物を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の化合物の投与によるイヌのIOPに対する効果を示す。
【図2】図2は、本発明の化合物の投与によるイヌの眼表面充血に対する効果を示す。
【図3】図3は、本発明の化合物0.01%w/vを含有する溶液の投与によるサルのIOPに対する効果を示す。
【図4】図4は、本発明の化合物0.03%w/vを含有する溶液の投与によるサルのIOPに対する効果を示す。
【図5】図5は、本発明の化合物0.1%w/vを含有する溶液の投与によるサルのIOPに対する効果を示す。
【図6】図6は、イソプロピルエステルとしての本発明化合物の投与によるイヌのIOPに対する効果を示す。
【図7】図7は、イソプロピルエステルとしての本発明化合物の投与によるイヌの眼表面充血に対する効果を示す。
【図8】図8は、イソプロピルエステルとして本発明化合物0.1%w/vを含有する溶液の投与によるサルのIOPに対する効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】

[式中、
Rは、1〜20個の炭素原子からなる脂肪族の直鎖または分岐鎖の基であるか、またはRは式(CHR1CHYX)nHで示される極性のエステル化基(ここにXはOまたはSであり;Yは、H、−OH、−COOH、CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)であるか、またはRは、
(i)次式で示されるアシルスルホンアミド基
【化2】

(ii)次式で示されるスルホンアミド基
【化3】

および
(iii)
【化4】

からなる群から選択され、
1は、水素および1〜20個の炭素原子からなるアルキル基からなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項2】
Rが直鎖または分岐鎖の1〜20の炭素原子からなるアルキル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Rがイソプロピルまたはイソブチルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Rが、式(CHR1CYHX)nH(ここに、XはOまたはSであり、Yは、H、−OH、−COH、−CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)で示される極性のエステル化基である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
XがOであり、Yが水素であり、R1がHである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
高眼圧を処置するための方法であって、高い眼圧を有する哺乳類に、治療的に有効量の、式
【化5】

[式中、
Rは、水素、または1〜20個の炭素原子からなる脂肪族の直鎖または分岐鎖の基であるか、またはRは式(CHR1CHYX)nHで示される極性のエステル化基(ここにXはOまたはSであり;Yは、H、−OH、−COOH、CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)であるか、またはRは、
(i)次式で示されるアシルスルホンアミド基
【化6】

(ii)次式で示されるスルホンアミド基
【化7】

および
(iii)
【化8】

からなる群から選択され、
1は、水素および1〜20個の炭素原子からなるアルキル基からなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項7】
Rが直鎖または分岐鎖の1〜20の炭素原子からなるアルキル基である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
Rがイソプロピルまたはイソブチルからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Rが、式(CHR1CYHX)nH(ここに、XはOまたはSであり、Yは、H、−OH、−COH、−CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)で示される極性のエステル化基である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
Yが水素であり、XがOであり、R1がHである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
哺乳類の眼に対して神経保護をもたらすための方法であって、神経保護を必要とする哺乳類に、治療的に有効量の、式
【化9】

[式中、
Rは、水素、または1〜20個の炭素原子からなる脂肪族の直鎖または分岐鎖の基であるか、またはRは式(CHR1CHYX)nHで示される極性のエステル化基(ここにXはOまたはSであり;Yは、H、−OH、−COOH、CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)であるか、またはRは、
(i)次式で示されるアシルスルホンアミド基
【化10】

(ii)次式で示されるスルホンアミド基
【化11】

および
(iii)
【化12】

からなる群から選択され、
1は、水素および1〜20個の炭素原子からなるアルキル基からなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容し得る塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項12】
Rが直鎖または分岐鎖の1〜20の炭素原子からなるアルキル基である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Rがイソプロピルまたはイソブチルからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
Rが、式(CHR1CYHX)nH(ここに、XはOまたはSであり、Yは、H、−OH、−COH、−CONH2、SO3HおよびPO32からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)で示される極性のエステル化基である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
XがOであり、Yが水素であり、R1がHである、請求項4記載の化合物。
【請求項16】
高眼圧の哺乳類に、治療的に有効量のEP2−レセプターアゴニスト活性を有するN,N’−ジベンジルピリジルスルホンアミドを投与することを含んでなる、高眼圧を処置する方法。
【請求項17】
神経保護を必要とする哺乳類に、治療的に有効量のEP2−レセプターアゴニスト活性を有するN,N’−ジベンジルピリジルスルホンアミドを投与することを含んでなる、哺乳類の眼に対して神経保護をもたらす方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−506113(P2009−506113A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529107(P2008−529107)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032670
【国際公開番号】WO2007/027468
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】