説明

緑化システム

【課題】傾斜した折版屋根を、該折版屋根一面を傷付けることなく緑化する。
【解決手段】1または複数の植栽用成形ブロック6が収容された植栽トレイ3に植物Pが植えられている植栽ユニット2と、折版屋根100の隣り合う山部101に架け渡され、折版屋根の谷部102内に植栽ユニットを支持する横架部材と、折版屋根の山部を架け渡すように張設されている植物支持部材7を備え、横架部材は、植栽ユニットと折版屋根との間に空隙を設けるように、植栽ユニットを支持する構成とした緑化システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋上などに緑化を施すための緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和や大気中の炭酸ガスの吸収、アメニティ空間の創出などを目的として、建築物や駐車場などの人工地盤上に植栽を施し緑化することが行なわれている。特に、都市部においては屋上緑化の義務化も進められていることも関係して、緑化が施されたビルや工場が急速に増えてきている。
【0003】
建築物の屋上を緑化する場合、陸屋根(平屋根)に対して植栽を施し緑化するシステムが一般的である。この場合、天然の土壌ではなく、人工の土壌を使用して、植栽を行うことにより、より簡単に緑化を施すことができることが知られている。
しかし、陸屋根は排水性などの問題があるため、工場などの建物は勾配のある屋根を採用することが多い。このような勾配のある屋根を緑化する方法として、特許文献1に開示された方法がある。この方法は、屋根の表面に無機繊維と接着剤との混合物を吹き付けることで所定厚さの無機繊維層を形成し、その層の表面に種子と接着剤の混合物を吹きつけるという方法である。
また、特許文献2に開示されているように、傾斜した折版屋根を緑化するシステムも知られている。このシステムは、傾斜した折版屋根の谷部に植栽トレイと設置するタイプの緑化システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭51―21895号公報
【特許文献2】特開2003−339241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の緑化システムのように、傾斜した屋根全体に人工の土壌を敷くシステムにおいては、屋根に掛かる重量が大きくなり、屋根への負担が増えるという問題があった。また、水分の供給に関しても、面全体に均一に水分を行き渡らせることが難しいという問題があった。さらに、人工土壌が外部に曝されているため、雑草などが生えやすいという問題もあった。
また、特許文献2に記載の緑化システムにおいては、植栽トレイを直接折版屋根の谷部に設置する構成であるため、折版屋根を傷付け、折版屋根に錆びを発生させる原因となるという問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、軽量で屋根に負担をかけることなく、また屋根を傷付けることがなく、さらに効率的に植物に水分を供給することを可能とする緑化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の緑化システムは、折版屋根を緑化するためのシステムであって、1または複数の植栽用成形ブロックが収容された植栽トレイを有する植栽ユニットと、前記折版屋根の隣り合う山部に架け渡され、前記折版屋根の谷部内に前記植栽ユニットを支持する横架部材と、前記植栽ユニットが配されていない谷部の上に配設されるよう前記折版屋根の山部に架け渡され、前記植栽用成形ブロックに植えられた植物を支持する植物支持部材を備え、前記横架部材は、前記植栽ユニットと前記折版屋根との間に空隙を設けるように、前記植栽ユニットを支持することを特徴としている。
前記折版屋根の1つの谷部には複数の植栽ユニットが配置され、前記1つの谷部内の植栽ユニット同士は給水パイプによって接続されており、前記植栽ユニットに水を供給するための給水装置から最上段の植栽ユニットに供給された水は、前記給水パイプを経由して、接続された隣の植栽ユニットに流入可能になっていることが好ましい。
前記植栽ユニットに水を供給するための給水装置を備え、前記折版屋根の同じ谷部には複数の植栽ユニットが配置され、前記同じ谷部の植栽ユニットは給水パイプによって接続されていることが好ましい。
前記植栽トレイの底部には、前記折版屋根の傾斜方向と略垂直に交わる堰止めリブが形成されていることにより、前記植栽トレイの底部は複数の区画に分割され、前記植栽用成形ブロックは各区画に格納され、前記植栽ユニット内に供給された水が前記堰止めリブによって貯えられることが好ましい。
【0008】
前記植物は、蔓または蔦植物であることが好ましい。
前記蔓または蔦植物は、オカメヅタ又はこれに類するヘデラであることが好ましい。
前記給水装置は、同じ谷部の植栽ユニットのうち最下段の植栽ユニットに設けられた前記植栽用成形ブロック内部の水分の存在を感知するセンサと、該センサからの信号に応じて給水を制御する制御装置とを有することが好ましい。
前記植栽トレイの底面には保水マットが載置されており、該保水マット上に前記植栽用成形ブロックが載置されていることが好ましい。
前記植栽トレイはその上面にブロック保持蓋を有しており、該ブロック保持蓋と前記植栽用成形ブロックとの間には空間が設けられていることが好ましい。
前記植物支持部材は前記横架部材に取り付けられた固定具により固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の緑化システムによれば、1または複数の植栽用成形ブロックが収容された植栽トレイに植物が植えられている植栽ユニットと、折版屋根の隣り合う山部に架け渡され、折版屋根の谷部内に植栽ユニットを支持する横架部材と、折版屋根の山部を架け渡すように張設されている植物支持部材を備え、前記横架部材は、前記植栽ユニットと前記折版屋根との間に空隙を設けるように、前記植栽ユニットを支持する構成とした。この構成により、屋根領域において植物が植物支持部材上を這うことができるようになり、かつ、植栽ユニットによって屋根が傷付けられることがなく、雨水の流れを阻害することがない。また、植栽用成形ブロックを使用するため、緑化システムの重量が小さくなり、屋根への負担を減らすことができる。
また、複数の植栽ユニット同士を給水パイプによって接続し、屋根の勾配を利用して水分を行き渡らせる構成としたため、各植栽ユニットに対してより効率的に、かつ確実に水分を供給することができる。
植栽トレイの底部に堰止めリブが形成され、植栽ユニット内に供給された水が堰止めリブによって貯えられることによって、植栽ユニット内に収容された複数の植栽用成形ブロックに確実に水を吸収させることができる。
【0010】
緑化システムに使用する植物として、蔓または蔦植物、特にオカメヅタ又はこれに類するヘデラを採用することによって、植栽ユニットを屋根上に離間して配置した場合においても、より広面積の屋根を緑化することができる。
給水装置が、最下段の植栽ユニットに設けられた植栽用成形ブロック内部の水分の存在を感知するセンサと、このセンサからの信号に応じて給水を制御する制御装置とを有することによって、定期的な給水や、人手による給水と比較して、効率的に無駄のない給水を行うことができる。
植栽トレイの底面に保水マットが載置されており、この保水マット上に植栽用成形ブロックが載置されていることによって、植栽用成形ブロックの下部を常に水に浸すことなく、植栽用成形ブロックに水が吸収されるようになる。
ブロック保持蓋と植栽用成形ブロックとの間に空間が設けられていることによって、日光が上方よりブロック保持蓋に当たった際においても、日光がブロック保持蓋に当たることによって発生した熱が、直接的に植栽用成形ブロックに伝達するとこがない。
植物支持部材が、横架部材に取り付けられた固定具により固定されていることによって、折版屋根を加工することなく、植物支持部材を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る緑化システムの概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の植栽トレイを示す斜視図である
【図3】本発明のブロック保持蓋を示す斜視図である。
【図4】本発明の植栽ユニットの水の流れ方向に沿う断面による断面図である。
【図5】図4のV−Vに沿う断面図である。
【図6】折版屋根上において、オカメヅタの伸びる範囲を示す図である。
【図7】本発明の給水装置および植栽ユニットの配置パターンを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態を示す概略構成図である。以下の説明において、図1の矢印Lが示す方向を、前後方向、矢印Wが示す方向を左右方向と称すことがある。
本発明の緑化システム1は、傾斜した折版屋根100の谷部102の空間に吊り下げられた複数の植栽ユニット2、植栽ユニット2を吊り下げるための支持手段5、植栽ユニット2に植栽されたオカメヅタP(植物)と呼ばれる蔓または蔦植物が這うことが可能なように配置された植物支持部材7、植栽ユニット2内に水Wを導入するための給水装置8とから構成される。複数の植栽ユニット2は、折版屋根100上に互いに離間されて配置されている。
植栽ユニット2は、8つの植栽用成形ブロック6と、この植栽用成形ブロック6を収容する植栽トレイ3とから構成されており、植栽用成形ブロック6にオカメヅタPが植えられている。このオカメヅタPがその成長に伴い植物支持部材7上を這うように広がることで、屋上(折版屋根100)全体が緑化される。
【0013】
ここで、本発明に使用される植物Pであるオカメヅタと、このオカメヅタを生育するために使用される植栽用成形ブロック6について順に説明する。
オカメヅタは、ウコギ科の常緑藤本(蔓植物)であり、アイリッシュアイビー(セイヨーキヅタ)と同じ仲間である、やや大型の植物である。性質は強健で、屋外緑化などで街路やマンションの植え込みなどでもよく見られるなど、ガーデニングの素材や、いろいろな仕立てに使われる用途の広い植物である。生育温度は15℃〜20℃であるが、0℃以下にも耐える耐寒性を有している多年草である。成長速度が速く、平面的に伸びる性質を持っているため、屋上緑化に適した特性を有している。
また、例えば、風の大変強い場所や冷寒地などでは、他のヘデラを採用することも可能である。
なお、本発明の緑化システム1で用いられる植物の種類は特に限定されるものではないが、より効率的に広面積を緑化するためには、例えば、蔓植物や蔦植物など、ほふく性があり、植物支持部材2上を這うことができるものが好ましい。
【0014】
植栽用成形ブロック6は、例えばスポンジ等の吸水性材料からなる植物床材であり、軽量で保水能力の高い人工の苗床である。植栽用成形ブロック6の形状は、特に限定されるものではないが、鉢形状であることが好ましい。
このような成形ブロック6を使用することにより、土を使用することがなくなるため、土が崩れて周囲を汚すことがない。また、屋根に対する負荷が少ないシステムを構築することができる。
【0015】
以下、上述した緑化システム1を構成する、個々の構成要素について説明する。
まず、本発明の緑化システムに使用される植栽トレイ3について説明する。図2は本発明の植栽トレイ3の斜視図である。以下の説明において、図2の矢印Lが示す方向を、前後方向、矢印Wが示す方向を左右方向と称す。図4には、植栽トレイ3の断面形状が示されている。
植栽トレイ3は、樹脂成形により得ることができる容器であり、本実施形態では高密度ポリエチレン(HDPE)によって形成された、バスタブ状の容器である。植栽トレイ3は、内部に植栽用成形ブロック6を8つ格納可能するのに適した容積を有しており、植栽用成形ブロック6がトレイの長手方向(前後方向)に4つ、トレイの短手方向(左右方向)に2つ格納されるよう構成されている。
植栽トレイ3は、平面視矩形のバスタブ形状であり、植栽用成形ブロック6が載置されるトレイ底部31、植栽トレイ3の長手方向の側面を構成する第1トレイ側部32、トレイの短手方向の側面を構成する第2トレイ側部33、植栽トレイ3の上面であって植栽トレイの開口部の周囲を構成するトレイ上部34とから構成されている。
植栽トレイ3を構成する板の厚みは約4mmであり、植栽トレイ3の周囲は、トレイ補強リブ37によって適宜補強されている。
植栽トレイ3の深さは、後述する保水マット61と植栽用成形ブロック6とを重ねた高さと略同一である。本発明の植栽トレイの深さは、約120mmである。
【0016】
トレイ底部31には、トレイの短手方向に沿う方向に3つの堰止めリブ35が設けられている。堰止めリブ35は、トレイ底面31を4つの区画(3A〜3D、図4参照)に区切るように設けられており、各区画は略同一面積となるように構成されている。各区画の面積は、2つの植栽用成形ブロック6を配置するのに適した面積となっている。各堰止めリブ35の高さは約25mmであるが、折版屋根100の傾斜角度A(図4参照)に応じて適宜変更することが可能となっている。堰止めリブ35は、植栽トレイ3と一体に成形されることが好ましいが、別途リブ形状の板を取り付けてもよい。
【0017】
第2トレイ側部33の左右方向略中央には、略円形の給水孔36が形成されており、この給水孔36には、後述する給水パイプ81が連結される。給水孔36の高さ方向の位置は、この給水パイプ81が、給水孔36に接続された際、給水パイプ81の内径の最下部が堰止めリブ35の高さと略同一になるような位置に形成される。
【0018】
植栽トレイ3の上面には、ブロック保持蓋4取り付けることができる。このブロック保持蓋4については後述する。トレイ上部34には、ブロック保持蓋4を取り付ける際に使用する蓋取付け孔38、および支持手段5に固定する際に使用する支持手段取付け孔39が適宜形成されている。
【0019】
次に、ブロック保持蓋4について説明する。図3は、本発明のブロック保持蓋4を示す斜視図である。図4には、ブロック保持蓋4の断面形状が示されている。
ブロック保持蓋4は、植栽トレイ3と同様に、樹脂成形により得ることができる板状の部材であり、本実施形態では高密度ポリエチレン(HDPE)によって形成されている。
ブロック保持蓋4は、植栽トレイ3にオカメヅタPを植栽した植栽用成形ブロック6を格納した上で、植栽トレイ3に取付けられ、オカメヅタPの生育を妨げないようにしながら植栽用成形ブロック6を保持するためのものである。
【0020】
ブロック保持蓋4は、植栽トレイ3の長手方向に沿う中心線において2分割されており、この一対のブロック保持蓋4を組み合わせることで、4つの開口部22(図1参照)が形成される。この開口部22は、ブロック保持蓋4に設けられた開口溝44によって形成される。開口部22は、植栽トレイ3内に8つの植栽用成形ブロック6(およびオカメヅタP)が収容された際に、植栽用成形ブロック6の平面視中心部を露出させるような形状となっている。本実施形態においては、開口部22は、植栽トレイ3の短手方向が長軸である長円形状である。開口部22は、オカメヅタPの生育を妨げることがなければ、小さいほど好ましい。
ブロック保持蓋4には、植栽トレイ3の蓋取付け孔38に対応した取付け孔48が形成されている。
【0021】
ブロック保持蓋4には、ブロック保持蓋4の外形より所定距離を隔てた内側に勾配部45が設けられており、この勾配部45を境界として、蓋第1段部41および蓋第2段部42とに分けられた2段構成となっている。第1段部41の下面41a(図4参照)は、植栽用成形ブロック6が収容された植栽トレイ3にブロック保持蓋4を取り付けた際、植栽用成形ブロック6および植栽トレイ3に接触する。このとき、蓋第2段部42の下面42a(図4参照)と植栽用成形ブロック6との間には、空間Gが設けられるよう構成されている。
さらに、ブロック保持蓋4には、蓋強化リブ47が適宜形成されており、この蓋強化リブと、勾配部45によって、ブロック保持蓋4全体の強度を上げるよう構成されている。
【0022】
次に、図1、図4、および図5を参照して、植栽ユニット2の構成について説明する。図4は本発明の植栽ユニット2の水の流れ方向Fに沿う断面による断面図である。図5は、図4のV−Vに沿う断面図である。
植栽ユニット2は、植栽トレイ3の内部に保水マット61、および植栽用成形ブロック6が格納された上で、ブロック保持蓋4によって蓋をした構成である。
【0023】
保水マット61は、堰止めリブ35によって4分割されたトレイ底部31の区画と平面視が略同形状の板形状のマットであり、1つの植栽ユニット2に対して4つ使用される。厚さは堰止めリブ35の高さに対応しており、本実施形態においては、保水マット61の厚さは20mmである。
保水マット61は、植栽用成形ブロック6と同様に、保水能力の高いスポンジ状の材質により形成されている。
保水マット61は、植栽トレイ3の底部の区画3A〜3Dに1つずつ置かれており、各保水マット61の上に2つの植栽用成形ブロック6が載置される構成となっている。
【0024】
植栽用成形ブロック6は、1つの保水マット61上に2つずつ載置されるため、1つの植栽ユニット2に8つずつ収納される。本実施形態の植栽用成形ブロック6は、高さ約100mm、直径約100mmの鉢形状である。植栽用成形ブロック6は、上述した保水マット61の上面と、植栽用成形ブロック6の下面とが、面接触するように設置される。
植栽用成形ブロック6にはオカメヅタPが植えられる。本発明の緑化システム1においては、1つの植栽用成形ブロック6に対して、4株のオカメヅタPが植えられている。
【0025】
ブロック保持蓋4は、オカメヅタPが植えられた状態の植栽用成形ブロック6を覆うように、所定のプラスチックリベット21を用いて植栽トレイ3に取り付けられる。これにより、植栽用成形ブロック6が不用意に落下することがなくなる。さらに、開口部22以外は、ブロック保持蓋4によって遮蔽されるため、他の植物の種子や、鳥のフンなどが植栽トレイ3の中に入り込むことが少なくなる。
ブロック保持蓋4を植栽トレイ3に取り付けると、ブロック保持蓋4の第1段部41の下面41aが、植栽用成形ブロック6の上面と当接する。ブロック保持蓋4の下面41aのみが、植栽用成形ブロック6に接触するように構成されているため、ブロック保持蓋4と植栽用成形ブロック6との間には、空間Gが生まれる。これによって、日光が上方よりブロック保持蓋6に当たった際においても、日光がブロック保持蓋4に当たることによって発生した熱が、直接的に植栽用成形ブロック6に伝達するとこがない。
【0026】
次に、植栽ユニット2の固定方法について説明する。
上述したように、本発明の緑化システムにおいて、オカメヅタPが植栽される植栽ユニット2は、折版屋根100の谷部102に吊り下げられる形で固定されている。植栽ユニット2は、その前後をそれぞれ横架部材51で支えられている。横架部材51は、折版屋根の隣り合うハゼ部101(山部)に架け渡されている。横架部材51とハゼ部101とは、ハゼ金具52によって連結されている。
【0027】
横架部材51は、一般に溝形鋼と呼ばれる断面コの字状の鋼材である。本実施形態においては、材質がSUS304、寸法は高さ30mm、板厚1.2mmの溝形鋼を使用している。長さは、折版屋根100のハゼ間距離に依存するが、本実施形態の折版屋根100のハゼ間距離は500mmであるため、横架部材51の長さは約600mmとされている。横架部材51には植栽トレイ3の支持手段取付け孔39に対応した取付け孔が形成されている(図示せず)。
【0028】
ハゼ金具52としては、一般的なハゼ金具を使用することができる。図1、および図5に示した実施形態においては、折版屋根100としてヨドルーフ166ハゼ(淀川製鋼製)を使用しており、このハゼに適したハゼ金具を用いている。
本実施形態のハゼ金具52は、一対のハゼ固定アングル52aから構成されている。ハゼ金具52を、折版屋根100のハゼ部101に固定する際は、一対のハゼ固定アングル52aによりハゼ部101を左右方向から挟み、その上で一対のハゼ固定アングル52aを締結部材55によって締結する。
【0029】
植栽ユニット2を折版屋根100上に固定する際は、まず、ハゼ部101にハゼ金具52を固定したあと(4ヶ所)、ハゼ金具52の上面に締結部材56を用いて横架部材51を固定する。次に、植栽トレイ3のトレイ上部34を横架部材51に乗せるようにして、植栽ユニット2を横架部材51上に載置し、所定の締結部材57(図1参照)を用いて植栽ユニット2を固定する。
【0030】
なお、折版屋根の屋根勾配は、分数勾配で3/100(高さ/水平距離)が好ましいが、10/100まで対応可能である。
【0031】
次に、給水装置8について説明する。図7は、本発明の給水装置8の概略構成図である。
給水装置8は、折版屋根100の同じ谷部102に固定されている植栽ユニット2(以下、植栽ユニット列と称す)どうしを連結する給水パイプ81と、植栽用成形ブロック6内部の湿度を計測するセンサ82と、センサ82の情報に応じて、水を供給したり供給を止めたりするための電磁バルブ83と、図示しない制御装置とから構成されている。
【0032】
電磁バルブ83は建物内、または屋根上など所定の位置に設置されており、水道管86が接続されている。電磁バルブ83からは、給水パイプ81によって、植栽ユニット列の最上段の植栽ユニット2に水が供給される。同じ植栽ユニット列の植栽ユニット2どうしは、給水パイプ81によって連結されている。給水パイプ81は、植栽トレイ3の給水孔36に所定の方法で取り付けられる。給水パイプ81は、塩化ビニル製のホースが好ましい。
植栽ユニット列の最下段の植栽ユニット2には、植栽ユニット2内部に収容されている植栽用成形ブロック6の湿度を測定するセンサ82が設置されており、このセンサ82の信号は、信号線85によって電磁バルブ83に送信される。
【0033】
本発明の給水装置8は、このセンサ82が植栽用成形ブロック6の湿度の低下を感知すると、図示しない制御装置によって電磁バルブ83が開状態となり、最上段の植栽ユニット2に水が供給される構成である。
なお、図7においては、センサ82は、1つしか図示されていないが、各植栽ユニット列の最下段の植栽ユニット2に1つずつ設けられることが好ましい。また、植栽用成形ブロック6の湿度を計測するのではなく、植栽トレイ3内部の水位を計測するためのセンサを用いて、電磁バルブ83を制御してもよい。
また、センサを用いることなく、定期的に水を供給することによって、運用することも可能である。
【0034】
次に、図1、および図7を参照して、植物支持部材7について説明する。
植物支持部材7は、植物Pを這わせることができ、かつ、屋根面を覆うことができるような面を有する部材である。さらに、植物支持部材7は、植物Pが絡まることができるような形状となっている。
このような植物支持部材7としては、平面形状の一般的な防護ネットを使用することが好ましい。また、植物支持部材7は、オカメヅタPが植物支持部材7の下に飛び出さないような目合い(隣接する糸条間の距離)とすることが好ましく、本発明の緑化システム1は、45mm×45mmの目合いのネットを使用している。
植物支持部材7は、植物支持部材を構成する面が植栽用成形ブロック6の上面と略同一の高さになるように張設される。
【0035】
植物支持部材7は、図1に示すように、横架部材51に取り付けられた固定具53で固定することが好ましい。固定具53を用いて横架部材51に植物支持部材7を固定することで、折版屋根100に負担をかけることなく、植物支持部材7を張設することができる。また、固定具53に限らず、植物支持部材を固定することができれば、締結方法は問わない。
植物支持部材7の張り具合は、オカメヅタPが植物支持部材7上に這う状態においても、植物支持部材7が弛まないよう、十分な張力で張ることが好ましい。
図7には、植物支持部材7の設置方法が示されている。図7に示すように、植物支持部材7は、左右方向に隣り合う植栽ユニット2の間を埋めるように、折版屋根100の傾斜方向に延在するように張設される。植物支持部材7の大きさは、左右方向に隣り合う植栽ユニット2の間隔、および折版屋根100の大きさに応じて適宜調節される。ただし、折版屋根100の傾斜方向の長さについては、適宜分割してもよい。
また植物支持部材7は、図7のような形状に限らず、折版屋根100を可能な限り覆うように、植栽ユニット2部分のみをくり貫いたような形状とすることも可能である。
【0036】
また、折版屋根100の下端には、オカメヅタPが屋根の下方へ垂れ下がらないような、ストッパー(図示せず)を設けることが好ましい。
【0037】
次に、このように構成される本発明の緑化システム1の作用について説明する。
本発明の緑化システム1は、植栽ユニット2に植えられた複数のオカメヅタPが、植栽ユニット2を中心に円を描くように生育する。オカメヅタPは、垂直ポールなどの支持部材がない場合には、上方へ伸びる性質はないため、水平方向に伸びる。本発明の緑化システム1には、植物支持部材7が植栽用成形ブロック6の上面と略同一平面上に張設されているため、オカメヅタPは、植物支持部材7上を這うように伸びる。
【0038】
図6は、折版屋根100上において、オカメヅタPの伸びる範囲を示す図である。
本発明の緑化システム1は、オカメヅタPの生育範囲を考慮して、植栽ユニット2どうしを離間させて設置している。オカメヅタPは、水平方向に伸びる性質、および生育時間に比例して鉢からの距離を伸ばす性質がある。本発明の緑化システム1はこの性質を考慮して、植栽ユニット2どうしの間隔Dを定めた。図6に示した例においては、前後方向1000mm、左右方向1000mmとした。
【0039】
オカメヅタは気温10℃〜30℃の状況においては、3ヶ月で約500mm伸びる性質を有している。図6の楕円P1は、その育成範囲を示している。
植栽ユニット2に収容されている8つの植栽用成形ブロック6からそれぞれオカメヅタが伸びると、円P2に示すような範囲が緑化される。つまり、緑化システム2を設置して3ヶ月後には、図6のP2に示すような範囲が緑化されることになる。つまり、植栽ユニット2の中心から半径500mmの範囲が緑化される。さらに3ヶ月が経過すれば、屋根全体が緑化される。
【0040】
また、植栽ユニット2の設置間隔は、適宜変更することが可能である。
図7は、植栽ユニット2の配置パターンを示す図であり、(a)は、より狭い間隔の設置パターンであり、(b)は、より広い間隔の設置パターンを示す図である。
まず図7(a)に示す配置パターンにおいては、植栽ユニット2は、前後方向の間隔D1aを約750mm、左右方向の間隔D2aを約1000mmとして配置されている。
図6に示す配置は、前後方向の間隔および左右方向の間隔が1000mmであるので、1つの植栽ユニットが1m当たりに1つ設置されていることを示している。
これに対し、図7(a)に示す配置パターンは、植栽ユニット2が0.75m当たりに1つ設置されており、植栽ユニット2はより密に設置されている。このような設置パターンを採用することによって、より早い緑化が可能となる。
【0041】
図7(b)に示す配置パターンにおいては、植栽ユニット2は、前後方向の間隔D1bを約1500mm、左右方向の間隔D2bを約2000mmとして配置されている。
この配置パターンでは、植栽ユニット2が3m当たりに1つ設置されており、図6に示した配置パターンと比較して、植栽ユニット2はより疎に設置されている。このような設置パターンは、屋根全体を緑化するのにより長い時間を必要とするが、より低コストでの緑化が可能となる。
【0042】
以上に説明したように、本発明の緑化システム1は、使用する植物や、費用、設置する場所の気候など、様々な条件に応じて、植栽ユニット2の配置をフレキシブルに設定することが可能である。また、緑化システム1の設置後に、植栽ユニット2の数を増加させて、より緑を増やしたり、別の植物を混在させたりするなど、設置後の変更も可能である。
【0043】
次に、図4、図7を参照して、本発明の緑化システム1の給水方法について説明する。
まず、電磁バルブ8を開状態にし、給水81を解して各植栽ユニット列の最上段に水を供給する。この際、少しずつ保水マット61に水Wが吸収されるような水量とする。
供給された水は、折版屋根100の傾斜によって、図4のF方向から植栽トレイ3内に導かれ、堰止めリブ35によって形成された区画3Aに流入する。流入された水Wは、当初は、他の区画(3B、3C、3D)に流入することなく、区画3Aを満たす。水Wは、保水マット61に吸収されたのち、区画3Aを満たし、次いで、堰止めリブ35から溢れることで、隣の区画3Bに流入する。これを繰り返して、全ての区画3A〜3Dに配置された保水マット61に水Wが吸収される。区画3Dまで水Wが満たされると、水Wは給水パイプ81を通じて、下段に配置された植栽ユニット2に流入する。
つまり、流入する水Wは、植栽用成形ブロック6に直接吸収されることはなく、植栽用成形ブロック6と保水マット61が面接触されていることで、植栽用成形ブロック6が、保水マット61に吸収された水Wを吸収するという構成となっている。
【0044】
植栽用成形ブロック6は、保水マット61に吸収された水Wを徐々に吸収する。植栽用成形ブロック6が直接、流入してきた水Wと接することがないため、少しずつ水Wを吸収することが可能となる。つまり、本発明の緑化システム1においては、保水マット61が、植物Pが植えられる植栽用成形ブロック6と水Wとの間の緩衝材のような役割を果たす。この構成により、植栽用成形ブロック6の下部を常に水Wに浸すことなく、植栽用成形ブロック6に水Wが吸収されるようになる。
【0045】
また、本発明の緑化システム1は、植栽ユニット2と折版屋根100の谷面103との間に空間があるため、雨水を折版屋根100の谷部102に流すことが可能となっている。この雨水を再利用し、給水装置8によって植栽ユニット2に供給することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…緑化システム、2…植栽ユニット、3…植栽トレイ、4…ブロック保持蓋、5…支持手段、6…植栽用成形ブロック、7…植物支持部材、8…給水装置、35…堰止めリブ、36…給水孔、51…横架部材、52…ハゼ金具、53…固定具、61…保水マット、81…給水パイプ、82…センサ、83…電磁バルブ、100…折版屋根、101…山部、102…谷部、P…オカメヅタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折版屋根を緑化するためのシステムであって、
1または複数の植栽用成形ブロックが収容された植栽トレイを有する植栽ユニットと、
前記折版屋根の隣り合う山部に架け渡され、前記折版屋根の谷部内に前記植栽ユニットを支持する横架部材と、
前記植栽ユニットが配されていない谷部の上に配設されるよう前記折版屋根の山部に架け渡され、前記植栽用成形ブロックに植えられた植物を支持する植物支持部材を備え、
前記横架部材は、前記植栽ユニットと前記折版屋根との間に空隙を設けるように、前記植栽ユニットを支持することを特徴とする緑化システム。
【請求項2】
前記折版屋根の1つの谷部には複数の植栽ユニットが配置され、前記1つの谷部内の植栽ユニット同士は給水パイプによって接続されており、
前記植栽ユニットに水を供給するための給水装置から最上段の植栽ユニットに供給された水は、前記給水パイプを経由して、接続された隣の植栽ユニットに流入可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記植栽トレイの底部には、前記折版屋根の傾斜方向と略垂直に交わる堰止めリブが形成されていることにより、前記植栽トレイの底部は複数の区画に分割され、
前記植栽用成形ブロックは各区画に格納され、
前記植栽ユニット内に供給された水が前記堰止めリブによって貯えられることを特徴とする請求項2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記植物は、蔓または蔦植物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の緑化システム。
【請求項5】
前記蔓または蔦植物は、オカメヅタ又はこれに類するヘデラであることを特徴とする請求項4に記載の緑化システム。
【請求項6】
前記給水装置は、同じ谷部の植栽ユニットのうち最下段の植栽ユニットに設けられた前記植栽用成形ブロック内部の水分の存在を感知するセンサと、該センサからの信号に応じて給水を制御する制御装置とを有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の緑化システム。
【請求項7】
前記植栽トレイの底面には保水マットが載置されており、該保水マット上に前記植栽用成形ブロックが載置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の緑化システム。
【請求項8】
前記植栽トレイはその上面にブロック保持蓋を有しており、該ブロック保持蓋と前記植栽用成形ブロックとの間には空間が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の緑化システム。
【請求項9】
前記植物支持部材は前記横架部材に取り付けられた固定具により固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−142887(P2011−142887A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8018(P2010−8018)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(507204730)株式会社 AGUA JAPAN (4)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】