説明

緑化壁又は緑化ファサード

緑化壁又は緑化ファサードは、一方では植物(3)を受けている領域(4)を含み、他方では光起電性パネル(5)を含む。植物(3)に覆われた領域(4)と交互に設けられたこれらのパネル(5)は、植物(3)と接触して循環する気流(F)により冷却されて、最適な条件下で光起電性パネル(5)が作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化壁又は緑化ファサードに関し、それらは、例えば都市又は他の環境における車道の縁又は建物の切妻に設けられる構造を形成する。
【背景技術】
【0002】
緑化壁の構造は、例えば本願出願人による特許文献1、又はこれと同等の特許文献2から公知である。
【0003】
現在、緑化壁は、本質的に装飾の機能、又は、特に都市の模様替え、見苦しい石若しくはコンクリート壁の隠蔽及び騒音の遮断といった少なくとも受動的な役割を有している。また、緑化壁に含まれる植物により、緑化壁は、特に都市の中又は交通路沿いの雰囲気に対して、抗汚染物質の役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許第2872381号明細書
【特許文献2】欧州特許第1771062号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来の機能に加えて、特にエネルギーの観点において「積極的」な役割を果たすように改良された緑化壁又は緑化ファサードを提供することである。
【0006】
この目的のための本発明の対象は、植物を受けている領域、又は植物を受けるのに適した領域を含む緑化壁又は緑化ファサードであり、この緑化壁又は緑化ファサードは、本質的に、植物と接触する空気の循環により冷却され得る光起電性パネルを含むことを特徴とする。
【0007】
従って、本発明に基づく考えは、光起電性パネル及びそれらが生産する電力の量を最適化するために、緑化壁と同一の壁に設けられた光起電性パネルを冷却するための緑化壁の植物の葉の蒸散現象による空気の冷却を利用することからなる。
【0008】
実際に、光起電性パネルは適度な温度における最適な方法により作動するが、それらが太陽放射に曝されるとそれらの温度が上昇し、そのパネルを冷却することが望ましくなる。緑化壁上に光起電性パネルを設けることにより、外部のエネルギーを消費することなく「天然」の冷却手段が得られる。さらに具体的には、冬季において、植物は葉を有さないが、気温が低く、光起電性パネルを冷却する必要がなく、また、夏期において、植物は葉を有し、これにより冷却効果が得られるため、外部のエネルギーを供給することなく理想的な条件下で、葉の蒸散が対流により天然の換気及び光起電性パネルの冷却を行う。
【0009】
特に、夏期の条件下において、その光起電性パネルは、その最適な運転のためにその周囲の温度が例えば25℃から30℃までの間に維持されるが、(太陽放射下において)従来の光起電性パネルは50℃から55℃の温度になるであろう。
【0010】
通常の葉の密度を考慮すると、冷気の気流を緑化壁又は緑化ファサード構造と光起電性パネルとの間に導くために、それらのパネルは突出するように有利に設けられ、すなわち、植物を受けている領域又は植物を受けるのに適した領域の前に設けられる。
【0011】
緑化壁又は緑化ファサードの全体の範囲における植物と光起電性パネルとの交互の配置は、特に有利であると考えられる。この目的のために、植物を受けている領域又は植物を受けるのに適した領域と光起電性パネルとは、特に、水平方向の帯状、鉛直方向の帯状又は格子状に交互に設けられてもよい。
【0012】
有利には、植物を受けている領域又は植物を受けるのに適した領域と光起電性パネルとは、それぞれが緑化壁又は緑化ファサードの全範囲の約50%に相当する。
【0013】
なお、光起電性パネルの進歩的な位置、及び植物に覆われた領域との交互の配置により、それらのパネルの陰に植物が入り、その陰は植物の冷却に寄与するため、その植物に接触して循環し、光起電性パネルを冷却する空気の冷却に寄与するであろう。
【0014】
光起電性パネルの範囲を考慮すると、熱及び/又は音に対する保護要素は、光起電性パネルの後方に設けられることが好ましい。これらの保護要素は、植物に覆われた領域同士の間に位置する部分における緑化壁又は緑化ファサードの断熱性及び/又は防音性の連続性を保証する。従って、光起電性パネルの追加は、本発明に係る緑化壁又は緑化ファサードの断熱性及び防音性を変更しない。
【0015】
これらの光起電性パネルは、緑化壁又は緑化ファサード上に鉛直方向に配列されてもよく、また、これらのパネルが太陽放射の捕獲と植物に覆われた領域のこれらのパネルによる陰の形成との2つの点において有利なように傾斜して設けられてもよい。前記の光起電性パネルの機械的位置付けの可能性を有するこれらのパネルのアセンブリも考えられ得る。
【0016】
本発明の対象である緑化壁又は緑化ファサードは、完全に自然な換気を可能とし、この場合、光起電性パネルにより供給される全ての電気エネルギーは、その緑化壁又は緑化ファサードの外部に用いられ得る。
【0017】
しかしながら、他の緑化壁又は緑化ファサードにおいて、これらは植物及び光起電性パネルと接触する空気の強制循環を起こすための電動手段を備え、これらの手段は、実際の光起電性パネルからの電気エネルギーが供給されている。空気の強制循環のための手段を運転するのに用いられる電気エネルギーは、実際の光起電性パネルにより生成され、外部電源からは供給されないことと、改善された光起電性パネルの冷却は、空気の強制循環により生じ、これらのパネルの電力生産量の改善を引き起こし、この強制循環を得るためのエネルギー量を十分に補うこととを考慮すれば、空気の強制循環は、当然にエネルギーを必要とするが、エネルギーのバランスの観点において高い利益を維持する。
【0018】
従って、どの場合においても、光起電性パネルを備える緑化壁又は緑化ファサードは、外部にエネルギーを供給できる。緑化壁又は緑化ファサードが大きいほど、比例的に光起電性パネルの表面領域が大きくなるため、供給される電力も大きくなり得る。
【0019】
もし望むならば、この電力の一部は、例えば緑化壁又は緑化ファサードを良好にする照明システムに電力の供給をするために、緑化壁又は緑化ファサードに用いられ得る。さらに、光起電性パネルは、緑化壁又は緑化ファサードに設けられた内蔵システム、この他に植物に覆われた領域への注水若しくはミスト散布システム、又は、特に光起電性パネルを洗浄するための洗浄システム等にエネルギーを経済的に供給できる。
【0020】
本発明は、この緑化壁又は緑化ファサードの数種の実施形態の例として描かれ、添付された図面を参照し、下記の詳細な説明によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明に係る光起電性パネルを有する緑化壁を示す正面図である。
【図2】図2は図1の緑化壁を上方から示す平面図である。
【図3】図3は図2の第1の変形例を示す上方からの平面図である。
【図4】図4は他の変形例に係る緑化壁の正面図である。
【図5】図5は他の変形例を示す上方からの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2は緑化壁を示し、その緑化壁は、植物3が成長している両側の鉛直面に延びる主要な枠組体2を含む。
【0023】
さらに具体的に、鉛直方向の帯状に延びる植物3を受ける複数の領域4は、領域4と実質的に同等の幅の間隔で互いに分離されている。
【0024】
植物3に覆われている領域4又は帯同士の間には、緑化壁の両面において、他の帯が鉛直方向に延び、他の帯には支持部材又はブラケット6により主要な枠組体2に保持された光起電性パネル5が設けられている。
【0025】
これらの支持部材又はブラケット6は、光起電性パネル5を主要な枠組体2及び領域4の前に位置付け、パネル5の突出は領域4に植えられた植物3の葉が生えている部分の幅に実質的に対応する(図2を参照)。
【0026】
光起電性パネル5は、簡略化のために鉛直に示されているが、それらは常時又は機械的位置付けの可能性により有利に傾斜されていてもよい。
【0027】
作動中に、矢印Fにより示す気流は、実質的に緑化壁の鉛直面を循環し、空気は植物3の葉に接触して蒸散効果により冷却され、この空気が光起電性パネル5に接触して、光起電性パネル5を冷却する。従って、光起電性パネル5は、エネルギー効率に関して最適な条件下で作動する。
【0028】
光起電性パネル5により生成された電気エネルギーは、緑化壁から離れた場所において用いられてもよいが、以下に記載するように、この緑化壁に有益な装置に供給されてもよい。
【0029】
まず、強制循環を起こすことにより気流を加速させるために、電動送風機ユニット7が緑化壁の枠組体2に取り付けられてもよい。電動送風機ユニット7の電気モータは、光起電性パネル5により電力が供給されるが、これらのパネル5により発生する電力の限られた一部のみを消費する。
【0030】
枠組体2は、夜間の照明とするため及び緑化壁を目立たせるために、その上部に例えば照明器具8として示す照明システムを有してもよい。この照明システムには、実際の光起電性パネル5からの電気エネルギーが供給される。
【0031】
ミスト散布管9として示すミスト散布システムは、水の噴霧により光起電性パネル5の追加冷却及び任意の洗浄を行うために、枠組体2の上部に取り付けられてもよい。この水の循環ポンプ、並びにミスト散布システム9を管理及び制御するための部材には、光起電性パネル5からの電気エネルギーが供給されてもよい。
【0032】
機械的に位置付け可能な光起電性パネル5の場合、これらのパネルにより生成された電気エネルギーは、これらのパネルの位置付けのための機構に供給されてもよい。
【0033】
さらに、安全性及び耐久性のために、また、緑化壁の装置にいつでも電力を供給できるようにするために、光起電性パネル5により生成された電気エネルギーの貯蔵、又は標準の電力配電網を介する外部電力の供給が考えられてもよい。
【0034】
好ましくは、適当な材料及び厚さの板状の断熱性及び/又は防音性要素10は、種々の光起電性パネル5の後方に設けられる。これらの要素10は、植物3に覆われた領域4同士の間に位置する帯における緑化壁の断熱性及び/又は防音性の連続性を保証する。
【0035】
図3は本発明に係る緑化壁又は緑化ファサードの変形例を示し、前記の部材と同一の部材には同一の符号を付している。図3において、植物3及び光起電性パネル5は、枠組体2の一方の面にのみ設けられ、断熱性及び/又は防音性要素10は、光起電性パネル5の後方における植物3に覆われた領域4同士の間に設けられている。
【0036】
図4及び図5は他の変形例を示す。図4及び図5において、植物3に覆われた領域4及び光起電性パネル5は、鉛直方向の帯状に設けられておらず、水平方向の帯状に交互に設けられている。
【0037】
植物に覆われた領域及び光起電性パネルが格子状、すなわち、鉛直方向及び水平方向の両方に交互に設けられている場合、並びに、付加された部材の全てが緑化壁又は緑化ファサードの光起電性パネルにより電力が供給されている場合であっても、添付した特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物(3)を受けている又は植物を受けるのに適した領域(4)を含む緑化壁又は緑化ファサードであって、
前記植物(3)と接触して循環する空気により冷却可能な光起電性パネル(5)をさらに含むことを特徴とする緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項2】
前記光起電性パネル(5)は、前記植物(3)を受けている又は植物を受けるのに適した領域(4)の前に突出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項3】
前記植物(3)を受けている又は植物を受けるのに適した領域(4)と前記光起電性パネル(5)とは、水平方向又は鉛直方向の帯状に交互に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項4】
前記植物(3)を受けている又は植物を受けるのに適した領域(4)と前記光起電性パネル(5)とは、格子状に交互に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項5】
前記植物(3)を受けている又は植物を受けるのに適した領域(4)と前記光起電性パネル(5)とは、緑化壁又は緑化ファサードの全範囲のそれぞれ約50%に相当することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項6】
前記光起電性パネル(5)の後方に断熱性及び/又は防音性要素(10)が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項7】
前記植物(3)及び光起電性パネル(5)と接触する空気の強制循環のための電動手段(7)をさらに備え、
前記電導手段(7)は、前記光起電性パネル(5)から電気エネルギーが供給されることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の緑化壁又は緑化ファサード。
【請求項8】
前記緑化壁又は緑化ファサードの前記光起電性パネル(5)により生成された電気エネルギーは、前記緑化壁又は緑化ファサードの照明システム(8)、前記植物(3)に覆われた領域(4)のための注水若しくはミスト散布システム(9)及び/又は前記光起電性パネル(5)のための清掃システム、特に洗浄システムに電力を供給するために用いられることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の緑化壁又は緑化ファサード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518402(P2012−518402A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550630(P2011−550630)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050273
【国際公開番号】WO2010/094890
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(507000394)
【Fターム(参考)】