説明

線ばね成形装置

【課題】成形ツールを駆動するためのサーボモータを、計測ツールを駆動するためのサーボモータに適用すること。
【解決手段】ツールスライドテーブル112に、成形ツール120Cの他に、線ばね1Aを通電対象とする計測ツール150Cを装着する。サーボモータM110等を駆動し、成形ツール120Aを用いて線ばね1Aを成形した後、成形された線ばね1Aの計測に用いる計測ツール150Cに対応したサーボモータM110を駆動すると、制御部202により、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触するまでの、計測ツール150Cの移動量が計測され、この計測結果から線ばね1Aの良否が判定される。これにより、成形ツール120Aを駆動するためのサーボモータM110を、計測ツール150Cを駆動するためのサーボモータに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を案内するクイルを中心にして放射状に配置した複数個の成形ツールを、クイルに案内されている線材の軸線に対し直角又は略直角にクイル先端部の線ばね成形ステージに向けて前進させ、クイルから送り出される線材に衝合させて線ばねを成形する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線ばね成形装置として、例えば、圧送ローラを有する線材圧送手段が線材を前方のクイルから成形ステージに送り出し、クイルを中心にして放射状に配置した複数種の成形ツールを、線材の軸線に対し直角又は略直角にクイル先端部の線ばね成形ステージに向けて前進させ、クイルから送り出される線材に衝合させて折り曲げ、湾曲あるいは捲回させて線ばねを成形する装置であって、クイルを、クイル移動手段により線材の軸線方向に移動可能に構成するとともに、線材圧送手段やクイル移動手段などの各々の駆動源であるサーボモータを制御装置によって連係動作するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、線ばね等のばねの良否を計測するに際して、被測定コイルばねの静電容量を検出する静電容量検出手段を設け、静電容量検出手段により検出された電気的容量値と基準コイルばねから得られた電気的容量値との差が容量上下限値の範囲内にあるか否かを判定するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3744910号公報
【特許文献2】特開2003−340541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、線ばね等のばねの良否を計測するに際して、従来技術では、前記静電容量検出では、静電容量を計測する専用の計測装置を設けなければならず、又
他の計測装置、たとえば、画像センサシステム或いは、レーザ検査システムを用いてもそれぞれ専用の計測装置を設けなければならず、それだけ構成が複雑になるとともにコストアップとなっている。
【0006】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、成形ツールを駆動するための駆動手段を、計測ツールを駆動するための駆動手段に適用することができる線ばね成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に係る線ばね成形装置においては、線材を成形ステージに送り出す線材圧送手段と、前記成形ステージに対して進退移動自在に配置された搬送手段と、前記搬送手段に搬送されて、前記成形ステージで前記線材を線ばねとして成形する成形ツールと、前記搬送手段に搬送されて前記線ばねを計測する計測ツールと、前記搬送手段を進退駆動する駆動手段と、前記駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記線材の成形時に、前記成形ツールによる成形に応じて前記駆動手段に対する駆動を制御し、前記線ばねの計測時には、前記計測ツールによる計測に応じて前記駆動手段に対する駆動を制御してなる構成とした。
【0008】
(作用)制御手段は、線材の成形時に、成形ツールによる成形に応じて駆動手段に対する駆動を制御し、線ばねの計測時には、計測ツールによる計測に応じて駆動手段に対する駆動を制御するようにしたため、成形ツールを駆動するための駆動手段を、計測ツールを駆動するための駆動手段に適用することができ、構成の簡素化を図ることが可能になる。
【0009】
請求項2に係る線ばね成形装置においては、線材を成形ステージに送り出す線材圧送手段と、前記成形ステージに対して進退移動自在に配置された複数の搬送手段と、前記いずかの搬送手段に搬送されて、前記成形ステージで前記線材を線ばねとして成形する単一または複数の成形ツールと、前記いずれかの搬送手段に搬送されて前記線ばねを計測する計測ツールと、前記各搬送手段をそれぞれ進退駆動する複数の駆動手段と、前記複数の駆動手段の中から前記線材の成形時に用いる駆動手段または前記線ばねの計測時に用いる駆動手段を選択し、選択した駆動手段の駆動を制御する制御手段を備えてなる構成とした。
【0010】
(作用)線材の成形時には、複数の駆動手段の中から前記線材の成形時に用いる駆動手段を選択し、選択した駆動手段の駆動を制御することで、成形ツールを成形ステージまで搬送することができる。線材を線ばねに成形した後は、複数の駆動手段の中から前記線ばねの計測時に用いる駆動手段を選択し、選択した駆動手段の駆動を制御することで、計測ツールを成形ステージまで搬送することができる。このため、成形ツールを駆動するための駆動手段を、計測ツールを駆動するための駆動手段に適用することができ、構成の簡素化を図ることが可能になる。
【0011】
請求項3に係る線ばね成形装置においては、請求項1または2に記載の線ばね成形装置において、前記制御手段は、前記線ばねの計測時に、前記駆動手段の駆動に伴って前記計測ツールの移動量の計測を開始し、前記計測ツールが前記線ばねを検知したことを条件に、前記計測ツールの移動量の計測を終了するとともに、当該計測結果から前記線ばねの良否を判定してなる構成とした。
【0012】
(作用)制御部は、成形された線ばねの計測に用いる計測ツールに対応した駆動手段を駆動したときに、計測ツールの移動量の計測を開始し、計測ツールが線ばねを検知したことを条件に、計測ツールの移動量の計測が終了し、当該計測結果から線ばねの良否を判定することができる。すなわち、成形ツールを用いて線ばねを成形した後、計測ツールを移動させて、計測ツールの移動量の計測することで、線ばねの良否を判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、請求項1によれば、成形ツールを駆動するための駆動手段を、計測ツールを駆動するための駆動手段に適用することができる。
【0014】
請求項2によれば、成形ツールを駆動するための駆動手段を、計測ツールを駆動するための駆動手段に適用することができる。
【0015】
請求項3によれば、成形された線ばねの良否を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図20は、本発明の第1の実施例である線ばね成形装置を示し、図1は同装置の全体正面図、図2は一部を断面で示す同装置の左側面図、図3は回転フレーム周辺の水平断面図、図4はクイル周辺の拡大断面図、図5は線ばね成形装置の正面側から見た曲げ成形ツールの正面図、図6は曲げ成形ツールの縦断面図(図5に示す線線VI−VIに沿う断面図)、図7は曲げ成形ツールの要部斜視図、図8はコイル成形ツールの平面図、図9はコイル成形ツールの縦断面図(図8に示す線IX−IXに沿う断面図)、図10はツールホルダにおける右巻き用と左巻き用のコイル成形用ツール本体の配置を示す図、図11は同装置で成形する線ばねの1例を示す斜視図、図12は成形ステージにおける各種成形ツールの配置図、図13、14、15は図11に示す線ばねを成形する工程を示す図、図16は図11に示す線ばねを成形する工程のタイムシェアリングを示す図、図17は多軸数値制御装置のブロック構成図、図18はドライバのブロック構成図、図19は成形ツールと計測ツールの断面図、図20は線ばねの良否を判定する方法を説明するための模式図、図21は線ばねの加工時と計測時の作用を説明するためのフローチャートである。
【0017】
これらの図において、本実施例に示す線ばね成形装置は、挟持した線材1を線材ガイドであるクイル10を介して前方の成形ステージ100(図1、2、6参照)に送り出す一対の圧送ローラ22、22を有する線材圧送手段20と、圧送ローラ22を含む線材圧送手段20を線材1の軸線X1周りに公転させて線材1をねじることで、クイル10の先端部から送り出す線材1の成形ステージ100に対する周方向相対位置を変化させる公転手段30と、クイル10を線材1の軸線XI周りに回転させるクイル回転手段40と、成形ステージ100に放射状に配置され、線材1の軸線XIに対し直角又は略直角に進退動作可能な複数(実施例では5台)の成形ツール120(120A〜120E)とを備え、所定の成形ツール120を前進させて、クイル10の先端部から成形ステージ100に送り出される線材1に衝合させて線材1を折り曲げ、湾曲あるいは捲回させることで、線ばねを成形するように構成されている。
【0018】
図1、図2における符号2は、線材圧送手段20、公転手段30およびクイル回転手段40や成形ステージ100等を下方から支持し、線材圧送手段20、公転手段30およびクイル回転手段40の駆動は勿論、線ばね成形装置における種々の駆動部の駆動源であるサーボモータを連係動作させるための位置決め駆動用の多軸数値制御装置が収容されている矩形状の架台である。
【0019】
符号3は、架台2上に設けられた固定フレームで、固定フレーム3には、成形ステージ100を構成するメインプレート102が垂直に固定一体化されており、メインプレート102の中心に線材1の軸線X1が一致するように配置されている。
【0020】
固定フレーム3には、線材1の軸線X1に沿って進退動作するクイル移動手段であるリニアウェイスライド50(図2参照)が設けられている。即ち、固定フレーム3には、線材圧送手段20、公転手段30およびクイル回転手段40がスライドフレーム4を介して一体に搭載されたスライドテーブル52が、線材1の軸線X1に沿ってスライド可能に組み付けられている。このため、固定フレーム3に設置されたサーボモータM50によって回転駆動するボールねじ54を介して、スライドテーブル52が線材1の軸線X1に沿って進退動作できる。
【0021】
即ち、所定の成形ツール120を成形ステージ100に向けて前進させて、クイル10の先端部から成形ステージ100に送り出される線材1に衝合させることで、線材1を折り曲げ、湾曲あるいは捲回させて線ばねを成形するが、成形されるコイル径は、成形ツール120とクイル10間の距離に比例するので、サーボモータM50の数値制御によりスライドテーブル52(クイル10)の移動位置を調節することで、コイル成形する線材1のコイル径を自由に調整できる。
【0022】
線材圧送手段20は、図2、図3、図4に示すように、一対の圧送ローラ22、22と、圧送ローラ駆動用のサーボモータM22と、サーボモータM22の駆動を圧送ローラ22に伝達する歯車機構a〜fと、圧送ローラ22の後方に配置されて線材1の曲がりを矯正する通常の線材矯正機構28と、線材1の曲がりを一定方向に保持し線材矯正機構28に線材1を送り出す数個のガイドローラ29aを装着したガイドリング機構29で主として構成されている。
【0023】
スライドフレーム4には、クロスローラベアリング31を介して回転フレーム21のディスク部21aが回転自在に支承されており、ディスク部21aの中央に設けた線材通し孔24に対し偏芯するように矩形状のギヤ収容部21b(図3参照)が設けられ、ギヤ収容部21bの外側面には、線材通し孔24を通る線材搬送路が直線となるように圧送ローラ22、22が設けられている。
【0024】
そして、図3に示すように、複数のギヤa〜fで構成した歯車機構(ギヤトレイン)を介して、ディスク部21aに対し固定されたサーボモータM22の駆動力が圧送ローラ22、22に伝達される。即ち、サーボモータM22の駆動は、その出力軸に設けたギヤa、ディスク部21aに支承された2連ギヤb1、b2、ディスク部21aに支承された回転軸23のギヤc、d1から、ギヤ収容部21b内のギヤd2、ギヤe、ギヤfを介して圧送ローラ22に伝達される。
【0025】
符号25(図4参照)は、回転フレーム21のギヤ収容部21aの外側面に固定されて、圧送ローラ22、22の入り口側に設けられた線材案内用のワイヤガイド、符号26は、回転フレーム21の前端部に固定されている中間クイル26である。
【0026】
中間クイル26の外周には、ベアリング12a、12bを介してスライドフレーム4に回転可能に支承されたクイル10が中間クイル26に対し相対回転可能に設けられている。そして、ガイドリング機構29および線材矯正機構28により矯正された線材1は、回転フレーム21の通し孔24を通り、ワイヤガイド25を経て一対の圧送ローラ22、22に導かれ、中間クイル26を経てクイル10に案内されて、前方の線ばね成形ステージ100に送り出される。
【0027】
公転手段30は、スライドフレーム4に組み付けられた線材圧送手段20全体が線材1の軸線X1周りに公転可能に設けられることで構成されている。即ち、公転手段30を構成する回転フレーム21と線材矯正機構28とガイドリング機構29が公転ユニットU1(図2、図3参照)として一体化されると共に、公転ユニットU1前端部に位置する回転フレーム21(ディスク部21a)が、クロスローラベアリング31を介してスライドフレーム4に対し回転自在に支承され、公転ユニットU1後端部に位置するガイドリング機構29の後端フレーム29bが、スライドテーブル52から後方に延出するL字フレーム4aにベアリング32を介して回転自在に支承されている。
【0028】
また、図2に示すように、スライドテーブル52に設置したサーボモータM30の出力軸には、回転フレーム21のディスク部21aに固着されたリングギヤ33と噛み合うピニオンギヤ34が設けられており、サーボモータM30の駆動により、公転ユニットU1(線材圧送手段20)全体が軸線X1周りに回転する。
【0029】
即ち、線材圧送手段20が線材1の軸線X1周りに公転することで線材1がねじられて、クイル10から送り出される線材1の成形ステージ100に対する周方向相対位置が変化する。
【0030】
このため、サーボモータM30の回転量を数値制御により設定することで、成形ステージ100における線材1は、放射状に配置された所定の成形ツール120と衝合させるに最適な位置まで周方向にねじられて位置決めされた形態となる。このため、線材1に対して成形ツール120を位置決めすることなく、成形ステージ100に送り出された線材1に対して所定の成形ツール120を進退動作させて衝合させることで、的確な線ばねの成形ができる。
【0031】
クイル回転手段40は、図2、図4に示すように、ベアリング12a、12bを介してスライドフレーム4に回転可能に支承されたクイル10と、クイル10の外周に一体化されたギヤ44と、スライドフレーム4に支承されてギヤ44と噛合う中間ギヤ46と、クイル回転用サーボモータM40の出力軸に設けられて、中間ギア46と噛合うピニオンギヤ48で構成されている。そして、サーボモータM40を駆動させることで、サーボモータM30の駆動による線材圧送手段20全体の公転とは別にクイル10を単独で回動して、所定の成形ツール120に対しクイル10の周方向の姿勢を調整できる。
【0032】
また、図1、図2に示す如く、メインプレート102(線ばね成形ステージ100)の中心に一致する線材1の軸線X1の延長方向には、軸線X1に対して直角になるように複数(本実施例では8個)のリニアスライド110が放射状に配置されている。このリニアスライド110には、各種の成形ツール120A〜120Eを搭載したツールスライドテーブル112を、クイル10先端の線ばね成形ステージ100に対し前進後退させる駆動源としての第1のサーボモータM110が設けられている。
【0033】
そして、図2、図6、図9に示すように、メインプレート102に設置されたサーボモータM110の出力軸とツールスライドテーブル112間には、サーボモータM110の回転を直線運動に変換するクランク機構114が介装されて、ツールスライドテーブル112の進退動作が制御される。
【0034】
本実施例で用いる成形ツール120の種類としては、線材を曲げるために使用される「曲げ成形ツール」120A、120B、線材をコイル状に成形する「コイル成形ツール」120C、120Dと、線材を切断する際に使用する「切断成形ツール」120Eがあり、「切断成形ツール」120Eは従来公知の構成であるため、特殊な構成である「曲げ成形ツール」120A、120Bと「コイル成形ツール」120C、120Dについて詳しく説明する。
【0035】
図1、図2、図5、図6に示すように、メインプレート102の裏面側には、成形ステージ100を取り囲むようにリングギヤ104が回動可能に支承されている。図6における符号104aは、リングギヤ104を支承する軸受である。そして、第2のサーボモータM121(図1参照)の駆動によりリングギヤ104が回動し、曲げ成形ツール120A、120Bに対応する位置に設けられたそれぞれのギヤ式動力伝達機構129を介して、それぞれの曲げ成形ツール120A、120Bにおける回転ユニット121の回転体124が回転するように構成されている。なお、図1における符号105は、サーボモータM121の出力軸に軸着されたギヤで、リングギヤ104と噛み合っている。
【0036】
そして、図5、図6、図7には、曲げ成形ツール120Aの詳細が図示されている。曲げ成形ツール120Aを構成するツールスライドテーブル112上には、線材1の軸線X1に向いた前端面に線材係合用の溝123aを設けた固定芯金123と、同じく線材1の軸線X1に向いた前端面に線材掛止用突起124aを設け、固定芯金123の外周に回転可能に支承された回転体124とを備えた曲げ成形回転ユニット121が設けられている。
【0037】
符号122は、ツールスライドテーブル112上において、曲げ成形回転ユニット121を収容するハウジングで、ハウジング122内には、図6に示すように、中央の固定芯金123と平行に従動軸125が回転可能に支承されるとともに、回転体124の後端部外周に設けたギヤ124bと従動軸125の外周に設けたギヤ125aが噛み合っている。
【0038】
従動軸125には、スプライン軸126が同軸状に一体化されており、メインプレート102に固定されたフレーム122aに回転可能に支承された駆動軸である回転筒126aに前記スプライン軸126が係合している。このため、スプライン軸126と回転筒126aは、このスプライン係合部129aにおいて周方向には固定されて一体に回転するものの、軸方向(図6矢印方向)には相対摺動できるようになっている。
【0039】
また、回転筒126aの外周には、45度のねじギヤ126bが設けられるとともに、このねじギヤ126bが、メインプレート102の裏面側に設けられているリングギヤ104と噛み合うピニオン127b付き垂直回転軸127の45度のねじギヤ127aと噛み合って、ギヤ式動力伝達機構129が構成されている。
【0040】
即ち、メインプレート102のリニアスライド110の傍に設けられた垂直軸取り付け孔106(図1参照)には、垂直回転軸127の軸支承部が取り付け固定されて、垂直回転軸127がメインプレート102を貫通してメインプレート102前面側に垂直に延出し、リングギヤ104の回動が垂直回転軸127とねじギヤ127a、126bを介して回転筒126aおよび従動軸125に伝達され、さらにギヤ125a、124bを介して回転体124に伝達される。
【0041】
また、モータM110の駆動力は、クランク機構114を介してツールスライドテーブル112を進退させる力として伝達されるが、ハウジング122によりツールスライドテーブル112に搭載されている回転ユニット121および従動軸125は、従動軸125に一体化されたスプライン軸126と、メインプレート102にフレーム122aを介して支持されている回転筒126a間の連結係合部(スプライン係合部)129aにおいて軸方向に摺動できるので、サーボモータM110の駆動によって、ツールスライドテーブル112(曲げ成形ツール120A)はスムーズに摺動(進退動作)する。
【0042】
このため、サーボモータM11が駆動して曲げ成形ツール120Aを前進させ、図7に示すように、芯金123の溝123aに線材1を係合させた状態で、サーボモータM121を駆動して回転体124を回転すると、線材掛止用突起126に掛止された線材1が芯金123の溝123aとの係合部を中心に折り曲げられて、線材1を曲げ成形できる。なお、回転体124の回転方向によって、線材1を左右いずれの方向にも曲げ成形することができる。
【0043】
また、曲げ成形ルーツ120Bは、曲げ成形ツール120Aと同一の構造であり、その詳細な説明は省略する。
【0044】
なお、サーボモータM121の駆動によりリングギヤ104が回動し、曲げ成形ツール120A、120Bの回転ユニット121(の回転体124)が同時に回転することになる。しかし、曲げ成形ツール120A、120Bのいずれか一方の回転ユニット121(の回転体125)のみ成形に使用されて、他方は成形に使用されておらず、単に空回りしているに過ぎない。したがって、成形に直接使用する成形ツールの回転ユニット(の回転体)だけを単独で駆動する場合に比べて、サーボモータM121に作用する負荷はそれほど大きくなるものではなく、スムーズかつスピーディに回転ユニット121(の回転体124)を回動させて、線材1を曲げ成形できる。
【0045】
また、サーボモータM121の配設位置は、メインプレート102の下方位置とされており、メインプレート102全体の重心が下方となって、メインプレート102に作用するサーボモータM121の重量による曲げ負荷が少なく、メインプレート102の安定性が確保されている。
【0046】
また、コイル成形ツール120C、120Dの詳細は、図8、図9、図10に示されている。コイル成形ツール120C、120Dは、コイル成形ツールを構成する進退動作可能なツールスライドテーブル112に、ツールスライドテーブル進退方向と平行な回転軸133をもつ回転体であるツールホルダ132に左巻き用と右巻き用の一対のコイル成形ツール本体134A、134Bを前記回転軸133を挟んで対向して設けたツール回転ユニット131と、回転ユニット131(ツールホルダ132)を回動させるサーボモータM132を搭載した構造となっている。
【0047】
符号132aは、サーボモータM132の出力軸に軸着されたギヤ、符号133aは、回転軸133に軸着されたギヤで、両ギヤ132a、133aが噛み合うことでモータ駆動力が伝達される。
【0048】
このコイル成形ツール120Cでは、サーボモータM132を駆動させることで、左巻き用ツール本体134Aと右巻き用ツール本体134Bの配置を逆にすることができるので、成形ステージ100において線材1と衝合させる左巻き用と右巻き用のツール本体134A、134Bを簡単に切り替えることができる。
【0049】
また、図10に示すように、扁平な矩形ブロック状のツールホルダ132の左右側面コーナ部には、線材係合用の溝136aを形成したそれぞれの線材衝合面136が反対向きとなるように左巻き用ツール本体134Aと右巻き用ツール本体134Bが配置されて、右巻き用または左巻き用いずれのツール本体を用いてコイルを成形する際にも、成形コイルがツールホルダ132と干渉することなく延びることができるので、右巻き・左巻きのどちらのコイルについても長い足を確実に成形することができる。
【0050】
また、線材1を線材係合用の溝136aに衝合させることでコイルを成形するが、このコイルを成形する際に、サーボモータM132を駆動させて回転ユニット131(ツールホルダ132)を微少量だけ回動させて、線材1に対し線材係合用の溝136aを所定量(微少量)だけずらすことで、成形するコイルの初張力を調整できる。なお、コイルの初張力の調整は、サーボモータM132の駆動を数値制御することで簡単に設定することができる。
【0051】
また、コイル成形ツール120Dは、コイル成形ツール120Cと同一の構造であり、その詳細な説明は省略する。
【0052】
また、メインプレート102における各成形ツール配設位置(周方向等分位置)には、曲げ成形ツールに不可欠なギヤ式動力伝達機構129(垂直回転軸127)を配設するための孔106が予め設けられており、いずれの成形ツール配設位置にも曲げ成形ツール120A、120Bを配設することができるので、種々の成形ツールをどのように配置するかという設計の自由度が高く、それだけ設計し易いといえる。
【0053】
次に、本実施例に示す線ばね成形装置を使用して線ばねの成形を行う操作について、図11〜図16に基づいて説明する。
【0054】
図11は成形する線ばねの一例を示す斜視図であり、部分aから始まる成形順序について説明する。図12は、成形ツールの配置を示し、T1及びT4はコイル成形ツール120C、120D(のツール本体)を、T2及びT5は曲げ成形ツール120B、120A(のツール本体)を、T3は切断成形ツール120E(のツール本体)をそれぞれ示している。
【0055】
また、コイル成形ツールT1ではコイル成形ツール120Cを左巻き専用に使用(左巻き用ツール本体134Aだけを使用)し、コイル成形ツールT4ではコイル成形ツール120Dを右巻き専用に使用(右巻き用ツール本体134Bだけを使用)している。また、曲げ成形ツールT2では曲げ成形ツール120Bを左曲げ専用に、曲げ成形ツールT5では曲げ成形ツール120Aを右曲げ専用に使用している。
【0056】
そして、この図12において、M1〜M5は各成形ツールT1〜T5を装着したツールスライドテーブル112を進退動作させるサーボモータM110の配置番号であり、M9は、コイル成形ツールT1を回動させるサーボモータM132の配置番号であり、M10は、曲げ成形ツールT2、T5回動用サーボモータM121の配置番号であり、M11は、クイル進退用サーボモータであるスライドテーブル52スライド用サーボモータM50の配置番号である。図13〜図15は成形工程図で、工程Aから工程Oに至る15工程としてある。なお、図16は図11に示す線ばねを成形する際のタイムシェアリングである。
【0057】
まず、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分aの長さだけ送り出される。そして、工程Aの如く、曲げ成形ツールT5進退用サーボモータM110および曲げ成形ツールT5回動用サーボモータM121の駆動、即ち、サーボモータM5およびM10の作動により、曲げ成形ツールT5が前進して芯金123の溝123aが線材1に係合し、回転体124が回動することで折曲部bが成形されると、曲げ成形ツールT5は後退する。
【0058】
次に、工程Bの如く、曲げ成形ツールT5の後退位置は線材1から離れる位置で停止し、公転用のサーボモータM30の駆動により、線材1を反時計方向に30°(+30°)回転させ停止する。この間に圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分cの長さだけ送り出されている。
【0059】
次に、工程Cの如く、曲げ成形ツールT5進退用サーボモータM110および曲げ形成ツールT5回動用サーボモータM121の駆動、即ち、サーボモータM5およびM10の作動により、曲げ成形ツールT5が上述の後退位置から再び前進して芯金123の溝123aが線材1に係合し、回転体124が回動することで折曲部dが成形されると、曲げ成形ツールT5は後退する。
【0060】
次に、工程Dの如く、曲げ成形ツールT5が線材1から離れる位置で停止し、公転用サーボモータM30の駆動により、線材1を反時計方向に90°(+90°)回転させ、この間に圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分eの長さだけ送り出されている。
【0061】
次に、工程Eの如く、曲げ成形ツールT5進退用サーボモータM110および曲げ成形ツールT5回動用サーボモータM121の駆動、即ち、サーボモータM5およびM10の作動により、曲げ成形ツールT5が上述の後退位置から前進して芯金123の溝123aが線材1に係合し、回転体124が回動することで折曲部fが成形されると、曲げ成形ツールT5は後退する。
【0062】
次に、工程Fの如く、曲げ成形ツールT5の後退位置が線材1から離れる位置で、公転用サーボモータM30の駆動により線材1を時計方向に90°(−90°)回転させ停止する。この間にスライドテーブル52スライド用サーボモータM50、即ち、クイル進退用サーボモータM11が駆動して、成形しようとするコイル径に対応する位置までクイル10が後退するとともに、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1が部分gの長さだけ送り出される。
【0063】
次に、工程Gの如く、コイル成形ツールT1進退用サーボモータM110の駆動、即ち、サーボモータM1の作動によりコイル成形ツールT1が所定位置まで前進し、線材1の送り出しが開始されてコイル部hの成形が開始され、工程Hの如く、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、コイル部hの必要巻数分だけ線材1の送り出しが続けられる。
【0064】
なお、この工程G、H、Iの間では、コイル成形ツールT1回動用サーボモータM132の駆動、即ち、サーボモータM9の作動により、ツール回転ユニット131(ツールホルダ132)を微少量だけ回転させてツール本体(線材係合用の溝136a)を線材1に対し溝幅方向に僅かにずらすことで、成形するコイルの初張力を調整しながらコイル部hが成形される。そして、コイル成形ツールT1によるコイル部hの成形が終了すると、コイル成形ツールT1は後退する。
【0065】
次に、工程Jの如く、コイル成形ツールT1の後退位置は線材1から離れる位置で、公転用サーボモータM30の駆動により線材1を時計方向に90°(−90°)回転させ停止する。この間にスライドテーブル52スライド用サーボモータM50、即ち、クイル進退用サーボモータM11の駆動により、クイル10が前進して元の位置まで戻るとともに、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分iの長さだけ送り出される。
【0066】
次に、工程Kの如く、曲げ成形ツールT5進退用サーボモータM110および曲げ成形ツールT5回動用サーボモータM121の駆動、即ち、サーボモータM5およびM10の作動により、曲げ成形ツールT5の芯金123の溝123aが線材1に係合し、回転体124が回動することで折曲部jが成形されると、曲げ成形ツールT5は後退する
次に、工程Lの如く、曲げ成形ツールT5の後退位置が線材1から離れる位置で、公転用サーボモータM30の駆動により、線材1を反時計方向に135°(+135°)回転させ停止する。この間に圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分kの長さだけ送り出されている。
【0067】
次に、工程Mの如く、スライドテーブル52スライド用サーボモータM50、即ち、クイル進退用サーボモータM11が駆動して、クイル10の軸線X1方向における位置が調整された後、コイル成形ツールT4進退用サーボモータM110の駆動、即ち、サーボモータM4の作動により、コイル成形ツールT4が前進して線材1に当接し、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1の送り出しが続けられてコイル部lが成形されると、線材1の送り出しが停止されコイル成形ツールT4は後退する。
【0068】
次に、工程Nの如く、コイル成形ツールT4の後退位置が線材1から離れる位置で、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分mの長さだけ送り出される。そして曲げ成形ツールT2進退用サーボモータM110および曲げ成形ツールT2回動用サーボモータM121の駆動、即ち、サーボモータM2およびM10の作動により、曲げ成形ツールT2が前進して芯金123の溝123aが線材に係合し、回転体124が回転することで折曲部nが成形されると、曲げ成形ツールT2は後退する。
【0069】
次に、工程Oの如く、圧送ローラ駆動用サーボモータM22の駆動により、線材1は部分oの長さだけ送り出され、切断成形ツールT3進退用サーボモータM110の駆動、即ち、サーボモータM3の作動により、切断成形ツールT3が前進して線材1が切断されると、切断成形ツールT3が後退し、図11の形状に成形された線ばねは落下する。
【0070】
最後に、公転用サーボモータM30の駆動により線材1を時計方向に30°(−30°)回転させ、線材1に加えた捻りを戻し、成形前の線材1の状態(原点)にする。
【0071】
なお、前記した実施例では、コイル成形ツールT1、T4においてツール本体を切り替えることなく、コイル成形ツールT1は左巻き専用、コイル成形ツールT4は右巻き専用として使用されているが、コイル成形ツール回動用サーボモータM132を駆動して左巻き用ツール本体134Aと右巻き用ツール本体134Bを切り替えて使用することで、コイル成形ツールT1、T2のいずれか一方だけを使用するように構成してもよい。
【0072】
多軸数値制御装置200は、図17に示すように、制御部202と、表示部204と、操作部206と、ドライバ208〜228を備え、制御部202は、表示部204と操作部206およびドライバ208〜228に接続されている。
【0073】
制御部202は、例えば、CPU、プログラムメモリ、RAM、入出力インターフェースなどを備えたマイクロコンピュータで構成され、表示部202は、例えば、液晶表示装置で構成され、操作部204は、各種操作ボタンやマウスで構成されている。
【0074】
制御部202は、操作部206から入力された操作情報とプログラムメモリに格納されたプログラムを基に各種の演算を行い、演算結果に従ったパルス信号(設定されたパルス列の信号)をドライバ208〜228に出力するとともに、操作情報や線ばねの計測に関する情報などを表示部204に表示させるように構成されている。
【0075】
ドライバ208〜228は、例えば、図18に示すように、各サーボモータM22、M30、M40、M110の回転数をそれぞれ検出するエンコーダ300と、エンコーダ300の出力によるフィードバックパルスと制御部202からのパルス信号(パルス列)との偏差を算出する偏差カウンタ302と、偏差カウンタ302の出力パルスを直流アナログ電圧に変換するデジタル−アナログ変換器304と、デジタル−アナログ変換器304の出力による直流アナログ電圧を速度指令として、各サーボモータを回転駆動するサーボアンプ306を備えて構成されている。
【0076】
ドライバ208〜228のうちドライバ208〜222は、8台の成形ツール120A〜120Hをそれぞれ駆動するためのサーボモータM110に対応して設けられ、線材の加工時と線ばねの計測時に、各サーボモータM110がそれぞれ成形ツール120A〜120Hを駆動するときのみ駆動対象のドライバとして用いられる。これに対して、ドライバ224、226、228は、公転用サーボモータM30、クイル回転用サーボモータM40、ワイヤ送り用サーボモータM22に対応して設けられ、線材の加工時には常に駆動対象のドライバとして用いられるが、線ばねの計測時には、駆動対象のドライバから除外される。
【0077】
すなわち、制御部202は、ドライバ208〜228の中から成形時に用いるドライバとして、例えば、ドライバ208、ドライバ224、226、228を選択し、また計測時に用いるドライバとして、例えば、ドライバ212を選択し、選択されたドライバの駆動を制御する制御手段として構成されている。
【0078】
線材の加工時に、駆動対象となったドライバには、制御部202から、各サーボモータに対応したパルス信号が入力される。このパルス信号がドライバの偏差カウンタ302に入力されると、偏差カウンタ302は、制御部202からのパルス信号(パルス列)のパルスを積算し、積算値(溜まりパルス)をデジタル−アナログ変換器304に出力する。デジタル−アナログ変換器304は、積算値(溜まりパルス)に応じた直流アナログ電圧を速度指令としてサーボアンプ306に出力する。サーボアンプ306は、速度指令に従ってサーボモータ(M110、M22、M30、M40)を回転駆動する。
【0079】
サーボモータ(M110、M22、M30、M40)が回転駆動されると、サーボモータ(M110、M22、M30、M40)の回転数に比例したフィードバックパルスがエンコーダ300から偏差カウンタ302にフィードバックされる。偏差カウンタ302は、積算値(溜まりパルス)からフィードバックパルスを減算し、減算結果をデジタル−アナログ変換器304に出力する。
【0080】
この際、偏差カウンタ302の積算値(溜まりパルス)は、ある一定の積算値(溜まりパルス)に保持され、保持された積算値(溜めパルス)を基にサーボモータ(M110、M22、M30、M40)の回転が継続される。
【0081】
一方、制御部202の出力によるパルス列が設定数に達し、制御部202がパルス信号の出力を停止すると、偏差カウンタ302の積算値(溜まりパルス)は、エンコーダ300からフィードバックパルスが入力される毎に減少する。この結果、デジタル−アナログ変換器304の出力による速度指令が遅くなるとともに、サーボモータ(M110、M22、M30、M40)の回転数が低下する。そして、偏差カウンタ302の積算値(溜まりパルス)が0になると、サーボモータ(M110、M22、M30、M40)の駆動が停止される。
【0082】
次に、線ばねの加工が終了すると、線ばねの計測が開始される。この際、図19に示すように、ツールスライドテーブル(搬送手段)112のうち計測用ツールスライドテーブル112には、成形ツール120の他に、計測ツール150を予め装着しておく。そして、線ばね1Aの計測を開始するに際して、先ず、作業者が操作部206を操作すると、計測対象の計測ツール150に関する計測範囲や公差などの操作情報がパルス列に対応して設定され、設定された操作情報が制御部202に入力される。
【0083】
この後、制御部202は、操作情報を基に線ばねを通電対象とする計測ツール150として、例えば、成型ツール120Cに絶縁ブロック152を介して固定された導電性計測ツール150Cを選択し、選択した計測ツール150Cに対応したドライバ212にパルス信号を出力するとともに、計測ツール150Cの移動量の計測を開始する。
【0084】
このパルス信号がドライバ212に入力されると、ドライバ212の駆動に従ってサーボモータM110が回転する。サーボモータM110が回転すると、サーボモータM110の回転に伴ってツールスライドテーブル112が線ばね1Aの方向に移動する。このとき、ツールスライドテーブル112に連結された成形ツール120Cと計測ツール150Cも線ばね1Aの方向に移動する。
【0085】
計測ツール150Cの移動に伴って計測ツール150Cの先端(ポール先端)が線ばね1Aに接触すると、計測ツール150Cは、導電性の線ばね1Aを介して接地される。これにより、制御部202は、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触して通電ループが形成されたことを条件に、すなわち、計測ツール150Cが線ばね1Aを検知したことを条件に、計測ツール150Cの移動量の計測を終了するとともに、この計測結果を基に線ばねの良否を判定し、この判定結果を表示部204に画面上に表示させる。
【0086】
すなわち、制御部202は、計測ツール150Cの移動量の計測を開始したときから計測ツール150Cの計測を終了するときまでのパルス列を計測し、この計測結果と計測ツール150Cに関する計測範囲や公差に対応したパルス列とを比較する。この際、計測結果を示すパルス列が計測ツール150Cの計測範囲であって、公差の範囲内にあるときには、制御部202は、線ばねは良品と判定し、それ以外のときには、線ばねを不良品と判定する。
【0087】
例えば、図20に示すように、公差の範囲(良品の範囲)が+1.00から−1.00に設定されていたときに、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触するまでの移動量が公差の範囲(良品の範囲)であれば、線ばね1Aは、良品と判定され、一方、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触するまでの移動量が公差の範囲(良品の範囲)から外れたときには、線ばね1Aは、不良品と判定される。
【0088】
なお、計測ツール150としては、成型ツール120A〜120Hに対応して、計測ツール150A〜150Hを設けることもできる。
【0089】
次に、線ばねの加工時と計測時の作用を図21のフローチャートに従って説明する。
【0090】
まず、線ばね1Aの加工時の処理手順を示すプログラムを作成すると共に、線ばね1Aの計測時の処理手順を示すプログラムを作成し、且つ、計測ツール150(150A〜150Hのうち指定の計測ツール)に関する計測範囲や公差などの操作情報をパルス列に対応づけて設定し、作成した各プログラムをプログラムメモリに格納し、設定された操作情報をRAMに格納する(S1)。
【0091】
次に、線ばね1Aの加工時には、制御部202は、加工モードを選択し、線ばね1Aの加工時のプログラムを基に駆動対象のドライバとして、例えば、ドライバ208、ドライバ224、226、228を選択し、選択したドライバ208、ドライバ224〜228にパルス信号を出力する。これにより、サーボモータM22、M30、M40、M110が駆動し、線材1が成形ステージ100に搬送され、成形ツール120によって、線材1が線ばね1Aとして成形される(S2)。
【0092】
この後、線ばね1Aの成形が終了したときには、制御部202は、モードを加工モードから計測モードに切り替え(S3)、計測モードにおけるサーボモータとして、例えば、サーボモータM110を指定し、指定したサーボモータM110を駆動して、線ばね1Aを計測し、この計測結果から線ばね1Aの良否を判定する(S4)。
【0093】
ここで、制御部202は、計測結果から線ばね1Aを良品と判定したときには、後工程の処理を継続し(S5)、ステップS2の処理に戻り、計測結果から線ばね1Aを不良品と判定したときには、線ばね1Aに対する加工を終了する(S6)。
【0094】
次に、制御部202は、計測結果から線ばね1Aを不良品と判定し、線ばね1Aに対する加工を終了した後は、線ばね1Aの加工に用いたサーボモータM22、M30、M40、M110の駆動に関する情報を修正するためのフィードバック制御を行う(S7)。線ばね1Aの加工に用いたサーボモータM22、M30、M40、M110の駆動に関する情報を修正するためのフィードバック制御を行った後、制御部202は、ステップS2の処理に戻り、修正されたプログラムを基に線ばね1Aの加工を開始し、ステップS3〜S7の処理を繰り返す。
本実施例においては、ツールスライドテーブル(計測用ツールスライドテーブル)112には、成形ツール120の他に、線ばね1Aを通電対象とする計測ツール150が装着されているので、成形ツール120Aを用いて線ばね1Aを成形した後、成形された線ばね1Aの計測に用いる計測ツール150Cに対応したサーボモータM110(駆動手段)を駆動することで、制御部202により、計測ツール150Cの移動量の計測が開始され、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触して通電ループが形成されたことを条件に、計測ツール150Cの移動量の計測が終了し、当該計測結果から線ばね1Aの良否が判定される。
【0095】
本実施例によれば、成形ツール120Aを駆動するためのサーボモータM110を、計測ツール150Cを駆動するためのサーボモータに適用することができ、構成の簡素化が可能になる。
【0096】
また、本実施例によれば、成形された線ばね1Aの良否を判定することができる。
【0097】
また、本実施例においては、計測ツール150Cが線ばね1Aを検知する方法として、計測ツール150Cが線ばね1Aに接触して通電ループが形成されたことを条件としているが、計測ツール150Cが線ばね1Aを検知するに際しては、計測ツール150Cにレーザセンサや光センサを設け、これらセンサの信号を基に線ばね1Aを無接触で検知する方法を採用することもできる。
【0098】
また、本実施例においては、クイルや公転手段等を用いるものについて述べたが、これらを用いることに限定されるものではない。
【0099】
例えば、成形ツールと計測ツールをそれぞれ一つずつ備え、成形ツールと計測ツールを同一のツールスライドテーブル(搬送手段)に配置する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る線ばね成形装置の第1の実施例の全体正面図である。
【図2】一部を断面で示す同装置の左側面図である。
【図3】回転フレーム周辺の水平断面図である。
【図4】クイル周辺の拡大断面図である。
【図5】曲げ成形ツールの正面図である。
【図6】曲げ成形ツールの縦断面図(図5に示す線VI−VIに沿う断面図)である。
【図7】曲げ成形ツールの要部斜視図である。
【図8】コイル成形ツールの平面図である。
【図9】コイル成形ツールの縦断面図(図8に示す線IX−IXに沿う断面図)である。
【図10】ツールホルダにおける右巻き用と左巻き用のコイル成形用ツール本体の配置を示す図である。
【図11】同装置で成形する線ばねの1例を示す斜視図である。
【図12】成形ステージにおける各種成形ツールの配置図である。
【図13】図11に示す線ばねを成形する工程を示すである。
【図14】図11に示す線ばねを成形する工程を示す図である。
【図15】図11に示す線ばねを成形する工程を示す図である。
【図16】図11に示す線ばねを成形する工程のタイムシェアリングを示す図である。
【図17】多軸数値制御装置のブロック構成図である。
【図18】ドライバのブロック構成図である。
【図19】成形ツールと計測ツールの断面図である。
【図20】線ばねの良否を判定する方法を説明するための模式図である。
【図21】線ばねの加工時と計測時の作用を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 線材
X1 線材の軸線
2 架台
3 固定フレーム
4 スライドユニット
10 線材ガイドであるクイル
20 線材圧送手段
21 回転フレーム
21a 回転フレームのディスク部
22 圧送ローラ
M22 圧送ローラ駆動用のサーボモータ
30 公転手段
33 公転手段を構成するリングギヤ
M30 公転用のサーボモータ
40 クイル回転手段
M40 クイル回転駆動用のサーボモータ
50 クイル移動手段であるリニアウェイスライド
52 リニアウェイスライドテーブル
M50 リニアウェイスライド駆動用(クイル進退用)のサーボモータ
100 成形ステージ
102 メインプレート
104 曲げ成形ツールの回転駆動機構を構成するリングギヤ
106 ギヤ式動力伝達機構配設用の孔
110 リニアスライド
M110 成形ツール進退用のサーボモータ(第1のサーボモータ)
112 ツールスライドテーブル
114 第1のサーボモータの駆動をツールスライドテーブルに伝達するクランク機構
T(120) 成形ツール
T5(120A)、T2(120B)曲げ成形ツール
T1(120C)、T4(120D)コイル成形ツール
T3(120E)切断成形ツール
M121 曲げ成形ツール回動用のサーボモータ(第2のサーボモータ)
123 曲げ成形回転ユニットを構成する固定芯金
123a 芯金前端面に設けた線材係合用の溝
124 曲げ成形回転ユニットを構成する回転体
124a 回転体前端面に設けた線材掛止用突起
125 従動軸
126 従動軸である曲げ成形回転ユニット側のスプライン軸
127 垂直回転軸
126a 駆動軸である回転筒
129 リングギヤの回動力を曲げ成形ツールの回転体に伝達するギヤ式動力伝達機構
129a ギヤ式動力伝達機構におけるセレーション係合部
132 コイル成形用ツール本体装着用の回転体であるツールホルダ
M132 コイル成形用ツールホルダ回動用(左巻きと右巻き切り替え用・初張力調整用)のサーボモータ(第3のサーボモータ)
134A 左巻き用ツール本体
134B 右巻き用ツール本体
150(150A〜150H) 計測ツール
202 制御部
204 表示部
206 操作部
208〜228 ドライバ
300 エンコーダ
302 偏差カウンタ
306 サーボアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を成形ステージに送り出す線材圧送手段と、前記成形ステージに対して進退移動自在に配置された搬送手段と、前記搬送手段に搬送されて、前記成形ステージで前記線材を線ばねとして成形する成形ツールと、前記搬送手段に搬送されて前記線ばねを計測する計測ツールと、前記搬送手段を進退駆動する駆動手段と、前記駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記線材の成形時に、前記成形ツールによる成形に応じて前記駆動手段に対する駆動を制御し、前記線ばねの計測時には、前記計測ツールによる計測に応じて前記駆動手段に対する駆動を制御してなる線ばね成形装置。
【請求項2】
線材を成形ステージに送り出す線材圧送手段と、前記成形ステージに対して進退移動自在に配置された複数の搬送手段と、前記いずかの搬送手段に搬送されて、前記成形ステージで前記線材を線ばねとして成形する単一または複数の成形ツールと、前記いずれかの搬送手段に搬送されて前記線ばねを計測する計測ツールと、前記各搬送手段をそれぞれ進退駆動する複数の駆動手段と、前記複数の駆動手段の中から前記線材の成形時に用いる駆動手段または前記線ばねの計測時に用いる駆動手段を選択し、選択した駆動手段の駆動を制御する制御手段を備えてなる線ばね成形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の線ばね成形装置において、前記制御手段は、前記線ばねの計測時に、前記駆動手段の駆動に伴って前記計測ツールの移動量の計測を開始し、前記計測ツールが前記線ばねを検知したことを条件に、前記計測ツールの移動量の計測を終了するとともに、当該計測結果から前記線ばねの良否を判定してなることを特徴とする線ばね成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−115695(P2010−115695A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291843(P2008−291843)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000128876)オリイメック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】