説明

線材のフォーミング方法、及びそれを用いた装置

【課題】 複数の線材を巻芯に巻線する場合において、巻始め時における線材と巻芯との隙間の発生を防止すること。
【解決手段】 線材4が巻線される巻胴部8と巻胴部8の端部に設けられた鍔部9とを備える巻芯3に複数の線材4の整列巻きを開始するときに複数の線材4に対して行うフォーミング方法において、ノズル11から繰り出された線材4を折り曲げることによってノズル11から直線状に繰り出される直線部72と曲がり部71を介して直線部72と連続するリード部10とを線材4に形成し、ノズル11を動作させ線材4の直線部72を巻胴部8に鍔部9の内面9bに沿って配置すると共に線材4のリード部10を鍔部9に設けられた開口部9aに通すことによって線材4を鍔部9に係止させ、線材4のリード部10を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材のフォーミング方法、及びそれを用いた装置に関し、特には、線材の巻始め時における線材のフォーミング方法、及びそれを用いた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の線材を巻芯に巻線する場合(例えば、特許文献1)において、ノズルから繰り出される線材の先端をクランプにて保持し、ノズルを巻芯端部に移動させ巻芯端部に設けられた鍔部の開口部を通して線材を巻胴部に案内し、鍔部内面に沿って線材を折り曲げ、そして、巻胴部の軸方向に送りをかけながら線材を巻線する方法がある。
【特許文献1】特開平8−236381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような線材を巻胴部に案内する方法では、線材の本数が複数本の場合には、線材の剛性が大きいため、線材の巻始めにおいて巻胴部及び鍔部の内面に線材が密着せず隙間が生じてしまう。巻胴部及び鍔部の内面と、線材との間に隙間が存在する場合には、規則正しい整列巻きが困難となる。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、複数の線材を巻芯に巻線する場合において、巻始め時における線材と巻芯との隙間の発生を防止することができる線材のフォーミング方法、及びそれを用いた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、線材が巻線される巻胴部と当該巻胴部の端部に設けられた鍔部とを備える巻芯に複数の線材の整列巻きを開始するときに前記複数の線材に対して行うフォーミング方法において、ノズルから繰り出された線材を折り曲げることによってノズルから直線状に繰り出される直線部と曲がり部を介して前記直線部と連続するリード部とを前記線材に形成する工程と、前記ノズルを動作させ前記線材の前記直線部を前記巻胴部に前記鍔部の内面に沿って配置すると共に前記線材の前記リード部を前記鍔部に設けられた開口部に通すことによって前記線材を前記鍔部に係止させる工程と、前記線材のリード部を保持する工程とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、線材が巻線される巻胴部と当該巻胴部の端部に設けられた鍔部とを備える巻芯に複数の線材の整列巻きを開始するときに前記複数の線材に対してフォーミングを行うフォーミング装置において、前記複数の線材を繰り出すノズルと、前記ノズルから繰り出された線材を折り曲げることによってノズルから直線状に繰り出される直線部と曲がり部を介して前記直線部と連続するリード部とを前記線材に形成する線材折り曲げ手段と、前記ノズルを動作させ前記線材の前記直線部を前記巻胴部に前記鍔部の内面に沿って配置すると共に前記線材の前記リード部を前記鍔部に設けられた開口部に通すことによって前記線材を前記鍔部に係止させるノズル移動機構と、前記線材のリード部を保持する線材保持部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の線材を巻芯に巻始めるにあたり、巻芯の鍔部開口部に係止するように予め線材を折り曲げると共に、鍔部開口部を挿通した線材のリード部を保持するため、線材が複数本の場合でも線材を巻芯に隙間なく巻線することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1を参照して本発明の実施の形態1について説明する。図1は線材のフォーミングを行うフォーミング装置、及びその他の装置からなる巻線装置100を示す斜視図である。
【0010】
巻線装置100は、線材4のフォーミングを行った後、軸中心に回転するスピンドル軸2と共に回転する巻芯3に同時に複数本の線材4を整列巻きする装置である。図1では、同時に2本の線材4を巻線する場合について示す。
【0011】
スピンドル軸2は、基台1上に立設したスピンドル支持台5に支持され、スピンドル軸2の一端に接続されたスピンドルモータ6により回転制御される。
【0012】
スピンドル軸2の他端には巻治具7が支持され、その巻治具7には巻芯3が固定される。したがって、巻芯3は、スピンドル軸2の回転に同期して回転する。巻芯3は、線材4が巻線される巻胴部8と、巻胴部8の両端に設けられた鍔部9とを備え、スピンドル軸2側の鍔部9には、線材4の先端部が案内される開口部9aが設けられる。線材4における開口部9aに案内される部分をリード部10(図3参照)と定義する。なお、巻芯3は、巻胴部8の軸方向がスピンドル軸2の軸方向と一致するように固定される。
【0013】
本発明における線材4のフォーミングとは、巻芯3に線材4を巻始めるにあたり、線材4を巻芯3に巻線し易くするために線材4に加工を加え、かつ線材4を巻芯3に案内し保持することである。線材4のフォーミングは、線材4を繰り出すノズル11と、ノズル11を移動するノズル移動機構12と、ノズル11から繰り出された線材4を折り曲げる線材折り曲げ手段としての線材折り曲げ装置13と、巻線時に線材4が動かないように線材4のリード部10を保持する線材保持部材14とによって行われる。
【0014】
ノズル11は、円筒形状であり、スピンドル軸2とほぼ直交する方向に少なくとも線材の本数分配置され、ノズル支持板15によって支持される。線材4は、ノズル11の貫通孔を挿通し保持される。
【0015】
ノズル移動機構12は、ノズル11を支持するノズル支持板15を直交三軸方向に移動するものである。以下、スピンドル軸2の軸方向をX軸方向、基台1の上面1aと平行な面におけるスピンドル軸2と直交する方向をY軸方向、及び基台1の上面1aと垂直な方向をZ軸方向として説明する。ノズル移動機構12は、ノズル11をX軸方向に移動するX軸移動機構12aと、Y軸方向に移動するY軸移動機構12bと、Z軸方向に移動するZ軸移動機構12cとを備える。
【0016】
X軸移動機構12aは、基台1の上面1a上に配置され、モータ16aと、モータ16aの出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ17aと、ボールねじ17aと平行に延在するガイドレール18aと、ボールねじ17aに螺合してガイドレール18aに沿って移動する移動台19aとを備える。
【0017】
Y軸移動機構12bは、X軸移動機構12aの移動台19a上に固定載置された載置台20上に配置され、モータ16bと、モータ16bの出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ17bと、ボールねじ17bと平行に延在するガイドレール18bと、ボールねじ17bに螺合してガイドレール18bに沿って移動する移動台19bとを備える。
【0018】
Z軸移動機構12cは、Y軸移動機構12bの移動台19b上に立設した支柱21と、支柱21の頂部に配置されたモータ16cと、モータ16cの出力軸に連結されZ軸方向に延在するボールねじ17cと、ボールねじ17cに螺合してボールねじ17cに沿って移動する移動部22と、移動部22に連結されZ軸方向に延在するコの字形部材23と、コの字形部材23の下端に連結され基台1の上面1aと平行に配置されたZ軸方向移動台24とを備える。ボールねじ17cの回転により、コの字形部材23及びZ軸方向移動台24が一体にZ軸方向に移動する。
【0019】
ノズル支持板15は、Z軸移動機構12cのコの字形部材23におけるZ−X平面23aに支持される。したがって、ノズル支持板15は、ノズル移動機構12が動作することによって直交三軸方向に自在に移動することができる。
【0020】
ノズル支持板15は円板形状であり、ノズル回転機構26によってY軸方向と一致する円板中心軸を回転軸として回転する。ノズル11は、ノズル支持板15の回転軸を中心とした円周上に配置される。なお、ノズル支持板15の外周には歯が形成されている。
【0021】
ノズル回転機構26は、ノズル支持板15の外周に配置されノズル支持板外周の歯と噛み合う歯車27と、歯車27の回転中心に出力軸が連結されたモータ28とを備える。モータ28は、コの字形部材23に取付治具29を介して取り付けられる。
【0022】
線材折り曲げ装置13は、ノズル11から繰り出された線材4の先端を保持するクランプ31と、クランプ31を移動するクランプ移動機構32と、線材4におけるノズル11の先端からクランプ31にて保持した位置までの間の所定位置を保持するチャック33と、チャック33を移動するチャック移動機構34とを備える。
【0023】
クランプ31は、線材4を保持及び開放する2枚の平板31aからなり、クランプ支持部35によって支持される。クランプ移動機構32は、クランプ支持部35をX軸方向に移動するX軸移動機構32aと、Y軸方向に移動するY軸移動機構32bとを備える。
【0024】
X軸移動機構32aは、スピンドル支持台5上に配置され、モータ36aと、モータ36aの出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ37aと、ボールねじ37aと平行に延在するガイドレール38aと、ボールねじ37aに螺合してガイドレール38aに沿って移動する移動体39aとを備える。
【0025】
Y軸移動機構32bは、移動体39aの端部に取付部材40を介して連結されY軸方向に延在するシリンダ41と、シリンダ41の内部をY軸方向に往復運動するピストン42とを備える。ピストン42の先端にはクランプ支持部35が連結されている。ピストン42は、電磁弁(図示せず)が開閉し空気供給源からの圧縮空気がシリンダ41内に供給されることによって往復運動する。なお、シリンダ41には、線材4を切断するカッター43が設けられ、カッター43もシリンダ及びピストンによってY軸方向に移動可能となっている。
【0026】
これにより、クランプ支持部35に支持されたクランプ31は、X−Y平面上を自在に移動し線材4を保持する。
【0027】
チャック33は、線材4を保持及び開放する2枚の平板33aからなり、チャック支持部45によって支持される。チャック移動機構34は、チャック支持部45をX軸方向に移動するX軸移動機構34aと、Y軸方向に移動するY軸移動機構34bと、Z軸方向に移動するZ軸移動機構34cとを備える。
【0028】
X軸移動機構34aは、基台1の上面1a上に配置され、X軸方向に延在する筐体46aと、筐体46aの端部に配置されたモータ47aと、モータ47aの出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ48aと、ボールねじ48aに螺合してボールねじ48aに沿って移動する移動体49aとを備える。
【0029】
Y軸移動機構34bは、X軸移動機構34aの移動体49a上に固定されY軸方向に延在する筐体46bと、筐体46bの端部に配置されたモータ47bと、モータ47bの出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ48bと、ボールねじ48bに螺合してボールねじ48bに沿って移動する移動体49bとを備える。
【0030】
Z軸移動機構34cは、Y軸移動機構34bの移動体49bに一端が固定されZ軸方向に延在する筐体46cと、筐体46cの他端に配置されたモータ47cと、モータ47cの出力軸に連結されZ軸方向に延在するボールねじ48cと、ボールねじ48cに螺合してボールねじ48cに沿って移動する移動体49cとを備える。
【0031】
チャック支持部45は、Z軸移動機構34cの移動体49cに取付部材50を介して連結される。 これにより、チャック支持部45に支持されたチャック33は、直交三軸方向に自在に移動し線材4を保持する。なお、取付部材50には、線材4を切断するカッター52が設けられ、カッター52もチャック移動機構34によって直交三軸方向に自在に移動することができる。
【0032】
次に、線材保持部材14について説明する。図2(a)は線材保持部材14を示す斜視図、図2(b)は線材保持部材14を示す平面図、図2(c)は図2(b)におけるc−c断面を示す断面図である。線材保持部材14は、巻治具7上にスピンドル軸方向(X軸方向)に移動可能に配置される。線材保持部材14の巻治具7と接する面14aには、スピンドル軸2の軸方向にリード部10を収容する収容部としての溝部51が形成される。溝部51は、線材保持部材14の長手方向に貫通して形成される。線材保持部材14における巻芯3に対峙する端面14bには、巻芯3の鍔部9と係合する略L字型の切り欠き部14cが形成され、これにより、線材保持部材14には、鍔部9の開口部9aに挿通する凸部14dが形成される。なお、切り欠き部14cは溝部51に連通している。
【0033】
巻線装置100は、上記した機構、装置の他に、ノズル移動機構12におけるZ軸移動機構12cのZ軸方向移動台24上に、図示しない線材供給源から供給される線材4の絶縁皮膜を部分的に剥離する皮膜剥離装置54と、その被服剥離装置を線材4の繰り出し方向(Y軸方向)に移動する皮膜剥離装置移動機構55とを備える。
【0034】
皮膜剥離装置54は、線材4毎に設けられ、モータ56と、モータ56の出力軸に連結された第一のプーリー57と、ベルト58を介して第一のプーリー57の回転が伝達される第二のプーリー59と、線材4が挿通すると共に第二のプーリー59の回転軸に連結された円筒部60と、円筒部60に揺動自在に取り付けられ遠心力により線材4に向かって揺動するカッター(図示せず)とを備える。モータ56が回転すると、第一のプーリー57及び第二のプーリー59を介して円筒部60が回転する。これにより、カッターは線材4に向かって揺動し線材4の絶縁皮膜に当接し、絶縁皮膜を剥離する。
【0035】
皮膜剥離装置移動機構55は、皮膜剥離装置54毎に設けられ、モータ62と、モータ62の出力軸に連結され線材4の繰り出し方向(Y軸方向)に延在するボールねじ63と、ボールねじ63と平行に延在するガイドレール64と、ボールねじ63に螺合してガイドレール64に沿って移動する移動台65とを備える。移動台65上には、皮膜剥離装置54が固定載置されるため、皮膜剥離装置移動機構55が動作することによって、皮膜剥離装置54は線材4に沿って移動する。
【0036】
次に、図3を参照して、巻線装置100による線材のフォーミング動作及び巻線動作について説明する。図3は、線材のフォーミング動作及び巻線動作を時系列順に示した図である。なお、以下の動作は、巻線装置100に搭載されるコントローラ67によって自動制御される。
【0037】
図3(a)は、巻芯3への巻線動作が終了し、新たな巻線動作が始まる直前の状態を示す図である。図3(a)に示すように、ノズル11から繰り出された2本の線材4a、4bの先端部は折り曲げられた状態となっている。この状態から線材のフォーミング動作が開始する。
【0038】
まず、図3(b)に示すように、クランプ移動機構32を動作させることによって、クランプ支持部35を移動させクランプ31にて線材4の先端部を保持する。
【0039】
図3(c)に示すように、ノズル移動機構12を動作させることによって、ノズル11をクランプ31から離れる方向へ移動させ線材4をクランプ11から所定長さ繰り出す。このとき、繰り出された線材4の所定長さは、皮膜剥離装置54によって絶縁皮膜が剥離された状態となっており、線材4には剥離部70が形成される。
【0040】
図3(d)に示すように、チャック移動機構34を動作させることによって、チャック支持部45を移動させ、線材4におけるノズル11の先端から絶縁皮膜が剥離された剥離部70までの間の所定位置をチャック33にて保持する。
【0041】
図3(e)に示すように、チャック移動機構34を動作させることによって、チャック33をノズル11から離れる方向(Y軸方向)に移動させ線材4をノズル11から引き出すと共に、クランプ移動機構32を動作させることによって、クランプ31をチャック33の移動方向と直交方向(X軸方向)に移動させる。これにより、線材4は、ほぼ直角に折り曲げられた状態となる。このように、チャック移動機構34及びクランプ移動機構32を動作させることによって、チャック33にて保持した位置を支点として線材4を折り曲げる。
【0042】
ここで、線材4が折り曲げられることによって、線材4には曲がり部71が形成される。これにより、内側の線材4aの剥離部70aと外側の線材4bの剥離部70bとの線材長手方向の位置がずれてしまう。そこで、絶縁皮膜を剥離する場合には、皮膜剥離装置移動機構55を動作させることによって、それぞれの線材4毎に設けられた皮膜剥離装置54の位置を線材4の長手方向にずらし、内側の線材4aの剥離部70aと外側の線材4bの剥離部70bとの線材長手方向の位置を事前にずらして形成するようにする。これにより、線材4を折り曲げた場合にでも、内側の線材4aと外側の線材4bとの剥離部70のずれを防ぐことができる。
【0043】
次に、図3(f)に示すように、クランプ移動機構32に設けられたカッター43にて線材4の剥離部70を切断する。これにより、線材4には、ノズル11から直線状に繰り出された直線部72と、曲がり部71を介して直線部72と連続し先端に剥離部70を有するリード部10とからなるフォーミング部73が形成されることになる。
【0044】
剥離部70を切断後、線材4を保持していたチャック33を開放し、ノズル11から繰り出されているフォーミング部73の拘束を解除する。そして、ノズル移動機構12を動作させることによってフォーミング部73を巻芯3に向け移動させる。
【0045】
図3(g)に示すように、線材4の直線部72を巻芯3の巻胴部8に鍔部9の内面9bに沿って配置すると共に、線材4のリード部10を鍔部9に設けられた開口部9aに通すことによってフォーミング部73を鍔部9に係止させる。フォーミング部73の曲がり部71はほぼ直角であるため、フォーミング部73は、鍔部9に対して隙間なく当接する。
【0046】
次に、図3(h)に示すように、巻治具7上に配置された線材保持部材14を巻芯3側に向かって移動させ、線材保持部材14の溝部51にリード部10を収容する。線材保持部材14は、切り欠き部14cが鍔部9に係合するまで移動する。線材保持部材14が切り欠き部14cに係合した状態では、リード部10は、切り欠き部14cを通って溝部51に案内され、また、線材保持部材14の凸部14dは、鍔部9の開口部9aを挿通し巻胴部8上に配置された状態となる。これにより、フォーミング部73のリード部10は、線材保持部材14にて保持された状態となるため、以降の巻線動作においてフォーミング部73は巻胴部8に対して隙間なく当接し、安定した巻線が可能となる。
【0047】
図3(i)以降に示す動作は、巻芯3への線材4の巻線動作を示すものである。まず、図3(i)に示すように、スピンドル軸2を回転させ巻芯3を回転させると共に、ノズル移動機構12を動作させノズル11をスピンドル軸2の軸方向(X軸方向)に移動させることによって線材4を巻芯3の巻胴部8へ巻線する。ここで、線材保持部材14の凸部14dの端面は傾斜して形成されているため、線材4は凸部14dの端面に案内されて巻線される。
【0048】
巻胴部8の端部では、図3(j)に示すように、ノズル回転機構26を動作させノズル支持板15を回転させることによって、ノズル11から繰り出される線材4を捻り線材4の配列を入れ替える。これにより、線材が多重に巻重なることが防止され、コンパクトな多層コイルを得ることができる。
【0049】
所定の層数の巻線が終了した後、図3(k)に示すように、線材保持部材14を後退させ線材4を開放する。また、ノズル移動機構12を動作させ、ノズル11を鍔部9の開口部9aから巻芯外側へ導くことによって、線材4を開口部9aから巻芯外側へ引き出す。
【0050】
そして、図3(l)に示すように、チャック移動機構34に設けられたカッター52にて、皮膜剥離装置54によって絶縁皮膜が剥離された線材4の剥離部74を切断する。
【0051】
以上に示した動作が1サイクルの動作であり、次のサイクルを開始する場合には、図3(a)に戻り動作を再開する。
【0052】
以上の実施の形態1によれば、複数の線材4を巻芯3に巻始めるにあたり、巻芯3の鍔部開口部9aに係止するように予め線材4を折り曲げると共に、鍔部9に係止したフォーミング部73のリード部10を巻胴部8に保持するため、線材が複数本の場合でも線材4を巻芯3に隙間なく巻線することができる。したがって、巻芯3に対して規則正しい安定した巻線を行うことが可能となる。
【0053】
(実施の形態2)
図4、5を参照して本発明の実施の形態2について説明する。図4は線材のフォーミングを行うフォーミング装置、及びその他の装置からなる巻線装置200を示す斜視図であり、図5は線材のフォーミング動作及び巻線動作を時系列順に示した図である。本実施の形態2の構成は、上述の実施の形態1の構成と略同様であるため、同様の構成には実施の形態1と同一の符号を付し説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0054】
本実施の形態2と実施の形態1との相違点は、巻線装置200のチャック移動機構34が線材押圧部材80を備える点である。線材押圧部材80は、チャック移動機構34の取付部材50に設けられ、Z軸方向に延在する棒状部81と、棒状部81の先端に設けられ鍔部9の内面9bと平行な面を有する押え部82とからなる。線材押圧部材80は、チャック移動機構34によって直交三軸方向に自在に移動することができる。
【0055】
次に、図5を参照して巻線装置200の動作について説明する。巻線装置200の動作と巻線装置100の動作との相違点は、巻線装置200は、フォーミング部73を巻芯3の鍔部9に係止させた後、図5(h)に示すように、線材保持部材14にてリード部10を保持すると共に、線材押圧部材80を用いる点である。
【0056】
具体的には、チャック移動機構34を動作させ、図5(h)に示すように、線材押圧部材80の押え部82をフォーミング部73の直線部72に当接させ、直線部72を鍔部9の内面9bに押圧する。これにより、直線部72を鍔部9に対して隙間なく接触させることができる。線材押圧部材80による直線部72の押圧は、スピンドル軸2を回転させる前に解除される。
【0057】
以上の実施の形態2によれば、線材保持部材14にてフォーミング部73のリード部10を保持すると共に、線材押圧部材80にてフォーミング部73の直線部72を鍔部9の内面9bに押圧するため、線材4を巻芯3に隙間なく巻線することが可能となる。
【0058】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、多層コイルを製造する装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1である線材のフォーミング装置、及びその他の装置からなる巻線装置100を示す斜視図である。
【図2】(a)線材保持部材14を示す斜視図である。(b)線材保持部材14を示す平面図である。(c)は図2(b)におけるc−c断面を示す断面図である。
【図3】実施の形態1における線材のフォーミング動作及び巻線動作を時系列順に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態2である線材のフォーミング装置、及びその他の装置からなる巻線装置200を示す斜視図である。
【図5】実施の形態2における線材のフォーミング動作及び巻線動作を時系列順に示した図である。
【符号の説明】
【0061】
100、200 巻線装置
2 スピンドル軸
3 巻芯
4 線材
7 巻治具
8 巻胴部
9 鍔部
9b 鍔部開口部
10 リード部
11 ノズル
12 ノズル移動機構
13 線材折り曲げ装置
14 線材保持部材
31 クランプ
33 チャック
72 直線部
73 フォーミング部
80 線材押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が巻線される巻胴部と当該巻胴部の端部に設けられた鍔部とを備える巻芯に複数の線材の整列巻きを開始するときに前記複数の線材に対して行うフォーミング方法において、
ノズルから繰り出された線材を折り曲げることによってノズルから直線状に繰り出される直線部と曲がり部を介して前記直線部と連続するリード部とを前記線材に形成する工程と、
前記ノズルを動作させ前記線材の前記直線部を前記巻胴部に前記鍔部の内面に沿って配置すると共に前記線材の前記リード部を前記鍔部に設けられた開口部に通すことによって前記線材を前記鍔部に係止させる工程と、
前記線材のリード部を保持する工程とを備えることを特徴とする線材のフォーミング方法。
【請求項2】
前記線材の前記直線部を前記鍔部の内面に押圧する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の線材のフォーミング方法。
【請求項3】
線材が巻線される巻胴部と当該巻胴部の端部に設けられた鍔部とを備える巻芯に複数の線材の整列巻きを開始するときに前記複数の線材に対してフォーミングを行うフォーミング装置において、
前記複数の線材を繰り出すノズルと、
前記ノズルから繰り出された線材を折り曲げることによってノズルから直線状に繰り出される直線部と曲がり部を介して前記直線部と連続するリード部とを前記線材に形成する線材折り曲げ手段と、
前記ノズルを動作させ前記線材の前記直線部を前記巻胴部に前記鍔部の内面に沿って配置すると共に前記線材の前記リード部を前記鍔部に設けられた開口部に通すことによって前記線材を前記鍔部に係止させるノズル移動機構と、
前記線材のリード部を保持する線材保持部材とを備えることを特徴とするフォーミング装置。
【請求項4】
前記線材折り曲げ手段は、
前記ノズルから繰り出された線材の先端を保持するクランプと、
前記クランプを移動するクランプ移動機構と、
前記線材における前記ノズルの先端から前記クランプにて保持した位置までの間の所定位置を保持するチャックと、
前記チャックを移動するチャック移動機構とを備え、
前記クランプ移動機構及び前記チャック移動機構を動作させることによって前記チャックにて保持した位置を支点として前記線材を折り曲げることを特徴とする請求項3に記載のフォーミング装置。
【請求項5】
前記線材保持部材は、
前記リード部を収容する収容部と、
前記巻芯の前記鍔部と係合する切り欠き部とを備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフォーミング装置。
【請求項6】
前記線材の前記直線部を前記鍔部の内面に押圧する線材押圧部材を備えることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一に記載の線材フォーミング装置。
【請求項7】
前記巻芯を伴って軸中心に回転するスピンドル軸と、
請求項3から請求項6のいずれか一に記載のフォーミング装置とを備えることを特徴とする巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−80921(P2007−80921A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263480(P2005−263480)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】