説明

線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム及びその包装袋

【課題】本発明は、輸送工程中でのピンホールの発生を抑え、酸素バリア性、包材内部の無菌性を維持することが可能な耐ピンホール性を付与した包装フィルム及びその包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、フィルム基材層(1)と、該フィルム基材層(1)上に押し出しラミネート方法により押し出された樹脂層(2)と、該樹脂層(2)上にシーラント層(4)とが順次積層されてなる耐ピンホール性包装フィルム(10)において、前記樹脂層(2)が線状に押し出された樹脂で形成され、且つ空隙層(A)を有していることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さと重さのある物を包装し、輸送してもピンホールの発生を抑えることができる耐ピンホール性を付与した包装フィルム及びその包装袋に関し、さらに詳しくは、医療、医薬品や、食品などの分野において、発生したピンホールからの酸素の進入により品質を容易に劣化させるような包装材料に利用することができ、とりわけ、500ml〜2000mlと大容量の液剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる輸液バッグの外装袋や、事前に薬液が充填されているプレフィルドシリンジの外装袋や、γ線滅菌などにより包材内部の無菌性を保証している無菌包材などとして有用な線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム及びその包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的、大容量の液剤が充填される輸液バッグは、ハンドリング(取り扱い)性の良さや、輸液バッグの軽量化、ゴミの減容化などの観点から、柔軟なプラスチック1次容器に充填されたものが増えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
該輸液バッグに充填されるアミノ酸液や糖・電解質液などの薬剤は、酸素によって著しく変質しやすく、更には直接体内に薬剤を注入することからも、1次容器は無添加のプラスチック容器を用いられることが多く、酸素バリア性はほとんど無いに等しい。そのため、輸液バッグを大気中に放置しておくと、大気中の酸素が輸液バッグを透過し経時的に薬剤を変質させてしまう。そこで、近年は輸液バッグを酸素バリア性の高い包装材料で2次包装することが行われている。この輸液バッグ用外装袋には前述のように酸素バリア性が高く要求されるため、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)コートを施したプラスチックフィルムや、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)フィルム、PVA(ポリビニルアルコール)フィルム、酸化アルミニウムや酸化珪素などを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、酸化アルミニウムや酸化珪素などを蒸着した延伸ナイロンフィルム、EVOH層や、MXD6ナイロン層を中間層に有するバリアナイロンフィルムなどが用いられた積層包装材料が広く用いられている。
【0004】
通常はアミノ酸や、糖、電解液からなる高カロリー輸液が充填されたバッグが前記輸液バッグ用外装袋に入れられ、更にダンボールに積載梱包され輸送される。輸送工程中の振動により、該輸液バッグ用外装袋にピンホールが生じることがあり、そのため酸素バリア性が維持できなくなる。ピンホールは3つの要素が加味して発生することが多く、(1)屈曲疲労によるピンホール、(2)包装材料同士が摩耗することによる摩耗ピンホール、(3)包装材料の突起部が突き刺すことによる突き刺しピンホールに大別され、輸送工程でのピンホールにおいては、(1)屈曲ピンホールと、(2)磨耗ピンホールの複合要素が大きな原因となっている。輸送中のピンホールを改善するために、従来は積層フィルムの構成や未接着部分を設けた構造としたり、包装袋としての外観形状やヒートシール部分の形状を検討したり、あるいはダンボールへの梱包形態の工夫や、積層フィルムにおける貼り合わせ方法などを検討することで耐ピンホール性の改善を実施してきた。
【0005】
例えば、輸液バッグが収納されピンホールが発生しにくい包装材料として、未接着層を設けた二重袋構造でピンホールの低減を検討しているものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。更には、発泡シートを用いてピンホールの発生を抑えたものが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、前述の二重袋構造の包装袋の場合は、生産する製袋工程が複雑である。また発泡する材料を使用した包装袋の場合は、材料コストが高くなるなどトータル的に商品コストが増大して実用的でない。
【0006】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平10−314272号公報
【特許文献2】特開平8−301299号公報
【特許文献3】特開平6−67358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、輸送工程中でのピンホールの発生を抑え、酸素バリア性、包材内部の無菌性を維持することが可能な耐ピンホール性を付与した包装フィルム及びその包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、フィルム基材層(1)と、該フィルム基材層(1)上に押し出しラミネート方法により押し出された樹脂層(2)と、該樹脂層(2)上にシーラント層(4)とが順次積層されてなる耐ピンホール性包装フィルム(10)において、前記樹脂層(2)が線状に押し出された樹脂で形成され、且つ空隙層(A)を有していることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記線状に押し出された樹脂の溶融フロー速度(JIS K 6760準拠)が2.5g/10分以上、30g/10分未満であり、且つ押し出されている線状部の厚さが5μm以上、40μm未満であることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記線状に押し出しラミネートする際の、機械上での押し出し穴どうしの隙間が0.5mm以上、20mm以下であることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記線状に押し出された樹脂層(2)が最内層ではなく、中間層に配置されていることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記樹脂層(2)とシーラント層(4)との間に、酸素バリア層(3)を積層したことを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項5記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記酸素バリア層(3)が延伸ナイロンフィルムに酸化珪素や酸化アルミニウムなどからなる無機酸化物を蒸着してなる透明蒸着延伸ナイロンフィルムであることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0014】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記フィルム基材層(1)が延伸ポリプロピレンフィルムからなることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を
用いた耐ピンホール性包装フィルムである。
【0015】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを用いて製袋したことを特徴とする包装袋である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムは、少なくとも、フィルム基材層と、該フィルム基材層上に押し出しラミネート方法により押し出された樹脂層と、該樹脂層上にシーラント層とが順次積層されてなる耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記樹脂層が線状に押し出された樹脂で形成され、且つ空隙層を有していることにより、発泡ポリオレフィンや、有孔フィルムなどの特別な材料を用いることなく、輸送工程中でのピンホールの発生を抑え、酸素バリア性、包材内部の無菌性を維持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムの層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムの層構成のその他の実施例を示す側断面図であり、図3は本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを用いて製袋した包装袋に輸液バッグを収納した状態を示す側断面図である。
【0019】
本発明の1実施例の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム(10)は、図1に示すように、フィルム基材層(1)、アンカーコート層(5)、空隙層(A)を有する樹脂層(2)、シーラント層(4)を順次積層した層構成で形成されている。
【0020】
前記線状押し出しラミネート方法とは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を加熱し、シリンダーと呼ばれる筒の中で溶解し、スクリューで圧力をかけて押し出し、該シリンダーの先端部にあるTダイスと呼ばれる細いスリットからカーテン状に溶解した樹脂が押し出されフィルム状となって基材とラミネートする通常の押し出しラミネート方法に用いる押し出し機を利用して、前記Tダイスの先端形状を細いスリットでなく、小さい孔形状を多列に加工したものを使用するのが特徴である。
【0021】
前記線状に押し出された樹脂の溶融フロー速度(JIS K 6760準拠)が2.5g/10分以上、30g/10分未満であり、且つ押し出されている線状部の厚さが5μm以上、40μm未満であることが好ましい。溶融フロー速度が2.5g/10分未満であると線状の押し出しラミネート方法を実施することが製造上困難であり、又、溶融フロー速度が30g/10分以上であると空隙層(A)を設けることが難しく、且つ押し出し部の厚さも5μm以上、40μm未満でないと製造上空隙層(A)を設けることが困難となる。
【0022】
また、前記線状に押し出しラミネートする際の、機械上での押し出し穴どうしの隙間が0.5mm以上、20mm以下であること好ましい。すなわち、線状押し出し部の穴の直径が0.5mmであると、押し出された線状樹脂はニップロールで押しつぶされることで直径1.0mm程度まで広がることが判明している。そのため線状押し出し部の穴の間隔が0.5mm未満では空隙層(A)を設けることが困難であり、20mmよりも大きいと逆に空隙部分が多くなるために層間ラミネート強度を安定的に維持できなくなる。
【0023】
さらに、前記線状に押し出された樹脂層(2)が最内層ではなく、中間層に配置されていることが好ましい。このように線状押し出し部が中間層に配置されることで空隙層(A)を有し耐ピンホール性を発現する。
【0024】
通常、輸液バッグに充填されるアミノ酸液や糖・電解質液などの薬剤は、酸素によって著しく変質しやすく、更には直接体内に薬剤を注入することからも、前記1次容器である輸液バッグは、無添加のプラスチック容器が用いられることが多く、酸素バリア性はほとんど無いに等しい。そのため、輸液バッグを大気中に放置しておくと、大気中の酸素が輸液バッグを透過し経時的に薬剤を変質させてしまう。
【0025】
そこで、前記輸液バッグを酸素バリア性の高い包装材料で2次包装することが必要である。本発明のその他の実施例の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム(10)は、図2に示すように、フィルム基材層(1)、アンカーコート層(5)、空隙層(A)を有する樹脂層(2)、アンカーコート層(5)、酸素バリア層(3)、接着剤層(6)、シーラント層(4)を順次積層した層構成で形成されている。
【0026】
このようにして得られた本発明の耐ピンホール性包装フィルム(10)は、輸送工程中でのピンホールの発生を抑え、酸素バリア性、包材内部の無菌性を維持することが可能であり、図3に示すように、該耐ピンホール性包装フィルム(10)を用いて周辺シール部(30)を形成し、製袋することで、薬液注入用のプラスチックポート部(20)を有する輸液バッグ(B)外装用の包装袋(P)を得ることができる。
【0027】
前記フィルム基材層(1)の材質としては、上市されているプラスチックフィルムの中で印刷することが可能であれば特に制限は無く、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロン(Ny)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、酸化アルミや酸化ケイ素が蒸着された無機酸化物蒸着プラスチックフィルム、延伸ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、延伸エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルムなどが挙げられるが、中でも、屈曲強度、コスト面などを考慮すると延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0028】
厚さは、5μm〜40μmが望ましい。印刷を施すことから少なくても片面にコロナ処理のような易接着処理があることが好適である。
【0029】
前記樹脂層(2)は、一般的に上市されている押し出し樹脂を使用することが可能であり、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)やポリプロピレン樹脂(PP)、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、更にはアイオノマーやエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、又はエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)など用いることが出来る。しかし、適度な空隙層(A)を有するためには樹脂特性として溶融フロー速度2.5g/10分以上、30g/10分未満であり、厚さが5μm以上、40μm未満である必要がある。
【0030】
前記酸素バリア層(3)は、ガスバリア樹脂フィルムや支持体フィルムにガスバリア層を設けたガスバリアフィルムが用いられる。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ケン化物などのフィルム、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムにポリ塩化ビニリデン(PVDC)を塗工したフィルム、アルミニウム箔、アルミニウムや無機酸化物(酸
化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けた蒸着フィルムやまたこれらフィルムの1種乃至それ以上を組み合わせた積層フィルムを使用することができるが、これらの中でも、酸素バリア性、廃棄処分性、強度面などを考慮すると延伸ナイロンフィルムに無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けた透明蒸着延伸ナイロンフィルムが好ましい。
【0031】
前記接着剤層(6)はドライラミネート方式を用いた場合、2液硬化型ウレタン系接着剤が用いられ 塗布量は乾燥重量で1〜7g/m2程度であることが望ましく、押し出しラミネート方式を用いた場合、アンカーコート層(5)には、1液型イミン系アンカーコート剤や2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤が用いられ、塗布量は乾燥重量で0.1〜3g/m2程度であることが望ましい。
【0032】
前記シーラント層(4)には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルムを使用することができる。
【0033】
また、該シーラント層(4)の厚さは、シール強度、加工性を考慮すると、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、30〜70μmの範囲内がより好ましい。
【0034】
前記酸素バリア層(3)と、前記シーラント層(4)とを接着剤層(6)を介してラミネーションする方法は、例えば、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、及び該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を使用することができるが、中でも接着強度に優れたドライラミネーション方法が好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を具体的に実施例および比較例を挙げて、さらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
フィルム基材層(1)として、厚さ15μmの透明蒸着ナイロンフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名GL−AEY)を使用し、該フィルム基材層(1)片面にアンカーコート層(5)として、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名A−3210/A−3075)を固形分5%で1g/m2(乾燥重量)塗布後、該アンカーコート層(5)上に密度0.931g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名ZM033)を溶融フロー速度20g/10分、押し出し部の穴の直径0.5mm、穴の間隔1mmの押し出しダイ形状を有する線状押し出し機を使用して、線状押し出しラミネート方式により、空隙層(A)を有する厚さ15μmの樹脂層(2)を形成し、同時に該樹脂層(2)を介して、シーラント層(4)となる厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)(タマポリ株式会社製、商品名SE620LC)をラミネートして、本発明の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0037】
<実施例2>
フィルム基材層(1)として、厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)(二村化学株式会社製、商品名FOR)を使用し、該フィルム基材層(1)片面にアンカーコート層(5)として、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名A−3210/A−3075)を固形分5%で1g/m2(乾燥重量)塗布後、該アンカーコート層(5)上に密度0.931g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名ZM033)を溶融フロー速度20g/10分、押し出し部の穴の直径0.5mm、穴の間隔1mmの押し出しダイ形状を有する線状押し出し機を使用して、線状押し出しラミネート方式により、空隙層(A)を有する厚さ15μmの樹脂層(2)を形成し、同時に該樹脂層(2)を介して、予め、酸素バリア層(3)としての、厚さ15μmの透明蒸着延伸ナイロンフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名GL−AEYBC)片面に2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名A−3210/A−3075)を固形分5%で1g/m2(乾燥重量)塗布してアンカーコート層(5)を形成しておいた該酸素バリア層(3)の該アンカーコート層(5)面側とラミネートした。引き続き、該酸素バリア層(3)上に接着剤層(6)としての2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名A−525/A−50)を固形分30%で3g/m2(乾燥重量)塗布後、該接着剤層(6)を介して、シーラント層(4)となる厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)(タマポリ株式会社製、商品名SE620LC)をラミネートして、本発明の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0038】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0039】
<比較例1>
実施例1において、通常の押し出しラミネート方式(線状押し出し未実施)を用いて樹脂層(2)を形成した以外は実施例1と同様にして比較例1の耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0040】
<比較例2>
実施例1において、樹脂層(2)を形成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を宇部興産株式会社製、商品名613Aにして、溶融フロー速度を30g/10分にした以外は実施例1と同様にして比較例2の耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0041】
<比較例3>
実施例1において、樹脂層(2)を形成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を宇部興産株式会社製、商品名1520Fにして、溶融フロー速度を2g/10分にした以外は実施例1と同様にして比較例3の耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0042】
<比較例4>
実施例1において、通常の押し出しラミネート方式(線状押し出し未実施)を用いて、厚さ25μmの樹脂層(2)を形成し、最内層のシーラント層(4)を密度0.931g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産株式会社製、商品名ZM033)を溶融フロー速度20g/10分、押し出し部の穴の直径0.5mm、穴の間隔1mmの押し出しダイ形状を有する線状押し出し機を使用して、線状押し出しラミネート方式により、40μmの厚さで線状押し出しラミネートした以外は実施例1と同様にして比較例4の耐ピンホール性包装フィルムを得た。
【0043】
<評価>
上記実施例1〜2および比較例1〜4で得られた耐ピンホール性包装フィルムを用いて下記の評価方法(条件)で屈曲試験(ゲルボ試験)を行ない、浸透液にてピンホール数を数えた。また、押し出し適性、空隙層の有無、総厚さの測定も行なった。その結果を表1
に示す。
【0044】
<評価方法・条件>
(1)押し出し適性
押し出し機の吐出負荷(電流値)より、生産性を○(良)、△(可)、×(不可)で評価した。
(2)空隙層の有無
線状押し出し部どうしの距離を測定して評価した。
(3)屈曲試験(ゲルボ試験)
屈曲条件:440度ねじり×3.5インチ直進+2.5インチ直進。
屈曲環境:5℃×2000回(1時間)、検体サイズ:205mm×290mm。
【0045】
【表1】

表1は、実施例1〜2および比較例1〜4で得られた耐ピンホール性包装フィルムを用いて行なった屈曲試験(ゲルボ試験)、さらに押し出し適性、空隙層の有無、総厚さの測定結果を示す表である。
【0046】
<評価結果>
実施例1と比較例1との比較結果からも線状押し出しラミネートを実施することで、屈曲試験におけるピンホール数は減少することがわかり、更なる耐ピンホール性への要求を満たすには実施例2のような構成が望ましい。比較例2から押し出し部の穴の直径0.5mm、隣接する穴どうしの間隔1mmにおいて、溶融フロー速度が30g/10分という樹脂においても押し出しは可能なものの、空隙層を得ることは出来なかった。比較例3においては2g/10分という溶融フロー速度では押し出しラミネートが困難であった。比較例4から最内層に線状押し出し部を形成しても耐ピンホール性の低減には有用ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムの層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムの層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを用いて製袋した包装袋に輸液バッグを収納した状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0048】
A・・・空隙層
B・・・輸液バッグ
P・・・包装袋
1・・・フィルム基材層
2・・・樹脂層
3・・・酸素バリア層
4・・・シーラント層
5・・・アンカーコート層
6・・・接着剤層
10・・・耐ピンホール性包装フィルム
20・・・プラスチックポート部
30・・・周辺シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フィルム基材層と、該フィルム基材層上に押し出しラミネート方法により押し出された樹脂層と、該樹脂層上にシーラント層とが順次積層されてなる耐ピンホール性包装フィルムにおいて、前記樹脂層が線状に押し出された樹脂で形成され、且つ空隙層を有していることを特徴とする線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項2】
前記線状に押し出された樹脂の溶融フロー速度(JIS K 6760準拠)が2.5g/10分以上、30g/10分未満であり、且つ押し出されている線状部の厚さが5μm以上、40μm未満であることを特徴とする請求項1記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項3】
前記線状に押し出しラミネートする際の、機械上での押し出し穴どうしの隙間が0.5mm以上、20mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項4】
前記線状に押し出された樹脂層が最内層ではなく、中間層に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層とシーラント層との間に、酸素バリア層を積層したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項6】
前記酸素バリア層が延伸ナイロンフィルムに酸化珪素や酸化アルミニウムなどからなる無機酸化物を蒸着してなる透明蒸着延伸ナイロンフィルムであることを特徴とする請求項5記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項7】
前記フィルム基材層が延伸ポリプロピレンフィルムからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の線状押し出しラミネート方法を用いた耐ピンホール性包装フィルムを用いて製袋したことを特徴とする包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−307783(P2007−307783A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138645(P2006−138645)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】