説明

線維筋痛症候群に関わる疲労を治療するためのミルナシプラン

本発明は、線維筋痛症候群に関わる疲労に罹患した患者に高投与量のミルナシプランを投与することにより、そのような疲労を治療するための方法が提供される。FMSに関わる疲労に罹患した患者にミルナシプランを投与することにより、そのような疲労を長期的に治療するための方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2006年8月9日に出願された米国仮特許出願第60/836857号、および2007年8月8日に出願された米国特許出願第11/835950号の利益を主張し、その内容の全てはここに含まれる。
本発明の分野は、線維筋痛症に関わる疲労に罹患している患者に高投与量のミルナシプランを投与することによる、線維筋痛症に関わる疲労の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
線維筋痛症候群(FMS)としても知られている線維筋痛症は、人口の2%から4%が罹患すると推定されている一般的な全身性リウマチ性疾患であり、リウマチ性疾患の中で変形性関節症に次いで第2番目に患者数が多い。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990; 33 (2) : 160-172; Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1995; 38 (1): 19-28。線維筋痛症は、疼痛閾値の低下に関連しており、一般に全身にわたる圧迫に対する感受性が増加することにより特定され、しばしば、疲労、睡眠障害、および朝のこわばりを伴う。他の一般的な症状には、頭痛、偏頭痛、変わりやすい排便習慣、びまん性腹痛、および頻尿が含まれる。線維筋痛症の診断基準は、広範囲の疼痛の既応のみならず、健康診断における圧痛(圧痛点)所見を要求する。1990年に米国リウマチ学会(ACR)によって確立された線維筋痛症の基準を満たすために、個人は、体および体軸骨格の4つの象限全てに関与している広範囲の痛みと、検査おいて18のうち11の圧痛点の存在との両方が必要である。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990;33 (2):160-172.
【0003】
FMSは身体化障害の一形態でありうるといういくつかの提案がある一方で、FMSは全身性の感覚刺激知覚の増大を反映する医学的な問題であることに対する証拠と支持が増加している。その異常は局所ではなく中枢神経系(CNS)内で起こっていると考えられており、提案されている病態生理学的欠陥は「中枢性感作」と呼ばれている。Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997;4(3):134-153; Yunas MB, J Rheumatol. 1992;19(6):846-850; Bradley et al., Curr Rheumatol Rep. 2000;2(2):141-148; Simms RW, Am J Med Sci. 1998;315(6):346-350。FMS患者は典型的に異痛症(軽い接触などの痛みのない刺激からでさえ痛みを感知する)および痛覚過敏症(疼痛刺激が健常志願者に比べてより高い強度で誇張されおよび感知される痛みの増加プロセス)の両方に罹患している。Mountz et al., Arthritis & Rheumatism 1995;38(7):926-938; Arroyo JF and Cohen ML, J Rheunatol. 1993; 20(11):1925-1931。この点において、臨床所見および提案される潜在的なメカニズムについて糖尿病性神経障害や三叉神経痛などの神経因性疼痛と多くの類似がある。Sindrup SH and TS Jensen, Pain 1999;83(3):389-400; Woolf CJ, Nature 1983; 306 (5944) :686-688; Woolf CJ and RJ Mannion, Lancet 1999; 353 (9168):1959-1964。その結果、FMSは主としてこの医学的モデルの範囲内で治療されている。FMSはほとんどの場合、一次医療の状況で診断されており、この外来受診のほぼ半分は内科および地域医療機関におけるものである(1998年国立外来医療調査(National Ambulatory Medical Care Survey))。リウマチ専門医の受診は、FMS患者の外来受診の16%を占める。残りの受診は、疼痛センター、物理療法専門医、精神科医を含むさまざまな三次医療機関におけるものである。
【0004】
線維筋痛症を有する個人は、高頻度の再発性非心臓性胸痛、胸焼け、動悸、および過敏性腸症候群を含むいくつかの他の症状に罹患している。Wolfe, et al., Arthritis Rheum. 1990;33(2):160-172; Mukerji et al., Angiology 1995;46(5):425-430。これらの症状の生理学的基礎はまだ不明であるが、線維筋痛症および関連疾患において自律神経系の機能不全が一般的であるということを示唆する証拠が増加している。Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997;4(3):134-153; Freeman R and Komaroff AL, Am J Med. 1997;102(4):357-364。無作為に選択された線維筋痛症の個人を対象としたプロスペクティブ試験では、いくつかの内臓の機能不全の客観的証拠が見つけられており、発症率75%の心エコーの検査による僧帽弁逸脱、40〜70%の食道運動不全、および肺機能検査による静的吸気および呼気圧の低下が含まれる。Lurie et al., Scand J Rehab Med. 1990;22(3):151-155; Pellegrino et al., Arch Phys Med Rehab. 1989;70(7):541-543。神経系が介在する低血圧および失神もまた線維筋痛症の個人でより頻繁に起こるように思われる。Rowe et al., Lancet 1995;345(8950):623-624。
【0005】
線維筋痛症は、対照と比べて、高い身体障害の割合、健康診療の利用の増加、精神科医による治療頻度の上昇、および生涯の精神科診断数の増加に関連している。
【0006】
幅広い数々の薬剤が、FMS患者に「認可外」で用いられ様々な度合いの成功をおさめている。Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858; Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000:113:32-36。抗うつ剤は、多くの治療パラダイムの基礎である一方で、抗けいれん誘発薬、抗痙性剤、抗不安剤、鎮静剤、およびアヘン剤などの他の薬剤が使用されている。末梢性炎症が示されてなく(Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997;4(3):134-153)、多くの研究ではFMSにおける鎮痛剤としての有効性を確認することができていないにもかかわらず、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびアセトアミノフェンもまた多くの患者に使用されている(Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1997;40(9):1571-1579)。Goldenberg et al., Arthritis Rheum. 1986;29(11):1371-1377; Yunus et al., I Rheumatol. 1989;16(4):527-532; Wolfe et al., Arthritis Rheum. 2000;43(2):378-385; Russell et al., Arthritis Rheum. 1991;34(5):552-560; Quijada-Carrera et al., Pain 1996;65(2-3):221-225。しかしながら、これらの薬剤は変形性関節症などの他の末梢性疼痛誘発源に対して保護する要素を提供する。
【0007】
すべての種類の抗うつ剤は、FMSを含む多くの慢性疼痛状態の治療の一般的な形態である。Sindrup SH and Jensen TS, Pain 1999;83(3):389-400; Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858; Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000;113:32-36; Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79.92。入手可能な抗うつ剤の大部分は、直接的および/または間接的にCNS中の5-HTおよび/またはNEのレベルを増加させる。モノアミン作動性物質のレベルは、シナプス間隙に放出された後の(輸送タンパク質の阻害による)再取り込みの阻害または(モノアミン酸化酵素の阻害による)モノアミンの分解の妨害により増加する。
【0008】
三環系抗うつ剤(TCA)
FMSの治療において最も一般的に用いられるTCAには、アミトリプチリン、ドキセピン、およびシクロベンザプリンが含まれる。Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Lautenschlager J, Scared J Rheumatol Suppl. 2000;113:32-36; Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92。シクロベンザプリンは一般に、抗うつ剤ではなく筋弛緩剤として分類されるが、構造および薬理学的にはTCAと類似しており、しかし、その鎮静の質は他の適用における有用性を圧倒している。Kobayashi et al., Eur J Pharmacol. 1996;311(l):29-35。TCAは5-HTおよびNEの両方の再取り込みをブロックするが、NEの再取り込みブロックの方に好都合であり、TCAの効果は、鎮痛作用において最重要なNEアゴニズムを支持すると解釈されうる。しかしながら、TCAの更なる抗コリン作用性、抗ヒスタミン作用性、およびα-アドレナリン受容体封鎖活性は、幅広い種類の忍容性や臨床的受容を損なうことが多い望ましくない副作用をを与える。Kent JM, Lancet 2000;355(9207):911-918参照。
【0009】
TCAは、ヘルペス後の神経痛および痛みのある糖尿病性神経障害などの神経障害性疼痛状態の治療において、中等度の効果を示している。Max et al., Neurology 1988; 38(9): 1427-1432; Max et al., N Eng J Med. 1992;326(19):1250-1256; Watson et al., Neurology 1982;32(6):671-673; Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36。FMSの治療における多くのTCAの研究は、この症候群に対するその使用も支持し、TCAはしばしば新規薬剤を比較する陽性対照として用いられてきた。Max et al., N Eng J Med. 1992;326 (19): 1250-1256; Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36; Hannonen et al., Br J Rheumatol. 1998; 37 (12):1279-1286; Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859参照。
【0010】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
SSRIは、より選択的な再取り込み阻害により改善された副作用プロファイルによって、うつ治療を根本的に変えてきている。SSRI剤であるフルオキセチン、セルトラリン、およびシタロプラムは、FMSにおける無作為化プラセボ対照比較試験でそれぞれ評価されている。Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859; Wolfe et al., Scand J Rheum. 1994;23(5):255-259; Anderberg et al., Eur J Pain 2000;4(1):27-35; Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449。しかしながら、それらの試験結果は若干一貫性がなく、SSRIの、特にTCAと比較した、相対的な有効性については議論の余地がある。
【0011】
FMS患者における、SSRIの最も5-HT特異的であるシタロプラムの2つのプラセボ対照比較試験(表2参照)は、両方とも否定的であると思われた。Anderberg et al., Eur J Pain, 2000;4(1):27-35; Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449。これはセロトニン作動性の増強だけでは、慢性疼痛の環境において鎮痛を与えるのには十分ではないことを示唆している。実際、今まで集められた証拠を基に、SSRIは、1つのクラスとして、いくつか例外はあるが(Saper et al., Headache 2001;41(5):465-474)、一般に慢性疼痛の状態においてTCAよりも効果が低い(Max et al., N Engl J Med. 1992;326(19):1250-1256; Ansari A, Harv Rev Psych. 2000;7(5):257-277; Atkinson et al., Pain 1999;83(2):137-145; Jung et al., J Gen Intern Med. 1997;12(6):384-389)。
【0012】
二重再取り込み阻害剤
二重再取り込み阻害剤は、「SNRI」または「NSRI」とも呼ばれ、薬理学的にTCA(例えばアミトリプチリンおよびドキセピン)と似ており、5-HTの再取り込みおよびNEの再取り込みの両方に対して活性を示す。Sanchez C and Hytell J, Cell Mol Neurobiol. 1999;19(4):467-489。しかしながら、これらの新規薬剤は、一般に、他の受容体系では重要な活性を欠いており、結果として、副作用が減少し、忍容性が増強する。したがって、このクラスの抗うつ剤は、FMSおよび/または他の慢性疼痛状態の治療に対して重要な潜在能力があるかもしれない。米国で市販されているSNRIには、ベンラファキシンおよびデュロキセチンが含まれる。いくつかのそのような薬剤が臨床開発中であり、これらには、ミルナシプラン、ビシファジン(bicifadine)、ビロキサジン、LY-113821、SEP-227162、AD-337、およびコハク酸デスベンラファキシン(DVS-233)が含まれる。
【0013】
15人のFMS患者における、ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))の1回の小規模な非盲検試験が促進する結果を示している。Dwight et al., Psychosomatics 1998;39(1):14-17。この試験を完了した11人の患者のうち、6人がベンラファキシンに対して、全体的な痛みの2つの異なる測定において、50%以上の改善が見られたとして定義された陽性の反応を示した。不眠症が報告された最も一般的な副作用であり、11人の完了した患者のうち3人において補助的な薬物療法を必要とした。
【0014】
米国特許第6602911号は、FMSおよびその症状の治療のためにミルナシプランを用いることを示しており、その全開示が参照により本明細書に取り込まれている。
【0015】
オピオイド
アヘン剤は、上行性および下行性の痛み経路の両方において様々に位置で抗侵害受容効果を発揮する。Duale et al., Neuroreport 2001;12(10):2091-2096; Besse et al., Brain Res. 1990;521(1-2):15-22; Fields et al., Nature 1983;306(5944):684-686; Yaksh et al., Proc Natl Acad Sci USA 1999;96(14):7680-7686。慢性疼痛状態に対するオピオイドの使用に関心が高まっている。Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92。オピオイドはFMSの臨床管理において一部で用いられており、特に、他の鎮痛剤が十分な緩和を与えることに役に立たないときに用いられる。Bennett RM, Mayo Clin Proc. 1999;74(4):385-398。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/836857号
【特許文献2】米国特許出願第11/835950号
【特許文献3】米国特許第6602911号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990; 33 (2) : 160-172
【非特許文献2】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1995; 38 (1): 19-28
【非特許文献3】Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997; 4 (3) :134-153
【非特許文献4】Yunas MB, J Rheumatol. 1992;19(6):846-850
【非特許文献5】Bradley et al., Curr Rheumatol Rep. 2000;2(2):141-148
【非特許文献6】Simms RW, Am J Med Sci. 1998;315(6):346-350
【非特許文献7】Mountz et al., Arthritis & Rheumatism 1995;38(7):926-938
【非特許文献8】Arroyo JF and Cohen ML, J Rheunatol. 1993; 20(11):1925-1931
【非特許文献9】Sindrup SH and TS Jensen, Pain 1999;83(3):389-400
【非特許文献10】Woolf CJ, Nature 1983;306(5944):686-688
【非特許文献11】Woolf CJ and RJ Mannion, Lancet 1999;353(9168):1959-1964
【非特許文献12】Mukerji et al., Angiology 1995;46(5):425-430
【非特許文献13】Freeman R and Komaroff AL, Am J Med. 1997;102(4):357-364
【非特許文献14】Lurie et al., Scand J Rehab Med. 1990;22(3):151-155
【非特許文献15】Pellegrino et al., Arch Phys Med Rehab. 1989;70(7):541-543
【非特許文献16】Rowe et al., Lancet 1995;345(8950):623-624.
【非特許文献17】Felson et al., Arthritis Rheum. 1993;36(6):729-740
【非特許文献18】Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999; 13 (3):479-485
【非特許文献19】Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858
【非特許文献20】Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000:113:32-36.
【非特許文献21】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1997;40(9):1571-1579
【非特許文献22】Goldenberg et al., Arthritis Rheum. 1986;29(11):1371-1377
【非特許文献23】Yunus et al., I Rheumatol. 1989;16(4):527-532
【非特許文献24】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 2000;43(2):378-385
【非特許文献25】Russell et al., Arthritis Rheum. 1991;34(5):552-560
【非特許文献26】Quijada-Carrera et al., Pain 1996;65(2-3):221-225
【非特許文献27】Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858
【非特許文献28】Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92
【非特許文献29】Kobayashi et al., Eur J Pharmacol. 1996;311(l):29-35
【非特許文献30】Kent JM, Lancet 2000;355(9207):911-918
【非特許文献31】Max et al., Neurology 1988;38(9):1427-1432
【非特許文献32】Max et al., N Eng J Med. 1992;326(19):1250-1256
【非特許文献33】Watson et al., Neurology 1982;32(6):671-673
【非特許文献34】Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36
【非特許文献35】Hannonen et al., Br J Rheumatol. 1998;37(12):1279-1286
【非特許文献36】Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859
【非特許文献37】Wolfe et al., Scand J Rheum. 1994;23(5):255-259
【非特許文献38】Anderberg et al., Eur J Pain 2000;4(1):27-35
【非特許文献39】Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449
【非特許文献40】Saper et al., Headache 2001;41(5):465-474
【非特許文献41】Ansari A, Harv Rev Psych. 2000;7(5):257-277
【非特許文献42】Atkinson et al., Pain 1999;83(2):137-145
【非特許文献43】Jung et al., J Gen Intern Med. 1997;12(6):384-389
【非特許文献44】Sanchez C and Hytell J, Cell Mol Neurobiol. 1999;19(4):467-489
【非特許文献45】Dwight et al., Psychosomatics 1998;39(1):14-17
【非特許文献46】Duale et al., Neuroreport 2001;12(10):2091-2096
【非特許文献47】Besse et al., Brain Res. 1990;521(1-2):15-22
【非特許文献48】Fields et al., Nature 1983;306(5944):684-686
【非特許文献49】Yaksh et al., Proc Natl Acad Sci USA 1999;96(14):7680-7686
【非特許文献50】Bennett RM, Mayo Clin Proc. 1999;74(4):385-398
【非特許文献51】Carette et al., Arthritis & Rheumatism 1994;37(1):32-40, 32-33, 39
【非特許文献52】Grard et al., 2000, Electrophoresis 2000 21:3028-3034
【非特許文献53】Zeltser et al., 2000, Pain 89:19-24
【非特許文献54】Bennett et al., 1988, Pain 33:87-107
【非特許文献55】Seltzer et al., 1990, Pain 43:205-218
【非特許文献56】Kim et al., 1992, Pain 50:355-363
【非特許文献57】Decosterd et al., 2000, Pain 87:149-158
【非特許文献58】Jasmin et al., 1998, Pain 75:367-382
【非特許文献59】Quintero et al., 2000, Pharmacology, Biochemistry and Behavior 67:449-458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
現在まで、線維筋痛症およびその症状を効果的に、長期的に治療する公開された報告は存在しなかった。Carette等は、アミトリプチリン(三環系抗うつ剤)、シクロベンザプリン(三環系抗うつ剤に構造が似ている筋弛緩剤)、およびプラセボを、線維筋痛症候群に罹患している対象に投与した臨床試験の長期(3ヶ月より長い)結果を報告した(Carette et al., Arthritis & Rheumatism 1994;37(1):32-40)。1ヶ月後、アミトリプチリン対象の21%、シクロベンザプリン対象の12%、およびプラセボ対象の0%で有意な臨床的改善が認められた。3ヶ月後、各処置群とプラセボの間に差はなかった。6ヶ月後、予想よりもより高いプラセボ反応のため、即ちプラセボで19%の改善のために、長期の有効性は実証されなかった。
【0019】
線維筋痛症に関わる疲労は、日常生活の活動を実行する患者の能力を顕著に損なうことになる可能性があり、この疲労を伴う患者の大多数は数年に渡って兆候を示し続けている。このように、線維筋痛症候群およびその症状の効果的な長期治療の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚いたことに、本発明の方法によると、(例えば、約125 mg/日より多い)高投与量ミルナシプランをFMSに関わる疲労を有する一連のFMS患者に投与することにより、100 mg/日の投与量のミルナシプランよりこの疲労に対する顕著により効果的な治療が提供される。FMSに関わる苦痛を有する患者は、高投与量ミルナシプランに比較して典型的な投与量(例えば約50 mg/日から100 mg/日)のミルナシプランからほぼ同等の便益を享受するために、この効果の改善は予想外であった。
【0021】
二重盲検無作為プラセボ対照比較臨床試験(実施例1参照)は、高投与量ミルナシプランを投与することにより、線維筋痛症に関わる疲労に罹患している患者においてそのような疲労の効果的な長期(例えば少なくとも3ヶ月)治療が提供されることを予想外に示した。
【0022】
本発明の発見まで、線維筋痛症に関わる疲労の患者が、100 mg/日の典型的な投与量のミルナシプランに比較して、(例えば、約125 mg/日より多い)高投与量ミルナシプランから便益をより多く享受することは知られていなかった。逆に、高投与量ミルナシプランは有害事象の分析結果をもたらし、それは典型的な投与量(例えば約50 mg/日から100 mg/日)のミルナシプランに対する分析結果より悪いことが知られていた(米国特許公開2004/0106681号参照)。従って、本発明より前には、FMSに関わる疲労を有する患者に対して高投与量ミルナシプランを勧める基になるものを医師は有していなかった。さらに、本発明より前には、FMSに関わる疲労を有する一連の患者が、FMS患者一般に比較して異なる投与量のミルナシプランから便益を享受することは知られていなかったので、FMSに関わる疲労を有する患者を、一連のFMS患者と異なるものとして同定する理由が医師には無かった。
【0023】
本発明のある態様において、高投与量ミルナシプランにより、少なくとも3ヶ月間、FMSに関わる疲労の効果的な長期治療が提供される。本発明の別の態様において、高投与量ミルナシプランにより、少なくとも6ヶ月間、FMSに関わる疲労の効果的な長期治療が提供される。
【0024】
本発明のある態様において、高投与量ミルナシプランは、約125 mg/日から約400 mg/日の投与量である可能性がある。別の態様において、高投与量ミルナシプランは、約150 mg/日から約350 mg/日の投与量である可能性がある。また別の態様において、高投与量ミルナシプランは、約200 mg/日から約300 mg/日の投与量である可能性がある。さらに別の態様において、高投与量ミルナシプランは、約200 mg/日の投与量である可能性がある。
【0025】
本発明により、高投与量ミルナシプランの総量(投与量)が、1日1回または1日数回に分割した投与量で投与されることができる方法が提供される。
【0026】
本発明はさらに、FMSに関わる疲労を治療するためのミルナシプランと共に第二の活性化合物を付加的に投与する方法を提供し、第二の化合物は、抗うつ剤、鎮痛薬、筋弛緩薬、食欲抑制、興奮剤、抗てんかん薬、ベータ遮断薬および鎮静剤/催眠剤からなる群より選択される。さらに特定の態様において、FMSに関わる疲労を治療するための第二の活性化合物は、モダフィニル、ガバペンチン、 プレガバリン(pregabalin)、プラミペキソール、1-ドーパ、アンフェタミン、チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環抗うつ薬、コデイン、カルバマゼピン、シブトラミン、ベイリウム、トラゾドン、カフェイン、ニセルゴリン、ビフェメラン、プロプラノロール、およびアテノロール、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に記載された臨床試験の時系列を示す図である。
【図2】実施例1に記載された、プラセボ、ミルナシプラン100mg/日、およびミルナシプラン200mg/日の群における、3ヶ月および6ヶ月でのFMSに関わる苦痛の治療に対して応答したFMS患者の割合を説明する棒グラフである。
【図3】MFI:身体的疲労により計測した、FMSに関わる疲労の治療において、ミルナシプラン約200 mg/日(「200」)が、ミルナシプラン約100 mg/日(「100」)よりも優れていることを示すグラフである。200と100の両方とも、FMSに関わる疲労の治療においてプラセボ(「Pbo」)よりも優れている。治療第3,7,11,15,19,23および27週に測定を行った。
【図4】実施例1の臨床試験においてBDI(OC)「エネルギーの喪失」状態が、Tx0からTx15に変化した患者の割合を説明するグラフである。
【図5】実施例1の臨床試験においてBDI(OC)「疲労」状態が、Tx0からTx15に変化した患者の割合を説明するグラフである。
【図6】実施例2に記載された臨床試験の投与量上昇フローチャートである。
【図7】実施例2に記載された臨床試験の時系列を示す図である。
【図8】実施例2の臨床試験においてBDI(OC)「エネルギーの喪失」状態が、Tx0からTx15に変化した患者の割合を説明するグラフである。
【図9】実施例2の臨床試験においてBDI(OC)「疲労」状態が、Tx0からTx15に変化した患者の割合を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で用いられている用語「対象」または「患者」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む。
【0029】
本明細書で用いられている「治療」または「効果的な治療」は、線維筋痛症の症状を緩和することを意味する。特にFMSに関わる疲労の「治療」または「効果的な治療」は、そのような疲労を緩和することを意味する。患者における疲労の緩和を、主観的に、例えば疲労または倦怠感が軽減したように感じる患者の報告、あるいは客観的な、例えば患者のMFIスコアが、基礎値のMFI:身体的疲労に対して改善したことにより測定することができる。
【0030】
本明細書で用いられている「高投与量」は、少なくとも約125ミリグラム(mg)/日の投与量を意味する。例えば、ある実施態様において、高投与量は約125 mg/日から約400 mg/日を意味する。別の実施態様において、高投与量は約200 mg/日から約300 mg/日を意味する。より特定の実施態様において、高投与量は約200 mg/日を意味する。
【0031】
「二重ノルエピネフリンセロトニン再取り込み阻害剤」(NSRI)および「二重セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」(SNRI)の語は同義であり、ノルエピネフリンおよびセロトニンの両方の再取り込みを選択的に阻害する、抗うつ剤化合物のよく認識されたクラスを意味する。共通のNSRIおよびSNRI化合物には、ベンラファキシン、デュロキセチン、ビシファジンおよびミルナシプランが含まれる。
【0032】
「NE>5-HT NSRI」および「NE>5-HT SNRI」は同義であり、セロトニンの再取り込み以上にノルエピネフリンの再取り込みを阻害するNSRI化合物のサブクラスを指す。ミルナシプランおよびビシファジンが、NE>5-HT NSRIの例である。
【0033】
NSRI(SNRI)およびNE>5-HT NSRI(NE>5-HT SNRI)化合物は、米国特許第6602911号に詳細に記載されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0034】
本発明によれば、線維筋痛症候群(FMS)に関わる疲労を有する患者を、例えば3ヶ月より長く続く(例えば過程の掃除、用事などの)ありふれた日常活動を実行することが不可能になる疲労、倦怠感または無力感に対するFMS患者の主な不満、あるいは総スコア10の多次元疲労目録(Multidimensional Fatigue Inventory, MFI)、または8以上の身体的疲労スコアに基いて、医療施設は同定することができる。
【0035】
MFIは、5次元の疲労:全体的な疲労(General Fatigue)、身体的疲労(Physical Fatigue)、心理的疲労(Mental Fatigue)、意欲の減退(Reduced Motivation)、および活動の低下(Reduced Activity)を測定する20項目の自己申告測定である(Smets et al., J Psychosom Res 1995, 39:315-325)。各次元のスコアは、疲労の重篤度を反映する(高い値はより大きな疲労を示す)。
【0036】
ミルナシプラン
ミルナシプランはNSRI、すなわち二重ノルエピネフリン及びセロトニン再取り込み阻害剤であり、新規の化学構造を提示する。ミルナシプランは、2個の(l-およびd-)エナンチオマーからなるcis-(dl)ラセミ化合物(Z型)である。ミルナシプラン塩酸塩の化学明は、Z-2-アミノメチル-1-フェニル-N,N-ジエチルシクロプロパンカルボキサミドヒドロクロリドである。ミルナシプランの化学式はC15H23ClN2Oである。
【0037】
ミルナシプラン投与に関わる有害事象は、吐き気、嘔吐、頭痛、振戦、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、腰痛、便秘、下痢、めまい、発汗、興奮、ほてり、疲労の増加傾眠、消化不良、排尿障害、口渇、腹痛、不眠症を含む。高頻度の有害事象のために、患者が高投与量ミルナシプランに耐えられないことがしばしばある。本発明は、特定の群のFMS患者、すなわちFMSに関わる疲労を有する患者が、高投与量ミルナシプランの投与により予想外の便益を享受するという発見を包含する。従って、この群のFMS患者にとって、高投与量ミルナシプランによる便益は、1種類以上の有害事象の潜在的な不利益を上回る。
【0038】
線維筋痛症および/または線維筋痛症に関わる症状の治療のためのミルナシプランの単剤治療は、すでに125人の線維筋痛症患者での第2相試験に記載されている。例えば、米国特許出願第10/678767号を参照されたい(その全内容が参照により本明細書に組み込まれている)。この試験において、ミルナシプランは、1日1回または2回、投与量漸増レジメンで最大200mg/日投与した。ミルナシプランを伴う治療が、FMSの兆候および症状に対して広範囲の有益な効果を提供した。ミルナシプランの1日2回(BID)および1日1回(QD)投与は、疲労、気分、全体的な健康、および機能において、およそ同等に効果的であった。1日2回投与の方がQD投与よりも忍容性が高く、QD投与よりも痛みの治療においてより効果的であった。患者の全般的印象の変化(PGIC)の結果判定法では、両方のミルナシプラン治療群において、完了した人の70%を超える人が全体的な状態において改善したと報告した一方で、わずか10%が悪くなったと報告した。対照的に、その試験を完了したプラセボ患者の40%が、エンドポイントにおいて同様に悪いと評価した。PGICにおけるプラセボとミルナシプランの間の差は、平均エンドポイントスコアの比較および2値的な改善/非改善の基準の両方において統計的に有意であった。
【0039】
ミルナシプランは、この第2相試験において忍容性が良好であった。ミルナシプランの治療に関連した死亡または重大な有害事象(AE)はなく、報告されたAEの大部分は、重症度が軽度または中等度と評価された。最も多く報告されたAEは悪心であり、ミルナシプラン処置患者の33%において(1回または複数回)報告された。他のすべてのAEは、ミルナシプラン処置患者の9%未満で報告された。200mgQD処置群において、悪心、腹痛、頭痛および他のAEの発現率がより高いことは、より大量を1日1回投与することは、より少量の分割投与量を1日2回投与することと比べて忍容性が低いことを示唆している。めまい、起立性めまい、のぼせ(および顔面紅潮)、および動悸の報告も、QD処置群においてより多く、このことはある有害作用の発生において最高薬物濃度が重要な要素であるかもしれないことを示唆している。
【0040】
以前の試験結果と一貫して、ビリルビンまたはアルカリホスファターゼの増加を伴うことなく、ALTおよび/またはASTの軽度の増加(≦通常の上限の2倍)を7%の患者が経験した。肝酵素の増加がミルナシプラン処置患者のわずか2%において有害事象の結果となった(すなわち酵素の増加がみられた7人の患者のうち2人が「SGOTの増加」または「SGPTの増加」の有害事象と報告された。)。
【0041】
平均心拍数において、1分間に4から8拍の増加がミルナシプラン処置患者で指摘され、これは以前のミルナシプランの試験結果と一貫していた。ミルナシプラン処置群の平均最高血圧と最低血圧はわずかな増加を示すのみだった。仰臥位最高血圧は1.5から3.4mmHgの範囲(プラセボ群では-1.1から2.7mmHg)であり、仰臥位最低血圧は2.6から3.7mmHgの範囲(プラセボ群では-3.5から1.2mmHg)であった。2人(2%)のミルナシプランBID処置患者が高血圧の悪化を報告した。両方の患者はもともと高血圧であり、血圧降下剤治療を受けていた。1人の患者は、早い段階で高血圧の悪化のためにこの試験をやめた。
【0042】
処置に関連する起立性作用における可能性は、以前の試験の間にもまた実証されており、FMS試験の間に6人(6%)のミルナシプラン処置患者が起立性/体位性めまいの有害事象を報告し、1人の患者は、早い段階で中等度の体位性めまいのために継続できなかった。バイタルサインのデータは、プラセボ患者の4%とミルナシプランの患者の7%で1分間の直立のあとに最高血圧が20mmHg以上の低下を1度または複数回経験したことを示した。
【0043】
このようにして、この第2相試験は、100mg BIDミルナシプランを用いた治療はFMSの痛みの症状に対して効果的な急性(短期)の治療法であることを示した。さらに、1日1回または2回のミルナシプラン投与は、疲労(FIQにおいて測定)、痛み(多重測定)、生活の質(多重測定)、および潜在的には気分(Beck測定)を含むFMSの症状の幅広い範囲において、かなり重要であり有益な効果を有した。
【0044】
有効投与量
本発明における使用に適する薬剤組成物は、高投与量ミルナシプラン、ならびに薬剤として許容しうる担体または賦形剤を含む。「薬剤として許容しうる」の語は、「一般的に安全であるとみなされる」、たとえば、ヒトに投与されたときに、生理学的に耐えられる、および胃の不調、眩暈のような、アレルギー性または類似した有害反応を通常引き起こさない、分子全体および組成物を指す。ここで、「薬剤として許容しうる」の語は、動物、より特定にはヒトにおける使用に対して、連邦または州政府の監督官庁により認可される、あるいは米国薬局方または他の一般に認識された薬局方に列挙されることを意味するのが好ましい。「担体」の語は、化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油などのような、石油、動物、植物または合成源であるものを含む、水や油のような無菌液体である可能性がある。水または水溶液、生理食塩水、ならびに水デキストロースおよびグリセロール溶液が、担体、特に注射可能溶液に対する担体として使用されるのが好ましい。あるいは、担体は、(圧縮錠剤のための)結合剤、流動促進剤、カプセル化剤、芳香剤、および着色剤のうち1種類以上を含むがそれに限定されない、固体投与形態担体であることができる。適切な医薬担体は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されており、その全体が参照されてここに取り込まれる。
【0045】
本発明の複数の実施態様において、ミルナシプランは、約125 mg/日と約400 mg/日との間の投与量で投与される。別の実施態様において、ミルナシプランは、約150 mg/日と約350 mg/日との間の投与量で投与される。さらに別の実施態様において、ミルナシプランは、約200 mg/日と約300 mg/日との間の投与量で投与される。複数の実施態様において、ミルナシプランは、約200 mg/日の投与量で投与される。
【0046】
本発明の薬剤組成物を投与する経路は、例えば、経口、腸内、静脈内、及び経粘膜(例えば直腸)であってよい。好ましい投与経路は経口である。
【0047】
経口投与に適する薬剤組成物は、錠剤、カプセル、ピル、トローチ、粉末または顆粒、あるいは液体中の溶液または分散物の形態であってよい。前記形態のそれぞれは、活性成分として本発明の化合物をあらかじめ決まられた量含むであろう。錠剤の形態である組成物を、その目的に対して当業者に既知であり、固体薬剤組成物を調製するために伝統的に使用される医薬賦形剤のいずれかを使用して、調製することができる。そのような賦形剤の例は、デンプン、乳糖、微結晶セルロース、マグネシウムステアレート、および結合剤、例えばポリビニルピロリドンである。さらに、親水性又は疎水性マトリックスを含む錠剤のような、制御放出調製物として、活性化合物を配合することができる。
【0048】
本発明の薬剤組成物は、伝統的な方法を使用して、例えば活性化合物と賦形剤との混合物を硬ゼラチンカプセル中に取り込むことにより配合されるカプセルの形態であってよい。あるいは、活性化合物と高分子量ポリエチレングリコールとの半固体マトリックスを形成し、硬ゼラチンカプセルの中を満たし、あるいは軟ゼラチンカプセルを、ポリエチレングリコール中の活性化合物の溶液、あるいは食用油中のその分散物で満たすことができる。使用の前に構築される粉末形態(例えば凍結乾燥粉末)もまた考慮される。あるいは、注射配合物のための油性ビヒクルもまた使用することができる。
【0049】
非経口投与のための液体形態を、注射または連続輸液のよる投与のために配合することができる。
【0050】
注射による投与に受け入れられる経路は、腹腔内、筋肉内、静脈内、および皮下である。腹腔内注射に典型的な組成物は、例えば活性化合物ならびにデキストロース及び塩化ナトリウムを含む、無菌等張水溶液または分散物を含む。適切な賦形剤の他の例は、注射用乳酸化リンガー液、デキストロースを有する注射用乳酸化リンガー液、デキストロースを有するNormosol-M、注射用アシル化リンガー液である。注射配合物は、任意選択で、共溶媒、例えばポリエチレングリコール、キレート剤、例えばエチレンジアミノテトラ酢酸;安定化剤、例えばシクロデキストリン;および抗酸化剤、例えばナトリウムピロサルフェートを含むことができる。
【0051】
高投与量ミルナシプランの投与量は、1日1回、あるいは1日2回以上与えられる分割した投与量で投与されてよい。本発明の方法を実行するために投与されるミルナシプランの量は、治療される被験者、苦痛の重篤度、投与の方法、および処方医師の判断に依存して変動する可能性がある。
【0052】
併用療法
本発明によると、FMSに関わる疲労の長期的治療のための他の活性化合物と共に、ミルナシプランを付加的に投与することができる。本発明による他の活性成分は、例えば、抗うつ薬、鎮痛薬、筋肉弛緩剤、食欲減退薬、覚せい剤、抗てんかん薬、βブロッカー、及び鎮静剤/睡眠薬を含む。NE 5-HT SNRI化合物と付加的に投与することができる化合物の特定の例は、モダフィニル、ガバペンチン、プレガバリン、プラミペキソール、1-ドーパ、アンフェタミン、チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環系抗うつ薬、コデイン、カルバマゼピン、シブトラミン、バリウム、トラゾドン、プロプラノロール、アテノロールを含むが、それに限定されない。本発明の特定の実施態様において、ミルナシプランは、例えばプレガバリン(pregabalin)またはガバペニチン(gabapentin)のようなアルファ-2-デルタリガンドとともに付加的に投与される。
【0053】
ここで、付加的投与とは、同じ投与形態にある化合物の同時投与、別個の投与形態にある化合物の同時投与、ならびに前記化合物の個別投与を含む。例えば、ミルナシプランとバリウムの両方を同一の錠剤に一緒に配合して、ミルナシプランをバリウムと同時に投与することができる。あるいは、ミルナシプランとバリウムの両方を2個の別個の錠剤に存在するようにして、ミルナシプランをバリウムと同時に投与することができる。あるいは、ミルナシプランを先に投与した後にバリウムを投与することができ、あるいは逆の順序で投与することもできる。
【0054】
次の実施例は単に本発明の例証であり、多くの変化形としてあらゆる手段において本発明の範囲を限定して構成しているものではなく、本発明により包含される同等のものは、当業者において本開示を読むことにより明らかとなるであろう。
【実施例】
【0055】
<実施例1 線維筋痛症を治療するためのミルナシプランの多施設協同二重盲目無作為プラセボ対照比較試験>
【0056】
この試験の第一の目的は、線維筋痛症候群の治療における、ミルナシプランの安全性および有効性を臨床的および統計的の両方で実証することであった。第一の結果は、第14週および第15週で応答率を評価する複合応答分析であり、第2の分析は第26週および第27週での応答率を評価することであった。
【0057】
この試験の他の目的は、
1.複合応答分析のぞれぞれの構成要素、および疲労、睡眠、気分および認識を含む複数の更なる第2のエンドポイントを基にした、線維筋痛症候群の治療における、100mg/日および200mg/日のミルナシプランの有効性を統計的および臨床的に比較すること、および
2.FMSの患者に対して、1日当たり100および1日当たり200mgのミルナシプランの安全性プロファイルを確立し、比較すること
であった。
【0058】
方法
これは、多施設協同無作為二重盲目プラセボ対照比較第3群試験であり、線維筋痛症候群の1990ACR基準とプロトコールに概説したより詳細な組入れ基準を満たす888人の患者を登録した。
【0059】
患者は抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、および測定の有効性を妨害する可能性がありうる他の薬物を洗い流した後、最初の2週間、基準の症状を記録した。
【0060】
患者はプラセボ、100 mg/日のミルナシプラン、または200 mg/日のミルナシプランを1:1:2の比で投与するよう無作為化した。全ての無作為化した薬剤(プラセボおよびミルナシプラン)は、分割した用量(BID)の形態で投与した。その用量は、以下の概要に示す用量漸増レジメンで投与した。
ステップ1 12.5 mg 1日(12.5 mg午後)
ステップ2 25 mg 2日(12.5 mg午前、12.5 mg午後)
ステップ3 50 mg 4日(25 mg午前、25 mg午後)
ステップ4 100 mg 7日(50 mg午前、50 mg午後)
ステップ5 200 mg 7日(100 mg午前、100 mg午後)
【0061】
全患者は、全体で27週間のミルナシプランまたはプラセボの曝露のために、3週間の用量増加段階の後、全体で24週間のミルナシプランまたはプラセボの曝露を受ける計画だった。
【0062】
患者は試験評価スケジュールに詳述したように電子日記とさらに紙での評価を記入することを要求された。
【0063】
試験評価スケジュールに詳述したように、有害事象、健康診断、併用薬、バイタルサイン、および臨床試験データを収集した。
【0064】
この二重盲目試験を成功裏に終了した患者は、さらに15から28週間、治療の非盲検試験への参加適格者であった。
【0065】
この試験の時系列を図1に提供する。
【0066】
評価
安全性:
ミルナシプランの安全性は、この試験期間の間に収集された、有害事象、バイタルサインの変化、および臨床試験データの変化の頻度および重篤度を分析することにより評価した。
【0067】
有効性:
独自の患者の電子日記を毎日完結することに加え、次の評価が得られた:
a.主要な変量:患者の大規模な印象の変化(PGIC)および線維筋痛症効果の質問(FIQ)、
b.基準における心理的スクリーニング:M.I.N.I.、
c.多岐にわたる状態の評価:定期的に、評価スケジュールに記載の通り、BDI、睡眠の質のスケール、およびそのASEX、
d.FMS状態の評価:患者の痛み24時間と7日の想起VAS、SF-36、多角的な能力の自己報告質問(Multiple Ability Self-report Questionnaire) (MASQ、認知機能)、多次元の健康評価の質問(Multidimensional Health Assessment Questionnaire) (MDHAQ)、および多次元の疲労一覧(Multi-dimensional Fatigue Inventory) (MFI)。日々の評価には、現在の痛み(朝、任意の日中、および晩の報告)、日々の想起痛み(朝の報告)、摂取薬物(晩の報告)、この1週間の全体的な痛み(週に一度の報告)、先週の全体的な疲労(週に一度の報告)、およびその痛みのためにその患者が自身のケアが出来ない痛みの程度(週に一度の報告)、が含まれる。
【0068】
SF-36は、多目的で短期間の健康調査である。これにより、有効な健康および満足度スコア(functional health and well-being score)、心理ベースの身体および精神の健康概要測定(psychometrically-based physical and mental health summary measure)、ならびに選考ベースの健康統一インデックス(preference-based health utility index)の8段階プロフィールを得ることができる(Ware JE, Snow KK, Kosinski M, Gandek B. SF-36R Health Survey Manual and Interpretation Guide. Boston, MA: New England Medical Center, The Health Institute, 1993)。SF-36により、疲労による患者の機能的損傷(すなわち、どの程度患者の日常活動に影響をおよぼすか)を測定することができる。SF-36は、比較的重度の病気を比較して一般および特定の集団を調査する際、および広範囲の異なる治療により生み出される健康便益を差異化する際に有用であることが証明されている。
【0069】
MASQは、簡単な自己報告アンケートであり、5個の認知領域を含む:言語能力、視知覚(visuo-perceptual)能力、言語記憶、視覚記憶、及び注意力/集中力(Seidenberg et al., J Clin & Exp Neuropsychology 1994;16:93-104)。MASQは、通常の被験者と、評価領域において認知の困難性を有する患者群との両方を評価してきた。
【0070】
統計解析
有効性
この試験の主要エンドポイントは、第一の分析として第24週での評価、第二の分析として第12週での評価を行う、対象の3つの領域での分析を実行する複合応答分析であった。測定される領域は、
1)痛み(1週間の平均のスコアを測定するために、一日の想起痛みスコアとして電子日記によって測定される)、
2)患者全体的(PGIC、1-7のスケールで測定される)、および
3)理学的診察(FIQ-PFにより測定される)。
【0071】
第一の分析のために、痛み領域スコアは第14週と第15週の治療の平均を2つの基準週と比較した計算により測定された。そして第二の分析のためには第26週と第27週の治療を対基準週として計算して測定された。第14週と第15週(または第26/27週)のいずれにおいても、基準値と比較するための患者自身が報告する痛みスコアが手に入れることができない場合、最後の観察が繰り越された。
【0072】
この試験において、プラセボの(複合エンドポイントを基準とした)2元的な応答率は、10から13%の範囲であることが期待されており、ミルナシプラン応答率は、ITT/LOCF基準における活性治療群において27から29%が期待された。これらの応答率の仮定を基にして、治療群毎に無作為化した患者125人(高用量群は250人)は、必要とされる最大のサンプルサイズ(90%パワー)として計算された。第二の分析には、痛み強度の曲線の下の総面積、および臨床診察時に患者が報告した1週間の痛み想起、同様にFMS状態の評価、さらにQOLの測定を含んだ。
【0073】
結果:
応答者は、痛みが基準から30%を超える減少を経験し、PGICの改善を経験した患者として定義された。
【0074】
3ヶ月での応答者の割合は、プラセボ群において35.44%(56/158)、ミルナシプラン100mg/日群において53.33%(72/135)(p=0.001)、およびミルナシプラン200mg/日群において55.00%(143/260) (p<0.001)であった。6ヶ月での応答者の割合は、プラセボ群において32.86%(46/140)、ミルナシプラン100 mg/日群において49.59%(60/121) (p=0.002)、およびミルナシプラン200mg/日群において51.74%(119/230) (p<0.001)であった。包括解析集団における結果の要約については表1を参照し、Last Observation Carried Forward (LOCF)法、Baseline Observation Carried Forward (BOCF)法および試験完了者の(OC)集団の要約については表2を参照。LOCFは、観察が、脱落した患者に対し最後のポイントに繰り越される分析である。LOCF分析は繰り越されたデータを最後の地点で観察されたデータとして扱う。BOCFは、患者に対して応答の評価をするために試験において活性状態でとどまることを要求する分析である。もし患者が如何なる理由でもその試験から脱落したら、その患者は脱落時の痛みやグローバルスコアに関係なく、非応答者として分類される。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
これらの結果は驚くことに、ミルナシプランを線維筋痛症に罹患している対象に連続投与(例えば少なくとも3ヶ月の連日投与)することは、線維筋痛症およびその症状を長期間(少なくとも3ヶ月)緩和することを提供することを確立した。
【0078】
さらに、これらの結果は驚くことに、低用量のミルナシプラン(例えば100 mg/日)の連続投与は、長期間の線維筋痛症およびその複数の症状の治療において高用量のミルナシプラン(例えば200 mg/日)の連続投与とほぼ同じ効果を示すことを確立した。[図2]
【0079】
SF36身体機能の結果を表3に概括する。
【0080】
【表3】

【0081】
MFI総スコアの結果および基準値からのMFI身体疲労測定変化により、FMSに関わる疲労の治療に対して、ミルナシプラン100 mg/日およびミルナシプラン200 mg/日が、プラセボよりも勝っていることが示された。図3を参照のこと。さらに、これらの結果により、FMSに関わる疲労の治療に対して、ミルナシプラン200 mg/日が、ミルナシプラン100 mg/日よりも勝っていることが確立される。
【0082】
ベックうつ一覧(Beck Depression Inventory)には、疲労を測定する2個の項目が含まれる;すなわち、質問15(「エネルギーの喪失」)および20(「倦怠感または疲労」)。質問15は、0から3のスコアである(0=私は普段より疲労したり倦怠感があったりしていない、1=私は簡単に疲労したり倦怠感を持ったりするようになる、2=私はあまりにも疲労したり倦怠感を持ったりしていて、以前私がしていたことの多くをすることができない、3=私はあまりにも疲労したり倦怠感を持ったりしていて、以前私がしていたことのほとんどをすることができない)。質問20は、0から3のスコアである(0=私には以前よりもエネルギーがある、1=私には以前ほどエネルギーが無い、2=私にはあまりエネルギーが無い、3=私にはあらゆることをするために十分なエネルギーが無い)。
【0083】
100 mg/日ミルナシプラン、200 mg/日ミルナシプラン、またはプラセボが投与された際に「エネルギーの喪失」のBDI (OC)スコアが変化した患者のパーセンテージを図4に示す。100 mg/日ミルナシプラン、200 mg/日ミルナシプラン、またはプラセボが投与された際に「倦怠感または疲労」のBDI (OC)スコアが変化した患者のパーセンテージを図5に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
<実施例2:線維筋痛症候群の治療に対するミルナシプランの多施設二重盲検無作為プラセボ対照単剤療法試験>
この試験の第一目的は、線維筋痛症候群(FMS)または線維筋痛に関わる痛みの治療におけるミルナシプランの、臨床的および統計的療法の、安全性および有効性を明らかにすることであった。第一の結果は、訪問(Visit)Tx15(15週)においてプラセボと比較して、2種類の投与量(100 mg/日および200 mg/日)のミルナシプランの応答率を測定する、複合応答者解析であった。
【0086】
第二の目的は、(i)訪問Tx3からTx15まで、複合応答者評価項目の成分結果それぞれの時間加重平均に基づいて、FMSの治療において、プラセボと100 mg/日および200 mg/日ミルナシプランの統計的および臨床的有効性を比較すること、ならびに(ii)FMSを有する患者において100 mg/日および200 mg/日ミルナシプランの安全性プロフィールを確率し、比較することであった。
【0087】
方法
これは、線維筋痛症候群に対する1990ACR基準(指先の触診にける18個の圧痛点のうち、11個において広がった痛みの病歴および痛み)、ならびにそのプロトコールにおいてより詳細な承認基準を満たす1196人の患者を登録する、設計された多施設で、無作為で、二重盲検で、プラセボ対照で、三部門試験であった。
【0088】
抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、および潜在的に有効な測定を妨げる可能性がある他の特定の薬剤を洗い落とした後、患者は最初の2週間に対する基準値症状を記録した。
【0089】
患者は1:1:1の比率で無作為にプラセボ、100 mg/日ミルナシプラン、または200 mg/日ミルナシプランを受け取る(プラセボ=患者401人、100 mg/日=患者399人、または200 mg/日= 患者396人)。患者は、3週間の投与量上昇段階の後、計12週間の一定投与量ミルナシプランの投与、総計15週間の薬剤投与を受け取る2つの活性治療部門に割り当てられる。全ての無作為医薬を(プラセボおよびミルナシプラン)を、1日2回(BID)投与した。
【0090】
投与量上昇段階(訪問BL2/Tx0-Tx3)の間、毎週1枚ずつ、3枚のブリスターカード(blister card)が補填された。1日目の晩、試験の3部門すべてが1個の大きな、および1個の小さなカプセルを受け取った。2つの活性部門において、投与量は12.5 mgの活性カプセルに加えプラセボからなる。プラセボ部門において、投与量は1個の小さな、および1個の大きなプラセボカプセルからなる。2および3日目、活性部門は12.5 mgの活性カプセルに加えプラセボカプセルを朝と晩にそれぞれ受け取り、プラセボ部門は朝と晩にそれぞれ2個のプラセボカプセルを受け取った。4から7日目、活性部門は1個の25 mg活性カプセルに加えプラセボカプセルを朝と晩に受け取り、プラセボ部門は朝と晩にそれぞれ2個のプラセボカプセルを受け取った。
【0091】
投与量上昇段階の2週目(すなわち8から14日目)の間、全ての部門の患者はより大きい50 mgサイズのカプセルのみを受け取った。プラセボ患者は、彼らが医薬を受け取るたびに2個の大きいプラセボカプセルを受け取った。100 mg/日および200 mg両方の活性患者は、1個のプラセボ、および活性50 mgカプセルを朝と晩に受け取った。
【0092】
投与量上昇段階の3週目、プラセボ患者は、続けて朝と晩に2個の大きいプラセボカプセルを受け取った。100 mg患者は続けて1個の50 mg活性および1個の50 mgプラセボカプセルを朝と晩に受け取った。この時点で、200 mg患者は、2個の50 mg活性カプセルを朝と晩に受け取りはじめた。
【0093】
投与量上昇フローチャートを図6に示す。試験の時系列は図7に与えられる。
【0094】
患者は、自己報告痛覚データならびに試験評価の計画に記載される追加の紙上評価を記録する専用電子日記を完成させることが求まられた。
【0095】
有害事象、健康診断、併用薬、バイタルサイン、心電図(ECG)、および臨床研究データが、試験評価の計画に記載されたように収集された。
【0096】
評価
安全性
有害事象の頻度および重篤度、バイタルサインの変化、健康診断の結果、ECG、および試験期間の間収集された臨床研究データを解析することにより、ミルナシプランの安全性を評価した。
【0097】
有効性
電子日記を毎日完成させることに加えて、以下の評価が取得された:
(i) 第一有効性評価:訪問Tx3, Tx7, Tx11およびTx15/ETにおける、患者に投与される患者全体の変化の印象(PGIC);訪問BL2/Tx0, Tx3, Tx7, Tx11およびTx15/ETにおける、患者に投与されるSF-36 (SF-36 PCS)の物理的構成要素の概観;
(ii) 第二有効性評価:週平均PED朝の痛み想起スコアの時間加重平均(AUC);訪問Tx3から Tx15における、患者に投与されるPGICおよびSF-36 PCS;
(iii) 付加的有効性測定値:線維筋痛症候群効果アンケート(Fibromyalgia Impact Questionnaire、FIQ)総スコアおよび身体機能、ベックうつ一覧(Beck Depression Inventory、BDI)、MOS睡眠指数尺度(MOS-Sleep Index Scale)、アリゾナ性体験尺度(Arizona Sexual Experiences Scale、ASEX)、患者の痛覚24時間および7日間想起VAS(Patient pain 24 hour and 7 day recall VAS)、SF-36個人領域(SF-36 individual domains)、患者の全体疾患状態(Patient Global Disease Status)、患者の全体治療便益(Patient Global Therapeutic Benefit)、多能力自己報告アンケート(Multiple Ability Self-report Questionnaire (MASQ、認識機能))、多次元健康評価アンケート(Multidimensional Health Assessment Questionnaire、MDHAQ)、多次元疲労目録(Multidimensional Fatigue Inventory, MFI)、および現在の痛覚(朝、無作為に毎日、および晩の報告)を含む毎日の評価;過去1週間の全体の痛覚(週報)、前の週の全体の疲労(週報)、および患者が自分自身の面倒をみるようにさせ続けた痛みの程度(週報)。
【0098】
この試験の第一有効性評価は、訪問Tx15で評定される3つの関心領域により定義される複合応答者状態であった。測定される領域は、
1)(毎日の痛み想起スコアとして朝電子日記により測定される)痛み;
2)(PGIC, 1-7評定により測定される)患者全体
3)(SF-36 PCSにより測定される)身体機能。
【0099】
線維筋痛症候群の痛みを治療する際の目安のための第一有効性パラメーターは、訪問PEDにおいて記録されるような朝の痛み想起、およびTx15でPGICにおいて記録されるような患者全体にもとづく複合応答者状態であった。
【0100】
FMSを治療する際の目安のための第一有効性パラメーターは、上で使用される線維筋痛症候群の痛みを治療する際の目安のための第一有効性パラメーターに加えて訪問Tx15でSF-36 PCSにより測定される身体機能の付加的領域における、痛みおよび患者全体の2領域にもとづく複合応答者状態であった。
【0101】
第二有効性パラメーターは、4から15週の間週平均PED朝の痛み想起スコアの時間加重平均(AUC)、ならびに訪問Tx3からTx15におけるPGICおよびSF-36 PCSであった。
【0102】
応答解析のための身体機能領域は、SF-36の物理的構成要素概観(Physical Component Summary of SF-36、SF-36 PCS)により測定された。SF-36は簡潔な、よく確立された、健康状態、機能状態、および生活の質を評価するための自己投与患者アンケートである。SF-36により、健康状態の8つの領域が測定される:身体機能、身体問題による役割制限、身体の痛み、一般的な健康認識、エネルギー/バイタリティ、社会機能、感情問題による役割制限、およびメンタルヘルス。SF-36スコアおよび心理的成分概要(mental component summary、MCS)を、種々の個人評定を組み合わせ、加重することにより計算することができる。PCSおよびMCSスコアは、米国一般健康集団において、平均=50、標準偏差=10を有するよう標準化されている(例えば、Ware, J., M. Kosinski, and J. Dewey, How to Score Version 2 of the SF-36 Health Survey (Standard & Acute Forms). 3rd ed. 2000, Lincoln, RI: QualityMetricを参照)。
【0103】
結果
患者が訪問Tx15に達し、以下の基準を満たしたならば、その患者を線維筋痛症候群の痛みの治療に対する応答者に分類した:
‐基準値から30%以上痛みが軽減;
‐PGICが「よくまたは非常によく改善した」と評価される(すなわち、評価項目において1-7評定の1または2のスコア)。
【0104】
患者が線維筋痛症候群の痛みの治療に対する応答者基準、および(訪問Tx15において)以下の付加的基準を満たしたならば、その患者をFMSの治療に対する応答者に分類した:
‐統計解析計画(Statistical Analysis Plan)において定義される、最小の臨床上重要な差異に少なくとも同等な量だけ、基準値よりもSF-36 PCSスコアが改善すること。
【0105】
100mg/日ミルナシプラン、200 mg/日ミルナシプラン、またはプラセボが投与された際に「エネルギーの喪失」のBDI (OC)スコアが変化した患者のパーセンテージを図8に示す。100mg/日ミルナシプラン、200mg/日ミルナシプラン、またはプラセボが投与された際に「倦怠感または疲労」のBDI (OC)スコアが変化した患者のパーセンテージを図9に示す。
【0106】
表5は、3ヶ月治療期間の間の訪問によるMFI総スコアにおける基準値からの変化、包括解析集団を示す。
【0107】
【表5】

【0108】
本発明は参照により本発明の代表的な実施形態を表現し、描写されている。そのような参照は本発明を限定することを意味するのではなく、そのような如何なる限定も暗示していない。本発明は、この開示の利益を有する関係のある分野において通常の知識を有するものが思いつくように、形態および機能において少なからぬ修正、変更をなされたものおよび同等なものに対して可能である。本発明の表現されたおよび描写された実施形態は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を網羅しているのではない。したがって、本発明は付随する請求項の精神と範囲によってのみ、限定されるように意図されており、全ての点で同等なものであると完全に認められる。本明細書に引用されている全ての引例は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維筋痛症候群(FMS)に関わる疲労症状の治療を必要とする患者に、1日あたり約125 mgより多いミルナシプランを投与することを含む、線維筋痛症候群(FMS)に関わる疲労症状を治療する方法。
【請求項2】
前記疲労がFMSの第一症状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ミルナシプランを1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ミルナシプランを分割した投与量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ミルナシプランを少なくとも3ヶ月間投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ミルナシプランを少なくとも6ヶ月間投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
FMSに関わる疲労を治療するための第2の活性化合物を併用投与することを含み、第2の活性化合物が抗うつ剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、食欲減退薬、興奮剤、抗てんかん薬、βブロッカー、および鎮静剤/睡眠薬からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記FMSに関わる疲労を治療するための第2の活性化合物が、ガバペンチン、プレガバリン、プラミペキソール、l-DOPA、アンフェタミン、チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環系抗うつ剤、コデイン、カルバマゼピン、シブトラミン、バリウム、トラゾドン、アテノロール、プロプラノロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
1日当たり約125 mgと1日当たり400 mgとの間のミルナシプランを患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1日当たり約150 mgと1日当たり350 mgとの間のミルナシプランを患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1日当たり約200 mgと1日当たり300 mgとの間のミルナシプランを患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1日当たり約200mgのミルナシプランを患者に投与する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−500379(P2010−500379A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523991(P2009−523991)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/075555
【国際公開番号】WO2008/019388
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508093344)サイプレス・バイオサイエンス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】