締結装置及び洋風水洗式便器
【課題】洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができる締結装置を提供する。
【解決手段】締結装置1は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなる雄ねじ10と、ねじ部13に螺合された雌ねじ20と、円筒部12に挿通され、締結時に頭部11を上方から回転させても回転しない回転不能部としてのワッシャ30と、ワッシャ30と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュ40と、長さ調整用ブッシュ40により上方への移動が規制されるとともに長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部51が形成され、かつ雌ねじ20と相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュ50とを備えている。
【解決手段】締結装置1は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなる雄ねじ10と、ねじ部13に螺合された雌ねじ20と、円筒部12に挿通され、締結時に頭部11を上方から回転させても回転しない回転不能部としてのワッシャ30と、ワッシャ30と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュ40と、長さ調整用ブッシュ40により上方への移動が規制されるとともに長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部51が形成され、かつ雌ねじ20と相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュ50とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は締結装置及び洋風水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の締結装置が開示されている。この締結装置は、頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、ねじ部に螺合された雌ねじと、円筒部に挿通される回転不能部と、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されたゴム製の固定用ブッシュとを備えている。
【0003】
回転不能部は、固定用ブッシュの一端側に一体成形されるフランジ状のものであり、固定用ブッシュに対して相対回転不能となっている。また、回転不能部における頭部側の面であるフランジ面には、締結時に頭部を上方から回転させても回転しないように凹凸加工が施されている。雌ねじは、固定用ブッシュの他端側に埋設されており、固定用ブッシュに対して相対回転不能となっている。
【0004】
このような構成である従来の締結装置は、例えば、洋風便器本体と便座装置とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する。
【0005】
具体的には、便座装置の底壁を雄ねじの頭部と回転不能部のフランジ面とで挟んだ状態とした上で、雄ねじの円筒部及びねじ部と、雌ねじと、固定用ブッシュとを洋風便器本体の便座取付穴に挿入する。ここで、ねじ部や固定用ブッシュをあらかじめ適当な長さのものに選定しておくことにより、固定用ブッシュの拡径部が便座取付穴の反対側から適度に飛び出した状態とする。
【0006】
そして、雄ねじの頭部を回転させると、ねじ部に螺合する雌ねじは、回転不能部及び固定用ブッシュにより回転が規制され、ねじ部に対して相対回転して、ねじ部の頭部側に移動する。その結果、固定用ブッシュの軸長が短縮され、拡径部が圧縮変形により拡大して便座取付穴の反対側に係合する。
【0007】
こうして、この締結装置は、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に上方から固定することが可能となっている。
【0008】
【特許文献1】実開昭62−21996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の締結装置では、深さが異なる各種の便座取付穴等の取付穴に1種類のもので対応しようとすると、取付穴の深さが深過ぎる場合には、拡径部が取付穴の反対側に飛び出さない状態となり、拡径部が取付穴の中で拡径するだけで、取付穴の反対側には引っ掛からない。
【0010】
他方、取付穴の深さが浅過ぎる場合には、拡径部が取付穴の反対側から飛び出し過ぎる状態となり、拡径部が取付穴の反対側からさらに離れた位置で拡径して、取付穴の反対側との間に隙間が生じてしまう。
【0011】
このため、従来の締結装置では、取付穴の深さに適した長さのものを選定して使用しなければ、確実な固定力を発揮することができなかった。
【0012】
このように確実な固定力が発揮できない締結装置を洋風水洗式便器に用いた場合、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加されると、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合が生じるおそれがあった。
【0013】
以上のことから、従来の締結装置では、長さの異なる多数の種類のものを用意しなければならず、製品コストの低廉化が難しかった。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができる締結装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の締結装置は、頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、
該ねじ部に螺合された雌ねじと、
該円筒部に挿通され、締結時に該頭部を上方から回転させても回転しない回転不能部と、
該回転不能部と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュと、
該長さ調整用ブッシュにより上方への移動が規制されるとともに該長さ調整用ブッシュと相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され、かつ該雌ねじと相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュとを備えていることを特徴とする。
【0016】
このような構成である本発明の締結装置は、例えば、洋風便器本体と便座装置とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する。
【0017】
具体的には、雄ねじの頭部が便座装置を上から押さえる状態として、回転不能部が便座装置又は洋風便器本体に当接した状態とした上で、雄ねじの円筒部及びねじ部と、雌ねじと、長さ調整用ブッシュと、固定用ブッシュとを洋風便器本体の便座取付穴に挿入する。ここで、ねじ部はあらかじめ充分に長いものとし、適当な長さの長さ調整用ブッシュを回転不能部と固定用ブッシュとの間に介在させることにより、固定用ブッシュの拡径部が便座取付穴の反対側から適度に飛び出した状態となる。この際、長さ調整用ブッシュは、例えば、複数個を直列にして適当な長さとしたり、長いものを適当な長さに切断して使用する。
【0018】
そして、雄ねじの頭部を回転させると、ねじ部に螺合する雌ねじは、回転不能部、長さ調整用ブッシュ及び固定用ブッシュにより回転が規制され、ねじ部に対して相対回転して、ねじ部の頭部側に移動する。その結果、固定用ブッシュの軸長が短縮され、拡径部が圧縮変形により拡大して便座取付穴の反対側に係合する。
【0019】
こうして、この締結装置は、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に上方から確実に固定することが可能となっている。
【0020】
このように、本発明の締結装置は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくても、長さ調整用ブッシュの長さを適当に調整するだけで、拡径部が便座取付穴等の取付穴の反対側から適度に飛び出した状態とすることができる。このため、この締結装置は、拡径部が取付穴の反対側に引っ掛からないという不具合を防止できる。また、この締結装置は、拡径部が取付穴の反対側との間に隙間が生じてしまうという不具合も防止できる。
【0021】
したがって、本発明の締結装置は、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができる。
【0022】
そして、このように確実な固定力を発揮することができる締結装置を洋風水洗式便器に用いることにより、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加される場合であっても、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することができる。
【0023】
本発明において、回転不能部、長さ調整用ブッシュ及び固定用ブッシュは、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのようなものでもよい。例えば、回転不能部は、長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャやブッシュであることができる。この場合、回転不能部と長さ調整用ブッシュとの間に互いに噛み合って相対回転が不能となる凹凸等が形成される。また、回転不能部と長さ調整用ブッシュとは、一体となっていてもよい。この場合には、互いに噛み合って相対回転が不能となる凹凸等は不要である。さらに、長さ調整用ブッシュは、例えば、複数個を直列にして長くすることが可能なものであったり、長いものを適当な長さに切断して使用可能なものであってもよい。
【0024】
本発明の締結装置において、回転不能部は、長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャであり得る。この場合、回転不能部は単純な円盤形状や平板形状であり、長さ調整用ブッシュも単純な円筒形状とすることができるので、製造コストの低廉化が可能となる。
【0025】
本発明の締結装置において、ワッシャの下面には自己の回転を防止する回転防止手段が形成され得る。この場合、回転不能部としてのワッシャを便座装置や洋風便器本体等の締結対象に当接することにより、回転不能部を容易に回転不能な状態とすることができる。
【0026】
回転防止手段としては、例えば、凸凹の列や突起等、ワッシャの回転を防止できるものであればどのようなものでもかまわない。
【0027】
本発明の締結装置において、雌ねじと固定用ブッシュとは一体であってもよく、例えば、固定用ブッシュに雌ねじがインサート成形されていてもよい。また、本発明の締結装置において、雌ねじと固定用ブッシュとを別体とすることもできる。この場合、雌ねじが分離された固定用ブッシュを長さ調整用ブッシュとしても使用することができる。そして、この締結装置は、回転不能部と、雌ねじが固定された固定用ブッシュとの間にさらに少なくとも1つ以上の雌ねじが分離された固定用ブッシュを介在させることにより、本発明の作用効果を奏することができる。そして、この場合には、雌ねじが分離された固定用ブッシュが長さ調整用ブッシュも兼ねることにより、製造コストの一層の低廉化が可能となる。
【0028】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとが別体である場合、長さ調整用ブッシュは複数個を直列にして長くすることができる。
【0029】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとは、一体であり、かつ分離可能に構成され得る。この場合、回転不能部と相対回転不能なように、長さ調整用ブッシュの余分な部分を分離することにより、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとを適当な長さにして使用することができる。
【0030】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され得る。この場合、締結時に長さ調整用ブッシュも取付穴内で拡径するので、より確実な固定力を発揮することができる。
【0031】
本発明の洋風水洗式便器は、便座取付穴をもつ洋風便器本体と、該洋風便器本体上に載置され、該便座取付穴に本発明の締結装置を用いて固定される便座装置とを備えていることを特徴とする。
【0032】
この洋風水洗式便器は、上述のように確実な固定力を発揮する本発明の締結装置を用いることによって、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加される場合であっても、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0034】
図1に示すように、実施例1の締結装置1は、雄ねじ10と、雌ねじ20と、回転不能部としてのワッシャ30と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50とを備えている。
【0035】
雄ねじ10は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなり、雌ねじ20は、後述する固定用ブッシュ50の下面側に固定された状態で、ねじ部13に螺合されている。ワッシャ30は、図2及び図3に示すように、中央に雄ねじ10の円筒部12が挿通される穴31が貫設された矩形平板状の樹脂成形品である。ワッシャ30の下面側には、穴31を中心に位置させて下方に突出する四角柱状のワッシャ側凸部32が凸設されている。ワッシャ側凸部32の4つの側面の周辺には、回転防止手段としての畝状突起部34が下方に突出するように配設されている。
【0036】
このような形状であるワッシャ30は、図1に示すように、雄ねじ10の円筒部12に挿通されて、雄ねじ10の頭部11の下方に位置する。そして、畝状突起部34が締結対象に当接することによりワッシャ30が締結対象に対して回転不能とされ、その結果、締結時に雄ねじ10の頭部11を上方から回転させても、ワッシャ30が回転しないようになっている。
【0037】
長さ調整用ブッシュ40は、図4〜図6に示すように、軸方向に延びる筒状に形成された樹脂成形品である。長さ調整用ブッシュ40の上面側には、図4及び図5に示すように、下方に突出する四角柱状の長さ調整用ブッシュ側凹部43が凹設されている。長さ調整用ブッシュ側凹部43とワッシャ側凸部32とは、互いに嵌まり合う形状とされており、双方が嵌まり合うことによって、長さ調整用ブッシュ40がワッシャ30と相対回転不能とされる。他方、長さ調整用ブッシュ40の下面側には、図4及び図6に示すように、下方に突出する四角柱状の長さ調整用ブッシュ側凸部42が凸設されている。長さ調整用ブッシュ側凸部42の外形は、ワッシャ側凸部32の外形と同一形状とされている。
【0038】
このような形状である長さ調整用ブッシュ40は、図1に示すように、少なくとも1つが雄ねじ10のねじ部13及び円筒部12に挿通されて、ワッシャ30の下方に位置する。そして、複数の長さ調整用ブッシュ40が上下に並ぶように挿通される場合には、上側に位置する長さ調整用ブッシュ40の下面側の長さ調整用ブッシュ側凸部42と、下側に位置する長さ調整用ブッシュ40の上面側の長さ調整用ブッシュ側凹部43とが互いに嵌まり合うことによって、上下に並ぶ複数の長さ調整用ブッシュ40が互いに相対回転不能とされる。
【0039】
固定用ブッシュ50は、図7に示すように、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する提灯形状の拡径部51が形成されたゴム製のものである。固定用ブッシュ50の上面側には、図5に示す長さ調整用ブッシュ側凹部43と同一形状であり、下方に突出する四角柱状の固定用ブッシュ側凹部53が凹設されている。他方、固定用ブッシュ50の下面側には、雌ねじ20がインサート成形により固定されており、固定用ブッシュ50が雌ねじ20と相対回転不能とされている。
【0040】
このような形状である固定用ブッシュ50は、図1に示すように、雄ねじ10のねじ部13に挿通されて、長さ調整用ブッシュ40の下方に位置し、長さ調整用ブッシュ40によって、上方への移動が規制される。そして、上側に位置する長さ調整用ブッシュ40の下面側の長さ調整用ブッシュ側凸部42と、下側に位置する固定用ブッシュ50の上面側の固定用ブッシュ側凹部53とが互いに嵌まり合うことによって、固定用ブッシュ50が長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能とされる。これにより、ワッシャ30と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50と、雌ねじ20とは、互いに相対回転不能とされる。
【0041】
このような構成である実施例1の締結装置1は、例えば、図8に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0042】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50とを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させるともに、畝状突起部34を底壁9aに形成された凹部9bに嵌め合せて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0043】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものをあらかじめ用意しておき、長さ調整用ブッシュ40の数をその場で適当に選択することにより、固定用ブッシュ50の拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0044】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させると、ねじ部13に螺合する雌ねじ20は、ワッシャ30、長さ調整用ブッシュ40、及び固定用ブッシュ50が互いに回転不能とされていることにより回転が規制され、ねじ部13に対して相対回転して、ねじ部13の頭部11側に移動する。その結果、図9に示すように、固定用ブッシュ50の軸長が短縮され、提灯形状の拡径部51が圧縮変形により拡大して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置1は、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0045】
また、締結装置1は、洋風便器本体8の便座取付穴7が浅い場合に、図10に示すように、長さ調整用ブッシュ40を省くことにより、固定用ブッシュ50の拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0046】
この場合、長さ調整用ブッシュ40の長さ調整用ブッシュ側凹部43と固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53とが同一形状であることから、ワッシャ30のワッシャ側凸部32と、固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53とが互いに嵌まり合うことによって、固定用ブッシュ50がワッシャ30と相対回転不能とされる。これにより、ワッシャ30と、固定用ブッシュ50と、雌ねじ20とは、互いに相対回転不能とされる。このため、この締結装置1は、図11に示すように、雄ねじ10の頭部11の回転によって、拡径部51が拡大して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置1は、便座取付穴7が浅い場合でも、確実な固定力を発揮することができる。
【0047】
ここで、実施例1の締結装置1は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなる雄ねじ10と、ねじ部13に螺合された雌ねじ20と、円筒部12に挿通され、締結時に頭部11を上方から回転させても回転しない回転不能部としてのワッシャ30と、ワッシャ30と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュ40と、長さ調整用ブッシュ40により上方への移動が規制されるとともに長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部51が形成され、かつ雌ねじ20と相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュ50とを備えている。
【0048】
このため、この締結装置1は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくても、長さ調整用ブッシュ40の数を選択して、長さを適当に調整するだけで、拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できている。このため、この締結装置1は、拡径部51が便座取付穴7の反対側に引っ掛からないという不具合を防止できている。また、この締結装置1は、拡径部51が便座取付穴7の反対側との間に隙間が生じてしまうという不具合も防止できている。
【0049】
したがって、実施例1の締結装置1は、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができている。
【0050】
また、この締結装置1は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくてもよいので、製造コストの低廉化が可能となっている。
【0051】
そして、このように確実な固定力を発揮することができる締結装置1を洋風水洗式便器に用いることにより、使用者の体重が不適切に便座装置9に上方から付加される場合であっても、便座装置9が洋風便器本体8からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することが可能となっている。
【0052】
また、この締結装置1において、回転不能部は、長さ調整用ブッシュ40とは別体のワッシャ30である。そして、ワッシャ30は単純な平板形状であり、長さ調整用ブッシュ40も単純な円筒形状であることから、この締結装置1は、製造コストをより低廉化することが可能となっている。
【0053】
さらに、この締結装置1において、ワッシャ30の下面には自己の回転を防止する回転防止手段としての畝状突起部34が形成されている。このため、この締結装置1は、ワッシャ30を便座装置9に当接することにより、ワッシャ30をを容易に回転不能な状態とすることができている。
【0054】
また、この締結装置1において、長さ調整用ブッシュ40と固定用ブッシュ50とが別体であることから、長さ調整用ブッシュ40は、複数個を直列にして長くすることができており、長さ調整が容易になっている。
【実施例2】
【0055】
図12に示すように、実施例2の締結装置2は、固定用ブッシュ50aが長さ調整用ブッシュも兼ねるとともに、雌ねじ20aと固定用ブッシュ50aとが別体とされている点が実施例1の締結装置1とは異なる。その他の構成については、実施例1の締結装置1と同様であるので、説明は省く。
【0056】
実施例1の固定用ブッシュ50では下面側に雌ねじ20がインサート成形されていたに対して、固定用ブッシュ50aでは、図13に示すように、雌ねじ20aが別体とされ、下面側に新たに固定用ブッシュ側凸部52aが凸設されている。固定用ブッシュ側凸部52aは、ワッシャ側凸部32の外形と同一形状であり、下方に突出する四角柱状とされている。その他の構成についは、実施例1の固定用ブッシュ50と同様であるので、説明は省く。
【0057】
このような形状である固定用ブッシュ50aは、図12に示すように、少なくとも1つが雄ねじ10のねじ部13及び円筒部12に挿通されて、ワッシャ30の下方に位置する。そして、複数の固定用ブッシュ50aが上下に並ぶように挿通される場合には、上側に位置する固定用ブッシュ50aの下面側の固定用ブッシュ側凸部52aと、下側に位置する固定用ブッシュ50aの上面側の固定用ブッシュ側凹部53aとが互いに嵌まり合うことによって、上下に並ぶ複数の固定用ブッシュ50aが互いに相対回転不能とされる。
【0058】
雌ねじ20aは、図14に示すように、樹脂製の雌ねじ保持部材25a内にインサート成形されており、雌ねじ保持部材25aの上面側には、固定用ブッシュ側凹部53と同一形状であり、下方に突出する四角柱状の雌ねじ側凹部23aが凹設されている。
【0059】
このような形状である雌ねじ20aは、図12に示すように、雄ねじ10のねじ部13に挿通されて、固定用ブッシュ50aの下方に位置する。そして、固定用ブッシュ50aの下面側の固定用ブッシュ側凸部52aと、雌ねじ保持部材25aの上面側の雌ねじ側凹部23aとが互いに嵌まり合うことによって、雌ねじ20aが固定用ブッシュ50aと相対回転不能とされる。
【0060】
このような構成である実施例2の締結装置2も、図12に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0061】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、複数の固定用ブッシュ50aとを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0062】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものをあらかじめ用意しておき、固定用ブッシュ50aの数をその場で適当に選択することにより、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0063】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させると、ねじ部13に螺合する雌ねじ20aは、ワッシャ30、複数の固定用ブッシュ50a及び雌ねじ保持部材25aが互いに回転不能とされていることにより回転が規制され、ねじ部13に対して相対回転して、ねじ部13の頭部11側に移動する。その結果、図15に示すように、各固定用ブッシュ50aの軸長が短縮され、提灯形状の拡径部51が圧縮変形により拡大する。この際、便座取付穴7の中に位置する固定用ブッシュ50aは、便座取付穴7に密着した状態となると、それ以上の拡径が不能となり、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aの上方への移動を規制する。また、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aは、大きく拡径して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置2も、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0064】
また、締結装置2は、洋風便器本体8の便座取付穴7が浅い場合に、図16に示すように、固定用ブッシュ50aを1つとすることにより、固定用ブッシュ50aの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。こうして、この締結装置2は、便座取付穴7が浅い場合でも、確実な固定力を発揮することができる。
【0065】
したがって、実施例2の締結装置2も、実施例1の締結装置1と同様の作用効果を奏することができている。
【0066】
また、この締結装置2において、雌ねじ20aと固定用ブッシュ50aとは別体である。このため、この締結装置2は、雌ねじ20aが分離された固定用ブッシュ50aを長さ調整用ブッシュとしても使用することができており、製造コストの一層の低廉化が可能となっている。
【0067】
さらに、この締結装置2において、図12に示すように、便座取付穴7の中に位置する固定用ブッシュ50aは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されている長さ調整用ブッシュに相当している。このため、締結時に長さ調整用ブッシュを兼ねる固定用ブッシュ50aも便座取付穴7内で拡径するので、この締結装置2は、より確実な固定力を発揮することができている。
【実施例3】
【0068】
図17に示すように、実施例3の締結装置3は、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュ50aとが一体であり、分離可能に構成された固定用ブッシュ50bを採用する点が実施例1の締結装置1とは異なる。その他の構成については、実施例1の締結装置1と同様であるので、説明は省く。
【0069】
固定用ブッシュ50bは、図18(a)に示すように、下方に長く突出する四角柱状との固定用ブッシュ側凹部53bが凹設されたものであり、固定用ブッシュ側凹部53bの横断面は、実施例1の固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53の横断面と同一とされている。このため、図18(b)に示すように、固定用ブッシュ側凹部53bを任意の位置で切断して短くすることが可能であり、短くした後の固定用ブッシュ側凹部53bもワッシャ30のワッシャ側凸部32と互いに嵌まり合うことが可能となっている。なお、固定用ブッシュ側凹部53bは、捩れない程度に剛性の高い材料からなることが好ましく、例えば、拡径部51を軟質ゴム製とし、固定用ブッシュ側凹部53bを硬質ゴム又は樹脂製として、複合成形等により一体化することが好ましい。その他の構成については、実施例1の固定用ブッシュ50と同様であるので、説明は省く。
【0070】
このような構成である実施例3の締結装置3も、図17に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0071】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、固定用ブッシュ50aとを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0072】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものにあらかじめ用意しておき、固定用ブッシュ側凹部53bの長さをその場で適当に短く切断することにより、固定用ブッシュ50bの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0073】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させることにより、拡径部51が拡径して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置3も、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0074】
したがって、実施例3の締結装置3も、実施例1、2の締結装置1、2と同様の作用効果を奏することができている。
【0075】
また、この締結装置3は、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとが一体であり、分離可能に構成された固定用ブッシュ50aを採用していることから、異なる深さの取付穴に対して、より細かく、かつ容易に長さ調整をすることが可能となっている。
【0076】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0077】
例えば、実施例1〜3の締結装置1〜3は、便座装置9を直接、洋風便器本体8の便座取付穴7に固定しているが、便座装置9と洋風便器本体8との間にプレートを介在させてもよい。この場合、実施例1〜3の締結装置1〜3は、プレートを直接、洋風便器本体8の便座取付穴7に固定し、便座装置9は別途、プレートに固定される。具体的には、図8〜12、15〜17に図示する便座装置9の底壁9aがプレートに置き換わり、このプレートの上に、さらに、便座装置9が固定されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は締結装置及び洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1の締結装置の断面図である。
【図2】実施例1の締結装置に係り、ワッシャの断面図である。
【図3】実施例1の締結装置に係り、ワッシャを図2のA方向から見た図である。
【図4】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュの断面図である。
【図5】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュを図4のB方向から見た図図である。
【図6】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュを図4のC方向から見た図図である。
【図7】実施例1の締結装置に係り、固定用ブッシュの断面図である。
【図8】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図9】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図10】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図11】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図12】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図13】実施例2の締結装置に係り、固定用ブッシュの断面図である。
【図14】実施例2の締結装置に係り、雌ねじおよび雌ねじ保持部材の断面図である。
【図15】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図16】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図17】実施例3の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図18】実施例3の締結装置に係り、(a)は固定用ブッシュの長さ調整前の断面図であり、(b)は固定用ブッシュの長さ調整後の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3…締結装置
7…便座取付穴
8…洋風便器本体
9…便座装置
10…雄ねじ
11…頭部
12…円筒部
13…ねじ部
20、20a…雌ねじ
23a…雌ねじ側凹部
30…回転不能部(ワッシャ)
32…ワッシャ側凸部
34…回転防止手段(畝状突起部)
40…長さ調整用ブッシュ
42…長さ調整用ブッシュ側凸部
43…長さ調整用ブッシュ側凹部
51…拡径部
50、50a、50b…固定用ブッシュ
52a…固定用ブッシュ側凸部
53、53b…固定用ブッシュ側凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は締結装置及び洋風水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の締結装置が開示されている。この締結装置は、頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、ねじ部に螺合された雌ねじと、円筒部に挿通される回転不能部と、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されたゴム製の固定用ブッシュとを備えている。
【0003】
回転不能部は、固定用ブッシュの一端側に一体成形されるフランジ状のものであり、固定用ブッシュに対して相対回転不能となっている。また、回転不能部における頭部側の面であるフランジ面には、締結時に頭部を上方から回転させても回転しないように凹凸加工が施されている。雌ねじは、固定用ブッシュの他端側に埋設されており、固定用ブッシュに対して相対回転不能となっている。
【0004】
このような構成である従来の締結装置は、例えば、洋風便器本体と便座装置とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する。
【0005】
具体的には、便座装置の底壁を雄ねじの頭部と回転不能部のフランジ面とで挟んだ状態とした上で、雄ねじの円筒部及びねじ部と、雌ねじと、固定用ブッシュとを洋風便器本体の便座取付穴に挿入する。ここで、ねじ部や固定用ブッシュをあらかじめ適当な長さのものに選定しておくことにより、固定用ブッシュの拡径部が便座取付穴の反対側から適度に飛び出した状態とする。
【0006】
そして、雄ねじの頭部を回転させると、ねじ部に螺合する雌ねじは、回転不能部及び固定用ブッシュにより回転が規制され、ねじ部に対して相対回転して、ねじ部の頭部側に移動する。その結果、固定用ブッシュの軸長が短縮され、拡径部が圧縮変形により拡大して便座取付穴の反対側に係合する。
【0007】
こうして、この締結装置は、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に上方から固定することが可能となっている。
【0008】
【特許文献1】実開昭62−21996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の締結装置では、深さが異なる各種の便座取付穴等の取付穴に1種類のもので対応しようとすると、取付穴の深さが深過ぎる場合には、拡径部が取付穴の反対側に飛び出さない状態となり、拡径部が取付穴の中で拡径するだけで、取付穴の反対側には引っ掛からない。
【0010】
他方、取付穴の深さが浅過ぎる場合には、拡径部が取付穴の反対側から飛び出し過ぎる状態となり、拡径部が取付穴の反対側からさらに離れた位置で拡径して、取付穴の反対側との間に隙間が生じてしまう。
【0011】
このため、従来の締結装置では、取付穴の深さに適した長さのものを選定して使用しなければ、確実な固定力を発揮することができなかった。
【0012】
このように確実な固定力が発揮できない締結装置を洋風水洗式便器に用いた場合、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加されると、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合が生じるおそれがあった。
【0013】
以上のことから、従来の締結装置では、長さの異なる多数の種類のものを用意しなければならず、製品コストの低廉化が難しかった。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができる締結装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の締結装置は、頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、
該ねじ部に螺合された雌ねじと、
該円筒部に挿通され、締結時に該頭部を上方から回転させても回転しない回転不能部と、
該回転不能部と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュと、
該長さ調整用ブッシュにより上方への移動が規制されるとともに該長さ調整用ブッシュと相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され、かつ該雌ねじと相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュとを備えていることを特徴とする。
【0016】
このような構成である本発明の締結装置は、例えば、洋風便器本体と便座装置とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する。
【0017】
具体的には、雄ねじの頭部が便座装置を上から押さえる状態として、回転不能部が便座装置又は洋風便器本体に当接した状態とした上で、雄ねじの円筒部及びねじ部と、雌ねじと、長さ調整用ブッシュと、固定用ブッシュとを洋風便器本体の便座取付穴に挿入する。ここで、ねじ部はあらかじめ充分に長いものとし、適当な長さの長さ調整用ブッシュを回転不能部と固定用ブッシュとの間に介在させることにより、固定用ブッシュの拡径部が便座取付穴の反対側から適度に飛び出した状態となる。この際、長さ調整用ブッシュは、例えば、複数個を直列にして適当な長さとしたり、長いものを適当な長さに切断して使用する。
【0018】
そして、雄ねじの頭部を回転させると、ねじ部に螺合する雌ねじは、回転不能部、長さ調整用ブッシュ及び固定用ブッシュにより回転が規制され、ねじ部に対して相対回転して、ねじ部の頭部側に移動する。その結果、固定用ブッシュの軸長が短縮され、拡径部が圧縮変形により拡大して便座取付穴の反対側に係合する。
【0019】
こうして、この締結装置は、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に上方から確実に固定することが可能となっている。
【0020】
このように、本発明の締結装置は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくても、長さ調整用ブッシュの長さを適当に調整するだけで、拡径部が便座取付穴等の取付穴の反対側から適度に飛び出した状態とすることができる。このため、この締結装置は、拡径部が取付穴の反対側に引っ掛からないという不具合を防止できる。また、この締結装置は、拡径部が取付穴の反対側との間に隙間が生じてしまうという不具合も防止できる。
【0021】
したがって、本発明の締結装置は、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができる。
【0022】
そして、このように確実な固定力を発揮することができる締結装置を洋風水洗式便器に用いることにより、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加される場合であっても、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することができる。
【0023】
本発明において、回転不能部、長さ調整用ブッシュ及び固定用ブッシュは、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのようなものでもよい。例えば、回転不能部は、長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャやブッシュであることができる。この場合、回転不能部と長さ調整用ブッシュとの間に互いに噛み合って相対回転が不能となる凹凸等が形成される。また、回転不能部と長さ調整用ブッシュとは、一体となっていてもよい。この場合には、互いに噛み合って相対回転が不能となる凹凸等は不要である。さらに、長さ調整用ブッシュは、例えば、複数個を直列にして長くすることが可能なものであったり、長いものを適当な長さに切断して使用可能なものであってもよい。
【0024】
本発明の締結装置において、回転不能部は、長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャであり得る。この場合、回転不能部は単純な円盤形状や平板形状であり、長さ調整用ブッシュも単純な円筒形状とすることができるので、製造コストの低廉化が可能となる。
【0025】
本発明の締結装置において、ワッシャの下面には自己の回転を防止する回転防止手段が形成され得る。この場合、回転不能部としてのワッシャを便座装置や洋風便器本体等の締結対象に当接することにより、回転不能部を容易に回転不能な状態とすることができる。
【0026】
回転防止手段としては、例えば、凸凹の列や突起等、ワッシャの回転を防止できるものであればどのようなものでもかまわない。
【0027】
本発明の締結装置において、雌ねじと固定用ブッシュとは一体であってもよく、例えば、固定用ブッシュに雌ねじがインサート成形されていてもよい。また、本発明の締結装置において、雌ねじと固定用ブッシュとを別体とすることもできる。この場合、雌ねじが分離された固定用ブッシュを長さ調整用ブッシュとしても使用することができる。そして、この締結装置は、回転不能部と、雌ねじが固定された固定用ブッシュとの間にさらに少なくとも1つ以上の雌ねじが分離された固定用ブッシュを介在させることにより、本発明の作用効果を奏することができる。そして、この場合には、雌ねじが分離された固定用ブッシュが長さ調整用ブッシュも兼ねることにより、製造コストの一層の低廉化が可能となる。
【0028】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとが別体である場合、長さ調整用ブッシュは複数個を直列にして長くすることができる。
【0029】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとは、一体であり、かつ分離可能に構成され得る。この場合、回転不能部と相対回転不能なように、長さ調整用ブッシュの余分な部分を分離することにより、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとを適当な長さにして使用することができる。
【0030】
本発明の締結装置において、長さ調整用ブッシュは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され得る。この場合、締結時に長さ調整用ブッシュも取付穴内で拡径するので、より確実な固定力を発揮することができる。
【0031】
本発明の洋風水洗式便器は、便座取付穴をもつ洋風便器本体と、該洋風便器本体上に載置され、該便座取付穴に本発明の締結装置を用いて固定される便座装置とを備えていることを特徴とする。
【0032】
この洋風水洗式便器は、上述のように確実な固定力を発揮する本発明の締結装置を用いることによって、使用者の体重が不適切に便座装置に上方から付加される場合であっても、便座装置が洋風便器本体からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0034】
図1に示すように、実施例1の締結装置1は、雄ねじ10と、雌ねじ20と、回転不能部としてのワッシャ30と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50とを備えている。
【0035】
雄ねじ10は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなり、雌ねじ20は、後述する固定用ブッシュ50の下面側に固定された状態で、ねじ部13に螺合されている。ワッシャ30は、図2及び図3に示すように、中央に雄ねじ10の円筒部12が挿通される穴31が貫設された矩形平板状の樹脂成形品である。ワッシャ30の下面側には、穴31を中心に位置させて下方に突出する四角柱状のワッシャ側凸部32が凸設されている。ワッシャ側凸部32の4つの側面の周辺には、回転防止手段としての畝状突起部34が下方に突出するように配設されている。
【0036】
このような形状であるワッシャ30は、図1に示すように、雄ねじ10の円筒部12に挿通されて、雄ねじ10の頭部11の下方に位置する。そして、畝状突起部34が締結対象に当接することによりワッシャ30が締結対象に対して回転不能とされ、その結果、締結時に雄ねじ10の頭部11を上方から回転させても、ワッシャ30が回転しないようになっている。
【0037】
長さ調整用ブッシュ40は、図4〜図6に示すように、軸方向に延びる筒状に形成された樹脂成形品である。長さ調整用ブッシュ40の上面側には、図4及び図5に示すように、下方に突出する四角柱状の長さ調整用ブッシュ側凹部43が凹設されている。長さ調整用ブッシュ側凹部43とワッシャ側凸部32とは、互いに嵌まり合う形状とされており、双方が嵌まり合うことによって、長さ調整用ブッシュ40がワッシャ30と相対回転不能とされる。他方、長さ調整用ブッシュ40の下面側には、図4及び図6に示すように、下方に突出する四角柱状の長さ調整用ブッシュ側凸部42が凸設されている。長さ調整用ブッシュ側凸部42の外形は、ワッシャ側凸部32の外形と同一形状とされている。
【0038】
このような形状である長さ調整用ブッシュ40は、図1に示すように、少なくとも1つが雄ねじ10のねじ部13及び円筒部12に挿通されて、ワッシャ30の下方に位置する。そして、複数の長さ調整用ブッシュ40が上下に並ぶように挿通される場合には、上側に位置する長さ調整用ブッシュ40の下面側の長さ調整用ブッシュ側凸部42と、下側に位置する長さ調整用ブッシュ40の上面側の長さ調整用ブッシュ側凹部43とが互いに嵌まり合うことによって、上下に並ぶ複数の長さ調整用ブッシュ40が互いに相対回転不能とされる。
【0039】
固定用ブッシュ50は、図7に示すように、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する提灯形状の拡径部51が形成されたゴム製のものである。固定用ブッシュ50の上面側には、図5に示す長さ調整用ブッシュ側凹部43と同一形状であり、下方に突出する四角柱状の固定用ブッシュ側凹部53が凹設されている。他方、固定用ブッシュ50の下面側には、雌ねじ20がインサート成形により固定されており、固定用ブッシュ50が雌ねじ20と相対回転不能とされている。
【0040】
このような形状である固定用ブッシュ50は、図1に示すように、雄ねじ10のねじ部13に挿通されて、長さ調整用ブッシュ40の下方に位置し、長さ調整用ブッシュ40によって、上方への移動が規制される。そして、上側に位置する長さ調整用ブッシュ40の下面側の長さ調整用ブッシュ側凸部42と、下側に位置する固定用ブッシュ50の上面側の固定用ブッシュ側凹部53とが互いに嵌まり合うことによって、固定用ブッシュ50が長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能とされる。これにより、ワッシャ30と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50と、雌ねじ20とは、互いに相対回転不能とされる。
【0041】
このような構成である実施例1の締結装置1は、例えば、図8に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0042】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、長さ調整用ブッシュ40と、固定用ブッシュ50とを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させるともに、畝状突起部34を底壁9aに形成された凹部9bに嵌め合せて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0043】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものをあらかじめ用意しておき、長さ調整用ブッシュ40の数をその場で適当に選択することにより、固定用ブッシュ50の拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0044】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させると、ねじ部13に螺合する雌ねじ20は、ワッシャ30、長さ調整用ブッシュ40、及び固定用ブッシュ50が互いに回転不能とされていることにより回転が規制され、ねじ部13に対して相対回転して、ねじ部13の頭部11側に移動する。その結果、図9に示すように、固定用ブッシュ50の軸長が短縮され、提灯形状の拡径部51が圧縮変形により拡大して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置1は、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0045】
また、締結装置1は、洋風便器本体8の便座取付穴7が浅い場合に、図10に示すように、長さ調整用ブッシュ40を省くことにより、固定用ブッシュ50の拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0046】
この場合、長さ調整用ブッシュ40の長さ調整用ブッシュ側凹部43と固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53とが同一形状であることから、ワッシャ30のワッシャ側凸部32と、固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53とが互いに嵌まり合うことによって、固定用ブッシュ50がワッシャ30と相対回転不能とされる。これにより、ワッシャ30と、固定用ブッシュ50と、雌ねじ20とは、互いに相対回転不能とされる。このため、この締結装置1は、図11に示すように、雄ねじ10の頭部11の回転によって、拡径部51が拡大して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置1は、便座取付穴7が浅い場合でも、確実な固定力を発揮することができる。
【0047】
ここで、実施例1の締結装置1は、頭部11、円筒部12及びねじ部13からなる雄ねじ10と、ねじ部13に螺合された雌ねじ20と、円筒部12に挿通され、締結時に頭部11を上方から回転させても回転しない回転不能部としてのワッシャ30と、ワッシャ30と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュ40と、長さ調整用ブッシュ40により上方への移動が規制されるとともに長さ調整用ブッシュ40と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部51が形成され、かつ雌ねじ20と相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュ50とを備えている。
【0048】
このため、この締結装置1は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくても、長さ調整用ブッシュ40の数を選択して、長さを適当に調整するだけで、拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できている。このため、この締結装置1は、拡径部51が便座取付穴7の反対側に引っ掛からないという不具合を防止できている。また、この締結装置1は、拡径部51が便座取付穴7の反対側との間に隙間が生じてしまうという不具合も防止できている。
【0049】
したがって、実施例1の締結装置1は、洋風便器本体の便座取付穴等の取付穴の深さが大きく異なるものに対しても適用可能であり、かつ確実な固定力を発揮することができている。
【0050】
また、この締結装置1は、長さの異なる多数の種類のものを用意しなくてもよいので、製造コストの低廉化が可能となっている。
【0051】
そして、このように確実な固定力を発揮することができる締結装置1を洋風水洗式便器に用いることにより、使用者の体重が不適切に便座装置9に上方から付加される場合であっても、便座装置9が洋風便器本体8からずれたり、外れたりしてしまうという不具合を防止することが可能となっている。
【0052】
また、この締結装置1において、回転不能部は、長さ調整用ブッシュ40とは別体のワッシャ30である。そして、ワッシャ30は単純な平板形状であり、長さ調整用ブッシュ40も単純な円筒形状であることから、この締結装置1は、製造コストをより低廉化することが可能となっている。
【0053】
さらに、この締結装置1において、ワッシャ30の下面には自己の回転を防止する回転防止手段としての畝状突起部34が形成されている。このため、この締結装置1は、ワッシャ30を便座装置9に当接することにより、ワッシャ30をを容易に回転不能な状態とすることができている。
【0054】
また、この締結装置1において、長さ調整用ブッシュ40と固定用ブッシュ50とが別体であることから、長さ調整用ブッシュ40は、複数個を直列にして長くすることができており、長さ調整が容易になっている。
【実施例2】
【0055】
図12に示すように、実施例2の締結装置2は、固定用ブッシュ50aが長さ調整用ブッシュも兼ねるとともに、雌ねじ20aと固定用ブッシュ50aとが別体とされている点が実施例1の締結装置1とは異なる。その他の構成については、実施例1の締結装置1と同様であるので、説明は省く。
【0056】
実施例1の固定用ブッシュ50では下面側に雌ねじ20がインサート成形されていたに対して、固定用ブッシュ50aでは、図13に示すように、雌ねじ20aが別体とされ、下面側に新たに固定用ブッシュ側凸部52aが凸設されている。固定用ブッシュ側凸部52aは、ワッシャ側凸部32の外形と同一形状であり、下方に突出する四角柱状とされている。その他の構成についは、実施例1の固定用ブッシュ50と同様であるので、説明は省く。
【0057】
このような形状である固定用ブッシュ50aは、図12に示すように、少なくとも1つが雄ねじ10のねじ部13及び円筒部12に挿通されて、ワッシャ30の下方に位置する。そして、複数の固定用ブッシュ50aが上下に並ぶように挿通される場合には、上側に位置する固定用ブッシュ50aの下面側の固定用ブッシュ側凸部52aと、下側に位置する固定用ブッシュ50aの上面側の固定用ブッシュ側凹部53aとが互いに嵌まり合うことによって、上下に並ぶ複数の固定用ブッシュ50aが互いに相対回転不能とされる。
【0058】
雌ねじ20aは、図14に示すように、樹脂製の雌ねじ保持部材25a内にインサート成形されており、雌ねじ保持部材25aの上面側には、固定用ブッシュ側凹部53と同一形状であり、下方に突出する四角柱状の雌ねじ側凹部23aが凹設されている。
【0059】
このような形状である雌ねじ20aは、図12に示すように、雄ねじ10のねじ部13に挿通されて、固定用ブッシュ50aの下方に位置する。そして、固定用ブッシュ50aの下面側の固定用ブッシュ側凸部52aと、雌ねじ保持部材25aの上面側の雌ねじ側凹部23aとが互いに嵌まり合うことによって、雌ねじ20aが固定用ブッシュ50aと相対回転不能とされる。
【0060】
このような構成である実施例2の締結装置2も、図12に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0061】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、複数の固定用ブッシュ50aとを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0062】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものをあらかじめ用意しておき、固定用ブッシュ50aの数をその場で適当に選択することにより、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0063】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させると、ねじ部13に螺合する雌ねじ20aは、ワッシャ30、複数の固定用ブッシュ50a及び雌ねじ保持部材25aが互いに回転不能とされていることにより回転が規制され、ねじ部13に対して相対回転して、ねじ部13の頭部11側に移動する。その結果、図15に示すように、各固定用ブッシュ50aの軸長が短縮され、提灯形状の拡径部51が圧縮変形により拡大する。この際、便座取付穴7の中に位置する固定用ブッシュ50aは、便座取付穴7に密着した状態となると、それ以上の拡径が不能となり、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aの上方への移動を規制する。また、最も下方に位置する固定用ブッシュ50aは、大きく拡径して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置2も、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0064】
また、締結装置2は、洋風便器本体8の便座取付穴7が浅い場合に、図16に示すように、固定用ブッシュ50aを1つとすることにより、固定用ブッシュ50aの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。こうして、この締結装置2は、便座取付穴7が浅い場合でも、確実な固定力を発揮することができる。
【0065】
したがって、実施例2の締結装置2も、実施例1の締結装置1と同様の作用効果を奏することができている。
【0066】
また、この締結装置2において、雌ねじ20aと固定用ブッシュ50aとは別体である。このため、この締結装置2は、雌ねじ20aが分離された固定用ブッシュ50aを長さ調整用ブッシュとしても使用することができており、製造コストの一層の低廉化が可能となっている。
【0067】
さらに、この締結装置2において、図12に示すように、便座取付穴7の中に位置する固定用ブッシュ50aは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されている長さ調整用ブッシュに相当している。このため、締結時に長さ調整用ブッシュを兼ねる固定用ブッシュ50aも便座取付穴7内で拡径するので、この締結装置2は、より確実な固定力を発揮することができている。
【実施例3】
【0068】
図17に示すように、実施例3の締結装置3は、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュ50aとが一体であり、分離可能に構成された固定用ブッシュ50bを採用する点が実施例1の締結装置1とは異なる。その他の構成については、実施例1の締結装置1と同様であるので、説明は省く。
【0069】
固定用ブッシュ50bは、図18(a)に示すように、下方に長く突出する四角柱状との固定用ブッシュ側凹部53bが凹設されたものであり、固定用ブッシュ側凹部53bの横断面は、実施例1の固定用ブッシュ50の固定用ブッシュ側凹部53の横断面と同一とされている。このため、図18(b)に示すように、固定用ブッシュ側凹部53bを任意の位置で切断して短くすることが可能であり、短くした後の固定用ブッシュ側凹部53bもワッシャ30のワッシャ側凸部32と互いに嵌まり合うことが可能となっている。なお、固定用ブッシュ側凹部53bは、捩れない程度に剛性の高い材料からなることが好ましく、例えば、拡径部51を軟質ゴム製とし、固定用ブッシュ側凹部53bを硬質ゴム又は樹脂製として、複合成形等により一体化することが好ましい。その他の構成については、実施例1の固定用ブッシュ50と同様であるので、説明は省く。
【0070】
このような構成である実施例3の締結装置3も、図17に示すように、洋風便器本体8と便座装置9とを備える洋風水洗式便器に用いられて、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に固定する。
【0071】
具体的には、洋風便器本体8に載置された便座装置9の底壁9aの上方から、雄ねじ10の円筒部12及びねじ部13と、雌ねじ20と、固定用ブッシュ50aとを洋風便器本体8の便座取付穴7に挿入する。そして、ワッシャ30の下面を、便座装置9の底壁9aの上面に当接させて、ワッシャ30を便座装置9の底壁9aと相対回転不能とする。
【0072】
ここで、雄ねじ10としてねじ部13が充分に長いものにあらかじめ用意しておき、固定用ブッシュ側凹部53bの長さをその場で適当に短く切断することにより、固定用ブッシュ50bの拡径部51が便座取付穴7の反対側から適度に飛び出した状態とすることを容易に実施できる。
【0073】
そして、雄ねじ10の頭部11を回転させることにより、拡径部51が拡径して便座取付穴7の反対側に係合する。こうして、この締結装置3も、便座装置9を洋風便器本体8の便座取付穴7に上方から固定することが可能となっている。
【0074】
したがって、実施例3の締結装置3も、実施例1、2の締結装置1、2と同様の作用効果を奏することができている。
【0075】
また、この締結装置3は、長さ調整用ブッシュと固定用ブッシュとが一体であり、分離可能に構成された固定用ブッシュ50aを採用していることから、異なる深さの取付穴に対して、より細かく、かつ容易に長さ調整をすることが可能となっている。
【0076】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0077】
例えば、実施例1〜3の締結装置1〜3は、便座装置9を直接、洋風便器本体8の便座取付穴7に固定しているが、便座装置9と洋風便器本体8との間にプレートを介在させてもよい。この場合、実施例1〜3の締結装置1〜3は、プレートを直接、洋風便器本体8の便座取付穴7に固定し、便座装置9は別途、プレートに固定される。具体的には、図8〜12、15〜17に図示する便座装置9の底壁9aがプレートに置き換わり、このプレートの上に、さらに、便座装置9が固定されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は締結装置及び洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1の締結装置の断面図である。
【図2】実施例1の締結装置に係り、ワッシャの断面図である。
【図3】実施例1の締結装置に係り、ワッシャを図2のA方向から見た図である。
【図4】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュの断面図である。
【図5】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュを図4のB方向から見た図図である。
【図6】実施例1の締結装置に係り、長さ調整用ブッシュを図4のC方向から見た図図である。
【図7】実施例1の締結装置に係り、固定用ブッシュの断面図である。
【図8】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図9】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図10】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図11】実施例1の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図12】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図13】実施例2の締結装置に係り、固定用ブッシュの断面図である。
【図14】実施例2の締結装置に係り、雌ねじおよび雌ねじ保持部材の断面図である。
【図15】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定した後の状態を示す断面図である。
【図16】実施例2の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図17】実施例3の締結装置に係り、便座装置を洋風便器本体の便座取付穴に固定する前の状態を示す断面図である。
【図18】実施例3の締結装置に係り、(a)は固定用ブッシュの長さ調整前の断面図であり、(b)は固定用ブッシュの長さ調整後の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3…締結装置
7…便座取付穴
8…洋風便器本体
9…便座装置
10…雄ねじ
11…頭部
12…円筒部
13…ねじ部
20、20a…雌ねじ
23a…雌ねじ側凹部
30…回転不能部(ワッシャ)
32…ワッシャ側凸部
34…回転防止手段(畝状突起部)
40…長さ調整用ブッシュ
42…長さ調整用ブッシュ側凸部
43…長さ調整用ブッシュ側凹部
51…拡径部
50、50a、50b…固定用ブッシュ
52a…固定用ブッシュ側凸部
53、53b…固定用ブッシュ側凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、
該ねじ部に螺合された雌ねじと、
該円筒部に挿通され、締結時に該頭部を上方から回転させても回転しない回転不能部と、
該回転不能部と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュと、
該長さ調整用ブッシュにより上方への移動が規制されるとともに該長さ調整用ブッシュと相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され、かつ該雌ねじと相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュとを備えていることを特徴とする締結装置。
【請求項2】
前記回転不能部は、前記長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャである請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記ワッシャの下面には自己の回転を防止する回転防止手段が形成されている請求項2記載の締結装置。
【請求項4】
前記雌ねじと前記固定用ブッシュとは別体である請求項1乃至3のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項5】
前記長さ調整用ブッシュと前記固定用ブッシュとは別体である請求項1乃至4のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項6】
前記長さ調整用ブッシュと前記固定用ブッシュとは、一体であり、かつ分離可能に構成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項7】
前記長さ調整用ブッシュは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項8】
便座取付穴をもつ洋風便器本体と、該洋風便器本体上に載置され、該便座取付穴に請求項1乃至7のいずれか1項記載の締結装置を用いて固定される便座装置とを備えていることを特徴とする洋風水洗式便器。
【請求項1】
頭部、円筒部及びねじ部からなる雄ねじと、
該ねじ部に螺合された雌ねじと、
該円筒部に挿通され、締結時に該頭部を上方から回転させても回転しない回転不能部と、
該回転不能部と相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成された少なくとも一つの長さ調整用ブッシュと、
該長さ調整用ブッシュにより上方への移動が規制されるとともに該長さ調整用ブッシュと相対回転不能に設けられ、軸方向に延びる筒状に形成され、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成され、かつ該雌ねじと相対回転不能に設けられたゴム製の固定用ブッシュとを備えていることを特徴とする締結装置。
【請求項2】
前記回転不能部は、前記長さ調整用ブッシュとは別体のワッシャである請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記ワッシャの下面には自己の回転を防止する回転防止手段が形成されている請求項2記載の締結装置。
【請求項4】
前記雌ねじと前記固定用ブッシュとは別体である請求項1乃至3のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項5】
前記長さ調整用ブッシュと前記固定用ブッシュとは別体である請求項1乃至4のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項6】
前記長さ調整用ブッシュと前記固定用ブッシュとは、一体であり、かつ分離可能に構成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項7】
前記長さ調整用ブッシュは、途中に軸長の短縮により拡大する拡径部が形成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項8】
便座取付穴をもつ洋風便器本体と、該洋風便器本体上に載置され、該便座取付穴に請求項1乃至7のいずれか1項記載の締結装置を用いて固定される便座装置とを備えていることを特徴とする洋風水洗式便器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−232156(P2007−232156A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57107(P2006−57107)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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