説明

緩衝材及びその製造方法

緩衝材は、各支持枠とそれに対応するシャッタの一側部との間に配置される。緩衝材は、一対の帯状をなす基材と、これら基材の間に架設された複数本のパイル糸とを備えている。パイル糸の一部は両基材間の中間部において切断され、それによって切込部を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸が形成される。一方の基材は各支持枠に取り付けられ、他方の基材はシャッタに接触する。切込部が設けられることにより、緩衝材は、シャッタの動きに対して柔軟に対応し、シャッタの揺れを抑えるクッション機能を十分に発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材及びその製造方法に関し、例えばシャッタ装置において、対向する一対の支持枠と、これら両支持枠内を移動するシャッタの両側部との間に介装されるシャッタ装置用の緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなシャッタ装置用の緩衝材として、特許文献1に開示されたような消音帯構造が提案されている。すなわち、消音帯構造に係る消音帯本体は、硬質塩化ビニル等の硬質材料よりなる帯状の摺動子及び帯状のベースを備え、両者間にモヘア毛が互いに植毛されるように架橋されることにより、摺動子、ベース、モヘア毛の各部が略層状に一体に形成されている。
【0003】
該消音帯本体は、ガイドレールにベースを介して取り付けられ、この取り付けられた状態で摺動子をシャッターカーテンの前後面に摺動自在に当接させるようになっている。そして、該消音帯構造は、シャッターカーテンの開閉に際しては、シャッターカーテンの前後面に摺動子を滑り良く摺動させ、スムーズな開閉動作を行う助けをする。
【0004】
上記従来のシャッタ装置において、シャッタであるシャッターカーテンは、支持枠であるガイドレールに対し、風の煽り以外にも開閉時の揺れ等といった様々な状況で、前後方向、横方向等のあらゆる方向へ動こうとする。
【0005】
これに対し、消音帯本体は、シャッターカーテンが前後方向へ動く場合、摺動子を介してパイル糸であるモヘア毛を摺動子及びベースの間で撓ませ、風打音等の異音を抑えるようになっている。つまり、消音帯本体は、風の煽り等によるシャッターカーテンの前後方向への揺れに対し、モヘア毛の働きでこの揺れを抑えるクッション機能を発揮する。しかし、シャッターカーテンが横方向へ動く場合、これに追従する摺動子が移動方向の両側部に位置するモヘア毛に引っ張られ、動きにくくなり、クッション機能を十分に発揮することができない。
【0006】
一方、従来の消音帯本体を実際に製造する場合、摺動子又はベース上にモヘア毛を植毛し、毛先を揃えたり、起毛させたり等してモヘア材を形成した後、同モヘア材のモヘア毛にベース又は摺動子を接着等する方法が考えられる。他に、一対のモヘア材を形成し、互いのモヘア毛の毛先同士を接着等する方法も考えられる。いずれの方法を採るにしろ、一旦はモヘア材を形成しなければならず、製造に係る工程が煩雑である。またモヘア毛が柔軟なものであることから、同モヘア毛を毛先のみで接着したり、位置合わせしたり等することは困難であり、その製造が極めて難しい。
【特許文献1】実用新案登録第2592349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、好適なクッション機能を発揮する緩衝材を提供することにある。
本発明のその他の目的は、一対の基材と両基材間に架設されたパイル糸とよりなる緩衝材を、簡易かつ確実に製造することができる緩衝材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、互いに対向する一対の帯状をなす基材と、前記両基材の間に架設された複数本のパイル糸とを備える緩衝材を提供する。前記パイル糸の一部は前記両基材間の中間部において切断され、それによって切込部を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸が形成される。
【0009】
本発明はまた、緩衝材の製造方法を提供する。その方法は、帯状の無端バンドを周回させつつ、同無端バンドの表面にパイル糸を巻き付ける巻付工程と、前記無端バンドに巻き付けられたパイル糸に対し、前記無端バンドの幅方向両側方から一対の帯状をなす基材を供給する基材供給工程と、供給された前記両基材をパイル糸に接触させ、超音波を使用して両基材をパイル糸に接着する接着工程と、前記無端バンドの内外両周面の一方に位置するパイル糸を、前記両基材間の中間部において切断し、該パイル糸に切込部を形成する切断工程と、前記切込部を介して前記無端バンドから前記パイル糸を前記両基材とともに離間させる離間工程とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
まず、シャッタ装置用の緩衝材を使用するシャッタ装置の構成について説明する。図3〜図5に示すように、シャッタ装置は、床面11上に対向して立設された一対の支持枠12と、両支持枠12の上端部の間に架設されたハウジング13と、床面11、一対の支持枠12及びハウジング13に囲まれた内側に配設されたシャッタ14とから構成されている。前記支持枠12は案内部材として機能する。移動部材として機能するシャッタ14は、複数枚の羽根板16を相互に回動可能に連結して形成されており、隣接する両羽根板16を互いに回動させることによって渦巻き状に巻回可能である。前記ハウジング13の内部には図示しない円筒状のドラムが回転可能に支持されており、同ドラムの外周面上にシャッタ14の上端部が接続されている。そして、ドラムが一方向へ回転するのに伴い、シャッタ14がドラムの外周面上に巻取られながらハウジング13内に収容されることにより、シャッタ装置が開放状態とされる。これに対し、ドラムが他方向へ回転するのに伴い、シャッタ14がドラムの外周面上から巻戻されながらハウジング13内から引き出されることにより、シャッタ装置が閉塞状態とされる。
【0011】
前記一対の支持枠12は、金属により四角筒状に形成され、それぞれの内側面にはガイド溝15がシャッタ装置の内側に向かって開口するように形成されている。各支持枠12のガイド溝15内には、シャッタ14の両側部の一方が挿入されている。シャッタ装置を開放状態又は閉塞状態とするための開閉操作を行う際、各支持枠12は、それぞれのガイド溝15によってシャッタ14を案内しつつ、該シャッタ14を上下方向へ往復動可能に支持するように機能する。また、各ガイド溝15の互いに対向する両内側面には、シャッタ14の表面及び裏面に向かってそれぞれ開口する収容凹条17が、支持枠12の長手方向に延びるようにそれぞれ形成されている。各収容凹条17の開口端には一対の突片18が突設されることにより、同収容凹条17の開口部が所定幅に規制されている。各ガイド溝15の一方の内側面とシャッタ14の表面との間、及びガイド溝15の他方の内側面とシャッタ14の裏面との間には、隙間がそれぞれ形成されている。これら隙間を塞ぐように、収容凹条17内にはシャッタ装置用の緩衝材20がそれぞれ収容されている。
【0012】
次に、緩衝材20の構成について説明する。
図1〜図2(e)に示すように、緩衝材20は、互いに対向するように配置された帯状をなす一対の基材21と、両基材21の間に架設されるように植毛された複数本のパイル糸22とから構成されている。
【0013】
該基材21は、防水性が高く動摩擦係数が低い合成樹脂製のフィルムより形成されている。このような合成樹脂としては、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、ポリアクリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、各基材21の幅方向の中間部には、パイル糸22を位置決めするための一対のガイド突条21aが、所定の間隔をおいて基材の長手方向に沿って互いに平行に延びるように設けられている。
【0014】
前記パイル糸22は、前記基材21に対し、U字状に曲げた状態でその曲げ部分において両ガイド突条21aの間に接合されている。基材21へのパイル糸22の接合方法としては、接着剤、超音波等を使用した接着、加熱による溶着等が挙げられ、所望に応じて適宜選択される。なかでも、超音波接着は、接合時において、基材21及びパイル糸22を強固に接合することができるとともに、接合箇所以外の形状の変化を抑えることができることから好ましい。
【0015】
パイル糸22は、耐久性が高く、復元性及び非吸水性に優れた繊維からなるフィラメント糸、紡績糸等の糸で形成されている。このような繊維としては、基材21で挙げた合成樹脂よりなる合成繊維、レーヨン等よりなる半合成繊維、綿等よりなる天然繊維等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂よりなる合成繊維は、圧縮状態からの復元性に優れるため、パイル糸22に使用する繊維としてより好ましい。また、基材21にパイル糸22を超音波接着で接合する場合、パイル糸22には基材21に用いた合成樹脂と同系の合成繊維を使用することがさらに好ましい。
【0016】
図4及び図5に示すように、当該緩衝材20は、第1の基材21が前記収容凹条17内に挿入されることにより、支持枠12のガイド溝15内に固定されている。また、緩衝材20の第2の基材21は、収容凹条17の開口部から突出するパイル糸22に支持されるとともに、同パイル糸22によってシャッタ14の表面又は裏面に押し付けられ、接触されている。そして、シャッタ14は、その表面及び裏面から一対の緩衝材20で挟み込まれるようにして、両緩衝材20によって保持される。
【0017】
シャッタ14の開閉時において、同シャッタ14は、その表面及び裏面を緩衝材20の第2の基材21に摺動させながら、上下方向へ往復動される。このとき、当該第2の基材21が動摩擦係数の低い合成樹脂より形成されていることから、緩衝材20に対してシャッタ14が滑り、シャッタの開閉時の摺動抵抗を軽減する機能を緩衝材20が発揮する。
【0018】
一方、シャッタ14の開閉時において該シャッタ14が風に煽られたとき等の場合、該シャッタ14は、揺れたり、がたついたり等することにより、第2の基材21に押し付けられる。このとき、第2の基材21を介してシャッタ14がパイル糸22に受け止められ、押し返されることにより、緩衝材20がシャッタ14の揺れやがたつきを抑える。
【0019】
緩衝材20による抵抗軽減機能及びクッション機能を良好に発揮させるため、パイル糸22の単糸繊度は、好ましくは5〜110デシテックスであり、より好ましくは10〜70デシテックスであり、さらに好ましくは10〜35デシテックスである。なお、通常のパイル糸22には複数本の繊維を撚り合わせて形成した糸(マルチフィラメント糸)が使用されており、「単糸繊度」とはこのパイル糸22を形成する1本の繊維の繊度をいう。単糸繊度を細くするに従って、パイル糸22の剛性が低くなり、所望するクッション機能を十分に発揮することができなくなるとともに、パイル糸22の毛折れ等といった不具合が発生するおそれがある。単糸繊度を太くするに従って、パイル糸22の柔軟性が低くなり、第2の基材21がシャッタ14に強い力で押し付けられるようになるため、緩衝材20は抵抗軽減機能を十分に発揮することができず、シャッタ14の開閉時に不具合が発生するおそれがある。
【0020】
また、パイル糸22そのものの繊度は、好ましくは100〜2200デシテックスであり、より好ましくは500〜2200デシテックスであり、さらに好ましくは600〜1650デシテックスである。パイル糸22には、マルチフィラメント糸の他、1本の繊維よりなる糸(モノフィラメント糸)を使用する場合もある。抵抗軽減機能及びクッション機能を良好に発揮させるには、パイル糸22そのものの繊度をこのように設定することが好ましい。そして、パイル糸22の繊度を細くするに従って、パイル糸22の剛性が低くなり、所望するクッション機能を十分に発揮することができなくなる。パイル糸22の繊度を太くするに従って、パイル糸22の柔軟性が低くなり、抵抗軽減機能を十分に発揮することができなくなる。
【0021】
基材21上に植毛されるパイル糸22の本数は、基材21の長手方向で1インチ当たり、好ましくは1000〜10000本であり、より好ましくは1000〜8000本であり、さらに好ましくは1500〜6500本である。基材21の長手方向で1インチ当たりのパイル糸22の植毛本数が少なくなるに従い、基材21上でのパイル糸22の密度が低くなり、パイル糸22同士の間に隙間が空きやすくなってしまう。このようにパイル糸22の密度が低くなった場合、パイル糸22同士で互いを支持することができなくなり、パイル糸22全体での剛性が低くなり、シャッタ14を十分に受け止めることができず、十分なクッション機能を発揮することができなくなる。1インチ当たりのパイル糸22の植毛本数が多くなるに従い、基材21上でのパイル糸22の密度が高まり、パイル糸22同士の間が過密に詰まりやすくなる。このようにパイル糸22の密度が高くなった場合、パイル糸22全体での柔軟性が低くなり、第2の基材21がシャッタ14に強い力で押し付けられ、摺動抵抗が増し、緩衝部材20は抵抗軽減機能を十分に発揮することができなくなる。
【0022】
図1〜図2(e)に示すように、一部のパイル糸22、具体的には基材21の幅方向の中央よりも一側寄りに植毛されたパイル糸22は、両基材21の間の中間部において切断されている。切断パイル糸22は、第1の基材21から延びる第1切断パイル糸22と、第2の基材21から延びる第2切断パイル糸22とを含む。第1切断パイル糸22の先端(切断端)と第2切断パイル糸22の先端(切断端)とは、切込部23を挟んで対向している。切込部23は、緩衝材20の長さ全体にわたり、基材21の長手方向へ延びるように設けられている。
【0023】
前記切断パイル糸22は、その切断端において毛先が拡がるように開繊している。切断パイル糸22の毛先は、基材21の長手方向に対する横方向へ膨らんでいる。従って、切断パイル糸22は、その毛先付近よりも根本付近において密である。切断パイル糸22以外のパイル糸22、即ち両基材21を連結する非切断パイル糸22は、両基材21の間で撓むことにより、基材21の長手方向に対する横方向へ膨らんでいる。よって、非切断パイル糸22は、両基材21の中間部付近よりも根本付近において密である。パイル糸22全体は、両基材21の間の中央部において同基材21の長手方向に対する両横方向へ膨らむことにより、該基材21の長手方向と直交する断面形状が略菱形状となるように形成されている。非切断パイル糸22の撓んだ箇所は、直毛状のものと比較して湾曲しやすくなっている。
【0024】
シャッタ14の動きに伴い第2の基材21を介してパイル糸22に外力が加えられたとき、パイル糸22が押し潰されて圧縮されると、該パイル糸22は元の形状に復帰するための反発力を生じる。前記緩衝材20のクッション機能は、このパイル糸22の反発力によってもたらされる。しかし、パイル糸22の反発力が強くなるに従い第2の基材21がシャッタ14に過剰に強く押し付けられると、シャッタ14の緩衝材20に対する摺動抵抗が増し、緩衝材20による抵抗軽減機能を発揮することが不可能となる。そこで、本実施形態では、前記切込部23を設けることにより、緩衝材20は状況に応じてクッション機能と抵抗軽減機能とを適度に発揮する。具体的には、緩衝材20は、加えられる外力が比較的弱い場合にクッション機能と抵抗軽減機能とをバランス良く発揮し、加えられる外力が比較的強い場合に抵抗軽減機能よりもクッション機能を優先する。シャッタ14がその開閉に伴い揺れるような場合には、緩衝材20に加えられる外力が比較的弱い。シャッタ14が風により煽られるような場合には、緩衝材20に加えられる外力が比較的強い。
【0025】
すなわち、シャッタ14が前後方向に動くのに伴い緩衝材20に比較的弱い外力が加えられたとき、非切断パイル糸22は、弓状にしなることにより、その全体がほぼ均等に湾曲して反発力を発生する。これに対し、切断パイル糸22においては、前記切込部23を挟んで対向する第1切断パイル糸22及び第2切断パイル糸22の一方の毛先が他方の毛先の間に入り込む。このため、切断パイル糸22は反発力を発生しない。よって、パイル糸22全体からシャッタ14へ加えられる反発力が和らげられる。その結果、緩衝材20は、加えられる外力が比較的弱い場合には、同外力に見合うだけの反発力しか発生せず、必要かつ十分で適度なクッション機能を発揮し、シャッタ14の揺れを抑えるとともに、シャッタ14の開閉時に生じるがたつき音等の異音を抑える。また、緩衝材20は、外力に見合うだけの反発力しか発生しないので、クッション機能と抵抗軽減機能とをバランス良く両立して発揮し、よってシャッタ14の開閉操作が支障なく行われる。
【0026】
一方、緩衝材20に加えられる外力が比較的強いとき、前記切込部23を挟んで対向する第1切断パイル糸22及び第2切断パイル糸22の一方の毛先が他方の切断パイル糸22の間に深く入り込む。この際、切断パイル糸22はその根元に近づくに従い密になるので、第1及び第2切断パイル糸22の一方が他方のパイル糸22に引っかかり易くなって、切断パイル糸22が入り込む際の抵抗が増大する。或いは、切断パイル糸22の毛先が基材21に当接する。すると、切断パイル糸22は、非切断パイル糸22と同様に弓状にしなり、その全体がほぼ均等に湾曲して反発力を発生する。緩衝材20に加えられる外力が強くなるほど、互いに対向する第1及び第2切断パイル糸22の一方が他方に入り込む際の抵抗が増大し、或いは互いに引っかかり合う切断パイル糸22の本数が増大し、切断パイル糸22によって生じる反発力が増大する。従って、該緩衝材20は、加えられる外力が比較的強い場合には、抵抗軽減機能よりもクッション機能を優先して発揮して、強い外力を十分に受け止めることが可能な強い反発力を発生する。その結果、緩衝材20は、シャッタ14の大きな動きを抑えるとともに、風打音等の大きな異音の発生を抑える。
【0027】
実際に、ポリプロピレン製で繊度が1350デシテックス/52フィラメントのパイル糸22を使用し、基材21の長手方向で1インチ当たりの植毛本数が1800本、両基材21の間の間隔が7mmとなるように、長さ10cmの緩衝材20を形成した。そして、同緩衝材20をパイル糸22の延びる方向(両基材21間の間隔を狭める方向)に圧縮し、緩衝材20によって生じる反発力を測定した。その結果、圧縮量が2mmとなるまで、圧縮力に比例して反発力が直線的に増大した。また、圧縮量が2mmを超えると、圧縮力に見合う量以上に反発力が曲線的に増大した。
【0028】
加えて、該シャッタ14が横方向に動くとき、図6(a)及び図6(b)に示すように、切込部23を境界として対向する第1及び第2切断パイル糸22の一方が他方に対し、横方向(図6(a)及び図6(b)の左右方向)へ位置ずれする。このため、シャッタ14の動きに第2の基材21が柔軟に追従することが可能であり、該緩衝材20は、第2の基材21にシャッタ14が接触された状態を常に維持する。従って、該緩衝材20は、シャッタのあらゆる動きに対して柔軟に対応し、上記のクッション機能及び抵抗軽減機能を十分に発揮させる。
【0029】
次いで、前記緩衝材20を製造するための製造装置の構成について説明する。
図7(a)及び図7(b)に示すように、前記製造装置は、帯状部材の両端部を接続することによって形成された無端バンド51を備えている。同無端バンド51は、複数のローラ52の周りを延びている。また、図中で左側を始端側、右側を終端側とした場合、無端バンド51は、始端側のローラ52が回転駆動装置53によって回転させられるのに伴い、製造装置内で周回させられる。始端側のローラ52と終端側のローラ52との間には、始端側から終端側にまで順に、パイル糸供給部54、基材供給部55、接着部56、切断部57及び回収部58が設けられている。
【0030】
前記パイル糸供給部54は、無端バンド51を挟んで対向する一対のボビン59を備えている。両ボビン59は、無端バンド51の表面にパイル糸22を供給しつつ、無端バンド51の延在方向に沿って延びる軸線を中心に回転するように構成されている。前記基材供給部55は、無端バンド51を挟んで対向する一対の供給ドラム60を備えている。各供給ドラム60には前記基材21が巻回状態で収容されており、各供給ドラム60から引き出された基材21は、無端バンド51を挟むように該無端バンド51の左右両側部に供給され、無端バンド51と平行に移動するように構成されている。
【0031】
前記接着部56は、両基材21に超音波の振動を伝えるための一対のホーン61と、両基材21を無端バンド51に向かって押し付けるための一対の押圧部材62とを備えている。各ホーン61は押圧部材62の一つと対をなす。ホーン61及びそれに対応する押圧部材62よりなる対は、それぞれ無端バンド51を挟み、無端バンド51の周回方向に関して互い違いに並ぶように配設されている。即ち、第1のホーン61は第1の押圧部材62と対向し、第2のホーン61は第2の押圧部材62と対向している。前記切断部57は、無端バンド51の内外両周面の一方に対向する切断刃63を備えている。図7(a)及び図7(b)では、切断刃63は、無端バンド51の内周面に対向している。同切断刃63は無端バンド51の幅方向の中央に配設されている。前記回収部58は、無端バンド51の一側方に配置された回収ドラム64を有しており、製造された緩衝材20が同回収ドラム64上に巻き取られて回収される。
【0032】
次に、前記製造装置を使用した緩衝材20の製造方法について説明する。
該緩衝材20は、巻付工程、基材供給工程、接着工程、切断工程及び離間工程を経て製造される。
【0033】
前記巻付工程は、無端バンド51の表面にパイル糸22を巻き付けるために行われ、製造装置のパイル糸供給部54で実施される。同パイル糸供給部54では、一対のボビン59が無端バンド51を中心に回転しつつ、同無端バンド51上にパイル糸22を供給する。そして、無端バンド51上に供給されたパイル糸22は、同無端バンド51の表面に螺旋状に巻き付けられ、無端バンド51とともに終端側へ向かって移動する。
【0034】
前記基材供給工程は、無端バンド51に巻き付けられたパイル糸22に対し、同無端バンド51の左右両側方から基材21を供給するために行われ、製造装置の基材供給部55で実施される。同基材供給部55では、両供給ドラム60から引き出された基材21が無端バンド51の両側部にそれぞれ位置するように供給される。このとき、各基材21に設けられた一対のガイド突条21aの間に無端バンド51に巻き付けられたパイル糸22が位置するように位置合わせされる。
【0035】
前記接着工程は、供給された両基材21をパイル糸22に接触させ、超音波を使用して両基材21にパイル糸22を接着するために行われ、製造装置の接着部56で実施される。同接着部56では、両押圧部材62の各々により無端バンド51の一側方から一方の基材21を押圧してパイル糸22に接触させつつ、無端バンド51の他側方から両ホーン61の各々を他方の基材21に接触させる。両ホーン61によって両基材21に超音波の振動が伝えられるとともに、同超音波の振動により、両基材21とパイル糸22とがその接触部位で接着される。
【0036】
前記切断工程は、無端バンド51の内外両周面の一方に位置するパイル糸22を両基材21の中間部において切断し、切込部23を形成するために行われ、製造装置の切断部57で実施される。同切断部57では、無端バンド51の内周面に対向する切断刃63により、無端バンド51に巻き付けられたパイル糸22の下半部の中央が切断される。その結果、無端バンド51を被覆するようにして、切込部23を有する緩衝材20が製造される。
【0037】
前記離間工程は、切込部23を介して無端バンド51からパイル糸22を一対の基材21とともに離間させるために行われ、製造装置の回収部58で実施される。同回収部58では、回収ドラム64の回転又は作業者の手作業により、無端バンド51上の緩衝材20が上方へ引っ張られる。すると、切込部23を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸22が湾曲して、該切込部23が拡がることにより、該緩衝材20が無端バンド51上から引き抜かれ、該無端バンド51から離間される。そして、製造された緩衝材20は、回収ドラム64上に巻き取られ、回収される。
【0038】
前記の実施形態によって発揮される利点について、以下に記載する。
本実施形態の緩衝材20は、一対の基材21と、両基材21の間に架設されたパイル糸22とを備えている。両基材21の間の中間部においてパイル糸22の一部が切断され、それによって切込部23を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸22が形成される。同切込部23を設けることにより、パイル糸22は、シャッタ14の開閉時の揺れ等といった比較的弱い力に対しては、適度なクッション機能及び抵抗軽減機能をバランス良く両立して発揮し、また風の煽り等といった比較的強い力に対しては、優先してクッション機能を発揮する。また、シャッタ14が横揺れ等した場合にも、シャッタ14の動きに対応して第1及び第2切断パイル糸22が切込部23を境界に互いに横ずれすることにより、第2の基材21にシャッタ14が接触された状態を維持する。このため、シャッタ14の動きに対して柔軟に対応することができ、シャッタ14の揺れを抑えるクッション機能を十分に発揮することができる。
【0039】
パイル糸22は、両基材21の長手方向と直交する断面形状が略菱形状をなすように形成されている。このため、シャッタ14から緩衝材20に加わる比較的弱い外力に対しては、パイル糸22の一部(非切断パイル糸22)が湾曲することにより、クッション機能と、シャッタ14の開閉を良好なものとする抵抗軽減機能とをバランス良く両立して発揮することができる。さらに、シャッタ14から緩衝材20に加わる比較的強い外力に対しては、パイル糸22の全体(切断パイル糸22及び非切断パイル糸)が湾曲することにより、クッション機能を優先して発揮させ、シャッタ14の動きを抑えて、風打音等の異音の発生を抑えることができる。
【0040】
緩衝材20は、無端バンド51の表面にパイル糸22を巻き付ける巻付工程、両基材21をパイル糸22の両側方から供給する基材供給工程、超音波で両基材21とパイル糸22とを接着する接着工程及びパイル糸22の一部を切断して切込部23を形成する切断工程を経て製造される。さらに、製造された緩衝材20は、離間工程で切込部23を介して無端バンド51上から離間され、回収される。このため、緩衝材20は、煩雑な作業を特に行わずとも、製造装置の使用により、ほぼ自動で製造される。従って、一対の基材21と両基材21の間に架設されたパイル糸22とよりなる緩衝材20を、簡易かつ確実に製造することができる。
【0041】
図8は、上記の緩衝材20をドア用或いは窓用スクリーン70の両側部を支持するための支持部材として適用した例を示す。緩衝材20は、ドアや窓の両側枠71(図8では一方の側枠のみを図示)に取り付けられている。案内部材である側枠71は上下方向(図8の紙面と直交する方向)に延びるガイド溝72を有し、ガイド溝72の互いに対向する両内側面には上下方向に延びる収容凹条73がそれぞれ形成されている。これらの収容凹条73に両基材21がそれぞれ挿入されることにより、緩衝材20は側枠71のガイド溝72に固定される。
【0042】
移動部材である前記スクリーン70の側部は前記ガイド溝72内に位置し、該スクリーン70はガイド溝72に沿って昇降可能である。スクリーン70の側部は前記緩衝材20の切込部23に挿入されている。切込部23を挟んで対向する第1切断パイル糸22と第2切断パイル糸22とは、スクリーン70の側部を挟持して、該スクリーン70をその表面及び裏面から支持する。よって、スクリーン70は、その両側部を緩衝材20によって保持された状態で、切断パイル糸22に摺動しながら昇降する。切断パイル糸22は、スクリーン70がその前後方向(図8の上下方向)へ揺動するのを抑制するように、良好なクッション機能を発揮する。一方、緩衝材20の非切断パイル糸22はスクリーン70の側縁を受け止めて、該スクリーン70がその幅方向(図8の左右方向)へ揺動するのを抑制するように、良好なクッション機能を発揮する。
【0043】
以上のように、緩衝材20は、シャッタ装置への適用に限らず、スクリーン70のための支持部材として適用することも可能である。緩衝材20はまた、スクリーン70に限らず、ガラスやパネル等、各種のシート状部材或いは板状部材のための支持部材として適用可能である。この場合、緩衝材20は、固定されたシート状部材或いは板状部材、またはスライド可能なシート状部材或いは板状部材のために適用できる。また、緩衝材20は、メッシュ状のスクリーンの周縁部に取り付けられても良い。この場合、緩衝材20における切断パイル糸22の先端がスクリーンのメッシュに係合して、虫等の小動物が侵入するのを防ぐように機能する。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について、図1〜図8の第1実施形態との相違点を中心に、図9〜図11(c)に従って説明する。
図9に示すように、本実施形態の緩衝材120は、フィルム80が両基材21の間に架設されていることが、図1の緩衝材20と異なる。フィルム80は、両基材21の幅方向の中央に配置され、緩衝材120の長さ全体に亘って基材21の長手方向に沿って延びている。フィルム80の一側方に切断パイル糸22が配置され、フィルム80の他側方に非切断パイル糸22が配置される。
【0045】
前記フィルム80は、耐久性、復元性及び非吸水性に優れた材料、好ましくはポリプロピレン製のシート材よりなる。フィルム80の厚さは、緩衝材120の使用目的に応じて選択される。緩衝材120に主として柔軟性が要求される場合には、フィルム80として比較的薄いものが使用され、緩衝材120に耐荷重性が要求される場合には、フィルム80として比較的厚いものが使用される。
【0046】
フィルム80を備えていない図1の緩衝材20の代わりに、フィルム80を備えた緩衝材120を図4に示すシャッタ装置に適用した場合、以下の利点が得られる。即ち、フィルム80を備えた緩衝材120は、フィルム80を備えていない緩衝材20と比較して反発力(弾性力)が強く、また液体や異物等に対する高いシールド性能を有する。そのため、緩衝材がシャッタ装置のシャッタ14から比較的大きな荷重を受けるような状況では、フィルム80を備えた緩衝材120をシャッタ装置に適用するのが望ましい。さらに、フィルム80を備えた緩衝材120をシャッタ装置に適用した場合、風雨や塵埃等がシャッタ装置の支持枠12の内部に侵入するのを好適に防止することができる。また、フィルム80が緩衝材120の幅方向中央に配置されているので、緩衝材120は受ける荷重に対してバランス良く変形し、よって良好なクッション機能及び抵抗軽減機能を発揮する。
【0047】
図10は、図9の緩衝材120をスライド窓におけるガラス90のための支持部材として適用した例を示す。緩衝材120は、切込部23が上向きとなるように、スライド窓の下枠91に取り付けられている。案内部材である下枠91は水平方向(図10の紙面と直交する方向)に延びるガイド溝92を有し、ガイド溝92の互いに対向する両内側面に緩衝材120の両基材21がそれぞれ固定されている。非切断パイル糸22がガイド溝92の内底面に当接するように、両基材21に対するパイル糸22の連結位置が、両基材21の幅方向中央からずらされている。
【0048】
移動部材である前記ガラス90の下端部は前記ガイド溝92内に位置し、該ガラス90はガイド溝92に沿って水平方向へ移動可能である。ガラス90の下端部は前記緩衝材120の切込部23に挿入されている。切込部23を挟んで対向する第1切断パイル糸22と第2切断パイル糸22とは、ガラス90の下端部を挟持して、該ガラス90をその表面及び裏面から支持する。よって、ガラス90は、その下端部を緩衝材120によって保持された状態で、切断パイル糸22に摺動しながら移動する。切断パイル糸22は、ガラス90がその前後方向(図10の左右方向)へ揺動するのを抑制するように、良好なクッション機能を発揮する。
【0049】
一方、前記フィルム80は、ガラス90の下端縁を受け止める。フィルム80としては、ガラス90から受ける荷重に耐え得るように、比較的厚みのあるもの、例えばパイル糸22の太さよりも大きな厚さを有するポリプロピレン製シート材が好ましい。ガイド溝92の内底面とフィルム80との間に存在する非切断パイル糸22は、フィルム80と共に、垂直方向の力を受け止めるクッションとして機能する。よって、ガラス90が垂直方向へ揺動するのが好適に抑制されるとともに、垂直方向の衝撃が好適に緩和される。
【0050】
なお、フィルム80を備えた図9の緩衝材120は、フィルム80を備えていない図1の緩衝材20と同様、ガラス90に限らず、図8のようなスクリーン70やドアやパネル等、各種のシート状部材或いは板状部材のための支持部材として適用可能である。この場合、シート状部材或いは板状部材は、固定的に配置されたものでもよいし、スライド可能なものでもよい。
【0051】
図11(a)〜図11(c)は、図9の緩衝材120を製造するための製造装置の概要を示す。図11(a)及び図11(b)に示す製造装置は、図7(a)及び図7(b)に示す製造装置にフィルム供給部65を追加することによって構成される。このフィルム供給部65はパイル糸供給部54の上流側に配置されている。フィルム供給部65は、前記フィルム80を巻回状態で収容するスプール66を備えている。スプール66から巻き出されたフィルム80は、無端バンド51の外周面に供給されて、無端バンド51と共にパイル糸供給部54に供給される。
【0052】
緩衝材120は、先ずフィルム供給工程を行った後、前述した巻付工程、基材供給工程、接着工程、切断工程及び離間工程を経て製造される。フィルム供給工程は、無端バンド51の外周面にフィルム80を供給するために、フィルム供給部65にて実施される。スプール66から巻き出されたフィルム80は、無端バンド51の外周面に供給されて、該無端バンド51の外周面を覆う(図11(c)参照)。
【0053】
次の巻付工程では、一対のボビン59から供給されたパイル糸22が、フィルム80で覆われた無端バンド51に巻き付けられる。(図11(c)参照)。その後、図7(a)及び図7(b)に示す手順と同様にして、基材供給工程、接着工程、切断工程及び離間工程が実施される。特に、接着工程では、両ホーン61によって生じる超音波の振動により、両基材21、パイル糸22及びフィルム80が互いの接触部位で接着される。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態について、図9〜図11(c)の第2実施形態との相違点を中心に、図12〜図15(c)に従って説明する。
図12に示すように、本実施形態の緩衝材220は、図9の緩衝材120と同様に、両基材21の間に架設されたフィルム80を備えている。但し、本実施形態では、フィルム80がパイル糸22の外側に設けられている点が、図9の緩衝材120と異なる。フィルム80は、切込部23の反対側において、非切断パイル糸22を覆っている。
【0055】
図13は、図12の緩衝材220をシャッタ装置に適用した例を示す。緩衝材220は、切込部23がシャッタ装置の支持枠12の内部を向くように、言い換えればフィルム80が支持枠12の外側を向くように、該支持枠12に取り付けられる。フィルム80が外側に配置されるので、図9の緩衝材120をシャッタ装置に適用する場合と比較して、より高いシールド効果が発揮される。また、パイル糸22がフィルム80によって支持枠12の外部空間からシールドされるので、パイル糸22が汚損することが防止される。
【0056】
図14は、図12の緩衝材220を換気システムに適用した例を示す。換気システムは、ブロワ装置95と、そのブロワ装置95から延びるダクト96とを備えている。緩衝材220はブロワ装置95とダクト96との間に設けられ、ブロワ装置95とダクト96とを気密状態で接続する。一方の基材21がブロワ装置95に取着され、他方の基材21がダクト96に取着される。フィルム80は外側を向くように配置される。
【0057】
ブロワ装置95は該ブロワ装置95に設けられたモータ(図示せず)の作動によって、ダクト96との間で空気流を生じさせる。フィルム80を備えた緩衝材220は、ブロワ装置95とダクト96との間からの空気の漏れを防止して、ブロワ装置95とダクト96との間に気密空間を形成する。さらに、緩衝材220は、ブロワ装置95とダクト96との間の相対的な動きを許容し、モータで生じる振動がブロワ装置95からダクト96へ伝達されることを抑制する。すなわち、緩衝材220は、気密シール及び振動ダンパとして好適に機能する。
【0058】
図15(a)〜図15(c)は、図12の緩衝材220を製造するための装置の概要を示す。図15(a)及び図15(b)に示す製造装置は、フィルム供給部65がパイル糸供給部54と基材供給部55との間に配置されている点が図11(a)及び図11(b)に示す製造装置と異なる。
【0059】
緩衝材220は、巻付工程の後にフィルム供給工程を行い、そして基材供給工程、接着工程、切断工程及び離間工程を経て製造される。フィルム供給工程では、巻付工程において無端バンド51に巻き付けられたパイル糸22に対し、無端バンド51の外周側からフィルム80が供給される。フィルム供給部65のスプール66から巻き出されたフィルム80は、無端バンド51の外周面上に位置するパイル糸22を覆う(図15(c)参照)。
【0060】
次の基材供給工程では、両供給ドラム60から引き出された基材21が無端バンド51の両側部にそれぞれ位置するように供給される。このとき、各基材21に設けられた一対のガイド突条21aの間に無端バンド51の対応する側部が位置合わせされ、フィルム80の両側縁部が無端バンド51上のパイル糸22を包み込むようにして折り曲げられる(図15(c)参照)。その後、図11(a)及び図11(b)に示す手順と同様にして、接着工程、切断工程及び離間工程が実施される。
【0061】
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
図16(a)〜図16(c)に示すように、図1の緩衝材20を2つ連結することによって、連結緩衝材300を形成してもよい。連結緩衝材300は、並列配置された2つの緩衝材20の、隣接する基材21同士を連結することによって形成される。隣接する基材21同士は、例えば貼付テープやタイパー(Typar:デュポン株式会社の登録商標)等の貼付部材301を用いて連結される。
【0062】
図16(a)では、切込部23が同一方向を指向するように2つの緩衝材20が連結されている。図16(b)では、切込部23が互いに逆向きとなるように(外側を向くように)、2つの緩衝材20が連結されている。図16(c)では、切込部23が互いに対向するように(内側を向くように)、2つの緩衝材20が連結されている。
【0063】
図17は、図16(a)の連結緩衝材300をシャッタ装置に適用した例を示す。連結緩衝材300はシャッタ14に対して広い面積で接触するので、図1の緩衝材20を用いた場合と比較して、シャッタ14の揺れや振動等が一層好適に緩和される。勿論、図16(b)及び図16(c)の連結緩衝材300をシャッタ装置に適用することも可能である。図16(a)〜図16(c)の連結緩衝材300の何れを用いるかは、シャッタ装置の種類やシャッタ装置の設置環境等に応じて適宜選択することができる。
【0064】
なお、特に図示しないが、図16(a)〜図16(c)の連結緩衝材300の各々は、図9の緩衝材120を2つ連結することによって、或いは図12の緩衝材220を2つ連結することによって形成されてもよい。この場合、連結緩衝材300は、シャッタ装置だけでなく、例えば図14に示すような換気システム等の気密性を要求される装置に好適に用いることができる。
【0065】
さらには、図16(a)〜図16(c)の連結緩衝材300の各々は、図1の緩衝材、図9の緩衝材120及び図12の緩衝材220のうちの任意の2つを連結することによって形成されてもよい。
【0066】
両基材21及びパイル糸22のうち少なくとも何れか一方に耐候性を付与してもよい。耐候性を付与する方法としては、両基材21又はパイル糸22に使用する合成樹脂に耐候剤を練り込む、耐候剤を含む加工液で両基材21又はパイル糸22をコーティングする等の方法が挙げられる。この耐候剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。このように構成した場合、両基材又はパイル糸の耐久性を向上させることができる。フィルム80を備えた緩衝材120,220においては、上記と同様にしてフィルム80に耐候性を付与してもよい。
【0067】
前記基材21はフィルムに限らず、例えば合成樹脂製の織布、編布、不織布、シート等で形成してもよい。
シャッタ装置は、上下方向に開閉するタイプに限らず、前後方向、左右方向等の水平方向に開閉するタイプ、あるいは一旦前後方向に開閉し、その後上下方向に開閉するタイプ等としてもよい。
【0068】
シャッタ装置における各支持枠12に固定される第1の基材21の裏面に、ゴム系、アクリル系等の感圧粘着剤を塗布、又は芯材の両面に感圧粘着剤を塗布してなる両面粘着テープを貼付する等して貼付層を形成してもよい。そして、同貼付層を介して緩衝材20を収容凹条17の内底面に貼付してもよい。あるいは、収容凹条17又はガイド溝15を省略して支持枠12を形成し、同支持枠12の所定箇所に貼付層を介して緩衝材20を貼付してもよい。なお、シャッタ装置以外への緩衝材の適用においても、貼付層を介して基材21を対象物に貼付してもよいことは勿論である。
【0069】
上記各実施形態の製造方法において、緩衝材20(120,220)は無端バンド51から離間させた後、回収ドラム64上に巻き取られ、回収されるように構成されている。しかし、これに限らず、無端バンド51から緩衝材20(120,220)を作業者の手作業によって引き抜き、離間させた後、このまま緩衝材20(120,220)を巻き取ることなく所望する長さに切断し、直線状をなす状態で回収してもよい。このように構成した場合、回収ドラム64を省略でき、製造装置の構成を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態における緩衝材の斜視図。
【図2(a)】緩衝材の正面図。
【図2(b)】緩衝材の背面図。
【図2(c)】緩衝材の平面図。
【図2(d)】緩衝材の右側面図。
【図2(e)】緩衝材の左側面図。
【図3】シャッタ装置の一部破断正面図。
【図4】緩衝材を支持枠に取着した状態を示す平断面図。
【図5】緩衝材を支持枠に取着した状態を示す側断面図。
【図6(a)】パイル糸が切込部で横ずれした状態を示す正面図。
【図6(b)】パイル糸が切込部で横ずれした状態を示す正面図。
【図7(a)】図1の緩衝材の製造装置を平面から見た状態を示す概念図。
【図7(b)】図1の緩衝材の製造装置を側面から見た状態を示す概念図。
【図8】図1の緩衝材をスクリーン用支持部材として適用した例を示す断面図。
【図9】本発明の第2実施形態における緩衝材の正面図。
【図10】図9の緩衝材をスライド窓におけるガラス用支持部材として適用した例を示す断面図。
【図11(a)】図9の緩衝材の製造装置を平面から見た状態を示す概念図。
【図11(b)】図9の緩衝材の製造装置を側面から見た状態を示す概念図。
【図11(c)】図9の緩衝材の製造過程を説明するための断面図。
【図12】本発明の第3実施形態における緩衝材の正面図。
【図13】図12の緩衝材をシャッタ装置に適用した例を示す断面図。
【図14】図12の緩衝材を換気システムに適用した例を示す断面図。
【図15(a)】図12の緩衝材の製造装置を平面から見た状態を示す概念図。
【図15(b)】図12の緩衝材の製造装置を側面から見た状態を示す概念図。
【図15(c)】図12の緩衝材の製造過程を説明するための断面図。
【図16(a)】図1の緩衝材を2つ連結してなる連結緩衝材を示す正面図。
【図16(b)】図1の緩衝材を2つ連結してなる連結緩衝材を示す正面図。
【図16(c)】図1の緩衝材を2つ連結してなる連結緩衝材を示す正面図。
【図17】図16(a)の連結緩衝材をシャッタ装置に適用した例を示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の帯状をなす基材と、
前記両基材の間に架設された複数本のパイル糸と
を備える緩衝材において、
前記パイル糸の一部は前記両基材間の中間部において切断され、それによって切込部を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸が形成されることを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記パイル糸は前記両基材の幅方向両側へ膨出しており、その膨出の程度は両基材間の中間部に向かうほど増大する請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記両基材の幅方向の中央よりも一側寄りに配置されたパイル糸が、両基材間の中間部において切断される請求項1又は請求項2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記パイル糸は、前記基材の長手方向で1インチ当たりの植毛本数が1000〜10000本である請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記基材又はパイル糸には耐候性が付与される請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項6】
前記パイル糸は、その単糸繊度が5〜110デシテックスである請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項7】
前記パイル糸は、マルチフィラメント糸又はモノフィラメント糸より形成され、その繊度が100〜2200デシテックスである請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項8】
前記両基材の長手方向に沿って延びるように両基材間に架設されたフィルムをさらに備える請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項9】
前記フィルムは両基材の幅方向のほぼ中央に配置される請求項8に記載の緩衝材。
【請求項10】
前記フィルムの一側方に前記第1及び第2切断パイル糸が配置され、フィルムの他側方に非切断パイル糸が配置される請求項9に記載の緩衝材。
【請求項11】
前記フィルムは前記パイル糸の外側に設けられている請求項8に記載の緩衝材。
【請求項12】
前記フィルムは、前記切込部の反対側において、非切断パイル糸を覆っている請求項11に記載の緩衝材。
【請求項13】
前記フィルムはポリプロピレン製のシート材よりなる請求項8〜請求項11の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項14】
前記緩衝材は、気密空間を形成するように互いに接続される2つの気密空間形成部材の間に配置され、一方の基材は一方の気密空間形成部材に取着され、他方の基材は他方の気密空間形成部材に取着される請求項8〜請求項13の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項15】
前記緩衝材は、案内部材とその案内部材に沿って移動可能な移動部材との間に配置され、前記両基材のうちの一方は前記案内部材に取着され、他方は前記移動部材に接触する請求項1〜請求項13の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項16】
前記緩衝材は、案内部材とその案内部材に沿って移動可能なシート状或いは板状の移動部材との間に配置され、前記両基材は前記案内部材に取着され、前記切込部は前記移動部材の縁部を受け入れる請求項1〜請求項13の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項17】
前記緩衝材はシート状或いは板状部材の縁部に装着され、前記切込部がシート状或いは板状部材の縁部を受け入れる請求項1〜請求項13の何れか一項に記載の緩衝材。
【請求項18】
互いに対向する一対の支持枠と、両支持枠に沿って移動可能なように両支持枠によって支持されたシャッタとを備え、同シャッタがその一端部において巻取り可能であり、シャッタの両側部の各々が両支持枠の対応する一方によって支持されるシャッタ装置において、前記両支持枠の各々とそれに対応する前記シャッタの側部との間に配置されるシャッタ装置用の緩衝材であって、
互いに対向する一対の帯状をなす基材と、
前記両基材の間に架設された複数本のパイル糸とを備え、
前記両基材のうちの一方は前記各支持枠に取着され、他方は前記シャッタに接触し、
前記パイル糸の一部は前記両基材間の中間部において切断され、それによって切込部を挟んで対向する第1及び第2切断パイル糸が形成されることを特徴とする緩衝材。
【請求項19】
緩衝材の製造方法であって、
帯状の無端バンドを周回させつつ、同無端バンドの表面にパイル糸を巻き付ける巻付工程と、
前記無端バンドに巻き付けられたパイル糸に対し、前記無端バンドの幅方向両側方から一対の帯状をなす基材を供給する基材供給工程と、
供給された前記両基材をパイル糸に接触させ、超音波を使用して両基材をパイル糸に接着する接着工程と、
前記無端バンドの内外両周面の一方に位置するパイル糸を、前記両基材間の中間部において切断し、該パイル糸に切込部を形成する切断工程と、
前記切込部を介して前記無端バンドから前記パイル糸を前記両基材とともに離間させる離間工程と
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項20】
前記巻付工程に先立って、前記切断工程にて切断されるパイル糸が位置する側とは反対側の前記無端バンドの周面にフィルムを供給して、同周面をフィルムで覆うフィルム供給工程をさらに備え、前記接着工程では、前記両基材に対して、前記パイル糸及び前記フィルムが接着される請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記巻付工程と前記基材供給工程との間において、前記切断工程にて切断されるパイル糸が位置する側とは反対側の前記無端バンドの周面にフィルムを供給して、同周面上のパイル糸をフィルムで覆うフィルム供給工程をさらに備え、前記接着工程では、前記両基材に対して、前記パイル糸及び前記フィルムが接着される請求項19に記載の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−515252(P2006−515252A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550220(P2004−550220)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034393
【国際公開番号】WO2004/042248
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【出願人】(503087821)ウルトラファブ インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】