説明

縞鋼板

【課題】ウラ面の腐食の進行度合いを確認可能な縞鋼板を提供する。
【解決手段】縞鋼板1は、複数の縞1aが格子状に連続する縞模様を一方の面(オモテ面)11に突設する。腐食点検穴1bは、縞鋼板1の一方の面11と反対側の他方の面(ウラ面)12に穿設されている。腐食点検穴1bは、他方の面12から一方の面11に貫通しない有底穴となっている。腐食点検穴1bは、複数の縞1aが連続する縞模様を除く領域と相反する領域に形成されている。腐食点検穴1bは、周辺を除く中央部に配置されている。腐食点検穴1bの底面が錆などで腐食して、やがて、一方の面11に腐食点検穴1bが開口することにより、縞鋼板1の他方の面12の腐食の進行度合いを確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縞鋼板に関する。特に、錆などの腐食状態を点検可能な縞鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、縞鋼板は、互い違いに格子状の小さな突起が連続する縞模様を炭素鋼熱間圧延鋼板(熱延鋼板)の表面に形成している。縞鋼板は、熱延鋼板の表面に縞模様を突設しているので、滑り止めとしての用途がある。縞鋼板は、チェッカープレート、又は略称して縞板と呼ばれることもある。
【0003】
縞鋼板は、建築物又は工場の床面、通路、階段など、人の歩行する場所に使用されている。又、縞鋼板は、道路の側溝の蓋、段差を解消するスロープ材などの屋外にも使用されている。
【0004】
一方、工場の操作歩道又は道路の側溝の蓋には、鋼材を格子状に成形したグレーチング(grating)が使用されることもある。グレーチングは、縞鋼板と異なり、透水性及び通風性を有するが、網の目にハイヒールの踵が挟まり易いことが欠点とされている。
【0005】
こうしたことから、溝蓋、歩道橋、階段などに用いて透水性に富み、その上を靴の踵や杖の先端などが嵌入することなく安全に歩行できる穿孔縞鋼板及び、その穿孔縞鋼板を生産性よく製造する製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1による縞鋼板は、縞模様が突設された縞鋼板に列をなして複数の組模様の透水孔が穿孔されている。各組模様は、同形であって偶数箇の単位模様が規則的に配列されている。そして、各単位模様は、直径11mm以下の複数の円孔及び、これら円孔を互に結合している連通部からなっている。
【0007】
特許文献1による縞鋼板に形成される透水孔は、直径11mm以内の円孔を結合した形状であるから、ハイヒール靴の踵や杖の先端などが嵌入するおそれが皆無であり、縞鋼板に設けられている縞状の突条により滑らないので、安全にその上を歩行できる、としている。そして、上述のような透水孔を穿孔することにより、縞鋼板の重量を20%以上軽減できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−83690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、縞鋼板は、その表面が圧延したままのいわゆる黒皮の状態で出荷され、酸洗い処理は行われていない。黒皮が縞鋼板の表面を被覆しているので、耐食性に優れるとされ、化学処理されないので安価であるからである。
【0010】
例えば、火力発電所などは、海水を冷却水として利用しているので、海の近くに立地している。したがって、塩分を含んだ海風の影響を受けて、火力発電所の屋外の床面などに使用される縞鋼板は、錆による腐食が激しいという問題がある。
【0011】
更に、このような床面などに使用される縞鋼板は、オモテ面の腐食の進行度合いを確認することは容易であるが、ウラ面の腐食の進行度合いを確認することは困難であるという問題がある。
【0012】
特許文献1による縞鋼板は、オモテ面からウラ面に貫通する透水孔を有しているが、小さな透水孔であり、ウラ面の腐食の進行度合いを確認することは困難である。
【0013】
縞鋼板のオモテ面に一対の取っ手を設け、一対の取っ手を把持して、縞鋼板を裏返すことにより、ウラ面の腐食の進行度合いを確認することもできるが、縞鋼板は重量であり、多数の縞鋼板を裏返しにすることは肉体的に負担である。
【0014】
所定の大きさに切断された縞鋼板を裏返しにすることなく、縞鋼板のウラ面の腐食の進行度合いを確認することができれば便利であり、新品と交換することにより、不測の事態も防止できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、縞鋼板を裏返しにすることなく、縞鋼板のウラ面の腐食の進行度合いを確認することが可能な縞鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、錆などの腐食の進行度合いを確認するための腐食点検穴を縞鋼板のウラ面に設けることにより、この課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな縞鋼板を発明するに至った。
【0017】
(1)本発明による縞鋼板は、一方の面に縞模様を突設する縞鋼板であって、前記一方の面と反対側の他方の面に穿設した有底の腐食点検穴であって、前記縞模様を除く領域と相反する領域に形成される一つ以上の腐食点検穴を有し、この腐食点検穴は、周辺を除く中央部に配置されている縞鋼板。
【0018】
(2)前記腐食点検穴は、略円柱状に加工されていることが好ましい。
【0019】
(3)両翼に一対の取っ手を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による縞鋼板は、一方の面と反対側の他方の面に有底の腐食点検穴を穿設しているので、腐食点検穴の底面が錆などで腐食すると、一方の面(オモテ面)に腐食点検穴が開口する。これにより、縞鋼板の他方の面(ウラ面)の腐食の進行度合いを確認できる。
【0021】
本発明による縞鋼板は、所定の大きさに裁断された縞鋼板を裏返しにすることなく、縞鋼板のウラ面の腐食の進行度合いを確認することができて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による縞鋼板の外観を示す平面図である。
【図2】前記実施形態による縞鋼板に穿設された有底の腐食点検穴を含む断面図であり、図1のA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
最初に、本発明の一実施形態による縞鋼板の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による縞鋼板の外観を示す平面図である。図2は、前記実施形態による縞鋼板に穿設された有底の腐食点検穴を含む断面図であり、図1のA−A矢視図である。
【0025】
図1又は図2を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板1は、所定の大きさに切断された矩形の外形を有している。そして、縞鋼板1の一方の面(オモテ面)11に複数の縞1aを突出している。これらの縞1aは、離間しているが、互い違いに交差する突条が連続する格子状の縞模様となっている。
【0026】
図1又は図2を参照すると、腐食点検穴1bは、縞鋼板1の一方の面11と反対側の他方の面(ウラ面)12に穿設されている。腐食点検穴1bは、他方の面12から一方の面11に貫通しない有底穴となっている。
【0027】
図1又は図2を参照すると、腐食点検穴1bは、複数の縞1aが連続する縞模様を除く領域と相反する領域に形成されている。つまり、腐食点検穴1bが形成されている位置に重なり合う位置の一方の面11には、腐食点検穴1bは形成されていない。又、腐食点検穴1bは、周辺を除く中央部に配置されている。
【0028】
図1又は図2を参照すると、腐食点検穴1bは、略円柱状に加工されている。腐食点検穴1bの直径φDは、11mm程度が好ましい。腐食点検穴1bの探り深さdは、縞鋼板1の板厚(縞1aの突出高さを除く)tの半分程度が好ましい。
【0029】
図1又は図2を参照すると、縞鋼板1は、一対の取っ手2・2を両翼に備えている。図示された取っ手2は、丸棒の両端部が略直角に屈折されたU字状の金具からなり、縞鋼板1を貫通した取っ手2の両端部にナットを螺合したボルト止め型の取っ手となっている。一対の取っ手2・2を把持して、縞鋼板1を持ち上げることができる。
【0030】
次に、本発明の実施形態による縞鋼板1の作用を説明する。
【0031】
図1又は図2を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板1は、一方の面(オモテ面)11と反対側の他方の面(ウラ面)12に有底の腐食点検穴1bを穿設しているので、腐食点検穴1bの底面が錆びるなどして腐食すると、やがて、一方の面(オモテ面)11に腐食点検穴1bが開口する。これにより、縞鋼板1の他方の面(ウラ面)12の腐食の進行度合いを確認できる。
【0032】
ここで、腐食点検穴1bの底面と、腐食点検穴1bを穿設しない他方の面(ウラ面)12の領域とは、同じ歳月で腐食が進行すると考えられる。したがって、板厚の薄い腐食点検穴1bの底面から錆が剥離して、他方の面(ウラ面)12の領域より早く開口が出現する。そして、腐食点検穴1bが一方の面(オモテ面)11に開口することから、縞鋼板1の他方の面(ウラ面)12の腐食の進行度合いを推定できる。
【0033】
本発明の実施形態による縞鋼板1は、一つの腐食点検穴1bを設けているが、腐食点検穴1bは二つ以上設けてもよく、限定されないが、縞鋼板1の曲げ強度を考慮して、腐食点検穴1bの個数が適宜に設定されることが好ましい。
【0034】
腐食点検穴1bを縞鋼板1の周辺に設けると、曲げ応力による応力集中で亀裂が発生することが懸念され好ましくない。腐食点検穴1bは、縞鋼板1の中央部に設けることが好ましい。ここで、縞鋼板1の用途からして、縞鋼板1には、引張り応力が作用しないと考えられ、縞鋼板1の中央部に設けた腐食点検穴1bには、応力集中で亀裂が容易に発生しないと考えられる。
【0035】
図2を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板1は、腐食点検穴1bの直径φDを11mm程度がすることが好ましく、一方の面(オモテ面)11に開口した腐食点検穴1bにハイヒール靴の踵や杖の先端などが嵌入することを防止できる。
【0036】
図2を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板1は、腐食点検穴1bが略円柱状に加工されてよく、超硬のエンドミルなどを用いて、円柱状の座ぐり穴を縞鋼板1に後加工できる。
【0037】
図1を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板1は、その両翼に一対の取っ手2・2を備えているので、腐食が進行した縞鋼板1を新品と交換することが容易である。重量の縞鋼板1であれば、一対の取っ手2・2にワイヤを絡めて、クレーンで吊り上げることもできる。
【0038】
図1を参照すると、本発明の実施形態による縞鋼板は、所定の大きさに切断された平板を例示したが、両翼が屈折された曲げ強度のある縞鋼板であってもよく、一方の面に縞模様を突設する縞鋼板であれば、本発明の縞鋼板の範囲に含まれる。
【0039】
又、図1を参照すると、互い違いに交差する突条が連続する格子状の縞模様を有する縞鋼板を例示したが、縞模様は実施形態に限定されない。例えば、半球状の突起が格子状に連続する縞模様を有する縞鋼板であってもよい。
【0040】
更に、実施形態による図1又は図2を参照すると、腐食点検穴1bは、略円柱状に加工されている。しかし、腐食点検穴1bは、縞鋼板1の一方の面(オモテ面)11に貫通しない有底の穴であればよく、他方の面(ウラ面)12に形成される腐食点検穴1bの開口の形状は、略円形に限定されない。腐食点検穴1bの開口の形状は、三角形以上の多角形であってもよく、星形であってもよく、ハート形であってもよく、連続する線で囲われる図形が所定の面積を有していればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 縞鋼板
1a 縞
1b 腐食点検穴
11 一方の面(縞鋼板のオモテ面)
12 他方の面(縞鋼板のウラ面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に縞模様を突設する縞鋼板であって、
前記一方の面と反対側の他方の面に穿設した有底の腐食点検穴であって、前記縞模様を除く領域と相反する領域に形成される一つ以上の腐食点検穴を有し、
この腐食点検穴は、周辺を除く中央部に配置されている縞鋼板。
【請求項2】
前記腐食点検穴は、略円柱状に加工されている請求項1記載の縞鋼板。
【請求項3】
両翼に一対の取っ手を備える請求項1又は2記載の縞鋼板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248855(P2010−248855A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101806(P2009−101806)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】