説明

縦型射出成形機および縦型射出成形機の作動方法

【課題】装置全体の高さを抑えることができ、ノズルタッチ作業が容易であるとともに型締時における成形金型のノズルタッチ面の位置の変化に対応することの容易な縦型射出成形機を提供する。
【解決手段】縦型型締装置12と横型射出装置13を組み合わせた縦型射出成形機11において、横型射出装置13には射出機構31を昇降させる昇降機構51と、射出機構31を揺動させる揺動機構45とが備えられており、姿勢を保った状態での射出機構31の昇降と、ノズル22の揺動をさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下方向に型開閉が行われる縦型射出成形機においては、特許文献1に記載されるように、射出装置が上盤の上にノズルを下に向けて縦方向に設けられるものが知られている。しかしながら特許文献1に示される縦型射出成形機は、装置全体の高さが高くなり、装置を設置するために天井の高い工場が必要となるという問題や、射出装置のメンテナンスが高所作業となるという問題があった。前記の問題を解決するための縦型射出成形機としては、特許文献2に記載されるように、横型射出装置が縦型型締装置の側方に配置されたものが知られている。このタイプの縦型射出成形機では、装置全体の高さは低く抑えられるものの、横型射出装置のノズルが当接するノズルタッチ面が側面に設けられた成形金型が取付けられるので、ノズルタッチ面の高さが異なる成形金型に変更された際に、それに応じて横型射出装置の高さを調整する必要がある。そのため従来では、手作業で調整用のボルトを回転させ、横型射出装置の高さを調整しているが作業負担が大きかった。また型締時にタイバの伸び等により、成形金型のノズルタッチ面の位置が微妙に変化した場合には、溶融樹脂の漏れ等が発生する可能性があるものであった。
【0003】
更に装置の高さを抑制することが可能であって、成形金型が交換されてもノズルタッチの際の位置が変更されない縦型射出成形機としては、特許文献3に記載されたものが知られている。しかし特許文献3に記載されたものは、同じ姿勢のままで横型射出装置全体の高さを変更できないものであった。そのため特許文献3では、横型射出装置を後退させることによって、ノズルや成形金型のスプルのメンテナンス等を行う際の作業スペースを確保している。しかしメンテナンス終了後に横型射出装置を横移動させ、ノズルをノズルタッチ面に正確に当接させるためには再調整が必要であった。また特許文献3では、横型射出装置の前側の下方に軸承部分が設けられ、軸承部分を支点としてノズルが円弧を描いて揺動移動するため、ノズルタッチ面に正確にノズル先端を当接させるための調整に熟練が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案3139919号公報(0013、図1)
【特許文献2】特開2007−83598号公報(請求項1、図2)
【特許文献3】特開平9−207162号公報(0023、0024、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記の問題を鑑みて、装置全体の高さを抑えることができ、ノズルタッチ作業が容易であるとともに型締時における成形金型のノズルタッチ面の位置の変化に対応することの容易な縦型射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の縦型射出成形機は、縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機において、横型射出装置には射出機構を昇降させる昇降機構と、射出機構を揺動させる揺動機構とが備えられたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項4に記載の縦型射出成形機の作動方法は、縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機の作動方法において、横型射出装置の射出機構を昇降させる昇降機構により射出機構を縦方向に移動させてノズルを金型のノズルタッチ面に当接させるとともに、射出機構を揺動させる揺動機構により型締時の金型のノズルタッチ面の位置変化を吸収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の縦型射出成形機は、縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機において、横型射出装置を昇降させる昇降機構と、横型射出装置を揺動させる揺動機構とが備えられているので、装置全体の高さを抑えることができ、ノズルタッチ作業が容易であるとともに型締時における成形金型のノズルタッチ面の位置の変化に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1の縦型射出成形機の正面図である。
【図2】図2は、実施例1の縦型射出成形機の横型射出装置を上昇させた際の状態を示す正面図である。
【図3】図3は、実施例1の縦型射出成形機の平面図である。
【図4】図4は、図1におけるA−A線における矢視図である。
【図5】図5は、実施例2の縦型射出成形機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の縦型射出成形機は、縦型型締装置の側方に横型射出装置が設けられている。横型射出装置には、横型射出装置の姿勢を保ったまま昇降させる昇降機構と、横型射出装置およびそのノズルを支軸を中心に揺動させる揺動機構とが備えられている。昇降機構としては、サーボモータ、ボールネジ、およびボールナット等からなる機構が用いられている。また揺動機構は、横型射出装置の射出機構の重心位置よりも後方に設けられており、支軸は、加熱筒の向きと直交する水平方向に取付けられている。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1の縦型射出成形機について、図1ないし図4を参照して説明する。縦型射出成形機11は、縦型型締装置12とその側方に設けられた横型射出装置13から基本的な部分が構成される。縦型型締装置12は、上盤である固定盤14と、基盤15の間に4本のタイバ16が設けられ、タイバ16に可動盤17が昇降自在に設けられている。可動盤17と基盤15の間にはトグル機構等の型締機構18が設けられ、基盤15の側方に型締機構用のサーボモータ19が設けられている。なお型締機構18は、型締シリンダ等の別の機構のものでもよい。
【0012】
そして固定盤14の下面には固定金型20が取付けられ、可動盤17の上面には可動金型21が取付けられるようになっている。固定盤14の上面の中央には、ノズル22が挿入されるすり鉢状の孔23が設けられ、その中央部は、固定金型20のロケートリングが挿通される貫通孔となっている。そして固定盤14に取付けられた固定金型20のノズルタッチ面24には、前記貫通孔を介して上方からノズル22が当接可能となっている。また固定盤14の上面のすり鉢状の孔23の周囲には、4本の支柱25が設けられ、その上部に連結された平板部26にはノズルタッチ力を発生させるためのノズル押圧用の油圧シリンダ27がロッド28を下方に向けて取付けられている。前記支柱25の長さは、横型射出装置13の加熱筒29およびノズル22等を上昇させた際に、ノズル22を完全にすり鉢状の孔23から上昇させても前記平板部26の下面に当接せずに、ノズル22の下方に作業スペースが確保できる長さとなっている。
【0013】
一方、横型射出装置13は、上盤である固定盤14の上方からノズル22がノズルタッチ面24に当接できるように所定高さの基台30の上に設けられている。前記基台30の内部は制御盤や温調装置等を配置するために利用される。図1ないし図3に示されるように、横型射出装置13の射出機構31は、上部に樹脂材料の供給装置が取付けられるハウジングプレート32が設けられている。ハウジングプレート32には、ヒータ等の加熱手段が設けられた加熱筒29が固定され、加熱筒29の内孔にはスクリュが回転および前後進可能に配設されている。加熱筒29の前方にはシリンダヘッド部33が固定され、シリンダヘッド部33の下面にノズル22が加熱筒29と直交する方向に取付けられており、ノズル22の先端には注入孔が形成されている。実施例1のノズル22は、一般的な横型射出装置のノズルよりも長く、ヒータにより3ゾーン程度に温度コントロールが可能となっている。なおノズル22は、曲線部や傾斜部を介して加熱筒29に固着されていてもよく、加熱筒29に対して略直交する方向であれば、厳密に90°の角度に設けられていなくてもよい。またノズル22にはシャットオフバルブが設けられたものでもよい。そしてシリンダヘッド部33の上面のノズル22の軸線と一致する位置には、ノズル押圧用の油圧シリンダ27のロッド28の先端が当接されるための断熱層からなる当接部材34が取付けられている。
【0014】
前記ハウジングプレート32の前面の両側位置には、射出用サーボモータ35がそれぞれ固定され、前記射出用サーボモータ35のロータにはボールネジ36が直結されている。ボールネジ36は、図示しないベアリングによりハウジングプレート32に軸支されるとともに、後方のプッシャプレート37の両側に固着されたボールナット38に挿通されている。また加熱筒29の後端からスクリュの軸が突出しており、前記スクリュの軸はスクリュスリーブ39に接続されている。そしてスクリュスリーブ39は、前記プッシャプレート37に図示しないベアリングにより軸支されている。プッシャプレート37の後面には計量用サーボモータ40が固定され、計量用サーボモータ40のロータが、前記スクリュスリーブ39に接続されている。なお横型射出装置13の射出機構は、ハウジングプレート、プッシャプレート、リアプレートの3枚のプレートからなるものでもよく、射出用サーボモータや計量用サーボモータの個数も限定されず、ベルトを介してサーボモータの駆動力をボールネジに伝達するものでもよい。また横型射出装置の射出機構は、油圧により作動するものでもよい。更に横型射出装置は、特許文献3に示されるように、可塑化装置と射出装置が別に設けられ両者が組み合わされたものでもよい。
【0015】
横型射出装置13の上部プレート41の上には、加熱筒29の方向と平行に2本のリニアガイド42が取付けられている。そして横型射出装置13の前記射出機構31は、前記リニアガイド42の上に載置されている。ハウジングプレート32とプッシャプレート37の下面にはそれぞれ複数の摺動部材が固定され、前記摺動部材が前記リニアガイド42上に摺動可能に跨っている。そしてハウジングプレート32の摺動部材の前方と後方には、固定部材43が設けられ、前方の固定部材43に後方に向けて取付けられるボルトと、後方の固定部材43から前方に向けて取付けられたボルトにより、ハウジングプレート32の摺動部材を挟み込んで、ハウジングプレート32が位置固定されるようになっている。そしてスクリュ交換等のメンテナンス時等には、ハウジングプレート32が後方に移動可能となっている。またプッシャプレート37は常時、リニアガイド42上を前後進移動が可能となっている。
【0016】
上部プレート41の下方には、略平行に、下部プレート44が設けられている。そして下部プレート44の前方側の2箇所には、ネジ穴67が設けられている。また上部プレート41の前方側の平面視同一位置にもネジが切られていない貫通穴68が設けられている。そして前記貫通穴68には上方から下方に向けてショルダボルト69が挿通され、ショルダボルト69のネジ部は前記ネジ穴67に挿入・固定されている。また前記ショルダボルト69の周囲の上部プレート41と下部プレート44の間には、撓み可能なバネ70が配置され、前記バネ70が撓むことにより、上部プレート41が下部プレート44に対して一定だけ昇降できるようになっている。なおこの部分には皿バネやワッシャを用いてもよく、油圧シリンダ等により上部プレート41の前方を昇降させるようにしてもよい。
【0017】
また横型射出装置13の射出機構31の重心位置よりも後方には、横型射出装置13の射出機構31およびそのノズル22を揺動可能とする揺動機構45が設けられている。揺動機構45は、射出機構31が載置された上部プレート41の後端側と、その下方の下部プレート44の後端側が、支軸46により軸支され、下部プレート44に対して上部プレート41および射出機構31の角度が変更可能となっている。更に詳しくは、上部プレート41の後端の両側は突出しており、その内側部分にはそれぞれ垂直断面逆L字状の接続部材47が固定されている。接続部材47には、後方の下方に向けて突出した突端部48が設けられている。また下部プレート44の後端側の中央部にも上方に向けて一定高さの突出部49が設けられている。そして2個の接続部材47の突端部48の間に、前記突出部49が挟まれる形となっており、前記突端部48と突出部49とを水平方向で加熱筒と直交する方向に向けて貫通するように前記突端部48には貫通穴48aが、前記突出部49には、貫通穴49aが設けられている。そして同軸に設けられた貫通孔48a,49aには支軸46が挿通されて、前記貫通孔48aには前記支軸46が固着され、前記貫通孔49aには、前記支軸46が回転自在に支持されている。従って実施例1の横型射出装置13の射出機構31は揺動されるので、加熱筒29が常時厳密に水平状態を保ったものに限定されない。なお揺動機構45については別の軸支機構で揺動するものでもよい。また上部プレート41の前端側には、近接スイッチ50が設けられ、上部プレート41が揺動して、上部プレート41と下部プレート44の間隔が正常時よりも開いたことが検出可能となっている。
【0018】
基台30の上板54と下部プレート44の間には、横型射出装置13の昇降機構51が設けられている。昇降機構51としては、下部プレート44の前方側の2箇所、後方側の1箇所にはボールネジ52の一端が固定され、各ボールネジ52は下部プレート44から下側に向けて平行に取付けられている。更に下部プレート44には2箇所にガイド棒53の一端が固定されており、ガイド棒53はボールネジ52と平行に下部プレート44から下側に向けて取付けられている。
【0019】
また基台30の上板54には、前記ボールネジ52が挿通されるボールナット55が図示しないベアリングにより一定位置で回転自在に取付けられている。そして後方のボールナット55には、第1プーリ56と第2プーリ57が上下方向に重なるように固定されている。また前方のボールナット55,55には第3プーリ58,58がそれぞれ固定されている。そして図4に示されるように、基台30の上板54上の第3プーリ58,58の間には、アイドラプーリ59が取付けられている。そして前記第2プーリ57、第3プーリ58,58、アイドラプーリ59には、タイミングベルト60が巻回されている。また基台30の後端に設けられたブラケット61には、昇降機構51の駆動手段である昇降用のサーボモータ62が取付けられている。そして前記サーボモータ62の駆動軸に固定された駆動用プーリ63と第1プーリ56が別のタイミングベルト64により巻回されている。なお昇降機構51については、機械的に昇降されるものであれば、ラックピニオン機構等の電動機を用いた他の方式や、油圧シリンダ等のシリンダを用いた方式であってもよい。
【0020】
また前記基台30の上板54には前記ガイド棒53が挿通されるガイド孔65が下方に向けて取付けられている。更に下部プレート44の前面または側面にはリミットスイッチ66が設けられ、リミットスイッチ66と対応する基台30の位置には前記リミットスイッチ66を検出するためのカム66aが取付けられている。なお前記近接スイッチ50やリミットスイッチ66が取付けられるプレート(板)は、いずれのプレート(板)であってもよく、スイッチの種類も限定されない。
【0021】
次に実施例1の縦型射出成形機11の作動について説明する。まず射出機構31が図2の位置に上昇された状態において、ノズル22のメンテナンスを含めた射出前の準備作業を行う。次に昇降機構51のサーボモータ62を作動させタイミングベルト64,60を介してボールナット55を回転させることにより、3本のボールネジ52を同時に下降させる。そしてボールネジ52の下降とともに、ボールネジ52に固定された下部プレート44および射出機構31等の全体は、ガイド棒53のガイドにより水平方向の姿勢を保ったまま下降される。そしてノズル22の先端が固定金型20のノズルタッチ面24に当接される直前の低速切換位置までは射出機構31の高速下降が行われ、低速切換位置となったことがリミットスイッチ66により検出されると、低速下降に切換られる。そして次に、記憶された正常なノズルタッチ位置まで射出機構31およびそのノズル22が低速下降されると昇降機構51のサーボモータ62は駆動を停止する。なお本発明ではスクリュ交換や成形金型交換を行った後にノズル22と固定金型20のノズルタッチ面24の位置合せを手動で行う際に、ノズル22を垂直方向のみに昇降させてノズルタッチ面24に当接させるので、特許文献3のように水平移動や揺動させて当接させる場合よりもノズル22の位置合せを行いやすい。
【0022】
このノズルタッチの際にノズルタッチ面24に異物が付着していたりして、正常な位置(高さ)にノズル22が当接できない場合は、下部プレート44はサーボモータ62により下降方向へ移動されるが、上部プレート41および射出機構31は下降できなくなるので、揺動機構45により上部プレート41および射出機構31が支軸46を中心に揺動(下部プレート44と上部プレート41との間の角度が拡大)される。すると下部プレート44の前方に対して上部プレート41の前方が浮き上がり、両者の間隔が開いたことを近接スイッチ50が検出され、近接スイッチ50に接続される図示しないコントローラにより、異常と判断され射出機構31の下降が停止される。なお射出機構31の下降の停止は、昇降用のサーボモータ62の負荷を検出して行ってもよく、他の手段でもよい。
【0023】
次にノズル押圧用の油圧シリンダ27のロッド28がシリンダヘッド部33の上面に当接して(またはノズル22の下降と同期してロッド28が下降して)ノズルタッチ力を発生させる。そして縦型型締装置12の型締機構18を作動させて成形金型20,21の型締を行い、型締が完了すると横型射出装置13から射出を行う。この際に型締力や射出力の作用によりタイバ16が伸長し、基盤15に対して上盤である固定盤14(固定金型20を含む)が上昇すると、固定金型20のノズルタッチ面24の位置(高さ)が変更されることになる。しかし実施例1では、横型射出装置13の射出機構31は揺動機構45により揺動可能であるので、ノズル22を上方へ揺動させることができ、ノズルタッチ面24の高さ方向の位置変更を吸収することができる。また実施例1の縦型射出成形機11は、射出圧縮成形や射出プレス成形等で1成形サイクルの中で型締力が変更され、射出中や保圧中にタイバ16の伸び量が微妙に変更される場合であっても対応可能である。そしてまた揺動機構45が射出機構31の重心位置よりも後方にあるので、ノズル22の揺動軌跡が直線に近くなり、ノズル22が揺動しても樹脂漏れ等が発生することを防止することが出来る。
【0024】
なお縦型射出成形機11の連続成形において、常時ノズルタッチを行わない場合(計量完了後に一旦ノズルを上昇させてノズル22の冷却を防止する場合)は、先に縦型型締装置12により型閉後に完全に型締しておいてから、ノズル22を再下降させてノズルタッチさせた後にノズル押圧用の油圧シリンダ27によりノズルタッチ力を発生させる手順でもよい。
【実施例2】
【0025】
次に図5に示される実施例2の縦型射出成形機71について、同一構成部分には同一符号を付して相違点を中心に説明する。縦型射出成形機71の縦型型締装置72は、上盤である固定盤73にノズル74を挿入する孔が設けられておらず、成形金型75の側面にノズルタッチ面76が設けられている。この場合ノズルタッチ面76は、固定金型77の側面、可動金型78の側面、パーティング射出を行うためにパーティング面79のいずれに設けられたものでもよい。
【0026】
一方横型射出装置13は、ノズル74およびその接続部分、ノズルタッチ力を発生させる機構以外は実施例1とほぼ同じである。横型射出装置13は、成形金型75が交換されるとノズルタッチ面76の高さが変更される場合が多いので、機械的な昇降機構51により高さが調整可能となっている。横型射出装置13のノズル74は、加熱筒29と同軸に水平方向に設けられ、ノズル74の先端が前記ノズルタッチ面76に対して側面から当接されるようになっている。なおノズルタッチ面76は、凹状の球面であり、ノズル74の先端は前記ノズルタッチ面76よりも半径が小さい凸状の球面である。ノズルタッチ力を発生させる機構については図示を省略するが、射出機構31の下方に設けられる。
【0027】
そして成形時においては、成形金型75のノズルタッチ面76に横型射出装置13のノズル74の先端が一定以上のノズルタッチ力で押圧された後に、型締力が変化しそれに対応してタイバ16が伸長してノズルタッチ面76の高さが変化した場合にも、揺動機構45により射出機構31およびノズル74がノズルタッチ面76に追従して揺動する。従って射出時、保圧時、および計量時にノズルタッチ面76とノズル74の先端の間から溶融樹脂が漏れることを防止することができる。
【実施例3】
【0028】
実施例3については図示を省略するが、上記の実施例1の縦型型締装置において、下盤である固定盤が最も下方に設けられ、上盤が受圧盤を構成し、その間に可動盤が設けられている。その場合、下盤である固定盤の上面に固定金型が取付けられ、可動盤の下面に可動金型が取付けられる。そして受圧盤と可動盤の間に型締機構が設けられる。また固定盤の下面の中央には、ノズルが挿入されるすり鉢状の孔が設けられ、その中心の貫通孔には、下方からノズルが固定金型のノズルタッチ面に当接可能となっている。また固定盤の下面に設けられた油圧シリンダにより、ノズルを上向きに押圧することによりノズルタッチ力を発生させるようになっている。そして縦型型締装置の側方には、横型射出装置が設けられるが、加熱筒に対して直交する方向に設けられるノズルは先端のノズル孔が上方に向けて設けられる。そして横型射出装置の昇降機構を上昇させることによりノズルタッチを行う。
【0029】
更にはノズルを上向けに取付ける実施例4として、図示を省略するが、中間に固定盤が設けられ、固定盤の下方に受圧盤が設けられ、固定盤の上方に可動盤が設けられたものでもよい。その場合も固定盤の上面に固定金型が取付けられ、可動盤の下面に可動金型が取付けられる。そして前記同様に固定盤の下面の貫通孔を介して、横型射出装置のノズルがノズルタッチされるようになっている。また実施例3、実施例4についても成形金型の側面に実施例2のような横型射出装置のノズルがノズルタッチするものでもよい。
【0030】
なお実施例1ないし実施例4における横型射出装置13において、揺動機構45を後部側(プッシャプレート37の成形時の最大後退位置)の後端と同じかそれよりも後方に位置することによって、ノズル22,74の揺動の軌跡(円弧)を直線に近づけることが可能である。そしてノズル22,74の揺動の軌跡が直線に近づく(半径が大きくなる)ことにより、ノズルタッチ作業が容易になるとともに、型締時における成形金型のノズルタッチ面24,76の位置の変化に対応してノズル22,74が移動した際に溶融樹脂の漏れが発生しにくくなる。その場合、射出機構31の昇降機構51を設けない場合も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の縦型射出成形機は、固定盤または可動盤に、回転または反転するロータリテーブルを取付けた縦型型締装置を採用することも可能である。その場合横型射出装置の数は、2基〜3基といった複数であってもよい。また本発明の縦型射出成形機を、一方のステージで成形金型のキャビティにインサート品をセットしてからロータリテーブルを回転させ、キャビティ内に溶融樹脂を射出するインサート成形に用いてもよい。また本発明の縦型射出成形機で成形される成形品としては、特に射出圧縮成形や射出プレス成形を行う場合、ディスク基板、導光板、光拡散板、レンズ等の透明樹脂からなる光学成形品や、アクリル製ガラスや車輌用樹脂窓材などに用いても有効である。また本発明の縦型射出成形機に用いられる成形材料は、主として樹脂材料が想定されるが、紙、木等の有機材料、セラミック等の無機材料、マグネシウムやアルミニウム等の金属材料、または前記の複合物であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
11,71 縦型射出成形機
12,72 縦型型締装置
13 横型射出装置
14,73 固定盤
18 型締機構
20,77 固定金型
22,74 ノズル
24,76 ノズルタッチ面
29 加熱筒
31 射出機構
41 上部プレート
44 下部プレート
45 揺動機構
46 支軸
50 近接スイッチ
51 昇降機構
52 ボールネジ
55 ボールナット
66 リミットスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機において、
横型射出装置には射出機構を昇降させる昇降機構と、射出機構を揺動させる揺動機構とが備えられたことを特徴とする縦型射出成形機。
【請求項2】
前記揺動機構は、横型射出装置の重心位置よりも後方に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の縦型射出成形機。
【請求項3】
前記横型射出装置には、加熱筒と直交する方向にノズルが取付けられ、
前記縦型型締装置は、上盤または下盤に前記ノズルが挿入可能な孔が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の縦型射出成形機。
【請求項4】
縦型型締装置と横型射出装置を組み合わせた縦型射出成形機の作動方法において、
横型射出装置の射出機構を昇降させる昇降機構により射出機構を縦方向に移動させてノズルを金型のノズルタッチ面に当接させるとともに、
射出機構を揺動させる揺動機構により型締時の金型のノズルタッチ面の位置変化を吸収することを特徴とする縦型射出成形機の作動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280059(P2010−280059A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132620(P2009−132620)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】