縦結合共振子
【課題】挿入損失の増加を抑制しつつ小型化した縦結合共振子の提供。
【解決手段】圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子1において、入力ポート及び出力ポートの一方が接続される第1の櫛歯電極2は、左右両側に延伸された部分を有する接地側の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成する。また、前記左右に延伸された接地側の櫛歯電極の右側には、当該右側部分と交差してIDT電極を構成し、あるいは1個あるいは2個の浮き電極である櫛歯電極を介して、当該浮き電極と交差してIDT電極を構成する第2の櫛歯電極3が設けられる一方、延伸された接地側の櫛歯電極の左側には、1個あるいは2個の浮き電極である櫛歯電極を介して、当該浮き電極と交差してIDT電極を構成する第3の櫛歯電極4が設けられる。
【解決手段】圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子1において、入力ポート及び出力ポートの一方が接続される第1の櫛歯電極2は、左右両側に延伸された部分を有する接地側の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成する。また、前記左右に延伸された接地側の櫛歯電極の右側には、当該右側部分と交差してIDT電極を構成し、あるいは1個あるいは2個の浮き電極である櫛歯電極を介して、当該浮き電極と交差してIDT電極を構成する第2の櫛歯電極3が設けられる一方、延伸された接地側の櫛歯電極の左側には、1個あるいは2個の浮き電極である櫛歯電極を介して、当該浮き電極と交差してIDT電極を構成する第3の櫛歯電極4が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる3IDT型の縦結合共振子に係り、特にこの縦結合共振子を小型化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波であるSAW(Surface Acoustic Wave)の伝播方向に3つのIDT電極を配置したいわゆる3IDT型の縦結合共振子は、SAWの伝播方向(「縦方向」という)に励起される2種類の共振モード(0次縦モード、2次縦モード)を利用することにより、フィルタとして機能する。この縦結合共振子は、例えば1つのポートに入力された信号を2つのポートより出力し、また2つのポートに入力された信号を1つのポートより出力することが可能であることから、当該共振子単独で、また複数の共振子を組み合わせて入出力信号の平衡-不平衡変換を行うフィルタとして利用されている。
【0003】
図12は従来用いられている3IDT型の縦結合共振子100の一例であり、例えばLiTaO3やLiNbO3、水晶などからなる共通の圧電基板10に、アルミニウムなどの金属薄膜からなるIDT(InterDigital Tranceducer)電極(以下、第1のIDT電極2という)を中央に配置し、この第1のIDT電極2のSAWの伝播方向の左右外側に2つのIDT電極(以下、左側を第2のIDT電極3、右側を第3のIDT電極4という)を配置した構造となっている。これら第2のIDT電極3、第3のIDT電極4のさらに左右外側には、外側の領域に伝播したSAWをIDT電極2、3、4へ向けて反射するための電極指を備えた周知のグレーティング反射器5(以下、反射器5という)が設けられている。なお以下に示す各平面図においては図面に向かって上方側を前方側、下方側を後方側と呼ぶことにする。
【0004】
図13の拡大図に示すように、例えば第1のIDT電極2は、前後に対向して設けられた2本のバスバー201、203に多数の電極指202、204を交差指状に接続した周知のIDT電極として構成されており、これと同様に第2のIDT電極3、第3のIDT電極4についても対向するバスバー301、303、401、403に各々電極指302、304、402、404を交差指状に接続したIDT電極構造となっている。なお、以下の説明では、図13に示すようにバスバー301、303、401、403や電極指302、304、402、404のみの構成を示し、圧電基板10や信号ポート21、34、44や接地ポート22、35、45などの記載を適宜省略する場合がある。また、各IDT電極2、3、4には、数本ずつの電極指202、204、302、304、402、404を模式的に示してあるが、実際には例えば十数本〜数十本程度の電極指が設けられている。
【0005】
図12に示すように第1のIDT電極2の前方側のバスバー201には、周波数信号の入出力端である第1の信号ポート21が接続され、また後方側のバスバー203には接地端である接地ポート22が接続されている。これと同様に第2のIDT電極3、第3のIDT電極4についても、各バスバー301、303、401、403に各々周波数信号の入出力端である信号ポート34、44、並びに接地端である接地ポート35、45が接続されていることから、当該縦結合共振子100には合計6つのポート21、22、34、35、44、45が設けられていることになる。
【0006】
そして例えば第1の信号ポート21に周波数信号を入力すると、各電極指202、204、302、304、402、404の伸びる方向と直交する方向(図12の左右方向)へと伝播するSAWが励振され、これらIDT電極2、3、4に共振モードが励起されると、入力信号と同相の周波数信号が第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44より出力される。
【0007】
かかる構成を備えた縦結合共振子100のパッケージ手法には、例えば圧電基板10のIDT電極2、3、4の形成された面を下方に向けて、格納ケースの基台表面に対向させ、これらの面の間に隙間を介在させることによりSAWの能動領域を確保した状態でパッケージする手法がある。こうした縦結合共振子100では、例えば図12に示すように既述の6つのポート(信号ポート21、34、44並びに接地ポート22、35、45)は、アルミニウムなどの金属薄膜を圧電基板10表面にパターニングした電極パッドとして構成されており、パッケージの基台側に形成された金属パッドに対してこれら縦結合共振子100側の金属パッドを例えばはんだや金バンプなどで接続することなどにより縦結合共振子100全体が基台から浮いた状態で固定される。
【0008】
これらの電極パッドは、縦結合共振子100全体を浮いた状態で支持固定し、且つパッケージの基台との間に隙間を形成するのに十分な量のはんだや金バンプなどと接する面積を確保する必要があるため、例えば図12に示すように圧電基板10の表面の比較的大きな面積を占めている。従来の縦結合共振子100は、このように大型の電極パッドを各ポート21、22、34、35、44、45の数に対応させて6つも必要とすることから、さらなる小型化が困難であった。また後述するように、例えば縦結合共振子100には、周波数特性調整用の共振子(例えばSAW共振子)を追加して設ける場合があるが、従来の縦結合共振子100には十分なスペースがなく、圧電基板10全体を大型化しなければ追加の共振子を配置することができなかった。
【0009】
そこで例えば接地ポート22、35、45を一つに集約し、電極パッドの数を削減することを目的として、(1)例えば図14に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401を電極指302、402を介して第1のIDT電極2の接地側の接地側バスバー203と接続することにより、接地側の3つの接地側バスバー203、301、401を共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子101、(2)また例えば図15に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401から夫々左右に配置された反射器5や第2の信号ポート34、第3の信号ポート44を迂回するように接続線300、400を伸ばして共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子102、(3)さらに図16に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401を夫々左右外側の反射器5と接続して接続線300、400の一部とし、(2)の場合と同様に当該接続線300、400を伸ばして共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子103などが提案されている。
【0010】
しかしながら(1)の図14に記載の縦結合共振子101は、接地ポート22に接続され、電位がゼロとなっている電極指302、402がSAWの通過する領域を横切る状態で配置されていることから、SAWの励振効率が悪く、縦結合共振子100全体のオーミックロスに基づく挿入損失が大きくなる。また(2)、(3)の図15並びに図16に記載の縦結合共振子102、103についても、長い接続線300、400を引き回して各接地側バスバー301、401を共通の接地ポート22に接続していることから、その分だけオーミックロスによる挿入損失が大きくなってしまうといった問題がある。
【0011】
また特許文献1には3IDT型の縦結合共振子について、中央やその左右に配置された各IDT電極の電極形状を種々変形させた縦結合共振子が記載されている。しかしながら、これらのIDT電極の変形は、縦結合共振子の入力側のインピーダンスと出力側のインピーダンスとを異ならせるために実施されたものであり、電極パッド数の削減といった問題には何ら着目されておらず、上述の課題を解決することはできない。
【特許文献1】特開平10−290141号公報:第0008段落〜第0014段落、図1〜図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、挿入損失の増加を抑制しつつ、小型化した縦結合共振子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わる縦結合共振子は、圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子において、
(1)入力ポート及び出力ポートの一方が接続され、電極指が前後方向に伸びる第1の櫛歯電極と、
(2)この第1の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成すると共に左右両側に延伸された部分を有する、接地された接地側の櫛歯電極と、
(3)入力ポート及び出力ポートの他方が各々接続された第2の櫛歯電極及び第3の櫛歯電極と、を備え、
(4)前記第2の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の左側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側1番目櫛歯電極と呼び、この左側1番目櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側2番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記左側2番目の櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極及び左側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであり、
(5)前記第3の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の右側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側1番目櫛歯電極と呼ぶとすると、この右側1番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記右側1番目櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側2番目櫛歯電極により構成されるか、
c.前記右側2番目の櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極及び右側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記縦結合共振子は、
(6)前記第2の櫛歯電極と、当該第2の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第2の反射器と、
(7)前記第3の櫛歯電極と、当該第3の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第3の反射器と、を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧電基板に弾性波を励振可能な浮き電極を用いて縦結合共振子を構成するIDT電極の接地側の櫛歯電極の夫々の引き出し方向を同じ方向に揃え、これらを1つの櫛歯電極に集約しているので、例えば接続線を引き回してこれら接地側の櫛歯電極を集約する場合と比較して、挿入損失の増大を抑えつつ縦結合共振子を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施の形態に係る縦結合共振子1の平面図を示しており、背景技術にて説明した従来の縦結合共振子100と同じ機能を備えた構成要素には、図12、図13に示したものと同じ符号を付してある。図1に示した縦結合共振子1は、圧電基板10上の中央に第1のIDT電極2を配し、その第1のIDT電極2左右外側に2つのIDT電極(左側に第2のIDT電極3、右側に第3のIDT電極4)を配した3IDT型の縦結合共振子1として構成され、これら3つのIDT電極2、3、4のSAWの伝播方向の左右外側に、さらに反射器5が設けられている点は図12〜図16に示した従来の縦結合共振子100〜103と同様である。
【0017】
また本実施の形態に係る縦結合共振子1は、図12の従来の縦結合共振子100に備わっている3つの接地ポート22、35、45が一つの接地ポート22に集約されている点については図14〜図16に示した改良型の従来の縦結合共振子101〜103と同様であるが、後述する浮き電極を利用して接地型ポート35、45の引き出し方向を反転させることにより接地ポート22、35、45の集約化を実現している点がこれらの縦結合共振子101〜103とは異なっている。そこで以下、浮き電極を利用した当該縦結合共振子1の詳細な構成について説明する。
【0018】
図1及びその拡大図である図2に示すように、第1のIDT電極2は、第1の信号ポート21に接続された第1の信号ポート側バスバー201と、この第1の信号ポート側バスバー201に対向して設けられ、接地ポート22に接続された接地側バスバー203との間に、夫々電極指202、204を交差指状(櫛歯状)に接続した周知のIDT電極構造を備えている。ここで当該第1のIDT電極2を構成する接地側バスバー203は、SAWの伝播方向(交差指状に配置された電極指202、204と直交する方向、即ち、図1、図2の左右方向)に延伸されており、当該延伸された部分は、第1のIDT電極2の左右に形成された2つのIDT電極(第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4)の一部を構成していることにより、これら3つのIDT電極2、3、4の接地ポート22が集約化されている。
【0019】
例えば第1のIDT電極2の左側領域に形成されている第2のIDT電極3について見てみると、左側へと延伸された接地側バスバー203部分に対しては、いずれのポートにも接続されておらず、電気的に浮いた状態となっている第1の浮き電極用バスバー305が対向して設けられており、これら双方のバスバー203、305は互いに平行に配置されている。さらに第1の浮き電極用バスバー305は、第1のIDT電極2の第1の信号ポート側バスバー201の左側に並んで配置されており、この第1の浮き電極用バスバー305から接地側バスバー203までの距離は、第1のIDT電極2を構成する第1の信号ポート側バスバー201から接地側バスバー203までの距離とほぼ等しくなっている。
【0020】
これら接地側バスバー203と第1の浮き電極用バスバー305とが対向する領域には、各バスバー203、305から電極指302、306が交差指状に伸びており、接地ポート22に接続されたIDT電極部である接地側IDT電極部31が形成されている。この接地側IDT電極部31は第2のIDT電極3の一部を構成している。
【0021】
この接地側IDT電極部31を構成する第1の浮き電極用バスバー305は、さらに左側へと延伸されており、当該延伸されたバスバー305部分に対しては、第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303が対向し、且つ双方のバスバー305、303がほぼ平行となるように配置されている。さらに第2の信号ポート側バスバー303は電極指204の左側に並んで配置されており、第1の浮き電極用バスバー305から第2の信号ポート側バスバー303までの距離は、第1のIDT電極2を構成する第1の信号ポート側バスバー201から接地側バスバー203までの距離、及び接地側IDT電極部31を構成する第1の浮き電極用バスバー305から接地側バスバー203までの距離とほぼ等しくなっている。
【0022】
そしてこれら第1の浮き電極用バスバー305と第2の信号ポート側バスバー303とが対向する領域には、各バスバー305、303から電極指307、304が交差指状に伸びており、第2の信号ポート34に接続されたIDT電極部である信号ポート側IDT電極部32が形成されている。以上の構成を備えた第1のIDT電極2の左側の領域の全体を見てみると、当該領域には接地側IDT電極部31と信号ポート側IDT電極部32とがこの順番に配置され、第2のIDT電極3はこれら2つのIDT電極部31、32によって構成されている。
【0023】
また、第1のIDT電極2の右側の領域についてもほぼ同様に、右側へと延伸された接地側バスバー203部分と、いずれのポートにも接続されず、電気的に浮いた状態となっている第2の浮き電極用バスバー405との間に接地側IDT電極部41が形成され、この第2の浮き電極用バスバー405が左側へと延伸された部分と、第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403との間に信号ポート側IDT電極部42が形成されていて、第3のIDT電極4はこれら2つのIDT電極部41、42により構成されている。
【0024】
以上に説明した構成を備えることにより当該縦結合共振子1は、第1のIDT電極2、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の3つのIDT電極2、3、4の接地ポートが共通の接地側バスバー203に集約化された構成となる。そして、この共通の接地側バスバー203を共通の接地ポート22に接続することにより、図12に示した従来型の縦結合共振子100に比べて接地側ポート(電極パッド)の数を2個少なくすることができる。
【0025】
ここで図1に示した本実施の形態に係る縦結合共振子1と、図12に示した従来型の縦結合共振子100とを比較すると、実施の形態に係る縦結合共振子1は従来型の縦結合共振子100には設けられていなかった浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を備えていることから、これらの縦結合共振子1、100の周波数特性は異なったものになってしまうのではないかという懸念もある。しかしながら本発明者は、第2のIDT電極3(接地側IDT電極部31、信号ポート側IDT電極部32)及び第3のIDT電極4(接地側IDT電極部41、信号ポート側IDT電極部42)に設けられた電極指302、304、306、307、402、404、406、407の数を適切に選択することにより、当該縦結合共振子1について従来型の縦結合共振子100とほぼ同等の周波数特性を持たせることができることを確認している。以下、本実施の形態に係る縦結合共振子1が従来の縦結合共振子100とほぼ同等の性能を示す原理およびその作用について図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。なお、以下に説明する図3、図7、図9、図10の各模式図では、便宜上、反射器5や圧電基板10などの記載を省略してある。
【0026】
図3(a)は、図12に示した従来の3IDT型の縦結合共振子100を模式的に示している。ここで説明を簡単にするために、各電極指202、204、302、304、402、404の中心軸同士の間隔(ピッチ)「d」は、例えばフィルタとして機能する当該第2のIDT電極3の通過帯域域の中心周波数を持つ周波数信号を第1の信号ポート21より入力した場合に、縦結合共振子1に励振されるSAWの半波長と等しい長さに形成されているものとする。
【0027】
この場合に前述の中心周波数を持つ周波数信号を第1の信号ポート21に入力すると、当該周波数信号は第1のIDT電極2にて電気-機械変換されてSAWが励振され、このSAWは各電極指202、204、302、304、402、404が伸びる方向と直交する方向へ向けて圧電基板10を伝播する。
【0028】
ここで例えば図3(a)に示した第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の各信号ポート34、44に接続された電極指304、404は、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて偶数本目に配置されているものとすると、これらの電極指304、404には、第1の信号ポート21に接続された電極指202にて励振されたSAWと同じ位相(例えば振幅が最大となる位相、図3中に「+」で示してある)を持つSAWが到達する。
【0029】
このSAWが各電極指304、404にてSAWが機械-電気変換されることにより、第2の信号ポート34、第3の信号ポート44からは第1の信号ポート21へと入力された周波数信号と同じ位相の周波数信号が出力される。このとき接地側に接続された各電極指204、302、402では、入力側の周波数信号から半波長だけ位相のずれたSAW(例えば振幅が最小となる位相、図3中に「−」で示してある)が機械-電気変換されるが、これらの電極指204、302、402は接地されているため、半波長分だけ位相のずれた(位相の反転した)当該周波数信号は縦結合共振子100からは出力されない。
【0030】
以上に説明した従来型の縦結合共振子100の左右のIDT電極3、4について、例えば図3(b)に示すように、浮き電極を構成し、いずれのポートにも接続されていない電極指307、407、306、406を各々信号ポート34、44側の電極指304、404並びに接地側の電極指306、406と交差させることにより、これらのIDT電極3、4を各々接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに分割したとする。このとき各電極指306、307、406、407は、第2のIDT電極3側、第3のIDT電極4側で、各々共通の浮き電極用バスバー305、405に接続されており、これらのバスバー305、405毎に同じ電位となっている。
【0031】
この場合に、第1の信号ポート21から周波数信号を入力すると、既述の縦結合共振子100の場合と同様に第1のIDT電極2に励振されたSAWは左右に配置された接地側IDT電極部31、41へ向かって伝播する。そしてこれら接地側IDT電極部31、41に設けられている電極指306、406は、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて奇数本目に配置されていることから当該電極指306、406では、入力信号とは半波長分だけ位相のずれた(位相の反転した)SAWが周波数信号に機械-電気変換される。
【0032】
そして既述のようにこれら接地側IDT電極部31、41側の電極指306、406は浮き電極用バスバー305、405を介して信号ポート側IDT電極部32、42側の電極指307、407と同電位となっていることから、接地側IDT電極部31、41で機械-電気変換された周波数信号は、各信号ポート側IDT電極部32、42で再び電気-機械変換されてSAWとなり、出力側の信号ポート34、44に接続された電極指304、404に到達する。これら信号ポート34、44に接続された電極指304、404は、信号ポート側IDT電極部32、42側の電極指307、407から見て奇数本目に配置されているため、電極指307、407で励振されるSAWの位相に対して半波長分だけ位相のずれた周波数信号、即ち位相の反転が2回行われた結果、第1の信号ポート21に入力された周波数信号と同位相の周波数信号が出力される。
【0033】
一方で本実施の形態に係る縦結合共振子1は、新たにIDT電極部31、41を追加したことにより、信号ポート側IDT電極部32、42と接地側IDT電極部31、41とが直列に接続された状態となるため、第2、第3のIDT電極3、4全体の容量が従来のおよそ半分程度となる。この結果、出力側の信号ポート34、44から見た各IDT電極3、4のインピーダンスが大きくなり縦結合共振子1の挿入損失が増大するおそれもある。そこで、本実施の形態に係る縦結合共振子1は、接地側、信号ポート側の両IDT電極部31、32、41、42の電極指数を従来の縦結合共振子100に設けられていたIDT電極3、4の電極指数のおよそ2倍程度とすることにより、各IDT電極部31、32、41、42の容量を大きくし、IDT電極3、4全体の容量低下を抑え、挿入損失の増大を抑制している。
【0034】
なお図示の便宜上、図3(b)〜図3(d)の各図においては、各IDT電極部31、32、41、42の電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数は従来型の縦結合共振子100の左右のIDT電極3、4と同程度の本数で示してあるが、実際には上述のように従来型と同程度の周波数特性を示すようにこれらの本数を増やしてある。
【0035】
以上に説明した考え方に基づいて、図3(b)に示すように浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を用いて接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに夫々分割した第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4につき、今、接地側IDT電極部31、41を圧電基板10上で180度回転させて配置すると共に、当該回転させた接地側IDT電極部31、41の左右外側に信号ポート側IDT電極部32、42を配置する。すると図3(c)に示すように中央の第1のIDT電極2と、左右の第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成するIDT電極部31、32、41、42とがSAWの伝播方向に一列に配置された縦結合共振子を得ることができる。
【0036】
この図3(c)に示す縦結合共振子は、IDT電極部31、32、41、42の配置位置を変更したに過ぎないことから図3(b)に示したものとほぼ同等の周波数特性を持っている。そしてこの図3(c)に示す縦結合共振子では接地側の電極指202、302、402の接続されているバスバーが互いに並んで配置されていることから、図3(d)に示すようにこれらのバスバーを共通化することが可能となる。図1に示す本実施の形態に係る縦結合共振子1は、以上に説明した考え方に基づいて構成されており、接地ポート22を集約化して電極パッドの数を減らすことにより縦結合共振子1の小型化を図りつつ、従来の縦結合共振子1と同程度の周波数特性を発揮することができる。
【0037】
縦結合共振子1には例えば周波数特性調整用のSAW共振子6などが接続されることがあるが、電極パッドの数を減らしたことにより空いた領域に、例えば図4に示すように当該SAW共振子6を配置することが可能となる。この結果、例えば図12に示した従来の縦結合共振子1と比較して圧電基板10の大きさを殆ど変えずに周波数特性調整用のSAW共振子6を備えた縦結合共振子1aを製造することが可能となる。
【0038】
ここで上述した縦結合共振子1の構成を本発明の特許請求の範囲の表現に合わせて言い替えると、入力ポートである第1の信号ポート21が接続された第1の信号ポート側バスバー201及び電極指202は第1の櫛歯電極に相当し、接地側バスバー203と電極指204、302、402とが接地側の櫛歯電極に相当する。また浮き電極である第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307は左側1番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側2番目櫛歯電極であると共に、本例では第2の櫛歯電極に相当している。一方、浮き電極である第2の浮き電極用バスバー405及び電極指406、407は右側1番目櫛歯電極であり、もう一方の出力ポートである第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側2番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当している。そして、第2のIDT電極3の左側に設けられた反射器が第2の反射器、第3のIDT電極4の右側に設けられた反射器が第3の反射器となっている。
【0039】
本実施の形態に係る縦結合共振子1によれば以下の効果がある。圧電基板10にSAWを励振可能な浮き電極(本例で左側1番目櫛歯電極を構成する第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307、並びに右側1番目櫛歯電極を構成する第2の浮き電極用バスバー405及び電極指406、407)を用いて、縦結合共振子1を構成するIDT電極2、3、4の接地側の櫛歯電極の夫々の引き出し方向を同じ方向に揃え、これらを1つの櫛歯電極(接地側の櫛歯電極を構成する接地側バスバー203及び電極指204、302、402)に集約しているので、例えば図14〜図16に示す縦結合共振子101〜103のように電極指302、402を用いたり、接続線300、400を引き回したりして接地ポート22を集約する場合と比較して、挿入損失の増大を抑えつつ縦結合共振子1を小型化することができる。
【0040】
なお、図3(a)〜図3(d)の説明でも述べたように、浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を用いて第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに分割し、従来の縦結合共振子100と同程度の周波数特性を得るためには、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成する電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数を増やす必要があり、その分、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4のサイズを大きくする必要がある。しかしながら図12に示すように、従来の縦結合共振子100においても各ポート21、22、34、35、44、45を構成する電極パッドは夫々のIDT電極2、3、4よりもその占有面積が大きく、反射器5の両サイドには上述の電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数を増やし、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を大型化する余裕がある場合が多い。このため、反射器5を含むIDT電極1、2、3のトータルのサイズを例えば図12に示した圧電基板10の幅と同程度か、またはこの幅よりも若干広くなる程度まで大きくしたとしても、依然として電極パッド数の削減の効果は大きいといえる。
【0041】
接地ポート22を集約化した縦結合共振子は、図1に示した例に限定されるものではない。例えば図5、図6に示した縦結合共振子1bのように、浮き電極を追加して第2の信号ポート34、第3の信号ポート44の引き出し方向を前方側へと変更してもよい。例えば図6の拡大図に示すように、左側の第2のIDT電極3については接地側IDT電極部31の左側へ延伸された第1の浮き電極用バスバー305の当該延伸された部分に、いずれのポートにも接続されていない第3の浮き電極用バスバー308を対向させ、これらのバスバー305、308に接続された電極指307、309にて浮きIDT電極部33が追加形成されている。そしてこの第3の浮き電極用バスバー308のさらに左側に当該第3の浮き電極用バスバー308を延伸させ、この延伸した部分と第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303とを対向させて信号ポート側IDT電極部32を形成することにより、第2の信号ポート34は信号ポート側IDT電極部32の前方側へと引き出されている。
【0042】
一方、第1のIDT電極2の右側の第3のIDT電極4についても同様に、右側へ延伸された第2の浮き電極用バスバー405の当該延伸された部分に、いずれのポートにも接続されていない第4の浮き電極用バスバー408を対向させ、これらのバスバー405、408に接続された電極指407、409を交差させてなる浮きIDT電極部43を接地側IDT電極部41と信号ポート側IDT電極部42との間に介在させることにより、第3の信号ポート44の引き出し方向を信号ポート側IDT電極部42の前方側へと変更している。また本例では、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の各信号ポート34、44に接続された電極指304、404が、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて奇数本目となっていることにより、図5に示すように入力側の周波数信号とは位相の反転した周波数信号が各信号ポート34、44から出力されるようになっている。
【0043】
このように浮き電極を用いて左右のIDT電極3、4を各々3つの電極部31、33、32、41、43、42に三分割すると、各IDT電極3、4の容量は従来の縦結合共振子100に設けられたIDT電極3、4のおよそ1/3となる。このため、各IDT電極部31、32、33、41、42、43においてもインピーダンスの増加を抑えるため電極指302、306、307、309、310、304、402、406、407、409、410、404の本数を、例えば従来の3倍程度まで増やすとよい。
【0044】
図5、図6に示す縦結合共振子1bでは、浮き電極である第3の浮き電極用バスバー308及び電極指309、310は特許請求の範囲の左側2番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側3番目櫛歯電極であると共に第2の櫛歯電極に相当している。一方、浮き電極である第4の浮き電極用バスバー408及び電極指409、410は右側2番目櫛歯電極であり、出力ポートである第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側3番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当している。
【0045】
さらには左右の第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成するIDT電極部の数は同数である場合に限定されるものではなく、図7(a)の縦結合共振子1cに示すように左側の第2のIDT電極3については接地側IDT電極部31、浮きIDT電極部33、信号ポート側IDT電極部32に三分割し、右側の第3のIDT電極4については接地側IDT電極部41と信号ポート側IDT電極部42とに二分割して、夫々の信号ポート32、42の引き出し方向が反対向きとなるようにしてもよい。
【0046】
また例えば図5に示したように、左右のIDT電極3、4を二分割し、入力側の第1の信号ポート21とは反対方向へと第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44を引き出す場合であっても、各信号ポート32、33から出力される信号の位相は入力された周波数信号と同位相である場合に限定されない。これらの信号ポート32、33に接続された電極指304、404が入力側の第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて偶数本目または奇数本目となるように電極指の本数を適宜調節することにより自由に変更することができる。例えば図7(b)の縦結合共振子1dは、入力された周波数信号とは位相の反転した周波数信号が出力される場合であり、図7(c)の縦結合共振子1dは第2の信号ポート34と、第3の信号ポート44とで互いに位相の反転した平衡信号が出力される場合である。
【0047】
上述の例に加え、例えば図8に示すように、一方側の第3のIDT電極4に浮き電極を用いることなく縦結合共振子1fを構成してもよい。本例について簡単に説明すると、図12に示した従来型の縦結合共振子100は、例えば第3のIDT電極4の前方側の電極パッドを第3の信号ポート44とし、後方側の電極パッドを接地側とすることにより、例えば図9(a)に示すように不平衡入力-平衡出力タイプの縦結合共振子として使用することができる。この場合には、中央の第1のIDT電極2の接地ポート22と右側の第3のIDT電極4の接地ポート45とが隣り合って配置された状態となっており、既にこれらを集約化することが可能である。
【0048】
そこで既述の図3(b)、図3(c)で説明した考え方に基づいて、左側の第2のIDT電極3のみを浮き電極によって接地側IDT電極部31と信号ポート側IDT電極部32とに分割し、これらをSAWの伝播方向に並べることにより、図9(b)に示すように、3つの接地ポート22、35、45を隣り合わせて配置することができる。この結果、図9(c)並びに図8に示すように、接地ポート22が1つに集約化された縦結合共振子1fを得ることができる。
【0049】
図8及び図9(c)に示す縦結合共振子1fにおいては、浮き電極である第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307は特許請求の範囲の左側1番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側2番目櫛歯電極であると共に、第2の櫛歯電極に相当している。一方、第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側1番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当していることとなる。
【0050】
この場合にも、第2のIDT電極3の分割パターンは二分割に限定されるものではなく、図10の縦結合共振子1gに示すように一方側の第2のIDT電極3を接地側IDT電極部31、浮きIDT電極部33、信号ポート側IDT電極部32に三分割することにより、第2の信号ポート34を前方側へ引き出すようにしてもよい。また図8〜図10に示した例とは反対に、左側に設けた第2のIDT電極3を浮き電極を用いず、分割しない構成として、右側の第3のIDT電極4を二分割、または三分割してもよいことは勿論である。
【0051】
ここで図1〜図10に示した各実施の形態に係る縦結合共振子1、1a〜1gの説明においては、第1の信号ポート21を図面に向かって前方側に配置して左側に少なくとも1個の浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307)を備える例を例示したが、これらの縦結合共振子1、1a〜1gに対して左右方向に鏡像対称の構成を備えた縦結合共振子についても本発明の技術的範囲に含まれる。この場合には、第1の信号ポート21を図面に向かって後方側に配置した状態で見れば、左側に少なくとも1個の浮き電極が配置された構成となっているからである。
【0052】
またこれら縦結合共振子1、1a〜1gは、第1の信号ポート21から周波数信号を入力し、第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44から出力する使用法に限られず、第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44の2つのポートから周波数信号を入力して第1の信号ポート21からこれを出力してもよい。さらに上述の各縦結合共振子1、1a〜1gは反射器5を備えていない場合であっても本発明の技術的範囲に含まれ、縦結合共振子に利用する弾性波はSAWに限定されるものではなく、例えば弾性境界波を利用するタイプの共振子であってもよい。
【実施例】
【0053】
(シミュレーション)
図1、図12に夫々示す縦結合共振子1、100と同様の構造を有するフィルタモデルを作成し、夫々のフィルタモデルについてのフィルタ特性をシミュレーションした。
(実施例1)
図1に示した縦結合共振子1について、第1の信号ポート21より周波数信号を入力し、その通過特性をシミュレーションした。
シミュレーション条件
圧電基板:LiTaO3
電極指ピッチ:2.0μm
第1のIDT電極2の電極指202、204数:33本
第2のIDT電極3の接地側IDT電極部31の電極指302、306数:31本
第2のIDT電極3の信号ポート側IDT電極部32の電極指307、304数:40本
第3のIDT電極4の接地側IDT電極部41の電極指402、406数:31本
第3のIDT電極4の信号ポート側IDT電極部42の電極指407、404数:40本
反射器5:電極指ピッチ 2.0μm、 電極指数 51本
(比較例)
図12に示した縦結合共振子100のについて、第1の信号ポート21より周波数信号を入力し、その通過特性をシミュレーションした。
シミュレーション条件
圧電基板:LiTaO3
電極指ピッチ:2.0μm
第1のIDT電極2の電極指202、204数:38本
第2のIDT電極3の電極指302、304数:23本
第3のIDT電極4の電極指402、404数:23本
反射器5:電極指ピッチ 2.0μm、 電極指数 51本
【0054】
(シミュレーション結果)
図11(a)、図11(b)にシミュレーション結果を示す。図11(a)は各縦結合共振子1、100の通過特性の全体図であり、図11(b)は通過帯域における通過特性の拡大図を示している。各図の横軸は周波数[MHz]、縦軸は減衰量[dB]を示しており、図中の実線は(実施例)、破線は(比較例)のシミュレーション結果を表している。
【0055】
図11(a)を見ると、(実施例)にかかる縦結合共振子1と(比較例)にかかる縦結合共振子100とでは、左右の減衰域では幾分異なる特性を示すものの、中央の通過帯域では両共振子1、100の通過特性がほぼ一致している。浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を追加して、第1のIDT電極2及び第2のIDT電極3を各々接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42することにより、接地ポート22の集約化を図った縦結合共振子1については、こうした構造上の差異があるにも拘らず、通過帯域の特性を拡大した図11(b)を見ても従来の縦結合共振子100の通過特性とよく一致しており、挿入損失の増加も見られない。以上のことから縦結合共振子1は小型かつ、挿入損失の抑制された縦結合共振子であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態に係る3IDT型の縦結合共振子の平面図である。
【図2】前記縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図3】前記縦結合共振子の構造に係る説明図である。
【図4】前記縦結合共振子の適用例を示す平面図である。
【図5】他の実施の形態に係る縦結合共振子の平面図である。
【図6】前記他の縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図7】実施の形態に係る縦結合共振子の各種変形例を示す模式図である。
【図8】さらに他の実施の形態に係る縦結合共振子の平面図である。
【図9】前記さらに他の縦結合共振子の構造に係る説明図である。
【図10】前記さらに他の縦結合共振子の変形例を示す模式図である。
【図11】実施の形態に係る縦結合共振子の通過特性を示す特性図である。
【図12】従来の縦結合共振子の平面図である。
【図13】前記従来の縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図14】前記従来の縦結合共振子の変形例を示す平面図である。
【図15】前記従来の縦結合共振子の第2の変形例を示す平面図である。
【図16】前記従来の縦結合共振子の第3の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1a〜1g
縦結合共振子
10 圧電基板
100〜103
縦結合共振子
2 第1のIDT電極
21 第1の信号ポート
22 接地ポート
201 第1の信号ポート側バスバー
202、204
電極指
203 接地側バスバー
3 第2のIDT電極
31 接地側IDT電極部
32 信号ポート側IDT電極部
33 浮きIDT電極部
34 第2の信号ポート
35 接地ポート
302、304、306、307、309、310
電極指
303 第2の信号ポート側バスバー
305 第1の浮き電極用バスバー
308 第3の浮き電極用バスバー
4 第3のIDT電極
41 接地側IDT電極部
42 信号ポート側IDT電極部
43 浮きIDT電極部
44 第3の信号ポート
45 接地ポート
402、404、406、407、409、410
電極指
403 第3の信号ポート側バスバー
405 第2の浮き電極用バスバー
408 第4の浮き電極用バスバー
5 グレーティング反射器(反射器)
6 SAW共振子
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる3IDT型の縦結合共振子に係り、特にこの縦結合共振子を小型化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波であるSAW(Surface Acoustic Wave)の伝播方向に3つのIDT電極を配置したいわゆる3IDT型の縦結合共振子は、SAWの伝播方向(「縦方向」という)に励起される2種類の共振モード(0次縦モード、2次縦モード)を利用することにより、フィルタとして機能する。この縦結合共振子は、例えば1つのポートに入力された信号を2つのポートより出力し、また2つのポートに入力された信号を1つのポートより出力することが可能であることから、当該共振子単独で、また複数の共振子を組み合わせて入出力信号の平衡-不平衡変換を行うフィルタとして利用されている。
【0003】
図12は従来用いられている3IDT型の縦結合共振子100の一例であり、例えばLiTaO3やLiNbO3、水晶などからなる共通の圧電基板10に、アルミニウムなどの金属薄膜からなるIDT(InterDigital Tranceducer)電極(以下、第1のIDT電極2という)を中央に配置し、この第1のIDT電極2のSAWの伝播方向の左右外側に2つのIDT電極(以下、左側を第2のIDT電極3、右側を第3のIDT電極4という)を配置した構造となっている。これら第2のIDT電極3、第3のIDT電極4のさらに左右外側には、外側の領域に伝播したSAWをIDT電極2、3、4へ向けて反射するための電極指を備えた周知のグレーティング反射器5(以下、反射器5という)が設けられている。なお以下に示す各平面図においては図面に向かって上方側を前方側、下方側を後方側と呼ぶことにする。
【0004】
図13の拡大図に示すように、例えば第1のIDT電極2は、前後に対向して設けられた2本のバスバー201、203に多数の電極指202、204を交差指状に接続した周知のIDT電極として構成されており、これと同様に第2のIDT電極3、第3のIDT電極4についても対向するバスバー301、303、401、403に各々電極指302、304、402、404を交差指状に接続したIDT電極構造となっている。なお、以下の説明では、図13に示すようにバスバー301、303、401、403や電極指302、304、402、404のみの構成を示し、圧電基板10や信号ポート21、34、44や接地ポート22、35、45などの記載を適宜省略する場合がある。また、各IDT電極2、3、4には、数本ずつの電極指202、204、302、304、402、404を模式的に示してあるが、実際には例えば十数本〜数十本程度の電極指が設けられている。
【0005】
図12に示すように第1のIDT電極2の前方側のバスバー201には、周波数信号の入出力端である第1の信号ポート21が接続され、また後方側のバスバー203には接地端である接地ポート22が接続されている。これと同様に第2のIDT電極3、第3のIDT電極4についても、各バスバー301、303、401、403に各々周波数信号の入出力端である信号ポート34、44、並びに接地端である接地ポート35、45が接続されていることから、当該縦結合共振子100には合計6つのポート21、22、34、35、44、45が設けられていることになる。
【0006】
そして例えば第1の信号ポート21に周波数信号を入力すると、各電極指202、204、302、304、402、404の伸びる方向と直交する方向(図12の左右方向)へと伝播するSAWが励振され、これらIDT電極2、3、4に共振モードが励起されると、入力信号と同相の周波数信号が第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44より出力される。
【0007】
かかる構成を備えた縦結合共振子100のパッケージ手法には、例えば圧電基板10のIDT電極2、3、4の形成された面を下方に向けて、格納ケースの基台表面に対向させ、これらの面の間に隙間を介在させることによりSAWの能動領域を確保した状態でパッケージする手法がある。こうした縦結合共振子100では、例えば図12に示すように既述の6つのポート(信号ポート21、34、44並びに接地ポート22、35、45)は、アルミニウムなどの金属薄膜を圧電基板10表面にパターニングした電極パッドとして構成されており、パッケージの基台側に形成された金属パッドに対してこれら縦結合共振子100側の金属パッドを例えばはんだや金バンプなどで接続することなどにより縦結合共振子100全体が基台から浮いた状態で固定される。
【0008】
これらの電極パッドは、縦結合共振子100全体を浮いた状態で支持固定し、且つパッケージの基台との間に隙間を形成するのに十分な量のはんだや金バンプなどと接する面積を確保する必要があるため、例えば図12に示すように圧電基板10の表面の比較的大きな面積を占めている。従来の縦結合共振子100は、このように大型の電極パッドを各ポート21、22、34、35、44、45の数に対応させて6つも必要とすることから、さらなる小型化が困難であった。また後述するように、例えば縦結合共振子100には、周波数特性調整用の共振子(例えばSAW共振子)を追加して設ける場合があるが、従来の縦結合共振子100には十分なスペースがなく、圧電基板10全体を大型化しなければ追加の共振子を配置することができなかった。
【0009】
そこで例えば接地ポート22、35、45を一つに集約し、電極パッドの数を削減することを目的として、(1)例えば図14に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401を電極指302、402を介して第1のIDT電極2の接地側の接地側バスバー203と接続することにより、接地側の3つの接地側バスバー203、301、401を共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子101、(2)また例えば図15に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401から夫々左右に配置された反射器5や第2の信号ポート34、第3の信号ポート44を迂回するように接続線300、400を伸ばして共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子102、(3)さらに図16に示すように第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4の接地側の各接地側バスバー301、401を夫々左右外側の反射器5と接続して接続線300、400の一部とし、(2)の場合と同様に当該接続線300、400を伸ばして共通の接地ポート22に接続した縦結合共振子103などが提案されている。
【0010】
しかしながら(1)の図14に記載の縦結合共振子101は、接地ポート22に接続され、電位がゼロとなっている電極指302、402がSAWの通過する領域を横切る状態で配置されていることから、SAWの励振効率が悪く、縦結合共振子100全体のオーミックロスに基づく挿入損失が大きくなる。また(2)、(3)の図15並びに図16に記載の縦結合共振子102、103についても、長い接続線300、400を引き回して各接地側バスバー301、401を共通の接地ポート22に接続していることから、その分だけオーミックロスによる挿入損失が大きくなってしまうといった問題がある。
【0011】
また特許文献1には3IDT型の縦結合共振子について、中央やその左右に配置された各IDT電極の電極形状を種々変形させた縦結合共振子が記載されている。しかしながら、これらのIDT電極の変形は、縦結合共振子の入力側のインピーダンスと出力側のインピーダンスとを異ならせるために実施されたものであり、電極パッド数の削減といった問題には何ら着目されておらず、上述の課題を解決することはできない。
【特許文献1】特開平10−290141号公報:第0008段落〜第0014段落、図1〜図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、挿入損失の増加を抑制しつつ、小型化した縦結合共振子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わる縦結合共振子は、圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子において、
(1)入力ポート及び出力ポートの一方が接続され、電極指が前後方向に伸びる第1の櫛歯電極と、
(2)この第1の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成すると共に左右両側に延伸された部分を有する、接地された接地側の櫛歯電極と、
(3)入力ポート及び出力ポートの他方が各々接続された第2の櫛歯電極及び第3の櫛歯電極と、を備え、
(4)前記第2の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の左側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側1番目櫛歯電極と呼び、この左側1番目櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側2番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記左側2番目の櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極及び左側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであり、
(5)前記第3の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の右側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側1番目櫛歯電極と呼ぶとすると、この右側1番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記右側1番目櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側2番目櫛歯電極により構成されるか、
c.前記右側2番目の櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極及び右側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記縦結合共振子は、
(6)前記第2の櫛歯電極と、当該第2の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第2の反射器と、
(7)前記第3の櫛歯電極と、当該第3の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第3の反射器と、を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧電基板に弾性波を励振可能な浮き電極を用いて縦結合共振子を構成するIDT電極の接地側の櫛歯電極の夫々の引き出し方向を同じ方向に揃え、これらを1つの櫛歯電極に集約しているので、例えば接続線を引き回してこれら接地側の櫛歯電極を集約する場合と比較して、挿入損失の増大を抑えつつ縦結合共振子を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施の形態に係る縦結合共振子1の平面図を示しており、背景技術にて説明した従来の縦結合共振子100と同じ機能を備えた構成要素には、図12、図13に示したものと同じ符号を付してある。図1に示した縦結合共振子1は、圧電基板10上の中央に第1のIDT電極2を配し、その第1のIDT電極2左右外側に2つのIDT電極(左側に第2のIDT電極3、右側に第3のIDT電極4)を配した3IDT型の縦結合共振子1として構成され、これら3つのIDT電極2、3、4のSAWの伝播方向の左右外側に、さらに反射器5が設けられている点は図12〜図16に示した従来の縦結合共振子100〜103と同様である。
【0017】
また本実施の形態に係る縦結合共振子1は、図12の従来の縦結合共振子100に備わっている3つの接地ポート22、35、45が一つの接地ポート22に集約されている点については図14〜図16に示した改良型の従来の縦結合共振子101〜103と同様であるが、後述する浮き電極を利用して接地型ポート35、45の引き出し方向を反転させることにより接地ポート22、35、45の集約化を実現している点がこれらの縦結合共振子101〜103とは異なっている。そこで以下、浮き電極を利用した当該縦結合共振子1の詳細な構成について説明する。
【0018】
図1及びその拡大図である図2に示すように、第1のIDT電極2は、第1の信号ポート21に接続された第1の信号ポート側バスバー201と、この第1の信号ポート側バスバー201に対向して設けられ、接地ポート22に接続された接地側バスバー203との間に、夫々電極指202、204を交差指状(櫛歯状)に接続した周知のIDT電極構造を備えている。ここで当該第1のIDT電極2を構成する接地側バスバー203は、SAWの伝播方向(交差指状に配置された電極指202、204と直交する方向、即ち、図1、図2の左右方向)に延伸されており、当該延伸された部分は、第1のIDT電極2の左右に形成された2つのIDT電極(第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4)の一部を構成していることにより、これら3つのIDT電極2、3、4の接地ポート22が集約化されている。
【0019】
例えば第1のIDT電極2の左側領域に形成されている第2のIDT電極3について見てみると、左側へと延伸された接地側バスバー203部分に対しては、いずれのポートにも接続されておらず、電気的に浮いた状態となっている第1の浮き電極用バスバー305が対向して設けられており、これら双方のバスバー203、305は互いに平行に配置されている。さらに第1の浮き電極用バスバー305は、第1のIDT電極2の第1の信号ポート側バスバー201の左側に並んで配置されており、この第1の浮き電極用バスバー305から接地側バスバー203までの距離は、第1のIDT電極2を構成する第1の信号ポート側バスバー201から接地側バスバー203までの距離とほぼ等しくなっている。
【0020】
これら接地側バスバー203と第1の浮き電極用バスバー305とが対向する領域には、各バスバー203、305から電極指302、306が交差指状に伸びており、接地ポート22に接続されたIDT電極部である接地側IDT電極部31が形成されている。この接地側IDT電極部31は第2のIDT電極3の一部を構成している。
【0021】
この接地側IDT電極部31を構成する第1の浮き電極用バスバー305は、さらに左側へと延伸されており、当該延伸されたバスバー305部分に対しては、第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303が対向し、且つ双方のバスバー305、303がほぼ平行となるように配置されている。さらに第2の信号ポート側バスバー303は電極指204の左側に並んで配置されており、第1の浮き電極用バスバー305から第2の信号ポート側バスバー303までの距離は、第1のIDT電極2を構成する第1の信号ポート側バスバー201から接地側バスバー203までの距離、及び接地側IDT電極部31を構成する第1の浮き電極用バスバー305から接地側バスバー203までの距離とほぼ等しくなっている。
【0022】
そしてこれら第1の浮き電極用バスバー305と第2の信号ポート側バスバー303とが対向する領域には、各バスバー305、303から電極指307、304が交差指状に伸びており、第2の信号ポート34に接続されたIDT電極部である信号ポート側IDT電極部32が形成されている。以上の構成を備えた第1のIDT電極2の左側の領域の全体を見てみると、当該領域には接地側IDT電極部31と信号ポート側IDT電極部32とがこの順番に配置され、第2のIDT電極3はこれら2つのIDT電極部31、32によって構成されている。
【0023】
また、第1のIDT電極2の右側の領域についてもほぼ同様に、右側へと延伸された接地側バスバー203部分と、いずれのポートにも接続されず、電気的に浮いた状態となっている第2の浮き電極用バスバー405との間に接地側IDT電極部41が形成され、この第2の浮き電極用バスバー405が左側へと延伸された部分と、第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403との間に信号ポート側IDT電極部42が形成されていて、第3のIDT電極4はこれら2つのIDT電極部41、42により構成されている。
【0024】
以上に説明した構成を備えることにより当該縦結合共振子1は、第1のIDT電極2、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の3つのIDT電極2、3、4の接地ポートが共通の接地側バスバー203に集約化された構成となる。そして、この共通の接地側バスバー203を共通の接地ポート22に接続することにより、図12に示した従来型の縦結合共振子100に比べて接地側ポート(電極パッド)の数を2個少なくすることができる。
【0025】
ここで図1に示した本実施の形態に係る縦結合共振子1と、図12に示した従来型の縦結合共振子100とを比較すると、実施の形態に係る縦結合共振子1は従来型の縦結合共振子100には設けられていなかった浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を備えていることから、これらの縦結合共振子1、100の周波数特性は異なったものになってしまうのではないかという懸念もある。しかしながら本発明者は、第2のIDT電極3(接地側IDT電極部31、信号ポート側IDT電極部32)及び第3のIDT電極4(接地側IDT電極部41、信号ポート側IDT電極部42)に設けられた電極指302、304、306、307、402、404、406、407の数を適切に選択することにより、当該縦結合共振子1について従来型の縦結合共振子100とほぼ同等の周波数特性を持たせることができることを確認している。以下、本実施の形態に係る縦結合共振子1が従来の縦結合共振子100とほぼ同等の性能を示す原理およびその作用について図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。なお、以下に説明する図3、図7、図9、図10の各模式図では、便宜上、反射器5や圧電基板10などの記載を省略してある。
【0026】
図3(a)は、図12に示した従来の3IDT型の縦結合共振子100を模式的に示している。ここで説明を簡単にするために、各電極指202、204、302、304、402、404の中心軸同士の間隔(ピッチ)「d」は、例えばフィルタとして機能する当該第2のIDT電極3の通過帯域域の中心周波数を持つ周波数信号を第1の信号ポート21より入力した場合に、縦結合共振子1に励振されるSAWの半波長と等しい長さに形成されているものとする。
【0027】
この場合に前述の中心周波数を持つ周波数信号を第1の信号ポート21に入力すると、当該周波数信号は第1のIDT電極2にて電気-機械変換されてSAWが励振され、このSAWは各電極指202、204、302、304、402、404が伸びる方向と直交する方向へ向けて圧電基板10を伝播する。
【0028】
ここで例えば図3(a)に示した第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の各信号ポート34、44に接続された電極指304、404は、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて偶数本目に配置されているものとすると、これらの電極指304、404には、第1の信号ポート21に接続された電極指202にて励振されたSAWと同じ位相(例えば振幅が最大となる位相、図3中に「+」で示してある)を持つSAWが到達する。
【0029】
このSAWが各電極指304、404にてSAWが機械-電気変換されることにより、第2の信号ポート34、第3の信号ポート44からは第1の信号ポート21へと入力された周波数信号と同じ位相の周波数信号が出力される。このとき接地側に接続された各電極指204、302、402では、入力側の周波数信号から半波長だけ位相のずれたSAW(例えば振幅が最小となる位相、図3中に「−」で示してある)が機械-電気変換されるが、これらの電極指204、302、402は接地されているため、半波長分だけ位相のずれた(位相の反転した)当該周波数信号は縦結合共振子100からは出力されない。
【0030】
以上に説明した従来型の縦結合共振子100の左右のIDT電極3、4について、例えば図3(b)に示すように、浮き電極を構成し、いずれのポートにも接続されていない電極指307、407、306、406を各々信号ポート34、44側の電極指304、404並びに接地側の電極指306、406と交差させることにより、これらのIDT電極3、4を各々接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに分割したとする。このとき各電極指306、307、406、407は、第2のIDT電極3側、第3のIDT電極4側で、各々共通の浮き電極用バスバー305、405に接続されており、これらのバスバー305、405毎に同じ電位となっている。
【0031】
この場合に、第1の信号ポート21から周波数信号を入力すると、既述の縦結合共振子100の場合と同様に第1のIDT電極2に励振されたSAWは左右に配置された接地側IDT電極部31、41へ向かって伝播する。そしてこれら接地側IDT電極部31、41に設けられている電極指306、406は、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて奇数本目に配置されていることから当該電極指306、406では、入力信号とは半波長分だけ位相のずれた(位相の反転した)SAWが周波数信号に機械-電気変換される。
【0032】
そして既述のようにこれら接地側IDT電極部31、41側の電極指306、406は浮き電極用バスバー305、405を介して信号ポート側IDT電極部32、42側の電極指307、407と同電位となっていることから、接地側IDT電極部31、41で機械-電気変換された周波数信号は、各信号ポート側IDT電極部32、42で再び電気-機械変換されてSAWとなり、出力側の信号ポート34、44に接続された電極指304、404に到達する。これら信号ポート34、44に接続された電極指304、404は、信号ポート側IDT電極部32、42側の電極指307、407から見て奇数本目に配置されているため、電極指307、407で励振されるSAWの位相に対して半波長分だけ位相のずれた周波数信号、即ち位相の反転が2回行われた結果、第1の信号ポート21に入力された周波数信号と同位相の周波数信号が出力される。
【0033】
一方で本実施の形態に係る縦結合共振子1は、新たにIDT電極部31、41を追加したことにより、信号ポート側IDT電極部32、42と接地側IDT電極部31、41とが直列に接続された状態となるため、第2、第3のIDT電極3、4全体の容量が従来のおよそ半分程度となる。この結果、出力側の信号ポート34、44から見た各IDT電極3、4のインピーダンスが大きくなり縦結合共振子1の挿入損失が増大するおそれもある。そこで、本実施の形態に係る縦結合共振子1は、接地側、信号ポート側の両IDT電極部31、32、41、42の電極指数を従来の縦結合共振子100に設けられていたIDT電極3、4の電極指数のおよそ2倍程度とすることにより、各IDT電極部31、32、41、42の容量を大きくし、IDT電極3、4全体の容量低下を抑え、挿入損失の増大を抑制している。
【0034】
なお図示の便宜上、図3(b)〜図3(d)の各図においては、各IDT電極部31、32、41、42の電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数は従来型の縦結合共振子100の左右のIDT電極3、4と同程度の本数で示してあるが、実際には上述のように従来型と同程度の周波数特性を示すようにこれらの本数を増やしてある。
【0035】
以上に説明した考え方に基づいて、図3(b)に示すように浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を用いて接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに夫々分割した第2のIDT電極3及び第3のIDT電極4につき、今、接地側IDT電極部31、41を圧電基板10上で180度回転させて配置すると共に、当該回転させた接地側IDT電極部31、41の左右外側に信号ポート側IDT電極部32、42を配置する。すると図3(c)に示すように中央の第1のIDT電極2と、左右の第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成するIDT電極部31、32、41、42とがSAWの伝播方向に一列に配置された縦結合共振子を得ることができる。
【0036】
この図3(c)に示す縦結合共振子は、IDT電極部31、32、41、42の配置位置を変更したに過ぎないことから図3(b)に示したものとほぼ同等の周波数特性を持っている。そしてこの図3(c)に示す縦結合共振子では接地側の電極指202、302、402の接続されているバスバーが互いに並んで配置されていることから、図3(d)に示すようにこれらのバスバーを共通化することが可能となる。図1に示す本実施の形態に係る縦結合共振子1は、以上に説明した考え方に基づいて構成されており、接地ポート22を集約化して電極パッドの数を減らすことにより縦結合共振子1の小型化を図りつつ、従来の縦結合共振子1と同程度の周波数特性を発揮することができる。
【0037】
縦結合共振子1には例えば周波数特性調整用のSAW共振子6などが接続されることがあるが、電極パッドの数を減らしたことにより空いた領域に、例えば図4に示すように当該SAW共振子6を配置することが可能となる。この結果、例えば図12に示した従来の縦結合共振子1と比較して圧電基板10の大きさを殆ど変えずに周波数特性調整用のSAW共振子6を備えた縦結合共振子1aを製造することが可能となる。
【0038】
ここで上述した縦結合共振子1の構成を本発明の特許請求の範囲の表現に合わせて言い替えると、入力ポートである第1の信号ポート21が接続された第1の信号ポート側バスバー201及び電極指202は第1の櫛歯電極に相当し、接地側バスバー203と電極指204、302、402とが接地側の櫛歯電極に相当する。また浮き電極である第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307は左側1番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側2番目櫛歯電極であると共に、本例では第2の櫛歯電極に相当している。一方、浮き電極である第2の浮き電極用バスバー405及び電極指406、407は右側1番目櫛歯電極であり、もう一方の出力ポートである第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側2番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当している。そして、第2のIDT電極3の左側に設けられた反射器が第2の反射器、第3のIDT電極4の右側に設けられた反射器が第3の反射器となっている。
【0039】
本実施の形態に係る縦結合共振子1によれば以下の効果がある。圧電基板10にSAWを励振可能な浮き電極(本例で左側1番目櫛歯電極を構成する第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307、並びに右側1番目櫛歯電極を構成する第2の浮き電極用バスバー405及び電極指406、407)を用いて、縦結合共振子1を構成するIDT電極2、3、4の接地側の櫛歯電極の夫々の引き出し方向を同じ方向に揃え、これらを1つの櫛歯電極(接地側の櫛歯電極を構成する接地側バスバー203及び電極指204、302、402)に集約しているので、例えば図14〜図16に示す縦結合共振子101〜103のように電極指302、402を用いたり、接続線300、400を引き回したりして接地ポート22を集約する場合と比較して、挿入損失の増大を抑えつつ縦結合共振子1を小型化することができる。
【0040】
なお、図3(a)〜図3(d)の説明でも述べたように、浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を用いて第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42とに分割し、従来の縦結合共振子100と同程度の周波数特性を得るためには、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成する電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数を増やす必要があり、その分、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4のサイズを大きくする必要がある。しかしながら図12に示すように、従来の縦結合共振子100においても各ポート21、22、34、35、44、45を構成する電極パッドは夫々のIDT電極2、3、4よりもその占有面積が大きく、反射器5の両サイドには上述の電極指302、306、307、304、402、406、407、404の本数を増やし、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を大型化する余裕がある場合が多い。このため、反射器5を含むIDT電極1、2、3のトータルのサイズを例えば図12に示した圧電基板10の幅と同程度か、またはこの幅よりも若干広くなる程度まで大きくしたとしても、依然として電極パッド数の削減の効果は大きいといえる。
【0041】
接地ポート22を集約化した縦結合共振子は、図1に示した例に限定されるものではない。例えば図5、図6に示した縦結合共振子1bのように、浮き電極を追加して第2の信号ポート34、第3の信号ポート44の引き出し方向を前方側へと変更してもよい。例えば図6の拡大図に示すように、左側の第2のIDT電極3については接地側IDT電極部31の左側へ延伸された第1の浮き電極用バスバー305の当該延伸された部分に、いずれのポートにも接続されていない第3の浮き電極用バスバー308を対向させ、これらのバスバー305、308に接続された電極指307、309にて浮きIDT電極部33が追加形成されている。そしてこの第3の浮き電極用バスバー308のさらに左側に当該第3の浮き電極用バスバー308を延伸させ、この延伸した部分と第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303とを対向させて信号ポート側IDT電極部32を形成することにより、第2の信号ポート34は信号ポート側IDT電極部32の前方側へと引き出されている。
【0042】
一方、第1のIDT電極2の右側の第3のIDT電極4についても同様に、右側へ延伸された第2の浮き電極用バスバー405の当該延伸された部分に、いずれのポートにも接続されていない第4の浮き電極用バスバー408を対向させ、これらのバスバー405、408に接続された電極指407、409を交差させてなる浮きIDT電極部43を接地側IDT電極部41と信号ポート側IDT電極部42との間に介在させることにより、第3の信号ポート44の引き出し方向を信号ポート側IDT電極部42の前方側へと変更している。また本例では、第2のIDT電極3、第3のIDT電極4の各信号ポート34、44に接続された電極指304、404が、第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて奇数本目となっていることにより、図5に示すように入力側の周波数信号とは位相の反転した周波数信号が各信号ポート34、44から出力されるようになっている。
【0043】
このように浮き電極を用いて左右のIDT電極3、4を各々3つの電極部31、33、32、41、43、42に三分割すると、各IDT電極3、4の容量は従来の縦結合共振子100に設けられたIDT電極3、4のおよそ1/3となる。このため、各IDT電極部31、32、33、41、42、43においてもインピーダンスの増加を抑えるため電極指302、306、307、309、310、304、402、406、407、409、410、404の本数を、例えば従来の3倍程度まで増やすとよい。
【0044】
図5、図6に示す縦結合共振子1bでは、浮き電極である第3の浮き電極用バスバー308及び電極指309、310は特許請求の範囲の左側2番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側3番目櫛歯電極であると共に第2の櫛歯電極に相当している。一方、浮き電極である第4の浮き電極用バスバー408及び電極指409、410は右側2番目櫛歯電極であり、出力ポートである第3の信号ポート44に接続された第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側3番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当している。
【0045】
さらには左右の第2のIDT電極3、第3のIDT電極4を構成するIDT電極部の数は同数である場合に限定されるものではなく、図7(a)の縦結合共振子1cに示すように左側の第2のIDT電極3については接地側IDT電極部31、浮きIDT電極部33、信号ポート側IDT電極部32に三分割し、右側の第3のIDT電極4については接地側IDT電極部41と信号ポート側IDT電極部42とに二分割して、夫々の信号ポート32、42の引き出し方向が反対向きとなるようにしてもよい。
【0046】
また例えば図5に示したように、左右のIDT電極3、4を二分割し、入力側の第1の信号ポート21とは反対方向へと第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44を引き出す場合であっても、各信号ポート32、33から出力される信号の位相は入力された周波数信号と同位相である場合に限定されない。これらの信号ポート32、33に接続された電極指304、404が入力側の第1の信号ポート21に接続された電極指202から数えて偶数本目または奇数本目となるように電極指の本数を適宜調節することにより自由に変更することができる。例えば図7(b)の縦結合共振子1dは、入力された周波数信号とは位相の反転した周波数信号が出力される場合であり、図7(c)の縦結合共振子1dは第2の信号ポート34と、第3の信号ポート44とで互いに位相の反転した平衡信号が出力される場合である。
【0047】
上述の例に加え、例えば図8に示すように、一方側の第3のIDT電極4に浮き電極を用いることなく縦結合共振子1fを構成してもよい。本例について簡単に説明すると、図12に示した従来型の縦結合共振子100は、例えば第3のIDT電極4の前方側の電極パッドを第3の信号ポート44とし、後方側の電極パッドを接地側とすることにより、例えば図9(a)に示すように不平衡入力-平衡出力タイプの縦結合共振子として使用することができる。この場合には、中央の第1のIDT電極2の接地ポート22と右側の第3のIDT電極4の接地ポート45とが隣り合って配置された状態となっており、既にこれらを集約化することが可能である。
【0048】
そこで既述の図3(b)、図3(c)で説明した考え方に基づいて、左側の第2のIDT電極3のみを浮き電極によって接地側IDT電極部31と信号ポート側IDT電極部32とに分割し、これらをSAWの伝播方向に並べることにより、図9(b)に示すように、3つの接地ポート22、35、45を隣り合わせて配置することができる。この結果、図9(c)並びに図8に示すように、接地ポート22が1つに集約化された縦結合共振子1fを得ることができる。
【0049】
図8及び図9(c)に示す縦結合共振子1fにおいては、浮き電極である第1の浮き電極用バスバー305及び電極指306、307は特許請求の範囲の左側1番目櫛歯電極に相当し、出力ポートである第2の信号ポート34に接続された第2の信号ポート側バスバー303並びに電極指304は、左側2番目櫛歯電極であると共に、第2の櫛歯電極に相当している。一方、第3の信号ポート側バスバー403並びに電極指404は、右側1番目櫛歯電極であると共に、第3の櫛歯電極に相当していることとなる。
【0050】
この場合にも、第2のIDT電極3の分割パターンは二分割に限定されるものではなく、図10の縦結合共振子1gに示すように一方側の第2のIDT電極3を接地側IDT電極部31、浮きIDT電極部33、信号ポート側IDT電極部32に三分割することにより、第2の信号ポート34を前方側へ引き出すようにしてもよい。また図8〜図10に示した例とは反対に、左側に設けた第2のIDT電極3を浮き電極を用いず、分割しない構成として、右側の第3のIDT電極4を二分割、または三分割してもよいことは勿論である。
【0051】
ここで図1〜図10に示した各実施の形態に係る縦結合共振子1、1a〜1gの説明においては、第1の信号ポート21を図面に向かって前方側に配置して左側に少なくとも1個の浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307)を備える例を例示したが、これらの縦結合共振子1、1a〜1gに対して左右方向に鏡像対称の構成を備えた縦結合共振子についても本発明の技術的範囲に含まれる。この場合には、第1の信号ポート21を図面に向かって後方側に配置した状態で見れば、左側に少なくとも1個の浮き電極が配置された構成となっているからである。
【0052】
またこれら縦結合共振子1、1a〜1gは、第1の信号ポート21から周波数信号を入力し、第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44から出力する使用法に限られず、第2の信号ポート34及び第3の信号ポート44の2つのポートから周波数信号を入力して第1の信号ポート21からこれを出力してもよい。さらに上述の各縦結合共振子1、1a〜1gは反射器5を備えていない場合であっても本発明の技術的範囲に含まれ、縦結合共振子に利用する弾性波はSAWに限定されるものではなく、例えば弾性境界波を利用するタイプの共振子であってもよい。
【実施例】
【0053】
(シミュレーション)
図1、図12に夫々示す縦結合共振子1、100と同様の構造を有するフィルタモデルを作成し、夫々のフィルタモデルについてのフィルタ特性をシミュレーションした。
(実施例1)
図1に示した縦結合共振子1について、第1の信号ポート21より周波数信号を入力し、その通過特性をシミュレーションした。
シミュレーション条件
圧電基板:LiTaO3
電極指ピッチ:2.0μm
第1のIDT電極2の電極指202、204数:33本
第2のIDT電極3の接地側IDT電極部31の電極指302、306数:31本
第2のIDT電極3の信号ポート側IDT電極部32の電極指307、304数:40本
第3のIDT電極4の接地側IDT電極部41の電極指402、406数:31本
第3のIDT電極4の信号ポート側IDT電極部42の電極指407、404数:40本
反射器5:電極指ピッチ 2.0μm、 電極指数 51本
(比較例)
図12に示した縦結合共振子100のについて、第1の信号ポート21より周波数信号を入力し、その通過特性をシミュレーションした。
シミュレーション条件
圧電基板:LiTaO3
電極指ピッチ:2.0μm
第1のIDT電極2の電極指202、204数:38本
第2のIDT電極3の電極指302、304数:23本
第3のIDT電極4の電極指402、404数:23本
反射器5:電極指ピッチ 2.0μm、 電極指数 51本
【0054】
(シミュレーション結果)
図11(a)、図11(b)にシミュレーション結果を示す。図11(a)は各縦結合共振子1、100の通過特性の全体図であり、図11(b)は通過帯域における通過特性の拡大図を示している。各図の横軸は周波数[MHz]、縦軸は減衰量[dB]を示しており、図中の実線は(実施例)、破線は(比較例)のシミュレーション結果を表している。
【0055】
図11(a)を見ると、(実施例)にかかる縦結合共振子1と(比較例)にかかる縦結合共振子100とでは、左右の減衰域では幾分異なる特性を示すものの、中央の通過帯域では両共振子1、100の通過特性がほぼ一致している。浮き電極(第1の浮き電極用バスバー305と電極指306、307、並びに第2の浮き電極用バスバー405と電極指406、407)を追加して、第1のIDT電極2及び第2のIDT電極3を各々接地側IDT電極部31、41と信号ポート側IDT電極部32、42することにより、接地ポート22の集約化を図った縦結合共振子1については、こうした構造上の差異があるにも拘らず、通過帯域の特性を拡大した図11(b)を見ても従来の縦結合共振子100の通過特性とよく一致しており、挿入損失の増加も見られない。以上のことから縦結合共振子1は小型かつ、挿入損失の抑制された縦結合共振子であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態に係る3IDT型の縦結合共振子の平面図である。
【図2】前記縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図3】前記縦結合共振子の構造に係る説明図である。
【図4】前記縦結合共振子の適用例を示す平面図である。
【図5】他の実施の形態に係る縦結合共振子の平面図である。
【図6】前記他の縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図7】実施の形態に係る縦結合共振子の各種変形例を示す模式図である。
【図8】さらに他の実施の形態に係る縦結合共振子の平面図である。
【図9】前記さらに他の縦結合共振子の構造に係る説明図である。
【図10】前記さらに他の縦結合共振子の変形例を示す模式図である。
【図11】実施の形態に係る縦結合共振子の通過特性を示す特性図である。
【図12】従来の縦結合共振子の平面図である。
【図13】前記従来の縦結合共振子のIDT電極部分の拡大図である。
【図14】前記従来の縦結合共振子の変形例を示す平面図である。
【図15】前記従来の縦結合共振子の第2の変形例を示す平面図である。
【図16】前記従来の縦結合共振子の第3の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1a〜1g
縦結合共振子
10 圧電基板
100〜103
縦結合共振子
2 第1のIDT電極
21 第1の信号ポート
22 接地ポート
201 第1の信号ポート側バスバー
202、204
電極指
203 接地側バスバー
3 第2のIDT電極
31 接地側IDT電極部
32 信号ポート側IDT電極部
33 浮きIDT電極部
34 第2の信号ポート
35 接地ポート
302、304、306、307、309、310
電極指
303 第2の信号ポート側バスバー
305 第1の浮き電極用バスバー
308 第3の浮き電極用バスバー
4 第3のIDT電極
41 接地側IDT電極部
42 信号ポート側IDT電極部
43 浮きIDT電極部
44 第3の信号ポート
45 接地ポート
402、404、406、407、409、410
電極指
403 第3の信号ポート側バスバー
405 第2の浮き電極用バスバー
408 第4の浮き電極用バスバー
5 グレーティング反射器(反射器)
6 SAW共振子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子において、
(1)入力ポート及び出力ポートの一方が接続され、電極指が前後方向に伸びる第1の櫛歯電極と、
(2)この第1の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成すると共に左右両側に延伸された部分を有する、接地された接地側の櫛歯電極と、
(3)入力ポート及び出力ポートの他方が各々接続された第2の櫛歯電極及び第3の櫛歯電極と、を備え、
(4)前記第2の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の左側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側1番目櫛歯電極と呼び、この左側1番目櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側2番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記左側2番目の櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極及び左側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであり、
(5)前記第3の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の右側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側1番目櫛歯電極と呼ぶとすると、この右側1番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記右側1番目櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側2番目櫛歯電極により構成されるか、
c.前記右側2番目の櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極及び右側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであることを特徴とする縦結合共振子。
【請求項2】
前記縦結合共振子は、
(6)前記第2の櫛歯電極と、当該第2の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第2の反射器と、
(7)前記第3の櫛歯電極と、当該第3の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第3の反射器と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の縦結合共振子。
【請求項1】
圧電基板上に、電極指及びバスバーからなる櫛歯電極を互いに交差させて構成したIDT電極が設けられた縦結合共振子において、
(1)入力ポート及び出力ポートの一方が接続され、電極指が前後方向に伸びる第1の櫛歯電極と、
(2)この第1の櫛歯電極と交差してIDT電極を構成すると共に左右両側に延伸された部分を有する、接地された接地側の櫛歯電極と、
(3)入力ポート及び出力ポートの他方が各々接続された第2の櫛歯電極及び第3の櫛歯電極と、を備え、
(4)前記第2の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の左側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側1番目櫛歯電極と呼び、この左側1番目櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側2番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記左側2番目の櫛歯電極を左側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を左側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記左側1番目の櫛歯電極及び左側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記左側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであり、
(5)前記第3の櫛歯電極は、
a.前記接地側の櫛歯電極の右側に延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側1番目櫛歯電極と呼ぶとすると、この右側1番目櫛歯電極により構成されるか、
b.前記右側1番目櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側2番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側2番目櫛歯電極により構成されるか、
c.前記右側2番目の櫛歯電極を右側に延伸させて、この延伸する部分と交差してIDT電極を構成する櫛歯電極を右側3番目櫛歯電極と呼ぶとすると、前記右側1番目の櫛歯電極及び右側2番目の櫛歯電極を浮き電極として、前記右側3番目櫛歯電極により構成されるか、
のいずれかであることを特徴とする縦結合共振子。
【請求項2】
前記縦結合共振子は、
(6)前記第2の櫛歯電極と、当該第2の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第2の反射器と、
(7)前記第3の櫛歯電極と、当該第3の櫛歯電極と交差する櫛歯電極と、からなるIDT電極の外側に隣接する第3の反射器と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の縦結合共振子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−130536(P2010−130536A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305156(P2008−305156)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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