説明

縦長三次元映像の撮影表示方法及び記録媒体

【課題】横長映像用の機器を利用して、画質を劣化させずに、簡単に、低コストで縦長の三次元映像を表示することができる縦長三次元映像の撮影表示方法を提供する。
【解決手段】人間の視差に対応した所定の位置に配置された2つの横長映像撮影用の撮影装置12、14と、2つの撮影装置12、14で撮影した映像を三次元映像化処理する映像処理部16と、横長の三次元表示装置18と、を有する三次元映像撮影表示システム10において、2つの横長映像撮影用の撮影装置12、14を、それぞれ光軸L回りに90度回転させて保持した状態で撮影することにより、撮影された横長の映像を90度回転させた状態で視差を生じるように撮影するとともに、三次元表示装置18を、表示面に垂直な軸回りに90度回転させて長手方向を鉛直方向に向けて配置することにより、縦長の三次元映像を表示する縦長三次元映像の撮影表示方法から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に縦長の三次元映像を得ることができる縦長三次元映像の撮影表示方法及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビ、映画等で三次元映像を再現する技術が実用されている。特に近年では、三次元ディスプレイの技術開発が進むとともに、コストの低廉化や映像コンテンツの増加等も相俟って臨場感のある三次元映像を一般家庭でも手軽に楽しめるようになりつつある。人間が物を見る場合、右目と左目とで映る像に差異が生じることから物の奥行き感を認識している。よって、この両眼視差を利用した立体視を行わせるように三次元映像の撮影、表示が行われている。三次元映像を撮影するためには、2台のカメラを人間の眼幅を基準として左右に並べて、異なるアングルから同一の被写体を同時に撮影する。そして、2台のカメラにより撮影した2つの映像を、右目用の映像を右目に左目用の映像を左目にそれぞれ映すことで視差が生じて、鑑賞者は映像に立体感を知覚することができる。従来、三次元映像を撮影表示する技術としては、例えば、特許文献1に、2つのTVカメラを適正な間隔で一体的に支持した立体カメラ装置が開示されている。また、図7に示すような、2つのレンズ、撮像素子を一体化した二眼式の立体カメラも提案されている。一方、例えば、特許文献2には、テレビ画面に右目用の映像と左目用の映像を交互に表示させるとともに、映像に同期して右目側又は左目側を交互に開閉する液晶シャッター眼鏡を使用して、右目用の映像の時は右目で、左目用の映像の時は左目で見ることにより三次元映像表示を行う方式(アクティブシャッタ方式)の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2791092号公報
【特許文献2】特開2010−268037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元映像に限らず一般に写真等の静止画及びテレビ、映画、ビデオ等の動画の映像は、横長のものが多く利用されている。最近では、テレビ等のディスプレイの画面のアスペクト比(横縦比)は16:9のものが主流になっている。これは、人間の視野が横広くなっているのに合わせて横長に設計されていることが考えられる。そのため、カメラ等の撮影装置や、テレビ等の表示装置を含む撮影表示機器類も横長映像を基準として設計されたものが普及している。しかしながら、例えば、ファッションショーで1人の人物の全身を大きく撮影し三次元映像で衣服等の詳細を確認したい場合がある。この際、横長の三次元映像で撮影表示すると、人物が比較的小さくなるとともに余分な背景が多く映ってしまう問題があった。よって、人物のように縦長の被写体を画面全体に大きく表示できるような縦長の三次元映像の撮影表示する技術の需要も高まりつつある。しかしながら、縦長の3次元映像を撮影、表示するためには、例えば縦長のアスペクト比となる撮影装置や縦長の三次元映像表示装置、或いは映像処理装置等の器材を別途設計する必要があり、コストが高くつく問題があった。また、図7に示すような二眼式立体カメラでは、単に立体カメラを90度回転させて撮影しても被写体Mが横倒し状態となった横長の三次元映像が表示されるだけであり、三次元ディスプレイを縦に置いても左右の視差が生じず縦長の三次元映像を表示させることは不可能であった。また、横長映像で撮影した三次元映像から人物部分のみを切り抜いて拡大する方法も考えられるが、特殊な映像処理を施す必要があり手間、コストがかかるとともに画質が劣化する問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、普及している横長映像用の撮影表示システムを利用して、画質を劣化させずに、簡単に、かつ低コストで縦長の三次元映像を表示することができる縦長三次元映像の撮影表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、横長の映像を撮影する2つの撮影装置12、14であり、人間の視差に対応した所定の位置であって、互いに被写体Mに対する撮影距離が同一となる対称位置に、撮影領域の横軸方向を合わせるように配置され、一方の撮影装置12で右目用の映像を撮影すると同時に他方の撮影装置14で左目用の映像を撮影する2つの横長映像撮影用の撮影装置12、14と、2つの撮影装置で撮影した右目用の映像20と左目用の映像22を三次元映像化処理する映像処理部16と、横長の三次元映像に対応して横長表示する横長の三次元表示装置18と、を有する三次元映像撮影表示システム10において、人間の視差に対応した間隔Dで配置される2つの横長映像撮影用の撮影装置12、14を、それぞれ光軸L1、L2回りに90度回転させて保持した状態で撮影することにより、撮影された横長の映像20a、22aを90度回転させた状態で視差を生じるように撮影するとともに、三次元表示装置18を、表示面に垂直な軸回りに90度回転させて長手方向を鉛直方向に向けて配置することにより、縦長の三次元映像を表示することを特徴とする縦長三次元映像の撮影表示方法から構成される。
【0007】
また、本発明は、上記記載の縦長三次元映像の撮影表示方法において、撮影された右目用の映像と左目用の映像を三次元映像化処理した映像を記録した記録媒体から構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の縦長三次元映像の撮影表示方法によれば、横長の映像を撮影する2つの撮影装置であり、人間の視差に対応した所定の位置であって、互いに被写体に対する撮影距離が同一となる対称位置に、撮影領域の横軸方向を合わせるように配置され、一方の撮影装置で右目用の映像を撮影すると同時に他方の撮影装置で左目用の映像を撮影する2つの横長映像撮影用の撮影装置と、2つの撮影装置で撮影した右目用の映像と左目用の映像を三次元映像化処理する映像処理部と、横長の三次元映像に対応して横長表示する横長の三次元表示装置と、を有する三次元映像撮影表示システムにおいて、人間の視差に対応した間隔で配置される2つの横長映像撮影用の撮影装置を、それぞれ光軸回りに90度回転させて保持した状態で撮影することにより、撮影された横長の映像を90度回転させた状態で視差を生じるように撮影するとともに、三次元表示装置を、表示面に垂直な軸回りに90度回転させて長手方向を鉛直方向に向けて配置することにより、縦長の三次元映像を表示することから、例えば、普及している横長規格で設計された撮影装置や表示装置、映像処理装置等の機材を有効に利用して、画質を劣化させずに、簡単に、かつ低コストで縦長の三次元映像を表示することができる。その結果、例えば、人物やその他縦長の被写体を大きく三次元映像表示するのに有利である。
【0009】
また、上記記載の縦長三次元映像の撮影表示方法において、撮影された右目用の映像と左目用の映像を三次元映像化処理した映像を記録した記録媒体から構成されることから、手軽に縦長の三次元映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る縦長三次元映像の撮影表示方法及び撮影表示システムの概略説明図である。
【図2】図1の三次元映像撮影表示システムの概略ブロック図である。
【図3】図1の撮影表示システムの撮影映像及び表示映像の概略説明図である。
【図4】図1の縦長三次元映像の撮影表示方法の撮影映像及び表示映像の概略説明図である。
【図5】2つの撮影装置を支持する支持具の一例であり、(a)は支持具の正面側からの斜視図、(b)は支持具の背面側からの斜視図、(c)は支持具の作用説明図である。
【図6】2つの撮影装置を支持する支持具の他の例であり、(a)は支持具の正面側からの斜視図、(b)は支持具の作用説明図である。
【図7】従来の二眼式立体カメラ装置の外観図である。
【図8】図7の二眼式立体カメラ装置を90度回転して撮影表示した場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照しつつ本発明の縦長三次元映像の撮影表示方法の実施の形態について説明する。本発明に係る縦長三次元映像の撮影表示方法は、例えば、横長三次元映像の撮影表示システムを有効に利用して、縦長の三次元映像を撮影表示するものである。図1ないし図4は、本発明の縦長三次元映像の撮影表示方法の一実施形態を示している。本実施形態に係る縦長三次元映像の撮影表示方法に利用される三次元映像撮影表示システム10は、図1、図2に示すように、2つの横長映像撮影用の撮影装置12、14と、映像処理装置16と、三次元表示装置18と、を有している。
【0012】
2つの撮影装置12、14は、それぞれレンズと撮像素子とを含み、アスペクト比が横長となる映像(動画)を撮影する横長映像撮影手段である。本実施形態では、撮影装置12、14は、例えば、レンズ、撮像素子、その他制御や処理を行う回路を筐体に収納した比較的小型の動画撮影用のデジタルビデオカメラ装置からなり、各構成要素が同一のものを2つ用意される。撮影装置12、14は、撮影した映像を着脱可能なフラッシュメモリカード等の記録媒体に記録する映像記録部を有している。なお、撮影装置12、14は、撮影装置本体と映像記録装置と別々に構成してケーブル等で接続し、撮影装置本体から記録装置に映像信号を送って記録するようにしてもよい。また、撮影装置12、14は、記録媒体へ記録せずに、撮影した映像を直接的に映像処理装置16に有線又は無線で送るようにしてもよい。図3に示すように、撮影装置12、14で撮影される映像22、24は、例えば、アスペクト比が16:9の横長の映像で得られる。撮影装置12、14(撮像素子)の横軸方向(x1、x2)、縦軸方向(y1、y2)に基づいて映像の横軸方向(X1、X2)、縦軸方向(Y1、Y2)が設定され、撮影した映像は横長となる。なお、撮影装置12、14は、例えば、画素数やアスペクト比等を変更設定できるものであってもよい。この際、2つの撮影装置どうしで同一条件に設定される。
【0013】
図1、図3に示すように、2つの撮影装置12、14は、一方の撮影装置12が右目用の映像20を撮影すると同時に、他方の撮影装置14が左目用の映像22を撮影するように、人間の視差に対応した所定の位置に対称的に配置される。2つの撮影装置12、14は、例えば、互いの間隔Dすなわち基線長を人間の眼幅(約65mm)程度に合わせ、互いに同一の被写体(撮影対象)Mに撮影方向を向けるとともに、被写体Mとの撮影距離が同一となる位置に左右対称的に配置され、横長の撮影領域を撮影する。この際、2つの撮影装置12、14は、横長の撮影領域RZ、LZの横軸方向x1、x2を合わせるように設定されている。すなわち、2つの撮影装置12、14は、それぞれ撮影領域RZ、LZを横長とした横位置で設定されるとともに、それらは相対的に横軸方向x1、x2が被写体側から見ると同一平面上になるようにレベルを合わせ、縦軸方向y1、y2が平行に対向するような位置関係で配置され、撮影された2つの映像に視差が生じるようになっている。また、2つの撮影装置12、14は、それぞれの撮影中心軸L1,L2を通って撮影面に直交する仮想的な平面に対して、横軸方向x1、x2が平行し、縦軸方向y1、y2が直交するようになっているといえる。なお、2つの撮影装置12、14どうしでは、例えば、ズーム、露光、露出等撮影条件を一致させて設定される。なお、2つの撮影装置12、14の基線長や視方向の角度は撮影装置と被写体の距離やズーム等に合わせて適宜変更設定されるようにしてもよい。
【0014】
なお、本実施形態では、2つの撮影装置12、14は、例えば、図5に示すような支持具40によって一体的に支持されて、2つの撮影装置12、14の所定の位置関係を保持するようになっている。支持具40は、例えば、三脚42の上方に共通基台44が接続されている。共通基台44には、例えば、撮影装置12、14を互いに所定の間隔をあけた位置にそれぞれ支持するためのL字状板材からなる1対の取付部材46がボルト等を含む締結部材48等を介して固定されている。なお、取付部材46は、例えば、撮影装置12、14を挟持構造、嵌合構造等で固定する構成等、その他ずれが生じにくいように取付ける構造であれば任意の構成でよい。取付部材46は、例えば、雄ネジ部を有する締結部材50を介して撮影装置12、14の筐体下面側に設けられるネジ孔(図示せず)等に着脱可能に螺合することで該撮影装置が取り付けられる。取付部材46は、例えば、共通基台44に対してそれぞれ締結部材48のボルト軸回りに90度回転変位し、かつその回転変位状態で固定可能となっている。すなわち、共通基台44と取付部材46と締結部材48とは、撮影装置を光軸回りに90度回転した状態で保持できる回転変位機構52を構成している。よって、図5(c)に示すように、後述の縦長三次元映像の撮影表示方法の際に、簡単に撮影装置12、14を光軸回りに90度回転した状態で配置できる。また、図6は支持具の他の例を示しており、図6に示した支持具40aでは、例えば、平板状の共通基台44aの上面側にL字板状の取付部材46aが組み付けられている。取付部材46aは、その水平部分と鉛直部分とのそれぞれに締結部材50を介して撮影装置12、14を取り付けることができるようになっており、各撮影装置を横向きと、光軸回りに90度回転した縦向きの態様で取り付けることができるようになっている。また、取付部材46aと締結部材50とは、回転変位機構52aを構成している。なお、支持具は、図5、図6に示した例に限らず、例えば、2つの撮影装置12、14の互いの間隔を変更可能に設けられていても良い。また、支持具40は、2つの撮影装置12、14の被写体に対する視方向の角度を変更可能に設けられていても良い。また、支持具40は、例えば、三脚で支持する構成に限らず、2つの撮影装置12、14を視差が生じる位置関係に保持できるものであればよく、地面や台上に設置して撮影する構成や、手で持って撮影できる構成等その他任意の構成でもよい。
【0015】
映像処理装置16は、撮影装置12、14で撮影した右目用の映像20と左目用の映像22を三次元映像化処理する映像処理部である。本実施形態では、映像処理装置16は、2つの撮影装置12、14で撮影された映像をそれぞれ入力する映像入力部26、28と、入力された2つの映像を所定の方式で合成処理して三次元映像24を作成する三次元映像作成部30と、を含む。2つの映像入力部26、28は、例えば、記録媒体から映像を読み取るようになっているが、電気ケーブル等により撮影装置12、14より直接的に映像を入力するようにしてもよい。三次元映像作成部30は、例えば、映像入力部26、28より入力された右目用の映像20と左目用の映像22を左右方向(X1、X2方向)に圧縮して左右に並べたサイド・バイ・サイド方式、又は上下方向(Y1、Y2方向)に圧縮して上下に並べたトップ・アンド・ボトム方式、の三次元映像24を作成する。その三次元映像24は、例えば、デジタルビデオテープ、フラッシュメモリカード、ハードディスク、光ディスク等の記録媒体に記録される。なお、映像処理装置16は、例えば、右目用の映像20と左目用の映像22とをフレームごとに交互に並べるフレーム・シーケンシャル方式等、その他任意の三次元映像化処理を行ってもよい。また、三次元映像24は記録媒体に記録せずに直接的に三次元表示装置18に送られるように構成してもよい。
【0016】
三次元表示装置18は、映像の横軸方向(X1、X2)、縦軸方向(Y1、Y2)を表示部34の横軸方向X、縦軸方向Yに対応させて表示するようになっており、横長の三次元映像24に対応して横長表示する立体映像表示手段である。本実施形態では、三次元表示装置18は、例えば、三次元表示装置18は、三次元映像24を所定の方式で再現する映像再生部32と該映像の表示画面34とを有する。三次元表示装置18は、例えば、アスペクト比が16:9となる横長表示画面の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイからなる周知の三次元ディスプレイを利用できる。三次元表示装置18は、例えば、記録媒体を読み取り可能な読取再生装置が一体的に組み込まれるか、或いは別個の読取再生装置が接続される。読取再生装置で再生された映像信号は、三次元表示装置18の映像再生部32にて三次元映像の表示に応じた処理を行う。三次元表示装置18は、例えば、アクティブシャッタ方式であり、サイド・バイ・サイド方式又はトップ・アンド・ボトム方式の三次元映像24を再生し、表示画面34に右目用の映像と左目用の映像を高速で交互に表示させる。さらに、三次元表示装置18は、例えば、液晶シャッターメガネ38に赤外線等で同期信号を送る送信部36を有しており、右目用の映像の時は液晶シャッター眼鏡38の左目側にシャッターをかけて右目だけで見るようにし、左目用の映像の時は逆に液晶シャッター眼鏡38の右目側にシャッターをかけて左目だけでみるようにすることで、視聴者は2つの映像の視差により三次元映像を立体的に認識できるようになっている。なお、映像処理装置16で処理した三次元映像を電波や電気信号として無線又は有線で送信し、三次元表示装置18で受信して表示するようにしてもよい。
【0017】
上記の撮影表示システム10において、縦長の三次元映像を撮影表示する方法は、図1、図4に示すように、一方の撮影装置12をその撮影装置12の光軸(撮影中心軸)L1の回りに90度回転すると同時に、他方の撮影装置14もその撮影装置14の光軸(撮影中心軸)L2回りに90度回転させた状態で支持する。この際、90度回転させた2つの撮影装置12、14は、上述のように人間の視差に対応した所定の間隔Dで同一の被写体Mに向けられ、被写体Mに対する撮影距離及び撮影範囲が同一となるように配置される。2つの撮影装置12、14どうしは、前記横長撮影の場合と異なって、縦軸方向y1、y2の基準が同一平面上に合わせられると同時に、横軸方向x1、x2は互いに平行に設定されるように配置される。また、2つの撮影装置12、14は、被写体側から見るとそれぞれの撮影中心軸L1,L2を通って撮影面に直交する仮想的な平面に対して、横軸方向x1、x2が直交し、かつ縦軸方向y1、y2が平行になっているといえる。なお、例えば、図5(c)、図6(b)に示すように、2つの撮影装置12、14を回転支持機構を備えた支持具40、40aに支持している場合には、回転支持機構を介して2つの撮影装置を簡単に光軸回りに90度回転させて固定することができる。図4に示すように、2つの撮影装置12、14は、それぞれの撮影領域RZ、LZは縦長となるが、撮影される右目用及び左目用の映像20a、22aは被写体Mが横倒しとなった横長映像となる。2つの横長の映像20a、22aは、それぞれの映像を90度回転させた状態で、すなわち、長手方向が縦になるように回転した状態で、左右の視差が生じるようになっている。これらの右目用、左目用の映像20a、22aは、映像処理装置16によって、例えば、上記同様にサイド・バイ・サイド方式又はトップ・アンド・ボトム方式等の三次元映像として合成処理し、その三次元映像を記録媒体に記録する。
【0018】
次に、映像処理装置16にて処理された三次元映像24aを表示する際には、上記の横長映像を表示する三次元表示装置18を表示面に垂直な軸周りに90度回転した状態で支持する。すなわち、通常は横長映像を表示するように横置きされた三次元表示装置18を、表示画面の短辺方向(Y)を水平方向として上下に対向させ、長辺方向(X)を鉛直方向として左右に対向させるように縦置きする。三次元映像が記録された記録媒体を読み取り再生すると、90度回転して配置した三次元表示装置18で表示される三次元映像24aは、縦長の状態で左右の視差を生じることとなるので、視聴者が液晶シャッター眼鏡38を通してみると縦長の三次元映像24aを立体的に認識して鑑賞することができる。なお、三次元表示装置18を横置き状態のままで、この三次元映像24aを表示すると、上下に角度が異なった映像となる。このようにして縦長の三次元映像を撮影表示することにより、特殊な縦長用の機材を用いる必要がなく、例えば、一般に普及している横長映像の規格で設計された撮影装置12、14、映像処理装置16、表示装置18等の機材を用いて、簡単に、画質を劣化させることなく、低コストで縦長の三次元映像を実現することができる。特に、例えば、画面サイズが大きな三次元表示装置18を利用すると、極めて臨場感の高い三次元映像を味わうことができる。その結果、例えば、ファッションショー、ライブ、コンサートやイベント等で、人物自体又は人物が着ている衣服や補正下着、美術品の壷、甲冑、その他縦長の被写体の詳細を三次元映像で表示するのに好適に利用できる。なお、必要に応じて、2つの撮影装置12、14を通常通り横長の三次元映像を得る態様と、2つの撮影装置12、14を光軸L回りに90度回転して撮影して縦長の三次元映像を得る態様と、を選択的に変更して運用することとしてもよい。また、三次元映像が記録された記録媒体を放送局等の遠隔地で再生し、電波や電気通信回線による電気信号等を介して三次元表示装置18に映像信号を送って三次元映像を表示するようにしてもよい。
【0019】
以上説明した本発明の縦長三次元映像の撮影表示方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の縦長三次元映像の撮影表示方法は、例えば、ファッションショー、ライブ、コンサート、イベント、展示会、博物館、美術館等で人物の全身や縦長の被写体を立体的に撮影表示するのに好適である。
【符号の説明】
【0021】
10 三次元映像撮影表示システム
12 右目用の撮影装置
14 左目用の撮影装置
16 映像処理部
18 三次元表示装置
20、20a 右目用の映像
22、22a 左目用の映像
24、24a 三次元映像


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の映像を撮影する2つの撮影装置であり、人間の視差に対応した所定の位置であって、互いに被写体に対する撮影距離が同一となる対称位置に、撮影領域の横軸方向を合わせるように配置され、一方の撮影装置で右目用の映像を撮影すると同時に他方の撮影装置で左目用の映像を撮影する2つの横長映像撮影用の撮影装置と、
2つの撮影装置で撮影した右目用の映像と左目用の映像を三次元映像化処理する映像処理部と、
横長の三次元映像に対応して横長表示する横長の三次元表示装置と、を有する三次元映像撮影表示システムにおいて、
人間の視差に対応した間隔で配置される2つの横長映像撮影用の撮影装置を、それぞれ光軸回りに90度回転させて保持した状態で撮影することにより、撮影された横長の映像を90度回転させた状態で視差を生じるように撮影するとともに、
三次元表示装置を、表示面に垂直な軸回りに90度回転させて長手方向を鉛直方向に向けて配置することにより、縦長の三次元映像を表示することを特徴とする縦長三次元映像の撮影表示方法。
【請求項2】
請求項1記載の縦長三次元映像の撮影表示方法において、撮影された右目用の映像と左目用の映像を三次元映像化処理した映像を記録した記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−163790(P2012−163790A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24502(P2011−24502)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(511034332)株式会社放送技研 (1)
【Fターム(参考)】