説明

縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン

【課題】縫い調子の調整やミシンベッド部内部の各種部品の交換等のメンテナンスを、多大な面倒、労力及び手数をかけることなく、非常に容易かつ簡単に行え、縫い調子並びに所定のほつれ止め機能を常に確実に再現させ得る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンを提供する。
【解決手段】縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおける針板台11を、針板Pを取り付け、且つ、糸掛けフック3の揺動支軸30を支持する左側針板台部11Lと、ストッパ部材4と糸操作エアシリンダ32及びストッパエアシリンダ42を固定支持する右側針板台部11Rとに二分割されており、右側針板台部11Rは、ミシンベッド部Bに固定されていると共に、左側針板台部11Lは、ネジ部材102を介してミシンベット部Bの上面に締付け固定及び固定解除可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として横筒形二重環縫いミシンに代表されるミシンであって、針糸とルーパ糸とにより二重環縫いの縫目を形成し、この二重環縫いの縫目の縫い終わり部分にほつれが発生することを防止するための縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
横筒形等の二重環縫いミシンは、針糸を保持して上昇及び下降する1又は複数本の針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下運動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備え、前記針が針板の下に形成する針糸ループを前記ルーパの進出動作により捕捉し、該ルーパが保持するルーパ糸により前記針糸を他糸ルーピングすることによって、縫製生地に二重環縫いの縫目を形成するミシンである。
【0003】
二重環縫いミシンにより形成される一般的な二重環縫いの縫目は、図20に示すように、縫い終わり時に切断されたルーパ糸10の端部が、図20中の矢符に示す方向に引っ張られた場合、該ルーパ糸10は、針糸20,20が形成する最終の針糸ループ20a,20bから抜け出し、その抜け出しが縫い始め側に向けて波及移行しやすく、その結果、縫目の全体にほつれが発生するという問題を有している。
【0004】
このようなほつれは、1本の針糸又は2本以上の針糸とルーパ糸とにより形成する二重環縫いの縫目においても同様に発生する。
【0005】
上記のような二重環縫いミシンにより形成される縫目特有のほつれを防止することを目的として、本出願人は、特願2011−016821及び特願2011−115174に示すようなほつれ止め装置付二重環縫いミシンを開発し既に特許出願している(以下、これを本出願人による既特許出願技術という)。
【0006】
本出願人による既特許出願技術の二重環縫いミシン(ここでは、2本針のミシンについて説明する。)の縫目のほつれ止め装置は、図21〜図23に示すように、針糸20,20を保持して針板Pの略中央に左右方向に間隔を隔てて設定された針落ち位置A,Aに対して上下動する針2,2(図11〜図17参照)と、ルーパ糸10を保持して針落ち位置A,Aの並び方向に進退動作可能能で、進出時に針板P下に形成する針糸ループ20a,20bを捕捉するルーパ1(図11〜図17参照)と、ルーパ1に対して接近及び離反動作可能で、図21に示すように、ルーパ1から離れた待機位置と、図23に示すように、ルーパ1に接近した糸掛け位置との間に亘って上下方向の支軸30を中心として針板Pと略平行な面内を揺動する糸掛けフック3及び該糸掛けフック3を前記待機位置と糸掛け位置とに駆動揺動させるフックアクチュエータとしての糸操作エアシリンダ(以下、糸操作シリンダと称するものを含む。)32と、糸掛けフック3よりも針板Pから離れた位置に配置されて、糸掛けフック3が糸掛け位置で捉えた針糸ループ20a,20bを糸掛け位置と待機位置との間の保持位置で保持させるように、針板Pと略平行な面内で上下方向の支軸90を中心として揺動する揺動レバー9及びストッパレバー4と、ストッパレバー4を揺動レバー9の一部に係合する係合位置から該係合位置から外れた退避位置に駆動揺動させるストッパアクチュエータとしてのストッパエアシリンダ(以下、ストッパシリンダと称するものを含む。)42と、前記糸掛けフック3と揺動レバー9とを連動連結する連結ロッド35と、通常の縫製が終えた後に前記糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42を選択的に動作制御して、糸掛けフック3が糸掛け位置で捉えた一方の針糸ループ20bを前記保持位置で保持させ、この状態を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせる制御部8(図8参照)とを備えて構成されている。
【0007】
なお、本出願人による既特許出願技術の二重環縫いミシンのほつれ止め装置において、後述する本発明の実施の形態として説明するほつれ止め装置における構成部材及び構成部位と同一又は対応する構成部材及び構成部位には、本発明の実施の形態で使用する符号と同一の符号を付して、それらの詳しい説明は省略する。
【0008】
上記した本出願人による既特許出願技術によれば、通常の縫製を終えた後に制御部を介して糸掛けフック3、ストッパレバー4及び揺動レバー9の各動作を制御して前述のような1針分の縫製動作を行わせることにより、図18に示すように、ルーパ糸10は、二重環縫いの縫目Mの最後に縫製生地の裏面に形成される右側(図18においては左側)の最終針糸ループ20a内を通り、ほつれ止めのための1針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す針糸20の前で折り返し、右側最終針糸ループ20a内を通った位置で切断される。一方、1針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す左側(図18においては右側)の針糸20は、通常縫製時の最後に縫製生地の裏面に形成される最終針糸ループ20b内を通り、その最終針糸ループ20bを自糸ルーピングし、単環縫いの縫目を形成する。これによって、ルーパ糸10は、図18に示すように、左側の針糸20と左側最終針糸ループ20bとの間に押えられた状態となる。
【0009】
図18では、左側の最終針糸ループ20bと針糸20との絡みを明示するために緩んだ状態で示されているが、実際の左側の最終針糸ループ20bは、針糸20が通った後に図19に示すように、強く引き締められて右側の最終針糸ループ20aと同様な状態となり、ルーパ糸10は、針糸20と左側の最終針糸ループ20bとの間に強固に押えられ、左側の最終針糸ループ20と一回前に形成された左側の針糸ループ20cとの間に掛け渡しされた状態で拘束される。この拘束は、図19に示すように、ルーパ糸10に如何なる方向からの力が作用しても維持されるため、二重環縫いの縫目Mに特有のほつれが発生することを確実に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特願2011−016821
【特許文献2】 特願2011−115174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、本出願人による既特許出願技術に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンは、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を有効に防止し得るものである。しかしながら、本出願人による既特許出願技術に係るほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいては、次のような改良すべき課題が残されていた。
【0012】
即ち、本出願人による既特許出願技術においては、図21〜図23に示すとおり、縫目のほつれ止め装置を構成要素であるところの、糸掛けフック3、ストッパレバー4、揺動レバー9、糸操作シリンダ32、ストッパシリンダ42が、針板Pが取り付けられ、且つ、ミシンベッド部の上面に固定された左右方向に長くて大きい単一の針板台11に支持されていた。具体的には、針板台11の左側部分で針板Pの後側近傍位置に糸掛けレバー3の揺動用の支軸30が支持されている一方、針板台11の右側部分で針板Pから離れた位置にストッパレバー4、揺動レバー9、糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42が支持され、且つ、揺動レバー9の先端部と糸掛けフック3の揺動用支軸30から前方に折り返すように延設された延設部3cの先端部との間に亘って連結ロッド35が連結されるという構成が採られていた。なお、図21〜図23中の6は、固定ネジ60,60を介して糸掛けフック3に共締め固定されたルーパ糸保持体である。
【0013】
上記のように、本出願人による既特許出願技術に係る二重環縫いミシンにおいては、縫目のほつれ止め装置における全ての構成要素が左右方向に長くて大きい単一の針板台11に支持されていた。そのため、ほつれ止め装置の各構成部材が組付け支持された針板台11をミシンベッド部の上面に取り付けられた後に、例えば、ルーパや該ルーパの作動用部材など針板台11の下部でミシンベッド部の内部に収容されている縫いを構成する部材の位置や動作軌跡を修正して縫い調子を調整するとか、同じくミシンベッド部の内部に組み込まれている各種の部品交換等のメンテナンスを行うことが必要になった場合、針板Pを外すのみでは、調整やメンテナンスを行なうに十分な広さの作業空間を確保することができない。それゆえに、広い作業空間を確保するためには、長くて大きい針板台11の全体をミシンベッド部から一旦、取り外して所定の調整やメンテンスを行い、それが終了したら再び長くて大きい針板台11の全体をミシンベッド部に取り付けるといった労力の要る作業が強いられる。
【0014】
特に、糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42には、これらシリンダ32,42に作動エアを供給するためのエアチューブ33,43が接続されており、針板台11の取り外し時及び取り付け時にそれらエアチューブ33,43が作業の邪魔にならないようにミシンベッド部の内部から引きずり出し、作業後、再びミシンベッド部の内部に押し入れるといった非常に面倒且つ手数のかかる作業が必要となる。また、仮に、このような面倒且つ手数のかかる調整やメンテナンス作業を行わないとすると、縫い調子の低下を招いたり、所定のほつれ止め機能を再現することができなくなったりする可能性があることから、どうしても上述のように非常に面倒且つ手数及び労力のかかる作業を行わざるを得ず、この点において改良すべき課題が残されていた。
【0015】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を有効に防止できるのはもとより、縫いを構成する部材の位置修正等による縫い調子の調整や、ミシンベッド部内部に収容の各種部品の交換等のメンテナンスを、多大な面倒、労力及び手数をかけることなく、非常に容易かつ簡単に行うことができ、縫い調子並びに所定のほつれ止め機能を常に確実に再現させ得る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンは、針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板を取り付け、且つ、ミシンベッド部の上面に取り付けられた針板台とを備え、前記針が前記針板下に形成する針糸ループを前記ルーパにより捕捉して、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸を他糸ルーピングすることにより縫製生地に二重環縫いの縫目を形成する二重環縫いミシンであって、前記ルーパに対して接近及び離反動作可能で、前記ルーパから離れた待機位置と前記ルーパに接近した糸掛け位置との間に亘って上下方向の支軸を中心として針板と略平行な面内を揺動する糸掛けフック及び該糸掛けフックを前記待機位置と糸掛け位置とに駆動揺動させるフックアクチュエータを有する針糸保持機構と、この針糸保持機構の糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配置されて、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記糸掛け位置と待機位置との間の保持位置で保持させるように、糸掛けフックの糸掛け位置から待機位置への揺動を一時的に停止及び停止解除可能なストッパ部材及び該ストッパ部材の前記停止及び停止解除を司るストッパアクチュエータを有するストッパ機構と、前記針糸保持機構の糸掛けフックと前記ストッパ機構のストッパ部材とを連動連結する連結部材と、通常の縫製を終えた後に前記ルーパを進出動作させると共に、前記針糸保持機構の糸掛けフックを該ルーパに対して接近動作させて前記糸掛け位置で捉えた前記針糸ループを前記保持位置に移動させ、この状態を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせるように、前記針糸保持機構及びストッパ機構を前記針の上下動及びルーパの進退動作並びに縫製生地の送り動作と関連づけて制御する制御部と、を備えている縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、
前記針板台は、前記針板を取り付け、且つ、前記糸掛けフックの揺動支軸を支持する左側針板台部と、前記ストッパ部材と前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを固定支持する右側針板台部とに二分割されており、前記右側針板台部は、前記ミシンベッド部に固定されていると共に、左側針板台部は、ネジ部材を介して前記ミシンベッド部の上面に締付け固定及び固定解除可能に取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記のごとき特徴構成を有する本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンによれば、通常の縫製を終えた後に、ルーパを進出動作させると其に、針糸保持機構の糸掛けフックをルーパに対して接近動作させて、該ルーパが捉えた針糸ループを前記保持位置に移動させ、この状態を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせることによって、下降する針が保持する針糸で先の針糸ループを自糸ルーピングさせ、この自糸ルーピング部分でルーパ糸を押えて該ルーパ糸の抜けを防止するといったように、縫目のほつれを発生段階で確実に防止することができる。
【0018】
その上、本発明においては、ミシンベッド部に取り付けられる針板台が、針板を取り付け、且つ、針糸保持機構の糸掛けフックを揺動可能に支持する左側針板台部と、ストッパ機構のストッパ部材、フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを固定支持する右側針板台部とに二分割されており、それら二分割された左右両側の針板台部を個々別々にミシンベッド部に取り付けて、ほつれ止め装置をミシンベッド部に組み付けることが可能であるため、本出願人による既特許出願技術のように、一つの長くて大きい針板台を取り扱う場合に比べて、ほつれ止め装置全体のミシンベッド部に対する取り付け(組み付け)作業を少ない労力で楽に行うことができる。
【0019】
しかも、ミシンベッド部に一旦、組み付けた後に、例えば、ルーパやそれの作動用部材など針板台下部でミシンベッド部の内部に収容されている縫いを構成する部材の位置や運動軌跡を修正して縫い調子を調整することが必要になった場合や、針板台下部でミシンベッド部の内部に収容されている各種部品の補修や交換等のメンテナンスが必要になった場合、エアチューブあるいは電力供給線が接続されているフックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを固定支持する右側針板台部については、これを一々ミシンベッド部から取り外す必要がなく、左側針板台部のみをミシンベッド部から固定解除して取り外すだけで十分に広い作業スペースを確保することができる。したがって、縫い調子の調整や、ミシンベッド部内部に収容の各種部品の補修や交換等のメンテナンスを、小さくて軽く、また、エアチューブや電力供給線が纏わり付くことのない左側針板台部のみを取り扱うだけで多大な面倒、労力及び手数をかけることなく、非常に容易、簡単かつ作業性よく行うことができ、これによって、良好な縫い調子及び所定のほつれ止め機能を常に再現性よく発揮させることができるという効果を奏し、本出願人による既特許出願技術に残されていた課題を解消することに成功したのである。
【0020】
本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記ストッパ機構は、前記フックアクチュエータに直結されて直線的に往復移動するストッパ部材と、該ストッパ部材の一部に係合及び係合解除可能な揺動レバーと、前記揺動レバーを前記糸掛けフックが前記待機位置に位置する方向に揺動付勢するスプリングと、該スプリングの付勢力に抗して前記揺動レバーをストッパ部材の一部から係合解除させる前記ストッパアクチュエータとから構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0021】
この場合は、ストッパ部材の戻り方向の動作(糸掛けフックが待機位置に位置する方向の動作)がスプリングの付勢力で行われるため、ストッパ部材の一部に係合及び係合解除する揺動レバーを動作させるストッパアクチュエータとしては、ストッパ部材を押し出し駆動できるだけのものでよい。したがって、ストッパアクチュエータとしてエアシリンダを用いる場合、片動式のエアシリンダを用いることができ、ストッパアクチュエータの小型化、低コスト化が図れる。
【0022】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記ストッパ機構における揺動レバーは、前記右側針板台部に左右位置調節可能に取り付けられた可動台に取り付けられていることが好ましい(請求項3)。
【0023】
この場合は、可動台を右側針板台部に対して左右に位置調節することにより、縫目のほつれ止めのための自糸ルーピングを確実に行わせるように糸掛けフックに保持された針糸ループからルーパが抜け出すタイミングを簡単且つ適正に調整することができる。
【0024】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記針糸保持機構のフックアクチュエータと前記ストッパ機構のストッパアクチュエータとは、前記右側針板台部の下面に上下二段重ねの状態で固定支持されていることが好ましい(請求項4)。
【0025】
この場合は、二つのアクチュエータが上下二段重ねの状態で右側針板台部に固定支持されているため、本出願人による既特許出願技術のように、二つのアクチュエータを互いに離れた位置に配置(並置)している場合に比べて、アクチュエータが占有する平面スペースを縮小してコンパクト化でき、ミシンベッド部内部に体裁よく収容させることができる。
【0026】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記針糸保持機構の糸掛けフックには、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間に亘って前記支軸を中心として針板と略平行な面内を揺動することにより、前記ルーパから縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持体が取り付けられていることが好ましい(請求項5)。
【0027】
この場合は、糸掛けフックと共に動作するルーパ糸保持体によりルーパ糸を針の下降位置よりも前側の位置で保持させることにより、簡単な構成でありながら、針糸と共にルーパ糸を確実に位置決めすることができる。したがって、自糸ルーピングを確実に実施し、縫目のほつれを一層確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記ルーパ糸保持体は、前記糸掛けフックに対して位置調節可能に取り付けられていることが好ましい(請求項6)。
【0029】
この場合は、針糸とルーパ糸との相対位置を適正に設定することが可能であり、自糸ルーピングをさらに確実に実施させて縫目のほつれ止め効果を一層高めることができる。
【0030】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記針糸保持機構のフックアクチュエータ及び前記ストッパ機構のストッパアクチュエータが、共にエアシリンダであることが好ましい(請求項7)。
【0031】
この場合は、針糸保持機構における糸掛けフック及びストッパ機構における揺動レバーを制御部からの制御信号に基いて応答性よく動作させることが可能であり、通常の縫製後における縫目のほつれ止め作用を確実かつ効率的に実施できる。
なお、これらアクチュエータとしては、電磁ソレノイドを使用してもよい。
【0032】
また、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記連結部材の連結端部分には、上方に向けてピンが突出されていると共に、糸掛けフックの連結端部分には、前記ピンの上方から該ピンに差し込み及び上方へ抜き出し可能な連結孔が形成されていることが好ましい(請求項8)。
【0033】
この場合は、縫い調子の調整や、ミシンベッド部内部に収容の各種部品の補修や交換等のメンテナンスを行うために、左側針板台部をミシンベッド部に上面から固定解除して、ミシンベッド部の上方へ取り外す際、連結部材と糸掛けフックとの連結用のねじを緩めて外すとか、連結用のピンを引抜くとか、いった面倒な操作を要することなく、左側針板台部を上方へ持ち上げるだけで、糸掛けフックと連結部材とを連結解除することが可能である。また、前述の調整やメンテナンス後は、左側針板台部を上方からミシンベッド部に固定して取り付けるだけで、糸掛けフックと連結部材とを連結状態に復帰することが可能である。これによって、前述の調整やメンテナンス時の手数を一層簡略化することができる。
【0034】
さらに、本発明に係る縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、前記左側針板台部又はミシンベッド部には、前記ネジ部材による複数の固定連結及び連結解除箇所から離間した複数個所に、左側針板台部をミシンベッド部に対して位置決め可能なノックピンが突出されていると共に、ミシンベッド部又は前記左側針板台部には、前記ノックピンに嵌合可能なピン孔が形成されていることが好ましい(請求項9)。
【0035】
この場合は、左側針板台部をミシンベッド部に対して着脱する際、複数のノックピンとピン孔との嵌合により、左側針板台部をミシンベッド部の所定の位置に確実に位置決めすることができる。したがって、前述の調整やメンテナンスの度に左側針板台部がミシンベッド部に対して繰り返し着脱されるとしても、左側針板台部を常に所定の位置及び姿勢を確保してミシンベッド部に取り付けることができる。これによって、通常縫製はもとより、縫目のほつれ止め機能も常に適正、確実に実施することができる。
【0036】
なお、本発明における縫目のほつれ止め装置は、横筒形二重環縫いミシンを対象とする場合に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る縫目のほつれ止め装置付横筒形二重環縫いミシンの全体外観斜視図である。
【図2】同上横筒形二重環縫いミシンにおける縫目のほつれ止め装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図3】同上縫目のほつれ止め装置の要部の構成の一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】同上縫目のほつれ止め装置の要部の構成を示す平面図である。
【図5】同上縫目のほつれ止め装置のストッパ機構の構成及び第1動作を説明する要部の底面図である。
【図6】同上ストッパ機構の構成及び第2動作を説明する要部の底面図である。
【図7】同上ストッパ機構の構成及び第3動作を説明する要部の底面図である。
【図8】同上ストッパ機構の構成及び第4動作を説明する要部の底面図である。
【図9】同上縫目のほつれ止め装置を含めて横筒形二重環縫いミシンの制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】同上縫目のほつれ止め装置における制御部の動作内容を説明するタイムチャートである。
【図11】同上縫目のほつれ止め装置による第1ほつれ止め動作の説明図である。
【図12】同上縫目のほつれ止め装置による第2ほつれ止め動作の説明図である。
【図13】同上縫目のほつれ止め装置による第3ほつれ止め動作の説明図である。
【図14】同上縫目のほつれ止め装置による第4ほつれ止め動作の説明図である。
【図15】同上縫目のほつれ止め装置による第5ほつれ止め動作の説明図である。
【図16】同上縫目のほつれ止め装置による第6ほつれ止め動作の説明図である。
【図17】同上縫目のほつれ止め装置による第7ほつれ止め動作の説明図である。
【図18】本発明により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図19】図18に示す縫目構造のほつれ止め効果の説明図である。
【図20】縫い終わり部分の一般的な縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図21】本出願人による既特許出願技術における縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図22】同上本出願人による既特許出願技術における縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する底面図である。
【図23】同上本出願人による既特許出願技術における縫目のほつれ止め装置の要部の動作状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る横筒形二重環縫いミシンの全体外観斜視図であり、図2及び図3は本発明に係る横筒形置重環縫いミシンが装備する縫目のほつれ止め装置の要部の構成を示す斜視図、図4は同縫目のほつれ止め装置の要部の構成を示す平面図である。以下の説明においては、図2〜図4中に矢符により示した「左,右」及び「前,後」なる表現を使用して説明する。ここで、「前」は、縫製作業者に近い側、「後」は、縫製作業者から離れた側、「左,右」は、縫製作業者に近い前側からみた場合の「左,右」である。
また、本実施の形態においては、図21〜図23に基いて説明した本出願人による既特許出願技術と同一又は対応する構成部材及び構成部位には同一の符号を使用して説明する。
【0039】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る横筒形二重環縫いミシンは、ミシン本体部Dの上下位置から左方に向けてミシンアーム部C及びミシンベッド部Bが互いに略平行状に延設されている。この横筒形二重環縫いミシンは、図4に示すように、ルーパ1と、2本の針2,2(図11〜図17参照)と、ミシンベッド部Bの上面に取り付けられた針板台11と、この針板台11に装備される縫目のほつれ止め装置Hと、前記針板台11上に取り付けられる針板Pとを備えている。針2,2は、針棒駆動機構の動作を介して上昇及び下降する。図2、図4中のA,Aは、針2,2の針落ち位置(下降位置)を示している。針落ち位置A,Aは、針板Pの略中央において、左右方向に間隔を隔てて設定されている。
【0040】
ルーパ1は、ルーパ駆動機構の動作を介して針2,2(針落ち位置A,A)の並び方向に進退(左進及び右退)動作する。図4の実線は、ルーパ1が左進位置に動作した状態を示し、図4の破線は、ルーパ1が右退位置に動作した状態を示す。図4の実線に示すように、左進位置にあるルーパ1の先端部は、針落ち位置A,Aを越えて左方向に延出し、図4の破線に示すように、右退位置にあるルーパ1の先端部は、針落ち位置A,Aの右方向に離れて位置する。
【0041】
横筒形置重環縫いミシンは、針2,2の上昇及び下降動作と、ルーパ1の左進及び右退動作とにより、針板P上にセットされた縫製生地(図示省略)を縫製する。縫製生地は、針板P上に押え金(図示省略)により押えられ、ミシンベッドBの内部に設けられた送り機構の動作により、図4の矢印Y方向に送り移動される。送り機構は、針板P上に突出して後方向に移動し、且つ、針板P下に没入して前方向に復帰移動する動作を繰り返す送り歯を備えており、この送り歯により縫製生地は間欠的に矢印Y方向に送り移動される。
【0042】
上述した針棒駆動機構、ルーパ駆動機構及び送り機構は、ミシン主軸(図示省略)からの伝動により互いに同期して動作する公知の機構である。針2,2は、各別に針糸20,20(図11〜図17参照)を保持し、縫製生地が送り移動を停止している間に、該縫製生地を貫通して針板P下に達し、その後、上昇して縫製生地の上方へ抜け出す。ルーパ1は、ルーパ糸10(図11〜図17参照)を保持し、針2,2の上昇開始に合わせて左進し、針板P下に形成される針糸20,20のループ20a,20bを捉える。縫製生地は、針2,2の上昇時に送り移動される。針2,2は、送り移動した縫製生地を貫いて下降し、右退中のルーパ1が保持するルーパ糸10を捉える。二重環縫いミシンは、以上の動作を繰り返して、縫製生地に二重環縫いの縫目を形成する。
【0043】
上記の如き横筒形置重環縫いミシンが備える縫目のほつれ止め装置Hは、針糸保持機構と、ストッパ機構と、前記針糸保持機構の糸掛けフック3(後述する)と前記ストッパ機構のストッパ部材4(後述する)とを連動連結する連結部材としての連結ロッド35と、制御部8(後述する)と、を備えている。
【0044】
前記針糸保持機構は、糸掛けフック3と、該糸掛けフック3を前記ルーパ1から離れた待機位置と前記ルーパ1に接近した糸掛け位置との間に亘って上下方向の支軸30を中心として駆動揺動させるフックアクチュエータとしての往復動式の糸操作シリンダ32とを有する。糸掛けフック3の揺動中心となる支軸30は、針板Pの右後側角部の近傍に配置され、前記針板台11上に支持されている。
【0045】
糸掛けフック3は、円弧状の湾曲形状を有し、支軸30から左方へ延びる支持アーム3eの先端部に、前方へ折り返すように連設されている。糸掛けフック3の先端部は、針板Pの下側において、左側後方から針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、外向きに突出するフック部3bが形成されている。支持アーム3eは、支軸30から前方へ向けて延びる延設部3cを有し、この延設部3cの先端部には、連結ロッド35の一端部が連結されている。
【0046】
図4に示すように、前記糸掛けフック3の基部には、円弧状の湾曲形状を有するルーパ糸保持体6が、2本の固定ネジ60,60を介して共締め固定されている。ルーパ糸保持体6の先端部は、糸掛けフック3の左側に略沿って前方へ延び、糸掛けフック3の先端部の前位置で針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、二股に分岐されたルーパ糸受け部6aが形成されている。ルーパ保持体6は、固定ネジ60,60を緩めることで糸掛けフック3に対する位置調節が可能であり、この位置調節により、先端のルーパ糸受け部6aによるルーパ糸10の保持が確実になるように構成されている。
【0047】
前記ストッパ機構は、図5〜図8に示すように、前記糸操作シリンダ32の出力ロッド31の先端部(左端部)に止めネジ36を介して固定され、エアチューブ33を介して供給される作動エアによって糸操作シリンダ32が伸縮動作することにより左右方向に直線的に往復駆動移動されるストッパ部材4と、該ストッパ部材4の一部に係合及び係合解除可能な揺動レバー9と、該揺動レバー9を前記ストッパ部材4の一部に係合して前記糸掛けフック3が待機位置に位置する方向に揺動付勢するスプリング91と、該スプリング91の揺動付勢力に抗して前記揺動レバー9を前記ストッパ部材4の一部から強制的に係合解除させるストッパアクチュエータとしての片動式(左方向への押出し駆動式)のストッパシリンダ42とにより構成されている。
【0048】
前記ストッパシリンダ42の出力ロッド41は、エアチューブ43を介して供給される作動エアによってストッパシリンダ42が左方向へ押出し駆動されることに伴い前記揺動レバー9を前記スプリング91の揺動付勢力に抗して反時計方向に揺動させるように構成されている。
【0049】
揺動レバー9は、揺動レバー取付台(可動台)92の上面に上下方向の支軸90を中心として揺動可能に支持されている。揺動レバー9は、先端部に前記ストッパ部材4の一部に係合可能な係合爪9aを有しており、図5に示すように、糸操作シリンダ32の伸張動作により前記ストッパ部材4が左方向に駆動移動されているとき、即ち、糸掛けフック3が待機位置に移動されているときは、スプリング91の付勢力によりストッパ部材4の側部に接触し、糸操作シリンダ32の収縮動作により前記ストッパ部材4が右方向に駆動移動されたときは、図6に示すように、スプリング91の付勢力により支軸90を中心として時計方向に揺動して先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部に係合可能な状態となる。
【0050】
また、図7に示すように、収縮した糸操作シリンダ32を再び少量だけ伸張動作させることにより、揺動レバー9の先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部に係合して、ストッパ部材4の左方向への駆動移動が一時的にストップされる。このようにストッパ部材4が一時的にストップされた状態において、前記糸掛けフック3は、連結ロッド35を介して前記待機位置と糸掛け位置との間の保持位置に移動し停止する。このとき、糸掛けフック3の先端のフック部3bは、図4に示す糸掛け位置(左右の針落ち位置A,Aの間)から、左側の針落ち位置Aの左後方に移動して、左側の針糸20を引掛けて前記保持位置に保持する。また、ルーパ糸保持体6は、ルーパ1の前側に進出して先端のルーパ糸受け部6aが左側の針落ち位置Aの前方でルーパ糸10を保持する。
【0051】
更に、図8に示すように、ストッパシリンダ42の伸張に伴い出力ロッド41を左方向へ押出し駆動させることにより、前記揺動レバー9が前記スプリング91の揺動付勢力に抗して反時計方向に揺動されて、該揺動レバー9の先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部から係合解除され、ストッパ部材4の一時的なストップが解除される。これによって、糸操作シリンダ32は、最大限に伸張動作されて糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6が連結ロッド35を介して待機位置に揺動復帰される。
【0052】
以上のように、本実施の形態において、針糸保持機構の糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42の伸縮動作により、前述した待機位置、糸掛け位置及び保持位置との間に亘って揺動する。
【0053】
また、本実施の形態における横筒形置重環縫いミシンは、縫製終了後に針糸20及びルーパ糸10を切断する糸切り機構5を備えている。この糸切り機構5は、図16及び図17に示すように、糸切りフック50と、糸切りメス51と、糸切りフック50を糸切りメス51との摺接部に押し付ける板ばね59と、糸切りアクチュエータ58(図9参照)と、を有する。糸切りフック50は、その先端部に、後方へ向けて突設された第1のフック部52と第2のフック部53とを備えている。糸切り機構5は、公知であるため、その他の詳細な構成の説明及び図示は省略する。
【0054】
図9は、上述したような縫目のほつれ止め装置Hを含めて横筒形置重環縫いミシンの制御系の構成を示すブロック図である。
二重環縫いミシンの制御部8には、ペダルスイッチ21による踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bと、針2,2が上死点近傍にあるときに発信される針位置信号22と、糸切り信号23及び針糸払い信号24とがそれぞれ入力される。
【0055】
一方、制御部8からは、糸操作シリンダ32、ストッパシリンダ42及び糸切りアクチュエータ58のそれぞれに動作制御信号が出力される。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、制御部8から糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42に出力される動作制御信号に従って前述の如く動作し、糸切り機構(図示省略)の糸切りアクチュエータ58は、制御部8から出力される糸切り信号23に従ってそれぞれ伸縮動作する。
【0056】
更に、制御部8からは、ミシン主軸の駆動源であるミシンモータ80、布押え用押え金を昇降する布押えシリンダ81、後述するように切断された針糸20,20を跳ね上げるエアワイパ82、縫製生地の送り量を調整する送り低減機構83、及びルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制するルーパ糸抑制機構84にもそれぞれ動作制御信号が出力される。
【0057】
送り低減機構83は、送り機構における送り歯の動作態様を変えること、例えば、送り歯の動作経路を針板Pに対して傾けて針板P上への突出時間を短くすることにより、針板P上の縫製生地に送り歯が作用する時間を短くする、あるいは、送り歯を循環作動させるレバーの長さを変更することにより、送り歯による単位送りピッチを小さくするなどして縫製生地の送り量を低減するものであって、このような送り低減機構83は、公知であるため、詳細の図示及び説明は省略する。
【0058】
ルーパ糸抑制機構84は、ルーパ1に送り込むルーパ糸10の中途部分を挟持する糸調子皿と、該糸調子皿によるルーパ糸挟持強さを増減するように動作するアクチュエータとを備えてなり、糸調子皿によるルーパ糸挟持強さを高めてルーパ糸10に対する付与抵抗を増すことにより、ルーパ糸10の送り出しを抑制するものであって、このようなルーパ糸抑制機構84は、公知であるため、詳細の図示及び説明は省略する。
【0059】
制御部8は、二重環縫いの縫目を形成する縫製終了後に、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を、ミシンモータ80、布押えシリンダ81、エアワイパ82、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84と関連して動作させることにより、二重環縫いの縫目のほつれ止め動作を実行する。
【0060】
図10は、ほつれ止めのための制御部8の動作内容を時系列的に示すタイムチャートである。制御部8は、CPU、ROM及びRAMを備えるコンピュータであり、図10のタイムチャートに従うほつれ止め動作は、ROMに格納されている制御プログラムに従うCPUの一連の動作により実行される。
【0061】
図11〜図17は、本発明の横筒形置重環縫いミシンにおけるほつれ止め装置Hによるほつれ止め動作の説明図であり、図10のタイムチャートに従う制御部8の動作によって生じる糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6並びに糸切りフックの動作状態を示している。
【0062】
ミシンを使用する縫製作業者は、通常の縫製を終了する際、ミシン駆動のためのペダルの踏み込み操作を止め、その後にほつれ止め動作を実行することになるが、この場合、前記ペダルを踏み返し操作する。ペダルスイッチ21は、ペダルに付設してあり、踏み込み操作中は踏み込み信号21aを出力し、踏み返し操作されたときは踏み返し信号21bを出力する。
【0063】
制御部8は、通常の縫製が終了し、図10のS1の時点において、ミシン駆動のためのペダルが踏み込み状態から中立状態に戻されたとき、つまり、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれも出力されない状態になったとき、入力側に与えられる針位置信号22を参照してミシンモータ80に停止指令を出力する。これにより、ミシンは、針2,2が上死点近傍にあって、ルーパ1が左進した状態で一時停止する。
【0064】
その後、制御部8は、前記ペダルが踏み返し操作されるまで待機する。図10のS2の時点において踏み返し操作され、入力側に踏み返し信号21bが入力された場合、制御部8は、以下に述べるほつれ止め動作を開始する。なお、制御部8は、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21aが再入力された場合、通常の縫製動作に復帰するので、縫製作業者は、ペダルを再度踏み込み操作することによって、通常の縫製を継続することができる。
【0065】
なお、図10において、S1の時点からS2の時点までの間は中立状態が維持されることになっているが、このような中立状態の維持は必ずしも必要でなく、通常の縫製終了時のペダルの操作は、踏み込み状態から踏み返し状態に連続的に移行されるものでもよい。この場合は、移行の過程で中立位置を通過する際、踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれも出力されない無信号状態となり、制御部8は、この無信号状態をトリガーとして、前述のように、針2,2が上死点近傍に上昇し、ルーパ1が左進した状態を実現した後にほつれ止め動作を開始する。
【0066】
また、図10のタイムチャートでは、S2の時点におけるペダルの踏み返し操作が、以下に説明するほつれ止め動作の実行中に継続されることになっているが、このような踏み返し操作をほつれ止め動作が終了するまでの間、継続する必要はなく、踏み返し信号21bの入力停止後もほつれ止め動作は、制御部8の働きにより継続して実行される。
【0067】
図11は、ほつれ止め動作の開始時における針2,2及びルーパ1の状態を示している。針2,2は、2本の針糸20,20と1本のルーパ糸10とにより二重環縫いの縫目Mが形成された縫製生地の上方へ抜け出した状態にある。ルーパ1は、縫製生地の下側で左進し、針2,2が形成する2つの針糸ループ20a,20bを捉えた状態にある。この状態で、針糸20,20及びルーパ糸10を切断すると、図20に示すような縫い終わり部が形成される。
【0068】
ほつれ止め動作の開始後、制御部8は、まず出力側の糸操作シリンダ32に動作指令を与える。これによって、糸操作シリンダ32は、図5に示す伸張状態から図6に示す収縮状態に動作してストッパ部材4が右方向に駆動移動され、これに伴い糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、ストッパ部材4及び連結ロッド35を介して支軸30を中心として揺動し待機位置から糸掛け位置に移動し、このとき、糸掛けフック3の先端のフック部3bが一方(左側)の針糸ループ20aを引掛けるとともに、ストッパ機構における揺動レバー9がスプリング91の付勢力により支軸90を中心して時計方向に揺動し、その先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部に係合可能な状態となる。
【0069】
その直後、制御部8は、糸操作シリンダ32に動作指令を与えて、該糸操作シリンダ32は、図6に示す状態から図7に示す状態にまで少し伸張し、ストッパ部材4が直線的に左方へ駆動移動される。この糸操作シリンダ32の少量伸張時において、揺動レバー9の先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部に係合する。これによって、ストッパ部材4の左方向への駆動移動が一時的にストップされる。このようにストッパ部材4の左方向への駆動移動が一時的にストップされた状態において、図12に示すように、前記糸掛けフック3は、連結ロッド35を介して前記待機位置と糸掛け位置との間の保持位置に移動して停止し、左側の針糸ループ20aを前記保持位置に保持するとともに、ルーパ糸保持体6は、ルーパ1の前側に進出して先端のルーパ糸受け部6aが左側の針落ち位置Aの前方でルーパ糸10を保持する。
【0070】
以上の如く糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を前記保持位置で移動停止させた後、制御部8は、図10のS3の時点において、ミシンモータ80、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84に動作指令を与える。この動作指令は、針位置信号22を参照して、針2,2が下降した後に再度上死点近傍位置に上昇するまでの間与えられる。これによって、縫製生地に対する1針分の縫製動作が行われる。この1針分の縫製は、送り低減機構83の動作により、通常の縫製時よりも小さい送り量の下で実行される。また、この1針分の縫製は、ルーパ糸抑制機構84の動作により、ルーパ1へのルーパ糸10の送り出しが抑制された状態で実行される。これによって、縫い終わりのルーパ糸10の締まりがよくなるため、後述するほつれ止め効果を高めることができる。
【0071】
糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図12に示すように、針糸20及びルーパ糸10の保持を、縫製生地の送り移動が完了し、針2,2が縫製生地を貫通して下降し、左側の針2が、糸掛けフック3の保持する針糸ループ20aを通り、該針糸ループ20aを捉えるまで継続する。このとき、ルーパ糸保持体6が保持するルーパ糸10は、図12に示すように、左側の針2の前側を横切るように位置している。従って、左側の針2は、ルーパ糸10を捕捉することがなく、該ルーパ糸10は右側の針2によりルーパ2の後側で捕捉されるのみである。
【0072】
制御部8は、左側の針2が針糸ループ20aを捉えたタイミング、つまり、図10のS4の時点で、ストッパ機構のストッパシリンダ42に動作指令を与えて、該ストッパシリンダ42が伸張し、これに伴い出力ロッド41が左方向へ押出し駆動される。これにより、図8に示すように、前記揺動レバー9が前記スプリング91の揺動付勢力に抗して反時計方向に揺動されて、該揺動レバー9の先端の係合爪9aがストッパ部材4の一部から係合解除され、ストッパ部材4の一時的なストップが解除される。このようなストッパ部材4に対するストップ解除により、糸操作シリンダ32がS4の時点において最大限に伸張される。これによって、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図13に示すように、ストッパ部材4及び連結ロッド35を介して支軸30を中心として揺動し前記保持位置から待機位置に復帰移動し、針糸ループ20a及びルーパ糸10の保持を解除する。
【0073】
そして、ルーパ1は、針2,2の下降と共に右退動作し、捕捉した針糸ループ20aから抜け出す。このルーパ1の抜け出しにより、図14に示すように、右側の針2は、通常の縫製時と同様にルーパ糸10を捕捉した状態となる一方、左側の針2は、左側の針糸ループ20aを捕捉した状態となる。
【0074】
この状態において、ルーパ1は、左進に転換し、針2,2は、上昇に転換する。図15に示すように、左進するルーパ1は、左右の針糸ループ20a,20bを捉え、上昇する針2,2は、縫製生地の上方へ抜け出す。これにより、ルーパ1が捉えた針糸20は、右側の針2の位置ではルーパ糸10を他糸ルーピングするのに対し、左側の針2の位置では、先に形成した針糸ループ20aを針糸20でルーピングする、いわゆる、自糸ルーピングすることになる。
【0075】
1針分の縫製動作後は、針2,2が上死点近傍まで上昇し、ルーパ1が左進端近傍に達した状態で終了する。その後、制御部8は、糸切り信号23が与えられるまで待機し、図10のS5の時点において糸切り信号23が与えられると、糸切り機構の糸切りアクチュエータ58に動作指令を与えて該糸切りアクチュエータ58に所定の動作を行わせ、これにより、糸切りフック50は、図16に示すように、ルーパ1の上部に沿って進出端にまで達する。このとき、糸切りフック50の先端部の第1のフック部52は、ルーパ1が保持する針糸ループ20a,20b内を通ってルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10の左側に達し、第2のフック部53は、左側の針糸20に左側から対向する。
【0076】
続いて、進出端に達した糸切りフック50は、右退動作する。このとき、第1のフック部52はルーパ糸10を捕捉し、第2のフック部53は2本の針糸20,20を順次捕捉する。このように捕捉されたルーパ糸10及び針糸20,20は、糸切りフック50の退入端にまで引かれ、図17に示すように、糸切りメス51の先端刃部に摺接されることで切断される。そして、切断されたルーパ糸10の端部は切断位置よりもルーパ1側において糸切りフック50と板ばね59との間に挟まれた状態に保持される。
【0077】
ルーパ糸抑制機構84は、以上のような糸切り動作が終えるまで動作を継続して、ルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10に所定の張力を付与する。これにより、糸切りフック50の先端の第1のフック部52は、緩みのないルーパ糸10を確実に捕捉し切断することができる。
【0078】
以上のような切断動作を終えた後、制御部8は、針糸払い信号24が入力されるまで待機し、図10のS6の時点において針糸払い信号24が入力されると、エアワイパ82に動作指令を出力して該エアワイパ82を動作させる。このエアワイパ82は、空気を吹き出し、針2,2に連続している針糸20,20の切断端部を跳ね上げる。その後、制御部8は、図10のS7の時点において布押えシリンダ81に動作指令を出力して該布押えシリンダ81を動作させ、布押え用の押え金を上昇させて一連のほつれ止め動作を終了する。
【0079】
上記した一連のほつれ止め動作により、図18に示すような横筒形置重環縫いミシンによる二重環縫いの縫目Mの構造が得られる。図18に示すように、ルーパ糸10は、二重環縫いの縫目Mの最後に縫製生地の裏面に形成される右側(縫目Mを縫製生地の裏面から見ている図18においては左側)の針糸ループ20a内を通り、ほつれ止めのための1針分の縫製動作の際に縫製生地の裏面に抜け出す同側の針糸20の前で折り返し、右側の最終針糸ループ20a内を再度通った位置で切断されている。
【0080】
一方、ほつれ止めのための1針分の縫製動作の際に縫製生地の裏面に抜け出す左側(図18においては右側)の針糸20は、前述のように、通常の縫製時の最後に縫製生地の裏面に形成される左側の針糸ループ20b内を通り、左側の最終針糸ループ20bを自糸ルーピングして、単環縫いの縫目を形成する。従って、ルーパ糸10は、図18に示すように、左側の針糸20と左側の最終針糸ループ20bとの間に押えられた状態となる。
【0081】
図18において、左側の最終針糸ループ20bは、針糸20との絡みを明示するために緩んだ状態で示されているが、実際の左側の最終針糸ループ20bは、針糸20が通った後に図19に示すように、強く引き締められて、右側の最終針糸ループ20aと同様な状態となる。そして、図19に示すように、ルーパ糸10の切断端部が矢印方向に引っ張られた場合、右側の針糸20の前を通るルーパ糸10のループが縮小し、右側の最終針糸ループ20a内に引き込まれる。その結果、針糸20は、ルーパ糸10と右側の最終針糸ループ20aとの間に挟まれた状態となって、針糸20とルーパ糸10とにより、図19に示すような「結び目」が形成される。この「結び目」は、ルーパ糸10にも抵抗を加え、該ルーパ糸10の抜けを防止する機能を果たすことになるから、図19に示す状態となった場合、二重環縫いの縫目Mのほつれは、左側の自糸ルーピング部と、右側の「結び目」との相乗作用により確実に防止することができる。
【0082】
以上に詳述したような構成を有し、また、上述したようなほつれ止め動作を行う縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおける特徴構成、つまりは、本出願人による既特許出願技術に残されていた課題を解決するために本発明が採用した改良構成について、以下、図2〜図4を中心にして説明する。
【0083】
図2〜図4に示したように、ミシンベッド部Bの上面に取り付けられる針板台11が、左側針板台部11Lと右側針板台部11Rとに二分割されている。左側針板台部11Lは、その上面に前記針板Pが止めネジ100を介して取り外し可能に取り付けていると共に、前記針糸保持機構の糸掛けフック3の揺動中心となる支軸30を支持している。
【0084】
二分割された左側針板台部11Lにおける左端部近くの前後複数箇所(2箇所)、具体的には、図4中に仮想線で示すミシンアーム部Cの先端(左端)近傍で前記針板Pの取付箇所とは離れた箇所にはネジ孔101が形成されており、これらネジ孔101に螺合する止めネジ部材102介して、左側針板台部11Lはミシンベッド部Bの上面に締付け固定及び固定解除可能(着脱可能)に取り付けられている。
【0085】
また、ミシンベッド部Bの上面及び前記左側針板台部11Lには、図3に示すように、前記止めネジ部材102による2箇所の締付け固定箇所から離れた箇所にノックピン103及び該ノックピン103が嵌合するピン孔104が形成されており、ピン孔104をノックピン103に上方から差し込み嵌合することにより、左側針板台部11Lを、ミシンベッド部Bに対して所定の位置及び姿勢に位置決めし、この状態で、前記止めネジ部材102をネジ孔101にねじ込むことにより、左側針板台部11Lをミシンベッド部Bの上面に締付け固定可能としている。
【0086】
なお、本実施の形態では、ノックピン103がミシンベッド部Bの上面から上方へ向けて突出され、ピン孔104が左側針板台部11Lに形成されたものについて説明及び図示しているが、ノックピン103が左側針板台部11Lの下面から下方へ向けて突出され、ピン孔104がミシンベッド部Bの上面に形成されたものであってもよい。
【0087】
一方、二分割された右側針板台部11Rは、前記糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ42を支持するシリンダ取付台部(以下、該右側針板台部11Rをシリンダ取付台部と称する)を構成するものであり、該シリンダ取付台部11Rの下部には上述したストッパ機構が配置されている。詳細には、シリンダ取付台部11Rの下面には、図5〜図8に示すように、糸操作シリンダ32が取付ネジ105を介して固定支持されていると共に、該糸操作シリンダ32の下部にストッパシリンダ42が二段重ねの状態に配置されており、該ストッパシリンダ42は、取付ネジ106を介してシリンダ取付台部11Rに固定支持されている。
【0088】
前記シリンダ取付台部11Rは、ミシンベッド部Bの側面に止めネジ部材107を介して固定状態に組み付けられている。ここで、固定状態とは、ほつれ止め装置Hをミシンベッド部Bに組付ける時に前記止めネジ部材107の締め付けにより所定の位置に固定され、組付け後は、位置調整等も行わず所定の組み付け位置に固定される状態を指す。
【0089】
前記連結ロッド35の一端(右端)部は、ストッパ機構におけるストッパ部材4にピンネジ108により回動可能に連結されている。この連結ロッド35の一端とストッパ部材4とのピンネジ108による連結部に対応する箇所のシリンダ取付台部11Rには、糸操作シリンダ32の伸縮に伴って左右方向に直線的に往復移動するストッパ部材4の直線的な往復移動を許容するように、左右方向に沿って長い長溝109が形成されている。
【0090】
また、前記連結ロッド35の他端で前記糸掛けフック3に連なる延設部3cとの連結端部分35aは、前記延設部3cの略厚み分だけ下方に屈曲されている。この下方に屈曲された連結ロッド35の連結端部分35aには、上方へ向けてピン110が突出されている一方、前記延設部3cには、前記ピン110の上方から該ピン110に差し込み可能及び上方へ抜き出し可能な連結孔111が形成されている。これによって、左側針板台部11Lをミシンベッド部Bに対して固定解除してミシンベッド部Bから取り外す際、連結ロッド35と延設部3cとを固定連結する、例えば止めネジ等を弛緩操作して両者の連動状態を解除するといった作業を行う必要がなく、左側針板台部11Lを上方へ持ち上げるだけで、延設部3cの連結孔111をピン110から上方へ抜き出して連結ロッド35と延設部3c(糸掛けフック3)との連動状態を解除することが可能である。また、左側針板台部11Lをミシンベッド部Bに取り付ける際も、左側針板台部11Lを上方からミシンベッド部Bに向けて移動させるだけで、連結孔111を上方からピン110に差し込んで連結ロッド35と延設部3c(糸掛けフック3)とを連動状態に復帰することが可能である。なお、連結ロッド35の連結端部分35aは、必ずしも下方に屈曲する必要がない。つまり、連結ロッド35は、その全長にわたって偏平な板状のものであってもよい。
【0091】
更に、前記ストッパ機構における揺動レバー9を上下方向の支軸90を中心として揺動可能に支持する揺動レバー取付台(可動台)92は、シリンダ取付台部11Rに、左右方向の長い長孔93と止めネジ94とを介して左右に位置調節可能に取り付けられている。これは、シリンダ取付台部11Rをミシンベッド部Bに止めネジ部材107を介して固定状態に組み付けられた後においても、揺動レバー取付台92をシリンダ取付台部11Rに対して左右に位置調節することにより、糸掛けフック3に保持された針糸ループ20aからルーパ1が抜け出すタイミングを任意に調整することを可能とし、これによって、縫目のほつれ止めのための自糸ルーピングを確実に行わせることができるようにしたものである。
【0092】
以上に説明したような特徴構成を採用した縫目のほつれ止め装置Hを備える本実施の形態の横筒形置重環縫いミシンにおいては、縫目のほつれ止め装置Hをミシンベッド部Bに組み付けるに際して、左右で二分割された針板台11の左側針板台部11L及び右側のシリンダ取付台部11Rを個々別々にミシンベッド部Bに取り付けることが可能である。そのため、本出願人による既特許出願技術のように、一つの長くて大きい針板台を取り扱う場合に比べて、ほつれ止め装置H全体のミシンベッド部Bに対する取り付け(組み付け)作業を少ない労力で楽に行うことができる。
【0093】
加えて、針板台11(左側針板台部11L及び右側のシリンダ取付台部11R)をミシンベッド部Bに一旦、組み付けた後に、例えば、ルーパ1やそれの作動用部材など針板台11の下部でミシンベッド部Bの内部に収容されている縫いを構成する部材の位置や運動軌跡を修正して縫い調子を調整することが必要になった場合や、針板台11の下部でミシンベッド部Bの内部に収容されている各種部品の補修や交換等のメンテナンスが必要になった場合、エアチューブ33及び43が接続されている糸操作シリンダ32及びストッパシリンダ43を組付け時に所定位置に強く固定支持しているシリンダ取付台部11Rは、ミシンベッド部Bから取り外す必要がなく、左側針板台部11Lのみをミシンベッド部Bから固定解除して取り外すだけで十分に広い作業スペースを確保することが可能である。
【0094】
したがって、小さくて軽く、また、エアチューブ33及び43が纏わり付くことのない左側針板台部11Lのみを取り扱うだけで、縫い調子の調整や、ミシンベッド部B内部に収容の各種部品の補修や交換等のメンテナンスを、非常に容易、簡単かつ作業性よく行うことができる。これによって、良好な縫い調子及び所定のほつれ止め機能を常に再現性よく発揮させることができ、本出願人による既特許出願技術に残されていた課題を解消することができる。
【0095】
また、本実施の形態のように、ストッパ機構における揺動レバー9を、スプリング91を用いて針糸保持機構における糸掛けフック3が前記待機位置に位置する方向に揺動付勢する構成を採用することによって、ストッパ部材4の戻り方向の動作(糸掛けフックが待機位置に位置する方向の動作)がスプリング9の付勢力で行われるため、ストッパ部材4の一部に係合及び係合解除する揺動レバー9を動作させるストッパシリンダ42として片動式のエアシリンダを用いることができるため、ストッパシリンダ42の小型化、低コスト化が図れる。
【0096】
また、本実施の形態のように、針糸保持機構における糸操作シリンダ32とストッパ機構におけるストッパシリンダ42とを、前記シリンダ取付台部11Rの下面に上下二段重ねの状態で固定支持させる構成を採用することによって、本出願人による既特許出願技術のように、二つのエアシリンダ32,42を互いに離れた位置に配置(並置)スる場合に比べて、二つのエアシリンダ32,42が占有する平面スペースを縮小してほつれ止め装置Hの全体をコンパクト化でき、ほつれ止め装置Hをミシンベッド部Bの内部に体裁よく収容させることができる。
【0097】
また、本実施の形態のように、針糸保持機構における糸掛けフック3に、該糸掛けフック3と共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間に亘って上下方向の支軸30を中心として針板Pと略平行な面内を揺動することにより、ルーパ1から縫製生地に延びるルーパ糸を針2の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持体6を取り付ける構成を採用することによって、簡単な構成でありながら、針糸20と共にルーパ糸10を確実に位置決めすることができ、これによって、自糸ルーピングを確実に実施し、縫目のほつれ止め効果を一層確実なものとすることができる。
【0098】
特に、前記ルーパ糸保持体6を、前記糸掛けフック3に対して位置調節可能に取り付けることによって、針糸20とルーパ糸10との相対位置を適正に設定することが可能であり、自糸ルーピングをさらに確実に実施させて縫目のほつれ止め効果を一層高めることができる。
【0099】
更に、本実施の形態のように、連結ロッド35の連結端部分35aから上方に向けてピン110を突出させると共に、糸掛けフック3側の連結端部分(延設部3c)に、前記ピン110の上方から該ピン110に差し込み及び上方へ抜き出し可能な連結孔111を形成するといった構成を採用することによって、縫い調子の調整や、ミシンベッド部B内部に収容の各種部品の補修や交換等のメンテナンスを行うために、左側針板台部11Lをミシンベッド部Bに上面から固定解除して、ミシンベッド部Bの上方へ取り外す際、連結ロッド35と糸掛けフック3側の延設部3cとの連結用のねじを緩めて外すとか、連結用のピンを引抜くとか、いった面倒な操作を要することなく、左側針板台部11Lを上方へ持ち上げるだけで、糸掛けフック3と連結ロッド35とを連結解除することが可能である。また、前述の調整やメンテナンス後は、左側針板台部11Lを上方からミシンベッド部Bに固定して取り付けるだけで、糸掛けフック3と連結ロッド35とを所定の連結状態に復帰することが可能である。これによって、前述の調整やメンテナンス時の手数を一層簡略化することができる。
【0100】
なお、上記の実施の形態においては、フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータとして、エアシリンダを用いたものについて説明したが、これらアクチュエータとしては、電磁ソレノイドを用いてもよい。
【0101】
また、上記の実施の形態においては、2本の針20,20と1本のルーパ糸10とにより二重環縫いの縫目を形成するものについて説明したが、3本以上の針糸を使用する多本針二重環縫いの縫目を形成するもの、1本の針糸を使用する1本針二重環縫いの縫目を形成するもの、さらには、二重環縫いの縫目に上飾り縫いを施す上飾り二重環縫いミシンに適用してもよい。
【0102】
また、上記の実施の形態においては、2本の針糸20,20が形成する針糸ループのうち、1つの針糸ループを捉えて前記保持位置に保持させ、この状態で1針分の縫製動作を行わせて自糸ルーピングし、ほつれ止めを行う場合について説明したが、複数の針糸ループを捉えて前記保持位置に保持させてもよく、また、この保持状態での縫製動作は1針分に限らず、2針分或いはそれ以上であってもよい。
【0103】
また、上記の実施の形態においては、ルーパ糸保持体6が糸掛けフック3に共締めの状態で取り付けられ、両者6,3が一体に揺動動作するものについて説明したが、ルーパ糸保持体6を糸掛けフック3と別体に設け、糸掛けフック3動作用の糸操作シリンダ32とは異なる専用のアクチュエータにより別個に動作させるようにしてもよい。
更に、ルーパ糸保持体6の設置は必須ではない。
【符号の説明】
【0104】
1 ルーパ
2 針
3 糸掛けフック
4 ストッパ部材
6 ルーパ糸保持体
8 制御部
9 揺動レバー
10 ルーパ糸
11 針板台
11L 左側針板台部
11R シリンダ取付台部(右側針板台部)
20 針糸
20a,20b 針糸ループ
30 上下方向の支軸
32 糸操作シリンダ(フックアクチュエータ)
35 連結ロッド(連結部材)
42 ストッパシリンダ(ストッパアクチュエータ)
91 スプリング
92 揺動レバー取付台(可動台)
102 ネジ部材
103 ノックピン
104 ピン孔
110 ピン
111 連結孔
A 針落ち位置
B ミシンベッド部
P 針板
M 二重環縫いの縫目
H ほつれ止め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板を取り付け、且つ、ミシンベッド部の上面に取り付けられた針板台とを備え、前記針が前記針板下に形成する針糸ループを前記ルーパにより捕捉して、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸を他糸ルーピングすることにより縫製生地に二重環縫いの縫目を形成する二重環縫いミシンであって、
前記ルーパに対して接近及び離反動作可能で、前記ルーパから離れた待機位置と前記ルーパに接近した糸掛け位置との間に亘って上下方向の支軸を中心として針板と略平行な面内を揺動する糸掛けフック及び該糸掛けフックを前記待機位置と糸掛け位置とに駆動揺動させるフックアクチュエータを有する針糸保持機構と、
この針糸保持機構の糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配置されて、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記糸掛け位置と待機位置との間の保持位置で保持させるように、糸掛けフックの糸掛け位置から待機位置への揺動を一時的に停止及び停止解除可能なストッパ部材及び該ストッパ部材の前記停止及び停止解除を司るストッパアクチュエータを有するストッパ機構と、
前記針糸保持機構の糸掛けフックと前記ストッパ機構のストッパ部材とを連動連結する連結部材と、
通常の縫製を終えた後に前記ルーパを進出動作させると共に、前記針糸保持機構の糸掛けフックを該ルーパに対して接近動作させて前記糸掛け位置で捉えた前記針糸ループ糸を前記保持位置に移動させ、この状態を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせるように、前記針糸保持機構及びストッパ機構を前記針の上下動及びルーパの進退動作並びに縫製生地の送り動作と関連づけて制御する制御部と、を備えている縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシンにおいて、
前記針板台は、前記針板を取り付け、且つ、前記糸掛けフックの揺動支軸を支持する左側針板台部と、前記ストッパ部材と前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを固定支持する右側針板台部とに二分割されており、
前記右側針板台部は、前記ミシンベッド部に固定されていると共に、左側針板台部は、ネジ部材を介して前記ミシンベッド部の上面に締付け固定及び固定解除可能に取り付けられていることを特徴とする縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項2】
前記ストッパ機構は、前記フックアクチュエータに直結されて直線的に往復移動するストッパ部材と、該ストッパ部材の一部に係合及び係合解除可能な揺動レバーと、前記揺動レバーを前記糸掛けフックが前記待機位置に位置する方向に揺動付勢するスプリングと、該スプリングの付勢力に抗して前記揺動レバーをストッパ部材の一部から係合解除させる前記ストッパアクチュエータとから構成されている請求項1に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項3】
前記ストッパ機構における揺動レバーは、前記右側針板台部に左右位置調節可能に取り付けられた可動台に取り付けられている請求項1又は2に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項4】
前記針糸保持機構のフックアクチュエータと前記ストッパ機構のストッパアクチュエータとは、前記右側針板台部の下面に上下二段重ねの状態で固定支持されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項5】
前記針糸保持機構の糸掛けフックには、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間に亘って前記支軸を中心として針板と略平行な面内を揺動することにより、前記ルーパから縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持体が取り付けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項6】
前記ルーパ糸保持体は、前記糸掛けフックに対して位置調節可能に取り付けられている請求項5に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項7】
前記針糸保持機構のフックアクチュエータ及び前記ストッパ機構のストッパアクチュエータが、共にエアシリンダである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項8】
前記連結部材の連結端部分には、該連結端部分から上方に向けてピンが突出されていると共に、糸掛けフックの連結端部分には、前記ピンの上方から該ピンに差し込み及び上方へ抜き出し可能な連結孔が形成されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項9】
前記左側針板台部又はミシンベッド部には、前記ネジ部材による複数の固定連結及び連結解除箇所から離間した複数個所に、左側針板台部をミシンベッド部に対して位置決め可能なノックピンが突出されていると共に、ミシンベッド部又は前記左側針板台部には、前記ノックピンに嵌合可能なピン孔が形成されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。
【請求項10】
対象とするミシンが、横筒形二重環縫いミシンである請求項1ないし9のいずれか1項に記載の縫目のほつれ止め装置付二重環縫いミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−34812(P2013−34812A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183121(P2011−183121)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000114868)ヤマトミシン製造株式会社 (66)
【Fターム(参考)】