説明

繊維を裁断及び/または剪断する装置

複数の細長い長さの繊維をより短い長さに裁断/剪断する装置は、隣接している二つのローラ7及び8と二つのローラに細長い長さの繊維を供給する手段を備える。ローラ7及び8は、ハウジング1に配置されており、その間にはさみ部を形成する。一つのローラ7は加圧ローラであり、他方のローラはブレードハウジングローラである。複数のブレードは、繊維をより短い長さに裁断するためにブレードハウジングローラ8のハウジングにある複数のスロットを通して前に出て、より短い長さに裁断された繊維は、吐出スロットに向かって放出される。ハウジング1の壁にある孔20及び21を通るエアジェットは、短くされた繊維をハウジングからガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い長さの繊維を裁断及び/または剪断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維を裁断及び/または剪断する装置の目的は、特に限定されるものではないが、複数の細長い長さの繊維を予め決められたより短い長さに裁断し、モールドツールへ制御されて配向するために適用することである。
【0003】
繊維を裁断及び/または剪断する装置は、特に限定されるものではないが、構造物製品の製造において用いられている。構造物製品には、例えば自動車産業または他の産業で用いられる構造部品のようなものがある。この装置において使用される材料は、好ましくは炭素繊維が良いが、他の適宜の繊維であっても良い。炭素繊維は、軽い上に高い強度を兼ね備える利点がある。炭素繊維マットは、部品が望まれる最大の強度になる向きで配向された多数の炭素繊維からなる。炭素繊維マットは、織物になっていても良いし、不織物であっても良い。前者の場合、横糸が繊維の縦糸の配向を保持するようになっている。後者の場合、配向繊維は、横断する方向に延びた繊維が周りに取り巻かれた状態で保持される。製造された炭素繊維マットは、“プリプレグ(pre-preg)”とも呼ばれ、所望の形に裁断され、モールドツール(moulding tool)内に置かれる。それから樹脂が塗布され、続いてモールド製品を所望の形にするために樹脂は硬化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、炭素繊維マットを製造し、所望の形に裁断する初期のステップにおいて、時間、労力、材料が無駄になっているという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、これらの問題を解消するまたは軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、隣接している二つのローラ、二つのローラに細長い長さの繊維を供給する手段、及び二つのローラと連係して複数の細長い長さの繊維をより短い長さに裁断する裁断手段を備える繊維を裁断及び/または剪断する装置が得られる。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態では、細長い長さの繊維を供給する手段は、二つのローラが好ましく配置されているハウジングを備える。好ましくは、二つのローラの内の一つのローラは、弾性のある表面を備える。好ましくは、弾性のある表面は、ゴムまたは他の適宜の材料でできている。裁断手段は、少なくとも一つのナイフブレード(knife blade)を備えているのが好ましい。このブレードまたは各ブレードは、ゴムのような硬質だが弾性のある材料からできているローラブレードハウジング(roller blade housing)内に保持されているのが好ましい。好ましくは、ローラブレードハウジングの外側表面直径(outside surface diameter)を越えてこのナイフブレードまたは各ナイフブレードを延び出すためにカムを備えている。カムがナイフブレードを通ったとき、ハウジングのゴムの弾性によりナイフブレードは待避非動作位置(retracted and inoperative position)に戻される。複数のブレードがある場合、対応する複数のスロットは、それぞれのブレードナイフがカムにより延び出されるために通るブレードハウジングローラ(blade housing roller)に形成されるのが好ましい。好ましくは、カムは、動作裁断位置(operative cutting)及び待避非動作位置(inoperative retracted position)の間にあるカムシャフトにより駆動される。カムシャフトは、異なる速度で駆動されるステッパモータにより駆動されるのが好ましい。代替として、裁断手段はレーザ裁断手段であっても良い。繊維が裁断/剪断されるとき、二つのローラは剪断された繊維を吐出スロットに向かって放出する。
【0008】
エアジェット孔は、ハウジングの壁を貫通して延びている。一つの好ましい構造では、4つのエアジェット孔がある。二つのローラに近い二つのエアジェット孔及び吐出スロットに近い二つのエアジェット孔である。二つのローラに近いエアジェット孔は、ロボットヘッドの動きに対する追跡エレメント(trailing elements)として作用し、吐出スロットに近い二つのエアジェット孔は、動きの先端面(leading face of motion)に作用する。
【0009】
二つのローラにもっとも近い二つのエアジェット孔は、短い長さの繊維を分散させるために用いられる。この分散させる繊維がまだローラに部分的に保持されている間で、繊維が裁断されかつ繊維がローラのはさみ部から解放される前に、この分散作用は開始される。
【0010】
吐出スロットにもっとも近い二つのエアジェット孔は、空気により、ハウジングから吐出スロット/出口の範囲内で、長さが短くされた繊維を回転させて、配向させるために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】最も下の垂直位置に吐出スロットを備えた本発明による装置の一例の部分の概略側面図である。簡単にするため、ロボットヘッドの動きに対して適宜関連する一組のエア出口ジェット(air outlet jets)だけを示す。
【図2】下から見た本発明の装置の平面図である。
【図3】図1及び図2の装置を部分的に大きなスケールにした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を十分に理解するために、一つの実施の形態を、一例として、上記の添付された図を参照しながら説明する。
【0013】
図1乃至図3を参照すれば分かるように、装置はハウジング1を備えている。ハウジング1は、側面図で下向きに末広がりの形状を有しており、断面図で見ては両端が収束する形状(lozenge shape)を有している(図2に見られるように)。ハウジング1の均整(proportions)は、短くされた繊維を安定してスムーズに散布することに役立つ。断面図で見て両端が収束する形状をした/吐出スロット(図2に示す)は、短くされた繊維がモールドツール内に堆積(deposite)される場合に、短くされた繊維の配向の主要の配向を決める。両端が収束する形状は、半円部4及び5でそれぞれ対向する端部が接合された二つの並行する辺部2及び3を備えている。裁断/剪断ヘッド6は、ハウジング1内に配置されている。ヘッド6は、間にはさみ部(nip)9を形成する二つのローラ7及び8を備える。
【0014】
ローラ7は加圧ローラであり、円筒状支持体(cylindrical support)11に取り付けられている円筒状タイヤ(cylindrical tyre)10を備える。円筒状タイヤ10はゴムまたは他の適宜の材料でできている。ローラ8はブレードハウジングローラである。ローラ8は、円筒状ハウジング(cylindrical housing)12を備える。複数枚のブレードは、ゴムのような硬質弾性(hard resilient)のある材料からできているブレードハウジングローラ8内に保持されている。二つのローラ7及び8の直径は同じである。円筒状ハウジング12には、いくつもの細長い貫通スロット(through elongate slots)13が形成されている。スロット13は、円筒状ハウジングのシリンダの軸線方向に延び且つシリンダの周りに周方向に間隔をあけて配置されている。複数のスプライン(splines)(図示せず)を介したカムシャフト15に取り付けられたカム14が、円筒状ハウジング12内に配置されている。カムシャフト15は、複数の速度範囲の一つの速度範囲でステッパモータ(図示せず)により駆動されるように配置されている。
【0015】
複数のブレード16(一つのみ図示)は、各スロット13と連係している。また、ローラ7及び8の間に形成されたはさみ部を通り抜ける繊維を裁断/剪断するために、ステッパモータにより駆動されるカムシャフト15により、ハウジング8内でカム14が回転するときに、複数のブレード16は、カム14の動きにより対応するスロット13を通って延び出るように配置されている。カム14が各ブレード16を通り過ぎると、ハウジング8のゴムの弾性により、ブレード16は待避非動作位置に戻される。本例の場合では、円筒状ハウジング8の外周の周りに22.5度の間隔をあけて、16個のスロット13が配置されている。16個のブレード16がこれらのスロット13とそれぞれ連係する。しかし、スロット13及びブレード16の数は、所望に応じて変えることができる。カム14によって提供されるカムリフト(cam lift)は略2mmから3mmであるが、これも所望に応じて変えることができる。ローラ7及び8の直径は、略30mmであるが、この直径も所望に応じて変えることができる。本例では、カムは一つの突出部(single lobe)を有しているが、より短い長さの繊維が望まれる場合には、複数の突出部を備えたカム(multi lobe cam)を用いることができる。
【0016】
典型的には、裁断するブレード16のためのカムリフトは、略1mmの厚さの繊維を貫通して裁断するのに十分なものでなければならず、カムリフトは、加圧ローラ7では略0.2mmの調整ができるようになっている。
【0017】
ローラ7及び8のそれぞれの回転中心は、選択された繊維の直径に対するはさみ部(nip)が、調節(consistency)を保証し且つ上述の裁断制御基準に十分合うように調整される。
【0018】
動作状態において、ローラ7及び8は、カムシャフト15の速度に依存することのない同じ速度で駆動される。ローラ7及び8を通して供給される繊維の供給速度(rate of feed)は、これらローラのそれぞれの表面の円周速度に基づいて決められる。ローラ7及び8の速度に関連して、カムシャフト15を駆動するステッパモータの速度を変えることにより、ローラの間に供給され且つカム駆動されて対応する各スロットを貫通して延びる複数のブレードによって裁断/剪断される繊維の正確な長さが決められる。繊維が裁断/剪断されたとき、ローラ7及び8は、短くされた繊維を吐出スロットに向かって放出する。吐出スロットがローラ7及び8より低い位置にある特別な配置により、重力もまた助力になる。しかし、吐出スロットをローラ7及び8より高い位置にすることもできる。ローラ7及び8により裁断/剪断されて作られた短くされた繊維は、重力の作用によりハウジング1の底部に向って落ちる。落ちる経路は、4つのエアジェット孔から噴射されるエアジェット(air jets)により影響を受ける。4つのエアジェット孔は、ハウジング1の壁を貫通して延び、ハウジング1の上部及び下部にそれぞれ配置された2つの組になったエアジェット孔20及び21により構成される。各組の一つのエアジェット孔のみが図示されている。2つのエアジェット孔20は、短い長さの繊維がローラ7及び8の間から放出されるレベルより若干下に配置される。エアジェット孔20を通るエアジェットは、ロボットヘッドの動きに対する追跡エレメント(trailing elements)として作用し、エアジェット孔21を通るエアジェットは動きの先端面(leading face of motion)に作用する。エアジェット孔20を通るエアジェットの目的は、繊維からなる長い物を分散させることにある。繊維がまだローラに部分的に保持されている間で、繊維が裁断され、繊維がローラのはさみ部から解放され、且つ繊維が吐出スロットに向かって放出される前に、この分散作用は開始される。エアジェット孔21は、エアジェット孔20より低いレベルに配置される。エアジェット孔21を通るエアジェットの目的は、並行する壁2及び3の間に形成された出口スロット22の方向に、そして出口スロット22内に、長さが短くされた繊維を回転させて、配向させることにある。出口スロット22の寸法、ローラ7及び8と出口スロット22との間の距離、及びエアジェット孔20及び21を通るジェットの空気圧は、繊維の長さに合わせ、且つ繊維の分配が所望の分配に最適化されるように調整される。
【0019】
なお、以上の実施の形態は、例示により説明したが、本発明の範囲内において種々変更した形態にて実施することが可能である。例えば、延び出ることが可能なブレードを備える代わりに、裁断手段はレーザであっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い長さの繊維をより短い長さに裁断及び/または剪断する装置であって、隣接している二つのローラ、前記二つのローラに細長い長さの繊維を供給する手段、及び前記二つのローラと連係して複数の前記細長い長さの繊維をより短い長さに裁断する裁断手段を備えることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記供給する手段が、前記二つのローラが配置されているハウジングを備えることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記二つのローラの内の一つのローラが、弾性のある表面を備えることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記弾性のある表面が、ゴムでできていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記二つのローラの内の他方のローラは、ブレードハウジングローラからなることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記ブレードハウジングローラの前記ハウジングが、1以上の各ブレードが延び出て且つ待避するために通る1以上のスロットを備えていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記ブレードまたは各ブレードを前記スロットまたは各スロットをそれぞれ通して延び出させるためのカムを備えることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項8】
請求項7に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、非動作位置と動作裁断位置との間で前記カムを駆動するためにカムシャフトが設けられていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記カムが、ステッパモータにより駆動されることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項10】
請求項9に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記ステッパモータが、異なる速度で駆動されることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項11】
請求項5乃至10のいずれか1項に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記ブレードハウジングローラが、前記ブレードが前記ローラから延び出た後に待避することを許容する硬質弾性のある材料でできていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項12】
請求項8に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記硬質弾性のある材料が、ゴムであることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記裁断手段が、レーザ裁断手段であることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項14】
請求項2、または請求項2に直接的若しくは間接的に付加された請求項3乃至13のいずれか1項に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記ハウジングを貫通して延びる1以上の複数のエアジェット孔が、繊維をガイドするように働くことを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項15】
請求項14に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、少なくとも一つの孔が、前記二つのローラからの出口の下に配置されていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、少なくとも一つの孔が、前記ハウジングからの出口より上に配置されていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項17】
請求項14、15または16に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、二つの孔が、前記二つのローラからの出口より下に配置されていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項18】
請求項14、15または16に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、二つの孔が、前記ハウジングからの出口より上に配置されていることを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。
【請求項19】
請求項14乃至18のいずれか1項に記載の繊維を裁断及び/または剪断する装置は、前記二つのローラが、前記ハウジングからの出口に向かって、裁断された繊維を放出するように動作することを特徴とする繊維を裁断及び/または剪断する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−510075(P2010−510075A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536794(P2009−536794)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004388
【国際公開番号】WO2008/059270
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(502407266)ベントレー モーターズ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】