説明

繊維セメント/石膏積層複合建材

【課題】耐表面損傷性、優れた耐衝撃性ならびに5/8インチのパネル厚さで、空洞に断熱材なしで壁のフレームの両サイドに取り付けられた場合に1時間耐火等級である建築用ボード製品を提供する。
【解決手段】予め作製された繊維セメントシート及び石膏パネル及び、予め作製された繊維セメントシートとは完全に一体となっていない接着剤層からなる建材であって、接着剤層は繊維セメントシートと石膏パネルの間に差し込まれ、ASTM E119−98による少なくとも1時間の耐火等級を有する一体化積層複合材を形作るために繊維セメントシートが石膏パネルに接着剤層により積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐表面損傷性、耐衝撃性及び耐火性の建材、より詳細には、繊維セメント及び石膏からなる一体化積層複合建材に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏壁材製品の使用が長年内装壁材市場を支配してきた。石膏壁材は通常石膏コアの周囲を覆う薄い紙の層を備える。例えば、1つの紙の層がボードの前面及び長い端部をカバーし、第2の紙の層が通常はボードの裏側表面をカバーする。コアは主に石膏であり、耐火性を向上させるためにガラス繊維、バーミキュライト及びマイカなどの添加材でそれを変性することができる。
【0003】
耐火性以外に、耐表面損傷性は壁材の別の望ましい性質である。石膏の耐表面損傷性は木又は石などの他の壁材に比べて劣る。石膏壁材の紙の表面は、家具、手押し車、玩具、スポーツ用具及び他の産業用又は住宅用備品などの堅いか又は変形性物体によるこすること、へこますこと、クラックを入れることあるいは貫通することなどの衝撃により容易に損傷を受ける。このような壁面の表面損傷は、廊下、家族の生活空間、体育館又は更衣室などの往来の激しい部屋でよく起こる。
【0004】
石膏壁材製造業者は耐表面損傷性を向上させるために彼らの石膏壁材を改良してきた。一つの方法は、フレーム構造の壁の空洞に衝撃物体が貫入しにくいように壁パネルの裏側にプラスチックフィルムを接着することであった。別の方法は、石膏系のコアの上に形成された繊維−石膏外層を有する繊維−石膏壁パネルを製造することであった。通常これらの製品の耐表面損傷性は標準的な石膏壁材の紙の表面に対して向上していた。類似の石膏系又はセメント石膏系構成体が典型的な形で、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
かなりの耐表面損傷性がある一つの材料は繊維セメントである。繊維セメントは、摩損及び擦傷などの耐表面損傷性に関して石膏パネルより利点がある。壁パネルとしての繊維セメント自体の一つの不利な点は、同じ厚さの石膏壁面パネルに匹敵する等級の耐火性がないということである。繊維セメント自体の別の不利な点は、それが同じ厚さの石膏壁面パネルよりかなり重いということである。例えば、繊維セメントを用いる1時間耐火等級システムは、ASTM E119−98に従って試験される場合に1時間耐火等級を実現するためには、壁の空洞に無機断熱材又は耐火等級石膏壁パネルの補助層を必要とする。
【0006】
5/8インチ(1.59cm)のタイプX耐火等級石膏壁材の上に1/4インチ(0.64cm)の繊維セメントがくる2層システムが耐火性も耐表面損傷性も実現するために使用されてきた。このシステムは非特許文献1に記載されている。この2つの部分からなるシステムは、単一層の石膏壁材よりかなり重いので不利である。さらに、この2層壁材は、単一のパネルではなく2つの独立した壁パネルを取り付けなければならないので、取付けにほとんど2倍の労力を必要とする。また、この2層システムの過剰な厚さ(5/8インチ+1/4インチ=7/8インチ)は大抵のドアの側柱幅に合わない。
【0007】
したがって、優れた耐表面損傷性、耐衝撃性及び耐火性を有する一体化された建材が求められている。この建材はまた軽量で、製造が容易でまた規格建材寸法と合致していなければならない。耐火性に関して、この材料がASTM E119により測定された場合少なくとも1時間の耐火等級をもつことは特に利点があるであろう。
【0008】
簡単に言えば、前記の要求は、石膏に積層されて一体化積層複合材を形作る繊維セメントを含む建材により、一実施形態において満たされる。この一体化積層複合材では耐火性及び耐表面損傷性が向上するが、ツーピースシステムのように重さ及び厚さが過剰になることなくこれらの性質を実現する。さらに、厚さが減少するので、好ましい積層建材はツーピースシステムよりも切断がより容易で、取付けがより早くまたより容易である。さらに、繊維セメント及び石膏を一体化積層材に形作ることにより、2個の独立した建材を取り付ける必要がなくなるので、取付けが簡単になる。
【特許文献1】米国特許第5,817,262号
【特許文献2】米国特許第5,718,759号
【非特許文献1】Gypsum Association−Fire resistance Design Manual−GA FILE NO.WP 1295−Gypsum wallboard,Steel studs,fiber−cement board proprietary system(石膏工業会−耐火設計便覧・GAファイルNo.WP 1295・石膏壁材、スチールスタッド、繊維セメント材専用システム)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、耐表面損傷性、優れた耐衝撃性ならびに5/8インチのパネル厚さで、空洞に断熱材なしで壁のフレームの両サイドに取り付けられた場合に1時間耐火等級(例えばASTM E119により測定された場合)であることが要求される用途に適する建築用ボード製品を提供することである。耐表面損傷性は、ASTM D4977−98b(無機表面ルーフィングに対する顆粒固着の標準試験法)などの擦傷試験及びASTM D5420(落下する錘を受ける打撃具による平坦な硬質プラスチック試料の耐衝撃性(ガードナー衝撃))などのへこみ試験により測定される。パネルの耐衝撃性は通常、例えばASTM E695(壁面、床及び屋根構造の相対的耐衝撃荷重性の測定)、及びISO 7892(垂直建築部材−耐衝撃性試験−衝撃体及び一般的試験方法)、又は他の適切な衝撃又は擦傷試験により測定される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、予め作製された繊維セメントシート及び石膏パネル及び、予め作製された繊維セメントシートとは完全に一体となっていない接着剤層からなる建材であって、接着剤層は繊維セメントシートと石膏パネルの間に差し込まれ、ASTM E119−98による少なくとも1時間の耐火等級を有する一体化積層複合材を形作るために繊維セメントシートが石膏パネルに接着剤層により積層されていることを特徴とする建材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、石膏に積層された繊維セメントからなる、予め作製された一体化積層複合材において、少なくとも1時間の耐火性ならびにかなりの耐表面損傷及び衝撃性を併せ持つ。これらの性質は、一実施形態では厚さがたった約5/8インチであり、過剰に重くなく切断が容易で、取付けが早く容易である。
【0012】
本発明では、取り付けるために、繊維セメント及び石膏層を予め作製された一体化積層複合材に合体させる。したがって、繊維セメント及び石膏の個々の層は自立している必要がなく、例えば繊維セメント層の厚さをかなり小さくすることができる。これによりツーピースシステムに比べて一体化積層複合材の全厚さを小さくでき、それは1時間耐火等級ならびに耐表面損傷及び衝撃性を同時に達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に例示される本発明の好ましい実施形態では、一体化積層複合壁材システムが記載される。しかし、本発明は壁材に限定されず、耐表面損傷性、耐衝撃性及び耐火性建材が望ましいようないかなる用途にもそれを利用できるということが理解されるであろう。
【0014】
図1及び2に示されるように、好ましい建材40は接着剤30を用いて石膏層20に積層された繊維セメント層10からなり、一体化積層複合材を作り出す。繊維セメント及び石膏部分は、これらに限定されるわけではないが、パネル、シート、スキン、ボードを含む必要とされるいかなる形態にすることもできるということが理解されるであろう。好ましい一実施形態において、繊維セメントシート10の厚さは約1/32〜1/4インチの間である。より好ましくは、繊維セメントシート10の厚さは約1/8インチ±約1/16インチである。石膏パネル20の厚さは通常約1/4〜3/4インチの間、より好ましくは約1/2インチである。繊維セメントシート10及び石膏パネル20に関して別の厚さを用いることができるということが理解されるであろう。好ましい密度は、厚さが5/8インチの複合壁材に対して2.5〜3ポンド/平方フィート、より好ましくは約2.77ポンド/平方フィートである。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態は、表面紙付き1/2インチ、タイプX石膏壁材と厚さが1/8インチの繊維セメントパネルとを合わせて結合することにより製造される複合パネルである。ASTM C36には、センター間7インチの間隔で長さ1〜7/8インチ、軸直径0.095インチ、頭の直径1/4インチの6D被覆クギを用いて、石膏の継目を仕切りの各サイドで16インチずらせて、センター間16インチ間隔の耐荷重2インチ×4インチ木製スタッドの各サイド上に平行に取り付けられ、またASTM E119に従って試験されて、厚さが1/2インチのボードに対してタイプXの石膏ボードは45分以上の耐火等級であると記載されている。一つの好ましい1/2インチ、タイプXの石膏パネルは、以下の表に記載される、厚さが1/2インチのHARDIROCK(登録商標)MAX“C”(商標)である。この石膏パネルは改良されたタイプX耐火等級コアを有し、建築基準により特別な水準の耐火性及び防音性が必要とされるような商業プロジェクト向けに製造されている。厚さが5/8インチのボードは標準的なFire X(商標)ボードより耐火性がよくなるように設計されており、より少ない重さで耐火及び防音等級を達成する。応用に関する情報はGypsum Association Fire Resistance Design Manual GA−600、Underwriter’s Laboratories,Inc. Fire Resistance Directory(石膏工業会耐火設計便覧GA−600、保険業者試験所、耐火指針)で得ることができる。
【0016】
【表1】

【0017】
繊維セメント10に結合される石膏パネル20の面は必ずしも表面紙を必要とせず、石膏パネル20を直接繊維セメント10に結合できるということが理解されるであろう。好ましい石膏パネル20は表面又は裏面のいずれかに、パネルに一体化されたガラス又はポリマー繊維マットあるいは織布メッシュを紙の外側又は内側のいずれかにもっていてもよい。これは通常2つの理由で行われる。第1に、石膏パネル20自体の衝撃強度を向上させるためにそれを用いることができる。第2に、複合壁材40の一部分としての石膏パネルの衝撃強度を向上させるためにそれを用いることができる。
【0018】
好ましい複合壁材40をほとんどの室内の壁材の取付けに利用することができる。好ましい複合壁材40は、壁材40の繊維セメント側が外側に面して、人の往来に対する耐擦傷性及び耐へこみ性表面となり、また壁材40の石膏側を支持フレームに向けて取付け、繊維セメント及び石膏壁材の相乗効果のある組合せにより耐火等級及び強度をパネルに付与する。好ましい1/2インチ石膏パネル20も好ましい1/8インチ繊維セメントシート10も単独では1時間耐火等級とならないが、それにもかかわらず積層複合材40に2つの材料が組合されたものが対称な壁システムで試験され、商業ビルの間仕切りに使用される通常のスチールフレームで1時間耐火等級を達成した。この複合パネルで実施された耐火試験の結果は以下に記載される。
【0019】
支持フレームは通常20又は25ゲージスチールのフレーム、又は2インチ×4インチのダグラスファー軟材などの木のフレームである。壁材40をスチールスタッドに、6ゲージ×1−1/8インチ、タイプSラッパ形頭の乾式壁用又は自己貫通スクリュなどの適切なスクリュを用いて取り付けることができる。壁材40を、長さ1−3/4インチのカップ形頭石膏壁材クギ又は6ゲージ×1−1/8インチ、タイプSラッパ形頭の乾式壁用スクリュなどの適切なクギ又はスクリュを用いて木材スタッドに固定することができる。好ましい壁材40は表面損傷及び貫通を受ける壁アセンブリ用にデザインされる。このような壁アセンブリは典型的には学校、公共住宅、公共建築、ガレージ内壁、廊下、体育館、更衣室、更生及び医療施設に見出される。この材料を先端がカーバイドチップの刻み目入れ(score)及びカッターナイフ、場合によっては粉塵防止のできる強力裁断機又は回転ノコで切断することができる。
【0020】
繊維セメント
繊維セメントシート又はスキン10に使用されるセルロース繊維強化セメント製造技術は、豪州特許515151号及び米国特許第6,030,447号に記載されており、その全体を参照により組み込む。繊維セメントには、耐久性、耐湿気劣化性、維持管理の容易さ、耐クラッキング、腐朽又は剥離性、耐シロアリ性及び不燃性などの属性がある。したがって、繊維セメント層10は、湿気、雨、雪、塩分を含む空気及びシロアリに長期間曝されても損傷を受けにくい。この層は寸法が安定しており、通常の条件ではクラックを発生しないし、剥離もしない。
【0021】
好ましい繊維セメントパネル10の基本組成は約20%から60%のポルトランドセメント、約20%から70%の粉砕シリカサンド、約5%から12%のセルロース繊維、及び約0%から6%の無機酸化物又は無機水酸化物及び水などの選ばれた添加材である。板状又は繊維状添加材、例えばウォラストナイト、マイカ、ガラス繊維又は無機繊維などを繊維セメントの熱安定性を向上させるために加えることもできる。
【0022】
好ましい繊維セメントパネル10の乾燥密度は通常約1.3〜1.4g/cm3であるが、材料をプレスすることにより2.0g/cm3までの乾燥密度に調節できるし、あるいは非膨張又は膨張バーミキュライト、パーライト、クレー、頁岩又は低嵩密度(約0.06〜0.07g/cm3)のケイ酸カルシウム水和物などの密度調整材の添加により乾燥密度を調節することができる。
【0023】
好ましい繊維セメントパネル10の曲げ強度は、通常ASTM試験法C1185による平衡水分量の状態で、パネルの流れ方向で1850psi、パネルの幅方向で2500psiである。
【0024】
好ましい繊維セメントパネル10は表面が不燃であり、またASTM試験法E136により試験された場合、燃焼を支えずあるいは一体性を失わない。ASTM試験法E84により試験された場合、好ましい繊維セメントパネル10は、以下の表面燃焼性を示す。
炎の広がり:0
燃料となるもの:0
発煙:5
【0025】
積層プロセス
好ましいパネルは、厚さ1/2インチのタイプX耐火石膏ボードに積層された公称厚さ1/8インチの繊維セメントシートからなる。好ましくは直角の端部をもつ石膏パネルが製造される。前記図1及び2に示される、ポリ酢酸ビニル(PVA)などの接着剤30を石膏パネルの表面に薄く塗布して、厚さ1/8インチの繊維セメントをその表面上に置いて、通常積み重ねた状態で約30分間、約38psiでプレスする。一つの好ましい接着剤は、Patrick Industriesの一部門であるSun Adhesivesにより供給されるSun Adhesivesポリ酢酸ビニル(PVA)接着剤#54−3500である。接着剤は最も好ましくはPVAなどの低コスト接着剤であるが、水系ポリマー接着剤、溶剤系接着剤、熱硬化性接着剤、変性デンプンなどの天然ポリマー、ポリウレタンなどの液状湿気硬化又は反応性ホットメルト接着剤、及び耐熱又は耐火性接着剤などの他の有機又は無機接着剤を用いることも可能である。
【0026】
接着剤30は好ましくはロールコータプロセスで塗布されるので、石膏パネル20は好ましくは、接着剤30が平滑な面に塗布される前に、埃及びくずを取除くために掃除される。接着剤30は好ましくは石膏パネル20の全表面に一様に薄く塗られる。接着剤30のウェットフィルムの厚さは、標準の「ウェットフィルム厚さゲージ」で測定された場合、好ましくは約4.5ミル以上でありまた好ましくは約6ミルを超えないであろう。繊維セメントパネル10が、石膏パネル20の端部に合わせて、接着剤30でコートされている石膏パネル20の上に置かれ、次に積み重ねられる。積み重ねが終わったものは、好ましくは約37.5±2.5psiの荷重のプレスで好ましくは約30分以上硬化される。次に、パネルは好ましくは繊維セメント表面が研磨され、また長い端部をダイヤモンド砥粒などの砥石車で機械加工されてテーパー付きの端部に成形される。機械研磨は好ましくは3種の研磨ヘッドを用いる。研磨ベルトのグレードは好ましくは40グリットから220グリットの範囲にある。長い端部は機械でテーパーを付けられて、取付け時に凹凸なく継ぎをする際に、コンパウンド、継目強化テープ及び仕上げコンパウンドをセットできるようにする。製品の表面は好ましくはアクリルエマルジョンでシールして表面の吸水を少なくし、塗装を容易にしまた塗料の付着性を向上させる。
【0027】
複合壁材40の繊維セメント表面を、場合によってはUCAR 701などのアクリルシーラーで目止めして、現場での仕上げを容易にすることができる。これを、スプレし、ロールで塗ることができる適切なラテックス塗料あるいは壁紙又はテキスチャ仕上げに用いられるブラシで実施することができる。繊維セメントパネル10の研磨は繊維セメント表面の仕上げをよくするための選択肢であるということも理解されるであろう。さらに、研磨を、繊維セメントパネル10が石膏パネル20に積層される前あるいは後に行うことが可能であるということが理解されるであろう。ロールプレス積層プロセスを、適切な感圧接着剤と共に用いることもできるということが理解されるであろう。
【0028】
試験
耐表面損傷性試験を好ましい一積層複合パネルで実施した。この好ましいパネルの耐衝撃性は通常のタイプX耐火石膏壁材に比べて優れていた。この好ましいパネルの耐擦傷性はまた通常のタイプX耐火石膏壁材及び耐表面損傷性石膏系パネルのいずれに対しても優れている。
【0029】
本発明の好ましい実施形態の新規な特徴は、1/2インチ石膏壁材も1/8インチ繊維セメントシートもそれら自体では1時間耐火等級、耐表面損傷及び耐衝撃性を合わせて達成できないということである。しかし、2つの材料を合わせて積層すると、ASTM E119で試験された場合の対称壁システムでの1時間耐火性及びレベルが向上した耐表面損傷性及び耐衝撃性が得られる。
【0030】
好ましいパネルはまた、好ましい本発明の個々の部材又は同じ厚さ(5/8インチ)の通常のタイプX石膏壁材に比べて、曲げ強度及びクギ引く抜き強度が向上し、吸湿による反りが小さいという利点を有すると考えられている。
【0031】
この好ましい複合材はまた単一の壁材又は一体化システムとして火災及び表面損傷特性に関する新規な特徴をもつ。繊維セメントを利用する従来の耐火等級でまた耐表面損傷性であるシステムは支持フレーム全体に2層システムを必要とした。2層システムに対して単一システムでは材料が少なくなり取付けが早いのでこの好ましい複合材にはかなりの利点がある。2層システムでは、5/8インチのタイプX石膏壁材を取り付け、その後1/4インチの繊維セメントを上に取り付ける必要があった。これらの2層の全厚さは、本発明の好ましい積層複合材での5/8インチの材料に対して、合わせて7/8インチの材料になる。
【0032】
したがって、一実施形態において、本発明は少なくとも約1時間の耐火等級でありまた耐表面損傷性である一体化システムを提供する。これは2層システムに比べて取付け時間を減らし、2層システムに比べて平方フェート当たりの壁ユニットの質量を小さくし、また2層システムに比べてパネルに取り付けるための壁当たりの固定具を少なくする。さらに、この材料は、切断の素早い容易な方法である電動剪断機で容易に切断される。
【0033】
この材料にはまた、以下の表に示されるように、耐擦傷性、耐へこみ性及び耐衝撃性(変形性物体及び硬い物体)がある。
【0034】
耐表面損傷及び衝撃性をASTM D4977−98b(擦傷による無機表面ルーフィングへの顆粒固着試験法)、ASTM D5420(落下する錘を受ける打撃具による平坦な硬質プラスチック試料の耐衝撃性(ガードナー衝撃))、ASTM E695(壁、床及び屋根構造に対する相対的耐衝撃負荷性の測定)、ISO 7892(垂直建築部材−耐衝撃性試験−衝撃物体及び一般的試験法)、又は他の適切な衝撃又は擦傷試験のような試験に用いられる方法により測定することが可能である。耐火性をASTM E119(建築構造及び材料の標準耐火試験法)、UL263、UBC 7−1、NFPA 251、ANSI A2.1、又は他の適切な耐火試験のような試験により測定することができる。1/2インチのHardirock Max“C”石膏パネルの上に積層された1/8インチ繊維セメントからなる、厚さが5/8インチの積層複合材の一実施形態は以下の表に示されるように優れた耐擦傷及び衝撃性を示した。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
剛体衝撃試験はISO 7892のセクション4.3.1から4.3.5に概略が示されるように、1kgのボールベアリング球を用いて実施した。
【0038】
試験されるパネルをセンター間16インチでスタッドがある20ゲージスチールのフレームに固定した。1/4インチの繊維セメントパネルを8インチ間隔で7ゲージ×1−1/4C−ドリルスクリュを用いて固定した。5/8インチ、タイプX石膏壁材を8インチ間隔で6ゲージ×1−1/8インチのタイプSラッパ形頭スクリュを用いて固定し、また1/2インチのHardirock Max“C”石膏壁材の上に積層された1/8インチの繊維セメントを12インチ間隔で6ゲージ×1−1/8インチのタイプSラッパ形頭スクリュを用いて固定した。
【0039】
【表4】

【0040】
へこみ試験は、ASTM D5420−96の方法GCに従い、これには打撃具の直径に近い支持プレート穴をもつ直径0.625mmの打撃具オリフィス、ならびに36インチの距離を落下し、一回で(72±1.8)フィート・ポンドの衝撃エネルギーを与える、2ポンドの錘を指定している。各製品からの10個の試料について試験し、表の値は全10個について平均されている。
【0041】
【表5】

【0042】
変形性物体衝撃体はE695−79のセクション5.2.1から5.2.4の必要条件に従って作製され、詰め込んで60ポンドの総重量とした。バッグを振り子のように吊り下げ、スタッドの間の中程の位置及び試験壁の中程の高さで6インチずつ高さを増やしてパネルを打つ。
【0043】
累積衝撃は、「反りの発生」、表面/裏面でのクラック発生、及び/又は>0.25インチのスタッドの変形のいずれかによる「破損状態」になるのに要したエネルギーとして定義された。前記で定義した(複数の)破損状態のいずれかになると、破損状態になるのに必要な「1回の衝撃エネルギー」に達するように、錘バッグをさらに6インチ高くする。
【0044】
パネルの寸法は4フィート×8フィートであり、センター間24インチで20ゲージスチールのフレームに固定された。1/4インチの繊維セメントパネルを8インチ間隔で7ゲージ×1−1/4C−ドリルスクリュを用いて固定した。5/8インチのタイプX石膏壁材を8インチ間隔で6ゲージ×1−1/8インチのタイプSラッパ形頭スクリュを用いて固定し、また1/2インチのHardirock Max“C”石膏パネルの上に積層された1/8インチの繊維セメントを12インチ間隔で6ゲージ×1−1/8インチのタイプSラッパ形頭スクリュを用いて固定した。
【0045】
表の結果は試験された各材料の3パネルについての平均である。
【0046】
耐火性試験
本発明の一実施形態についてASTM E119−98による耐火性試験を行った。この実施形態を、低温側及び高温側を備える2重壁アセンブリとして試験した。各試験用アセンブリは、センター間24インチで配置された20GA×3−5/8インチのスチールスタッドの10フィート×10フィートの無荷重壁からなる。低温側に、1層の、厚さ1/2インチのHardirock(登録商標)“Max C”(商標)石膏ボードに積層された厚さ1/8インチのHardiboard(登録商標)繊維セメント表面スキンを、床及び天井ランナーならびに中間部スタッドに、12インチのセンター間距離で最短で1インチの長さのタイプS乾式壁スクリュを用いて、センター間で24インチの20GA.×3−5/8インチのスチールスタッドに斜めにならないように(水平に)取り付けた。ファスナーをパネルの隅から約3インチ内側及びパネルの端部から約3/8インチ内側に取り付けた。火炎の側には、1層の、厚さ1/2インチのHardirock(登録商標)“Max C”(商標)石膏ボードに積層された厚さ1/8インチのHardiboard(登録商標)繊維セメント表面スキンを、床及び天井ランナーならびに中間部スタッドに、12インチのセンター間距離で最短で1インチの長さのタイプS乾式壁スクリュを用いて、センター間で24インチの20GA.×3−5/8インチのスチールスタッドに斜めにならないように(水平に)取り付けた。火炎側の水平パネル継目を低温側の水平パネル継目から24インチだけずらせた。ファスナーをフレームの隅から約3インチ内側及びパネルの端部から約3/8インチ内側に取り付けた。
【0047】
耐火等級壁アセンブリのフレーム部材は完全な壁面の高さより3/4インチ短くカットされているので、浮き壁フレームを作り出す。これらの壁を耐火試験設備から防音試験設備に移送するために、ねじまげに対する抵抗性をもたせて試験材の取扱いを容易にするように、床及び天井の平行ランナーのフレーム部材に壁パネルを通してファスナーをつけた。この修正は壁アセンブリの音波伝播特性を変えない。
【0048】
継目を、パネルの端部を凹凸なく継ぐために、ASTM仕様C475に従って、化学的硬化パウダ石膏ジョイントコンパウンド(USG(登録商標)Durabond(登録商標)90)で処理した。硬化タイプのコンパウンドを製造者により記載された使用方法に従って混合した。コンパウンドをファスナーの頭に塗り、継目にできた凹みを隣接するシートで形作った。穴のあいた紙で強化されたテープを直ちに継目の中央に埋め込んだ。穴あき紙強化テープをさらなるコンパウンドと共に直ちに埋め込んで乾燥させた。
【0049】
試験開始時には相対湿度が84%で雰囲気温度は80°Fであった。耐火試験を通して、炉内(壁試験材の中央頂部から1/3下った点で測定された)と実験室雰囲気の気圧との差は−0.03インチ水柱に維持され、このため結果として試験体の頂部には圧力がかかっていなかった。
【0050】
試験中には以下のことを観察した。
【0051】
【表6】

【0052】
耐火試験中、壁の反りをその垂直な中央線に沿って3点で測定した:壁の左側から30インチ(位置#1)、60インチ(位置#2)及び90インチ(位置#3)。各指定位置でピンと張った糸から壁表面までの測定が行われた。
【0053】
【表7】

【0054】
ホース流水再試験
標準に従って、耐火試験で耐火時間として指定されている時間の半分に等しい時間、複製試験体を火炎暴露試験にかけ、その後直ちにホース流水試験を行った。
【0055】
試験中に行われた観察は以下の通りである。
【0056】
【表8】

【0057】
耐火試験からの結論
この報告で記載されたように組み立てられ試験された、両サイドに出願人の積層複合パネル(厚さ1/2インチのHardirock(登録商標)“Max C”(商標)石膏ボードに積層された厚さ1/8インチのHardiboard(登録商標)繊維セメント表面スキン)を有する20GA.3−5/8インチ亜鉛メッキスチールスタッド壁は、ASTM E119標準による対称壁アセンブリに対する60分無荷重耐火等級を達成した。
【0058】
利点の要約
本発明の好ましい実施形態は、石膏に積層された繊維セメントからなる、予め作製された一体化積層複合材において、少なくとも1時間の耐火性ならびにかなりの耐表面損傷及び衝撃性を併せ持つ。これらの性質は、一実施形態では厚さがたった約5/8インチであり、過剰に重くなく切断が容易で、取付けが早く容易である積層複合材において達成される。
【0059】
従来技術の2層システムの一つの不利な点は、個々の繊維セメント及び石膏材がそれらの個別の取付けを容易にするためには自立していなければならないということである。したがって、繊維セメント及び石膏の層は、自立したままであるためにそれらはどの程度まで薄くありうるかという点で制限されている。しかし、本発明の好ましい実施形態では、取り付けるために、繊維セメント及び石膏層を予め作製された一体化積層複合材に合体させる。したがって、繊維セメント及び石膏の個々の層は自立している必要がなく、例えば繊維セメント層の厚さをかなり小さくすることができる。これによりツーピースシステムに比べて一体化積層複合材の全厚さを小さくできる。結果として、本発明の一実施形態では1/8インチの繊維セメント層及び1/2インチ石膏層を合体して厚さが約5/8インチの一体化複合積層体を作り出し、それは1時間耐火等級ならびに耐表面損傷及び衝撃性を同時に達成する。
【0060】
前記で例示され記載された実施形態は本発明の特定の好ましい実施形態の例としてのみ与えられている。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当分野の技術者により本明細書に与えられた実施形態に様々な変更及び修正がなされうる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】石膏に積層された繊維セメントを備える一体化積層複合材の斜視図である。
【図2】一体化積層複合材を構成する繊維セメント、石膏及び接着層の相対的厚さを示す、図1の一体化積層複合材の横断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 繊維セメント層
20 石膏層
30 接着剤
40 建材(複合壁材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め作製された繊維セメントシート及び石膏パネル及び、予め作製された繊維セメントシートとは完全に一体となっていない接着剤層からなる建材であって、接着剤層は繊維セメントシートと石膏パネルの間に差し込まれ、ASTM E119−98による少なくとも1時間の耐火等級を有する一体化積層複合材を形作るために繊維セメントシートが石膏パネルに接着剤層により積層されていることを特徴とする建材。
【請求項2】
一体化積層複合材が厚さ5/8インチである請求項1に記載の建材。
【請求項3】
繊維セメントシートが厚さ1/8インチである請求項2に記載の建材。
【請求項4】
石膏パネルが厚さ1/2インチである請求項2に記載の建材。
【請求項5】
繊維セメントシートが厚さ4.5〜6ミルである接着剤により石膏パネルに接着される請求項1に記載の建材。
【請求項6】
接着剤層がポリ酢酸ビニルを含む請求項1に記載の建材。
【請求項7】
接着剤層が、水系高分子接着剤、溶剤系接着剤、熱硬化接着剤、変性デンプン等の天然高分子、ポリウレタン等の湿気硬化或は反応ホットメルト接着剤、耐熱あるいは耐火接着剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる物質からなる請求項1に記載の建材。
【請求項8】
一体化積層複合材がロールプレスされる請求項1に記載の建材。
【請求項9】
一体化積層複合材が単一で又は積み重ねられた状態でプレスされる請求項1に記載の建材。
【請求項10】
一体化積層複合材の少なくとも1つの表面が水系ポリマーエマルジョン又は溶剤系シーラントでシールされる請求項1に記載の建材。
【請求項11】
一体化積層複合材の少なくとも1つの表面が水系又は溶剤系塗料で下塗りされている請求項1に記載の建材。
【請求項12】
予め作製された繊維セメントパネル及び石膏パネルからなる建材であって、一体化積層複合材を形作るために石膏パネルが予め作製された繊維セメントパネルに積層されていることを特徴とする建材。
【請求項13】
厚さが5/8インチである請求項12に記載の建材。
【請求項14】
予め作製された繊維セメントパネルがセルロース繊維を含む請求項13に記載の建材。
【請求項15】
予め作製された繊維セメントパネルが密度2.0g/cm3までである請求項12に記載の建材。
【請求項16】
一体化積層複合材がASTM E119−98による少なくとも1時間の耐火等級を有する請求項12に記載の建材。
【請求項17】
予め作製された繊維セメントパネルと石膏パネルが接着剤を用いて互いに積層される請求項12に記載の建材。
【請求項18】
一体化積層複合材を形作るために前もって作成された繊維セメントシートが石膏パネルに積層されることからなる取付け用建材の製造方法。
【請求項19】
繊維セメントシートがポリ酢酸ビニル接着剤を用いて石膏パネルに積層される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
繊維セメント層を石膏パネルに積層することが、少なくとも38psiの圧力で繊維セメント層を石膏パネルにプレスすることである請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−162460(P2007−162460A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3021(P2007−3021)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【分割の表示】特願2001−529932(P2001−529932)の分割
【原出願日】平成12年10月5日(2000.10.5)
【出願人】(505018256)ジェイムズ ハーディー インターナショナル ファイナンス ベスローテン フェンノートシャップ (11)
【氏名又は名称原語表記】JAMES HARDIE INTERNATIONAL FINANCE B.V.
【Fターム(参考)】