説明

繊維基材用インクジェット受理剤、及びそれを用いたインクジェット記録媒体

【課題】本発明が解決しようとする課題は、繊維基材に対して非常に優れた発色性(印刷性)を有するインクジェット受理層を形成可能な繊維基材用インクジェット受理剤及びインクジェット記録媒体を提供することである。
【解決手段】本発明は、分子内に一般式〔I〕で示される構造単位(a)を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性マグネシウム塩(B)、カチオン性基含有水溶性樹脂(C)、及び水系媒体を含有してなる繊維基材用インクジェット受理剤であって、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が前記水系媒体中に分散し、かつ前記水溶性マグネシウム塩(B)が、前記繊維基材用インクジェット受理剤の固形分100質量部に対して、10〜15質量部含まれることを特徴とする繊維基材用インクジェット受理剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外広告等に使用可能な、のぼり旗や横断幕、タペストリー等に使用可能なインクジェット記録媒体、及びその製造に使用可能な繊維基材用インクジェット受理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷関連技術の累積進歩は著しく、インクジェットプリンターによって銀塩写真並みの画像を得ることが可能となってきている。このため、インクジェットプリンターは家庭用のみならず、屋内外向け広告看板等の製造への適用も検討され始めている。
【0003】
前記広告看板のうち、のぼり旗や横断幕、垂れ幕等のような繊維基材をベースとしたものの製造には、これまで、高発色な画像を形成可能な方法として知られるスクリーン印刷法が適用されてきた。しかし、スクリーン印刷法は印刷版を必要とするため、小ロット生産に適した方法ではなかった。また、多色印刷する際の色彩再現性の点で、実用上十分といえる方法ではなかった。
【0004】
そのため、前記のぼり旗等の製造にも、インクジェット印刷技術を適用することが具体的に検討されており、例えば柔軟な風合いの繊維基材表面に、ワイドフォーマットインクジェットプリンターと呼ばれる大判の印刷が可能なプリンターを用いて所望の画像等を印刷する方法が検討されている。
【0005】
しかし、繊維基材の表面には、通常、繊維組織に起因した凹凸が存在するため、その表面に印刷を施しても、高精細な画像を形成することは困難な場合があった。また、繊維表面に付着したインクが、繊維の毛細管現象によって基材内部で拡散し、鮮明な画像を形成することが困難な場合があった。
【0006】
前記問題を解決する方法としては、繊維基材表面にインクジェット受理層を積層する方法が知られており、例えば繊維基材上にインク吸収層を有するインクジェット記録用布帛であって、前記インク吸収層が直径0.5μm以下の微細繊維状セルロース、水溶性非イオン性ポリマー、多孔質シリカ及びカチオン性ポリマーを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記布帛は、依然として、実用上十分なレベルの発色性を有するといえるものではなかった。
【0007】
一方で、水系媒体と、前記水系媒体に分散した分子内に下記一般式〔I〕で示される構造単位を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂と、70〜90モル%の鹸化度のポリビニルアルコールと水溶性多価金属塩とを含有するインクジェット受理剤が、顔料インクに対する印刷適性に優れた受理層を形成できることが知られており、その受理層を繊維基材上に形成できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【化1】

〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す。〕
【0009】
前記インクジェット受理剤によれば、繊維基材上に、鮮明な画像等を印刷可能な高発色性(印刷性)のインクジェット受理層を形成することが可能である。
しかし、広告媒体には、従来よりも非常に高いレベルのデザイン性や高鮮明性が求められており、それに対応可能なインクジェット記録媒体の開発が求められているなかで、前記したインクジェット受理剤からなる受理層を有する記録媒体は、その非常に高いレベルの発色性(印刷性)にあと一歩及ぶものではなかった。
【0010】
以上のように、繊維基材に対して非常に高いレベルの優れた発色性を付与可能なインクジェット受理剤の開発が産業界から切望されているものの、依然として、かかる受理剤を見出せていないのが実情であった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−293571号公報
【特許文献2】特開2007−168164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、繊維基材に対して非常に優れた発色性(印刷性)を有するインクジェット受理層を形成可能な繊維基材用インクジェット受理剤を提供することである。
また、本発明は、発色性の非常に優れたインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、繊維基材に優れた発色性を付与するためには、一般に、インクの吸収性や発色性の向上に好適に使用される水溶性マグネシウム塩を使用することが重要と考え検討を進めた。具体的には、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、トリエタノールアミン等の鎖伸長剤とを反応させて得られる、一般的なポリウレタン樹脂、カチオン性水溶性樹脂、及び水溶性マグネシウム塩を含むインクジェット受理剤を検討した。
しかし、前記受理剤では、従来品と比較して発色性等に優れた画像等を印刷可能な受理層を形成することは困難であった。
【0014】
そこで、前記文献2に記載されたような側鎖にカチオン性基を有するポリウレタン樹脂とカチオン性水溶性樹脂と、過剰の水溶性マグネシウム塩とを含むインクジェット受理剤を検討した。
前記受理剤によれば、従来品と比較して発色性に優れたインクジェット受理層を形成可能であったが、前記したような極めて高いレベルの発色性を付与するには至らなかった。
【0015】
本発明者等は、さらに検討を進めた結果、側鎖にカチオン性基を有するポリウレタン樹脂とカチオン性水溶性樹脂と、特定量の水溶性マグネシウム塩とを含むインクジェット受理剤が、繊維基材に対して、格段に優れた発色性を有するインクジェット受理層を形成できることを見出した。
【0016】
すなわち本発明は、分子内に下記一般式〔I〕で示される構造単位(a)を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性マグネシウム塩(B)、カチオン性基含有水溶性樹脂(C)、及び水系媒体を含有してなる繊維基材用インクジェット受理剤であって、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が前記水系媒体中に分散し、かつ前記水溶性マグネシウム塩(B)が、前記繊維基材用インクジェット受理剤の固形分100質量部に対して、10〜15質量部含まれることを特徴とする繊維基材用インクジェット受理剤に関するものである。
【0017】
【化2】

〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す。〕
【0018】
また、本発明は、繊維基材の片面又は両面に、前記インクジェット受理剤によって形成されるインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の繊維基材用インクジェット受理剤によれば、例えばプラスチックフィルム等と比較して表面平滑性が乏しいため、一般にインクジェット印刷法では鮮明な印刷画像を形成することが困難な繊維基材に対して、優れた発色性を付与することができる。そのため、本発明の受理剤からなるインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体は、例えば屋内外用の宣伝広告媒体や装飾、特に宣伝広告用途で使用される、のぼり旗や横断幕等に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のインクジェット受理剤は、分子内に下記一般式〔I〕で示される構造単位(a)を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性マグネシウム塩(B)、カチオン性基含有水溶性樹脂(C)、及び水系媒体を含有してなる繊維基材用インクジェット受理剤であって、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が前記水系媒体中に分散し、かつ前記水溶性マグネシウム塩(B)が、前記繊維基材用インクジェット受理剤の固形分100質量部に対して、10〜15質量部含まれることを特徴とするものである。
【0021】
【化3】

〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す。〕
【0022】
まず、本発明のインクジェット受理剤を構成する水系媒体とは、水、及び水と混和する有機溶剤のことである。水と混和する有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、等を使用することができる。本発明においては、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0023】
次に、本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)について説明する。
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、分子内に、下記一般式〔I〕で示される構造単位(a)を含有してなるものである。
【0024】
【化4】

【0025】
〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す。〕
【0026】
上記一般式〔I〕で示される構造単位(a)は、本発明を構成するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に水系媒体への分散性を付与するうえで必須の構造単位である。また、上記一般式〔I〕で示される構造単位(a)は、後述する特定量の水溶性マグネシウム塩(B)と併用されることで、非常に優れた発色性有するインクジェット受理層の形成に寄与する。また、前記構造単位(a)は、インクジェットインクの固着性、印刷画像の耐水性の向上した、造膜性及び光沢に優れたインクジェット受理層の形成に寄与する。
【0027】
前記一般式〔I〕で示される構造単位(a)に含まれるカチオン性アミノ基は、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)中に0.005当量/kg〜1.5当量/kg含まれていることが好ましい。
【0028】
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、公知の化合物を使用して製造することができるが、工業的に入手容易でかつ安価な原料を用いる製造方法としては、下記一般式[II]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオール(A−3)を、後述するポリイソシアネート(A−4)と反応せしめる方法が最も有用である。
【0029】
【化5】

【0030】
〔式中、Rは、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を表す。〕
【0031】
前記3級アミノ基含有ポリオール(A−3)は、その分子内に含有する3級アミノ基を、酸による中和、あるいは4級化剤による4級化によってカチオン性基を発生させるための前駆体であり、ポリウレタン樹脂に水分散性を付与するための化合物である。
【0032】
前記3級アミノ基含有ポリオール(A−3)は、例えば、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とを、エポキシ基1当量に対してNH基1当量となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で開環付加反応させることにより容易に得られる。
【0033】
前記一般式[II]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)としては、下記の化合物を、単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0034】
前記Rが、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基であるものとしては、例えばエタンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,3−ジグリシジルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、3−メチル−ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジグリシジルエーテル、ポリブタジエン−ジグリシジルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物の(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0035】
また、Rが2価フェノール類の残基であるものとしては、例えばレゾルシノール−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)−2,2−プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0036】
また、Rがポリオキシアルキレン基であるものとしては、例えばジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、更にオキシアルキレンの繰り返し単位数が3〜60のポリオキシアルキレングリコール−ジグリシジルエーテル、例えば、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコール−ジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0037】
これらの中でも、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水分散性をより向上させることができることから、上記一般式[II]のRが、ポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、特に、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、及び/又はポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、及び/又はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテルが好適である。
【0038】
前記一般式[II]のRがポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルのエポキシ当量は、本発明のインクジェット受理剤の種々の機械的特性や熱特性等の物性への影響を最小限に抑制し、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)水分散体中のカチオン濃度の設計を広範囲に行える点で、好ましくは1000g/当量以下、より好ましくは500g/当量以下、特に好ましくは300g/当量以下である。
【0039】
本発明において、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)との開環付加反応により、3級アミノ基含有ポリオール(A−3)を製造するには、2級アミン(A−2)が必要である。
【0040】
かかる2級アミン(A−2)としては、公知の化合物を使用できるが、反応制御の容易さの点で、分岐状又は直鎖状の脂肪族2級アミンが好ましい。
【0041】
かかる2級アミンとして使用することができるものとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−へプチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミンなどが挙げられる。
【0042】
これらの中で、3級アミノ基含有ポリオール(A−3)を製造する際に揮発し難いこと、あるいは、含有する3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は4級化剤で4級化する際に立体障害を軽減できること、などの理由から、炭素数2〜18の範囲の脂肪族2級アミンが好ましく、炭素数3〜8の範囲の脂肪族2級アミンがより好ましい。
【0043】
3級アミノ基含有ポリオール(A−3)が有する3級アミノ基の一部又は全てを、酸で中和、又は4級化剤で4級化することにより、3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とポリイソシアネート(A−4)と反応せしめて得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に水分散性を付与することができる。
【0044】
上記の3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などを使用することができる。
【0046】
これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明において、3級アミノ基の中和又は4級化に使用する酸や4級化剤の量は、特に制限はないが、本発明のインクジェット受理剤の優れた印刷画像の耐水性を発現させるために、3級アミノ基1当量に対して、好ましくは0.1当量〜2.0当量の範囲であり、より好ましくは0.3当量〜1.0当量の範囲である。
【0048】
本発明のインクジェット受理剤においては、インクジェットインクの固着性により優れ、その結果、印刷画像の耐水性がより向上する点から、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、3級アミノ基が4級化されているとより好ましい。
【0049】
3級アミノ基含有ポリオール(A−3)を得るための、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)との反応方法について以下に説明する。
【0050】
前記1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)が有するエポキシ基と2級アミン(A−2)が有するNH基との反応比率[NH基/エポキシ基]は、好ましくは当量比で0.5/1〜1.1/1の範囲であり、より好ましくは当量比で0.9/1〜1/1の範囲である。
【0051】
これらの反応は無溶剤条件下にて行うこともできるが、反応制御を容易にする目的で、あるいは粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤を使用し行うこともできる。
【0052】
かかる有機溶剤としては、反応を阻害しない有機溶剤であればよく、例えばケトン類、エーテル類、酢酸エステル類、炭化水素類、塩素化炭化水素類、アミド類及びニトリル類などを使用することができる。
【0053】
前記ケトン類としては、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができる。
【0054】
エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を使用することができる。
【0055】
前記酢酸エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等が例示できる。
【0056】
炭化水素類としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を使用することができる。
【0057】
塩素化炭化水素類としては、例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等を使用することができる。
【0058】
アミド類としては、例えばジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル等を使用することができる。
【0059】
前記した有機溶剤のうち、低沸点を有する有機溶剤を使用する場合は、揮発による飛散を防止するために、密閉系により加圧反応をすることが好ましい。
【0060】
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とは、反応容器中に一括供給し反応させてもよく、また、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)の何れか一方を反応容器に仕込み、他方を滴下することにより反応させてもよい。
【0061】
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)との反応は、反応性が高いため通常は触媒を必要としない。しかし、2級アミン(A−2)の窒素原子が有する脂肪族などの置換基が大きく、前記化合物(A−1)との反応が、立体障害により遅くなる場合には、フェノール、酢酸、水、アルコール類などに代表されるプロトン供与性物質を触媒として使用してもよい。
【0062】
また、反応温度は、好ましくは室温〜160℃の範囲であり、より好ましくは60℃〜120℃の範囲である。
【0063】
また、反応時間は、特に限定しないが、通常30分〜14時間の範囲である。
【0064】
また、反応終点は、赤外分光法(IR法)にて、エポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークの消失によって確認できる。
【0065】
また、常法によりアミン当量(g/当量)と水酸基当量(g/当量)を求めることができる。
【0066】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記3級アミノ基含有ポリオール(A−3)の他に、目的、用途に応じて一般にポリウレタンの合成に利用される種々のポリオール(A−5)を用いることができる。
【0067】
その中でも、好ましくは数平均分子量200〜10,000の範囲、より好ましくは数平均分子量300〜5,000の範囲のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリチオエーテルポリオール、及びポリブタジエングリコールポリオール等の各種ポリオールが挙げられ、これらを単独使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記ポリオール(A−5)の中でも、工業的に入手が容易なポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールについて下記に代表的化合物を例示する。
【0069】
前記ポリエステルポリオールとしては、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものを使用することができる。
【0070】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(数平均分子量300〜6000の範囲);ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキサイド付加体;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリストール、ソルビトール等を使用することができる。
【0071】
前記ポリエステルポリオールを製造する際に使用できるポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらのポリカルボン酸の無水物あるいはエステル形成誘導体等を使用することができる。
【0072】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、及びこれらの共重合ポリエステル等を使用することもできる。
【0073】
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、後述する活性水素原子を少なくとも2個有する化合物を開始剤として使用し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の化合物の1種以上を付加重合することによって得られるものを使用することができる。
【0074】
前記活性水素原子を少なくとも2個有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、グリセリン、ソルビトール;アクニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等を使用することができる。
【0075】
また、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0076】
本発明のインクジェット受理剤によって形成されるインクジェット受理層には、長期間の保存耐久性が要求されるために、前記ポリオール(A−5)のなかでも、高耐久性のポリオールを使用することが好ましく、特にポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0077】
本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に使用することができるポリイソシアネート(A−4)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等の、水性ポリウレタン樹脂の製造において用いられる公知慣用の有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0078】
前記ポリイソシアネート(A−4)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びこれらの三量体等を使用することができる。
【0079】
インクジェット受理剤には、受理層の耐水性やインクジェットインクの固着性等の向上が求められるが、インクジェット記録媒体が屋外で使用される宣伝広告用バナー等として使用される場合には、特に耐熱変色性や耐光変色性等の向上が求められる。
【0080】
その場合、熱変色や光変色による表面外観の劣化を防止するために、ポリイソシアネートとして、一般に無黄変型といわれる脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートを使用することにより、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)にかかる脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造単位を導入することが好ましい。
【0081】
この点から、前記ポリイソシアネート(A−4)としては、原料を入手しやすさを考慮すると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0082】
カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、種々の機械的特性や熱特性等の物性を有するポリウレタン樹脂の設計を行う目的で、ポリアミンを鎖伸長剤として使用してもよい。
【0083】
かかる鎖伸長剤として使用可能なポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、等の水酸基を含有するジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類を使用することができる。
【0084】
カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ポリアミンの他に、ポリウレタン樹脂の種々の機械的特性や熱特性等の物性を調整する目的で、その他の活性水素原子含有の鎖伸長剤を使用することもできる。
【0085】
前記その他の活性水素含有の鎖伸長剤として使用することができるものは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類及びそれらのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物類、及び水が挙げられ、本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の保存安定性を低下させない範囲内においてこれらを単独もしくは併用しても構わない。
【0086】
また、インクジェット受理層の皮膜強度向上による耐久性の発現や受理層を形成させる基材との密着性向上などを目的として下記に例示するようなシラン化合物をカチオン性ポリウレタン樹脂(A)の分子骨格内に導入しても構わない。例示化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N,N−ジ−2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0087】
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造し、該カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を水系媒体中に分散する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0088】
〔方法1〕ポリオール(A−5)とポリイソシアネート(A−4)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0089】
〔方法2〕ポリオール(A−5)とポリイソシアネート(A−4)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、ポリアミンを用いて鎖伸長することによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0090】
〔方法3〕ポリオール(A−5)とポリイソシアネート(A−4)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0091】
〔方法4〕ポリオール(A−5)とポリイソシアネート(A−4)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とを、一括又は分割してこれらを仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水系媒体中にホモジナイザー等の機械を用いて強制的に乳化させて水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0092】
〔方法5〕ポリオール(A−5)とポリイソシアネート(A−4)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)とポリアミンとを、一括して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0093】
尚、上記〔方法1〕〜〔方法5〕の製造方法において、乳化剤を必要に応じて用いてもよい。
【0094】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)水分散体を製造する際に使用可能な乳化剤としては、特に限定しないが、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にノニオン性又はカチオン性であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等を使用することが好ましい。なお、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)水分散体への乳化剤の混和安定性が保たれる範囲内であれば、アニオン性又は両性の乳化剤を併用しても構わない。
【0095】
前記方法によりカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、該樹脂の水分散性を助ける助剤として、親水基となりうる基を有する化合物(以下、親水基含有化合物という。)を使用してもよい。
【0096】
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物が好ましい。
【0097】
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
【0098】
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
【0099】
次に、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際の、原料仕込み比率(当量比)について詳細に述べる。
【0100】
前記ポリオール(A−5)と3級アミノ基含有ポリオール(A−3)と、ポリイソシアネート(A−4)とを反応させる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(A−4)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(A−5)が有する水酸基の当量+(A−3)が有する水酸基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0101】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に、鎖伸長剤として、たとえばポリアミンを使用する場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(A−4)のイソシアネートの当量〕/〔(A−5)が有する水酸基の当量+(A−3)が有する水酸基の当量+ポリアミンが有するアミノ基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0102】
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、ウレタンプレポリマーを製造した後に、ポリアミンを用いて鎖伸長反応させることにより製造してもよい。かかる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基との当量比〔(A−4)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(A−5)が有する水酸基の当量+(A−3)が有する水酸基の当量〕を、1.1/1〜3/1の範囲に調整することが好ましく、1.2/1〜2/1の範囲に調整することがより好ましい。この場合、ポリアミンで鎖伸長する際のポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比は、好ましくは1.1/1〜0.9/1の範囲である。
【0103】
かかる反応において、反応温度は、好ましくは20℃〜120℃の範囲であり、より好ましくは30℃〜100℃の範囲である。
【0104】
また、3級アミノ基含有ポリオール(A−3)は、優れた印刷画像の耐水性を発揮させるために、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)に対して、好ましくは0.005当量/kg〜1.5当量/kgの範囲であり、より好ましくは0.03当量/kg〜1.0当量/kgであり、さらにより好ましくは0.15当量/kg〜0.5当量/kgの範囲である。
【0105】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、無溶剤条件下で製造することもできるが、反応制御を容易にする目的で、又は粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤下で製造することも可能である。
【0106】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等を使用することができる。
【0107】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、無触媒下で製造することも可能であるが、公知の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン類、4級アンモニウム塩等を使用してもよい。
【0108】
上記のようにして得られるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体中に含まれる有機溶剤は、必要により、反応の途中又は反応終了後に、例えば減圧加熱などの方法により除去することが好ましい。
【0109】
次に、本発明で使用する水溶性マグネシウム塩(B)について説明する。
本発明で使用する水溶性マグネシウム塩(B)は、水に対する溶解性を有するマグネシウム塩であり、例えば20℃の水を用いてマグネシウム塩の飽和水溶液を調製した場合、飽和水溶液100g中に含まれるマグネシウム塩が1g以上になるものをいう。
【0110】
前記水溶性マグネシウム塩(B)は、本発明のインクジェット受理剤に含まれる固形分100質量部に対して10〜15質量部使用することが必須である。例えば、水溶性マグネシウム塩(B)の含有量が7質量部であるインクジェット受理剤では、産業界から求められる非常に高いレベルの発色性を有する受理層を形成することは困難である。また、水溶性マグネシウム塩(B)の含有量が17質量部である場合も産業界から求められる非常に高いレベルの発色性を有する受理層を形成することは困難である。前記水溶性マグネシウム塩(B)は、本発明のインクジェット受理剤に含まれる固形分100質量部に対して12〜14質量部使用することがより好ましい。
【0111】
また、前記受理層の非常に優れた発色性は、前記水溶性マグネシウム塩(B)を前記した特定量使用することのみによって奏されるものではなく、それを前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)と組み合わせ使用することによってはじめて奏される効果である。したがって、従来よりインクジェット受理剤に使用されている、例えば前記構造単位(a)を有さないポリウレタン樹脂に、前記特定量の水溶性マグネシウム塩を組み合わせて得られるインクジェット受理剤では、本発明の効果を得ることはできない。
【0112】
前記水溶性マグネシウム塩(B)としては、顔料インクの吸収性向上効果、ポストキュアの緩和効果が高い点から、例えば塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム等を用いることができる。これらは1種類のみを用いても良く、また2種類以上を用いても良い。なかでも水への溶解性が良好である点、安価であり入手が容易であることから、塩化マグネシウム、及びその水和物を使用することが特に好ましい。
【0113】
次に、本発明で使用するカチオン性基含有水溶性樹脂(C)について述べる。
カチオン性基含有水溶性樹脂(C)とは、水にほぼ完全に溶解した形態をとり得る樹脂のうち、カチオン性基を有するものを指す。具体的には、例えばアミンエピクロルヒドリン樹脂、エピクロルヒドリンポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン塩含有樹脂、ポリビニルアミン塩含有樹脂、ポリビニルアミジン樹脂、ポリアリルアミン塩含有樹脂、ポリアミンスルホン塩含有樹脂、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、カチオン変性ポリビニルアルコール、カチオン基含有水溶性アクリル樹脂、カチオン変性デンプン、キトサンの中和塩等を使用することができる。
前記カチオン性基含有水溶性樹脂(C)としては、なかでもアミンエピハロヒドリン樹脂やエピハロヒドリンポリアミド樹脂を使用することが、繊維基材に対して非常に優れた発色性を付与可能なインクジェット受理層を形成する上で好ましい。
【0114】
また、前記カチオン性基含有水溶性樹脂(C)は、インクジェット受理剤に含まれる固形分100質量部に対して1〜25質量部質量部の範囲で使用することが好ましく、10〜15質量部の範囲で使用することがより好ましい。前記カチオン性基含有水溶性樹脂(C)を前記範囲内で含有するインクジェット受理剤であれば、インクの固着性や耐水性、耐熱変色性、耐光変色性に優れたインクジェット受理層を形成することができる。
【0115】
前記アミンエピハロヒドリン樹脂としては、各種のものを使用することができるが、例えば、下記一般式(III)で示される構造を有するものを使用することができる。前記アミンエピハロヒドリン樹脂は、例えば2級アミンとエピハロヒドリンと、必要に応じてその他の成分とを反応させることによって得られる。
【0116】
【化6】

【0117】
前記一般式(III)中のR及びRは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す。Xはハロゲン原子を示す。nは1以上の整数を示す。
【0118】
前記2級アミンは、一つの窒素原子に二つの炭化水素基及び水素が結合した化合物並びにヘテロ環内に窒素原子を有し、該窒素原子が水素を有している化合物である。
【0119】
前記2級アミンとしては、例えば脂肪族2級アミン、芳香族2級アミン、脂環式2級アミン、ヘテロ環式2級アミン等を使用することができ、これらを2種以上併用することも可能である。
【0120】
脂肪族2級アミンとしては、具体的にはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルラウリルアミン、及びジベンジルアミン等を使用することができる。
【0121】
芳香族2級アミンとしては、例えばN−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N−ブチルアニリン、N−ペンチルアニリン、N−ヘキシルアニリン、N−オクチルアニリン、N−デシルアニリン、N−ラウリルアニリン、及びN−ベンジルアニリン等のN−アルキルアニリン、N−メチルトルイジン、N−エチルトルイジン、N−プロピルトルイジン、N−ブチルトルイジン、N−ペンチルトルイジン、N−ヘキシルトルイジン、N−オクチルトルイジン、N−デシルトルイジン、N−ラウリルトルイジン、及びN−ベンジルトルイジン等のN−アルキルトルイジン、並びに、N−メチルナフチルアミン、N−エチルナフチルアミン、N−プロピルナフチルアミン、N−ブチルナフチルアミン、N−ペンチルナフチルアミン、N−ヘキシルナフチルアミン、N−オクチルナフチルアミン、N−デシルナフチルアミン、N−ラウリルナフチルアミン、及びN−ベンジルナフチルアミン等のN−アルキルナフチルアミン等が挙げられる。
【0122】
脂環式2級アミンとしては、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−プロピルシクロヘキシルアミン、N−ブチルシクロヘキシルアミン、N−ヘキシルシクロヘキシルアミン、N−オクチルシクロヘキシルアミン、N−デシルシクロヘキシルアミン、及びN−ラウリルシクロヘキシルアミン等のN−アルキルシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロオクチルアミン、N−エチルシクロオクチルアミン、N−プロピルシクロオクチルアミン、N−ブチルシクロオクチルアミン、N−ヘキシルシクロオクチルアミン、N−オクチルシクロオクチルアミン、N−デシルシクロオクチルアミン、及びN−ラウリルシクロオクチルアミン等のN−アルキルシクロオクチルアミン、並びにジシクロヘキシルアミン、及びジシクロオクチルアミン等のジシクロアルキルアミンを挙げられる。
【0123】
ヘテロ環式2級アミンとしては、ピペリジン、ピロリジン、2−メチルピペリジン、及び4−メチルピペリジン等が挙げられる。
【0124】
前記した2級アミンとしては、脂肪族2級アミンが好ましく、その中でもジメチルアミン及びジエチルアミンが好ましく、ジメチルアミンが特に好ましい。さらにはジメチルアミンを単独で用いることが特に好ましい。
【0125】
また、前記エピハロヒドリンとしては、例えばエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、及びメチルエピクロロヒドリン、メチルエピブロモヒドリン等を使用することができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。これらのエピハロヒドリンのなかでも、商業的入手の容易性や反応性の点でエピクロロヒドリンを使用することが特に好ましい。
【0126】
また、前記アミンエピハロヒドリン樹脂は、前記2級アミン以外のその他のアミンを、前記2級アミン及び前記エピハロヒドリンと反応させて得られたものであってもよい。
【0127】
前記アミンエピハロヒドリン樹脂は、例えば前記2級アミンと前記エピハロヒドリンと、必要に応じて前記2級アミン以外のその他のアミンとを、加熱条件下で混合、攪拌しそれらを公知慣用の方法で付加重合することによって製造することができる。
【0128】
前記アミンエピハロヒドリン樹脂の重量平均分子量は、他の配合成分との混和性や混合作業性、得られるインクジェット受理層の耐水性の点を考慮すると4000〜10000の範囲内のものが好ましい。
【0129】
また、前記エピハロヒドリンポリアミド樹脂は、ジエチレントリアミン等の多官能ポリアミンとアジピン酸等の多塩基酸とを縮合させて得られたポリアミドポリアミンに、エピハロヒドリンを付加反応させて得られる。具体的には、ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエピクロルヒドリンポリアミドを使用することが好ましい。
【0130】
また、本発明のインクジェット受理剤には、必要に応じて、各種の水溶性樹脂を使用することができる。
【0131】
ここで水溶性樹脂とは、水に完全に溶解した形態をとり得る樹脂であり、本発明ではいかなる構造、製法のものも使用することができる。その具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、及びこれらの変性物等を挙げることができる。
【0132】
これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、セルロース誘導体を使用することが、得られるインクジェット受理層のインク吸収性を向上できるため好ましい。
【0133】
前記したなかでも、ポリビニルアルコールは透明性、皮膜強度、顔料に対するバインダー力等のインクジェット受理剤に必要な物性を有しており、かつ入手が容易であり、変性物も含め種類が豊富である等の点から特に好ましい。これらの特徴から、本発明のインクジェット受理剤に水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを用いることで、光沢、透明性、インク吸収性に優れたインクジェット受理層を形成することが可能となる。
【0134】
ポリビニルアルコールは一般に、酢酸ビニルポリマーのアセチル基部位を、水酸化ナトリウム等の強塩基で加水分解して、水酸基とすること(鹸化)により得られる。本発明に用いるポリビニルアルコールとしては、要求物性に応じて適宜適当な鹸化度、重合度のものを使用することができる。なお、本発明で言う鹸化度とは、ポリビニルアルコールが有する酢酸基と水酸基との合計数に対する、前記水酸基の数の割合を百分率で表したものである。
【0135】
前記ポリビニルアルコールとしては、いかなる重合度のものも用いることができるが、インクの吸収性、印刷画像の発色濃度、及び耐水性を向上させる観点から、500〜4000の範囲の重合度を有するものを使用することが好ましい。
【0136】
本発明では、70モル%〜90モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することが好ましく、86モル%〜89モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することがより好ましい。かかる範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することによって、得られるインクジェット受理層の発色性の低下や耐水性の低下を抑制することができる。
【0137】
前記鹸化度が70モル%〜90モル%のポリビニルアルコールとしては、具体的にクラレポバールPVA224、PVA235(以上、(株)クラレ製)、ゴーセノール GL−05、GH−17、GH−20、GH−23(以上、日本合成化学工業(株)製)などが使用可能であるが、本具体例によって本発明は何ら限定されない。
【0138】
また、前記ポリビニルアルコールとしては、各種の変性基を有する変性ポリビニルアルコールを使用することができる。変性基の例としては、例えばアセトアセチル基、シリル基、第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、ケトン基、メルカプト基、アミノ基、エチレン基等が挙げられる。これらは、酢酸ビニルと、前記変性基を有するモノマーとを共重合することによって、ポリビニルアルコール中に導入することができる。
【0139】
前記ポリビニルアルコールは、インクジェット受理剤に含まれる固形分100質量部に対して10〜60質量部の範囲で使用することが好ましく、20〜40質量部の範囲で使用することがより好ましい。かかる配合割合のインクジェット受理剤は、顔料インクに対する印刷性、吸収性に優れ、顔料インク、染料インクのいずれにおいても印刷画像の良好な耐水性を有するインクジェット受理層を形成可能である。
【0140】
本発明のインクジェット受理剤は、例えば、前記水溶性マグネシウム塩(B)及びポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を、あらかじめ適当な水系媒体に分散あるいは溶解させた混合物と、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体と、カチオン性水溶性樹脂(C)の水溶液とを、各種の攪拌機や分散機を用いて混合する方法が簡便である。また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体と、カチオン性水溶性樹脂(C)の水溶液と、水溶性マグネシウム塩(B)、水溶性樹脂、及びその他の成分を、水系媒体中へ任意の順序で添加し混合する方法で製造することも可能である。
【0141】
前記インクジェット受理剤の製造に使用可能な攪拌機としては、例えばタービン翼、プロペラ翼、ファウドラー翼、パドル翼、アンカー翼、マックスブレンド翼、リボン翼、ディスパー翼等を有する攪拌機が挙げられる。また、分散機としては、例えば各種ホモジナイザー、ビーズミル、サンドミル、ラインミル、ソノレーター、コロイドミル等が挙げられる。
【0142】
本発明のインクジェット受理剤の固形分(不揮発分)、すなわちカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性マグネシウム塩(B)、カチオン性水溶性樹脂(C)、及びその他固形分の合計量の質量割合は、特に限定されないが、インクジェット受理剤の粘度、保存安定性を考慮して決定する必要がある。一般に水溶性樹脂を水系媒体に溶解すると、その粘度は水溶性樹脂の濃度に対して指数関数的に上昇する。また、高濃度であるほど保存安定性は悪化する傾向にある。よって、インクジェット受理剤の粘度が10万mPa・s以下、好ましくは5万mPa・sとなるよう、固形分を調整することが好ましい。また、本発明のインクジェット受理剤を各種基材に塗工、又は含浸する際に用いる塗工装置や含浸加工装置に適した粘度になるよう、調整することも必要である。
【0143】
本発明のインクジェット受理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。
【0144】
前記添加剤としては、例えば、ホウ酸、ジルコニウム系、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系等の各種架橋剤や、フィラーの分散剤、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、無機顔料、樹脂ビーズ等のブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、及びノニオン性、カチオン性、アニオン性、両性などの各種イオン性を有する炭化水素系、シリコーン系、フッ素系、アセチレンジオール系の各種レベリング剤等を使用することができる。
【0145】
これら添加剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定しないが、インクジェット受理剤中の固形分の全量に対して0.01〜30質量%の範囲であることが好ましい。
【0146】
また、本発明のインクジェット受理剤は、その受理層表面に光沢や透明性を保持したい用途と、その逆に隠蔽性を発現したい用途ではその使用方法は異なるが、その目的と用途に応じてシリカ、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム等の各種多孔質顔料を含んでいてもよい。前記多孔質顔料としては、インク吸収性が良好で、工業的に入手が容易で、且つ本発明を構成するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)との相溶性が良好なシリカ、アルミナを使用することが特に好ましい。
【0147】
前記多孔質顔料を使用する場合には、インクジェット受理剤中の全固形分に対して3質量%〜70質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0148】
また、本発明のインクジェット受理剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で、水系媒体に分散可能な、公知の樹脂、例えば酢酸ビニル系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等の合成ゴム等を含んでいても良い。
【0149】
次に、本発明のインクジェット記録媒体について説明する。
【0150】
本発明のインクジェット記録媒体は、凹凸な表面を有する基材、具体的には繊維基材の片面または両面に、前記インクジェット受理剤からなる受理層を有するものである。前記受理層は、繊維基材上に積層されていてもよいが、受理層の一部が繊維基材に含浸していてもよい。
【0151】
本発明のインクジェット記録媒体は、顔料インクによってインクジェット印刷が施された場合であっても、非常に優れた発色性や耐水性を発現することができるため、のぼり旗や横断幕、タペストリー等の屋内外広告等に使用可能である。
【0152】
本発明のインクジェット記録媒体は、前記インクジェット受理剤を、繊維基材の片面または両面に塗工、又は繊維基材中に含浸させ、前記インクジェット受理剤中に含まれる水系媒体を揮発させることによって、製造することができる。
【0153】
前記繊維基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維等の合成繊維や、綿、麻等の天然繊維等からなる基材を使用することができる。前記繊維には、予め加工が施されていてもよい。また、基材の形態としては、前記した繊維からなる織布(布帛)や不織布が挙げられる。
【0154】
前記繊維基材上に前記インクジェット受理剤を塗工又は含浸する方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、特に限定しないが、例えば、繊維基材の片面または両面に塗工する方式として、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等を適用することが挙げられ、また、繊維基材の一部または全体に前記受理剤を含浸する方式として、スプレー方式、含浸浴へのディッピング方式等が挙げられる。
【0155】
本発明のインクジェット受理剤は、繊維基材上に塗工する場合に、形成される受理層のクラックを生じさせにくい。したがって、本発明のインクジェット受理剤によれば、インクジェット記録媒体を製造する際に、例えば低温条件下での乾燥工程や塗工を複数回繰り返すなど、受理層のクラックを防止する為の工程が不要となる。
【0156】
また、本発明のインクジェット受理剤を繊維基材上に塗工または含浸した後、水系媒体を揮発させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、乾燥機を用いて乾燥させる方法が一般的である。乾燥温度としては、水系媒体を揮発させることが可能で、かつ繊維基材に対して悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0157】
繊維基材上への前記インクジェット受理剤の付着量は、非常に高いレベルの発色性を維持し、かつ良好な生産効率を維持する観点から、繊維基材の重量に対して2〜30質量%の範囲であることが好ましく、インク吸収性と製造コストを勘案すると5〜20質量%が特に好ましい。
また、繊維基材への前記インクジェット受理剤の付着量を増加させることで、インクジェット記録媒体の発色性をより一層向上させることができる。ただし、付着量が増加すると、インクジェット記録媒体の風合いが若干硬くなる傾向があるため、その記録媒体の使用用途等に応じて、適宜調整することが好ましい。
【実施例】
【0158】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0159】
〔合成例1〕3級アミノ基含有ポリオール(E−1)の合成
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量。)590質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ−n−ブチルアミン380質量部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量。)を調製した。
【0160】
〔合成例2〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(A−I)の調製
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコ内で、「ニッポラン980R」〔日本ポリウレタン工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量。〕863質量部を、メチルエチルケトン260質量部に溶解した。
【0161】
次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート176質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で2時間反応させた後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(E−1)を161質量部と、メチルエチルケトンを540質量部添加し、15時間反応させた後、60℃に冷却し、さらにメタノールを1.3質量部添加し、1時間反応させた。
【0162】
次いで、ジメチル硫酸58質量部を添加し、60℃で3時間保持した後、メチルエチルケトンを400質量部と、イソプロパノールを600質量部、イオン交換水を2942質量部添加し、十分に攪拌することにより水分散体を調製した。得られた水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が40質量%で、pHが6.6であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(A−I)を調製した。
【0163】
〔実施例1〕
前記したカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(A−I)と、クラレポバールPVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度87モル%〜89モル%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液、及びカチオマスターPE−30〔四日市合成株式会社製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系カチオン性ポリマー〕の52.0質量%水溶液を、[水分散体(A−I):クラレポバールPVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:カチオマスターPE−30の52.0質量%水溶液]の質量割合が、31.8:58.9:5.3:4.0なるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合し、最後に水で希釈することにより、不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は12質量部であった。
【0164】
〔実施例2〕
前記カチオマスターPE−30の代わりに、DK−6830〔星光PMC株式会社製、エピクロルヒドリンポリアミド樹脂〕の25質量%水溶液を使用し、[水分散体(A−I):PVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:DK−6830の25質量%水溶液]の質量割合を30.4:56.4:5.1:8.1に変更したこと以外は、実施例1とすべて同様の方法により不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は12質量部であった。
【0165】
〔実施例3〕
前記[水分散体(A−I):PVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:DK−6830の25質量%水溶液]の質量割合を、30.5:55.2:6.0:8.3に変更したこと以外は、実施例2とすべて同様の方法により不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は14質量部であった。
【0166】
〔比較例1〕
前記[水分散体(A−I):PVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:DK−6830の25質量%水溶液]の質量割合を、31.7:59.1:0.8:8.4に変更したこと以外は、実施例2とすべて同様の方法により不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は2質量部であった。
【0167】
〔比較例2〕
前記[水分散体(A−I):PVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:DK−6830の25質量%水溶液]の質量割合を、30.9:58.5:2.8:7.4に変更したこと以外は、実施例2とすべて同様の方法により不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は7質量部であった。
【0168】
〔比較例3〕
前記[水分散体(A−I):PVA235の10質量%水溶液:塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液:DK−6830の25質量%水溶液]の質量割合を、29.6:55.6:7.4:7.4に変更したこと以外は、実施例2とすべて同様の方法により不揮発分が10質量%の繊維基材用インクジェット受理剤を調製した。前記インクジェット受理剤の固形分100質量部に対する塩化マグネシウムの含有量は17質量部であった。
【0169】
[インクジェット記録媒体の作製方法]
ポリエステルトロピカル(株式会社谷頭商店製。ポリエステル製の布帛)を、実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたインクジェット受理剤中へそれぞれ含浸した後、ニップロール(ロール圧3.5トン、速度5m/min)を用いて絞り、120℃で3分間乾燥させることによって、インクジェット記録媒体を作製した。なお、いずれのインクジェット記録媒体の、ポリエステルトロピカルに付着したインクジェット受理剤の固形分量は、ポリエステルトロピカルの質量に対して7.2質量%であった。
【0170】
[顔料インク印刷性の評価方法]
ワイドフォーマットインクジェットプリンター(セイコーエプソンド株式会社製、MAXART PX−7000)を使用し、前記インクジェット記録媒体に、シアン(以下、Cと省略する。)、マゼンタ(以下、Mと省略する。)、イエロー(以下、Yと省略する。)、ブラック(以下、Bkと省略する。)の各色の100%ベタ画像を、顔料インクで印刷した。各インクジェット記録媒体に印刷されたC、M、Y、Bkの各100%ベタ画像の発色濃度を、反射発色濃度計(グレタグ社製、D186)を用いて測定した。そのC、M、Y、Bkの発色濃度値の和にて印刷性を評価した。発色濃度の値が約0.1相違すると、目視であっても明確にその画像の鮮明さや鮮やかさの相違を確認することができる。
【0171】
[顔料インク吸収性の評価方法]
ワイドフォーマットインクジェットプリンターセイコーエプソンド株式会社製、MAXART PX−7000)を使用し、前記インクジェット記録媒体にY100%のベタ画像を顔料インクで印刷した。次いで、前記Y100%のベタ画像に重ねて、C、M、Y、Bkの各色100%を合計した、400%ベタ画像を顔料インクで印刷した。印刷した400%ベタ画像のにじみの有無を目視にて観察、評価した。にじみの有無は、400%ベタ画像の輪郭ににじみが発生している場合を「あり」と評価し、400%ベタ画像の輪郭ににじみが発生していない場合を「なし」と評価した。
【0172】
【表1】

【0173】
表1中、「クラレポバールPVA235」は株式会社クラレ製のポリビニルアルコールである。また、「DK−6830」は、星光PMC株式会社製のエピクロルヒドリンポリアミド樹脂である。また、「カチオマスターPE−30」は、四日市合成株式会社製のジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系カチオン性ポリマーである。
【0174】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記一般式〔I〕で示される構造単位(a)を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性マグネシウム塩(B)、カチオン性基含有水溶性樹脂(C)、及び水系媒体を含有してなる繊維基材用インクジェット受理剤であって、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が前記水系媒体中に分散し、かつ前記水溶性マグネシウム塩(B)が、前記繊維基材用インクジェット受理剤の固形分100質量部に対して、10〜15質量部含まれることを特徴とする繊維基材用インクジェット受理剤。
【化1】

〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す。〕
【請求項2】
前記水溶性マグネシウム塩(B)が塩化マグネシウムである、請求項1に記載の繊維基材用インクジェット受理剤。
【請求項3】
前記カチオン性基含有水溶性樹脂(C)が、2級アミンとエピハロヒドリンとを反応させて得られるアミンエピハロヒドリン樹脂、またはエピハロヒドリンポリアミド樹脂である、請求項1または2に記載の繊維基材用インクジェット受理剤。
【請求項4】
前記2級アミンがジメチルアミンであり、かつ前記エピハロヒドリンがエピクロロヒドリンである、請求項3に記載の繊維基材用インクジェット受理剤。
【請求項5】
さらにポリビニルアルコールを含有してなる請求項1に記載の繊維基材用インクジェット受理剤。
【請求項6】
繊維基材の片面又は両面に、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット受理剤を用いて形成されるインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記繊維基材が布帛である、請求項6に記載のインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2009−46780(P2009−46780A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214636(P2007−214636)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】