繊維媒体並びにその形成方法及び装置
勾配を有する領域を有する不織ウェブ及びフィルタ媒体が記載され、繊維の濃度又は特性が、領域の一方の側面から領域の他方の側面にかけて変化する。一実施形態において、装置は、各々が繊維を含む第1及び第2のフローストリームの1つ又は複数の供給源より下流にある混合隔壁を備える。混合隔壁は、2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を画定する。装置は、1つ又は複数の供給源より下流に位置し、少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームから繊維を捕集して不織ウェブを形成するように設計された受入領域も備える。一実施形態において、方法は、フローストリームの1つ又は複数の供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集することを含み、受入領域は、供給源から吐出されたフローストリームを受け入れ、繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国を除く全ての指定国については米国籍企業Donaldson Company,Inc.の出願人名義で、並びに米国についてのみは、米国市民であるGupta Hemant ph.D.及び米国市民であるBrad E.Kahlbaughの出願人名義で、PCT国際特許出願として2010年1月28日に出願されたものであり、2009年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/147,861号明細書、及び2010年1月27日に出願された米国特許出願第12/694,913号明細書及び2010年1月27日に出願された米国特許出願第12/694,935号明細書に対する優先権を主張し、それらの内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、媒体内に制御可能な特性を含む不織媒体である。媒体(medium)(複数形、媒体(media))という用語は、変化させることのできる又は制御された構造及び物理的特性を有する繊維で作製されたウェブを指す。かかる材料は、ろ過製品及び処理に使用することができる。この分野はまた、媒体又はウェブを形成するための方法又は処理又は装置にも関する。媒体(medium)(複数形、媒体(media))という用語は、変化させることのできる又は制御された構造及び物理的特性を有する繊維で作製されたウェブを指す。
【背景技術】
【0003】
不織繊維ウェブ又は媒体は、長年、ろ過を含む多くの最終用途向けに製造されている。かかる不織材料は、エアレイド、スパンボンディング、メルトボンディング及び製紙技法を含む様々な手順によって作製することができる。これらの製造技法を用いて多様な用途、特性又は性能水準を有する広く利用可能な一群の媒体を製造するには、繊維及び他の成分について広範囲の組成が必要となり、及び多くの場合に複数のプロセス工程が必要となる。広範囲の用途を満足するように機能することのできる一連の媒体を得るため、多数の組成及び多工程の製造技法が利用されている。こうした複雑さからコストが高くなり、製品の提供における柔軟性が低下している。様々な媒体組成及び製造手順が必要とされるなかでの複雑さの低減が実質的に求められている。この技術の一つの目標は、単一又はより少数の原材料及び単一又はより少数のプロセス工程を用いて広範な媒体を作製可能とすることである。
【0004】
媒体は、いくつかあるろ過のなかでも特に、液体及び空気ろ過、並びに粉塵及びミストろ過を含め、様々な用途を有する。かかる媒体はまた、層状に重ねて層状媒体構造にすることもできる。層状構造は、層ごとの変化に起因する勾配を有し得る。繊維媒体に勾配を形成しようとする試みの多くは、ろ過用途を対象として行われてきた。しかしながら、そうしたフィルタ媒体の先行技術の開示されている技法は、様々な特性を有する単一又は複数の成分のウェブの層を単に互いに重ねて置いたものか、又は形成中若しくは形成後に互いに縫い合わせるか、若しくはその他の方法で結合したものである。層の形成中又は形成後に異なる層を互いに結合しても、特性又は材料の有用な連続勾配はもたらされない。最終製品には、層間に明確な検知し得る界面が存在することになる。用途によっては、繊維媒体の形成におけるかかる界面によって起こるフロー抵抗の増加を回避することが極めて望ましい。例えば、空気中浮遊粒子状物質又は液体粒子状物質のろ過では、フィルタエレメントの層間の界面は、多くの場合に捕捉された粒子状物質及び汚染物質が蓄積するところである。フィルタ媒体内ではなく、界面の層間に多くの粒子が蓄積すると、フィルタ寿命が短くなり得る。
【0005】
ニードリング及び水流交絡などの他の製造方法によって層の混合を改善することができるが、しかしそれらの方法では、フィルタ媒体が典型的にはより大きい細孔径を含むことが多く、直径20ミクロン(μ)未満の粒子に対する除去効率の低下を招く。また、ニードリング及び水流交絡された構造は、比較的厚く、坪量が大きい材料であることが多く、フィルタに使用することのできる媒体量が制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
フィルタ媒体の形態をとることのできる多面的な不織ウェブ類、適合させることのできる形成プロセス及び広範なウェブ又は媒体を作製可能な機械が開示される。平面状の繊維ウェブ又は媒体は、厚さ及び幅を画定する第1の表面と第2の表面とを有することができる。媒体は、勾配を有する領域を含むことができる。かかる勾配は、繊維の濃度、特性、特徴、又は他の構成要素が表面間又は縁端間で変化する媒体を有することにより形成される。媒体の勾配領域は媒体全体を含んでもよく、又は媒体の一部分を含む領域を含んでもよい。媒体は、勾配領域内に繊維濃度の連続的な変化が存在することにより特徴付けられる。媒体は、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含む少なくとも1つの領域を有し、ここで第1の繊維は直径が第2の繊維より大きく、第2の繊維は、第2の繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。領域は勾配を含むことができ、従って媒体の繊維組成が領域において異なり、領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に変化する。かかるフィルタ媒体は、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有することができ、媒体は、その厚さに少なくとも1つの領域を含み、領域は、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、ここでポリエステル繊維は領域において濃度が実質的に変化せず、スペーサー繊維は、スペーサー繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。
【0007】
かかるウェブは、1〜40ミクロンの範囲をとり得る直径を有する繊維と、0.5ミクロン〜約6ミクロンの範囲をとり得る直径を有する第2の繊維とを含むことができる。本発明の勾配において、勾配は媒体内に存在してもよく、z寸法において(すなわち)媒体の厚さを通じて、勾配がいずれかの方向に増加するように広がることができる。同様に、勾配はクロスマシン(すなわち)x寸法において、勾配がいずれかの方向に増加するように増加することができる。フィルタ媒体は、幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有することができ、各縁端は媒体のマシン方向と平行であり、媒体は、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、ここで第2の繊維は、第2の繊維の濃度が第1の縁端から第2の縁端にかけて増加するように、第1の領域において濃度が変化する。
【0008】
媒体は、典型的には、媒体の形成における接着結合層又は別個の層間にある任意の他のかかる移行層などの、フロー抵抗を増加させ得る部分が媒体に存在しないことを特徴とする。勾配を有する平面状繊維構造を含む不織ウェブもまた作製することができる。
【0009】
本発明の媒体は、気体又は液体を含む様々な流体材料からの粒子状物質の除去を目的として様々な用途に使用することができる。さらに、本発明のろ過媒体は、フラット媒体、プリーツ媒体、フラットパネルフィルタ、円筒形スピンオンフィルタ、z媒体プリーツフィルタ及び勾配が有用な特性を提供する他の実施形態を含む様々なフィルタエレメントタイプで使用される。
【0010】
本発明の一実施形態において、不織ウェブの作製装置が記載される。装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームと繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源を備える。この装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流にある混合隔壁も備え、この混合隔壁は、1つ又は複数の供給源からの第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされる。混合隔壁は、2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を画定する。本装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も備える。
【0011】
別の実施形態において、本装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源と、第1及び第2の供給源より下流にある混合隔壁とを備える。混合隔壁は、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされ、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を混合隔壁に画定する。本装置は、第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域を備える。
【0012】
さらに別の実施形態において、不織ウェブの作製装置は、繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、供給源より下流にある混合隔壁であって、混合隔壁における1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、供給源より下流に位置し、且つフローストリームを受け入れ、フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域とを備える。
【0013】
装置を使用した不織ウェブの作製方法が記載される。本方法は、第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップを含み、ここで流体ストリームは繊維を含む。本装置は、第1の供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされる。流路は混合隔壁により分離され、混合隔壁は、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を混合隔壁に画定する。本方法は、供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップをさらに含む。受入領域は、供給源から吐出されたフローストリームを受け入れ、且つ繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される。本方法のさらなるステップは、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップである。
【0014】
本明細書に記載される別の実施形態において、不織ウェブの作製方法が、供給源からファーニッシュ(furnish)を提供するステップであって、ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含むステップと、不織ウェブの作製装置からファーニッシュのストリームを吐出するステップとを含む。装置は、ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は、ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にする少なくとも1個の開口を画定する。本方法は、開口を通過する繊維を、供給源より下流に位置する受入領域に捕集するステップと、残りの繊維を混合隔壁の下流部分において受入領域に捕集するステップと、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】不織ウェブの作製装置の実施形態の概略部分断面図である。
【図2】不織ウェブの作製装置の別の実施形態の概略部分断面図である。
【図3】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図4】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図5】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図6】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図7】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図8】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図9】媒体においてX方向の勾配を完成する混合隔壁の等角図である。
【図10】図9の混合隔壁の上面図である。
【図11】図9の混合隔壁の側面図である。
【図12】媒体においてX方向の勾配を完成する扇形混合隔壁の上面図である。
【図13】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図14】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図15】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図16】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図17】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図18】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図19】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図20】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図21】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図22】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図23】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図24】ある混合隔壁構成により作られた不織ウェブの断面のSEM像を示し、種々の領域を示す。
【図25】図24の媒体の領域のナトリウム含有量のグラフである。
【図26】図25及び図24に関する媒体の生成に使用された4つの異なる混合隔壁構成の上面図である。
【図27】中実の隔壁を使用して生成された媒体の13個の領域を示す。
【図28】開口を備える混合隔壁を使用して生成された勾配媒体の13個の領域を示す。
【図29】スロット付き混合隔壁により作製された勾配材料の、従来の二層ラミネート媒体との、及び中実の隔壁により作製された二層媒体との比較であり、表18に示される。
【図30】勾配媒体及び非勾配媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル情報である。
【図31】勾配媒体及び非勾配媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル情報である。
【図32】非勾配媒体及び勾配媒体の電子顕微鏡写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概して図1−図32では、関連がある場合には、x寸法、y寸法及びz寸法が示される。
【0017】
フィルタ媒体として使用することのできる不織ウェブが本明細書に記載され、ウェブは第1の繊維と第2の繊維とを含み、及びウェブは、ウェブの何らかの組成、繊維形態又は特性に変化がある領域を含み、且つ変化のない非勾配領域を含むことができる。かかる領域は、上流又は下流のいずれに配置されてもよい。第1の繊維は少なくとも1ミクロンの直径を有し、第2の繊維は多くとも5ミクロンの直径を有することができる。領域は厚さの一部分を含むことができ、厚さの10%又はそれ以上であってよい。一例において、第2の繊維の濃度がウェブの厚さにわたり変化する。別の例において、第2の繊維の濃度がウェブの幅又は長さにわたり変化する。かかるウェブは、2つ以上の第1の不織不変領域又は2つ以上の第2の勾配領域のいずれかを有することができる。媒体は、定濃度のポリエステル繊維とスペーサー繊維と効率繊維とを含む厚さの第2の領域を有することができる。
【0018】
ここでウェブの特性の変化についての他の多くの例をさらに記載する。また、ここでは、かかるウェブを作製するための装置及び方法についても記載する。
【0019】
一実施形態において、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体を作製することができ、媒体は厚さに少なくとも1つの領域を含み、領域は、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、ここでポリエステル繊維は領域において濃度が実質的に変化せず、スペーサー繊維は、スペーサー繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。媒体は、30〜85wt%のポリエステル繊維と、2〜45wt%のスペーサー繊維と、10〜70wt%の効率繊維とを含む。ポリエステル繊維は二成分繊維を含むことができ;スペーサー繊維はガラス繊維を含むことができ;効率繊維はガラス繊維を含むことができる。スペーサー繊維は単相ポリエステル繊維を含むことができる。
【0020】
別の実施形態において、幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有するフィルタ媒体を作製することができ、各縁端は媒体のマシン方向と平行である。媒体は、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、第2の繊維は、第2の繊維の濃度が第1の縁端から第2の縁端にかけて増加するように、第1の領域において濃度が変化する。フィルタ媒体の幅は、定濃度の第1の繊維と第2の繊維とを含む厚さの第2の領域を含むことができる。フィルタ媒体は、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有することができ、媒体は、勾配を含む第2の領域を含み、第2の領域において第2の繊維は、第2の繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、第2の領域において濃度が変化する。フィルタ媒体において、第2の領域は、媒体の厚さの一部分にわたることができる。フィルタ媒体において、第1の繊維は第1の繊維組成を有し、第2の繊維は、第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有することができる。フィルタ媒体において、第1の繊維は直径が第2の繊維より大きくてもよい。フィルタ媒体において、幅の中心領域を作製することができ、第2の繊維の濃度はこの中心領域で最も高い。フィルタ媒体において、フィルタ媒体は第1の縁端に隣接した第1の縁端領域と、第2の縁端に隣接した第2の縁端領域とを含み、第2の繊維の濃度は、第2の縁端領域と比べて第1の縁端領域においてより高い。
【0021】
I.勾配媒体の必要性及び利点
特定の組成又は特徴に変化又は勾配を有する繊維媒体は、多くの状況で有用である。本開示の技術の実質的な利点の一つは、単一のファーニッシュ組成又は少数からなる一組のファーニッシュからウェットレイド媒体に広範囲の特性及び性能を作り出す能力である。第2の、しかし重要な利点は、単一のウェットレイド媒体形成プロセスを用いてこの広い範囲にわたる製品を生産する能力である。媒体は、形成されると、さらなる処理も追加の層もなしに優れた性能特徴を有する。以下のデータで確認することができるとおり、単一のファーニッシュを使用して、製品寿命が長い広範囲の効率を作り出すことができる。これらの特性は、本発明のウェットレイド法で形成された勾配材料に生じる。効率の変化とは、利点を提供する細孔径の変化を含意する。例えば、細孔径勾配を有する媒体は、いくつかある用途のなかでも特に、粒子状物質のろ過に有利である。フィルタの上流部分における細孔径勾配は、汚染物質を最上流層又は界面に詰まらせるのではなく、媒体の深さを通じて堆積させることにより、フィルタの寿命を延ばすことができる。加えて、制御可能且つ予測可能な勾配特徴、例えば、繊維の化学的性質、繊維径、架橋又は融合又は結合機能性、バインダー又はサイズ剤の存在、微粒子の存在などを有する繊維媒体が、多くの各種用途において有利である。かかる勾配は、ろ過用途で用いられる場合、汚染物質の除去及び貯留における性能の亢進をもたらす。材料の勾配及びその関連属性は、繊維媒体の厚さを通じて、或いは繊維媒体シートのクロスウェブ幅又は長さなどの別の寸法にわたって提供される場合に有利である。
【0022】
II.媒体、装置及び方法の一実施形態の説明
本明細書に記載される技術を用いて、不織布における操作され制御されたウェブ構造を、ウェットレイド法を用いて作製することができ、ここで不織ウェブは、繊維、特性、又は他のろ過に関する一面が、ウェブの第1の表面からウェブの第2の表面に至る方向、又はウェブの第1の縁端からウェブの第2の縁端に至る方向、又はその双方の方向に制御されて変化する領域を有する。操作されたウェブは、従来の1つ又は複数の不織布又は織布ウェブ領域の1つ又は複数を、フィルタ特性の操作された変化を有する本明細書に記載される実施形態に係る1つ又は複数の不織ウェブの1つ又は複数の領域と組み合わせて、ウェットレイド技法を用いて作製することができる。
【0023】
媒体、方法及び装置のさらなる考察についての背景を提供するため、多くの追加的な異なる実施形態が本明細書で後述されることを認識したうえで、いくつかの特定の実施形態を簡潔に説明する。一実施形態において、かかる媒体は、第1の流体フローストリームと第2の流体フローストリームとを有する装置を使用して作製することができ、各フローストリームは少なくとも1種類の繊維を含む。かかる装置の一例が、図1に示される。この特定の例では、装置100は第1のフローストリーム104の第1の供給源102と第2のフローストリーム108の第2の供給源106とを備える。装置は、混合隔壁110と呼ばれる混合隔壁構造であって、そこに開口112を画定する構造を使用して、2つのフローストリームの制御された混合を得るように設計及び構成される。混合隔壁はまた、混合ラメラと称することもできる。
【0024】
第1のフローストリーム104は、混合隔壁の下側に位置決めされる受入領域114上に流れ、一方、第2のフローストリームは混合隔壁110の上面上に流れる。第2のフローストリームの一部は開口112を通過して受入領域114に至り、従って第1のフローストリーム104と第2のフローストリーム108との間に混合が起こる。第1のフローストリーム104が第1の繊維タイプを含み、及び第2のフローストリーム108が第2の繊維タイプを含む実施形態では、得られる不織ウェブは、ウェブの厚さにわたる第2の繊維タイプの勾配分布を有し、ここで第2の繊維タイプの濃度は、図1におけるウェブの向きを用いれば、底面から上面に向かうにつれ低くなる。
【0025】
図1の装置は、いくつかの点で製紙型の装置と同様であり得る。先行技術における製紙機械は、中実で、且つ2つのフローストリームの混合を最小限しか許容しない隔壁構造を有することが知られている。本発明の混合隔壁構造は、フローストリームの所望のレベル及び配置の混合を得るため少なくとも2つのフローストリームと協働する様々な幾何形状の孔を備えて適合される。混合隔壁は、1個の開口、2個の開口又はそれより多い開口を有することができる。さらに本明細書で詳細に考察するとおり、混合隔壁の開口の形状及び向きによってウェブに特定の勾配構造を実現することが可能となる。
【0026】
一実施形態において、媒体は、ろ過特性のための成形性、剛性、引張り強さ、低圧縮性、及び機械的安定性;高い粒子状物質負荷容量、使用中の低い圧力損失、並びにろ過流体、例えば、ガス、ミスト、又は液体における使用に好適な細孔径及び効率を有する複合不織ウェットレイド媒体に関する。一実施形態のろ過媒体はウェットレイドであり、ランダムに配向された媒体繊維の配列から構成される。
【0027】
III.界面境界なし
混合隔壁を使用したかかる方法によって得られる繊維ウェブは、繊維特徴の勾配があって、且つ特定の繊維の濃度に変化があるが、しかし2つ以上の別個の層は有しない領域を有することができる。この領域は、媒体の厚さ又は幅の全体であっても、又は媒体の厚さ又は幅の一部分であってもよい。ウェブは、記載されるとおりの勾配領域と、繊維又はフィルタ特徴の変化を最小限しか有しない不変領域とを有することができる。繊維ウェブは、2つ以上の別個の層間に確かに界面を有する他の構造に存在するフロー上の欠点がない勾配を有することができる。互いに接合された2つ以上の別個の層を有する他の構造では、ラミネートされた層、ラミネート用接着剤又は任意の2つ以上の層間を分断する界面であり得る界面境界が存在する。例えば、ウェットレイド法において勾配形成用孔あき混合隔壁装置を使用することにより、ウェットレイド媒体の製造においてウェブ形成を制御し、こうしたタイプの別個の界面を回避することが可能である。得られる媒体は、比較的薄く、同時にプリーツ又は他のろ過構造に形成するのに十分な機械的強度を維持するものであり得る。
【0028】
VI.主な用語の定義
本特許出願の目的上、用語「ウェブ」は、約0.05mmから、それより大きい不確定の又は任意の厚さまでの厚さを有するシート状又は平面状の構造を指す。この厚さ寸法は、0.5mm〜2cm、0.8mm〜1cm又は1mm〜5mmであってよい。さらに、本特許出願の目的上、用語「ウェブ」は、約2.00cmから不確定の又は任意の幅までの範囲をとることのできる幅を有するシート状又は平面状の構造を指す。長さは不確定の又は任意の長さであってよい。かかるウェブは、柔軟性を有し、機械加工可能で、プリーツ加工可能で、及びその他の方法でフィルタエレメント又はフィルタ構造に形成することが可能である。ウェブは勾配領域を有することができ、また不変領域も有することができる。
【0029】
本開示の目的上、用語「繊維」は、平均値又は中央値の繊維サイズ又は特徴の周りに(典型的には、実質的に正規分布又はガウス分布で)分布している繊維サイズ又は繊維特徴の範囲内に全ての繊維が含まれるような、組成的に関連性を有する多数の繊維を示す。
【0030】
用語「フィルタ媒体(media)」又は「フィルタ媒体(medium)」は、この用語が本開示で使用されるとき、フィルタ構造として少なくとも最小限度の有用性があり、且つ従来の製紙ウェットレイド法で作製された従来の紙、コート用紙又は新聞用紙などのように実質的に不透過層でないように少なくとも最小限の透過性及び多孔性を有する層に関する。
【0031】
本開示の目的上、用語「勾配」は、ウェブの何らかの特性が、ウェブの少なくとも一領域において、又はウェブにおいて、典型的にはx又はz方向に変化することを示す。変化はウェブの第1の表面から第2の表面にかけて、又は第1の縁端から第2の縁端にかけて現れることができる。勾配は、物理的特性の勾配であっても、又は化学的特性の勾配であってもよい。媒体は、透過率、細孔径、繊維径、繊維長、効率、固体度(solidity)、湿潤性、耐化学性及び耐温度性からなる群の少なくとも1つの勾配を有することができる。かかる勾配においては、繊維サイズが変化してもよく、繊維濃度が変化してもよく、又は任意の他の組成に関する一面が変化してもよい。さらに、勾配は、細孔径、透過率、固体度及び効率などの媒体の何らかのフィルタ特性が第1の表面から第2の表面にかけて変化し得ることを示すことができる。勾配の別の例は、特定の繊維タイプの濃度の第1の表面から第2の表面にかけての、又は第1の縁端から第2の縁端にかけての変化である。湿潤性、耐化学性、機械的強度及び耐温度性の勾配は、ウェブが、異なる繊維化学を有する繊維の繊維濃度勾配を有する場合に、実現することができる。組成又は特性のかかる変化は、線形勾配分布で現れても、又は非線形勾配分布で現れてもよい。ウェブ又は媒体における繊維の組成又は濃度勾配のいずれも、上流、下流等、媒体における任意の方向に、線形的にも、又は非線形的にも変化することができる。
【0032】
用語「領域」は、厚さがウェブの全厚より小さいか、又は幅がウェブの全幅より小さい、ウェブの任意に選択された部分を示す。かかる領域はいかなる層、界面又は他の構造によっても画定されず、ウェブにおいてその領域に隣接又は近接する繊維等の同様の領域と比較するためだけに任意に選択される。本開示では、領域は別個の層ではない。かかる領域の例は、図24、図27及び図28に見ることができる。領域においては、第1及び第2の繊維は組成が異なる繊維のブレンドを含むことができ、勾配によって特徴付けられる領域は、媒体の厚さの一部分である。
【0033】
用語「繊維特徴」は、組成、密度、表面処理、繊維における材料の配列、繊維形態、例えば、直径、長さ、アスペクト比、クリンプ度、断面形状、バルク密度、サイズ分布又はサイズ分散等を含めた、繊維の任意の側面を含む。
【0034】
用語「繊維形態」は、繊維の形状、形態又は構造を意味する。特定の繊維形態の例としては、ツイスト、クリンプ、ラウンド、リボン様、ストレート又はコイル状が挙げられる。例えば、円形断面を有する繊維は、リボン様形状の繊維とは異なる形態を有する。
【0035】
用語「繊維サイズ」は形態の一部であって、長さと直径との比である「アスペクト比」を含み、及び「直径」は、繊維の円形断面の直径か、又は繊維の非円形断面の最大断面寸法のいずれかを指す。
【0036】
本開示の目的上、用語「混合隔壁」は、フローストリームを少なくとも受入範囲と分離し、しかし隔壁に、フローストリームと受入範囲との間での制御された混合程度を提供する開放された範囲を提供することができる機械的バリアを指す。
【0037】
混合隔壁において、用語「スロット」は、第1の寸法が第2の寸法より著しく大きい、例えば長さが幅より著しく大きい開口を指す。本開示の目的上、「繊維」が参照される。この参照は、繊維源に関するものであることが理解されるべきである。繊維源は、典型的には繊維製品であり、ここでは多数の繊維が同様の組成、直径及び長さ又はアスペクト比を有する。例えば、開示される二成分繊維、ガラス繊維、ポリエステル及び他の繊維タイプは、実質的に同様の繊維を多数有して大量に提供される。かかる繊維は、本発明の媒体又はウェブを形成する目的上、典型的には水相などの液体中に分散される。
【0038】
用語「足場」繊維は、本発明の文脈では、媒体に機械的強度及び安定性を提供する実質的に定濃度の繊維を意味する。足場繊維の例は、硬化させた二成分繊維、又は硬化層中の繊維と樹脂との組み合わせである。一実施形態において、足場繊維は二成分繊維を含み、第1の繊維及び第2の繊維の双方が、独立してガラス繊維又はポリエステル繊維を含む。別の実施形態において、足場繊維はセルロース系繊維を含み、第1の繊維及び第2の繊維の双方が、独立してガラス繊維又はポリエステル繊維を含む。
【0039】
用語「スペーサー」繊維は、本発明の媒体の文脈では、媒体の足場繊維に分散させることのできる繊維を意味し、ここでスペーサー繊維は勾配を形成することができ、且つ直径が効率繊維より大きい。
【0040】
用語「効率」繊維は、本発明の文脈では、勾配を形成することができ、且つ足場繊維又はスペーサー繊維との組み合わせで、細孔径効率を媒体に提供する繊維を意味する。本発明の媒体は、足場繊維、スペーサー繊維及び効率繊維とは別の、さらに追加的な繊維の1つを有することができる。
【0041】
用語「繊維組成」は、繊維材料の配列を含めた、繊維及び1つ又は複数の繊維材料の化学的性質を意味する。かかる性質は有機的なものであっても、又は無機的なものであってもよい。有機繊維は、典型的には本質上ポリマー又はバイオポリマーである。第1の繊維又は第2の繊維(又は足場繊維若しくはスペーサー繊維は、ガラス、セルロース、麻、アバカス(abacus)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせを含む繊維から選択される繊維であってもよい。無機繊維は、ガラス、金属及び他の非有機炭素源材料で作製される。
【0042】
用語「デプス媒体」又は「デプス負荷媒体」は、ろ過される粒子状物質がデプス媒体の厚さ又はz寸法にわたって捕獲及び維持されるフィルタ媒体に関する。実際には、粒子状物質の一部はデプス媒体の表面に蓄積し得るが、デプス媒体の特色は、デプス媒体の厚さの範囲内に粒子状物質を蓄積して保持する能力である。かかる媒体は、典型的には実質的なろ過特性を有する領域を含む。多くの用途、特に比較的高い流量が関わる用途において、デプス媒体を使用することができる。デプス媒体は、一般に、その多孔性、密度又は固体含有率に関して定義される。例えば、2〜3%の固体度の媒体は、全体積の約2〜3%が繊維材料(固体)を含むように繊維が配列され、残りは空気又は気体間隙であるデプス媒体マットであり得る。デプス媒体の定義に有用な別のパラメータは、繊維径である。パーセント固体度を一定に保ち、しかし繊維径(サイズ)を小さくすると、細孔径は小さくなる;すなわちフィルタは効率が高くなり、小粒子をより効果的に捕捉し得る。典型的な従来のデプス媒体フィルタは、比較的一定の(又は一様な)密度の媒体、すなわちデプス媒体の固体度がその厚さにわたって実質的に一定に保たれているシステムである。デプス媒体において、第2の繊維は、第1の上流表面から第2の下流表面にかけて増加することができる。かかる媒体は、負荷領域と効率領域とを含むことができる。
【0043】
この文脈で「実質的に一定」とは、濃度又は密度などの特性がある場合に、媒体の深さにわたってはその比較的小さい変動しか認められないことを意味する。かかる変動は、例えば、フィルタ媒体が位置決めされている容器によって外側係合面が僅かに圧迫されることにより生じ得る。かかる変動は、例えば、製造過程におけるばらつきによって引き起こされるウェブにおける繊維の僅かではあるが本質的な高密化又は低密化により生じ得る。一般に、デプス媒体構成は、実質的にその体積又は深さを通じた粒子状材料の負荷を提供するように設計することができる。従って、かかる構成は、表面負荷システムと比べて、全フィルタ寿命が経過するまでにより多量の粒子状材料を負荷するように設計することができる。しかしながら、実質的な負荷には固形分が比較的低度の媒体が望ましいため、一般にかかる構成は効率が代償となる。例えば、媒体は、足場、スペーサー又は効率繊維が一様に又は実質的に一定であるように結合された領域である領域を有することができる。結合された領域における第1の繊維は、濃度が一様又は実質的に一定である。
【0044】
本開示の目的上、用語「表面媒体」又は「表面負荷媒体」は、粒子状物質の大部分がフィルタ媒体の表面に蓄積し、媒体層の厚さの範囲内には粒子状物質がほとんど又は全く見られないフィルタ媒体を指す。多くの場合、表面負荷は、媒体層への粒子状物質の侵入に対するバリアとして働く表面上に形成された細繊維層を使用することにより得られる。
【0045】
本開示の目的上、用語「細孔径」は、媒体内で繊維材料により形成された間隙を指す。媒体の細孔径は、媒体の電子写真を調べることにより推定することができる。媒体の平均細孔径はまた、Porous Materials Inc.(Ithaca、NY)から型番APP 1200 AEXSCとして入手可能なキャピラリーフローポロメーターを使用して計算することもできる。
【0046】
本開示の目的上、用語「結合繊維」は、本発明の媒体又はウェブの形成において、繊維材料が隣接する繊維材料と結合を形成することを示す。かかる結合は、結合系として働く二成分繊維の可融性外側層などの、繊維の固有の特性を利用して形成することができる。或いは、本発明のウェブ又は媒体の繊維材料は、典型的にはバインダー樹脂の水性分散体の形態で提供される別個の樹脂性バインダーを使用して結合することができる。或いは、本発明の繊維はまた、架橋試薬を使用して架橋させ、高温結合により、又は繊維に繊維同士の結合を生じさせることのできる任意の他の結合法により、電子ビーム又は繊維間結合を生じさせることのできる他のエネルギー放射を使用して結合することもできる。
【0047】
「二成分繊維」は、ある融点を有する少なくとも1つの繊維部分と、より低い融点を有する第2の熱可塑性部分とを有する熱可塑性材料から形成された繊維を意味する。これらの繊維部分の物理的構成は、典型的にはサイド・バイ・サイド構造又はシース−コア構造である。サイド・バイ・サイド構造では、2つの樹脂が典型的にはサイド・バイ・サイド構造で接続された形態で押出しされる。また、先端がより低い融点のポリマーを有するローブ形繊維を使用することもできる。二成分繊維は、フィルタ媒体の30〜80wt.%であってもよい。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「供給源」は、起点、例えば繊維を含む流体フローストリームの起点である。供給源の一例はノズルである。別の例はヘッドボックスである。
【0049】
「ヘッドボックス」は、幅にわたって実質的に一様なファーニッシュフローを送り込むように構成された機器である。ある場合には、ヘッドボックス内の圧力は、ポンプ及び制御装置によって維持される。例えば、エアパッド付きヘッドボックスは、ファーニッシュの上側にある空隙を圧力の制御手段として使用する。ある場合には、ヘッドボックスはまた整流ロールも備え、それらは中に大きな穴を備えるシリンダであり、エアパッド付きヘッドボックス内で低速で回転してファーニッシュの分配を補助する。液圧式ヘッドボックスでは、一群の管、拡張した範囲、及びフロー方向の変化によってファーニッシュの再分配及びフロックの破壊を実現する。
【0050】
「ファーニッシュ」は、本明細書でこの用語が使用されるとき、繊維と液体とのブレンドである。一実施形態において、液体は水を含む。一実施形態において、液体は水であり、ファーニッシュは水性ファーニッシュである。
【0051】
「マシン方向」は、ウェブを生産する装置などの装置内を通じてウェブが移動する方向である。また、マシン方向は、材料のウェブの最長寸法の方向でもある。
【0052】
「クロスウェブ方向」は、マシン方向に垂直な方向である。
【0053】
「x方向」及び「y方向」は、繊維媒体ウェブのそれぞれ幅及び長さを定義し、及び「z方向」は繊維媒体の厚さ又は深さを定義する。本明細書で使用されるとき、x方向はクロスウェブ方向と同じであり、y方向はマシン方向と同じである。
【0054】
「下流」は、本明細書でこの用語が使用されるとき、ウェブを形成する装置において少なくとも1つのフローストリームが流れる方向にある。本明細書において第1の成分が第2の成分の下流にあると記載されるとき、それは、第1の成分の少なくとも一部分が第2の成分の全体の下流にあることを意味する。第1の成分が第2の成分の下流にあるとしても、第1の成分と第2の成分との一部分は重なり合ってよい。
【0055】
IV.媒体の詳細な説明
a.媒体における種々の勾配タイプ
勾配は、ウェブのx方向、y方向又はz方向のいずれかに生成され得る。ここでは、そうした異なる勾配タイプを生成するために使用される特定の混合隔壁構造についてさらに考察する。勾配はまた、これらの平面の組み合わせで生成されてもよい。勾配は、少なくとも2つの繊維の相対的な分布を調整することにより完成される。少なくとも2つの繊維は、組成、長さ、直径、アスペクト比、形態又はそれらの組み合わせなどの異なる物理的特性を有することによって互いに異なり得る。例えば2つの繊維は、第1のガラス繊維が0.8ミクロンの平均直径を有し、且つ第2のガラス繊維が5ミクロンの平均直径を有するなど、直径が異なってもよい。
【0056】
勾配を形成する少なくとも2つの繊維は、異なる化学組成、コーティング処理、又はその双方を有することによって互いに異なり得る。例えば、第1の繊維がガラス繊維である一方、第2の繊維がセルロース系繊維であってもよい。
【0057】
本明細書に記載される不織ウェブは、例えば、細孔径、架橋密度、透過率、平均繊維サイズ、材料密度、固体度、効率、液体流動性、湿潤性、繊維表面化学、表面化学、又はそれらの組み合わせの勾配を定義することができる。ウェブはまた、繊維、バインダー、樹脂、粒子状物質、架橋剤などを含む材料に比例して勾配を有するように製造することもできる。ここまで少なくとも2つの繊維について考察したが、本発明の多くの実施形態は、3、4、5、6種又はそれ以上の繊維タイプを含む。第2、第3、及び第4の繊維タイプの濃度はウェブの一部分にわたって変化させることが可能である。
【0058】
b.勾配領域と不変領域とを備える媒体
本明細書に記載される実施形態の媒体は、勾配特徴を有することができる。本発明の一態様において、媒体は2つ以上の領域を有することができる。第1の領域は、上記に定義及び考察されるとおりの確定された勾配を備える媒体の厚さの一部分を含むことができる。他の領域は、勾配か、又はいかなる重要な勾配特徴も実質的に存在しない不変媒体特徴かのいずれかを有する媒体の厚さの別の部分を含むことができる。かかる媒体は、本発明の方法及び機械を用いて、機械によって放出される繊維から形成される層が、不変媒体を含む第1の領域と勾配媒体を含む第2の領域とを備えるかかる媒体を形成するような機械設定により形成することができる。媒体は、ラミネート構造及び接着剤又は領域間に一切の顕著な界面が実質的に存在しないように作製することができる。媒体には、少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の二成分繊維と、ポリエステル繊維又はガラス繊維を含む少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の第2の繊維とがあり、ここで第2の繊維の濃度は、第1の表面から第2の表面にかけて増加する連続勾配となるよう形成される。大部分、領域の繊維は特徴が同様であってもよく、又は実質的に異なってもよい。例えば、不変領域が、セルロース系繊維、ポリエステル繊維、又は混合セルロース系合成繊維の領域を含み、一方、勾配領域が二成分繊維若しくはガラス繊維、又は本開示の他の場所に開示される他の繊維若しくは繊維の混合を含んでもよい。
【0059】
機械設定に応じて、本発明の方法における領域の形成は、典型的には形成用ワイヤ上に湿潤層を形成し、次に液体を除去することで、さらなる乾燥及び他の処理に繊維層を残すことより行われる。最終的な乾燥した媒体において、領域は様々な厚さを有することができる。かかる媒体は、約0.3mm〜5mm、0.4mm〜3mm、0.5mm〜1mm、少なくとも0.05mm又はそれより大きい範囲の厚さを有することができる。かかる媒体は、媒体の厚さの約1%〜約90%の範囲であってよい勾配領域の層を有することができる。或いは、勾配層の厚さは、媒体の厚さの約5%〜約95%を含むことができる。本発明の媒体の勾配のさらに別の態様は、勾配が媒体の厚さの10%〜80%である媒体を含む。本発明のなおさらに別の実施形態は、勾配層の厚さが媒体全体の厚さの約20%〜約80%である媒体を含む。同様に、媒体は不変領域を含むことができ、不変領域は媒体の厚さの1%より大きく、媒体の厚さの5%より大きく、媒体の厚さの10%より大きく、又は媒体の厚さの20%より大きい。
【0060】
一実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも10%高い。別の実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも15%高い。別の実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも20%高い。
【0061】
媒体に不変領域と勾配領域とを有することで、数多くの機能を果たすことができる。一実施形態において、勾配層は、小粒子を捕捉する初期上流層として働くことができ、それにより媒体の寿命が長くなる。本発明のなお別の実施形態は、不変領域が、特定の粒径で効率的に動作するように設計されたフィルタ特徴を有する上流層である媒体に関する。かかる実施形態では、次に不変領域は、特定の粒径の実質的な量を媒体から除去することで、勾配媒体が他の粒径を除去する補助として働くことができ、それによりフィルタ寿命が長くなる。理解され得るとおり、様々な異なる用途において特定の流体層から特定の粒子タイプをろ過する目的に対し、不変層と勾配領域との使用を操作することができる。
【0062】
c.繊維の例
繊維は、様々な組成、直径及びアスペクト比であってよい。不織ウェブに勾配を形成するための本明細書に記載される概念は、ウェブを作るために使用される特定の繊維ストックとは無関係である。繊維の組成上のアイデンティティについて、当業者はあらゆる繊維を有用と判断し得る。かかる繊維は、通常は有機製品又は無機製品のいずれかから処理される。特定の用途の勾配要件により、繊維、又は繊維の組み合わせの選択をより好適なものとし得る。勾配媒体の繊維は、二成分、ガラス、セルロース、麻、アバカス、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、アクリル又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0063】
合成繊維と天然繊維との組み合わせ、及び処理された繊維と未処理繊維との組み合わせを含む繊維の組み合わせを、複合材において好適に使用することができる。
【0064】
セルロース、セルロース系繊維又は混合セルロース/合成繊維は、複合材媒体の基本成分であり得る。セルロース系繊維は別個の層であっても、又は足場繊維若しくはスペーサー繊維であってもよく、及び少なくとも約20ミクロン且つ多くとも約30ミクロンの直径を有することができる。他の供給源からも入手可能であるが、セルロース系繊維は主に木材パルプから誘導される。本発明での使用に好適な木材パルプ繊維は、クラフト法及び亜硫酸法などの公知の化学的方法により、続く漂白を伴い又は伴わず得ることができる。パルプ繊維はまた、サーモメカニカル法、ケミサーモメカニカル法、又はそれらの組み合わせによって処理することもできる。好ましいパルプ繊維はケミカル法によって生産される。砕木繊維、再生又は二次木材パルプ繊維、並びにさらし及び未さらし木材パルプ繊維を使用することができる。針葉樹及び広葉樹を使用することができる。木材パルプ繊維の選択の詳細は当業者に周知されている。これらの繊維は数多くの企業から市販されている。木材パルプ繊維はまた、本発明において使用する前に前処理することもできる。この前処理は、物理的又は化学的処理、例えば他の繊維タイプと組み合わせたり、繊維を蒸気にかけたりすることなど、又は化学的処理、例えば、様々な架橋剤のいずれか1つを使用してセルロース繊維を架橋することなどを含み得る。架橋は繊維かさ高及び弾性を高める。
【0065】
合成繊維としては、ポリマー繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(様々な加水分解度のもの)、ポリ酢酸ビニル繊維が挙げられ、これもまた複合材に使用することができる。好適な合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びレーヨン繊維が挙げられる。他の好適な合成繊維としては、熱可塑性ポリマーから作製されたもの、熱可塑性ポリマーで被覆されたセルロース系材料及び他の繊維、及び成分の少なくとも1つが熱可塑性ポリマーを含む多成分繊維が挙げられる。単一成分繊維及び多成分繊維は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の従来の熱可塑性繊維材料から製造することができる。
【0066】
限定として解釈されてはならないが、繊維の前処理の例は、繊維の表面化学を修飾する界面活性剤又は他の液体の適用を含む。他の前処理は、抗菌剤、色素、染料及び高密度化剤又は軟化剤の取り込みを含む。熱可塑性及び熱硬化性樹脂などの他の化学物質で前処理された繊維もまた使用され得る。前処理の組み合わせもまた用いられ得る。同様の処理を、前処理プロセスにおける複合材の形成後に適用することもできる。
【0067】
ウェブの繊維として使用することのできるガラス繊維媒体及び二成分繊維媒体が、2007年12月18日に発行された米国特許第7,309,372号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。ウェブの繊維として使用することのできるガラス繊維媒体及び二成分繊維媒体のさらなる例が、2006年5月11日に公開された米国特許出願公開第2006/0096932号明細書(同様に全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0068】
本明細書に記載されるウェブの製造には、相当な割合のガラス繊維を使用することができる。ガラス繊維は媒体の約30〜70wt.%を含むことができる。ガラス繊維は細孔径の制御を提供し、及び媒体において他の繊維と連係することで、大きい流量、高い能力、大きい効率及び高い湿潤強度の媒体が得られる。用語のガラス繊維「供給源」は、他と明確に区別される原材料として利用可能な平均直径及び長さ又はアスペクト比によって特徴付けられる定義された組成の多数の繊維のガラス繊維製品を意味する。好適なガラス繊維供給源は、例えば、Summerville、South Carolina、米国を所在地とするLauscha Fiber Internationalから、5ミクロンの直径を有するB50R、1ミクロンの直径を有するB010F、又は0.8ミクロンの直径を有するB08Fとして市販されている。同様の繊維が他の販売業者からも利用可能である。
【0069】
「二成分繊維」は、ある融点を有する少なくとも1つの繊維部分と、それより低い融点を有する第2の熱可塑性部分とを有する熱可塑性材料から形成された繊維を意味する。これらの繊維部分の物理的構成は、典型的にはサイド・バイ・サイド構造又はシース−コア構造である。サイド・バイ・サイド構造では、2つの樹脂が、典型的にはサイド・バイ・サイド構造で接続された形態で押出される。シース−コア構造では、より低い融点を有する材料がシースを形成する。また、先端がより低い融点のポリマーを有するローブ形繊維を使用することも可能である。
【0070】
二成分(シース/コア又はサイド・バイ・サイド)繊維のポリマーは、異なる熱可塑性材料、例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレンシースが、コア、例えばポリエステルより低い温度で溶融するポリオレフィン/ポリエステル(シース/コア)二成分繊維などから構成されてもよい。典型的な熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びそれらの共重合体、及びポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルが挙げられる。具体的な例は、DuPontから入手可能な271Pとして知られるポリエステル二成分繊維である。他の繊維としては、Fiber Innovation Technology(Johnson City、Tennessee)から入手可能なFIT201、日本の株式会社クラレから入手可能なKuraray N720、及び日本のユニチカ株式会社から入手可能なUnitika 4080、及び同様の材料が挙げられる。他の繊維としては、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、例えばポリアクリレート、及びポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、すなわちナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース系樹脂、すなわち硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース等、上記の材料のいずれかの共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、Kratonゴムなどが挙げられる。第1の繊維又は足場繊維は、各々が独立してポリエステル又はポリオレフィンを含むコアとシェルとを含む二成分繊維を含むことができる。
【0071】
これらのポリマーは全て、最初の溶融が完了するとシースが架橋するという特徴を示す。これは、適用温度が典型的にはシース溶融温度を上回る液体用途には重要である。
【0072】
不織媒体は、多数の親水性、疎水性、親油性、及び疎油性のいずれもの繊維から作製される二次繊維を含むことができる。これらの繊維は、他の繊維と協働することにより、機械的に安定な、しかし強力で透過性を有するろ過媒体を形成し、このろ過媒体は、流体材料が通過する機械的応力に耐えることができ、且つ使用中、粒子状物質の負荷を維持することができる。二次繊維は、典型的には約0.1〜約50ミクロンの範囲であってもよい直径を有する一成分繊維であり、自然界に存在する綿、亜麻、羊毛、様々なセルロース系及びタンパク質性天然繊維、レーヨン、アクリル、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル繊維を含む合成繊維を含め、様々な材料から作製することができる。二次繊維のあるタイプは、他の成分と協働して材料をシート状に結合するバインダー繊維である。二次繊維の別のタイプは、他の成分と協働して乾燥及び湿潤条件下の材料の引張り強さ及び破裂強さを増加させる構造繊維である。加えて、バインダー繊維は、PTFE、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリマーから作製された繊維を含むことができる。二次繊維はまた、炭素/グラファイト繊維、金属繊維、セラミック繊維及びそれらの組み合わせなどの無機繊維も含むことができる。導電性繊維の(例えば)炭素繊維又はアルミニウム、ステンレス鋼、銅等を含む金属繊維は、媒体に電気的勾配を提供することができる。環境上及び製造上問題となるため、製造及び使用中に化学的及び機械的に安定な繊維が好ましい。かかる繊維はいずれも、異なる直径の繊維のブレンドを含むことができる。
【0073】
d.バインダー樹脂の選択肢
バインダー樹脂を使用することで、足場繊維及び他の繊維、典型的には二成分繊維が存在しない場合におけるセルロース系繊維、ポリエステル繊維又はガラス繊維などを結合して機械的に安定した媒体とすることを補助することができる。かかるバインダー樹脂材料は乾燥粉末又は溶媒系として使用することができるが、しかし典型的にはビニル熱可塑性樹脂の水性分散体(ラテックス又は数多くのラチスのうちの一つ)である。バインダーとして使用される樹脂は、媒体に直接添加されて分散体を作製する水溶性又は分散性ポリマーの形態であってもよく、又は媒体の形成後に加えられる熱によりバインダーとして活性化されるアラミド及びガラス繊維と混ぜ合わされた樹脂材料の熱可塑性バインダー繊維の形態であってもよい。樹脂としては、セルロース系材料、酢酸ビニル材料、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、熱硬化性樹脂、例えば、尿素フェノール、尿素ホルムアルデヒド、メラミン、エポキシ、ポリウレタン、硬化性不飽和ポリエステル樹脂、多環芳香族樹脂、レソルシノール樹脂及び同様のエラストマー樹脂が挙げられる。水溶性又は分散性バインダーポリマーに好ましい材料は、概して、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル及びアルキド樹脂などの水溶性又は水分散性熱硬化性樹脂であり、具体的には、媒体作製業界で一般的に使用されている水溶性アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂である。かかるバインダー樹脂は、典型的には繊維を被覆し、最終的な不織マトリックスにおいて繊維同士を接着する。十分な樹脂をファーニッシュに添加することで、シート、媒体、又はフィルタ材料に形成された細孔のフィルムオーバー(film over)を発生させることなく繊維を完全に被覆することができる。樹脂は、エラストマー、熱硬化性樹脂、ゲル、ビーズ、ペレット、フレーク、粒子、又はナノ構造であってよく、及び媒体作製中にファーニッシュに添加しても、又は形成後に媒体に加えられてもよい。
【0074】
各不織構造において三次元不織繊維ウェブを一体に結合するために使用される、又は追加的な接着剤として使用されるラテックスバインダーは、当該技術分野において公知の様々なラテックス接着剤から選択することができる。当業者は、結合するセルロース系繊維のタイプに応じて具体的なラテックス接着剤を選択することができる。ラテックス接着剤は、噴霧又は発泡などの公知の技法により適用され得る。概して、最初に15〜25%の固形分を有するラテックス接着剤が使用される。分散体は、繊維を分散させた後にバインダー材料を添加するか、又はバインダー材料を分散させた後に繊維を添加することにより作製することができる。分散体はまた、繊維の分散体をバインダー材料の分散体と組み合わせることにより作製することもできる。分散体中の全繊維の濃度は、分散体の総重量を基準として0.01〜5又は0.005〜2重量%の範囲であってよい。分散体中のバインダー材料の濃度は、繊維の総重量を基準として10〜50重量%の範囲であってよい。サイズ剤、充填剤、着色剤、歩留り向上剤、代替資源由来の再生繊維、バインダー、接着剤、架橋剤、粒子、抗菌剤、繊維、樹脂、粒子、小分子有機又は無機材料、又はそれらの任意の混合物を、分散体に含めることができる。
【0075】
e.選択的結合用コーティング
選択的結合用コーティング又は元素とは、相手材料を選択的に結合する部分を指す。かかるコーティング又は元素は、標的相手材料を繊維に選択的に付着又は捕捉させるのに有用である。
【0076】
かかるコーティング又は元素として有用な部分の例としては、生化学的、有機化学的又は無機化学的分子種が挙げられ、天然的、合成的又は組換え的方法によって誘導することができる。かかる部分としては、例えば、吸収剤、吸着剤、ポリマー、セルロース系材料、並びに巨大分子、例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物及び脂質が挙げられる。かかるコーティングはまた、フィルタ加工中に流体ストリームに対して可溶性又は不溶性の成分と反応することができる反応性化学コーティングを含むこともできる。かかるコーティングは、小分子又は大分子とポリマーコーティング材料との双方を含むことができる。かかるコーティングは、繊維の表面上で化学反応を達成するために繊維成分上に堆積されても、又はそれに対して接着されてもよい。
【0077】
繊維に付着させることができ、且つ標的相手材料と選択的な結合性を示す他のかかるコーティング又は元素は、当該技術分野において公知であり、本明細書に提供される教示及び指針をふまえて本発明の機器、装置又は方法において用いることができる。
【0078】
f.化学反応性粒子状物質
本明細書に記載される実施形態の媒体中には、化学反応性粒子状物質を分散させることができる。
【0079】
本発明の粒子状物質は、有機材料及び無機材料及び混成物のいずれからも作製することができる。粒子状物質としては、活性炭素などの炭素粒子、イオン交換樹脂/ビーズ、ゼオライト粒子、珪藻土、活性アルミナなどのアルミナ粒子、ポリマー粒子、例えば、スチレン単量体、及び市販の超吸収剤粒子などの吸収剤粒子を挙げることができる。有機粒子状物質は、発泡又はその他のポリスチレン又はスチレン共重合体、ナイロン又はナイロン共重合体、ポリオレフィンポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、オレフィン共重合体、プロピレンオレフィン共重合体、アクリルポリマー及びポリメチルメタクリレートを含む共重合体、及びポリアクリロニトリルから作製することができる。さらに、粒子状物質はセルロース系材料及びセルロース誘導体ビーズを含むことができる。かかるビーズは、セルロース、又はメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体から製造することができる。さらに、粒子状物質は、珪藻土、ゼオライト、タルク、クレー、シリケート、溶融二酸化ケイ素、ガラスビーズ、セラミックビーズ、金属粒子状物質、金属酸化物等を含むことができる。本発明の粒子状物質はまた、所定の長さ及び直径を有する反応性の吸収剤又は吸着剤繊維様構造を含むこともできる。添加剤の他の例は、反応性コーティングを有する粒子である。
【0080】
粒子は、繊維マット内の異なる層中にあり得る。勾配媒体の最終的な特性に役立つ粒子状物質、繊維、樹脂、又はそれらの任意の混合物は、勾配媒体を作製又は仕上げ加工するプロセスの間のいずれの時点で分散体に添加されてもよい。
【0081】
e.添加剤
サイズ剤、充填剤、着色剤、歩留り向上剤、代替資源由来の再生繊維、バインダー、接着剤、架橋剤、粒子、又は抗菌剤の添加剤は、水性分散体に添加されてもよい。
【0082】
f.媒体における界面構造の欠如
先行技術では、第1の層を第2の層と別に形成し、次に層を組み合わせることによって特定の構造が作製されるため、得られる媒体の厚さにわたり媒体特徴が段階的に変化する結果となっていた。かかる組み合わせは、典型的には層間の界面の形成を伴う。かかる界面は、時に、個別にラミネートされたシートとしては繊維がラミネーション前のシートともはや同じ物理的状態にない押し潰された繊維によって特徴付けられる層間の領域を含む。他の界面は、層を結合する接着剤を含む。本明細書に記載される不織ウェブの実施形態の多くでは、押し潰された層界面及び接着剤層界面を含むかかる界面の影響は不織ウェブに存在しない。
【0083】
本明細書に記載される媒体の一実施形態は、繊維ウェブ内のx方向、y方向、及びz方向などにいかなる境界又はバリアも存在しないことによって特徴付けられる。
【0084】
V.方法及び装置の詳細な説明
本発明の技術の実質的な利点は、1つの、又は限られた一組のファーニッシュと、一段階ウェットレイド法とを用いて広範囲の有用な特性を有する一連の媒体が得られることである。
【0085】
a.方法
ある実施形態では、本発明はシングルパスウェットレイド法を利用して繊維マットの寸法の範囲内に勾配を生成する。シングルパスとは、勾配媒体を作成する一プロダクションランの間に、領域における繊維の混合及び1つ又は複数の混合ファーニッシュの堆積が1回のみ行われることを意味する。勾配を増進させるためにそれ以上の処理が行われることはない。混合隔壁装置を使用するシングルパス法は、媒体内に識別し得る又は検知し得る界面のない勾配媒体を提供する。媒体内の勾配は、上部から下部にかけて、又は媒体の厚さにわたり規定することができる。それに代えて又は加えて、媒体内の勾配は、媒体の長さ又は幅寸法にわたり規定されてもよい。
【0086】
一実施形態において、不織ウェブの作製方法は、第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップを含み、ここで流体ストリームは繊維を含む。この方法で使用される装置は、第1の供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされる。流路は混合隔壁によって分離され、混合隔壁は、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を混合隔壁に画定する。本方法は、供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップをさらに含む。受入領域は、供給源から吐出されたフローストリームを受け入れ、繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される。本方法のさらなるステップは、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップである。
【0087】
別の実施形態において、不織ウェブの作製方法は、供給源からファーニッシュを提供するステップであって、ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含むステップと、不織ウェブの作製装置からファーニッシュのストリームを吐出するステップとを含む。装置は、ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は、ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にする少なくとも1個の開口を画定する。本方法は、開口を通過する繊維を、供給源より下流に位置する受入領域に捕集するステップと、残りの繊維を混合隔壁の下流部分において受入領域に捕集するステップと、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップとをさらに含む。
【0088】
b.混合隔壁の一般的原理
一実施形態において、混合隔壁は、傾斜型製紙機械又は本明細書でさらに考察する他の機械などの改良された紙漉機に関連して使用される。混合隔壁は水平面上に位置決めすることも、又は下向き若しくは上向きの傾斜面上に位置決めすることもできる。ファーニッシュは、機械において供給源を出ると、形成ゾーン又は受入領域に進む。ファーニッシュは、少なくとも最初は混合隔壁によって分離される。本発明の混合隔壁は、その表面にスロット又は開口を有する。
【0089】
本発明の混合隔壁装置を使用して形成される勾配媒体は、供給源から供給されたファーニッシュが移動時に局所的に制御された形で混合される結果である。混合隔壁の設計については多くの異なる選択肢がある。例えば、混合隔壁の始点における開口がより大きいか、又はより多数あると、ファーニッシュが最も多く水を保持しているときにより多くの混合が生じ得る。混合隔壁の終点における開口がより大きいか、又はより多数あると、液体がより多く除去された後に混合が起こる。ファーニッシュ中に存在する材料及び所望の最終的な特性に応じて、媒体形成プロセスの早い段階でより多く混合するか、又は媒体形成プロセスの後半で繊維をより多く混合することで、勾配繊維媒体の最終的な構成に利点が提供され得る。
【0090】
本発明の装置及び方法を使用して2つより多いファーニッシュを用いると、3つ以上の繊維勾配を形成することができる。さらに、1つ又は1つより多い混合隔壁が用いられてもよい。クロスウェブに変化する混合隔壁の開口パターンを選択することにより、媒体形成中に混合をクロスウェブに変化させ得ることは理解されるであろう。本発明の機械及び混合隔壁が、この変化及び制御を容易且つ効率的に提供することは理解されるであろう。勾配媒体が、混合隔壁に対する1回のパス又は適用で形成され得ることは理解されるであろう。識別可能な別個の界面を持たず、しかし制御可能な化学的又は物理的特性は有する勾配材料、例えば繊維媒体が、本発明の装置及び方法を用いて形成され得ることは理解されるであろう。例えば変化させ得る繊維サイズの濃度又は比率が、特定の勾配媒体全体にわたる細孔密度の増加又は減少をもたらすことは理解されるであろう。このように形成された繊維媒体は、有利には多種多様な用途に用いられ得る。
【0091】
一実施形態において、混合隔壁は不織ウェブの作製装置に用いられ、ここで装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームと、同様に繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源を含む。混合隔壁は、1つ又は複数の供給源の下流、且つ第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされる。混合隔壁は、2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を画定する。装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も含む。
【0092】
別の実施形態において、混合隔壁は、繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、同様に繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源とを含む装置に含まれる。混合隔壁は第1及び第2の供給源より下流にあり、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされ、及び第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を混合隔壁に画定する。装置はまた、第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も含む。
【0093】
さらに別の実施形態において、不織ウェブの作製装置は、繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、供給源より下流にある混合隔壁であって、混合隔壁における1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、供給源より下流に位置し、且つフローストリームを受け入れ、フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域とを含む。
【0094】
ここで、さらなる具体的な実施形態を記載する。
【0095】
c.2つのフローストリームを含む実施形態(図1)
先に考察したとおり、図1は、2つの供給源102、106と混合隔壁110とを備える改良された傾斜型製紙装置又は機械100に沿った概略断面図を示す。異なる装置の実施形態を図2に関連して考察し、図2は、1つの供給源を備える改良された傾斜型製紙機械200の概略図である。
【0096】
供給源102、106は、ヘッドボックスとして構成することができる。ヘッドボックスは、幅にわたる実質的に一様なファーニッシュフローを送り込むように構成された機器である。
【0097】
混合隔壁は、機械の排水部全体に及び、且つ機械のサイドレールに連結するように設計することができる。混合隔壁は受入領域の全幅にわたり延在することができる。
【0098】
図1の傾斜型製紙機械は、供給源102、106から離れるほうにフローストリーム104、108を搬送する2本の送液管115、116を含む。図1は、上下に位置決めされた2個の供給源を示す。しかしながら、装置100は1、2、3個又はそれより多く積み重ねられた供給源、他の供給源に送液する供給源、混合隔壁の遠位端でマシン方向にずらして配置された供給源、及び混合隔壁の遠位端でクロスウェブ方向にずらして配置された供給源を含むことができる。単一の供給源構成の場合、供給源は、2つのフローストリームを提供するためファーニッシュを分離し得る内部隔壁を含み得る。
【0099】
送液管115、116には、フローストリームの動きを促進するようにいくらか角度が付与され得る。図1の実施形態では、送液管115、116には下向きの角度が付与されている。混合隔壁110は、上側送液管116の遠位端に存在する。混合隔壁には、生産される勾配媒体に応じて下向き又は上向きの角度が付与され得る。混合隔壁110は開口112を画定し、開口112については本明細書でさらに説明する。混合隔壁は、供給源に最も近い近位端122と、供給源から遠く離れた遠位端124とを有する。
【0100】
図1の実施形態では、開口112は、ワイヤガイド118の上側にある混合隔壁110の一部分に画定される。しかしながら、他の実施形態において、混合隔壁は、2つのフローストリーム115と116との間など、装置のより上流部分に開口を画定する。
【0101】
下側送液管115の遠位端において、第1のフローストリーム104は、当該技術分野において公知のローラ(図示せず)に巻き取られるワイヤガイド118上に移送される。ワイヤガイドにおいて、第1のフローストリーム104のファーニッシュは受入領域114に入る。第2のフローストリーム108のファーニッシュの一部は、開口112の寸法によって可能な限りに従い開口112を通じて受入領域114に下りる。結果として、第2のフローストリーム108は受入領域114内で第1のフローストリーム104と混合され、混和される。
【0102】
混合隔壁開口112の寸法及び位置は、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの混合のタイミング及びレベルに大きい影響を有し得る。一実施形態において、第2のフローストリーム108の第1の部分が第1の開口を通過し、第2のフローストリームの第2の部分が第2の開口を通過し、及び第2のフローストリームの第3の部分が第3の開口を通過し、及び以下同様に通過して、第2のフローストリームのあらゆる残り部分は混合隔壁の遠位端124を越えて受入領域114に至る。
【0103】
十分に希薄な第1及び第2のファーニッシュは、受入領域の混合部分内での2つのフローストリームからの繊維の混合を促進する。ファーニッシュ中では、繊維は水などの流体及び添加剤中に分散している。一実施形態において、ファーニッシュの一方又は双方が水性ファーニッシュである。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量パーセント(wt.%)は、約0.01〜1wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量%は、約0.01〜0.1wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量%は、約0.03〜0.09wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、水溶液中の繊維の重量%は、0.02〜0.05wt.%の範囲であり得る。一実施形態において、フローストリームの少なくとも一方は、1リットル当たり約20グラム未満の繊維の繊維濃度を有するファーニッシュである。
【0104】
水、又は他の溶媒及び添加剤は、受入領域114の下方にある排水ボックス130に捕集される。水及び溶媒132の捕集は、過剰な流体を受入領域から抜き出すため、重力、真空抽出又は他の乾燥手段により補助されてもよい。繊維のさらなる互いの混合及び混和が、排水ボックス130に加えられる真空などの流体捕集手段に応じて起こり得る。例えば、受入領域からの流体の真空抽出レベルをより強くすることにより、両面性とも称される、媒体が両側面間に違いを有する可能性がより高くなり得る。また、排水ボックスを選択的に閉鎖又は遮断することによるなどして水の除去程度を低減した範囲では、2つのフローストリームの互いの混合が高まる結果となり得る。さらには、第1のフローストリーム104のファーニッシュを混合隔壁の開口112に上向きに通過させる背圧を生成し、第2のフローストリーム108とより高度に混合することができる。
【0105】
改良された傾斜型製紙機械100は上部囲壁152を備えても、又は開放された構成(図示せず)であってもよい。
【0106】
供給源102、106及び送液管115、116は全て、極めて希薄の繊維スラリーを繊維媒体に形成するように設計された機械であるDeltaformer(商標)機(Glens Falls Interweb,Inc.(South Glens Falls、NY)から入手可能)などのハイドロフォーマ機械154の一部であってもよい。
【0107】
d.単一供給源とふるい状混合隔壁とによる方法(図2)
図2は、連続勾配媒体を形成するための装置200の別の実施形態を示し、ここではワンステップウェットレイド法においてファーニッシュの単一供給源が混合隔壁と組み合わせて使用される。供給源又はヘッドボックス202は、少なくとも2つの異なる繊維、例えば異なる繊維サイズ又は異なる化学組成の繊維を含むファーニッシュの第1のフローストリーム204を提供する。第1のフローストリームは送液管211を介して混合隔壁210に提供される。混合隔壁は開口212を含む。一実施形態において、混合隔壁は開口を含まない開始部分216と、開口212を備える第2の部分220とを有する。混合隔壁は、供給源に最も近い近位端222と、供給源から最も遠い遠位端224とを有する。混合隔壁210における開口212のサイズは、ファーニッシュ中の異なる繊維サイズを選択、すなわち篩別するように構成される。第1のフローストリームの一部は混合隔壁の開口を通過し、ワイヤガイド214上に堆積する。排水ボックス230が重力又は他の抽出手段により水及び他の溶媒を捕集し、又は抽出する。第1のフローストリーム204の篩別されなかった部分232は、プロセスの終わり234に、しかし後処理の前に、勾配媒体上に堆積する。
【0108】
図2の装置は上部囲壁234を含んでも、又は開放された構成を含んでもよい。図2の装置及び方法の実施形態は、異なる繊維タイプ、混合隔壁の実施形態、ファーニッシュ濃度に関する本明細書に記載される変形例のいずれとも、共に使用することができる。
【0109】
e.混合隔壁構成
混合隔壁及びその開口は、いかなる幾何形状を有してもよい。一例はスロット付き混合隔壁である。一実施形態において、混合隔壁は、クロスウェブ方向又はクロスフロー方向のスロットである矩形開口を画定する。これらの矩形スロットは、一実施形態においてクロスウェブ幅全体にわたり延在することができる。別の実施形態において、混合隔壁は、下流方向又はマシン方向のスロットを画定する。孔又はスロットは幅が変化するものであってもよい。例えば、スロットはダウンウェブ方向に幅が増加してもよく、又はスロットはクロスウェブ方向に幅が増加してもよい。スロットは、ダウンウェブ方向に間隔を変化させてもよい。他の実施形態において、スロットはクロスウェブ方向にウェブの片側から他方の側まで続く。他の実施形態において、スロットは、ウェブの一部のみにわたり片側から他方の側まで続く。他の実施形態において、スロットはダウンウェブ方向に、混合隔壁の近位端から遠位端まで続く。例えば、スロットは、ファーニッシュが供給源を離れるに従いたどるフローの経路と平行であってもよい。混合隔壁にはスロット設計又は配列の組み合わせが使用されてもよい。
【0110】
他の実施形態において、混合隔壁はスロットではない開放された範囲、例えばクロスウェブ方向に片側から他方の側まで延在しない開放された範囲を画定する。かかる実施形態において、混合隔壁の開放された範囲は、別個の穴又は穿孔である。他の実施形態において、開口は、混合隔壁にある直径数インチの大きい丸い穴である。実施形態において、穴は円形、楕円形、直線形、三角形、又は他の何らかの形状である。詳細な一実施形態において、開口は、複数の別個の円形開口である。いくつかの実施形態において、開口は混合隔壁にわたって規則的に離間される。他の実施形態において、開口は、混合隔壁にわたって不規則又はランダムに離間される。
【0111】
混合隔壁に開放された範囲を組み込む目的は、例えば、あるファーニッシュリザーバから繊維を供給し、第2のファーニッシュリザーバからの繊維と制御された比率で混合することである。ファーニッシュの混合比率は、混合隔壁の長さに沿った開放された範囲の大きさ及び位置を変化させることにより制御される。例えば、開放された範囲が大きいほどファーニッシュの混合が増し、及び逆も同様である。混合隔壁の長さに沿ったこれらの開放された範囲の位置によって、勾配繊維マットを形成する間のファーニッシュストリームの混合の深さが決定される。
【0112】
混合隔壁内における開放された範囲の分布、形状、及びサイズに関して、本発明の多くの変形例があり得る。それらの変形例のいくつかは、例えば、1)面積が漸進的に増加/減少する矩形スロット、2)一定の面積の矩形スロット、3)様々な形状及び位置の様々な数のスロット、4)混合隔壁基材の開始部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、5)混合隔壁基材の最終部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、6)中間部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、又は7)スロット又は開放された範囲の任意の他の組み合わせである。混合隔壁は長さが変化するものであってもよい。
【0113】
混合隔壁の2つの特定の可変要素は、混合隔壁内の開放された範囲の大きさ及び開放された範囲の位置である。これらの可変要素により、繊維マットを作り出す混合ファーニッシュの堆積が制御される。混合量は、混合隔壁の寸法に対する混合隔壁の開放された範囲により制御される。異なるファーニッシュ組成の混合が起こる領域は、混合隔壁装置における1つ若しくは複数の開口又は1つ若しくは複数のスロットの位置により決定される。開口のサイズは、受入領域内での繊維の混合量を決定する。開口の位置、すなわち混合隔壁の遠位端寄りか、又は近位端寄りかにより、勾配媒体の繊維マット内の領域におけるファーニッシュの混合の深さが決定される。スロット又は開口のパターンは、混合隔壁の基材材料、例えば金属又はプラスチックの単一部品に形成されてもよい。或いは、スロット又は開口のパターンは、異なる幾何形状材料の多数の部品により形成されてもよい。これらの部品は金属又はプラスチックから製造され、混合隔壁の基材を形成し得る。概して、混合隔壁装置における開放された範囲の量は、ファーニッシュリザーバにより供給される繊維間の混合量に正比例する。
【0114】
別の実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のダウンウェブ方向に延在する1個又は複数の開口により画定される1個又は複数の開口を含む。1個又は複数の開口は、混合隔壁部品の第1の下方ウェブ縁端から混合隔壁装置の上方ウェブ縁端まで延在することができる。材料部品間にある開口スロットのこの位置は、生産される勾配媒体の求められる最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてダウンウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1個又は複数の開口は、異なる幅、異なる長さ、異なる向き、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の開口を含み得る。詳細な一実施形態において、混合隔壁は、第1の寸法を有する少なくとも第1の開口と、第2の異なる寸法を有する少なくとも第2の開口とを画定する。
【0115】
一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の開口を含む。混合隔壁の部品は装置の各側面まで延在する。1個又は複数の開口は、混合隔壁部品の第1のクロスウェブ縁端から混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する。混合隔壁部品の部品間にある開口のこの位置は、生産される勾配媒体の求められる最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてクロスウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1個又は複数の開口は、異なる幅、異なる長さ、異なる向き、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の開口を含み得る。
【0116】
一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のダウンウェブ方向に延在する1つ又は複数の穴又は穿孔により画定される1個又は複数の開口を含む。穴又は穿孔は、微視的サイズから巨視的サイズまであり得る。1つ又は複数の穴又は穿孔は、混合隔壁の第1の下方ウェブ縁端から混合隔壁の第2の下方ウェブ縁端まで延在する。穴又は穿孔のこの位置及び頻度は、生産される勾配媒体の最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてダウンウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1つ又は複数の穴又は穿孔は、異なるサイズ、異なる位置、異なる頻度、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の穴又は穿孔を含む。
【0117】
混合隔壁は、混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1つ又は複数の穴又は穿孔により画定される1個又は複数の開口を含む。穴又は穿孔のこの位置及び頻度は、生産される勾配媒体の最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてクロスウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1つ又は複数の穴又は穿孔は、異なるサイズ、異なる位置、異なる頻度、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の穴又は穿孔を含む。
【0118】
一実施形態において、混合隔壁のマシン方向の寸法は少なくとも約29.972cm(11.8インチ)且つ多くとも約149.86cm(59インチ)であり、一方、別の実施形態においてそれは少なくとも約70.104cm(27.6インチ)且つ多くとも約119.38cm(47インチ)である。
【0119】
詳細な一実施形態において、混合隔壁は少なくとも3個且つ多くとも8個のスロットを画定し、ここで各スロットは、独立して約1〜20cmの幅を有する。
【0120】
別の実施形態において、混合隔壁は、着脱可能な矩形部分間に画定された矩形開口を画定する。別の特定の実施形態において、混合隔壁は、5個以上の着脱可能な矩形部品により間に画定された5個の矩形開口を画定し、ここで部品の幅は各々約1.5cm〜15cm(0.6インチ〜5.9インチ)及び開口の幅は各々約0.5cm〜10cm(0.2インチ〜3.9インチ)である。
【0121】
一実施形態において、混合隔壁の1個又は複数の開口は、混合隔壁の総面積の少なくとも5%且つ多くとも70%、又は混合隔壁の総面積の少なくとも10%且つ多くとも30%を占める。
【0122】
媒体にx勾配を完成する混合隔壁の一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁を2つの半体に分割するマシン方向の中心軸を有し、一方の半体は他方の半体と同じではない。いくつかの実施形態において、一方の半体には開口がなく、他方の半体は1個又は複数の開口を画定する。x勾配を完成する別の混合隔壁において、混合隔壁は第1の外縁端と第2の外縁端とを有し、ここで第1及び第2の外縁端はマシン方向と平行であり、混合隔壁は、第1の外縁端に最も近いマシン方向幅が第2の外縁端に最も近いマシン方向幅より小さくなるようにマシン方向幅が変化する第1の開口を画定する。x勾配を完成する実施形態の別の例において、混合隔壁は、開口を含まない第1の縁端部分と、開口を含まない第2の縁端部分とを有する。第1及び第2の縁端部分は、各々、下流側クロスウェブ縁端から上流側クロスウェブ縁端まで延在する。混合隔壁は、第1の縁端部分と第2の縁端部分との間に中心部分をさらに含み、中心部分に1個又は複数の開口が画定される。
【0123】
f.図3−図8に示される混合隔壁の例
混合隔壁の開口の様々な構成が図3−図8に示され、図3−図8は混合隔壁の上面図である。図3−図8の各混合隔壁は異なる構成の開口を有する。各混合隔壁は、側縁端と第1の終縁端と第2の終縁端とを有する。混合隔壁の側縁端は、機械の左側壁及び右側壁(図示せず)に取り付け可能である。図3−図8において、矢印305はダウンウェブ方向を示し、一方、矢印307はクロスウェブ方向を示す。図3は、クロスウェブ方向に離間された実質的に等しい矩形範囲の7個のクロスウェブスロット型開口302を有する混合隔壁300を示す。3個のスロット302が互いに均等に離間され、及び混合隔壁の異なる部分において、4個のスロット302が互いに均等に離間されている。混合隔壁300は、第1の縁端に隣接するオフセット部分304を含み、ここには開口は存在しない。
【0124】
図4は、6つの異なるサイズを有する8個の異なるクロスウェブ矩形開口310を有する混合隔壁308を示す。図5は、各々が他と比べて異なる面積を有する4個のダウンウェブ矩形開口314を有する混合隔壁312を示す。開口のサイズは、混合隔壁312をクロスウェブ方向にかけて移るに従い増加する。
【0125】
図3−図5に示される混合隔壁300、308及び312は、矩形開口を提供するように離間された個別の矩形部品から組み立てることができる。
【0126】
図6は、円形開口318を有する混合隔壁316を示す。混合隔壁316には3つの異なるサイズの円形開口が存在し、ここで開口のサイズはダウンウェブ方向に増加する。図7は、クロスウェブ方向により長く、且つ混合隔壁の全幅には延在しない矩形開口322を有する混合隔壁320を示す。矩形開口のサイズはダウンウェブ方向に増加する。図8は、ダウンウェブ方向に長く、且つダウンウェブ方向に拡がる4つの等しい楔型開口328を有する混合隔壁326を示す。図6−図8は、開口が提供された基材材料の単一部品から形成され得る混合隔壁316、320及び326を示す。
【0127】
各隔壁構成は、2つのフローストリームの実施形態において2つのフローストリーム間に起こる混合に異なる効果を有する。いくつかの混合隔壁の例では、開口のサイズ又は形状の変化はダウンウェブ方向に現れる。開口が混合隔壁の近位端、すなわち上流端に位置決めされると、開口によりファーニッシュをウェブの下部の方で混合することが可能となる。混合隔壁の遠位端すなわち下流端にある開口は、ウェブの上部により近いところでのファーニッシュの混合をもたらす。開口のサイズ又は面積により、ウェブの深さの範囲内におけるファーニッシュの混合比率が制御される。例えば、開口が小さいほど2つのファーニッシュの混合は減り、開口が大きいほど2つのファーニッシュの混合は増す。
【0128】
図3−図8に示される混合隔壁は、ウェブの厚さ方向すなわちz方向の勾配を提供するように構成される。媒体又はウェブにおいて、第1の表面及び第2の表面は、0.2〜20mm又は0.5〜20mmの範囲の媒体の厚さを画定し、領域の部分は0.1mmより大きい。
【0129】
図5の混合隔壁は、同様にウェブのクロスウェブ方向に勾配を提供するように構成された一例である。様々な実施形態において、同じ混合隔壁に対し異なる組み合わせの開口形状、例えば矩形又は円形が使用され得る。
【0130】
g.媒体にX勾配を生じさせる混合隔壁の例
図9は、媒体にX方向の勾配を完成する混合隔壁2100の等角図であり、一方、図10は混合隔壁2100の上面図であり、図11は側面図である。混合隔壁2100は、媒体の厚さにおいても、及び媒体のX方向すなわちクロスマシン方向にわたっても勾配を作り出す。厚さにおける勾配は、クロスウェブ寸法の中心領域に現れる。開放された範囲2102が混合隔壁2100により画定される。矩形の開放された範囲2102は、クロスウェブ方向における混合隔壁の中心部に存在し、混合隔壁のマシン方向に沿ってずらして配置されている。
【0131】
混合隔壁2100を2つのファーニッシュ供給源と共に使用して不織ウェブを形成するとき、上部供給源のファーニッシュの繊維成分は、不織ウェブにおける媒体の中心部にのみ存在し得る。また、中心部では、上部供給源の成分がウェブの厚さにわたって組成勾配を形成し、ここで上部ファーニッシュの繊維のより多くがウェブの上面に存在し、この繊維の濃度は徐々に低下し、従ってウェブの反対側の底面に存在するその繊維はより少ない。
【0132】
上部供給源にのみ青色トレーサー繊維を使用し、混合隔壁2100を使用して不織ウェブを形成した。青色繊維は得られた不織ウェブの中心の一部に見られた。また、青色繊維はウェブの上側及び下側の双方にも見られたが、下側より上側により集中していた。
【0133】
混合隔壁2100は、金属の単一部品を機械加工することによるか、又はプラスチックの単一部品からなど多くの異なる方法で形成することができる。図9−図23の実施形態において、混合隔壁はいくつかの異なる部品を使用して形成される。図10で最も良く分かるとおり、2つの側部矩形部品2104及び2106が、混合隔壁の中心においてそれらの間に開放された矩形部があるように位置決めされる。側部矩形部品2104、2106は中実でいかなる開口も含まないため、混合隔壁2100の側部は中実でいかなる開口も含まない。第1の側部矩形部品2104は第1のマシン方向縁端2108から、同様にマシン方向である内縁端2109まで延在する。第1の側部矩形部品2104はまた、下流クロスウェブ終縁端2112から上流クロスウェブ終縁端2114まで延在する。第2の側部矩形部品2106も同様の形状であり、内縁端2111まで延在する。同様の矩形部品2116が、開口2102を画定する間隔を置いて側部部品2104、2106上に配置される。
【0134】
混合隔壁2100はまた、図11において最も良く分かる垂直突出部2118も有する。垂直突出部2118は、2つの側部部品2104、2106の内縁端2109、2111から下方に延在する。混合隔壁の垂直突出部があるため、上部供給源からのファーニッシュはより直線的な経路で受入領域に向かって送り込まれ、上部ファーニッシュの着地点は、垂直部分2118がない場合と比べてより予測性が高くなる。一実施形態において、混合隔壁は混合隔壁2100と同様であるが、垂直隔壁を有しない。本明細書に記載される他の混合隔壁構成が、下方に受入領域に向かって延在する垂直部分を有することもまた可能である。垂直部分はまた、垂直面と角度をなして延在してもよい。
【0135】
図9の混合隔壁2100において、開放された範囲2102は、混合隔壁の幅の中心に画定されている矩形の開放された範囲である。図9と同様の他の実施形態においては、x方向により緩やかな勾配が形成され、ここでは開放された範囲の部分がx方向により緩やかに変化する。例えば、マシン方向縁端2108、2110に向かって先細りになっている単一の又は一連のダイヤモンド型開口。混合隔壁構成の他の多くの例が、得られる媒体においてより緩やかなx勾配を形成する。
【0136】
図12は、媒体においてX方向の勾配を完成し、且つ不織ウェブの厚さにおける勾配も完成する扇形混合隔壁2400の上面図である。混合隔壁2400は、混合隔壁の片側に存在する開口2402を画定する。混合隔壁2400は、受入範囲の他方の半分を遮断して、上部ファーニッシュを受入領域のその部分に堆積させない側部矩形部品2406を含む。混合隔壁2400はまた、クロスウェブ方向に延在するいくつかのより小さい矩形部品2404も含む。部品2404は扇形の配置で位置決めされ、従って画定される開口2402は楔型である。結果として、上部供給源からのファーニッシュは、中心の方と比べて不織ウェブの外縁端の近傍により多く堆積する。
【0137】
h.ウェットレイド法及び機器に関するさらなる詳細
ウェットレイド加工の一実施形態において、勾配媒体は、繊維材料と水性媒体中における必要に応じた他の成分との分散体を含む水性ファーニッシュから作製される。分散体の水性液体は概して水であるが、pH調整材料、界面活性剤、脱泡剤、難燃剤、粘度調整剤、媒体処理剤、着色剤などの様々な他の材料を含んでもよい。水性液体は、通常、スクリーン又はその他の分散した固体を保持して液体を通過させる有孔支持体上に分散体を誘導することによって分散体から排水され、湿潤媒体組成物がもたらされる。湿潤組成物は、支持体上に形成されると、通常、真空又は他の圧力による力によってさらに脱水され、残りの液体を蒸発させることによってさらに乾燥される。液体を取り除く選択肢としては、重力排水機器、1つ又は複数の真空機器、1つ又は複数のテーブルロール、真空フォイル、真空ロール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。装置は、受入領域の近位及び下流に乾燥部を含むことができる。乾燥部の選択肢としては、乾燥缶部、1つ又は複数の赤外線ヒータ、1つ又は複数の紫外線ヒータ、スルーエアドライヤ、搬送ワイヤ、コンベヤ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0138】
液体の除去後、適切な場合には、熱可塑性繊維、樹脂又は形成された材料の他の部分の何らかの部分を溶融させることによりサーマルボンディングが行われ得る。樹脂硬化工程を含め、様々な実施形態において他の後処理手順もまた可能である。プレス成形、熱処理及び添加剤処理が、ワイヤからの捕集前に行われ得る後処理の例である。ワイヤから捕集した後、繊維マットの乾燥及びカレンダリングなどのさらなる処理が仕上げプロセスにおいて実行されてもよい。
【0139】
本明細書に記載される混合隔壁を含むように改良することのできる一つの具体的な機械はDeltaformer(商標)機(Glens Falls Interweb,Inc.(South Glens Falls、NY)から入手可能)であり、これは、極めて希薄の繊維スラリーを繊維媒体に形成するように設計された機械である。かかる機械が有用であるのは、例えばウェットレイド法に繊維長が比較的長い無機繊維又は有機繊維を使用する場合であり、なぜなら、多量の水を使用して繊維を分散させて、それらの繊維がファーニッシュ中で互いに絡まないようにしなければならないためである。ウェットレイド法における長繊維とは、典型的には、長さが4mmより長い、5〜10mm及びそれ以上の範囲であり得る繊維を意味する。ナイロン繊維、ポリエステル繊維(Dacron(登録商標))、再生セルロース(レーヨン)繊維、アクリル繊維(Orlon(登録商標))、綿繊維、ポリオレフィン繊維(すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらの共重合体など)、ガラス繊維、及びアバカ(マニラ麻)繊維が、有利にはかかる改良された傾斜型製紙機械を使用して繊維媒体に形成される繊維の例である。
【0140】
Deltaformer(商標)機は、ワイヤ部が傾斜して設置され、スラリーがヘッドボックスを出ると、それを重力に逆らって上方に押し流す点で従来のフォードリニア型抄紙機とは異なる。傾斜により希薄溶液のフローパターンが安定し、希薄溶液の排水の制御が促進される。複数の画室を備えた真空フォーミングボックスが排水の制御を補助する。これらの改良により、希薄スラリーを、従来のフォードリニア設計と比較してウェブにわたる特性の一様性が向上した繊維媒体に形成する手段が提供される。図1においては、括弧154の下にある構成要素が、Deltaformer(商標)機の一部となる構成要素である。
【0141】
本明細書に記載されるとおりの勾配ウェブを作製するための装置のいくつかの実施形態には、4つの主要部:ウェット部(図1及び図2に示される)、プレス部、ドライヤ部及びカレンダリング部がある。
【0142】
ウェット部の一実施形態においては、繊維と流体との混合物が、別個のファーニッシュ作製プロセスの後にファーニッシュとして提供される。ファーニッシュは、媒体形成プロセスの次の工程に送る前に添加剤と混合することができる。別の実施形態においては、乾燥した繊維及び流体をウェット部の一部であり得るリファイナに送り込むことにより、乾燥した繊維を使用してファーニッシュを作製することができる。リファイナにおいて、繊維は回転しているリファイナディスク上でバー間において高圧パルスを受ける。これにより乾燥した繊維が解され、さらにそれらの繊維がリファイナに提供される水などの流体中に分散される。この段階で洗浄及び脱気も行われ得る。
【0143】
ファーニッシュの作製が完了した後、ヘッドボックスなどの、フローストリームの供給源である構造にファーニッシュを入れることができる。供給源構造はファーニッシュを幅にわたり分散させて、それを動いているワイヤメッシュコンベヤ上に開口からジェットを用いて負荷する。本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、装置には2つの供給源又は2つのヘッドボックスが含まれる。勾配媒体の提供には異なるヘッドボックス構成が有用である。ある構成では、上部ヘッドボックスと下部ヘッドボックスとが互いの真上・真下に重ねられる。他の構成では、上部ヘッドボックスと下部ヘッドボックスとがいくらかずらして配置される。上部ヘッドボックスがさらにマシン方向下方にあり、一方下部ヘッドボックスが上流にあってもよい。
【0144】
一実施形態において、ジェットは水又は空気などの、ファーニッシュを押し進め、動かし、又は推進する流体である。ジェット中で流動することによって一部の繊維に整列が生じ、これは、ジェットとワイヤメッシュコンベヤとの間の速度差を調整することによって部分的に制御することができる。ワイヤは前進駆動ロール、又はブレストロールの周りに、ヘッドボックスの下側から、ファーニッシュが加えられるヘッドボックスを越えて、及び一般にフォーミングボードと称されるものの上へと回転する。
【0145】
フォーミングボードは本発明の混合隔壁と共に機能する。ファーニッシュが平らに均されるとともに、水の除去に備えて繊維の整列が調整され得る。プロセスラインのさらに下方で、排水ボックス(排水部とも称される)が真空で又は真空なしに、媒体から液体を除去する。ワイヤメッシュコンベヤの終端近くで、クーチロールと称されることの多い別のロールが、ライン中のそれより前に存在する真空より高い真空力である真空によって残りの液体を除去する。
【0146】
VII.勾配媒体についてのフィルタ用途の例
本明細書に記載される媒体は、界面又は接着剤層を含むことなく、ある領域にわたり特性の勾配を有するように作製することができ、完全に作製された後の媒体は、他の従来のフィルタ構造と共に組み立ててフィルタ複合材層又はフィルタユニットを作製することができる。媒体は、膜、セルロース系媒体、ガラス媒体、合成媒体、スクリム又はエキスパンドメタル支持体であり得る基層と共に組み立てることができる。勾配を有する媒体は、従来の媒体などの他の多くのタイプの媒体と併せて使用して、フィルタ性能又は寿命を向上させることができる。
【0147】
孔あき構造を使用して、流体の影響下、媒体を通過する圧力下に媒体を支持することができる。本発明のフィルタ構造はまた、孔あき構造の追加の層、高透過率の機械的に安定なスクリムなどのスクリム、及び別個の負荷層などの追加のろ過層と組み合わせることもできる。一実施形態において、かかる多領域媒体の組み合わせは、一般に非水性液体のろ過に用いられるフィルタカートリッジに格納される。
【0148】
VIII.媒体における勾配度の評価
本発明に記載される方法により生産された媒体における勾配度を評価する一つの方法では、媒体が異なる切片に分けられ、それらの切片が走査型電子顕微鏡写真(SEM)を使用して比較される。基本的な概念は、勾配構造を有する単一層シートを取り、その厚さを、元の勾配構造の見かけを反映する異なる特性を有し得る複数のシートに分けることである。得られる媒体は、勾配媒体内の界面又は境界の存在又は不在について調べることができる。調査対象となる別の特徴は、例えば粗い多孔性から微細な多孔性に至る、媒体特徴の変化の平滑度である。必須ではないが、ファーニッシュ供給源の一方に着色したトレース繊維を加えることが可能であり、次に得られた媒体においてそれらの着色繊維の分布を調べることができる。例えば、着色繊維は、上部ヘッドボックスから吐出されるファーニッシュに加えられてもよい。
【0149】
勾配媒体が作られた後、しかし媒体がオーブンで硬化される前、切片化するための試料が抜き取られる。クライオミクロトーム分析を使用して勾配媒体の構造を分析することができる。エチレングリコールなどの充填材料を使用して、媒体が凍結する前にそれを飽和させる。薄い凍結切片を繊維マットからスライスし、繊維サイズ又は多孔性などの勾配構造について顕微鏡で分析する。次に各切片の特性を比較することができるように、各切片のSEMを撮る。切片化したもののかかるSEMを図27−図28に見ることができ、これらについてはここでさらに説明する。
【0150】
また、媒体は、Liberty Engineering Company(Roscoe、IL)から入手可能なBeloit Sheet Splitterを使用して切片化することも可能である。Beloit Sheet Splitterは、例えば紙及び厚紙にける組成及び構造の横方向分布の分析用に特別に設計された精密機器である。湿潤試料が、ステンレス鋼スプリットロールのニップに導入される。これらのロールは32°F(0℃)未満の温度点まで冷却される。試料は内側からニップが外に向かう側に裂離される。裂離の内側面は、スプリットロールによって生じる前進しているアイスフロントによって凍結されていない領域に現れる。裂離された切片がロールから取り外される。次に2つの半体が各々さらに裂離され、最終的に4つの媒体切片のセットとなる。Beloit Sheet Splitterを使用するためには、試料は湿潤している必要がある。
【0151】
裂離された切片は、効率試験機又は色度計を使用して分析することができる。また、SEMは各切片について作成することができ、従って種々の切片の繊維構成及び媒体特徴の違いを観察することができる。色度計は、着色したトレース繊維を生産に使用した場合にのみ使用することができる。
【0152】
着色繊維は一方の供給源にのみ添加されるため、当該の切片中に存在する着色繊維の量によってシートにおける濃淡レベルが示される。切片を色度計で試験して繊維の混合量を定量化してもよい。また、効率試験機、例えば分別効率試験機を使用して媒体の切片を分析することも可能である。
【0153】
媒体における勾配の分析に使用することのできる別の技法は、フーリエ赤外フーリエ変換赤外(Fourier Infrared Fourier Transfer Infrared(FTIR))分光分析である。ある繊維が上部ヘッドボックスにのみ使用される場合、当該繊維の固有のFTIRスペクトルを使用して、媒体がその両側で当該の特定の繊維の濃度に違いを有することを示すことができる。2つの同様の又は異なる繊維が最部及び最下部ヘッドボックスにのみ使用される場合、それらの繊維の固有のFTIRスペクトルを使用して、媒体がその両側で繊維の組成又は濃度のいずれかに違いを有することを示すことができる。
【0154】
用いることのできるさらに別の技法は、エネルギー分散X線分光法(EDS)であり、これは試料の元素分析又は化学的特性決定に使用される分析技法である。分光法のタイプとしては、電磁放射と物質との間の相互作用による試料の検査に頼るものであり、荷電粒子の衝突に応答してその物質により放射されるX線が分析される。その特性決定能力は、主として、各元素が、元素の原子構造に特徴的なX線の互いの一意的な識別を可能にする固有の原子構造を有するという基本原理によるものである。トレース元素を繊維構造に埋め込み、EDS特性決定で定量化することができる。本願では、領域にわたり繊維の組成に違いがある場合に媒体における勾配が示され得るとともに、その組成の違いはEDSを使用して明らかとなる。
【0155】
ここで、試験方法に関するさらなる詳細、具体な実施例及びそれらの実施例の分析結果について考察する。
【実施例】
【0156】
IX.実施例
ファーニッシュを調合し、少なくとも1つの勾配特性を有する不織ウェブを生成した。表1は、ファーニッシュ調合物の組成に関する情報を示す。表1に掲載したファーニッシュの例には以下の種々の繊維を使用した。ここでは各繊維の略称を括弧書きで提供する。
1.271Pとして知られるポリエステル二成分繊維、繊維長6mm及び2.2デニール、E.I.DuPont Nemours(Wilmington DE)から入手可能(271P)。271Pの平均繊維径は約13ミクロンである。
2.Lauscha Fiber Intl.(Summerville、SC)からのガラス繊維、様々な長さ及び繊維径5ミクロン(B50R)、繊維径1ミクロン(B10F)、繊維径0.8ミクロン(B08F)、及び繊維径0.6ミクロン(B06F)。
3.青色ポリエステル繊維、長さ6mm及び1.5デニール、Minifibers,Inc.(Johnson City、TE)から入手可能(青色PET)。
4.ポリエステル繊維(P145)、Barnet USA(Arcadia、South Carolina)から入手可能。
5.49.5%のポリエチレンテレフタレート、47%のコポリエステル及び2.5%のポリエチレン共重合体からなるポリエステル/コポリエステル混合物で作製された二成分ショートカット繊維(BI−CO)。かかる繊維の一例は、日本国大阪府の帝人ファイバー株式会社から入手可能なTJ04BN SD2.2X5である。
【0157】
これらの実施例では、硫酸を添加してpHを約3.0に調整し、繊維を水性懸濁液中に分散させた。本例の勾配媒体の作製に使用したファーニッシュの水性懸濁液中の繊維含有量は、約0.03%(wt.%)であった。分散した繊維を含有するファーニッシュは、後に使用するためそれぞれのマシンチェスト(貯蔵タンク)に保管した。媒体の製造中、ファーニッシュストリームは、適切な希薄濃度にした後、それぞれのヘッドボックスに送給した。
【0158】
【表1】
【0159】
a.実施例の機械設定
勾配媒体の形成中に調整される機械に関する他の変数としては、パルパーのコンシステンシー、開始混合隔壁の傾斜角度、機械の傾斜角度、混合隔壁延長部の傾斜角度、坪量、機械の速度、ヒール部高さ、ファーニッシュ流量、ヘッドボックス流量、ヘッドボックスのコンシステンシー、及び排水ボックス捕集量が挙げられる。表2は、混合隔壁装置からの勾配媒体の生産に使用される設定についての指針を提供する。得られる勾配媒体は、例えば、カレンダリング、熱又はその他の当該技術分野において周知の方法及び機器により後処理することにより、完成品の勾配繊維マットを提供してもよい。
【0160】
【表2】
【0161】
表2は、本発明に記載される方法に係る不織媒体についての実施例1〜4の作成に使用した機械設定を提供する。実施例1〜4の各々におけるファーニッシュの双方のpHは3.25に調整した。上部ヘッドボックスストック流量及び下部ヘッドボックスストック流量は、ストックファーニッシュがそれぞれ上部及び下部ヘッドボックスに入ったときの、その流量をリットル毎分で示す。上部ヘッドボックス流量及び下部ヘッドボックス流量は、希薄水がそれぞれ上部及び下部ヘッドボックスに入ったときの、その流量をリットル毎分で示す。
【0162】
受入領域から流体を取り除く真空の付与に関連するいくつかの設定が提供される。図1を参照して上記に考察されるとおり、受入領域114は、ワイヤガイド118から排水される水を受け入れる排水ボックス130を含み得る。フラットボックスとも称されるこれらの排水ボックスは、真空を加えるように構成され得る。実施例の生成に使用される装置では、10個の排水ボックス130があり、各々がワイヤガイド下の水平距離約25.4cm(10インチ)から排水を受け入れることが可能である。表2は、水の送給における10個の排水ボックスの各々についての真空設定、並びに実施例1〜4の生産時に最初の6個の排水ボックスの各々に許容されたリットル毎分単位の排水流量を提供する。表2はまた、最初の6個の排水ボックスの各々について開放された排水バルブのパーセンテージについての設定も特定する。
【0163】
真空及び排水設定は、不織媒体に形成される勾配に対して大きい影響を有し得る。排水が低速なほど、及び真空がそれほど又は全くかかっていないと、2つのファーニッシュの間の混合は増し得る。排水が高速なほど、及び設定真空度がより高いほど、2つのファーニッシュ間の混合は低下し得る。
【0164】
表2はまた、度数単位による傾斜ワイヤガイド118の角度、並びにフィート毎分単位による傾斜ワイヤガイドの速度である機械の速度も特定する。
【0165】
b.実施例で使用した混合隔壁
実施例1〜4の作製に使用した傾斜型製紙機械は、図13−図15に示されるとおりのスロット設計を備える混合隔壁を有した。混合隔壁の寸法が表3、表4及び表5に示される。各実施例における機械の運転設定は、上記に考察されるとおり表2に示される。
【0166】
図13は、実施例1及び実施例2として上記に記載したファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の9種の異なる構成を示す。これらの混合隔壁は、複数の等しいサイズのスラットを画定するように位置決めされた矩形部品を使用して形成した。図13の9種の混合隔壁構成1600の寸法が、以下の表3に示される。矢印1601はマシン方向を示す。ここで図13を参照すると、各混合隔壁1600は上流端1602と下流端1604とを有し、これらは図13において代表例に印される。図13の各混合隔壁1600は、矩形部品1607間に画定される複数のスロット1606を含む。表3には、インチ及びセンチメートル単位による各スロット1606又は開口の幅、並びにスロット1606の総数を記載する。混合隔壁のいくつかは上流端1602にスロットオフセット部分1608を有し、これは、上流端と第1のスロット1606との間の、いかなる開口も含まない混合隔壁の一部分である。表3はまた、各混合隔壁の無効範囲のパーセンテージも掲載し、ここで無効範囲1610は、下流端1604に隣接した、いかなる開口も含まず中実である混合隔壁の一部である。表3はまた、矩形部品1607の幅も掲載する。
【0167】
【表3】
【0168】
図13に示される混合隔壁の実施形態のいくつかにおいて、構成4及び7のように、混合隔壁はスロットオフセット範囲を有し、且つ無効範囲を有しない。いくつかの構成において、構成2及び5のように、混合隔壁はスロットオフセット範囲を有しないが、無効範囲は有する。いくつかの構成において、構成1及び6のように、混合隔壁は無効範囲もスロットオフセット範囲も有さず、これらの構成では、一様なサイズの矩形部品1607の配置が混合隔壁を構成する。いくつかの構成において、構成3、8及び9のように、混合隔壁は無効範囲及びスロットオフセット範囲の双方を有する。
【0169】
図14は、実施例3のとおりの上記に記載されるファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の13種の異なる構成を示し、ここで媒体は、上部ファーニッシュ供給源にポリエステル二成分繊維と5ミクロンの直径を有するガラス繊維とを含んだ。下部ファーニッシュ供給源は、主として二成分繊維と0.8ミクロンガラス繊維であった。
【0170】
図14に示される各混合隔壁は、複数の等しいサイズのスラットを画定するように位置決めされた矩形部品を使用して形成した。混合隔壁1600の特徴は、図13と同じ参照番号を使用して符号を付している。
【0171】
表4は、図14の13種の混合隔壁構成の寸法を示し、スロットオフセット1608、混合隔壁の上流端1602から最終スロットの終端までの距離、平均スロット幅及び平均部品幅を含む。
【0172】
【表4】
【0173】
図15は、実施例4のとおりの上記に記載されるファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の6種の異なる構成を示し、ここで青色PET繊維が上部ファーニッシュ供給源に含まれた。
【0174】
図15に示される各混合隔壁は長さが111.76cm(44インチ)であったとともに、スラットを画定するように位置決めされた矩形部品1607を使用して形成したが、スラットはマシン方向1601にサイズが増加する。混合隔壁1600の特徴は、図13と同じ参照番号を使用して符号を付している。
【0175】
表5は、図15の6種の混合隔壁構成の寸法を示し、スロットオフセット1608、混合隔壁の長さ、スロット幅及び部品幅を含む。
【0176】
【表5】
【0177】
効率試験
液体ろ過において、ベータ試験(β試験)は、フィルタの品質及びフィルタ性能を評価する一般的な業界標準である。ベータ試験評価は、標準方法である「精密フィルタエレメントのろ過性能のマルチパス評価方法(Multipass Method for Evaluating Filtration Performance of a Fine Filter Element)」(ISO 16899:1999年)から導かれる。ベータ試験は、下流の流体清浄度を上流の流体清浄度と比較するベータ比を提供する。フィルタを試験するため、粒子カウンタにより、既知の容積の流体についての上流粒子のサイズ及び量、並びに既知の容積の流体についてのフィルタの下流にある粒子のサイズ及び量が正確に計測される。規定の粒径における上流の粒子カウントを下流の粒子カウントで除した比が、ベータ比である。このときの捕捉効率は((β−1)/β×100であるため、フィルタの効率はベータ比から直接計算することができる。この式を用いると、ベータ比が2であれば、それは50%の%効率を意味することが分かる。
【0178】
具体的なベータ比に対応する効率評価の例は以下のとおりである:
【0179】
【表6】
【0180】
ベータ比を使用してフィルタを比較する場合は注意を払わなければならない。ベータ比は、流量、温度又は圧力の変化などの実際の動作条件を考慮しない。さらに、ベータ比はフィルタ粒子状物質の負荷容量の指標とはならない。ベータ比はまた、時間の経過に伴う安定性又は性能についても明らかにしない。
【0181】
上記に記載される実施例1〜4に従い作製した媒体を使用してベータ効率試験を実施した。フィルタ媒体例の上流の流体ストリームに既知の粒子サイズ分布を有する試験粒子を導入した。試験粒子を含有する流体は、フィルタ媒体にかかる圧力が320kPaに達するまでマルチパスでフィルタ媒体を通じて循環させた。試験全体を通じて下流流体及び上流流体の粒子計測を行った。フィルタ媒体を計量して、フィルタエレメントに対する1平方メートル当たりのグラム数による負荷量を決定した。下流流体中の粒子を調べることにより、フィルタ媒体が200のベータ比すなわち99.5%の効率評価を実現することができたミクロン単位による粒径を決定した。決定された粒径は、ミクロン単位によるβ200と称される。
【0182】
β200粒径について別の方法で説明すると、β200粒径は、媒体に対して当該のサイズ又はそれより大きい200個の粒子を負荷したときに、媒体を通り抜ける粒子が1個のみであるような粒径である。しかしながら、本開示では、この用語は特定の意味を有する。本明細書で使用されるとき、この用語は、制御された試験条件下でフィルタに既知の濃度の広範囲にわたる試験粒径を負荷する試験を参照する。下流流体の試験粒子含有量が計測され、各粒径についてβが計算される。この試験においてβ200=5μは、200の比を達成する最小の粒子が5μであることを意味する。
【0183】
実施例1〜4に従い作成した媒体について、図16−図19に示すβ200データを作成した。概して、本発明の媒体の特性を制御する能力はこれらの図に示される。それぞれの図中にデータを示す媒体試料は全て、同じファーニッシュ配合を用いて作成したものであり、実質的に同じ坪量、厚さ及び繊維組成を有するが、しかし混合隔壁構成は様々なものを使用して作製した。効率及び負荷容量に認められる性能の違いは、主として、異なる混合隔壁構成を使用して制御された勾配構造に起因した。これらの試験については、所与の圧力損失、最大320kPaに対して媒体の効率及び容量の双方を制御することができる。実質的に同じファーニッシュ配合、坪量、厚さ及び繊維組成を有する非勾配媒体試料は、同じ試験条件下でいかなる実質的な効率又は負荷容量の違いも示さないものと予想され得る。典型的には、単一のファーニッシュ配合で作成される媒体試料は、同じ性能を有することになる。しかしながら、本明細書に記載される勾配技術を用いると、異なる性能特徴を有するが、しかし全て同じファーニッシュ配合に由来する媒体試料が生成された。これらの実施例における性能の違いは、媒体における繊維組成の勾配を変化させることにより実現されたもので、勾配を変化させること自体は、異なる混合隔壁構成を使用することにより達成された。
【0184】
図16では、β200を制御された形で5ミクロンから15ミクロンまで変化させた。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は100g/m2から180g/m2まで変化した。図17に見られる60lb/3000ft2(97.74g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。この例では、β200は約5ミクロンに制御された(平均粒径5ミクロン以上の粒子200個につき1個のみが媒体を通過する)。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は110g/m2から150g/m2まで変化した。図18は、5ミクロン粒子のβ200による媒体についての追加的なデータを示し、ここでは細孔径の制御性が向上したとともに試料の負荷容量が110g/m2から150g/m2まで変化し、従って、効率を維持しながら負荷量を変化させることができることが示された。図19では、より粗いフィルタ媒体試料を作製し、ここでβ200を制御された形で8から13まで変化させ、その結果負荷容量は120g/m2から200g/m2まで変化した。
【0185】
実施例1
坪量40lb/3000ft2(65.16g/m2)の実施例1用の勾配媒体を、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して作成した。実施例1の勾配媒体試料は、同じファーニッシュ配合を使用して、しかし図13の9種の異なる混合隔壁構成を使用して作成した。混合隔壁の違いがなければ、同じ配合で作られた全ての媒体試料が同じ、又は極めて類似した性能を有するものと予想される。しかしながら、図16に見られるβ200試験の結果は、所与の圧力損失に対して効率及び容量の双方を制御できることを示している。図16では、β200を制御された形で5ミクロンから15ミクロンまで変化させた。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は100g/m2から180g/m2まで変化した。図16は、17個の異なる勾配媒体試料に関する17個のデータ点を含む。実施例1の17個の勾配媒体試料にいくつか対があるのは、混合隔壁構成が同じであることに起因している。
【0186】
実施例2
実施例2用の勾配媒体を実施例1と同じファーニッシュ調合により、ただし60lb/3000ft2(97.74g/m2)の坪量で、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、及び図13の9種の異なる混合隔壁構成を使用して作成した。図17に見られる60lb/3000ft2(97.74g/m2)勾配媒体に対するβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。図17のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。この例では、β200は約5ミクロンに制御された。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は110g/m2から150g/m2まで変化した。ここでもまた、実施例2の勾配媒体試料にいくつか対があるのは、混合隔壁構成が同じであることに起因している。
【0187】
実施例3
図18は、5ミクロン粒子のβ200による媒体についての追加的なデータを示し、ここでは細孔径の制御性が向上したとともに試料の負荷容量が110g/m2から150g/m2まで変化し、効率を維持しながら負荷量を変化させることができることが示された。60lb/3000ft2(97.74g/m2)の坪量で、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、及び図14の混合隔壁構成を使用して、実施例3用の勾配媒体を作成した。60lb/3000ft2(97.74g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。
【0188】
図18のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。
【0189】
実施例4
図19では、より粗いフィルタ媒体試料を作製し、ここではβ200を制御された形で8から13まで変化させ、その結果負荷容量は120g/m2から200g/m2まで変化した。勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、50lb/3000ft2(81.45g/m2)の実施例4用の勾配媒体も作成した。図13に見られるもののうちの一つなどの混合隔壁設計が用いられる。図19に見られる50lb/3000ft2(81.45g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の容量に対して効率を制御できることを示している。この例では、10ミクロン粒子のβ200値による媒体試料において勾配の利点を認めることができる。試験結果は、同じβ200効率を維持しながら汚染物質の負荷量を50%も増加させることができる(120g/m2から180g/m2に増加)ことを示している。
【0190】
図19のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。
【0191】
実施例5
表1の実施例5に記載されるファーニッシュを使用して、しかし隔壁については、媒体において異なる勾配程度を達成するため異なる構成を使用して、図20−図23のSEM像(断面)を作成した。混合隔壁における開口がないもの、又は異なるスロット配列及び面積を使用して、繊維タイプの種々のグレード又はブレンドを生じさせた。各SEM像は、実施例5により作成したあるグレードの勾配媒体を示す。媒体の深さ又は厚さに沿った異なる位置における繊維分布の違いを、異なるグレードにおいて明確に見ることができる。
【0192】
図20は、いかなる開口又はスロットも含まない隔壁を使用して生成した。図20には2つの層を見ることができる。一方の層40は効率層と称することができ、第2の層45は容量層と表現することができる。図20では、界面又は境界を検知することが可能である。
【0193】
図21は3個のスロットを備える混合隔壁を使用して生成した。図10の媒体は、個別の界面又は境界がないように混成された繊維組成を有する。
【0194】
図22及び図23では、図13において6又は7の番号が付された、4個又は5個のスロットを有する混合隔壁と同様の混合隔壁を使用した。ここでも、媒体は、認識可能又は検知可能な界面がないように混成された繊維組成を有する。
【0195】
実施例5についてのX線分散分光法データ
図24及び図25は、上部ヘッドボックスからの大径ガラス繊維が媒体領域を通じた勾配を形成することを示す実験及び結果の説明図である。図24は、作成した媒体の1つの断面のSEMを示し、勾配を計測するために使用した、媒体の厚さ全体にわたる領域1〜10の選択を示す。図25は勾配分析の結果を示す。
【0196】
実施例5のファーニッシュを使用して、混合隔壁に異なる構成を用いた多数の勾配媒体を形成した。この単一のファーニッシュ配合を、図26に示される種々の混合隔壁と組み合わせて使用して、媒体の勾配を作製した。勾配の性質及び媒体ごとの勾配の違いを推定するため、大径ガラス繊維のナトリウム含有量を計測した。層のナトリウム含有量を計測した。上部ファーニッシュ中のB50大径ガラス繊維は約10%のナトリウムを含有し、一方、下部ファーニッシュ中のB08ガラス繊維のナトリウム含有量は0.6%未満である。結果として、各領域のナトリウム濃度は、大径ガラス繊維濃度のおおまかな指標となる。ナトリウム濃度を、X線分散分光法(EDS)により従来の機械及び方法を使用して計測した。
【0197】
図24は、図26に示される混合隔壁の1つを使用して形成された実施例5の媒体層2600の断面のSEMであり、10個の領域に分けている。領域は、媒体のワイヤ側2602から媒体のフェルト側2604にかけて順次経過する。領域1は媒体のワイヤ側2602にあり、ここで領域10はフェルト側2604である。これらの領域は、その位置について領域におけるガラス繊維の濃度を分析するため選択した。
【0198】
各領域は約50〜100ミクロンの厚さである。領域10にはガラス繊維を含む大径繊維が多く見られ、一方、領域2にはガラス繊維を含む小径繊維が多く見られる。領域2には、一部の大径ガラス繊維が見える。領域1から領域10に、媒体のフェルト側に向かって移ると、大径ガラス繊維の数が増えていくことが分かる。
【0199】
図25は、図26に示されるとおりの4つの異なる混合隔壁を使用して同じファーニッシュの組み合わせから作製した4つの異なる媒体の分析の結果を示す。媒体の各々は、データにおいて実証されるとおり、異なる大径ガラス繊維勾配を有する。全ての勾配材料において、大径ガラス繊維濃度勾配は下部又はワイヤ側領域から増加し、及び領域が領域1から領域10へと、(すなわち)ワイヤ側からフェルト側へと経るに従い増加する。媒体Aでは、ナトリウム濃度は領域2まで増加せず、及び媒体Dでは、ナトリウム濃度は領域3まで増加しないことに留意されたい。媒体B及び媒体Cでは、ナトリウムは領域1で増加する。このデータはまた、ナトリウム濃度が、媒体Bについては領域4の後に、及び媒体C及び媒体Dについては領域6の後に実験誤差の範囲内でレベルが降下するように見えることを示しているように見える。ナトリウム含有量の実験誤差は、約0.2〜0.5wt.%である。媒体Aについては、グラフは、ナトリウム濃度の継続的な増加又は領域8の後のいくらかの最小限のレベル降下のいずれかを示しているように見える。全体的には、これらのデータは、媒体のワイヤ側又はフェルト側のいずれかにおいて、混合隔壁の選択によって勾配形成及び非勾配不変領域の生成の双方を制御できることを示しているように思われる。
【0200】
図26は、混合隔壁の構成A、B、C及びDを示す。構成の各々において、規則的な一連の矩形部品が示され、これらは液体を混合する連通のための一連の位置を画定し、混合隔壁を形成するフレームに配置される。各構成において、矩形部品は、構造を通じた流体連通の開口を置いて規定の間隔で配置される。
【0201】
図26の全ての構成において、混合隔壁には8個の矩形開口が画定され、混合隔壁における最初の矩形部品が最後の矩形部品と対になっている。最初の矩形部品は約8.89cm(3.5インチ)の幅を有し、一方、最後の矩形部品は約11.43cm(4.5インチ)の幅を有する。構成C及びDについては、25.4cm(10インチ)のスロットオフセットが存在する。構成Aについては、中間の矩形部品は約9.652cm(3.8インチ)幅であり、約1.3716cm(0.54インチ)幅のスロットを画定する。構成Bについては、中間の矩形部品は約7.7216cm(3.04インチ)幅であり、約3.4036cm(1.34インチ)幅のスロットを画定する。構成Cについては、中間の矩形部品は約6.5786cm(2.59インチ)幅であり、約1.3716cm(0.54インチ)幅のスロットを画定する。構成Dについては、中間の矩形部品は約4.5466cm(1.79インチ)幅であり、約3.4036cm(1.34インチ)幅のスロットを画定する。
【0202】
実施例6
上部ヘッドボックスから送り込まれる2つの異なるサイズのガラス繊維、すなわち二成分繊維と青色繊維とを含む以下の表7に示す成分を使用して、水性ファーニッシュ組成を作製する。セルロースファーニッシュ組成を下部ヘッドボックスから送り込む。勾配媒体は、別個のヘッドボックスからの2つのファーニッシュのフローを混合することにより形成される。
【0203】
【表7】
【0204】
表8は、実施例7の勾配媒体の形成に使用した機械パラメータを示す。
【0205】
【表8−1】
【0206】
【表8−2】
【0207】
【表8−3】
【0208】
【表8−4】
【0209】
上記にパラメータを掲載する機械設定は、表2に関連して上記に定義及び考察されるものと同じ設定である。表頭は、中実の隔壁又は異なる構成の混合隔壁若しくはラメラのいずれかを使用した異なるランに対応する。項目名1〜6の列は、5種の異なる混合隔壁構成と共に使用した機械設定に対応する。試験2−G、3−K及び4−Hについては、矩形部品は均等に離間して、混合隔壁に等しいサイズの開口を画定した。「前進」という項目名のランは、下流方向に移ると徐々に大きくなるスロットを有する混合隔壁で実施した。「逆進」という項目名のランは、下流方向に徐々に小さくなるスロットを有する混合隔壁で実施した。
【0210】
勾配媒体は、先述の勾配分析及びβ200手順を用いて分析される。スロット付き混合隔壁についての勾配分析及びβ200の結果は、勾配媒体特徴と整合していた。媒体の上部から媒体の下部にかけて識別可能な界面は存在しない。媒体の上部から媒体の下部にかけて多孔性の滑らかな勾配がある。
【0211】
実施例7
前述の実施例の手順及び装置を使用して、カエデセルロース繊維とカバセルロース繊維とを含むセルロース系媒体を作製し、ここでは上部ヘッドボックスファーニッシュが乾燥率100%のカエデパルプを含み、下部ヘッドボックスファーニッシュが乾燥率(dray percentage)100%のカバパルプを含んだ。シートの総重量は80lb/3000ft2(130.32g/m2)であり、2つの所与のパルプは均等に分けられた。
【0212】
この例の勾配は繊維組成である。勾配媒体は、先述の勾配分析及びβ200手順を用いて分析される。勾配分析及びβ200の結果は勾配媒体特徴と整合している。媒体の上部から媒体の下部まで識別可能な界面は存在しない。媒体の上部から媒体の下部にかけて多孔性の滑らかな勾配がある。
【0213】
実施例8
図27及び図28は異なる媒体構造のSEMであり、各々は、媒体をエチレングリコールに浸漬して冷却した後、クライオミクロトーム(cyro−microtome)を使用して媒体厚さにわたり13個の切片に分けたものである。図27及び図28に示される双方の媒体とも、一つの媒体配合のみを使用して調製した。媒体配合及び隔壁構成に関する情報は表9〜表10に示される。
【0214】
【表9】
【0215】
中実混合隔壁の場合、下部スラリーが最初に排水され、従って初めに下部スラリーからの繊維が溜まり、その後その上に上部スラリーが重なるため、上部スラリーと下部スラリーとの間に混合は起こらないことに留意されたい。結果として、作成されるシートは明確に区別される2つの層状構造を有し、勾配構造は有しない。しかしながら、上部及び下部ヘッドボックスに同じファーニッシュ配合を使用して、しかし開口を有する混合隔壁によると、上部スラリーと下部スラリーとの間に繊維の混合が起こり、結果として勾配構造がもたらされる。図27及び図28の双方において、媒体は表10に提供される配合を使用して作成される。図27及び図28において、最初のSEM1が各スライドにおける媒体の上部を示し、一方、最後のSEM13が厚さに沿った媒体の下部切片を示す。シートの全坪量は50lb/3000ft2(81.45g/m2)であり、そのうち25lb/3000ft2(40.73g/m2)がファーニッシュ1によりもたらされ、残り(25lb/3000ft2)(40.73g/m2)がファーニッシュ2によりもたらされたことに留意されたい。
【0216】
【表10】
【0217】
図27及び図28は、媒体の13個の切片の各々のSEMを示す。本明細書に記載される勾配技術がない場合、同じ上部及び下部ファーニッシュ配合から作成される2つの媒体が、その厚さ全体を通じて同様の構造を有し得ることが典型的となる。しかしながら、図27と図28との間には、媒体全体にわたる構造の違いが見られる。スロット付き混合隔壁により作製された図28については、フレームについて1から検討を始めると、初めのフレームは多数の大径繊維を示し、一方、後の方のフレームはより多くの小径繊維を示す。特に図27(勾配媒体なし)と図28(勾配媒体)との間で切片4、5及び6を比較すると、2つの構造間における構成繊維の分布の違いが明らかである。図27では、媒体の切片は一つの特定の繊維タイプ(大径又は小径のいずれか)が極めて豊富であり、中間で小径の繊維タイプに急激に移行する。しかしながら、図28では、移行はそれほど鮮明でなく、異なる繊維タイプ間の混合量もより高い。例えば、図27及び図28における対応する切片4、5及び6を比較することにより、勾配構造(図28)ではより多量の混合が起こり、中実の隔壁(図27)で作成された媒体では混合は比較的少ししか、又は全く起こらなかったことが容易に分かる。
【0218】
また、図27及び図28の媒体は異なる形で機能した。図27の非勾配媒体は、β200について5ミクロンの効率性能で上記に記載したとおり試験したとき、1平方メートル当たり160グラムの汚染負荷量を達成している。対照的に、図27のように上部及び下部ファーニッシュに配合を使用して作成することによる図28の勾配媒体は、β200試験について5ミクロンの効率性能で上記に記載したとおり試験したとき、1平方メートル当たり230のグラムの汚染負荷量を達成した。同じ効率での負荷性能のこの実質的な向上は、スロット付き混合隔壁によって媒体全体にわたり実現された勾配によるものである。
【0219】
実施例9
表11に示されるファーニッシュ及び表3の混合隔壁構成を使用して媒体を調製した。2つの異なる坪量:40及び60lb/3000ft2(65.16g/m2)及び(97.74g/m2)を有する媒体を調製した。
【0220】
【表11】
【0221】
これらの仕様に従い形成して得られた媒体をベータ効率について試験した。結果を表12に示す。
【0222】
【表12】
【0223】
このデータは、許容可能な負荷及び圧力損失特性を有する特定の最終用途に合わせて調整することのできる広範囲の効率結果(5ミクロン粒子についてβ75〜β200)を得る能力を示している。
【0224】
【表13】
【0225】
表13の参照番号1〜15の材料は、表14に含まれるファーニッシュ配合を使用し、媒体の厚さ全体を通じて勾配を形成するようスロット付き混合隔壁を使用して作製される。各シートの全坪量は、50lb/3000ft2(81.45g/m2)であり、そのうち25lb/3000ft2(40.73g/m2)はファーニッシュ1によりもたらされ、残り(25lb/3000ft2)(40.73g/m2)はファーニッシュ2によりもたらされた。
【0226】
しかしながら、比較例Aの材料は、2つの層を別個に形成し、次にラミネート加工により接合した二層媒体である。比較例Aの材料の2つの別個の層の作成に使用したファーニッシュは、青色PET繊維を含まないことを除き、2つの別個のヘッドボックスに対するファーニッシュ配合と極めて類似している。比較例Bの材料は、表14のファーニッシュにより、但し2つのフローストリーム間に中実混合隔壁を用いて作製した。2つの従来の材料の比較例A及び比較例Bとの勾配材料の比較を表13及び図29に示す。これらのデータは、優れたβ200を維持しながら寿命が長い(320kPaにおける負荷がより大きい)本発明の様々な実施形態を作製できることを示している。
【0227】
【表14】
【0228】
実施例11についてのFTIRデータ
図30及び図31は、二成分媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。図30は、ファーニッシュの単一層をワイヤガイド上に載せるために使用される単一のヘッドボックスを有する機器を使用して形成された媒体のスペクトルである。図30の媒体を形成するためのファーニッシュは、二成分繊維と、1ミクロンより細いガラス繊維と、ポリエステル繊維とを含んだ。図31は、図1に示されるものと同様の機器及びスロット付き混合隔壁により形成した勾配媒体のスペクトルである。ここで表14は、図31に示される媒体を形成するための上部及び下部ヘッドボックスのファーニッシュ内容を示す。
【0229】
図30は、非勾配二成分/ガラスフィルタ媒体のFTIRスペクトルである。かかる媒体において、二成分媒体の作製に使用される種々の繊維の濃度は全体にわたり本質的に一定のままであり、媒体を形成する影響から生じる変化はほとんどない。図30のスペクトルの作成においては、従来のFTIRスペクトル機器を使用して媒体シートの両側のFTIRスペクトルを測った。図は2つのスペクトルを示す。スペクトルAは媒体の第1の側面であり、一方、スペクトルBは媒体の反対側の側面である。図を簡単に調べることで容易に判断され得るとおり、図Aのスペクトルと図Bのスペクトルとは実質的に重なっており、特に、媒体のポリエステル材料に由来する約1700cm−1の波長におけるカルボニル特性ピークの範囲で重なっている。スペクトルAからスペクトルBに至るポリエステルのカルボニルピークの類似性は、媒体の双方の表面におけるポリエステル繊維の濃度が類似しており、数パーセントを大きく上回るような差異はないことを示している。
【0230】
図31は、本発明の勾配媒体の両側面のFTIRスペクトルを示す。約1700cm−1の波長における各スペクトルのポリエステルのカルボニル特性ピークに見ることができるとおり、スペクトルAのカルボニルピークは、スペクトルBのポリエステルのカルボニルピークより実質的に高い。これは、媒体の片側のポリエステルの濃度(スペクトルA)が、媒体の反対側のポリエステルの濃度(スペクトルB)より実質的に高いことを示している。これは、媒体の第1の側面におけるポリエステル繊維の濃度について、媒体の第2の側面と比較したときに実質的に違いがあることの明らかな証拠である。この計測技法は、媒体の表面における、又は媒体の表面約4〜5ミクロンの範囲内のポリエステル繊維の濃度の計測に限られる。
【0231】
実施例及びデータ及び機械情報を簡単に考察すると、上部ヘッドボックス及び下部ヘッドボックスからの繊維分散体を組み合わせることによりファーニッシュが作製されることは明らかである。これらの繊維分散体は上部及び下部ヘッドボックスから送られ、混合隔壁の作用により組み合わされる。
【0232】
実施例のファーニッシュにおいて、二成分繊維は足場繊維を含み、ガラス繊維及びポリエステル繊維がスペーサー繊維である。より小径のガラス繊維が効率繊維である。実施例のファーニッシュに見ることができるとおり、典型的には各ファーニッシュの二成分含有量は比較的一定であり、それにより混合隔壁を通過した後の組み合わされた水性ファーニッシュは実質的に同じで比較的一定した二成分繊維濃度を得て、媒体における構造上の完全性を形成する。上部ヘッドボックスには、関連する大きい比率の大径スペーサー繊維、典型的にはポリエステル繊維又はガラス繊維又は双方の繊維の混合物がある。また、下部ヘッドボックスには小径の効率繊維があることにも留意されたい。上部ヘッドボックスからのファーニッシュは混合隔壁の作用によって、最低限、下部ヘッドボックスからのファーニッシュと混和されるため、層がウェットレイド法でワイヤ上に形成されると、及びその後層がさらに処理されると、スペーサー繊維の濃度が形成された層の厚さを通じて変化するように、上部ヘッドボックスからの大径スペーサー繊維の濃度が濃度の勾配を形成する。ファーニッシュの流量及び圧力に応じて、混合隔壁及びその構成、小径の効率繊維もまた、2つのファーニッシュが層を形成する前に混和されると勾配を形成することができる。
【0233】
ファーニッシュを調べると分かるとおり、ウェットレイド法においてワイヤ上に形成された後の層組成は、二成分繊維の濃度が層全体にわたり比較的一定している。スペーサー繊維がポリエステル繊維又はガラス繊維又はその双方の組み合わせを含む場合、スペーサー繊維が層の領域内に又は層全体にわたり勾配を形成し得る。層の一領域又は層全体にわたる小径の効率繊維は濃度が比較的一定であってもよく、又は一方の表面から他方の表面にかけて濃度が変化してもよい。表12のファーニッシュから作製された層は、比較的一定した濃度の二成分繊維を層全体の約50%含み得る。スペーサー繊維のB50ガラス繊維は合計で全繊維含有量の約25%を含み、勾配を形成し得る。小径の効率ガラス繊維は繊維含有量全体の約25%を含み、及び濃度が一定であっても、又はバックフロー及び圧力に応じて層内に勾配を形成してもよい。本発明者らは、層を加熱し、硬化させ、乾燥させて保管した後、二成分繊維は層に対して機械的完全性を提供する傾向があり、一方、スペーサー繊維及び効率繊維は二成分層を通じて分布し、層が繊維の熱結合を達成すると足場繊維によってその場に保持されることを見出した。サイズ、透過率及び他の繊維特性に対する効率は、スペーサー繊維及び効率繊維が存在することにより実質的に得られる。繊維は一体となって働き、有効な効率的透過性を有する繊維特性を形成する繊維の内部ネットワークを提供する。媒体の様々な実施形態において使用することのできる繊維の各タイプの範囲を表15に示す。
【0234】
【表15】
【0235】
X勾配の例及び勾配データ
X方向に特定の繊維濃度の勾配を有し、またZ方向にも特定の繊維濃度の勾配を有する媒体を調製した。これらのX方向勾配媒体は、表16に示されるファーニッシュ配合を使用して、及び図9−図11の混合隔壁2100及び図12の混合隔壁2400を使用して調製した。
【0236】
混合隔壁2100を2つのファーニッシュ供給源と共に使用して不織ウェブが形成されるとき、上部供給源のファーニッシュの繊維成分、例えば青色PET及び0.6ミクロンB06繊維は、主に不織ウェブにおいて媒体の中心部に存在することが予想される。また、中心部には、上部供給源の成分がウェブの厚さを通じて組成勾配を形成し、上部ファーニッシュの繊維がウェブの上面により多く存在し、その繊維の濃度が徐々に低下して、従ってウェブの反対側の底面に存在するその繊維がより少ないことが予想される。
【0237】
上部供給源にのみ青色トレーサー繊維を使用して、混合隔壁2100を使用して不織ウェブを形成した。青色繊維は、得られた不織ウェブの中心の一切片に見られた。また、青色繊維はウェブの上側及び下側の双方に見られたが、下側より上側に一層集中していた。
【0238】
図12の混合隔壁2400が表16における2つのファーニッシュと共に使用されるとき、部品2406の下側にあるウェブの部分は、上部ヘッドボックスにのみ存在する繊維を多く含まないことが予想される。また、部品2406によって被覆されないウェブの一部はX方向に勾配を有し、上部ヘッドボックスからの繊維の濃度が、開口がより大きい外縁端に向かって増加することも予想される。また、部品2406によって被覆されるウェブの一部はZ方向に勾配を有し、上部ヘッドボックスからの繊維の濃度がウェブの上面に向かって増加することも予想される。これらの予想のいずれも、得られた媒体においてより高濃度の青色繊維が見られることに基づき正しいことが観察された。
【0239】
上部及び下部ヘッドボックスに同じファーニッシュ配合を使用しながら、しかし異なる混合隔壁構成を使用することで異なる媒体構造が作成されることが、混合隔壁構成を媒体構造の操作に使用することができるという概念のさらなる裏付けとなる。
【0240】
走査型電子顕微鏡写真(SEM)を使用して非勾配媒体の媒体構造を勾配媒体と比較した。図32は、非勾配媒体3200のSEM及び勾配媒体3202の別のSEMを示す。媒体3200は、中実混合隔壁を使用して、及び表16に示されるファーニッシュ配合を使用して作製したものであり、ここで上部ファーニッシュは二成分繊維と、ポリエステル繊維と、5ミクロンガラス繊維と、0.6ミクロンガラス繊維とを含む。下部ファーニッシュは、カバパルプ由来のセルロース繊維のみを含む。媒体3200のSEMにより観察することができるとおり、ヘッドボックスからのファーニッシュ間に本質的に混合はなく、従って媒体は明確に異なる層を有する。2つの層間に界面が見える。媒体3200では、セルロース系繊維が下部セルロース層3206を形成し、これはガラス繊維と二成分繊維とポリエステル繊維とを有する上部層3208の形成とは明確に異なる。電子顕微鏡写真で上部層3208はセルロース層3206の上側に示される。セルロース層3206に実質的な濃度のガラス繊維は見られず、セルロース層3206は実質的にガラス繊維を含まない。
【0241】
媒体3202は、表16に示される上部及び下部ファーニッシュ配合を使用して、スロット付き混合隔壁を使用して作製した勾配フィルタ媒体である。特に、図9−図11に示されるとおりのスロット付き混合隔壁を使用して勾配フィルタ媒体3202を生成した。従ってフィルタ媒体3202はX方向の勾配を有するとともに、Z方向にも勾配構造を得る。顕微鏡写真3202に示される部分は、媒体のクロスウェブ方向における中心に位置するz寸法勾配を有する媒体の一部分を表す。SEM3202は、媒体全体を通じたガラス繊維の実質的な分布を示し、及びガラス繊維との組み合わせのセルロース系繊維の一部の分布を示す。媒体3202の上部領域3210には、下部領域3212と比べてより多くのガラス繊維が目視可能な形で存在する。それと際立って対照的に、媒体3200は、非勾配セルロース層3206に結合された従来の非勾配二成分ガラス媒体層3208の明確に区別される層を有する。SEM3200では界面は目視でき、二成分ガラス媒体領域とセルロース層との間の明確且つ顕著な変化である。かかる界面によって2つの層間の界面におけるフローに対する実質的な抵抗が生じる。さらにセルロース層の平均細孔径は、従来の二成分ガラス媒体の平均細孔径より小さい。これにより界面要素がさらに導入され、二成分ガラス層を通過してセルロース層に至る流体フローに対する抵抗が実質的に増加する。
【0242】
それと際立って対照的に、媒体3202は、材料の細孔径が一方の表面から他方の表面にかけて連続的に変化し、その変化が漸進的で制御される勾配材料である。
【0243】
【表16】
【0244】
本発明者らは、x勾配混合隔壁を使用して、繊維の濃度がマシン方向にかけて変化し、フラジール通気度の勾配がもたらされるようなx勾配を有する媒体を形成している。フラジール通気度試験は専用の試験装置及び方法を使用する。一般に媒体の通気度は、媒体のいかなる点においても、少なくとも1メートル/分(m3−m−2−分−1としても知られる)の、典型的には及び好ましくは約2〜900メートル/分の通気度を呈しなければならない。フラジール通気度のx勾配を有する媒体において、通気度が一方の縁端から他方の縁端まで計測されるとき、通気度は変化しなければならない。図12の混合隔壁を使用して媒体が作製された一実施形態において、通気度は一方の縁端から他方の縁端にかけて増加又は減少する。別の実施形態において、通気度勾配は、縁端と比べて媒体の中心の通気度が増加又は低下し、縁端は同じ又は同様の通気度を有するように変化を呈することができる。図9のx勾配混合隔壁により作製されたある媒体において、縁端の通気度は、13.1〜17.1fpm(42.97〜56.1メートル/分)の範囲で計測され、中心の通気度は29.4fpm(96.46メートル/分)であった。図12のx勾配混合隔壁により作製された別の媒体において、部品2406により被覆された縁端近傍の通気度は10.2fpm(33.46メートル/分)であり、一方、部品2406により被覆されなかった縁端近傍の通気度は12.4fpm(40.69メートル/分)であった。
【0245】
上記の明細書、例及びデータにより、本発明の組成物の製造及び使用の完全な説明が提供される。本発明の範囲から逸脱することなく本発明の多くの実施形態を作製することができるため、本発明は、以下に添付される特許請求の範囲にある。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国を除く全ての指定国については米国籍企業Donaldson Company,Inc.の出願人名義で、並びに米国についてのみは、米国市民であるGupta Hemant ph.D.及び米国市民であるBrad E.Kahlbaughの出願人名義で、PCT国際特許出願として2010年1月28日に出願されたものであり、2009年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/147,861号明細書、及び2010年1月27日に出願された米国特許出願第12/694,913号明細書及び2010年1月27日に出願された米国特許出願第12/694,935号明細書に対する優先権を主張し、それらの内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、媒体内に制御可能な特性を含む不織媒体である。媒体(medium)(複数形、媒体(media))という用語は、変化させることのできる又は制御された構造及び物理的特性を有する繊維で作製されたウェブを指す。かかる材料は、ろ過製品及び処理に使用することができる。この分野はまた、媒体又はウェブを形成するための方法又は処理又は装置にも関する。媒体(medium)(複数形、媒体(media))という用語は、変化させることのできる又は制御された構造及び物理的特性を有する繊維で作製されたウェブを指す。
【背景技術】
【0003】
不織繊維ウェブ又は媒体は、長年、ろ過を含む多くの最終用途向けに製造されている。かかる不織材料は、エアレイド、スパンボンディング、メルトボンディング及び製紙技法を含む様々な手順によって作製することができる。これらの製造技法を用いて多様な用途、特性又は性能水準を有する広く利用可能な一群の媒体を製造するには、繊維及び他の成分について広範囲の組成が必要となり、及び多くの場合に複数のプロセス工程が必要となる。広範囲の用途を満足するように機能することのできる一連の媒体を得るため、多数の組成及び多工程の製造技法が利用されている。こうした複雑さからコストが高くなり、製品の提供における柔軟性が低下している。様々な媒体組成及び製造手順が必要とされるなかでの複雑さの低減が実質的に求められている。この技術の一つの目標は、単一又はより少数の原材料及び単一又はより少数のプロセス工程を用いて広範な媒体を作製可能とすることである。
【0004】
媒体は、いくつかあるろ過のなかでも特に、液体及び空気ろ過、並びに粉塵及びミストろ過を含め、様々な用途を有する。かかる媒体はまた、層状に重ねて層状媒体構造にすることもできる。層状構造は、層ごとの変化に起因する勾配を有し得る。繊維媒体に勾配を形成しようとする試みの多くは、ろ過用途を対象として行われてきた。しかしながら、そうしたフィルタ媒体の先行技術の開示されている技法は、様々な特性を有する単一又は複数の成分のウェブの層を単に互いに重ねて置いたものか、又は形成中若しくは形成後に互いに縫い合わせるか、若しくはその他の方法で結合したものである。層の形成中又は形成後に異なる層を互いに結合しても、特性又は材料の有用な連続勾配はもたらされない。最終製品には、層間に明確な検知し得る界面が存在することになる。用途によっては、繊維媒体の形成におけるかかる界面によって起こるフロー抵抗の増加を回避することが極めて望ましい。例えば、空気中浮遊粒子状物質又は液体粒子状物質のろ過では、フィルタエレメントの層間の界面は、多くの場合に捕捉された粒子状物質及び汚染物質が蓄積するところである。フィルタ媒体内ではなく、界面の層間に多くの粒子が蓄積すると、フィルタ寿命が短くなり得る。
【0005】
ニードリング及び水流交絡などの他の製造方法によって層の混合を改善することができるが、しかしそれらの方法では、フィルタ媒体が典型的にはより大きい細孔径を含むことが多く、直径20ミクロン(μ)未満の粒子に対する除去効率の低下を招く。また、ニードリング及び水流交絡された構造は、比較的厚く、坪量が大きい材料であることが多く、フィルタに使用することのできる媒体量が制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
フィルタ媒体の形態をとることのできる多面的な不織ウェブ類、適合させることのできる形成プロセス及び広範なウェブ又は媒体を作製可能な機械が開示される。平面状の繊維ウェブ又は媒体は、厚さ及び幅を画定する第1の表面と第2の表面とを有することができる。媒体は、勾配を有する領域を含むことができる。かかる勾配は、繊維の濃度、特性、特徴、又は他の構成要素が表面間又は縁端間で変化する媒体を有することにより形成される。媒体の勾配領域は媒体全体を含んでもよく、又は媒体の一部分を含む領域を含んでもよい。媒体は、勾配領域内に繊維濃度の連続的な変化が存在することにより特徴付けられる。媒体は、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含む少なくとも1つの領域を有し、ここで第1の繊維は直径が第2の繊維より大きく、第2の繊維は、第2の繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。領域は勾配を含むことができ、従って媒体の繊維組成が領域において異なり、領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に変化する。かかるフィルタ媒体は、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有することができ、媒体は、その厚さに少なくとも1つの領域を含み、領域は、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、ここでポリエステル繊維は領域において濃度が実質的に変化せず、スペーサー繊維は、スペーサー繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。
【0007】
かかるウェブは、1〜40ミクロンの範囲をとり得る直径を有する繊維と、0.5ミクロン〜約6ミクロンの範囲をとり得る直径を有する第2の繊維とを含むことができる。本発明の勾配において、勾配は媒体内に存在してもよく、z寸法において(すなわち)媒体の厚さを通じて、勾配がいずれかの方向に増加するように広がることができる。同様に、勾配はクロスマシン(すなわち)x寸法において、勾配がいずれかの方向に増加するように増加することができる。フィルタ媒体は、幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有することができ、各縁端は媒体のマシン方向と平行であり、媒体は、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、ここで第2の繊維は、第2の繊維の濃度が第1の縁端から第2の縁端にかけて増加するように、第1の領域において濃度が変化する。
【0008】
媒体は、典型的には、媒体の形成における接着結合層又は別個の層間にある任意の他のかかる移行層などの、フロー抵抗を増加させ得る部分が媒体に存在しないことを特徴とする。勾配を有する平面状繊維構造を含む不織ウェブもまた作製することができる。
【0009】
本発明の媒体は、気体又は液体を含む様々な流体材料からの粒子状物質の除去を目的として様々な用途に使用することができる。さらに、本発明のろ過媒体は、フラット媒体、プリーツ媒体、フラットパネルフィルタ、円筒形スピンオンフィルタ、z媒体プリーツフィルタ及び勾配が有用な特性を提供する他の実施形態を含む様々なフィルタエレメントタイプで使用される。
【0010】
本発明の一実施形態において、不織ウェブの作製装置が記載される。装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームと繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源を備える。この装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流にある混合隔壁も備え、この混合隔壁は、1つ又は複数の供給源からの第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされる。混合隔壁は、2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を画定する。本装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も備える。
【0011】
別の実施形態において、本装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源と、第1及び第2の供給源より下流にある混合隔壁とを備える。混合隔壁は、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされ、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を混合隔壁に画定する。本装置は、第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域を備える。
【0012】
さらに別の実施形態において、不織ウェブの作製装置は、繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、供給源より下流にある混合隔壁であって、混合隔壁における1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、供給源より下流に位置し、且つフローストリームを受け入れ、フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域とを備える。
【0013】
装置を使用した不織ウェブの作製方法が記載される。本方法は、第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップを含み、ここで流体ストリームは繊維を含む。本装置は、第1の供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされる。流路は混合隔壁により分離され、混合隔壁は、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を混合隔壁に画定する。本方法は、供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップをさらに含む。受入領域は、供給源から吐出されたフローストリームを受け入れ、且つ繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される。本方法のさらなるステップは、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップである。
【0014】
本明細書に記載される別の実施形態において、不織ウェブの作製方法が、供給源からファーニッシュ(furnish)を提供するステップであって、ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含むステップと、不織ウェブの作製装置からファーニッシュのストリームを吐出するステップとを含む。装置は、ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は、ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にする少なくとも1個の開口を画定する。本方法は、開口を通過する繊維を、供給源より下流に位置する受入領域に捕集するステップと、残りの繊維を混合隔壁の下流部分において受入領域に捕集するステップと、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】不織ウェブの作製装置の実施形態の概略部分断面図である。
【図2】不織ウェブの作製装置の別の実施形態の概略部分断面図である。
【図3】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図4】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図5】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図6】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図7】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図8】混合隔壁の例示的構成の上面図である。
【図9】媒体においてX方向の勾配を完成する混合隔壁の等角図である。
【図10】図9の混合隔壁の上面図である。
【図11】図9の混合隔壁の側面図である。
【図12】媒体においてX方向の勾配を完成する扇形混合隔壁の上面図である。
【図13】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図14】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図15】混合隔壁のさらなる例示的構成の上面図である。
【図16】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図17】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図18】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図19】例示的勾配媒体の性能を示すグラフである。
【図20】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図21】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図22】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図23】異なる混合隔壁構成で作られた不織ウェブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像である。
【図24】ある混合隔壁構成により作られた不織ウェブの断面のSEM像を示し、種々の領域を示す。
【図25】図24の媒体の領域のナトリウム含有量のグラフである。
【図26】図25及び図24に関する媒体の生成に使用された4つの異なる混合隔壁構成の上面図である。
【図27】中実の隔壁を使用して生成された媒体の13個の領域を示す。
【図28】開口を備える混合隔壁を使用して生成された勾配媒体の13個の領域を示す。
【図29】スロット付き混合隔壁により作製された勾配材料の、従来の二層ラミネート媒体との、及び中実の隔壁により作製された二層媒体との比較であり、表18に示される。
【図30】勾配媒体及び非勾配媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル情報である。
【図31】勾配媒体及び非勾配媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル情報である。
【図32】非勾配媒体及び勾配媒体の電子顕微鏡写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概して図1−図32では、関連がある場合には、x寸法、y寸法及びz寸法が示される。
【0017】
フィルタ媒体として使用することのできる不織ウェブが本明細書に記載され、ウェブは第1の繊維と第2の繊維とを含み、及びウェブは、ウェブの何らかの組成、繊維形態又は特性に変化がある領域を含み、且つ変化のない非勾配領域を含むことができる。かかる領域は、上流又は下流のいずれに配置されてもよい。第1の繊維は少なくとも1ミクロンの直径を有し、第2の繊維は多くとも5ミクロンの直径を有することができる。領域は厚さの一部分を含むことができ、厚さの10%又はそれ以上であってよい。一例において、第2の繊維の濃度がウェブの厚さにわたり変化する。別の例において、第2の繊維の濃度がウェブの幅又は長さにわたり変化する。かかるウェブは、2つ以上の第1の不織不変領域又は2つ以上の第2の勾配領域のいずれかを有することができる。媒体は、定濃度のポリエステル繊維とスペーサー繊維と効率繊維とを含む厚さの第2の領域を有することができる。
【0018】
ここでウェブの特性の変化についての他の多くの例をさらに記載する。また、ここでは、かかるウェブを作製するための装置及び方法についても記載する。
【0019】
一実施形態において、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体を作製することができ、媒体は厚さに少なくとも1つの領域を含み、領域は、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、ここでポリエステル繊維は領域において濃度が実質的に変化せず、スペーサー繊維は、スペーサー繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、領域において濃度が変化する。媒体は、30〜85wt%のポリエステル繊維と、2〜45wt%のスペーサー繊維と、10〜70wt%の効率繊維とを含む。ポリエステル繊維は二成分繊維を含むことができ;スペーサー繊維はガラス繊維を含むことができ;効率繊維はガラス繊維を含むことができる。スペーサー繊維は単相ポリエステル繊維を含むことができる。
【0020】
別の実施形態において、幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有するフィルタ媒体を作製することができ、各縁端は媒体のマシン方向と平行である。媒体は、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、第2の繊維は、第2の繊維の濃度が第1の縁端から第2の縁端にかけて増加するように、第1の領域において濃度が変化する。フィルタ媒体の幅は、定濃度の第1の繊維と第2の繊維とを含む厚さの第2の領域を含むことができる。フィルタ媒体は、厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有することができ、媒体は、勾配を含む第2の領域を含み、第2の領域において第2の繊維は、第2の繊維の濃度が領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、第2の領域において濃度が変化する。フィルタ媒体において、第2の領域は、媒体の厚さの一部分にわたることができる。フィルタ媒体において、第1の繊維は第1の繊維組成を有し、第2の繊維は、第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有することができる。フィルタ媒体において、第1の繊維は直径が第2の繊維より大きくてもよい。フィルタ媒体において、幅の中心領域を作製することができ、第2の繊維の濃度はこの中心領域で最も高い。フィルタ媒体において、フィルタ媒体は第1の縁端に隣接した第1の縁端領域と、第2の縁端に隣接した第2の縁端領域とを含み、第2の繊維の濃度は、第2の縁端領域と比べて第1の縁端領域においてより高い。
【0021】
I.勾配媒体の必要性及び利点
特定の組成又は特徴に変化又は勾配を有する繊維媒体は、多くの状況で有用である。本開示の技術の実質的な利点の一つは、単一のファーニッシュ組成又は少数からなる一組のファーニッシュからウェットレイド媒体に広範囲の特性及び性能を作り出す能力である。第2の、しかし重要な利点は、単一のウェットレイド媒体形成プロセスを用いてこの広い範囲にわたる製品を生産する能力である。媒体は、形成されると、さらなる処理も追加の層もなしに優れた性能特徴を有する。以下のデータで確認することができるとおり、単一のファーニッシュを使用して、製品寿命が長い広範囲の効率を作り出すことができる。これらの特性は、本発明のウェットレイド法で形成された勾配材料に生じる。効率の変化とは、利点を提供する細孔径の変化を含意する。例えば、細孔径勾配を有する媒体は、いくつかある用途のなかでも特に、粒子状物質のろ過に有利である。フィルタの上流部分における細孔径勾配は、汚染物質を最上流層又は界面に詰まらせるのではなく、媒体の深さを通じて堆積させることにより、フィルタの寿命を延ばすことができる。加えて、制御可能且つ予測可能な勾配特徴、例えば、繊維の化学的性質、繊維径、架橋又は融合又は結合機能性、バインダー又はサイズ剤の存在、微粒子の存在などを有する繊維媒体が、多くの各種用途において有利である。かかる勾配は、ろ過用途で用いられる場合、汚染物質の除去及び貯留における性能の亢進をもたらす。材料の勾配及びその関連属性は、繊維媒体の厚さを通じて、或いは繊維媒体シートのクロスウェブ幅又は長さなどの別の寸法にわたって提供される場合に有利である。
【0022】
II.媒体、装置及び方法の一実施形態の説明
本明細書に記載される技術を用いて、不織布における操作され制御されたウェブ構造を、ウェットレイド法を用いて作製することができ、ここで不織ウェブは、繊維、特性、又は他のろ過に関する一面が、ウェブの第1の表面からウェブの第2の表面に至る方向、又はウェブの第1の縁端からウェブの第2の縁端に至る方向、又はその双方の方向に制御されて変化する領域を有する。操作されたウェブは、従来の1つ又は複数の不織布又は織布ウェブ領域の1つ又は複数を、フィルタ特性の操作された変化を有する本明細書に記載される実施形態に係る1つ又は複数の不織ウェブの1つ又は複数の領域と組み合わせて、ウェットレイド技法を用いて作製することができる。
【0023】
媒体、方法及び装置のさらなる考察についての背景を提供するため、多くの追加的な異なる実施形態が本明細書で後述されることを認識したうえで、いくつかの特定の実施形態を簡潔に説明する。一実施形態において、かかる媒体は、第1の流体フローストリームと第2の流体フローストリームとを有する装置を使用して作製することができ、各フローストリームは少なくとも1種類の繊維を含む。かかる装置の一例が、図1に示される。この特定の例では、装置100は第1のフローストリーム104の第1の供給源102と第2のフローストリーム108の第2の供給源106とを備える。装置は、混合隔壁110と呼ばれる混合隔壁構造であって、そこに開口112を画定する構造を使用して、2つのフローストリームの制御された混合を得るように設計及び構成される。混合隔壁はまた、混合ラメラと称することもできる。
【0024】
第1のフローストリーム104は、混合隔壁の下側に位置決めされる受入領域114上に流れ、一方、第2のフローストリームは混合隔壁110の上面上に流れる。第2のフローストリームの一部は開口112を通過して受入領域114に至り、従って第1のフローストリーム104と第2のフローストリーム108との間に混合が起こる。第1のフローストリーム104が第1の繊維タイプを含み、及び第2のフローストリーム108が第2の繊維タイプを含む実施形態では、得られる不織ウェブは、ウェブの厚さにわたる第2の繊維タイプの勾配分布を有し、ここで第2の繊維タイプの濃度は、図1におけるウェブの向きを用いれば、底面から上面に向かうにつれ低くなる。
【0025】
図1の装置は、いくつかの点で製紙型の装置と同様であり得る。先行技術における製紙機械は、中実で、且つ2つのフローストリームの混合を最小限しか許容しない隔壁構造を有することが知られている。本発明の混合隔壁構造は、フローストリームの所望のレベル及び配置の混合を得るため少なくとも2つのフローストリームと協働する様々な幾何形状の孔を備えて適合される。混合隔壁は、1個の開口、2個の開口又はそれより多い開口を有することができる。さらに本明細書で詳細に考察するとおり、混合隔壁の開口の形状及び向きによってウェブに特定の勾配構造を実現することが可能となる。
【0026】
一実施形態において、媒体は、ろ過特性のための成形性、剛性、引張り強さ、低圧縮性、及び機械的安定性;高い粒子状物質負荷容量、使用中の低い圧力損失、並びにろ過流体、例えば、ガス、ミスト、又は液体における使用に好適な細孔径及び効率を有する複合不織ウェットレイド媒体に関する。一実施形態のろ過媒体はウェットレイドであり、ランダムに配向された媒体繊維の配列から構成される。
【0027】
III.界面境界なし
混合隔壁を使用したかかる方法によって得られる繊維ウェブは、繊維特徴の勾配があって、且つ特定の繊維の濃度に変化があるが、しかし2つ以上の別個の層は有しない領域を有することができる。この領域は、媒体の厚さ又は幅の全体であっても、又は媒体の厚さ又は幅の一部分であってもよい。ウェブは、記載されるとおりの勾配領域と、繊維又はフィルタ特徴の変化を最小限しか有しない不変領域とを有することができる。繊維ウェブは、2つ以上の別個の層間に確かに界面を有する他の構造に存在するフロー上の欠点がない勾配を有することができる。互いに接合された2つ以上の別個の層を有する他の構造では、ラミネートされた層、ラミネート用接着剤又は任意の2つ以上の層間を分断する界面であり得る界面境界が存在する。例えば、ウェットレイド法において勾配形成用孔あき混合隔壁装置を使用することにより、ウェットレイド媒体の製造においてウェブ形成を制御し、こうしたタイプの別個の界面を回避することが可能である。得られる媒体は、比較的薄く、同時にプリーツ又は他のろ過構造に形成するのに十分な機械的強度を維持するものであり得る。
【0028】
VI.主な用語の定義
本特許出願の目的上、用語「ウェブ」は、約0.05mmから、それより大きい不確定の又は任意の厚さまでの厚さを有するシート状又は平面状の構造を指す。この厚さ寸法は、0.5mm〜2cm、0.8mm〜1cm又は1mm〜5mmであってよい。さらに、本特許出願の目的上、用語「ウェブ」は、約2.00cmから不確定の又は任意の幅までの範囲をとることのできる幅を有するシート状又は平面状の構造を指す。長さは不確定の又は任意の長さであってよい。かかるウェブは、柔軟性を有し、機械加工可能で、プリーツ加工可能で、及びその他の方法でフィルタエレメント又はフィルタ構造に形成することが可能である。ウェブは勾配領域を有することができ、また不変領域も有することができる。
【0029】
本開示の目的上、用語「繊維」は、平均値又は中央値の繊維サイズ又は特徴の周りに(典型的には、実質的に正規分布又はガウス分布で)分布している繊維サイズ又は繊維特徴の範囲内に全ての繊維が含まれるような、組成的に関連性を有する多数の繊維を示す。
【0030】
用語「フィルタ媒体(media)」又は「フィルタ媒体(medium)」は、この用語が本開示で使用されるとき、フィルタ構造として少なくとも最小限度の有用性があり、且つ従来の製紙ウェットレイド法で作製された従来の紙、コート用紙又は新聞用紙などのように実質的に不透過層でないように少なくとも最小限の透過性及び多孔性を有する層に関する。
【0031】
本開示の目的上、用語「勾配」は、ウェブの何らかの特性が、ウェブの少なくとも一領域において、又はウェブにおいて、典型的にはx又はz方向に変化することを示す。変化はウェブの第1の表面から第2の表面にかけて、又は第1の縁端から第2の縁端にかけて現れることができる。勾配は、物理的特性の勾配であっても、又は化学的特性の勾配であってもよい。媒体は、透過率、細孔径、繊維径、繊維長、効率、固体度(solidity)、湿潤性、耐化学性及び耐温度性からなる群の少なくとも1つの勾配を有することができる。かかる勾配においては、繊維サイズが変化してもよく、繊維濃度が変化してもよく、又は任意の他の組成に関する一面が変化してもよい。さらに、勾配は、細孔径、透過率、固体度及び効率などの媒体の何らかのフィルタ特性が第1の表面から第2の表面にかけて変化し得ることを示すことができる。勾配の別の例は、特定の繊維タイプの濃度の第1の表面から第2の表面にかけての、又は第1の縁端から第2の縁端にかけての変化である。湿潤性、耐化学性、機械的強度及び耐温度性の勾配は、ウェブが、異なる繊維化学を有する繊維の繊維濃度勾配を有する場合に、実現することができる。組成又は特性のかかる変化は、線形勾配分布で現れても、又は非線形勾配分布で現れてもよい。ウェブ又は媒体における繊維の組成又は濃度勾配のいずれも、上流、下流等、媒体における任意の方向に、線形的にも、又は非線形的にも変化することができる。
【0032】
用語「領域」は、厚さがウェブの全厚より小さいか、又は幅がウェブの全幅より小さい、ウェブの任意に選択された部分を示す。かかる領域はいかなる層、界面又は他の構造によっても画定されず、ウェブにおいてその領域に隣接又は近接する繊維等の同様の領域と比較するためだけに任意に選択される。本開示では、領域は別個の層ではない。かかる領域の例は、図24、図27及び図28に見ることができる。領域においては、第1及び第2の繊維は組成が異なる繊維のブレンドを含むことができ、勾配によって特徴付けられる領域は、媒体の厚さの一部分である。
【0033】
用語「繊維特徴」は、組成、密度、表面処理、繊維における材料の配列、繊維形態、例えば、直径、長さ、アスペクト比、クリンプ度、断面形状、バルク密度、サイズ分布又はサイズ分散等を含めた、繊維の任意の側面を含む。
【0034】
用語「繊維形態」は、繊維の形状、形態又は構造を意味する。特定の繊維形態の例としては、ツイスト、クリンプ、ラウンド、リボン様、ストレート又はコイル状が挙げられる。例えば、円形断面を有する繊維は、リボン様形状の繊維とは異なる形態を有する。
【0035】
用語「繊維サイズ」は形態の一部であって、長さと直径との比である「アスペクト比」を含み、及び「直径」は、繊維の円形断面の直径か、又は繊維の非円形断面の最大断面寸法のいずれかを指す。
【0036】
本開示の目的上、用語「混合隔壁」は、フローストリームを少なくとも受入範囲と分離し、しかし隔壁に、フローストリームと受入範囲との間での制御された混合程度を提供する開放された範囲を提供することができる機械的バリアを指す。
【0037】
混合隔壁において、用語「スロット」は、第1の寸法が第2の寸法より著しく大きい、例えば長さが幅より著しく大きい開口を指す。本開示の目的上、「繊維」が参照される。この参照は、繊維源に関するものであることが理解されるべきである。繊維源は、典型的には繊維製品であり、ここでは多数の繊維が同様の組成、直径及び長さ又はアスペクト比を有する。例えば、開示される二成分繊維、ガラス繊維、ポリエステル及び他の繊維タイプは、実質的に同様の繊維を多数有して大量に提供される。かかる繊維は、本発明の媒体又はウェブを形成する目的上、典型的には水相などの液体中に分散される。
【0038】
用語「足場」繊維は、本発明の文脈では、媒体に機械的強度及び安定性を提供する実質的に定濃度の繊維を意味する。足場繊維の例は、硬化させた二成分繊維、又は硬化層中の繊維と樹脂との組み合わせである。一実施形態において、足場繊維は二成分繊維を含み、第1の繊維及び第2の繊維の双方が、独立してガラス繊維又はポリエステル繊維を含む。別の実施形態において、足場繊維はセルロース系繊維を含み、第1の繊維及び第2の繊維の双方が、独立してガラス繊維又はポリエステル繊維を含む。
【0039】
用語「スペーサー」繊維は、本発明の媒体の文脈では、媒体の足場繊維に分散させることのできる繊維を意味し、ここでスペーサー繊維は勾配を形成することができ、且つ直径が効率繊維より大きい。
【0040】
用語「効率」繊維は、本発明の文脈では、勾配を形成することができ、且つ足場繊維又はスペーサー繊維との組み合わせで、細孔径効率を媒体に提供する繊維を意味する。本発明の媒体は、足場繊維、スペーサー繊維及び効率繊維とは別の、さらに追加的な繊維の1つを有することができる。
【0041】
用語「繊維組成」は、繊維材料の配列を含めた、繊維及び1つ又は複数の繊維材料の化学的性質を意味する。かかる性質は有機的なものであっても、又は無機的なものであってもよい。有機繊維は、典型的には本質上ポリマー又はバイオポリマーである。第1の繊維又は第2の繊維(又は足場繊維若しくはスペーサー繊維は、ガラス、セルロース、麻、アバカス(abacus)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせを含む繊維から選択される繊維であってもよい。無機繊維は、ガラス、金属及び他の非有機炭素源材料で作製される。
【0042】
用語「デプス媒体」又は「デプス負荷媒体」は、ろ過される粒子状物質がデプス媒体の厚さ又はz寸法にわたって捕獲及び維持されるフィルタ媒体に関する。実際には、粒子状物質の一部はデプス媒体の表面に蓄積し得るが、デプス媒体の特色は、デプス媒体の厚さの範囲内に粒子状物質を蓄積して保持する能力である。かかる媒体は、典型的には実質的なろ過特性を有する領域を含む。多くの用途、特に比較的高い流量が関わる用途において、デプス媒体を使用することができる。デプス媒体は、一般に、その多孔性、密度又は固体含有率に関して定義される。例えば、2〜3%の固体度の媒体は、全体積の約2〜3%が繊維材料(固体)を含むように繊維が配列され、残りは空気又は気体間隙であるデプス媒体マットであり得る。デプス媒体の定義に有用な別のパラメータは、繊維径である。パーセント固体度を一定に保ち、しかし繊維径(サイズ)を小さくすると、細孔径は小さくなる;すなわちフィルタは効率が高くなり、小粒子をより効果的に捕捉し得る。典型的な従来のデプス媒体フィルタは、比較的一定の(又は一様な)密度の媒体、すなわちデプス媒体の固体度がその厚さにわたって実質的に一定に保たれているシステムである。デプス媒体において、第2の繊維は、第1の上流表面から第2の下流表面にかけて増加することができる。かかる媒体は、負荷領域と効率領域とを含むことができる。
【0043】
この文脈で「実質的に一定」とは、濃度又は密度などの特性がある場合に、媒体の深さにわたってはその比較的小さい変動しか認められないことを意味する。かかる変動は、例えば、フィルタ媒体が位置決めされている容器によって外側係合面が僅かに圧迫されることにより生じ得る。かかる変動は、例えば、製造過程におけるばらつきによって引き起こされるウェブにおける繊維の僅かではあるが本質的な高密化又は低密化により生じ得る。一般に、デプス媒体構成は、実質的にその体積又は深さを通じた粒子状材料の負荷を提供するように設計することができる。従って、かかる構成は、表面負荷システムと比べて、全フィルタ寿命が経過するまでにより多量の粒子状材料を負荷するように設計することができる。しかしながら、実質的な負荷には固形分が比較的低度の媒体が望ましいため、一般にかかる構成は効率が代償となる。例えば、媒体は、足場、スペーサー又は効率繊維が一様に又は実質的に一定であるように結合された領域である領域を有することができる。結合された領域における第1の繊維は、濃度が一様又は実質的に一定である。
【0044】
本開示の目的上、用語「表面媒体」又は「表面負荷媒体」は、粒子状物質の大部分がフィルタ媒体の表面に蓄積し、媒体層の厚さの範囲内には粒子状物質がほとんど又は全く見られないフィルタ媒体を指す。多くの場合、表面負荷は、媒体層への粒子状物質の侵入に対するバリアとして働く表面上に形成された細繊維層を使用することにより得られる。
【0045】
本開示の目的上、用語「細孔径」は、媒体内で繊維材料により形成された間隙を指す。媒体の細孔径は、媒体の電子写真を調べることにより推定することができる。媒体の平均細孔径はまた、Porous Materials Inc.(Ithaca、NY)から型番APP 1200 AEXSCとして入手可能なキャピラリーフローポロメーターを使用して計算することもできる。
【0046】
本開示の目的上、用語「結合繊維」は、本発明の媒体又はウェブの形成において、繊維材料が隣接する繊維材料と結合を形成することを示す。かかる結合は、結合系として働く二成分繊維の可融性外側層などの、繊維の固有の特性を利用して形成することができる。或いは、本発明のウェブ又は媒体の繊維材料は、典型的にはバインダー樹脂の水性分散体の形態で提供される別個の樹脂性バインダーを使用して結合することができる。或いは、本発明の繊維はまた、架橋試薬を使用して架橋させ、高温結合により、又は繊維に繊維同士の結合を生じさせることのできる任意の他の結合法により、電子ビーム又は繊維間結合を生じさせることのできる他のエネルギー放射を使用して結合することもできる。
【0047】
「二成分繊維」は、ある融点を有する少なくとも1つの繊維部分と、より低い融点を有する第2の熱可塑性部分とを有する熱可塑性材料から形成された繊維を意味する。これらの繊維部分の物理的構成は、典型的にはサイド・バイ・サイド構造又はシース−コア構造である。サイド・バイ・サイド構造では、2つの樹脂が典型的にはサイド・バイ・サイド構造で接続された形態で押出しされる。また、先端がより低い融点のポリマーを有するローブ形繊維を使用することもできる。二成分繊維は、フィルタ媒体の30〜80wt.%であってもよい。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「供給源」は、起点、例えば繊維を含む流体フローストリームの起点である。供給源の一例はノズルである。別の例はヘッドボックスである。
【0049】
「ヘッドボックス」は、幅にわたって実質的に一様なファーニッシュフローを送り込むように構成された機器である。ある場合には、ヘッドボックス内の圧力は、ポンプ及び制御装置によって維持される。例えば、エアパッド付きヘッドボックスは、ファーニッシュの上側にある空隙を圧力の制御手段として使用する。ある場合には、ヘッドボックスはまた整流ロールも備え、それらは中に大きな穴を備えるシリンダであり、エアパッド付きヘッドボックス内で低速で回転してファーニッシュの分配を補助する。液圧式ヘッドボックスでは、一群の管、拡張した範囲、及びフロー方向の変化によってファーニッシュの再分配及びフロックの破壊を実現する。
【0050】
「ファーニッシュ」は、本明細書でこの用語が使用されるとき、繊維と液体とのブレンドである。一実施形態において、液体は水を含む。一実施形態において、液体は水であり、ファーニッシュは水性ファーニッシュである。
【0051】
「マシン方向」は、ウェブを生産する装置などの装置内を通じてウェブが移動する方向である。また、マシン方向は、材料のウェブの最長寸法の方向でもある。
【0052】
「クロスウェブ方向」は、マシン方向に垂直な方向である。
【0053】
「x方向」及び「y方向」は、繊維媒体ウェブのそれぞれ幅及び長さを定義し、及び「z方向」は繊維媒体の厚さ又は深さを定義する。本明細書で使用されるとき、x方向はクロスウェブ方向と同じであり、y方向はマシン方向と同じである。
【0054】
「下流」は、本明細書でこの用語が使用されるとき、ウェブを形成する装置において少なくとも1つのフローストリームが流れる方向にある。本明細書において第1の成分が第2の成分の下流にあると記載されるとき、それは、第1の成分の少なくとも一部分が第2の成分の全体の下流にあることを意味する。第1の成分が第2の成分の下流にあるとしても、第1の成分と第2の成分との一部分は重なり合ってよい。
【0055】
IV.媒体の詳細な説明
a.媒体における種々の勾配タイプ
勾配は、ウェブのx方向、y方向又はz方向のいずれかに生成され得る。ここでは、そうした異なる勾配タイプを生成するために使用される特定の混合隔壁構造についてさらに考察する。勾配はまた、これらの平面の組み合わせで生成されてもよい。勾配は、少なくとも2つの繊維の相対的な分布を調整することにより完成される。少なくとも2つの繊維は、組成、長さ、直径、アスペクト比、形態又はそれらの組み合わせなどの異なる物理的特性を有することによって互いに異なり得る。例えば2つの繊維は、第1のガラス繊維が0.8ミクロンの平均直径を有し、且つ第2のガラス繊維が5ミクロンの平均直径を有するなど、直径が異なってもよい。
【0056】
勾配を形成する少なくとも2つの繊維は、異なる化学組成、コーティング処理、又はその双方を有することによって互いに異なり得る。例えば、第1の繊維がガラス繊維である一方、第2の繊維がセルロース系繊維であってもよい。
【0057】
本明細書に記載される不織ウェブは、例えば、細孔径、架橋密度、透過率、平均繊維サイズ、材料密度、固体度、効率、液体流動性、湿潤性、繊維表面化学、表面化学、又はそれらの組み合わせの勾配を定義することができる。ウェブはまた、繊維、バインダー、樹脂、粒子状物質、架橋剤などを含む材料に比例して勾配を有するように製造することもできる。ここまで少なくとも2つの繊維について考察したが、本発明の多くの実施形態は、3、4、5、6種又はそれ以上の繊維タイプを含む。第2、第3、及び第4の繊維タイプの濃度はウェブの一部分にわたって変化させることが可能である。
【0058】
b.勾配領域と不変領域とを備える媒体
本明細書に記載される実施形態の媒体は、勾配特徴を有することができる。本発明の一態様において、媒体は2つ以上の領域を有することができる。第1の領域は、上記に定義及び考察されるとおりの確定された勾配を備える媒体の厚さの一部分を含むことができる。他の領域は、勾配か、又はいかなる重要な勾配特徴も実質的に存在しない不変媒体特徴かのいずれかを有する媒体の厚さの別の部分を含むことができる。かかる媒体は、本発明の方法及び機械を用いて、機械によって放出される繊維から形成される層が、不変媒体を含む第1の領域と勾配媒体を含む第2の領域とを備えるかかる媒体を形成するような機械設定により形成することができる。媒体は、ラミネート構造及び接着剤又は領域間に一切の顕著な界面が実質的に存在しないように作製することができる。媒体には、少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の二成分繊維と、ポリエステル繊維又はガラス繊維を含む少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の第2の繊維とがあり、ここで第2の繊維の濃度は、第1の表面から第2の表面にかけて増加する連続勾配となるよう形成される。大部分、領域の繊維は特徴が同様であってもよく、又は実質的に異なってもよい。例えば、不変領域が、セルロース系繊維、ポリエステル繊維、又は混合セルロース系合成繊維の領域を含み、一方、勾配領域が二成分繊維若しくはガラス繊維、又は本開示の他の場所に開示される他の繊維若しくは繊維の混合を含んでもよい。
【0059】
機械設定に応じて、本発明の方法における領域の形成は、典型的には形成用ワイヤ上に湿潤層を形成し、次に液体を除去することで、さらなる乾燥及び他の処理に繊維層を残すことより行われる。最終的な乾燥した媒体において、領域は様々な厚さを有することができる。かかる媒体は、約0.3mm〜5mm、0.4mm〜3mm、0.5mm〜1mm、少なくとも0.05mm又はそれより大きい範囲の厚さを有することができる。かかる媒体は、媒体の厚さの約1%〜約90%の範囲であってよい勾配領域の層を有することができる。或いは、勾配層の厚さは、媒体の厚さの約5%〜約95%を含むことができる。本発明の媒体の勾配のさらに別の態様は、勾配が媒体の厚さの10%〜80%である媒体を含む。本発明のなおさらに別の実施形態は、勾配層の厚さが媒体全体の厚さの約20%〜約80%である媒体を含む。同様に、媒体は不変領域を含むことができ、不変領域は媒体の厚さの1%より大きく、媒体の厚さの5%より大きく、媒体の厚さの10%より大きく、又は媒体の厚さの20%より大きい。
【0060】
一実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも10%高い。別の実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも15%高い。別の実施形態において、勾配領域の下部におけるある繊維の濃度は、勾配領域の上部における当該繊維の濃度より少なくとも20%高い。
【0061】
媒体に不変領域と勾配領域とを有することで、数多くの機能を果たすことができる。一実施形態において、勾配層は、小粒子を捕捉する初期上流層として働くことができ、それにより媒体の寿命が長くなる。本発明のなお別の実施形態は、不変領域が、特定の粒径で効率的に動作するように設計されたフィルタ特徴を有する上流層である媒体に関する。かかる実施形態では、次に不変領域は、特定の粒径の実質的な量を媒体から除去することで、勾配媒体が他の粒径を除去する補助として働くことができ、それによりフィルタ寿命が長くなる。理解され得るとおり、様々な異なる用途において特定の流体層から特定の粒子タイプをろ過する目的に対し、不変層と勾配領域との使用を操作することができる。
【0062】
c.繊維の例
繊維は、様々な組成、直径及びアスペクト比であってよい。不織ウェブに勾配を形成するための本明細書に記載される概念は、ウェブを作るために使用される特定の繊維ストックとは無関係である。繊維の組成上のアイデンティティについて、当業者はあらゆる繊維を有用と判断し得る。かかる繊維は、通常は有機製品又は無機製品のいずれかから処理される。特定の用途の勾配要件により、繊維、又は繊維の組み合わせの選択をより好適なものとし得る。勾配媒体の繊維は、二成分、ガラス、セルロース、麻、アバカス、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、アクリル又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0063】
合成繊維と天然繊維との組み合わせ、及び処理された繊維と未処理繊維との組み合わせを含む繊維の組み合わせを、複合材において好適に使用することができる。
【0064】
セルロース、セルロース系繊維又は混合セルロース/合成繊維は、複合材媒体の基本成分であり得る。セルロース系繊維は別個の層であっても、又は足場繊維若しくはスペーサー繊維であってもよく、及び少なくとも約20ミクロン且つ多くとも約30ミクロンの直径を有することができる。他の供給源からも入手可能であるが、セルロース系繊維は主に木材パルプから誘導される。本発明での使用に好適な木材パルプ繊維は、クラフト法及び亜硫酸法などの公知の化学的方法により、続く漂白を伴い又は伴わず得ることができる。パルプ繊維はまた、サーモメカニカル法、ケミサーモメカニカル法、又はそれらの組み合わせによって処理することもできる。好ましいパルプ繊維はケミカル法によって生産される。砕木繊維、再生又は二次木材パルプ繊維、並びにさらし及び未さらし木材パルプ繊維を使用することができる。針葉樹及び広葉樹を使用することができる。木材パルプ繊維の選択の詳細は当業者に周知されている。これらの繊維は数多くの企業から市販されている。木材パルプ繊維はまた、本発明において使用する前に前処理することもできる。この前処理は、物理的又は化学的処理、例えば他の繊維タイプと組み合わせたり、繊維を蒸気にかけたりすることなど、又は化学的処理、例えば、様々な架橋剤のいずれか1つを使用してセルロース繊維を架橋することなどを含み得る。架橋は繊維かさ高及び弾性を高める。
【0065】
合成繊維としては、ポリマー繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(様々な加水分解度のもの)、ポリ酢酸ビニル繊維が挙げられ、これもまた複合材に使用することができる。好適な合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びレーヨン繊維が挙げられる。他の好適な合成繊維としては、熱可塑性ポリマーから作製されたもの、熱可塑性ポリマーで被覆されたセルロース系材料及び他の繊維、及び成分の少なくとも1つが熱可塑性ポリマーを含む多成分繊維が挙げられる。単一成分繊維及び多成分繊維は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の従来の熱可塑性繊維材料から製造することができる。
【0066】
限定として解釈されてはならないが、繊維の前処理の例は、繊維の表面化学を修飾する界面活性剤又は他の液体の適用を含む。他の前処理は、抗菌剤、色素、染料及び高密度化剤又は軟化剤の取り込みを含む。熱可塑性及び熱硬化性樹脂などの他の化学物質で前処理された繊維もまた使用され得る。前処理の組み合わせもまた用いられ得る。同様の処理を、前処理プロセスにおける複合材の形成後に適用することもできる。
【0067】
ウェブの繊維として使用することのできるガラス繊維媒体及び二成分繊維媒体が、2007年12月18日に発行された米国特許第7,309,372号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。ウェブの繊維として使用することのできるガラス繊維媒体及び二成分繊維媒体のさらなる例が、2006年5月11日に公開された米国特許出願公開第2006/0096932号明細書(同様に全体として参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0068】
本明細書に記載されるウェブの製造には、相当な割合のガラス繊維を使用することができる。ガラス繊維は媒体の約30〜70wt.%を含むことができる。ガラス繊維は細孔径の制御を提供し、及び媒体において他の繊維と連係することで、大きい流量、高い能力、大きい効率及び高い湿潤強度の媒体が得られる。用語のガラス繊維「供給源」は、他と明確に区別される原材料として利用可能な平均直径及び長さ又はアスペクト比によって特徴付けられる定義された組成の多数の繊維のガラス繊維製品を意味する。好適なガラス繊維供給源は、例えば、Summerville、South Carolina、米国を所在地とするLauscha Fiber Internationalから、5ミクロンの直径を有するB50R、1ミクロンの直径を有するB010F、又は0.8ミクロンの直径を有するB08Fとして市販されている。同様の繊維が他の販売業者からも利用可能である。
【0069】
「二成分繊維」は、ある融点を有する少なくとも1つの繊維部分と、それより低い融点を有する第2の熱可塑性部分とを有する熱可塑性材料から形成された繊維を意味する。これらの繊維部分の物理的構成は、典型的にはサイド・バイ・サイド構造又はシース−コア構造である。サイド・バイ・サイド構造では、2つの樹脂が、典型的にはサイド・バイ・サイド構造で接続された形態で押出される。シース−コア構造では、より低い融点を有する材料がシースを形成する。また、先端がより低い融点のポリマーを有するローブ形繊維を使用することも可能である。
【0070】
二成分(シース/コア又はサイド・バイ・サイド)繊維のポリマーは、異なる熱可塑性材料、例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレンシースが、コア、例えばポリエステルより低い温度で溶融するポリオレフィン/ポリエステル(シース/コア)二成分繊維などから構成されてもよい。典型的な熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びそれらの共重合体、及びポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルが挙げられる。具体的な例は、DuPontから入手可能な271Pとして知られるポリエステル二成分繊維である。他の繊維としては、Fiber Innovation Technology(Johnson City、Tennessee)から入手可能なFIT201、日本の株式会社クラレから入手可能なKuraray N720、及び日本のユニチカ株式会社から入手可能なUnitika 4080、及び同様の材料が挙げられる。他の繊維としては、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、例えばポリアクリレート、及びポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、すなわちナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース系樹脂、すなわち硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース等、上記の材料のいずれかの共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、Kratonゴムなどが挙げられる。第1の繊維又は足場繊維は、各々が独立してポリエステル又はポリオレフィンを含むコアとシェルとを含む二成分繊維を含むことができる。
【0071】
これらのポリマーは全て、最初の溶融が完了するとシースが架橋するという特徴を示す。これは、適用温度が典型的にはシース溶融温度を上回る液体用途には重要である。
【0072】
不織媒体は、多数の親水性、疎水性、親油性、及び疎油性のいずれもの繊維から作製される二次繊維を含むことができる。これらの繊維は、他の繊維と協働することにより、機械的に安定な、しかし強力で透過性を有するろ過媒体を形成し、このろ過媒体は、流体材料が通過する機械的応力に耐えることができ、且つ使用中、粒子状物質の負荷を維持することができる。二次繊維は、典型的には約0.1〜約50ミクロンの範囲であってもよい直径を有する一成分繊維であり、自然界に存在する綿、亜麻、羊毛、様々なセルロース系及びタンパク質性天然繊維、レーヨン、アクリル、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル繊維を含む合成繊維を含め、様々な材料から作製することができる。二次繊維のあるタイプは、他の成分と協働して材料をシート状に結合するバインダー繊維である。二次繊維の別のタイプは、他の成分と協働して乾燥及び湿潤条件下の材料の引張り強さ及び破裂強さを増加させる構造繊維である。加えて、バインダー繊維は、PTFE、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリマーから作製された繊維を含むことができる。二次繊維はまた、炭素/グラファイト繊維、金属繊維、セラミック繊維及びそれらの組み合わせなどの無機繊維も含むことができる。導電性繊維の(例えば)炭素繊維又はアルミニウム、ステンレス鋼、銅等を含む金属繊維は、媒体に電気的勾配を提供することができる。環境上及び製造上問題となるため、製造及び使用中に化学的及び機械的に安定な繊維が好ましい。かかる繊維はいずれも、異なる直径の繊維のブレンドを含むことができる。
【0073】
d.バインダー樹脂の選択肢
バインダー樹脂を使用することで、足場繊維及び他の繊維、典型的には二成分繊維が存在しない場合におけるセルロース系繊維、ポリエステル繊維又はガラス繊維などを結合して機械的に安定した媒体とすることを補助することができる。かかるバインダー樹脂材料は乾燥粉末又は溶媒系として使用することができるが、しかし典型的にはビニル熱可塑性樹脂の水性分散体(ラテックス又は数多くのラチスのうちの一つ)である。バインダーとして使用される樹脂は、媒体に直接添加されて分散体を作製する水溶性又は分散性ポリマーの形態であってもよく、又は媒体の形成後に加えられる熱によりバインダーとして活性化されるアラミド及びガラス繊維と混ぜ合わされた樹脂材料の熱可塑性バインダー繊維の形態であってもよい。樹脂としては、セルロース系材料、酢酸ビニル材料、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、熱硬化性樹脂、例えば、尿素フェノール、尿素ホルムアルデヒド、メラミン、エポキシ、ポリウレタン、硬化性不飽和ポリエステル樹脂、多環芳香族樹脂、レソルシノール樹脂及び同様のエラストマー樹脂が挙げられる。水溶性又は分散性バインダーポリマーに好ましい材料は、概して、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル及びアルキド樹脂などの水溶性又は水分散性熱硬化性樹脂であり、具体的には、媒体作製業界で一般的に使用されている水溶性アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂である。かかるバインダー樹脂は、典型的には繊維を被覆し、最終的な不織マトリックスにおいて繊維同士を接着する。十分な樹脂をファーニッシュに添加することで、シート、媒体、又はフィルタ材料に形成された細孔のフィルムオーバー(film over)を発生させることなく繊維を完全に被覆することができる。樹脂は、エラストマー、熱硬化性樹脂、ゲル、ビーズ、ペレット、フレーク、粒子、又はナノ構造であってよく、及び媒体作製中にファーニッシュに添加しても、又は形成後に媒体に加えられてもよい。
【0074】
各不織構造において三次元不織繊維ウェブを一体に結合するために使用される、又は追加的な接着剤として使用されるラテックスバインダーは、当該技術分野において公知の様々なラテックス接着剤から選択することができる。当業者は、結合するセルロース系繊維のタイプに応じて具体的なラテックス接着剤を選択することができる。ラテックス接着剤は、噴霧又は発泡などの公知の技法により適用され得る。概して、最初に15〜25%の固形分を有するラテックス接着剤が使用される。分散体は、繊維を分散させた後にバインダー材料を添加するか、又はバインダー材料を分散させた後に繊維を添加することにより作製することができる。分散体はまた、繊維の分散体をバインダー材料の分散体と組み合わせることにより作製することもできる。分散体中の全繊維の濃度は、分散体の総重量を基準として0.01〜5又は0.005〜2重量%の範囲であってよい。分散体中のバインダー材料の濃度は、繊維の総重量を基準として10〜50重量%の範囲であってよい。サイズ剤、充填剤、着色剤、歩留り向上剤、代替資源由来の再生繊維、バインダー、接着剤、架橋剤、粒子、抗菌剤、繊維、樹脂、粒子、小分子有機又は無機材料、又はそれらの任意の混合物を、分散体に含めることができる。
【0075】
e.選択的結合用コーティング
選択的結合用コーティング又は元素とは、相手材料を選択的に結合する部分を指す。かかるコーティング又は元素は、標的相手材料を繊維に選択的に付着又は捕捉させるのに有用である。
【0076】
かかるコーティング又は元素として有用な部分の例としては、生化学的、有機化学的又は無機化学的分子種が挙げられ、天然的、合成的又は組換え的方法によって誘導することができる。かかる部分としては、例えば、吸収剤、吸着剤、ポリマー、セルロース系材料、並びに巨大分子、例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物及び脂質が挙げられる。かかるコーティングはまた、フィルタ加工中に流体ストリームに対して可溶性又は不溶性の成分と反応することができる反応性化学コーティングを含むこともできる。かかるコーティングは、小分子又は大分子とポリマーコーティング材料との双方を含むことができる。かかるコーティングは、繊維の表面上で化学反応を達成するために繊維成分上に堆積されても、又はそれに対して接着されてもよい。
【0077】
繊維に付着させることができ、且つ標的相手材料と選択的な結合性を示す他のかかるコーティング又は元素は、当該技術分野において公知であり、本明細書に提供される教示及び指針をふまえて本発明の機器、装置又は方法において用いることができる。
【0078】
f.化学反応性粒子状物質
本明細書に記載される実施形態の媒体中には、化学反応性粒子状物質を分散させることができる。
【0079】
本発明の粒子状物質は、有機材料及び無機材料及び混成物のいずれからも作製することができる。粒子状物質としては、活性炭素などの炭素粒子、イオン交換樹脂/ビーズ、ゼオライト粒子、珪藻土、活性アルミナなどのアルミナ粒子、ポリマー粒子、例えば、スチレン単量体、及び市販の超吸収剤粒子などの吸収剤粒子を挙げることができる。有機粒子状物質は、発泡又はその他のポリスチレン又はスチレン共重合体、ナイロン又はナイロン共重合体、ポリオレフィンポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、オレフィン共重合体、プロピレンオレフィン共重合体、アクリルポリマー及びポリメチルメタクリレートを含む共重合体、及びポリアクリロニトリルから作製することができる。さらに、粒子状物質はセルロース系材料及びセルロース誘導体ビーズを含むことができる。かかるビーズは、セルロース、又はメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体から製造することができる。さらに、粒子状物質は、珪藻土、ゼオライト、タルク、クレー、シリケート、溶融二酸化ケイ素、ガラスビーズ、セラミックビーズ、金属粒子状物質、金属酸化物等を含むことができる。本発明の粒子状物質はまた、所定の長さ及び直径を有する反応性の吸収剤又は吸着剤繊維様構造を含むこともできる。添加剤の他の例は、反応性コーティングを有する粒子である。
【0080】
粒子は、繊維マット内の異なる層中にあり得る。勾配媒体の最終的な特性に役立つ粒子状物質、繊維、樹脂、又はそれらの任意の混合物は、勾配媒体を作製又は仕上げ加工するプロセスの間のいずれの時点で分散体に添加されてもよい。
【0081】
e.添加剤
サイズ剤、充填剤、着色剤、歩留り向上剤、代替資源由来の再生繊維、バインダー、接着剤、架橋剤、粒子、又は抗菌剤の添加剤は、水性分散体に添加されてもよい。
【0082】
f.媒体における界面構造の欠如
先行技術では、第1の層を第2の層と別に形成し、次に層を組み合わせることによって特定の構造が作製されるため、得られる媒体の厚さにわたり媒体特徴が段階的に変化する結果となっていた。かかる組み合わせは、典型的には層間の界面の形成を伴う。かかる界面は、時に、個別にラミネートされたシートとしては繊維がラミネーション前のシートともはや同じ物理的状態にない押し潰された繊維によって特徴付けられる層間の領域を含む。他の界面は、層を結合する接着剤を含む。本明細書に記載される不織ウェブの実施形態の多くでは、押し潰された層界面及び接着剤層界面を含むかかる界面の影響は不織ウェブに存在しない。
【0083】
本明細書に記載される媒体の一実施形態は、繊維ウェブ内のx方向、y方向、及びz方向などにいかなる境界又はバリアも存在しないことによって特徴付けられる。
【0084】
V.方法及び装置の詳細な説明
本発明の技術の実質的な利点は、1つの、又は限られた一組のファーニッシュと、一段階ウェットレイド法とを用いて広範囲の有用な特性を有する一連の媒体が得られることである。
【0085】
a.方法
ある実施形態では、本発明はシングルパスウェットレイド法を利用して繊維マットの寸法の範囲内に勾配を生成する。シングルパスとは、勾配媒体を作成する一プロダクションランの間に、領域における繊維の混合及び1つ又は複数の混合ファーニッシュの堆積が1回のみ行われることを意味する。勾配を増進させるためにそれ以上の処理が行われることはない。混合隔壁装置を使用するシングルパス法は、媒体内に識別し得る又は検知し得る界面のない勾配媒体を提供する。媒体内の勾配は、上部から下部にかけて、又は媒体の厚さにわたり規定することができる。それに代えて又は加えて、媒体内の勾配は、媒体の長さ又は幅寸法にわたり規定されてもよい。
【0086】
一実施形態において、不織ウェブの作製方法は、第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップを含み、ここで流体ストリームは繊維を含む。この方法で使用される装置は、第1の供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされる。流路は混合隔壁によって分離され、混合隔壁は、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を混合隔壁に画定する。本方法は、供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップをさらに含む。受入領域は、供給源から吐出されたフローストリームを受け入れ、繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される。本方法のさらなるステップは、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップである。
【0087】
別の実施形態において、不織ウェブの作製方法は、供給源からファーニッシュを提供するステップであって、ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含むステップと、不織ウェブの作製装置からファーニッシュのストリームを吐出するステップとを含む。装置は、ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を有し、混合隔壁は、ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にする少なくとも1個の開口を画定する。本方法は、開口を通過する繊維を、供給源より下流に位置する受入領域に捕集するステップと、残りの繊維を混合隔壁の下流部分において受入領域に捕集するステップと、湿潤層を乾燥させて不織ウェブを形成するステップとをさらに含む。
【0088】
b.混合隔壁の一般的原理
一実施形態において、混合隔壁は、傾斜型製紙機械又は本明細書でさらに考察する他の機械などの改良された紙漉機に関連して使用される。混合隔壁は水平面上に位置決めすることも、又は下向き若しくは上向きの傾斜面上に位置決めすることもできる。ファーニッシュは、機械において供給源を出ると、形成ゾーン又は受入領域に進む。ファーニッシュは、少なくとも最初は混合隔壁によって分離される。本発明の混合隔壁は、その表面にスロット又は開口を有する。
【0089】
本発明の混合隔壁装置を使用して形成される勾配媒体は、供給源から供給されたファーニッシュが移動時に局所的に制御された形で混合される結果である。混合隔壁の設計については多くの異なる選択肢がある。例えば、混合隔壁の始点における開口がより大きいか、又はより多数あると、ファーニッシュが最も多く水を保持しているときにより多くの混合が生じ得る。混合隔壁の終点における開口がより大きいか、又はより多数あると、液体がより多く除去された後に混合が起こる。ファーニッシュ中に存在する材料及び所望の最終的な特性に応じて、媒体形成プロセスの早い段階でより多く混合するか、又は媒体形成プロセスの後半で繊維をより多く混合することで、勾配繊維媒体の最終的な構成に利点が提供され得る。
【0090】
本発明の装置及び方法を使用して2つより多いファーニッシュを用いると、3つ以上の繊維勾配を形成することができる。さらに、1つ又は1つより多い混合隔壁が用いられてもよい。クロスウェブに変化する混合隔壁の開口パターンを選択することにより、媒体形成中に混合をクロスウェブに変化させ得ることは理解されるであろう。本発明の機械及び混合隔壁が、この変化及び制御を容易且つ効率的に提供することは理解されるであろう。勾配媒体が、混合隔壁に対する1回のパス又は適用で形成され得ることは理解されるであろう。識別可能な別個の界面を持たず、しかし制御可能な化学的又は物理的特性は有する勾配材料、例えば繊維媒体が、本発明の装置及び方法を用いて形成され得ることは理解されるであろう。例えば変化させ得る繊維サイズの濃度又は比率が、特定の勾配媒体全体にわたる細孔密度の増加又は減少をもたらすことは理解されるであろう。このように形成された繊維媒体は、有利には多種多様な用途に用いられ得る。
【0091】
一実施形態において、混合隔壁は不織ウェブの作製装置に用いられ、ここで装置は、繊維を含む第1の流体フローストリームと、同様に繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源を含む。混合隔壁は、1つ又は複数の供給源の下流、且つ第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされる。混合隔壁は、2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を画定する。装置はまた、1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も含む。
【0092】
別の実施形態において、混合隔壁は、繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、同様に繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源とを含む装置に含まれる。混合隔壁は第1及び第2の供給源より下流にあり、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間に位置決めされ、及び第1のフローストリームと第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を混合隔壁に画定する。装置はまた、第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域も含む。
【0093】
さらに別の実施形態において、不織ウェブの作製装置は、繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、供給源より下流にある混合隔壁であって、混合隔壁における1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、供給源より下流に位置し、且つフローストリームを受け入れ、フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域とを含む。
【0094】
ここで、さらなる具体的な実施形態を記載する。
【0095】
c.2つのフローストリームを含む実施形態(図1)
先に考察したとおり、図1は、2つの供給源102、106と混合隔壁110とを備える改良された傾斜型製紙装置又は機械100に沿った概略断面図を示す。異なる装置の実施形態を図2に関連して考察し、図2は、1つの供給源を備える改良された傾斜型製紙機械200の概略図である。
【0096】
供給源102、106は、ヘッドボックスとして構成することができる。ヘッドボックスは、幅にわたる実質的に一様なファーニッシュフローを送り込むように構成された機器である。
【0097】
混合隔壁は、機械の排水部全体に及び、且つ機械のサイドレールに連結するように設計することができる。混合隔壁は受入領域の全幅にわたり延在することができる。
【0098】
図1の傾斜型製紙機械は、供給源102、106から離れるほうにフローストリーム104、108を搬送する2本の送液管115、116を含む。図1は、上下に位置決めされた2個の供給源を示す。しかしながら、装置100は1、2、3個又はそれより多く積み重ねられた供給源、他の供給源に送液する供給源、混合隔壁の遠位端でマシン方向にずらして配置された供給源、及び混合隔壁の遠位端でクロスウェブ方向にずらして配置された供給源を含むことができる。単一の供給源構成の場合、供給源は、2つのフローストリームを提供するためファーニッシュを分離し得る内部隔壁を含み得る。
【0099】
送液管115、116には、フローストリームの動きを促進するようにいくらか角度が付与され得る。図1の実施形態では、送液管115、116には下向きの角度が付与されている。混合隔壁110は、上側送液管116の遠位端に存在する。混合隔壁には、生産される勾配媒体に応じて下向き又は上向きの角度が付与され得る。混合隔壁110は開口112を画定し、開口112については本明細書でさらに説明する。混合隔壁は、供給源に最も近い近位端122と、供給源から遠く離れた遠位端124とを有する。
【0100】
図1の実施形態では、開口112は、ワイヤガイド118の上側にある混合隔壁110の一部分に画定される。しかしながら、他の実施形態において、混合隔壁は、2つのフローストリーム115と116との間など、装置のより上流部分に開口を画定する。
【0101】
下側送液管115の遠位端において、第1のフローストリーム104は、当該技術分野において公知のローラ(図示せず)に巻き取られるワイヤガイド118上に移送される。ワイヤガイドにおいて、第1のフローストリーム104のファーニッシュは受入領域114に入る。第2のフローストリーム108のファーニッシュの一部は、開口112の寸法によって可能な限りに従い開口112を通じて受入領域114に下りる。結果として、第2のフローストリーム108は受入領域114内で第1のフローストリーム104と混合され、混和される。
【0102】
混合隔壁開口112の寸法及び位置は、第1のフローストリームと第2のフローストリームとの混合のタイミング及びレベルに大きい影響を有し得る。一実施形態において、第2のフローストリーム108の第1の部分が第1の開口を通過し、第2のフローストリームの第2の部分が第2の開口を通過し、及び第2のフローストリームの第3の部分が第3の開口を通過し、及び以下同様に通過して、第2のフローストリームのあらゆる残り部分は混合隔壁の遠位端124を越えて受入領域114に至る。
【0103】
十分に希薄な第1及び第2のファーニッシュは、受入領域の混合部分内での2つのフローストリームからの繊維の混合を促進する。ファーニッシュ中では、繊維は水などの流体及び添加剤中に分散している。一実施形態において、ファーニッシュの一方又は双方が水性ファーニッシュである。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量パーセント(wt.%)は、約0.01〜1wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量%は、約0.01〜0.1wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、ファーニッシュ中の繊維の重量%は、約0.03〜0.09wt.%の範囲であり得る。ある実施形態では、水溶液中の繊維の重量%は、0.02〜0.05wt.%の範囲であり得る。一実施形態において、フローストリームの少なくとも一方は、1リットル当たり約20グラム未満の繊維の繊維濃度を有するファーニッシュである。
【0104】
水、又は他の溶媒及び添加剤は、受入領域114の下方にある排水ボックス130に捕集される。水及び溶媒132の捕集は、過剰な流体を受入領域から抜き出すため、重力、真空抽出又は他の乾燥手段により補助されてもよい。繊維のさらなる互いの混合及び混和が、排水ボックス130に加えられる真空などの流体捕集手段に応じて起こり得る。例えば、受入領域からの流体の真空抽出レベルをより強くすることにより、両面性とも称される、媒体が両側面間に違いを有する可能性がより高くなり得る。また、排水ボックスを選択的に閉鎖又は遮断することによるなどして水の除去程度を低減した範囲では、2つのフローストリームの互いの混合が高まる結果となり得る。さらには、第1のフローストリーム104のファーニッシュを混合隔壁の開口112に上向きに通過させる背圧を生成し、第2のフローストリーム108とより高度に混合することができる。
【0105】
改良された傾斜型製紙機械100は上部囲壁152を備えても、又は開放された構成(図示せず)であってもよい。
【0106】
供給源102、106及び送液管115、116は全て、極めて希薄の繊維スラリーを繊維媒体に形成するように設計された機械であるDeltaformer(商標)機(Glens Falls Interweb,Inc.(South Glens Falls、NY)から入手可能)などのハイドロフォーマ機械154の一部であってもよい。
【0107】
d.単一供給源とふるい状混合隔壁とによる方法(図2)
図2は、連続勾配媒体を形成するための装置200の別の実施形態を示し、ここではワンステップウェットレイド法においてファーニッシュの単一供給源が混合隔壁と組み合わせて使用される。供給源又はヘッドボックス202は、少なくとも2つの異なる繊維、例えば異なる繊維サイズ又は異なる化学組成の繊維を含むファーニッシュの第1のフローストリーム204を提供する。第1のフローストリームは送液管211を介して混合隔壁210に提供される。混合隔壁は開口212を含む。一実施形態において、混合隔壁は開口を含まない開始部分216と、開口212を備える第2の部分220とを有する。混合隔壁は、供給源に最も近い近位端222と、供給源から最も遠い遠位端224とを有する。混合隔壁210における開口212のサイズは、ファーニッシュ中の異なる繊維サイズを選択、すなわち篩別するように構成される。第1のフローストリームの一部は混合隔壁の開口を通過し、ワイヤガイド214上に堆積する。排水ボックス230が重力又は他の抽出手段により水及び他の溶媒を捕集し、又は抽出する。第1のフローストリーム204の篩別されなかった部分232は、プロセスの終わり234に、しかし後処理の前に、勾配媒体上に堆積する。
【0108】
図2の装置は上部囲壁234を含んでも、又は開放された構成を含んでもよい。図2の装置及び方法の実施形態は、異なる繊維タイプ、混合隔壁の実施形態、ファーニッシュ濃度に関する本明細書に記載される変形例のいずれとも、共に使用することができる。
【0109】
e.混合隔壁構成
混合隔壁及びその開口は、いかなる幾何形状を有してもよい。一例はスロット付き混合隔壁である。一実施形態において、混合隔壁は、クロスウェブ方向又はクロスフロー方向のスロットである矩形開口を画定する。これらの矩形スロットは、一実施形態においてクロスウェブ幅全体にわたり延在することができる。別の実施形態において、混合隔壁は、下流方向又はマシン方向のスロットを画定する。孔又はスロットは幅が変化するものであってもよい。例えば、スロットはダウンウェブ方向に幅が増加してもよく、又はスロットはクロスウェブ方向に幅が増加してもよい。スロットは、ダウンウェブ方向に間隔を変化させてもよい。他の実施形態において、スロットはクロスウェブ方向にウェブの片側から他方の側まで続く。他の実施形態において、スロットは、ウェブの一部のみにわたり片側から他方の側まで続く。他の実施形態において、スロットはダウンウェブ方向に、混合隔壁の近位端から遠位端まで続く。例えば、スロットは、ファーニッシュが供給源を離れるに従いたどるフローの経路と平行であってもよい。混合隔壁にはスロット設計又は配列の組み合わせが使用されてもよい。
【0110】
他の実施形態において、混合隔壁はスロットではない開放された範囲、例えばクロスウェブ方向に片側から他方の側まで延在しない開放された範囲を画定する。かかる実施形態において、混合隔壁の開放された範囲は、別個の穴又は穿孔である。他の実施形態において、開口は、混合隔壁にある直径数インチの大きい丸い穴である。実施形態において、穴は円形、楕円形、直線形、三角形、又は他の何らかの形状である。詳細な一実施形態において、開口は、複数の別個の円形開口である。いくつかの実施形態において、開口は混合隔壁にわたって規則的に離間される。他の実施形態において、開口は、混合隔壁にわたって不規則又はランダムに離間される。
【0111】
混合隔壁に開放された範囲を組み込む目的は、例えば、あるファーニッシュリザーバから繊維を供給し、第2のファーニッシュリザーバからの繊維と制御された比率で混合することである。ファーニッシュの混合比率は、混合隔壁の長さに沿った開放された範囲の大きさ及び位置を変化させることにより制御される。例えば、開放された範囲が大きいほどファーニッシュの混合が増し、及び逆も同様である。混合隔壁の長さに沿ったこれらの開放された範囲の位置によって、勾配繊維マットを形成する間のファーニッシュストリームの混合の深さが決定される。
【0112】
混合隔壁内における開放された範囲の分布、形状、及びサイズに関して、本発明の多くの変形例があり得る。それらの変形例のいくつかは、例えば、1)面積が漸進的に増加/減少する矩形スロット、2)一定の面積の矩形スロット、3)様々な形状及び位置の様々な数のスロット、4)混合隔壁基材の開始部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、5)混合隔壁基材の最終部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、6)中間部のみに限定されたスロットを備える多孔質の混合隔壁、又は7)スロット又は開放された範囲の任意の他の組み合わせである。混合隔壁は長さが変化するものであってもよい。
【0113】
混合隔壁の2つの特定の可変要素は、混合隔壁内の開放された範囲の大きさ及び開放された範囲の位置である。これらの可変要素により、繊維マットを作り出す混合ファーニッシュの堆積が制御される。混合量は、混合隔壁の寸法に対する混合隔壁の開放された範囲により制御される。異なるファーニッシュ組成の混合が起こる領域は、混合隔壁装置における1つ若しくは複数の開口又は1つ若しくは複数のスロットの位置により決定される。開口のサイズは、受入領域内での繊維の混合量を決定する。開口の位置、すなわち混合隔壁の遠位端寄りか、又は近位端寄りかにより、勾配媒体の繊維マット内の領域におけるファーニッシュの混合の深さが決定される。スロット又は開口のパターンは、混合隔壁の基材材料、例えば金属又はプラスチックの単一部品に形成されてもよい。或いは、スロット又は開口のパターンは、異なる幾何形状材料の多数の部品により形成されてもよい。これらの部品は金属又はプラスチックから製造され、混合隔壁の基材を形成し得る。概して、混合隔壁装置における開放された範囲の量は、ファーニッシュリザーバにより供給される繊維間の混合量に正比例する。
【0114】
別の実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のダウンウェブ方向に延在する1個又は複数の開口により画定される1個又は複数の開口を含む。1個又は複数の開口は、混合隔壁部品の第1の下方ウェブ縁端から混合隔壁装置の上方ウェブ縁端まで延在することができる。材料部品間にある開口スロットのこの位置は、生産される勾配媒体の求められる最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてダウンウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1個又は複数の開口は、異なる幅、異なる長さ、異なる向き、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の開口を含み得る。詳細な一実施形態において、混合隔壁は、第1の寸法を有する少なくとも第1の開口と、第2の異なる寸法を有する少なくとも第2の開口とを画定する。
【0115】
一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の開口を含む。混合隔壁の部品は装置の各側面まで延在する。1個又は複数の開口は、混合隔壁部品の第1のクロスウェブ縁端から混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する。混合隔壁部品の部品間にある開口のこの位置は、生産される勾配媒体の求められる最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてクロスウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1個又は複数の開口は、異なる幅、異なる長さ、異なる向き、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の開口を含み得る。
【0116】
一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁のダウンウェブ方向に延在する1つ又は複数の穴又は穿孔により画定される1個又は複数の開口を含む。穴又は穿孔は、微視的サイズから巨視的サイズまであり得る。1つ又は複数の穴又は穿孔は、混合隔壁の第1の下方ウェブ縁端から混合隔壁の第2の下方ウェブ縁端まで延在する。穴又は穿孔のこの位置及び頻度は、生産される勾配媒体の最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてダウンウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1つ又は複数の穴又は穿孔は、異なるサイズ、異なる位置、異なる頻度、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の穴又は穿孔を含む。
【0117】
混合隔壁は、混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1つ又は複数の穴又は穿孔により画定される1個又は複数の開口を含む。穴又は穿孔のこの位置及び頻度は、生産される勾配媒体の最終的な化学的及び物理的パラメータに応じてクロスウェブにいくつか反復して続き得る。従って、1つ又は複数の穴又は穿孔は、異なるサイズ、異なる位置、異なる頻度、異なる間隔、又はそれらの組み合わせを含む複数の穴又は穿孔を含む。
【0118】
一実施形態において、混合隔壁のマシン方向の寸法は少なくとも約29.972cm(11.8インチ)且つ多くとも約149.86cm(59インチ)であり、一方、別の実施形態においてそれは少なくとも約70.104cm(27.6インチ)且つ多くとも約119.38cm(47インチ)である。
【0119】
詳細な一実施形態において、混合隔壁は少なくとも3個且つ多くとも8個のスロットを画定し、ここで各スロットは、独立して約1〜20cmの幅を有する。
【0120】
別の実施形態において、混合隔壁は、着脱可能な矩形部分間に画定された矩形開口を画定する。別の特定の実施形態において、混合隔壁は、5個以上の着脱可能な矩形部品により間に画定された5個の矩形開口を画定し、ここで部品の幅は各々約1.5cm〜15cm(0.6インチ〜5.9インチ)及び開口の幅は各々約0.5cm〜10cm(0.2インチ〜3.9インチ)である。
【0121】
一実施形態において、混合隔壁の1個又は複数の開口は、混合隔壁の総面積の少なくとも5%且つ多くとも70%、又は混合隔壁の総面積の少なくとも10%且つ多くとも30%を占める。
【0122】
媒体にx勾配を完成する混合隔壁の一実施形態において、混合隔壁は、混合隔壁を2つの半体に分割するマシン方向の中心軸を有し、一方の半体は他方の半体と同じではない。いくつかの実施形態において、一方の半体には開口がなく、他方の半体は1個又は複数の開口を画定する。x勾配を完成する別の混合隔壁において、混合隔壁は第1の外縁端と第2の外縁端とを有し、ここで第1及び第2の外縁端はマシン方向と平行であり、混合隔壁は、第1の外縁端に最も近いマシン方向幅が第2の外縁端に最も近いマシン方向幅より小さくなるようにマシン方向幅が変化する第1の開口を画定する。x勾配を完成する実施形態の別の例において、混合隔壁は、開口を含まない第1の縁端部分と、開口を含まない第2の縁端部分とを有する。第1及び第2の縁端部分は、各々、下流側クロスウェブ縁端から上流側クロスウェブ縁端まで延在する。混合隔壁は、第1の縁端部分と第2の縁端部分との間に中心部分をさらに含み、中心部分に1個又は複数の開口が画定される。
【0123】
f.図3−図8に示される混合隔壁の例
混合隔壁の開口の様々な構成が図3−図8に示され、図3−図8は混合隔壁の上面図である。図3−図8の各混合隔壁は異なる構成の開口を有する。各混合隔壁は、側縁端と第1の終縁端と第2の終縁端とを有する。混合隔壁の側縁端は、機械の左側壁及び右側壁(図示せず)に取り付け可能である。図3−図8において、矢印305はダウンウェブ方向を示し、一方、矢印307はクロスウェブ方向を示す。図3は、クロスウェブ方向に離間された実質的に等しい矩形範囲の7個のクロスウェブスロット型開口302を有する混合隔壁300を示す。3個のスロット302が互いに均等に離間され、及び混合隔壁の異なる部分において、4個のスロット302が互いに均等に離間されている。混合隔壁300は、第1の縁端に隣接するオフセット部分304を含み、ここには開口は存在しない。
【0124】
図4は、6つの異なるサイズを有する8個の異なるクロスウェブ矩形開口310を有する混合隔壁308を示す。図5は、各々が他と比べて異なる面積を有する4個のダウンウェブ矩形開口314を有する混合隔壁312を示す。開口のサイズは、混合隔壁312をクロスウェブ方向にかけて移るに従い増加する。
【0125】
図3−図5に示される混合隔壁300、308及び312は、矩形開口を提供するように離間された個別の矩形部品から組み立てることができる。
【0126】
図6は、円形開口318を有する混合隔壁316を示す。混合隔壁316には3つの異なるサイズの円形開口が存在し、ここで開口のサイズはダウンウェブ方向に増加する。図7は、クロスウェブ方向により長く、且つ混合隔壁の全幅には延在しない矩形開口322を有する混合隔壁320を示す。矩形開口のサイズはダウンウェブ方向に増加する。図8は、ダウンウェブ方向に長く、且つダウンウェブ方向に拡がる4つの等しい楔型開口328を有する混合隔壁326を示す。図6−図8は、開口が提供された基材材料の単一部品から形成され得る混合隔壁316、320及び326を示す。
【0127】
各隔壁構成は、2つのフローストリームの実施形態において2つのフローストリーム間に起こる混合に異なる効果を有する。いくつかの混合隔壁の例では、開口のサイズ又は形状の変化はダウンウェブ方向に現れる。開口が混合隔壁の近位端、すなわち上流端に位置決めされると、開口によりファーニッシュをウェブの下部の方で混合することが可能となる。混合隔壁の遠位端すなわち下流端にある開口は、ウェブの上部により近いところでのファーニッシュの混合をもたらす。開口のサイズ又は面積により、ウェブの深さの範囲内におけるファーニッシュの混合比率が制御される。例えば、開口が小さいほど2つのファーニッシュの混合は減り、開口が大きいほど2つのファーニッシュの混合は増す。
【0128】
図3−図8に示される混合隔壁は、ウェブの厚さ方向すなわちz方向の勾配を提供するように構成される。媒体又はウェブにおいて、第1の表面及び第2の表面は、0.2〜20mm又は0.5〜20mmの範囲の媒体の厚さを画定し、領域の部分は0.1mmより大きい。
【0129】
図5の混合隔壁は、同様にウェブのクロスウェブ方向に勾配を提供するように構成された一例である。様々な実施形態において、同じ混合隔壁に対し異なる組み合わせの開口形状、例えば矩形又は円形が使用され得る。
【0130】
g.媒体にX勾配を生じさせる混合隔壁の例
図9は、媒体にX方向の勾配を完成する混合隔壁2100の等角図であり、一方、図10は混合隔壁2100の上面図であり、図11は側面図である。混合隔壁2100は、媒体の厚さにおいても、及び媒体のX方向すなわちクロスマシン方向にわたっても勾配を作り出す。厚さにおける勾配は、クロスウェブ寸法の中心領域に現れる。開放された範囲2102が混合隔壁2100により画定される。矩形の開放された範囲2102は、クロスウェブ方向における混合隔壁の中心部に存在し、混合隔壁のマシン方向に沿ってずらして配置されている。
【0131】
混合隔壁2100を2つのファーニッシュ供給源と共に使用して不織ウェブを形成するとき、上部供給源のファーニッシュの繊維成分は、不織ウェブにおける媒体の中心部にのみ存在し得る。また、中心部では、上部供給源の成分がウェブの厚さにわたって組成勾配を形成し、ここで上部ファーニッシュの繊維のより多くがウェブの上面に存在し、この繊維の濃度は徐々に低下し、従ってウェブの反対側の底面に存在するその繊維はより少ない。
【0132】
上部供給源にのみ青色トレーサー繊維を使用し、混合隔壁2100を使用して不織ウェブを形成した。青色繊維は得られた不織ウェブの中心の一部に見られた。また、青色繊維はウェブの上側及び下側の双方にも見られたが、下側より上側により集中していた。
【0133】
混合隔壁2100は、金属の単一部品を機械加工することによるか、又はプラスチックの単一部品からなど多くの異なる方法で形成することができる。図9−図23の実施形態において、混合隔壁はいくつかの異なる部品を使用して形成される。図10で最も良く分かるとおり、2つの側部矩形部品2104及び2106が、混合隔壁の中心においてそれらの間に開放された矩形部があるように位置決めされる。側部矩形部品2104、2106は中実でいかなる開口も含まないため、混合隔壁2100の側部は中実でいかなる開口も含まない。第1の側部矩形部品2104は第1のマシン方向縁端2108から、同様にマシン方向である内縁端2109まで延在する。第1の側部矩形部品2104はまた、下流クロスウェブ終縁端2112から上流クロスウェブ終縁端2114まで延在する。第2の側部矩形部品2106も同様の形状であり、内縁端2111まで延在する。同様の矩形部品2116が、開口2102を画定する間隔を置いて側部部品2104、2106上に配置される。
【0134】
混合隔壁2100はまた、図11において最も良く分かる垂直突出部2118も有する。垂直突出部2118は、2つの側部部品2104、2106の内縁端2109、2111から下方に延在する。混合隔壁の垂直突出部があるため、上部供給源からのファーニッシュはより直線的な経路で受入領域に向かって送り込まれ、上部ファーニッシュの着地点は、垂直部分2118がない場合と比べてより予測性が高くなる。一実施形態において、混合隔壁は混合隔壁2100と同様であるが、垂直隔壁を有しない。本明細書に記載される他の混合隔壁構成が、下方に受入領域に向かって延在する垂直部分を有することもまた可能である。垂直部分はまた、垂直面と角度をなして延在してもよい。
【0135】
図9の混合隔壁2100において、開放された範囲2102は、混合隔壁の幅の中心に画定されている矩形の開放された範囲である。図9と同様の他の実施形態においては、x方向により緩やかな勾配が形成され、ここでは開放された範囲の部分がx方向により緩やかに変化する。例えば、マシン方向縁端2108、2110に向かって先細りになっている単一の又は一連のダイヤモンド型開口。混合隔壁構成の他の多くの例が、得られる媒体においてより緩やかなx勾配を形成する。
【0136】
図12は、媒体においてX方向の勾配を完成し、且つ不織ウェブの厚さにおける勾配も完成する扇形混合隔壁2400の上面図である。混合隔壁2400は、混合隔壁の片側に存在する開口2402を画定する。混合隔壁2400は、受入範囲の他方の半分を遮断して、上部ファーニッシュを受入領域のその部分に堆積させない側部矩形部品2406を含む。混合隔壁2400はまた、クロスウェブ方向に延在するいくつかのより小さい矩形部品2404も含む。部品2404は扇形の配置で位置決めされ、従って画定される開口2402は楔型である。結果として、上部供給源からのファーニッシュは、中心の方と比べて不織ウェブの外縁端の近傍により多く堆積する。
【0137】
h.ウェットレイド法及び機器に関するさらなる詳細
ウェットレイド加工の一実施形態において、勾配媒体は、繊維材料と水性媒体中における必要に応じた他の成分との分散体を含む水性ファーニッシュから作製される。分散体の水性液体は概して水であるが、pH調整材料、界面活性剤、脱泡剤、難燃剤、粘度調整剤、媒体処理剤、着色剤などの様々な他の材料を含んでもよい。水性液体は、通常、スクリーン又はその他の分散した固体を保持して液体を通過させる有孔支持体上に分散体を誘導することによって分散体から排水され、湿潤媒体組成物がもたらされる。湿潤組成物は、支持体上に形成されると、通常、真空又は他の圧力による力によってさらに脱水され、残りの液体を蒸発させることによってさらに乾燥される。液体を取り除く選択肢としては、重力排水機器、1つ又は複数の真空機器、1つ又は複数のテーブルロール、真空フォイル、真空ロール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。装置は、受入領域の近位及び下流に乾燥部を含むことができる。乾燥部の選択肢としては、乾燥缶部、1つ又は複数の赤外線ヒータ、1つ又は複数の紫外線ヒータ、スルーエアドライヤ、搬送ワイヤ、コンベヤ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0138】
液体の除去後、適切な場合には、熱可塑性繊維、樹脂又は形成された材料の他の部分の何らかの部分を溶融させることによりサーマルボンディングが行われ得る。樹脂硬化工程を含め、様々な実施形態において他の後処理手順もまた可能である。プレス成形、熱処理及び添加剤処理が、ワイヤからの捕集前に行われ得る後処理の例である。ワイヤから捕集した後、繊維マットの乾燥及びカレンダリングなどのさらなる処理が仕上げプロセスにおいて実行されてもよい。
【0139】
本明細書に記載される混合隔壁を含むように改良することのできる一つの具体的な機械はDeltaformer(商標)機(Glens Falls Interweb,Inc.(South Glens Falls、NY)から入手可能)であり、これは、極めて希薄の繊維スラリーを繊維媒体に形成するように設計された機械である。かかる機械が有用であるのは、例えばウェットレイド法に繊維長が比較的長い無機繊維又は有機繊維を使用する場合であり、なぜなら、多量の水を使用して繊維を分散させて、それらの繊維がファーニッシュ中で互いに絡まないようにしなければならないためである。ウェットレイド法における長繊維とは、典型的には、長さが4mmより長い、5〜10mm及びそれ以上の範囲であり得る繊維を意味する。ナイロン繊維、ポリエステル繊維(Dacron(登録商標))、再生セルロース(レーヨン)繊維、アクリル繊維(Orlon(登録商標))、綿繊維、ポリオレフィン繊維(すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらの共重合体など)、ガラス繊維、及びアバカ(マニラ麻)繊維が、有利にはかかる改良された傾斜型製紙機械を使用して繊維媒体に形成される繊維の例である。
【0140】
Deltaformer(商標)機は、ワイヤ部が傾斜して設置され、スラリーがヘッドボックスを出ると、それを重力に逆らって上方に押し流す点で従来のフォードリニア型抄紙機とは異なる。傾斜により希薄溶液のフローパターンが安定し、希薄溶液の排水の制御が促進される。複数の画室を備えた真空フォーミングボックスが排水の制御を補助する。これらの改良により、希薄スラリーを、従来のフォードリニア設計と比較してウェブにわたる特性の一様性が向上した繊維媒体に形成する手段が提供される。図1においては、括弧154の下にある構成要素が、Deltaformer(商標)機の一部となる構成要素である。
【0141】
本明細書に記載されるとおりの勾配ウェブを作製するための装置のいくつかの実施形態には、4つの主要部:ウェット部(図1及び図2に示される)、プレス部、ドライヤ部及びカレンダリング部がある。
【0142】
ウェット部の一実施形態においては、繊維と流体との混合物が、別個のファーニッシュ作製プロセスの後にファーニッシュとして提供される。ファーニッシュは、媒体形成プロセスの次の工程に送る前に添加剤と混合することができる。別の実施形態においては、乾燥した繊維及び流体をウェット部の一部であり得るリファイナに送り込むことにより、乾燥した繊維を使用してファーニッシュを作製することができる。リファイナにおいて、繊維は回転しているリファイナディスク上でバー間において高圧パルスを受ける。これにより乾燥した繊維が解され、さらにそれらの繊維がリファイナに提供される水などの流体中に分散される。この段階で洗浄及び脱気も行われ得る。
【0143】
ファーニッシュの作製が完了した後、ヘッドボックスなどの、フローストリームの供給源である構造にファーニッシュを入れることができる。供給源構造はファーニッシュを幅にわたり分散させて、それを動いているワイヤメッシュコンベヤ上に開口からジェットを用いて負荷する。本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、装置には2つの供給源又は2つのヘッドボックスが含まれる。勾配媒体の提供には異なるヘッドボックス構成が有用である。ある構成では、上部ヘッドボックスと下部ヘッドボックスとが互いの真上・真下に重ねられる。他の構成では、上部ヘッドボックスと下部ヘッドボックスとがいくらかずらして配置される。上部ヘッドボックスがさらにマシン方向下方にあり、一方下部ヘッドボックスが上流にあってもよい。
【0144】
一実施形態において、ジェットは水又は空気などの、ファーニッシュを押し進め、動かし、又は推進する流体である。ジェット中で流動することによって一部の繊維に整列が生じ、これは、ジェットとワイヤメッシュコンベヤとの間の速度差を調整することによって部分的に制御することができる。ワイヤは前進駆動ロール、又はブレストロールの周りに、ヘッドボックスの下側から、ファーニッシュが加えられるヘッドボックスを越えて、及び一般にフォーミングボードと称されるものの上へと回転する。
【0145】
フォーミングボードは本発明の混合隔壁と共に機能する。ファーニッシュが平らに均されるとともに、水の除去に備えて繊維の整列が調整され得る。プロセスラインのさらに下方で、排水ボックス(排水部とも称される)が真空で又は真空なしに、媒体から液体を除去する。ワイヤメッシュコンベヤの終端近くで、クーチロールと称されることの多い別のロールが、ライン中のそれより前に存在する真空より高い真空力である真空によって残りの液体を除去する。
【0146】
VII.勾配媒体についてのフィルタ用途の例
本明細書に記載される媒体は、界面又は接着剤層を含むことなく、ある領域にわたり特性の勾配を有するように作製することができ、完全に作製された後の媒体は、他の従来のフィルタ構造と共に組み立ててフィルタ複合材層又はフィルタユニットを作製することができる。媒体は、膜、セルロース系媒体、ガラス媒体、合成媒体、スクリム又はエキスパンドメタル支持体であり得る基層と共に組み立てることができる。勾配を有する媒体は、従来の媒体などの他の多くのタイプの媒体と併せて使用して、フィルタ性能又は寿命を向上させることができる。
【0147】
孔あき構造を使用して、流体の影響下、媒体を通過する圧力下に媒体を支持することができる。本発明のフィルタ構造はまた、孔あき構造の追加の層、高透過率の機械的に安定なスクリムなどのスクリム、及び別個の負荷層などの追加のろ過層と組み合わせることもできる。一実施形態において、かかる多領域媒体の組み合わせは、一般に非水性液体のろ過に用いられるフィルタカートリッジに格納される。
【0148】
VIII.媒体における勾配度の評価
本発明に記載される方法により生産された媒体における勾配度を評価する一つの方法では、媒体が異なる切片に分けられ、それらの切片が走査型電子顕微鏡写真(SEM)を使用して比較される。基本的な概念は、勾配構造を有する単一層シートを取り、その厚さを、元の勾配構造の見かけを反映する異なる特性を有し得る複数のシートに分けることである。得られる媒体は、勾配媒体内の界面又は境界の存在又は不在について調べることができる。調査対象となる別の特徴は、例えば粗い多孔性から微細な多孔性に至る、媒体特徴の変化の平滑度である。必須ではないが、ファーニッシュ供給源の一方に着色したトレース繊維を加えることが可能であり、次に得られた媒体においてそれらの着色繊維の分布を調べることができる。例えば、着色繊維は、上部ヘッドボックスから吐出されるファーニッシュに加えられてもよい。
【0149】
勾配媒体が作られた後、しかし媒体がオーブンで硬化される前、切片化するための試料が抜き取られる。クライオミクロトーム分析を使用して勾配媒体の構造を分析することができる。エチレングリコールなどの充填材料を使用して、媒体が凍結する前にそれを飽和させる。薄い凍結切片を繊維マットからスライスし、繊維サイズ又は多孔性などの勾配構造について顕微鏡で分析する。次に各切片の特性を比較することができるように、各切片のSEMを撮る。切片化したもののかかるSEMを図27−図28に見ることができ、これらについてはここでさらに説明する。
【0150】
また、媒体は、Liberty Engineering Company(Roscoe、IL)から入手可能なBeloit Sheet Splitterを使用して切片化することも可能である。Beloit Sheet Splitterは、例えば紙及び厚紙にける組成及び構造の横方向分布の分析用に特別に設計された精密機器である。湿潤試料が、ステンレス鋼スプリットロールのニップに導入される。これらのロールは32°F(0℃)未満の温度点まで冷却される。試料は内側からニップが外に向かう側に裂離される。裂離の内側面は、スプリットロールによって生じる前進しているアイスフロントによって凍結されていない領域に現れる。裂離された切片がロールから取り外される。次に2つの半体が各々さらに裂離され、最終的に4つの媒体切片のセットとなる。Beloit Sheet Splitterを使用するためには、試料は湿潤している必要がある。
【0151】
裂離された切片は、効率試験機又は色度計を使用して分析することができる。また、SEMは各切片について作成することができ、従って種々の切片の繊維構成及び媒体特徴の違いを観察することができる。色度計は、着色したトレース繊維を生産に使用した場合にのみ使用することができる。
【0152】
着色繊維は一方の供給源にのみ添加されるため、当該の切片中に存在する着色繊維の量によってシートにおける濃淡レベルが示される。切片を色度計で試験して繊維の混合量を定量化してもよい。また、効率試験機、例えば分別効率試験機を使用して媒体の切片を分析することも可能である。
【0153】
媒体における勾配の分析に使用することのできる別の技法は、フーリエ赤外フーリエ変換赤外(Fourier Infrared Fourier Transfer Infrared(FTIR))分光分析である。ある繊維が上部ヘッドボックスにのみ使用される場合、当該繊維の固有のFTIRスペクトルを使用して、媒体がその両側で当該の特定の繊維の濃度に違いを有することを示すことができる。2つの同様の又は異なる繊維が最部及び最下部ヘッドボックスにのみ使用される場合、それらの繊維の固有のFTIRスペクトルを使用して、媒体がその両側で繊維の組成又は濃度のいずれかに違いを有することを示すことができる。
【0154】
用いることのできるさらに別の技法は、エネルギー分散X線分光法(EDS)であり、これは試料の元素分析又は化学的特性決定に使用される分析技法である。分光法のタイプとしては、電磁放射と物質との間の相互作用による試料の検査に頼るものであり、荷電粒子の衝突に応答してその物質により放射されるX線が分析される。その特性決定能力は、主として、各元素が、元素の原子構造に特徴的なX線の互いの一意的な識別を可能にする固有の原子構造を有するという基本原理によるものである。トレース元素を繊維構造に埋め込み、EDS特性決定で定量化することができる。本願では、領域にわたり繊維の組成に違いがある場合に媒体における勾配が示され得るとともに、その組成の違いはEDSを使用して明らかとなる。
【0155】
ここで、試験方法に関するさらなる詳細、具体な実施例及びそれらの実施例の分析結果について考察する。
【実施例】
【0156】
IX.実施例
ファーニッシュを調合し、少なくとも1つの勾配特性を有する不織ウェブを生成した。表1は、ファーニッシュ調合物の組成に関する情報を示す。表1に掲載したファーニッシュの例には以下の種々の繊維を使用した。ここでは各繊維の略称を括弧書きで提供する。
1.271Pとして知られるポリエステル二成分繊維、繊維長6mm及び2.2デニール、E.I.DuPont Nemours(Wilmington DE)から入手可能(271P)。271Pの平均繊維径は約13ミクロンである。
2.Lauscha Fiber Intl.(Summerville、SC)からのガラス繊維、様々な長さ及び繊維径5ミクロン(B50R)、繊維径1ミクロン(B10F)、繊維径0.8ミクロン(B08F)、及び繊維径0.6ミクロン(B06F)。
3.青色ポリエステル繊維、長さ6mm及び1.5デニール、Minifibers,Inc.(Johnson City、TE)から入手可能(青色PET)。
4.ポリエステル繊維(P145)、Barnet USA(Arcadia、South Carolina)から入手可能。
5.49.5%のポリエチレンテレフタレート、47%のコポリエステル及び2.5%のポリエチレン共重合体からなるポリエステル/コポリエステル混合物で作製された二成分ショートカット繊維(BI−CO)。かかる繊維の一例は、日本国大阪府の帝人ファイバー株式会社から入手可能なTJ04BN SD2.2X5である。
【0157】
これらの実施例では、硫酸を添加してpHを約3.0に調整し、繊維を水性懸濁液中に分散させた。本例の勾配媒体の作製に使用したファーニッシュの水性懸濁液中の繊維含有量は、約0.03%(wt.%)であった。分散した繊維を含有するファーニッシュは、後に使用するためそれぞれのマシンチェスト(貯蔵タンク)に保管した。媒体の製造中、ファーニッシュストリームは、適切な希薄濃度にした後、それぞれのヘッドボックスに送給した。
【0158】
【表1】
【0159】
a.実施例の機械設定
勾配媒体の形成中に調整される機械に関する他の変数としては、パルパーのコンシステンシー、開始混合隔壁の傾斜角度、機械の傾斜角度、混合隔壁延長部の傾斜角度、坪量、機械の速度、ヒール部高さ、ファーニッシュ流量、ヘッドボックス流量、ヘッドボックスのコンシステンシー、及び排水ボックス捕集量が挙げられる。表2は、混合隔壁装置からの勾配媒体の生産に使用される設定についての指針を提供する。得られる勾配媒体は、例えば、カレンダリング、熱又はその他の当該技術分野において周知の方法及び機器により後処理することにより、完成品の勾配繊維マットを提供してもよい。
【0160】
【表2】
【0161】
表2は、本発明に記載される方法に係る不織媒体についての実施例1〜4の作成に使用した機械設定を提供する。実施例1〜4の各々におけるファーニッシュの双方のpHは3.25に調整した。上部ヘッドボックスストック流量及び下部ヘッドボックスストック流量は、ストックファーニッシュがそれぞれ上部及び下部ヘッドボックスに入ったときの、その流量をリットル毎分で示す。上部ヘッドボックス流量及び下部ヘッドボックス流量は、希薄水がそれぞれ上部及び下部ヘッドボックスに入ったときの、その流量をリットル毎分で示す。
【0162】
受入領域から流体を取り除く真空の付与に関連するいくつかの設定が提供される。図1を参照して上記に考察されるとおり、受入領域114は、ワイヤガイド118から排水される水を受け入れる排水ボックス130を含み得る。フラットボックスとも称されるこれらの排水ボックスは、真空を加えるように構成され得る。実施例の生成に使用される装置では、10個の排水ボックス130があり、各々がワイヤガイド下の水平距離約25.4cm(10インチ)から排水を受け入れることが可能である。表2は、水の送給における10個の排水ボックスの各々についての真空設定、並びに実施例1〜4の生産時に最初の6個の排水ボックスの各々に許容されたリットル毎分単位の排水流量を提供する。表2はまた、最初の6個の排水ボックスの各々について開放された排水バルブのパーセンテージについての設定も特定する。
【0163】
真空及び排水設定は、不織媒体に形成される勾配に対して大きい影響を有し得る。排水が低速なほど、及び真空がそれほど又は全くかかっていないと、2つのファーニッシュの間の混合は増し得る。排水が高速なほど、及び設定真空度がより高いほど、2つのファーニッシュ間の混合は低下し得る。
【0164】
表2はまた、度数単位による傾斜ワイヤガイド118の角度、並びにフィート毎分単位による傾斜ワイヤガイドの速度である機械の速度も特定する。
【0165】
b.実施例で使用した混合隔壁
実施例1〜4の作製に使用した傾斜型製紙機械は、図13−図15に示されるとおりのスロット設計を備える混合隔壁を有した。混合隔壁の寸法が表3、表4及び表5に示される。各実施例における機械の運転設定は、上記に考察されるとおり表2に示される。
【0166】
図13は、実施例1及び実施例2として上記に記載したファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の9種の異なる構成を示す。これらの混合隔壁は、複数の等しいサイズのスラットを画定するように位置決めされた矩形部品を使用して形成した。図13の9種の混合隔壁構成1600の寸法が、以下の表3に示される。矢印1601はマシン方向を示す。ここで図13を参照すると、各混合隔壁1600は上流端1602と下流端1604とを有し、これらは図13において代表例に印される。図13の各混合隔壁1600は、矩形部品1607間に画定される複数のスロット1606を含む。表3には、インチ及びセンチメートル単位による各スロット1606又は開口の幅、並びにスロット1606の総数を記載する。混合隔壁のいくつかは上流端1602にスロットオフセット部分1608を有し、これは、上流端と第1のスロット1606との間の、いかなる開口も含まない混合隔壁の一部分である。表3はまた、各混合隔壁の無効範囲のパーセンテージも掲載し、ここで無効範囲1610は、下流端1604に隣接した、いかなる開口も含まず中実である混合隔壁の一部である。表3はまた、矩形部品1607の幅も掲載する。
【0167】
【表3】
【0168】
図13に示される混合隔壁の実施形態のいくつかにおいて、構成4及び7のように、混合隔壁はスロットオフセット範囲を有し、且つ無効範囲を有しない。いくつかの構成において、構成2及び5のように、混合隔壁はスロットオフセット範囲を有しないが、無効範囲は有する。いくつかの構成において、構成1及び6のように、混合隔壁は無効範囲もスロットオフセット範囲も有さず、これらの構成では、一様なサイズの矩形部品1607の配置が混合隔壁を構成する。いくつかの構成において、構成3、8及び9のように、混合隔壁は無効範囲及びスロットオフセット範囲の双方を有する。
【0169】
図14は、実施例3のとおりの上記に記載されるファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の13種の異なる構成を示し、ここで媒体は、上部ファーニッシュ供給源にポリエステル二成分繊維と5ミクロンの直径を有するガラス繊維とを含んだ。下部ファーニッシュ供給源は、主として二成分繊維と0.8ミクロンガラス繊維であった。
【0170】
図14に示される各混合隔壁は、複数の等しいサイズのスラットを画定するように位置決めされた矩形部品を使用して形成した。混合隔壁1600の特徴は、図13と同じ参照番号を使用して符号を付している。
【0171】
表4は、図14の13種の混合隔壁構成の寸法を示し、スロットオフセット1608、混合隔壁の上流端1602から最終スロットの終端までの距離、平均スロット幅及び平均部品幅を含む。
【0172】
【表4】
【0173】
図15は、実施例4のとおりの上記に記載されるファーニッシュ組成から媒体を作成するために使用した混合隔壁の6種の異なる構成を示し、ここで青色PET繊維が上部ファーニッシュ供給源に含まれた。
【0174】
図15に示される各混合隔壁は長さが111.76cm(44インチ)であったとともに、スラットを画定するように位置決めされた矩形部品1607を使用して形成したが、スラットはマシン方向1601にサイズが増加する。混合隔壁1600の特徴は、図13と同じ参照番号を使用して符号を付している。
【0175】
表5は、図15の6種の混合隔壁構成の寸法を示し、スロットオフセット1608、混合隔壁の長さ、スロット幅及び部品幅を含む。
【0176】
【表5】
【0177】
効率試験
液体ろ過において、ベータ試験(β試験)は、フィルタの品質及びフィルタ性能を評価する一般的な業界標準である。ベータ試験評価は、標準方法である「精密フィルタエレメントのろ過性能のマルチパス評価方法(Multipass Method for Evaluating Filtration Performance of a Fine Filter Element)」(ISO 16899:1999年)から導かれる。ベータ試験は、下流の流体清浄度を上流の流体清浄度と比較するベータ比を提供する。フィルタを試験するため、粒子カウンタにより、既知の容積の流体についての上流粒子のサイズ及び量、並びに既知の容積の流体についてのフィルタの下流にある粒子のサイズ及び量が正確に計測される。規定の粒径における上流の粒子カウントを下流の粒子カウントで除した比が、ベータ比である。このときの捕捉効率は((β−1)/β×100であるため、フィルタの効率はベータ比から直接計算することができる。この式を用いると、ベータ比が2であれば、それは50%の%効率を意味することが分かる。
【0178】
具体的なベータ比に対応する効率評価の例は以下のとおりである:
【0179】
【表6】
【0180】
ベータ比を使用してフィルタを比較する場合は注意を払わなければならない。ベータ比は、流量、温度又は圧力の変化などの実際の動作条件を考慮しない。さらに、ベータ比はフィルタ粒子状物質の負荷容量の指標とはならない。ベータ比はまた、時間の経過に伴う安定性又は性能についても明らかにしない。
【0181】
上記に記載される実施例1〜4に従い作製した媒体を使用してベータ効率試験を実施した。フィルタ媒体例の上流の流体ストリームに既知の粒子サイズ分布を有する試験粒子を導入した。試験粒子を含有する流体は、フィルタ媒体にかかる圧力が320kPaに達するまでマルチパスでフィルタ媒体を通じて循環させた。試験全体を通じて下流流体及び上流流体の粒子計測を行った。フィルタ媒体を計量して、フィルタエレメントに対する1平方メートル当たりのグラム数による負荷量を決定した。下流流体中の粒子を調べることにより、フィルタ媒体が200のベータ比すなわち99.5%の効率評価を実現することができたミクロン単位による粒径を決定した。決定された粒径は、ミクロン単位によるβ200と称される。
【0182】
β200粒径について別の方法で説明すると、β200粒径は、媒体に対して当該のサイズ又はそれより大きい200個の粒子を負荷したときに、媒体を通り抜ける粒子が1個のみであるような粒径である。しかしながら、本開示では、この用語は特定の意味を有する。本明細書で使用されるとき、この用語は、制御された試験条件下でフィルタに既知の濃度の広範囲にわたる試験粒径を負荷する試験を参照する。下流流体の試験粒子含有量が計測され、各粒径についてβが計算される。この試験においてβ200=5μは、200の比を達成する最小の粒子が5μであることを意味する。
【0183】
実施例1〜4に従い作成した媒体について、図16−図19に示すβ200データを作成した。概して、本発明の媒体の特性を制御する能力はこれらの図に示される。それぞれの図中にデータを示す媒体試料は全て、同じファーニッシュ配合を用いて作成したものであり、実質的に同じ坪量、厚さ及び繊維組成を有するが、しかし混合隔壁構成は様々なものを使用して作製した。効率及び負荷容量に認められる性能の違いは、主として、異なる混合隔壁構成を使用して制御された勾配構造に起因した。これらの試験については、所与の圧力損失、最大320kPaに対して媒体の効率及び容量の双方を制御することができる。実質的に同じファーニッシュ配合、坪量、厚さ及び繊維組成を有する非勾配媒体試料は、同じ試験条件下でいかなる実質的な効率又は負荷容量の違いも示さないものと予想され得る。典型的には、単一のファーニッシュ配合で作成される媒体試料は、同じ性能を有することになる。しかしながら、本明細書に記載される勾配技術を用いると、異なる性能特徴を有するが、しかし全て同じファーニッシュ配合に由来する媒体試料が生成された。これらの実施例における性能の違いは、媒体における繊維組成の勾配を変化させることにより実現されたもので、勾配を変化させること自体は、異なる混合隔壁構成を使用することにより達成された。
【0184】
図16では、β200を制御された形で5ミクロンから15ミクロンまで変化させた。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は100g/m2から180g/m2まで変化した。図17に見られる60lb/3000ft2(97.74g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。この例では、β200は約5ミクロンに制御された(平均粒径5ミクロン以上の粒子200個につき1個のみが媒体を通過する)。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は110g/m2から150g/m2まで変化した。図18は、5ミクロン粒子のβ200による媒体についての追加的なデータを示し、ここでは細孔径の制御性が向上したとともに試料の負荷容量が110g/m2から150g/m2まで変化し、従って、効率を維持しながら負荷量を変化させることができることが示された。図19では、より粗いフィルタ媒体試料を作製し、ここでβ200を制御された形で8から13まで変化させ、その結果負荷容量は120g/m2から200g/m2まで変化した。
【0185】
実施例1
坪量40lb/3000ft2(65.16g/m2)の実施例1用の勾配媒体を、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して作成した。実施例1の勾配媒体試料は、同じファーニッシュ配合を使用して、しかし図13の9種の異なる混合隔壁構成を使用して作成した。混合隔壁の違いがなければ、同じ配合で作られた全ての媒体試料が同じ、又は極めて類似した性能を有するものと予想される。しかしながら、図16に見られるβ200試験の結果は、所与の圧力損失に対して効率及び容量の双方を制御できることを示している。図16では、β200を制御された形で5ミクロンから15ミクロンまで変化させた。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は100g/m2から180g/m2まで変化した。図16は、17個の異なる勾配媒体試料に関する17個のデータ点を含む。実施例1の17個の勾配媒体試料にいくつか対があるのは、混合隔壁構成が同じであることに起因している。
【0186】
実施例2
実施例2用の勾配媒体を実施例1と同じファーニッシュ調合により、ただし60lb/3000ft2(97.74g/m2)の坪量で、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、及び図13の9種の異なる混合隔壁構成を使用して作成した。図17に見られる60lb/3000ft2(97.74g/m2)勾配媒体に対するβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。図17のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。この例では、β200は約5ミクロンに制御された。試料の勾配構造の違いにより、負荷容量は110g/m2から150g/m2まで変化した。ここでもまた、実施例2の勾配媒体試料にいくつか対があるのは、混合隔壁構成が同じであることに起因している。
【0187】
実施例3
図18は、5ミクロン粒子のβ200による媒体についての追加的なデータを示し、ここでは細孔径の制御性が向上したとともに試料の負荷容量が110g/m2から150g/m2まで変化し、効率を維持しながら負荷量を変化させることができることが示された。60lb/3000ft2(97.74g/m2)の坪量で、勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、及び図14の混合隔壁構成を使用して、実施例3用の勾配媒体を作成した。60lb/3000ft2(97.74g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の効率に対して容量を制御できることを示している。
【0188】
図18のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。
【0189】
実施例4
図19では、より粗いフィルタ媒体試料を作製し、ここではβ200を制御された形で8から13まで変化させ、その結果負荷容量は120g/m2から200g/m2まで変化した。勾配媒体を作製するための表1に記載されるとおりの手順を使用して、50lb/3000ft2(81.45g/m2)の実施例4用の勾配媒体も作成した。図13に見られるもののうちの一つなどの混合隔壁設計が用いられる。図19に見られる50lb/3000ft2(81.45g/m2)の勾配媒体についてのβ200試験の結果は、所与の容量に対して効率を制御できることを示している。この例では、10ミクロン粒子のβ200値による媒体試料において勾配の利点を認めることができる。試験結果は、同じβ200効率を維持しながら汚染物質の負荷量を50%も増加させることができる(120g/m2から180g/m2に増加)ことを示している。
【0190】
図19のデータ点により表される試料の各々は、同じ媒体配合及び坪量で作成した。従って、これらの媒体試料は同じ性能を有するものと予想され得る。しかしながら、混合隔壁構造の違い、従って試験した媒体の勾配構造の違いに起因して、異なる性能が観察された。
【0191】
実施例5
表1の実施例5に記載されるファーニッシュを使用して、しかし隔壁については、媒体において異なる勾配程度を達成するため異なる構成を使用して、図20−図23のSEM像(断面)を作成した。混合隔壁における開口がないもの、又は異なるスロット配列及び面積を使用して、繊維タイプの種々のグレード又はブレンドを生じさせた。各SEM像は、実施例5により作成したあるグレードの勾配媒体を示す。媒体の深さ又は厚さに沿った異なる位置における繊維分布の違いを、異なるグレードにおいて明確に見ることができる。
【0192】
図20は、いかなる開口又はスロットも含まない隔壁を使用して生成した。図20には2つの層を見ることができる。一方の層40は効率層と称することができ、第2の層45は容量層と表現することができる。図20では、界面又は境界を検知することが可能である。
【0193】
図21は3個のスロットを備える混合隔壁を使用して生成した。図10の媒体は、個別の界面又は境界がないように混成された繊維組成を有する。
【0194】
図22及び図23では、図13において6又は7の番号が付された、4個又は5個のスロットを有する混合隔壁と同様の混合隔壁を使用した。ここでも、媒体は、認識可能又は検知可能な界面がないように混成された繊維組成を有する。
【0195】
実施例5についてのX線分散分光法データ
図24及び図25は、上部ヘッドボックスからの大径ガラス繊維が媒体領域を通じた勾配を形成することを示す実験及び結果の説明図である。図24は、作成した媒体の1つの断面のSEMを示し、勾配を計測するために使用した、媒体の厚さ全体にわたる領域1〜10の選択を示す。図25は勾配分析の結果を示す。
【0196】
実施例5のファーニッシュを使用して、混合隔壁に異なる構成を用いた多数の勾配媒体を形成した。この単一のファーニッシュ配合を、図26に示される種々の混合隔壁と組み合わせて使用して、媒体の勾配を作製した。勾配の性質及び媒体ごとの勾配の違いを推定するため、大径ガラス繊維のナトリウム含有量を計測した。層のナトリウム含有量を計測した。上部ファーニッシュ中のB50大径ガラス繊維は約10%のナトリウムを含有し、一方、下部ファーニッシュ中のB08ガラス繊維のナトリウム含有量は0.6%未満である。結果として、各領域のナトリウム濃度は、大径ガラス繊維濃度のおおまかな指標となる。ナトリウム濃度を、X線分散分光法(EDS)により従来の機械及び方法を使用して計測した。
【0197】
図24は、図26に示される混合隔壁の1つを使用して形成された実施例5の媒体層2600の断面のSEMであり、10個の領域に分けている。領域は、媒体のワイヤ側2602から媒体のフェルト側2604にかけて順次経過する。領域1は媒体のワイヤ側2602にあり、ここで領域10はフェルト側2604である。これらの領域は、その位置について領域におけるガラス繊維の濃度を分析するため選択した。
【0198】
各領域は約50〜100ミクロンの厚さである。領域10にはガラス繊維を含む大径繊維が多く見られ、一方、領域2にはガラス繊維を含む小径繊維が多く見られる。領域2には、一部の大径ガラス繊維が見える。領域1から領域10に、媒体のフェルト側に向かって移ると、大径ガラス繊維の数が増えていくことが分かる。
【0199】
図25は、図26に示されるとおりの4つの異なる混合隔壁を使用して同じファーニッシュの組み合わせから作製した4つの異なる媒体の分析の結果を示す。媒体の各々は、データにおいて実証されるとおり、異なる大径ガラス繊維勾配を有する。全ての勾配材料において、大径ガラス繊維濃度勾配は下部又はワイヤ側領域から増加し、及び領域が領域1から領域10へと、(すなわち)ワイヤ側からフェルト側へと経るに従い増加する。媒体Aでは、ナトリウム濃度は領域2まで増加せず、及び媒体Dでは、ナトリウム濃度は領域3まで増加しないことに留意されたい。媒体B及び媒体Cでは、ナトリウムは領域1で増加する。このデータはまた、ナトリウム濃度が、媒体Bについては領域4の後に、及び媒体C及び媒体Dについては領域6の後に実験誤差の範囲内でレベルが降下するように見えることを示しているように見える。ナトリウム含有量の実験誤差は、約0.2〜0.5wt.%である。媒体Aについては、グラフは、ナトリウム濃度の継続的な増加又は領域8の後のいくらかの最小限のレベル降下のいずれかを示しているように見える。全体的には、これらのデータは、媒体のワイヤ側又はフェルト側のいずれかにおいて、混合隔壁の選択によって勾配形成及び非勾配不変領域の生成の双方を制御できることを示しているように思われる。
【0200】
図26は、混合隔壁の構成A、B、C及びDを示す。構成の各々において、規則的な一連の矩形部品が示され、これらは液体を混合する連通のための一連の位置を画定し、混合隔壁を形成するフレームに配置される。各構成において、矩形部品は、構造を通じた流体連通の開口を置いて規定の間隔で配置される。
【0201】
図26の全ての構成において、混合隔壁には8個の矩形開口が画定され、混合隔壁における最初の矩形部品が最後の矩形部品と対になっている。最初の矩形部品は約8.89cm(3.5インチ)の幅を有し、一方、最後の矩形部品は約11.43cm(4.5インチ)の幅を有する。構成C及びDについては、25.4cm(10インチ)のスロットオフセットが存在する。構成Aについては、中間の矩形部品は約9.652cm(3.8インチ)幅であり、約1.3716cm(0.54インチ)幅のスロットを画定する。構成Bについては、中間の矩形部品は約7.7216cm(3.04インチ)幅であり、約3.4036cm(1.34インチ)幅のスロットを画定する。構成Cについては、中間の矩形部品は約6.5786cm(2.59インチ)幅であり、約1.3716cm(0.54インチ)幅のスロットを画定する。構成Dについては、中間の矩形部品は約4.5466cm(1.79インチ)幅であり、約3.4036cm(1.34インチ)幅のスロットを画定する。
【0202】
実施例6
上部ヘッドボックスから送り込まれる2つの異なるサイズのガラス繊維、すなわち二成分繊維と青色繊維とを含む以下の表7に示す成分を使用して、水性ファーニッシュ組成を作製する。セルロースファーニッシュ組成を下部ヘッドボックスから送り込む。勾配媒体は、別個のヘッドボックスからの2つのファーニッシュのフローを混合することにより形成される。
【0203】
【表7】
【0204】
表8は、実施例7の勾配媒体の形成に使用した機械パラメータを示す。
【0205】
【表8−1】
【0206】
【表8−2】
【0207】
【表8−3】
【0208】
【表8−4】
【0209】
上記にパラメータを掲載する機械設定は、表2に関連して上記に定義及び考察されるものと同じ設定である。表頭は、中実の隔壁又は異なる構成の混合隔壁若しくはラメラのいずれかを使用した異なるランに対応する。項目名1〜6の列は、5種の異なる混合隔壁構成と共に使用した機械設定に対応する。試験2−G、3−K及び4−Hについては、矩形部品は均等に離間して、混合隔壁に等しいサイズの開口を画定した。「前進」という項目名のランは、下流方向に移ると徐々に大きくなるスロットを有する混合隔壁で実施した。「逆進」という項目名のランは、下流方向に徐々に小さくなるスロットを有する混合隔壁で実施した。
【0210】
勾配媒体は、先述の勾配分析及びβ200手順を用いて分析される。スロット付き混合隔壁についての勾配分析及びβ200の結果は、勾配媒体特徴と整合していた。媒体の上部から媒体の下部にかけて識別可能な界面は存在しない。媒体の上部から媒体の下部にかけて多孔性の滑らかな勾配がある。
【0211】
実施例7
前述の実施例の手順及び装置を使用して、カエデセルロース繊維とカバセルロース繊維とを含むセルロース系媒体を作製し、ここでは上部ヘッドボックスファーニッシュが乾燥率100%のカエデパルプを含み、下部ヘッドボックスファーニッシュが乾燥率(dray percentage)100%のカバパルプを含んだ。シートの総重量は80lb/3000ft2(130.32g/m2)であり、2つの所与のパルプは均等に分けられた。
【0212】
この例の勾配は繊維組成である。勾配媒体は、先述の勾配分析及びβ200手順を用いて分析される。勾配分析及びβ200の結果は勾配媒体特徴と整合している。媒体の上部から媒体の下部まで識別可能な界面は存在しない。媒体の上部から媒体の下部にかけて多孔性の滑らかな勾配がある。
【0213】
実施例8
図27及び図28は異なる媒体構造のSEMであり、各々は、媒体をエチレングリコールに浸漬して冷却した後、クライオミクロトーム(cyro−microtome)を使用して媒体厚さにわたり13個の切片に分けたものである。図27及び図28に示される双方の媒体とも、一つの媒体配合のみを使用して調製した。媒体配合及び隔壁構成に関する情報は表9〜表10に示される。
【0214】
【表9】
【0215】
中実混合隔壁の場合、下部スラリーが最初に排水され、従って初めに下部スラリーからの繊維が溜まり、その後その上に上部スラリーが重なるため、上部スラリーと下部スラリーとの間に混合は起こらないことに留意されたい。結果として、作成されるシートは明確に区別される2つの層状構造を有し、勾配構造は有しない。しかしながら、上部及び下部ヘッドボックスに同じファーニッシュ配合を使用して、しかし開口を有する混合隔壁によると、上部スラリーと下部スラリーとの間に繊維の混合が起こり、結果として勾配構造がもたらされる。図27及び図28の双方において、媒体は表10に提供される配合を使用して作成される。図27及び図28において、最初のSEM1が各スライドにおける媒体の上部を示し、一方、最後のSEM13が厚さに沿った媒体の下部切片を示す。シートの全坪量は50lb/3000ft2(81.45g/m2)であり、そのうち25lb/3000ft2(40.73g/m2)がファーニッシュ1によりもたらされ、残り(25lb/3000ft2)(40.73g/m2)がファーニッシュ2によりもたらされたことに留意されたい。
【0216】
【表10】
【0217】
図27及び図28は、媒体の13個の切片の各々のSEMを示す。本明細書に記載される勾配技術がない場合、同じ上部及び下部ファーニッシュ配合から作成される2つの媒体が、その厚さ全体を通じて同様の構造を有し得ることが典型的となる。しかしながら、図27と図28との間には、媒体全体にわたる構造の違いが見られる。スロット付き混合隔壁により作製された図28については、フレームについて1から検討を始めると、初めのフレームは多数の大径繊維を示し、一方、後の方のフレームはより多くの小径繊維を示す。特に図27(勾配媒体なし)と図28(勾配媒体)との間で切片4、5及び6を比較すると、2つの構造間における構成繊維の分布の違いが明らかである。図27では、媒体の切片は一つの特定の繊維タイプ(大径又は小径のいずれか)が極めて豊富であり、中間で小径の繊維タイプに急激に移行する。しかしながら、図28では、移行はそれほど鮮明でなく、異なる繊維タイプ間の混合量もより高い。例えば、図27及び図28における対応する切片4、5及び6を比較することにより、勾配構造(図28)ではより多量の混合が起こり、中実の隔壁(図27)で作成された媒体では混合は比較的少ししか、又は全く起こらなかったことが容易に分かる。
【0218】
また、図27及び図28の媒体は異なる形で機能した。図27の非勾配媒体は、β200について5ミクロンの効率性能で上記に記載したとおり試験したとき、1平方メートル当たり160グラムの汚染負荷量を達成している。対照的に、図27のように上部及び下部ファーニッシュに配合を使用して作成することによる図28の勾配媒体は、β200試験について5ミクロンの効率性能で上記に記載したとおり試験したとき、1平方メートル当たり230のグラムの汚染負荷量を達成した。同じ効率での負荷性能のこの実質的な向上は、スロット付き混合隔壁によって媒体全体にわたり実現された勾配によるものである。
【0219】
実施例9
表11に示されるファーニッシュ及び表3の混合隔壁構成を使用して媒体を調製した。2つの異なる坪量:40及び60lb/3000ft2(65.16g/m2)及び(97.74g/m2)を有する媒体を調製した。
【0220】
【表11】
【0221】
これらの仕様に従い形成して得られた媒体をベータ効率について試験した。結果を表12に示す。
【0222】
【表12】
【0223】
このデータは、許容可能な負荷及び圧力損失特性を有する特定の最終用途に合わせて調整することのできる広範囲の効率結果(5ミクロン粒子についてβ75〜β200)を得る能力を示している。
【0224】
【表13】
【0225】
表13の参照番号1〜15の材料は、表14に含まれるファーニッシュ配合を使用し、媒体の厚さ全体を通じて勾配を形成するようスロット付き混合隔壁を使用して作製される。各シートの全坪量は、50lb/3000ft2(81.45g/m2)であり、そのうち25lb/3000ft2(40.73g/m2)はファーニッシュ1によりもたらされ、残り(25lb/3000ft2)(40.73g/m2)はファーニッシュ2によりもたらされた。
【0226】
しかしながら、比較例Aの材料は、2つの層を別個に形成し、次にラミネート加工により接合した二層媒体である。比較例Aの材料の2つの別個の層の作成に使用したファーニッシュは、青色PET繊維を含まないことを除き、2つの別個のヘッドボックスに対するファーニッシュ配合と極めて類似している。比較例Bの材料は、表14のファーニッシュにより、但し2つのフローストリーム間に中実混合隔壁を用いて作製した。2つの従来の材料の比較例A及び比較例Bとの勾配材料の比較を表13及び図29に示す。これらのデータは、優れたβ200を維持しながら寿命が長い(320kPaにおける負荷がより大きい)本発明の様々な実施形態を作製できることを示している。
【0227】
【表14】
【0228】
実施例11についてのFTIRデータ
図30及び図31は、二成分媒体のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。図30は、ファーニッシュの単一層をワイヤガイド上に載せるために使用される単一のヘッドボックスを有する機器を使用して形成された媒体のスペクトルである。図30の媒体を形成するためのファーニッシュは、二成分繊維と、1ミクロンより細いガラス繊維と、ポリエステル繊維とを含んだ。図31は、図1に示されるものと同様の機器及びスロット付き混合隔壁により形成した勾配媒体のスペクトルである。ここで表14は、図31に示される媒体を形成するための上部及び下部ヘッドボックスのファーニッシュ内容を示す。
【0229】
図30は、非勾配二成分/ガラスフィルタ媒体のFTIRスペクトルである。かかる媒体において、二成分媒体の作製に使用される種々の繊維の濃度は全体にわたり本質的に一定のままであり、媒体を形成する影響から生じる変化はほとんどない。図30のスペクトルの作成においては、従来のFTIRスペクトル機器を使用して媒体シートの両側のFTIRスペクトルを測った。図は2つのスペクトルを示す。スペクトルAは媒体の第1の側面であり、一方、スペクトルBは媒体の反対側の側面である。図を簡単に調べることで容易に判断され得るとおり、図Aのスペクトルと図Bのスペクトルとは実質的に重なっており、特に、媒体のポリエステル材料に由来する約1700cm−1の波長におけるカルボニル特性ピークの範囲で重なっている。スペクトルAからスペクトルBに至るポリエステルのカルボニルピークの類似性は、媒体の双方の表面におけるポリエステル繊維の濃度が類似しており、数パーセントを大きく上回るような差異はないことを示している。
【0230】
図31は、本発明の勾配媒体の両側面のFTIRスペクトルを示す。約1700cm−1の波長における各スペクトルのポリエステルのカルボニル特性ピークに見ることができるとおり、スペクトルAのカルボニルピークは、スペクトルBのポリエステルのカルボニルピークより実質的に高い。これは、媒体の片側のポリエステルの濃度(スペクトルA)が、媒体の反対側のポリエステルの濃度(スペクトルB)より実質的に高いことを示している。これは、媒体の第1の側面におけるポリエステル繊維の濃度について、媒体の第2の側面と比較したときに実質的に違いがあることの明らかな証拠である。この計測技法は、媒体の表面における、又は媒体の表面約4〜5ミクロンの範囲内のポリエステル繊維の濃度の計測に限られる。
【0231】
実施例及びデータ及び機械情報を簡単に考察すると、上部ヘッドボックス及び下部ヘッドボックスからの繊維分散体を組み合わせることによりファーニッシュが作製されることは明らかである。これらの繊維分散体は上部及び下部ヘッドボックスから送られ、混合隔壁の作用により組み合わされる。
【0232】
実施例のファーニッシュにおいて、二成分繊維は足場繊維を含み、ガラス繊維及びポリエステル繊維がスペーサー繊維である。より小径のガラス繊維が効率繊維である。実施例のファーニッシュに見ることができるとおり、典型的には各ファーニッシュの二成分含有量は比較的一定であり、それにより混合隔壁を通過した後の組み合わされた水性ファーニッシュは実質的に同じで比較的一定した二成分繊維濃度を得て、媒体における構造上の完全性を形成する。上部ヘッドボックスには、関連する大きい比率の大径スペーサー繊維、典型的にはポリエステル繊維又はガラス繊維又は双方の繊維の混合物がある。また、下部ヘッドボックスには小径の効率繊維があることにも留意されたい。上部ヘッドボックスからのファーニッシュは混合隔壁の作用によって、最低限、下部ヘッドボックスからのファーニッシュと混和されるため、層がウェットレイド法でワイヤ上に形成されると、及びその後層がさらに処理されると、スペーサー繊維の濃度が形成された層の厚さを通じて変化するように、上部ヘッドボックスからの大径スペーサー繊維の濃度が濃度の勾配を形成する。ファーニッシュの流量及び圧力に応じて、混合隔壁及びその構成、小径の効率繊維もまた、2つのファーニッシュが層を形成する前に混和されると勾配を形成することができる。
【0233】
ファーニッシュを調べると分かるとおり、ウェットレイド法においてワイヤ上に形成された後の層組成は、二成分繊維の濃度が層全体にわたり比較的一定している。スペーサー繊維がポリエステル繊維又はガラス繊維又はその双方の組み合わせを含む場合、スペーサー繊維が層の領域内に又は層全体にわたり勾配を形成し得る。層の一領域又は層全体にわたる小径の効率繊維は濃度が比較的一定であってもよく、又は一方の表面から他方の表面にかけて濃度が変化してもよい。表12のファーニッシュから作製された層は、比較的一定した濃度の二成分繊維を層全体の約50%含み得る。スペーサー繊維のB50ガラス繊維は合計で全繊維含有量の約25%を含み、勾配を形成し得る。小径の効率ガラス繊維は繊維含有量全体の約25%を含み、及び濃度が一定であっても、又はバックフロー及び圧力に応じて層内に勾配を形成してもよい。本発明者らは、層を加熱し、硬化させ、乾燥させて保管した後、二成分繊維は層に対して機械的完全性を提供する傾向があり、一方、スペーサー繊維及び効率繊維は二成分層を通じて分布し、層が繊維の熱結合を達成すると足場繊維によってその場に保持されることを見出した。サイズ、透過率及び他の繊維特性に対する効率は、スペーサー繊維及び効率繊維が存在することにより実質的に得られる。繊維は一体となって働き、有効な効率的透過性を有する繊維特性を形成する繊維の内部ネットワークを提供する。媒体の様々な実施形態において使用することのできる繊維の各タイプの範囲を表15に示す。
【0234】
【表15】
【0235】
X勾配の例及び勾配データ
X方向に特定の繊維濃度の勾配を有し、またZ方向にも特定の繊維濃度の勾配を有する媒体を調製した。これらのX方向勾配媒体は、表16に示されるファーニッシュ配合を使用して、及び図9−図11の混合隔壁2100及び図12の混合隔壁2400を使用して調製した。
【0236】
混合隔壁2100を2つのファーニッシュ供給源と共に使用して不織ウェブが形成されるとき、上部供給源のファーニッシュの繊維成分、例えば青色PET及び0.6ミクロンB06繊維は、主に不織ウェブにおいて媒体の中心部に存在することが予想される。また、中心部には、上部供給源の成分がウェブの厚さを通じて組成勾配を形成し、上部ファーニッシュの繊維がウェブの上面により多く存在し、その繊維の濃度が徐々に低下して、従ってウェブの反対側の底面に存在するその繊維がより少ないことが予想される。
【0237】
上部供給源にのみ青色トレーサー繊維を使用して、混合隔壁2100を使用して不織ウェブを形成した。青色繊維は、得られた不織ウェブの中心の一切片に見られた。また、青色繊維はウェブの上側及び下側の双方に見られたが、下側より上側に一層集中していた。
【0238】
図12の混合隔壁2400が表16における2つのファーニッシュと共に使用されるとき、部品2406の下側にあるウェブの部分は、上部ヘッドボックスにのみ存在する繊維を多く含まないことが予想される。また、部品2406によって被覆されないウェブの一部はX方向に勾配を有し、上部ヘッドボックスからの繊維の濃度が、開口がより大きい外縁端に向かって増加することも予想される。また、部品2406によって被覆されるウェブの一部はZ方向に勾配を有し、上部ヘッドボックスからの繊維の濃度がウェブの上面に向かって増加することも予想される。これらの予想のいずれも、得られた媒体においてより高濃度の青色繊維が見られることに基づき正しいことが観察された。
【0239】
上部及び下部ヘッドボックスに同じファーニッシュ配合を使用しながら、しかし異なる混合隔壁構成を使用することで異なる媒体構造が作成されることが、混合隔壁構成を媒体構造の操作に使用することができるという概念のさらなる裏付けとなる。
【0240】
走査型電子顕微鏡写真(SEM)を使用して非勾配媒体の媒体構造を勾配媒体と比較した。図32は、非勾配媒体3200のSEM及び勾配媒体3202の別のSEMを示す。媒体3200は、中実混合隔壁を使用して、及び表16に示されるファーニッシュ配合を使用して作製したものであり、ここで上部ファーニッシュは二成分繊維と、ポリエステル繊維と、5ミクロンガラス繊維と、0.6ミクロンガラス繊維とを含む。下部ファーニッシュは、カバパルプ由来のセルロース繊維のみを含む。媒体3200のSEMにより観察することができるとおり、ヘッドボックスからのファーニッシュ間に本質的に混合はなく、従って媒体は明確に異なる層を有する。2つの層間に界面が見える。媒体3200では、セルロース系繊維が下部セルロース層3206を形成し、これはガラス繊維と二成分繊維とポリエステル繊維とを有する上部層3208の形成とは明確に異なる。電子顕微鏡写真で上部層3208はセルロース層3206の上側に示される。セルロース層3206に実質的な濃度のガラス繊維は見られず、セルロース層3206は実質的にガラス繊維を含まない。
【0241】
媒体3202は、表16に示される上部及び下部ファーニッシュ配合を使用して、スロット付き混合隔壁を使用して作製した勾配フィルタ媒体である。特に、図9−図11に示されるとおりのスロット付き混合隔壁を使用して勾配フィルタ媒体3202を生成した。従ってフィルタ媒体3202はX方向の勾配を有するとともに、Z方向にも勾配構造を得る。顕微鏡写真3202に示される部分は、媒体のクロスウェブ方向における中心に位置するz寸法勾配を有する媒体の一部分を表す。SEM3202は、媒体全体を通じたガラス繊維の実質的な分布を示し、及びガラス繊維との組み合わせのセルロース系繊維の一部の分布を示す。媒体3202の上部領域3210には、下部領域3212と比べてより多くのガラス繊維が目視可能な形で存在する。それと際立って対照的に、媒体3200は、非勾配セルロース層3206に結合された従来の非勾配二成分ガラス媒体層3208の明確に区別される層を有する。SEM3200では界面は目視でき、二成分ガラス媒体領域とセルロース層との間の明確且つ顕著な変化である。かかる界面によって2つの層間の界面におけるフローに対する実質的な抵抗が生じる。さらにセルロース層の平均細孔径は、従来の二成分ガラス媒体の平均細孔径より小さい。これにより界面要素がさらに導入され、二成分ガラス層を通過してセルロース層に至る流体フローに対する抵抗が実質的に増加する。
【0242】
それと際立って対照的に、媒体3202は、材料の細孔径が一方の表面から他方の表面にかけて連続的に変化し、その変化が漸進的で制御される勾配材料である。
【0243】
【表16】
【0244】
本発明者らは、x勾配混合隔壁を使用して、繊維の濃度がマシン方向にかけて変化し、フラジール通気度の勾配がもたらされるようなx勾配を有する媒体を形成している。フラジール通気度試験は専用の試験装置及び方法を使用する。一般に媒体の通気度は、媒体のいかなる点においても、少なくとも1メートル/分(m3−m−2−分−1としても知られる)の、典型的には及び好ましくは約2〜900メートル/分の通気度を呈しなければならない。フラジール通気度のx勾配を有する媒体において、通気度が一方の縁端から他方の縁端まで計測されるとき、通気度は変化しなければならない。図12の混合隔壁を使用して媒体が作製された一実施形態において、通気度は一方の縁端から他方の縁端にかけて増加又は減少する。別の実施形態において、通気度勾配は、縁端と比べて媒体の中心の通気度が増加又は低下し、縁端は同じ又は同様の通気度を有するように変化を呈することができる。図9のx勾配混合隔壁により作製されたある媒体において、縁端の通気度は、13.1〜17.1fpm(42.97〜56.1メートル/分)の範囲で計測され、中心の通気度は29.4fpm(96.46メートル/分)であった。図12のx勾配混合隔壁により作製された別の媒体において、部品2406により被覆された縁端近傍の通気度は10.2fpm(33.46メートル/分)であり、一方、部品2406により被覆されなかった縁端近傍の通気度は12.4fpm(40.69メートル/分)であった。
【0245】
上記の明細書、例及びデータにより、本発明の組成物の製造及び使用の完全な説明が提供される。本発明の範囲から逸脱することなく本発明の多くの実施形態を作製することができるため、本発明は、以下に添付される特許請求の範囲にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織ウェブであって、前記ウェブが第1の表面と第2の表面とを有する平面状繊維構造を含み、前記繊維構造が、実質的に一様な繊維分布を有する第1の不織領域と、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含む第2の不織領域とを含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記第2の領域にわたり前記第1の表面から前記第2の表面に至る方向に増加するように、第2の不織領域において濃度が変化し、前記第1の繊維は第1の繊維特徴群を有し、且つ前記第2の繊維は第2の異なる繊維特徴群を有する、ウェブ。
【請求項2】
前記第2の繊維が異なる直径の繊維のブレンドを含む、請求項1に記載のウェブ。
【請求項3】
前記ウェブにおける繊維濃度のあらゆる変化が線形変化である、請求項1に記載のウェブ。
【請求項4】
前記第1の不織領域が2つ以上ある、請求項1に記載のウェブ。
【請求項5】
前記第2の不織領域が2つ以上ある、請求項1に記載のウェブ。
【請求項6】
前記ウェブがフィルタ媒体を含み、前記媒体が、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合されたウェットレイド媒体の第1の繊維である、請求項1に記載のウェブ。
【請求項7】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項73に記載のフィルタ媒体。
【請求項8】
前記第2の不織領域の一部分が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項2に記載のフィルタ媒体。
【請求項9】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に違いを示す、請求項6に記載の媒体。
【請求項10】
前記第1の不織領域が上流領域である、請求項6に記載のウェブ。
【請求項11】
前記第2の不織領域が上流領域である、請求項6に記載のウェブ。
【請求項12】
前記ウェブがデプス媒体であり、前記第2の繊維が前記上流表面から前記下流表面にかけて増加する、請求項6に記載のウェブ。
【請求項13】
前記ウェブが負荷領域と効率領域とを含む、請求項1に記載のウェブ。
【請求項14】
前記第2の繊維の濃度が前記上流表面から前記下流表面にかけて非線形的に増加する、請求項1に記載のウェブ。
【請求項15】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、
b)繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源と、
c)前記第1及び第2の供給源より下流にある混合隔壁であって、前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間に位置決めされ、前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を前記混合隔壁に画定する混合隔壁と、
d)前記第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、前記組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項16】
前記2個以上の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の矩形開口を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記2個以上のスロットの各々が、異なる幅、異なる長さ、前記フローストリームに対する異なる向き、前記混合部分の終端からの異なる間隔、又はそのような側面の1つ又は複数の組み合わせを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
装置を使用する不織ウェブの作製方法であって、
i)第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップであって、前記流体ストリームが繊維を含み、前記装置が前記第1の供給源より下流にある混合隔壁を含み、前記混合隔壁が前記第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされ、前記流路が前記混合隔壁によって分離され、前記混合隔壁が、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を前記混合隔壁に画定する、ステップと、
ii)前記供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップであって、前記受入領域が、前記供給源から吐出された前記フローストリームを受け入れ、且つ前記繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される、ステップと、
iii)前記湿潤層を乾燥させて前記不織ウェブを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記湿潤層から流体を除去するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記湿潤層に熱を加えるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記フローストリームの少なくとも一方が、水性スラリー1リットル当たりの繊維が約20グラム未満の繊維濃度を有する1つ又は複数の繊維の水性スラリーを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記混合隔壁が、前記2つの流路間の双方向流体連通を可能にする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
第2の供給源から第2の流体ストリームを吐出するステップであって、前記流体ストリームが繊維を含み、前記第1の流体ストリームの一部が前記混合隔壁を通じて流れ、前記受入領域にある前記第2の流体ストリーム上に至るステップ
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流体ストリームが少なくとも第1の繊維を含み、前記第2の流体ストリームが少なくとも第2の繊維を含み、前記第2の繊維が前記第1の繊維と異なる繊維特徴を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の繊維がガラス繊維であり、前記第2の繊維がコアとシェルとを含む二成分繊維である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁を2つの半体に分割するマシン方向の中心軸を有し、一方の半体が他方の半体と同じではない、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
一方の半体が開口を有さず、他方の半体が前記複数の開口を画定する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の矩形開口を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が勾配を含む領域を含み、前記領域が少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含み、前記第1の繊維は直径が前記第2の繊維より大きく、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項32】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が勾配を含む領域を含み、前記領域が第1の繊維組成を有する第1の繊維と、前記第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有する第2の繊維とを含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項33】
前記第1の繊維が少なくとも1ミクロンの直径を有し、第2の繊維が多くとも5ミクロンの直径を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項34】
前記領域が前記媒体の前記厚さの一部分に及ぶ、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項35】
前記領域の前記一部分が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項36】
前記媒体がウェットレイド媒体の第1の繊維であり、前記第1の繊維が、前記フィルタ媒体の少なくとも30wt%且つ多くとも80wt%の量の二成分繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項37】
前記第2の繊維が、前記フィルタ媒体の最小30wt%且つ多くとも70wt%の量のガラス繊維又はポリエステル繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項38】
前記媒体厚さが、定濃度の前記第1の繊維と前記第2の繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項39】
空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合された、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体であって、二成分繊維を含む少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の第1の繊維と、少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%のガラス繊維又はポリエステル繊維とがあり、ガラス繊維又はポリエステル繊維の濃度が、前記第1の表面から前記第2の表面にかけて増加する連続勾配で形成される、媒体。
【請求項40】
前記第1の繊維が、各々が独立してポリエステル又はポリオレフィンを含むコアとシェルとを含む二成分繊維を含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項41】
前記第1の表面と前記第2の表面とが0.5〜20mmの範囲の前記媒体の前記厚さを画定し、前記領域の前記一部分が0.1mmより大きい、請求項34に記載の媒体。
【請求項42】
前記媒体がデプス媒体であり、前記第2の繊維が第1の上流表面から第2の下流表面にかけて増加する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項43】
前記媒体が負荷領域と効率領域とを含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項44】
前記媒体が、膜、セルロース系媒体、合成媒体、スクリム又はエキスパンドメタル支持体を含む基層と組み合わされる、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項45】
前記媒体中のあらゆる勾配が非線形である、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項46】
前記第2の繊維の濃度が前記上流表面から前記下流表面にかけて非線形的に増加する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項47】
前記媒体が、透過率、細孔径、繊維径、繊維長、効率及び固体度からなる群の少なくとも1つの勾配を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項48】
前記媒体が、湿潤性、耐化学性、及び耐温度性からなる群の少なくとも1つの勾配を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項49】
前記媒体が一様な結合繊維領域をさらに含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項50】
前記結合領域の前記第1の繊維が一様な濃度である、請求項49に記載の媒体。
【請求項51】
前記媒体が1つ又は複数の追加的な繊維を含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項52】
前記第1の繊維がセルロース系繊維を含み、前記第2の繊維がガラス繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項53】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に違いを示す、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項54】
第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が足場繊維と、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含み、前記媒体が、前記第1の繊維又は前記第2の繊維のいずれかの濃度の勾配によって特徴付けられる領域を有し;及び前記媒体がラミネート加工層を含まず、且つラミネート用接着剤を含まず、前記第1の繊維が第1の繊維特徴群を有し、前記第2の繊維が第2の異なる繊維特徴群を有する、フィルタ媒体。
【請求項55】
前記媒体がウェットレイド媒体であり、前記足場繊維が二成分繊維を含み、前記第1及び第2の繊維の双方がガラス繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項56】
前記媒体が、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合され、前記足場繊維が二成分繊維を含み、前記第1及び第2の繊維がポリエステル繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項57】
前記足場繊維がセルロース系繊維を含み、前記第1及び第2の繊維がガラス繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項58】
前記第1及び第2の繊維が、組成が異なる繊維のブレンドを含み、及び勾配によって特徴付けられる前記領域が前記媒体の前記厚さの一部分である、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項59】
勾配によって特徴付けられる前記領域が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項58に記載のフィルタ媒体。
【請求項60】
前記第1の表面と前記第2の表面とが、0.5〜20mmの範囲の前記媒体の前記厚さを画定し、前記領域の前記一部分が0.1mmより大きい、請求項54に記載の媒体。
【請求項61】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項62】
少なくとも1つの領域が、約30wt%〜80wt%の第1の繊維と、少なくとも約0.6ミクロン且つ多くとも約5ミクロンの直径を有する少なくとも約20wt%且つ多くとも約70wt%の第2の繊維とのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項63】
前記第2の繊維が、少なくとも約20ミクロン且つ多くとも約30ミクロンの直径を有するセルロース系繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項64】
前記ガラス繊維が、およそ少なくとも約0.5ミクロンの直径を有する第1のガラス繊維と、少なくとも約2ミクロン且つ多くとも約5ミクロンの直径を有する第2のガラス繊維とのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項65】
前記媒体が、細孔径又は繊維径の非線形勾配である勾配を有する、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項66】
前記勾配が、前記繊維サイズ又は前記繊維濃度が前記第1の表面から前記第2の表面にかけて線形的に増加するようなフィルタ組成を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項67】
少なくとも1つの領域が、樹脂と結合された第1の繊維を含む、請求項54に記載の媒体。
【請求項68】
前記樹脂と結合された繊維がセルロース系繊維を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項69】
前記樹脂と結合された繊維がポリエステル繊維を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項70】
樹脂、架橋剤又はそれらの組み合わせから選択される添加剤をさらに含む、請求項54に記載の媒体。
【請求項71】
前記樹脂が、バインダー樹脂、エラストマー、熱硬化性樹脂、ゲル、ビーズ、ペレット、フレーク、粒子、又はナノ構造を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項72】
前記第1の繊維及び前記第2の繊維が、ガラス、セルロース、麻、アバカス、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせを含む繊維から選択される、請求項54に記載の媒体。
【請求項73】
前記第2の繊維が、セルロース系繊維、合成繊維、又はそれらのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項74】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が前記厚さに少なくとも1つの領域を含み、前記領域が、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、前記ポリエステル繊維は前記領域において濃度が実質的に変化せず、前記スペーサー繊維は、前記スペーサー繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、媒体。
【請求項75】
前記ポリエステル繊維が二成分繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項76】
前記スペーサー繊維がガラス繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項77】
前記効率繊維がガラス繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項78】
前記スペーサー繊維が単相ポリエステル繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項79】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項31、32又は74に記載の媒体。
【請求項80】
前記効率繊維の濃度が一方の表面から他方の表面にかけて増加し、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合される、請求項74に記載の媒体。
【請求項81】
前記媒体が、30〜85wt%のポリエステル繊維と、2〜45wt%のスペーサー繊維と、10〜70wt%の効率繊維とを含むウェットレイド媒体である、請求項74に記載の媒体。
【請求項82】
前記媒体が、定濃度の前記ポリエステル繊維と前記スペーサー繊維と前記効率繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項74に記載のフィルタ媒体。
【請求項83】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に10%の違いを示す、請求項31、32、54又は74に記載の媒体。
【請求項84】
幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有するフィルタ媒体であって、各縁端は前記媒体のマシン方向と平行であり、前記媒体が、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記第1の縁端から前記第2の縁端にかけて増加するように、前記第1の領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項85】
前記媒体の幅が、定濃度の前記第1の繊維と前記第2の繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項86】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有する請求項84に記載のフィルタ媒体であって、前記媒体が、勾配を含む第2の領域を含み、前記第2の領域において前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記第2の領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項87】
前記第2の領域が前記媒体の前記厚さの一部分にわたる、請求項86に記載のフィルタ媒体。
【請求項88】
前記第1の繊維が第1の繊維組成を有し、前記第2の繊維が、前記第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有する、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項89】
前記第1の繊維は直径が前記第2の繊維より大きい、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項90】
前記フィルタ媒体が前記幅の中心領域を含み、前記第2の繊維の濃度が前記中心領域において最も高い、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項91】
前記フィルタ媒体が、前記第1の縁端に隣接した第1の縁端領域と、前記第2の縁端に隣接した第2の縁端領域とを含み、前記第2の繊維の濃度が、前記第1の縁端領域において前記第2の縁端領域におけるより高い、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項92】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の流体フローストリームと繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源と、
b)前記1つ又は複数の供給源より下流にある混合隔壁であって、前記1つ又は複数の供給源からの前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間に位置決めされ、前記2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を前記混合隔壁に画定する混合隔壁と、
c)前記1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、前記組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項93】
前記混合隔壁が水平面に対して傾斜している、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項94】
前記混合隔壁が2個以上の開口を画定する、請求項92に記載の装置。
【請求項95】
前記2個以上の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する2個以上の矩形開口を含む、請求項94に記載の装置。
【請求項96】
前記1個又は複数の矩形開口が、クロスウェブ方向に前記混合隔壁にわたって完全に延在する、請求項16又は94に記載の装置。
【請求項97】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項92に記載の装置。
【請求項98】
前記2個以上のスロットの各々が、異なる幅、異なる長さ、前記フローストリームに対する異なる向き、前記混合部分の終端からの異なる間隔、又はそのような側面の1つ又は複数の組み合わせを含む、請求項94に記載の装置。
【請求項99】
前記混合隔壁の前記マシン方向における寸法が、少なくとも約0.3メートル(11.8インチ)且つ多くとも約1.5メートル(59インチ)である、請求項94に記載の装置。
【請求項100】
前記混合隔壁が、少なくとも3個のスロット且つ多くとも8個のスロットをさらに含み、各スロットが独立して少なくとも1cm且つ多くとも20cmの幅を有する、請求項15又は97に記載の装置。
【請求項101】
前記スロットが矩形であり、複数の着脱可能な矩形部品によって画定される、請求項100に記載の装置。
【請求項102】
前記混合隔壁が、5個以上の着脱可能な矩形部材によって画定される5個の矩形開口を含み、前記部材の幅の各々が約1.5cm〜15cm(0.6インチ〜5.9インチ)であり、前記開口の幅の各々が約0.5cm〜10cm(0.2インチ〜3.9インチ)である、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項103】
前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁のマシン方向に延在する1個又は複数のスロットを含む、請求項92に記載の装置。
【請求項104】
前記1個又は複数の開口が、複数の別個の円形開口を含む、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項105】
前記混合隔壁が、第1の寸法を有する少なくとも第1の開口と、第2の異なる寸法を有する少なくとも第2の開口とを画定する、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項106】
前記混合隔壁の前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁の総面積の少なくとも5%且つ多くとも70%を占める、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項107】
前記混合隔壁の前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁の総面積の少なくとも10%且つ多くとも30%を占める、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項108】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁を2つの半体に分割する前記マシン方向の中心軸を有し、一方の半体が他方の半体と同じではない、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項109】
一方の半体が開口を有さず、他方の半体が前記複数の開口を画定する、請求項108に記載の装置。
【請求項110】
前記混合隔壁が第1の外縁端と第2の外縁端とを有し、前記第1及び第2の外縁端は前記マシン方向と平行であり、前記混合隔壁が、前記第1の外縁端に最も近い前記マシン方向幅が前記第2の外縁端に最も近い前記マシン方向幅より小さくなるようにマシン方向幅に変化する第1の開口を画定する、請求項108に記載の装置。
【請求項111】
前記混合隔壁が、開口を含まない第1の縁端部分と、開口を含まない第2の縁端部分とを含み、前記第1及び第2の縁端部分の各々が、下流クロスウェブ縁端から上流クロスウェブ縁端まで延在し、前記混合隔壁が前記第1の縁端部分と前記第2の縁端部分との間に中心部分をさらに含み、前記開口が前記中心部分に画定される、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項112】
前記受入領域が、前記フローストリームから液体を除去するための機器をさらに含む、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項113】
前記流体を除去するための機器が、1つ又は複数の重力排水機器、1つ又は複数の真空機器、1つ又は複数のテーブルロール、真空フォイル、真空ロール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項112に記載の装置。
【請求項114】
前記受入領域の近位及び下流に乾燥部をさらに含む、請求項15又は92に記載の装置であって、前記乾燥部が、乾燥缶部、1つ又は複数の赤外線ヒータ、1つ又は複数の紫外線ヒータ、スルーエアドライヤ、搬送ワイヤ、コンベヤ、又はそれらの組み合わせを含む、装置。
【請求項115】
2つの供給源を含む請求項92に記載の装置であって、第1の供給源が前記第1のフローストリームを生じさせ、第2の供給源が前記第2のフローストリームを生じさせる、装置。
【請求項116】
前記第1のフローストリームが第1の繊維タイプを含み、前記第2のフローストリームが第2の繊維タイプを含み、各繊維タイプが他方と異なる少なくとも1つの繊維特徴を有する、請求項92に記載の装置。
【請求項117】
前記1つ又は複数の供給源がヘッドボックス及びノズルからなる群から選択される、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項118】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁の上流縁端に隣接するオフセット部分を含み、前記オフセット部分には開口がない、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項119】
前記流体フローストリームが液体フローストリームである、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項120】
前記流体フローストリームが水性フローストリームである、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項121】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、
b)前記供給源より下流にある混合隔壁であって、前記混合隔壁に1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、
c)前記供給源より下流に位置し、且つ前記フローストリームを受け入れ、前記フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項122】
前記混合隔壁の少なくとも1個の開口が、前記第1のフローストリームの第1の部分のみの通過を可能にするように構成され、前記第1のフローストリームの残りの部分は前記第1の開口より下流の前記混合隔壁上に流れる、請求項121に記載の装置。
【請求項123】
前記第1の流体フローストリームが少なくとも2種の繊維タイプの混合物を含み、各繊維タイプが他方と異なる少なくとも1つの繊維特徴を有する、請求項121に記載の装置。
【請求項124】
不織ウェブの作製方法であって、
i)供給源からファーニッシュを提供するステップであって、前記ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含む、ステップと、
ii)不織ウェブの作製装置から前記ファーニッシュのストリームを吐出するステップであって、前記装置が前記ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を含み、前記混合隔壁が、前記ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にするように構成された少なくとも1個の開口を前記混合隔壁に含む、ステップと、
iii)前記供給源より下流に位置する前記受入領域に、前記少なくとも1個の開口を通過する繊維を捕集するステップと、
iv)残りの繊維を前記混合隔壁の下流部分において前記受入領域に捕集するステップと、
iv)前記湿潤層を乾燥させて前記不織ウェブを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項1】
不織ウェブであって、前記ウェブが第1の表面と第2の表面とを有する平面状繊維構造を含み、前記繊維構造が、実質的に一様な繊維分布を有する第1の不織領域と、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含む第2の不織領域とを含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記第2の領域にわたり前記第1の表面から前記第2の表面に至る方向に増加するように、第2の不織領域において濃度が変化し、前記第1の繊維は第1の繊維特徴群を有し、且つ前記第2の繊維は第2の異なる繊維特徴群を有する、ウェブ。
【請求項2】
前記第2の繊維が異なる直径の繊維のブレンドを含む、請求項1に記載のウェブ。
【請求項3】
前記ウェブにおける繊維濃度のあらゆる変化が線形変化である、請求項1に記載のウェブ。
【請求項4】
前記第1の不織領域が2つ以上ある、請求項1に記載のウェブ。
【請求項5】
前記第2の不織領域が2つ以上ある、請求項1に記載のウェブ。
【請求項6】
前記ウェブがフィルタ媒体を含み、前記媒体が、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合されたウェットレイド媒体の第1の繊維である、請求項1に記載のウェブ。
【請求項7】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項73に記載のフィルタ媒体。
【請求項8】
前記第2の不織領域の一部分が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項2に記載のフィルタ媒体。
【請求項9】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に違いを示す、請求項6に記載の媒体。
【請求項10】
前記第1の不織領域が上流領域である、請求項6に記載のウェブ。
【請求項11】
前記第2の不織領域が上流領域である、請求項6に記載のウェブ。
【請求項12】
前記ウェブがデプス媒体であり、前記第2の繊維が前記上流表面から前記下流表面にかけて増加する、請求項6に記載のウェブ。
【請求項13】
前記ウェブが負荷領域と効率領域とを含む、請求項1に記載のウェブ。
【請求項14】
前記第2の繊維の濃度が前記上流表面から前記下流表面にかけて非線形的に増加する、請求項1に記載のウェブ。
【請求項15】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の流体フローストリームを吐出するように構成された第1の供給源と、
b)繊維を含む第2の流体フローストリームを吐出するように構成された第2の供給源と、
c)前記第1及び第2の供給源より下流にある混合隔壁であって、前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間に位置決めされ、前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間の流体連通及び混合を可能にする2個以上の開口を前記混合隔壁に画定する混合隔壁と、
d)前記第1及び第2の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、前記組み合わされたフローストリームを捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項16】
前記2個以上の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の矩形開口を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記2個以上のスロットの各々が、異なる幅、異なる長さ、前記フローストリームに対する異なる向き、前記混合部分の終端からの異なる間隔、又はそのような側面の1つ又は複数の組み合わせを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
装置を使用する不織ウェブの作製方法であって、
i)第1の供給源から第1の流体ストリームを吐出するステップであって、前記流体ストリームが繊維を含み、前記装置が前記第1の供給源より下流にある混合隔壁を含み、前記混合隔壁が前記第1の供給源からの2つの流路の間に位置決めされ、前記流路が前記混合隔壁によって分離され、前記混合隔壁が、少なくとも1つの流路から別の流路への流体連通を可能にする1個又は複数の開口を前記混合隔壁に画定する、ステップと、
ii)前記供給源の近位及び下流に位置する受入領域に繊維を捕集するステップであって、前記受入領域が、前記供給源から吐出された前記フローストリームを受け入れ、且つ前記繊維を捕集することにより湿潤層を形成するように設計される、ステップと、
iii)前記湿潤層を乾燥させて前記不織ウェブを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記湿潤層から流体を除去するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記湿潤層に熱を加えるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記フローストリームの少なくとも一方が、水性スラリー1リットル当たりの繊維が約20グラム未満の繊維濃度を有する1つ又は複数の繊維の水性スラリーを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記混合隔壁が、前記2つの流路間の双方向流体連通を可能にする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
第2の供給源から第2の流体ストリームを吐出するステップであって、前記流体ストリームが繊維を含み、前記第1の流体ストリームの一部が前記混合隔壁を通じて流れ、前記受入領域にある前記第2の流体ストリーム上に至るステップ
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流体ストリームが少なくとも第1の繊維を含み、前記第2の流体ストリームが少なくとも第2の繊維を含み、前記第2の繊維が前記第1の繊維と異なる繊維特徴を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の繊維がガラス繊維であり、前記第2の繊維がコアとシェルとを含む二成分繊維である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁を2つの半体に分割するマシン方向の中心軸を有し、一方の半体が他方の半体と同じではない、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
一方の半体が開口を有さず、他方の半体が前記複数の開口を画定する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する1個又は複数の矩形開口を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が勾配を含む領域を含み、前記領域が少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含み、前記第1の繊維は直径が前記第2の繊維より大きく、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項32】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が勾配を含む領域を含み、前記領域が第1の繊維組成を有する第1の繊維と、前記第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有する第2の繊維とを含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項33】
前記第1の繊維が少なくとも1ミクロンの直径を有し、第2の繊維が多くとも5ミクロンの直径を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項34】
前記領域が前記媒体の前記厚さの一部分に及ぶ、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項35】
前記領域の前記一部分が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項36】
前記媒体がウェットレイド媒体の第1の繊維であり、前記第1の繊維が、前記フィルタ媒体の少なくとも30wt%且つ多くとも80wt%の量の二成分繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項37】
前記第2の繊維が、前記フィルタ媒体の最小30wt%且つ多くとも70wt%の量のガラス繊維又はポリエステル繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項38】
前記媒体厚さが、定濃度の前記第1の繊維と前記第2の繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項39】
空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合された、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体であって、二成分繊維を含む少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%の第1の繊維と、少なくとも約30wt%且つ多くとも約70wt%のガラス繊維又はポリエステル繊維とがあり、ガラス繊維又はポリエステル繊維の濃度が、前記第1の表面から前記第2の表面にかけて増加する連続勾配で形成される、媒体。
【請求項40】
前記第1の繊維が、各々が独立してポリエステル又はポリオレフィンを含むコアとシェルとを含む二成分繊維を含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項41】
前記第1の表面と前記第2の表面とが0.5〜20mmの範囲の前記媒体の前記厚さを画定し、前記領域の前記一部分が0.1mmより大きい、請求項34に記載の媒体。
【請求項42】
前記媒体がデプス媒体であり、前記第2の繊維が第1の上流表面から第2の下流表面にかけて増加する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項43】
前記媒体が負荷領域と効率領域とを含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項44】
前記媒体が、膜、セルロース系媒体、合成媒体、スクリム又はエキスパンドメタル支持体を含む基層と組み合わされる、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項45】
前記媒体中のあらゆる勾配が非線形である、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項46】
前記第2の繊維の濃度が前記上流表面から前記下流表面にかけて非線形的に増加する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項47】
前記媒体が、透過率、細孔径、繊維径、繊維長、効率及び固体度からなる群の少なくとも1つの勾配を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項48】
前記媒体が、湿潤性、耐化学性、及び耐温度性からなる群の少なくとも1つの勾配を有する、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項49】
前記媒体が一様な結合繊維領域をさらに含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項50】
前記結合領域の前記第1の繊維が一様な濃度である、請求項49に記載の媒体。
【請求項51】
前記媒体が1つ又は複数の追加的な繊維を含む、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項52】
前記第1の繊維がセルロース系繊維を含み、前記第2の繊維がガラス繊維を含む、請求項31又は32に記載のフィルタ媒体。
【請求項53】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に違いを示す、請求項31又は32に記載の媒体。
【請求項54】
第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が足場繊維と、少なくとも1ミクロンの直径を有する第1の繊維と、多くとも6ミクロンの直径を有する第2の繊維とを含み、前記媒体が、前記第1の繊維又は前記第2の繊維のいずれかの濃度の勾配によって特徴付けられる領域を有し;及び前記媒体がラミネート加工層を含まず、且つラミネート用接着剤を含まず、前記第1の繊維が第1の繊維特徴群を有し、前記第2の繊維が第2の異なる繊維特徴群を有する、フィルタ媒体。
【請求項55】
前記媒体がウェットレイド媒体であり、前記足場繊維が二成分繊維を含み、前記第1及び第2の繊維の双方がガラス繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項56】
前記媒体が、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合され、前記足場繊維が二成分繊維を含み、前記第1及び第2の繊維がポリエステル繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項57】
前記足場繊維がセルロース系繊維を含み、前記第1及び第2の繊維がガラス繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項58】
前記第1及び第2の繊維が、組成が異なる繊維のブレンドを含み、及び勾配によって特徴付けられる前記領域が前記媒体の前記厚さの一部分である、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項59】
勾配によって特徴付けられる前記領域が、前記媒体の前記厚さの10%より大きい厚さを含む、請求項58に記載のフィルタ媒体。
【請求項60】
前記第1の表面と前記第2の表面とが、0.5〜20mmの範囲の前記媒体の前記厚さを画定し、前記領域の前記一部分が0.1mmより大きい、請求項54に記載の媒体。
【請求項61】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項62】
少なくとも1つの領域が、約30wt%〜80wt%の第1の繊維と、少なくとも約0.6ミクロン且つ多くとも約5ミクロンの直径を有する少なくとも約20wt%且つ多くとも約70wt%の第2の繊維とのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項63】
前記第2の繊維が、少なくとも約20ミクロン且つ多くとも約30ミクロンの直径を有するセルロース系繊維を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項64】
前記ガラス繊維が、およそ少なくとも約0.5ミクロンの直径を有する第1のガラス繊維と、少なくとも約2ミクロン且つ多くとも約5ミクロンの直径を有する第2のガラス繊維とのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項65】
前記媒体が、細孔径又は繊維径の非線形勾配である勾配を有する、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項66】
前記勾配が、前記繊維サイズ又は前記繊維濃度が前記第1の表面から前記第2の表面にかけて線形的に増加するようなフィルタ組成を含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項67】
少なくとも1つの領域が、樹脂と結合された第1の繊維を含む、請求項54に記載の媒体。
【請求項68】
前記樹脂と結合された繊維がセルロース系繊維を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項69】
前記樹脂と結合された繊維がポリエステル繊維を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項70】
樹脂、架橋剤又はそれらの組み合わせから選択される添加剤をさらに含む、請求項54に記載の媒体。
【請求項71】
前記樹脂が、バインダー樹脂、エラストマー、熱硬化性樹脂、ゲル、ビーズ、ペレット、フレーク、粒子、又はナノ構造を含む、請求項67に記載の媒体。
【請求項72】
前記第1の繊維及び前記第2の繊維が、ガラス、セルロース、麻、アバカス、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせを含む繊維から選択される、請求項54に記載の媒体。
【請求項73】
前記第2の繊維が、セルロース系繊維、合成繊維、又はそれらのブレンドを含む、請求項54に記載のフィルタ媒体。
【請求項74】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有するフィルタ媒体であって、前記媒体が前記厚さに少なくとも1つの領域を含み、前記領域が、ポリエステル繊維と、少なくとも0.3ミクロンの直径を有するスペーサー繊維と、多くとも15ミクロンの直径を有する効率繊維とを含み、前記ポリエステル繊維は前記領域において濃度が実質的に変化せず、前記スペーサー繊維は、前記スペーサー繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記領域において濃度が変化する、媒体。
【請求項75】
前記ポリエステル繊維が二成分繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項76】
前記スペーサー繊維がガラス繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項77】
前記効率繊維がガラス繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項78】
前記スペーサー繊維が単相ポリエステル繊維を含む、請求項74に記載の媒体。
【請求項79】
前記フィルタ媒体が、ISO 16889に基づく計測に従い320kPa以上の圧力損失まで負荷したとき試験粒子5ミクロン以上に対して200より高いβを有する、請求項31、32又は74に記載の媒体。
【請求項80】
前記効率繊維の濃度が一方の表面から他方の表面にかけて増加し、空気、水性流体、又は潤滑剤若しくは油圧油をろ過するように適合される、請求項74に記載の媒体。
【請求項81】
前記媒体が、30〜85wt%のポリエステル繊維と、2〜45wt%のスペーサー繊維と、10〜70wt%の効率繊維とを含むウェットレイド媒体である、請求項74に記載の媒体。
【請求項82】
前記媒体が、定濃度の前記ポリエステル繊維と前記スペーサー繊維と前記効率繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項74に記載のフィルタ媒体。
【請求項83】
前記第1の表面を前記第2の表面と比較すると、繊維濃度又は繊維組成に10%の違いを示す、請求項31、32、54又は74に記載の媒体。
【請求項84】
幅を画定する第1の縁端と第2の縁端とを有するフィルタ媒体であって、各縁端は前記媒体のマシン方向と平行であり、前記媒体が、第1の繊維と第2の繊維とを含む第1の領域を含み、前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記第1の縁端から前記第2の縁端にかけて増加するように、前記第1の領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項85】
前記媒体の幅が、定濃度の前記第1の繊維と前記第2の繊維とを含む前記厚さの第2の領域を含む、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項86】
厚さを画定する第1の表面と第2の表面とを有する請求項84に記載のフィルタ媒体であって、前記媒体が、勾配を含む第2の領域を含み、前記第2の領域において前記第2の繊維は、前記第2の繊維の濃度が前記領域にわたり一方の表面から他方の表面に至る方向に増加するように、前記第2の領域において濃度が変化する、フィルタ媒体。
【請求項87】
前記第2の領域が前記媒体の前記厚さの一部分にわたる、請求項86に記載のフィルタ媒体。
【請求項88】
前記第1の繊維が第1の繊維組成を有し、前記第2の繊維が、前記第1の繊維組成と異なる第2の繊維組成を有する、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項89】
前記第1の繊維は直径が前記第2の繊維より大きい、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項90】
前記フィルタ媒体が前記幅の中心領域を含み、前記第2の繊維の濃度が前記中心領域において最も高い、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項91】
前記フィルタ媒体が、前記第1の縁端に隣接した第1の縁端領域と、前記第2の縁端に隣接した第2の縁端領域とを含み、前記第2の繊維の濃度が、前記第1の縁端領域において前記第2の縁端領域におけるより高い、請求項84に記載のフィルタ媒体。
【請求項92】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の流体フローストリームと繊維を含む第2の流体フローストリームとを吐出するように構成された1つ又は複数の供給源と、
b)前記1つ又は複数の供給源より下流にある混合隔壁であって、前記1つ又は複数の供給源からの前記第1のフローストリームと前記第2のフローストリームとの間に位置決めされ、前記2つのフローストリームの間の流体連通を可能にする1個又は複数の開口を前記混合隔壁に画定する混合隔壁と、
c)前記1つ又は複数の供給源より下流に位置し、且つ少なくとも組み合わされたフローストリームを受け入れ、前記組み合わされたフローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項93】
前記混合隔壁が水平面に対して傾斜している、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項94】
前記混合隔壁が2個以上の開口を画定する、請求項92に記載の装置。
【請求項95】
前記2個以上の開口が、前記混合隔壁のクロスウェブ方向に延在する2個以上の矩形開口を含む、請求項94に記載の装置。
【請求項96】
前記1個又は複数の矩形開口が、クロスウェブ方向に前記混合隔壁にわたって完全に延在する、請求項16又は94に記載の装置。
【請求項97】
前記開口が、前記混合隔壁の第1のクロスウェブ縁端から前記混合隔壁の第2のクロスウェブ縁端まで延在する2個以上のスロットを含む、請求項92に記載の装置。
【請求項98】
前記2個以上のスロットの各々が、異なる幅、異なる長さ、前記フローストリームに対する異なる向き、前記混合部分の終端からの異なる間隔、又はそのような側面の1つ又は複数の組み合わせを含む、請求項94に記載の装置。
【請求項99】
前記混合隔壁の前記マシン方向における寸法が、少なくとも約0.3メートル(11.8インチ)且つ多くとも約1.5メートル(59インチ)である、請求項94に記載の装置。
【請求項100】
前記混合隔壁が、少なくとも3個のスロット且つ多くとも8個のスロットをさらに含み、各スロットが独立して少なくとも1cm且つ多くとも20cmの幅を有する、請求項15又は97に記載の装置。
【請求項101】
前記スロットが矩形であり、複数の着脱可能な矩形部品によって画定される、請求項100に記載の装置。
【請求項102】
前記混合隔壁が、5個以上の着脱可能な矩形部材によって画定される5個の矩形開口を含み、前記部材の幅の各々が約1.5cm〜15cm(0.6インチ〜5.9インチ)であり、前記開口の幅の各々が約0.5cm〜10cm(0.2インチ〜3.9インチ)である、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項103】
前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁のマシン方向に延在する1個又は複数のスロットを含む、請求項92に記載の装置。
【請求項104】
前記1個又は複数の開口が、複数の別個の円形開口を含む、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項105】
前記混合隔壁が、第1の寸法を有する少なくとも第1の開口と、第2の異なる寸法を有する少なくとも第2の開口とを画定する、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項106】
前記混合隔壁の前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁の総面積の少なくとも5%且つ多くとも70%を占める、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項107】
前記混合隔壁の前記1個又は複数の開口が、前記混合隔壁の総面積の少なくとも10%且つ多くとも30%を占める、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項108】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁を2つの半体に分割する前記マシン方向の中心軸を有し、一方の半体が他方の半体と同じではない、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項109】
一方の半体が開口を有さず、他方の半体が前記複数の開口を画定する、請求項108に記載の装置。
【請求項110】
前記混合隔壁が第1の外縁端と第2の外縁端とを有し、前記第1及び第2の外縁端は前記マシン方向と平行であり、前記混合隔壁が、前記第1の外縁端に最も近い前記マシン方向幅が前記第2の外縁端に最も近い前記マシン方向幅より小さくなるようにマシン方向幅に変化する第1の開口を画定する、請求項108に記載の装置。
【請求項111】
前記混合隔壁が、開口を含まない第1の縁端部分と、開口を含まない第2の縁端部分とを含み、前記第1及び第2の縁端部分の各々が、下流クロスウェブ縁端から上流クロスウェブ縁端まで延在し、前記混合隔壁が前記第1の縁端部分と前記第2の縁端部分との間に中心部分をさらに含み、前記開口が前記中心部分に画定される、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項112】
前記受入領域が、前記フローストリームから液体を除去するための機器をさらに含む、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項113】
前記流体を除去するための機器が、1つ又は複数の重力排水機器、1つ又は複数の真空機器、1つ又は複数のテーブルロール、真空フォイル、真空ロール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項112に記載の装置。
【請求項114】
前記受入領域の近位及び下流に乾燥部をさらに含む、請求項15又は92に記載の装置であって、前記乾燥部が、乾燥缶部、1つ又は複数の赤外線ヒータ、1つ又は複数の紫外線ヒータ、スルーエアドライヤ、搬送ワイヤ、コンベヤ、又はそれらの組み合わせを含む、装置。
【請求項115】
2つの供給源を含む請求項92に記載の装置であって、第1の供給源が前記第1のフローストリームを生じさせ、第2の供給源が前記第2のフローストリームを生じさせる、装置。
【請求項116】
前記第1のフローストリームが第1の繊維タイプを含み、前記第2のフローストリームが第2の繊維タイプを含み、各繊維タイプが他方と異なる少なくとも1つの繊維特徴を有する、請求項92に記載の装置。
【請求項117】
前記1つ又は複数の供給源がヘッドボックス及びノズルからなる群から選択される、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項118】
前記混合隔壁が、前記混合隔壁の上流縁端に隣接するオフセット部分を含み、前記オフセット部分には開口がない、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項119】
前記流体フローストリームが液体フローストリームである、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項120】
前記流体フローストリームが水性フローストリームである、請求項15又は92に記載の装置。
【請求項121】
不織ウェブの作製装置であって、
a)繊維を含む第1の液体フローストリームを吐出するように設計された供給源と、
b)前記供給源より下流にある混合隔壁であって、前記混合隔壁に1個又は複数の開口を含む混合隔壁と、
c)前記供給源より下流に位置し、且つ前記フローストリームを受け入れ、前記フローストリームから繊維を捕集することにより不織ウェブを形成するように設計された受入領域と、
を含む装置。
【請求項122】
前記混合隔壁の少なくとも1個の開口が、前記第1のフローストリームの第1の部分のみの通過を可能にするように構成され、前記第1のフローストリームの残りの部分は前記第1の開口より下流の前記混合隔壁上に流れる、請求項121に記載の装置。
【請求項123】
前記第1の流体フローストリームが少なくとも2種の繊維タイプの混合物を含み、各繊維タイプが他方と異なる少なくとも1つの繊維特徴を有する、請求項121に記載の装置。
【請求項124】
不織ウェブの作製方法であって、
i)供給源からファーニッシュを提供するステップであって、前記ファーニッシュが少なくとも第1の繊維を含む、ステップと、
ii)不織ウェブの作製装置から前記ファーニッシュのストリームを吐出するステップであって、前記装置が前記ストリームの供給源より下流にある混合隔壁を含み、前記混合隔壁が、前記ストリームの少なくとも一部分の通過を可能にするように構成された少なくとも1個の開口を前記混合隔壁に含む、ステップと、
iii)前記供給源より下流に位置する前記受入領域に、前記少なくとも1個の開口を通過する繊維を捕集するステップと、
iv)残りの繊維を前記混合隔壁の下流部分において前記受入領域に捕集するステップと、
iv)前記湿潤層を乾燥させて前記不織ウェブを形成するステップと、
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2012−516399(P2012−516399A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548304(P2011−548304)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022427
【国際公開番号】WO2010/088403
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(591163214)ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド (96)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022427
【国際公開番号】WO2010/088403
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(591163214)ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド (96)
【Fターム(参考)】
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