繊維強化部品のダイレクトデジタル製造のための方法、装置、及び材料混合物
【課題】部品の等方性の強化及び方向性の強度を提供するために、強化用繊維が選択的に配向される繊維強化部品のダイレクトデジタル製造方法及び材料混合物の提供。
【解決手段】磁性粒子25を提供するステップ、磁性粒子をマトリックス材料24に導入するステップ、磁性粒子を電磁場40と結合することにより、磁性粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び磁性粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む方法。
【解決手段】磁性粒子25を提供するステップ、磁性粒子をマトリックス材料24に導入するステップ、磁性粒子を電磁場40と結合することにより、磁性粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び磁性粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ダイレクトデジタル製造技術に関するもので、特に積層方法、より具体的には繊維強化ポリマー樹脂部品の製造用法及び装置、及びその部品を組み立てるために使用される材料混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
これから積層製造(AM)として述べられる、ダイレクトデジタル製造(DDM)は、コンピュータ制御された積層組立技術を使用して、3DのCAD(コンピュータ支援設計)ファイルから直接物理的部品を製造する工程である。従来の積層製造技術とは、いくつか例を挙げると、ステレオリソグラフィ(SLA)、熱溶解積層法(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)及び3次元印刷(3DP)である。これら各々の工程は、粉末状または液状の建築材料を局部的に溶解または硬化させることによって、層ごとの、3次元的な一体型部品を組み立てる。たとえば、SLA工程では、紫外線レーザー及び紫外線硬化性液体フォトポリマー樹脂のバットを使用する際に、部品層が組み立てられる。各々の層で、レーザーは、部品の3DのCADデータモデルに基づき、液体樹脂の表面の部品断面パターンをトレースする。紫外線レーザー光にさらされると、樹脂上でトレースされたパターンが硬化及び凝固し、層の下に付着する。パターンがトレースされた後に、エレベータープラットフォームは単独の層の厚さ分だけ下降し、且つ樹脂が充填されたブレードが部品の部分を一掃し、未使用の材料で再コーティングされる。この工程は、部品が完成するまで、層ごとに続く。
【0003】
SLSは、高出力レーザーを使用し、プラスチックまたは金属、セラミックまたはガラスの粉末の小粒子を溶解し、所望の3次元形状を有する塊にする。粉末ベッドの表面上で部品の3次元デジタル記述(CADモデル)から生成される断面を走査することにより、レーザーは選択的に粉末の建築材料を溶解する。各々の断面が走査されると、粉末ベッドは一層の厚さ分下げられ、材料の新しい層が最上部に適用され、この工程は部品が完成するまで繰り返される。
【0004】
3DP工程は、部品のCADモデルの各々の層の詳細な情報を得るために、スライスアルゴリズムを使用する。各々の層は、粉末ベッドの表面に粉末を薄く散布することから始まる。インクジェット印刷に類似した技術を使用し、バインダー材料は、物質を形成する粒子に選択的に結合する。次の粉末層が広がり選択的に結合するように、粉末ベッド及び進行中の部品を支持するピストンが下降する。熱処理に続き、組み立てられた部品を残して、結合しない粉末は除去される。
【0005】
積層製造技術により生産される部品を強化するために、強化用粒子、従来は短ミルド繊維または短繊維が、部品を組み立てるために使用される粉末または液体樹脂に導入されていた。しかしながら、繊維に粉末または樹脂混合物がランダムに配合されたので、繊維がランダムな別個の配向を有することになった。このような繊維強化により、それらが組み立てられる機械の軸に対し、高い異方性の強化を生じる結果となった。
【0006】
従って、部品の等方性の強化及び方向性の強度を提供するために、強化用繊維が選択的に配向される繊維強化部品のダイレクトデジタル製造方法及び装置が必要とされている。また、様々な積層製造工程で使用される建築材料における短強化用繊維または他の粒子の配置及び/または整列方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示される実施形態によれば、方法及び装置は、建築材料で使用される繊維強化材料の配向及び/または配置を制御する繊維強化部品のダイレクトデジタル製造を提供する。エネルギー源が選択的に周囲のマトリックス材料を凝固する間に、短い強化用繊維の配置及び/または配向は、繊維を制御された電磁場に結合することにより影響を受ける。3つのデカルトの空間座標及び繊維配向のための各々の体積(別名、ボクセル)のベクトルに沿った組立建築工程中に、時間次元を考慮することにより、繊維配向が制御される。強化繊維の配置及び/または配向のデジタル制御により、部品の機械的及び/または電気的性能、及び/または特徴が結果的に改良される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの開示される実施形態によれば、方法は、磁性粒子を提供するステップ、及び磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップを含む、部品を製造するステップを提供する。方法は、粒子を電磁場内に結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び粒子を配向する間に、マトリックス材料を凝固させるステップをさらに含む。粒子を電磁場に結合するステップは、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接して配置するステップ、電磁石を整列するステップ、及び電磁場を生成するために電磁石を使用するステップを含む。粒子を配向するステップは、所望の方向に粒子を整列するステップ、及び/またはマトリックス材料内に部品特性を形成するために粒子を移動させるステップを含むことができる。マトリックス材料を硬化させるステップは、エネルギービームを使用して実行することができる。粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップ、及び/または合成繊維の束を形成し、各々の束を磁性金属で包み込むまたはコーティングするステップを含む。マトリックス材料は粉末を含むことができ、且つ、マトリックス材料は粉末を焼結することにより凝固される。
【0009】
別の実施形態によれば、方法は、繊維強化複合部品を製造するステップを提供する。方法は、液体ポリマー樹脂の層を提供するステップ、及び液体樹脂に磁性強化用繊維を浮遊させるステップを含む。方法は、液体樹脂内に繊維を配向するために電磁場を使用して電磁場を生成するステップ、及び液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップをさらに含む。方法は、繊維を配向し且つ液体樹脂層内で所望のパターンで樹脂を硬化させるために、液体樹脂層上でエネルギービーム及び電磁場を移動させるステップをさらに含む。液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップは、層を走査して層の部分を選択的に硬化させるためにコンピュータ制御された紫外線レーザーを使用して実行することができる。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、ダイレクトデジタル製造方法は、部品を生産するステップを提供する。方法は、マトリックス材料の混合物及び磁気特性を示す細長い強化用繊維を提供するステップ、及び部品のデジタル定義に基づいて、層ごとの、ポリマー樹脂の部分を選択的に硬化させるためにデジタル的に制御されたエネルギービームを使用するステップを含む。方法は、少なくともエネルギービームにより硬化される部分において磁性繊維を整列するために、エネルギー場を使用するステップをさらに含む。繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップは、電磁石を使用して実行することができる。マトリックス材料は粉末とし、且つ、マトリックス材料の凝固は粉末を焼結することにより実行することができる。マトリックス材料は液体樹脂とし、繊維は液体樹脂で浮遊できる。繊維は、アラミド、ガラス及び炭素のうちの少なくとも一を含む短繊維またはミルド繊維とすることができる。樹脂はポリアミド粉末とすることができる。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、材料混合物は、部品を組み立てるための積層製造工程での使用を提供する。混合物は、選択的に凝固されるマトリックス材料、及び磁性粒子を含む。磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含み、且つ、マトリックス材料は、ポリマー粉末、フォトポリマー液、金属粉末、及びガラスマイクロスフェアのうちの一とすることができる。マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とし、且つ、磁性粒子は、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または、およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含むことができる。磁性粒子は、非磁性の強化用繊維の束、及び各々の束の周囲に磁性材料の層を含むことができる。
【0012】
別の実施形態によれば、装置は、部品のダイレクトデジタル製造を提供する。装置は、磁性粒子を含むマトリックス材料の供給、部品を形成するために層ごとにマトリックス材料を選択的に凝固するためのエネルギービーム、マトリックス内の3次元空間に磁性粒子を配向するための電磁石、及び部品のデジタル定義に基づきエネルギービーム及び電磁石を制御するためのコントローラを有する。電磁石は、マトリックスの磁性粒子と結合された電磁場を生成する整列された組で配列され、且つ、コントローラはエネルギービームの作用を電磁石による粒子の配向に同期させる。
【0013】
つまり、本発明の一態様によれば、磁性粒子を提供するステップ、磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップ、粒子を電磁場と結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む、部品の製造方法が提供される。
【0014】
好適には、方法において、粒子を電磁場に結合するステップは、電磁石を互いに対して整列するステップを含む、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接して配置するステップ、及び電磁場を生成するために電磁石を使用するステップを含む。
【0015】
好適には、方法において、粒子を配向するステップは、マトリックス材料内に粒子を再配置するステップを含む。
【0016】
好適には、方法において、粒子を配向するステップは、粒子を所望の方向に整列するステップを含む。
【0017】
好適には、方法は、磁性粒子を再配置することにより、部品の特性を形成するために、電磁場を使用するステップをさらに含む。
【0018】
好適には、方法において、粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップを含む。
【0019】
好適には、方法において、粒子を提供するステップは、合成繊維の束を形成するステップ、及び各々の束を磁性金属で包み込むステップを含む。
【0020】
好適には、方法において、マトリックス材料は粉末とし、硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される。
【0021】
本発明の別の態様では、繊維強化複合部品の製造方法であって、液体ポリマー樹脂の層を提供するステップ、磁性強化用繊維を液体樹脂に浮遊させるステップ、電磁場を生成するステップ、液体樹脂内に繊維を配向するために電磁場を使用するステップ、及び液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップを含む方法が提供される。
【0022】
好適には、方法は、繊維を配向し、且つ液体樹脂層内であるパターンで樹脂を硬化させるために、液体樹脂層上でエネルギービーム及び電磁場を移動させるステップをさらに含む。
【0023】
好適には、方法において、電磁場を生成するステップは、少なくとも二つの整列した電磁石を使用して実行される。
【0024】
好適には、方法において、繊維は、磁性材料により囲まれた実質的に非磁性の材料を含む。
【0025】
好適には、方法において、液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップは、層を走査して層の部分を選択的に硬化させるためにコンピュータ制御された紫外線レーザーを使用して実行される。
【0026】
本発明のさらに別の態様では、部品を生産するためのダイレクトデジタル製造方法であって、マトリックス材料の混合物及び磁気特性を示す細長い強化用繊維を提供するステップ、部品のデジタル定義に基づいて、層ごとの、マトリックス材料の部分を選択的に硬化させるためにデジタル的に制御されたエネルギービームを使用するステップ、及び、3次元空間で磁性繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップを含む方法が提供される。
【0027】
好適には、方法において、繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップは、電磁石を使用して実行される。
【0028】
好適には、方法において、マトリックス材料は粉末とし、マトリックス材料を硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される。
【0029】
好適には、方法において、マトリックス材料液体ポリマー樹脂、及び繊維は、液体樹脂で浮遊する。
【0030】
本発明のさらに別の態様では、部品を組み立てるための積層製造工程で使用する材料混合物であって、選択的に凝固されるマトリックス材料、及び磁性粒子を含む混合物が提供される。
【0031】
好適には、混合物において、磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含む。
【0032】
好適には、混合物において、マトリックス材料は、ポリマー粉末、フォトポリマー液、金属粉末、及びガラスマイクロスフェアのうちの一とする。
【0033】
好適には、混合物において、マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とする。
【0034】
好適には、混合物において、磁性粒子は、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または、およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含む。
【0035】
好適には、混合物において、磁性粒子は、非磁性の強化用繊維の束、及び各々の束の周囲に磁性材料の層を含む。
【0036】
本発明の別の態様では、部品のダイレクトデジタル製造装置であって、磁性粒子を含むマトリックス材料の供給、部品を形成するために層ごとにマトリックス材料を選択的に凝固するためのエネルギービーム、マトリックス内の3次元空間に磁性粒子を配向するための電磁石、及び部品のデジタル定義に基づきエネルギービーム及び電磁石を制御するためのコントローラを有する装置が提供される。
【0037】
好適には、装置において、電磁石は、マトリックスで電磁場を磁性粒子と結合する電磁場を生成する整列された組で配列され、且つ、コントローラは、電磁石により、エネルギービームの作用を粒子の配向に同期させる。
【0038】
上述のフィーチャ、機能、及び利点は、本発明の種々の実施形態において単独で達成することができるか、又は他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態のさらなる詳細は、後述の説明及び図面を参照して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
新規のフィーチャと考えられる好適な実施形態の特徴は、特許請求の範囲に明記される。しかしながら、好適な実施形態と、好ましい使用モードと、さらにはその目的及び利点とは、添付図面とともに本発明の好適な一実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【図1】フォトポリマーを使用する繊維強化部品のダイレクトデジタル製造装置のブロック図及び概略図を組み合わせたものである。
【図1A】図1の装置によって作り出された、整列された磁場のインターセクションを示す、図1内の図1Aとして示される領域を図示したものである。
【図2】磁性強化用繊維の透視図を示すものである。
【図3】磁性外筒によって囲まれた強化用繊維の束の透視図を示すものである。
【図4】乾燥粉末マトリックス及びランダムに配向された磁性強化用繊維の混合物からなる層を示すものである。
【図5】図4に類似した図であるが、電磁場により一方向に整列した粉末マトリックス内に配向された繊維を示すものである。
【図6】図5に類似した図であるが、繊維が配向されている状態で、融解及び硬化、または溶解された粉末を示すものである。
【図7】繊維強化部品のダイレクトデジタル製造方法のフロー概略図を示すものである。
【図8】磁性繊維及び乾燥粉末の混合物から形成される部品層に関する装置の一実施形態の側面図を示す。
【図9】繊維強化部品が完全に形成されたことを示す、装置の別の実施形態のブロック図及び断面図を組み合わせたものである。
【図10】図1、図8及び図9に示させる実施形態における電磁場を生成するために使用される電磁石の配列を示す平面図を示す。
【図11】機械軸に対して電磁石を配向するための構台システムの上面概略図を示す。
【図12】電磁場にさらされる前に、磁性強化用繊維が浮遊される液体樹脂の層を示す。
【図13】図12に類似した図であるが、電磁場が適用された後に、硬化した層に連続した導電性の外表面を形成するために、部品の外側境界に移動した磁性強化用繊維を示すものである。
【図14】図13に類似した図であるが、内部導電体を形成するために、電磁場により配置された繊維を示すものである。
【図15】導電体を形成するために、端から端まで整列された繊維を示す、図14内の図15として示される領域を図示したものである。
【図16】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【図17】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を参照すると、ダイレクトデジタル製造技術を使用して部品22を組み立てる装置20は、概して、実施形態では液体ポリマー樹脂とされる適切な建築材料24を含むバット32内のテーブル26上を移動するヘッド34を備える。後に“マトリックス”または“マトリックス材料”として述べられる建築材料24は、いくつか例を挙げると、エキシポ樹脂またはポリエステル樹脂などの熱硬化性プラスチック、アルミニウム、チタン、鉄及びニッケルなどの金属、ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などのセラミック、及びポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、硫化ポリフェニレン、ポリフタラミド及びガラス質ミクロスフェアなどの熱可塑性物質を含むが限定しない、用途や使用される積層工程によって、硬化性の、接着性のまたは可溶性のいかなる種類の材料をも含むことができる。
【0041】
テーブル26は、セントラルマシーン軸35に沿って、ピストン28または他の適切な機構によって、バット32内を上昇または下降する30。一つの実施形態では、マトリックス材料24は、およそ100cpと2000cpとの間の粘着性を持つフォトポリマー樹脂を有し、それは、UV(紫外線)レーザービーム38を液体樹脂上に向けるヘッド34でUVレーザー33を使用して、連続層42で選択的に凝固される。特定のマトリックス材料24及び使用される積層工程によっては、限定はしないが、IR(赤外線)ビームまたは電子ビームなどのマトリックス材料24を硬化または溶解するために、他のエネルギービームが使用される。限定はしないが、短繊維またはミルド強化用繊維25などの磁性粒子は、マトリックス材料24に混合され且つその中で浮遊され、実質的に均質または均質でない混合物を形成する。繊維25以外の、または繊維25に加えて、磁性粒子は、マトリックス材料24に混合され、所望の部品特性を得る。ここで使用されるように、“磁性粒子”、“磁性繊維”、及び“磁性材料”とは、粒子、繊維、または適用される磁界に応じて磁場を作り出す他の材料、特に強磁性またはフェリ磁性の材料を指す。
【0042】
繊維25は、磁性金属、または、一または複数の磁性金属または金属合金を組み合わせたもの、及び、限定はしないが、ポリマー、ガラスまたはミネラルなどの非磁性の材料を含む。適切な金属をいくつか挙げると、限定はしないが、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの合金である。繊維25は、それ自体が永久磁石を有しており、結果として製造される部品22は、永久磁石複合材料を含む。繊維25の縦横比(長さと直径の比)は、マトリックス材料の粘着性など変わりやすいものだけではなく、特定の用途、マトリックス材料24、電磁場の強度、及び使用される積層工程に合わせて選択される。しかしながら、繊維25及び電磁場40により形成される磁気回路の磁気抵抗を最小限にするために、概して、相対的に高い縦横比を有する繊維を選択することが望ましい。混合物の繊維25の体積は、およそ20%から50%の範囲内の体積分率とされる。一つの例では、繊維25は、磁性金属でコーティングされた、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短合成繊維が含まれる。別の例では、繊維25は、やはり磁性金属でコーティングされた、50ミクロンと500ミクロンとの間の長さを持つミルド繊維としてもよい。さらに実用的な実施形態では、マトリックス材料は、重量のおよそ20%と99%との間の量で、好ましくは重量の50%と90%との間の量の混合物に存在するポリマー粉末を含む。
【0043】
ヘッド34は、マシーン軸35に対して互いに整列した一または複数の組の電磁石36を有し、電磁場40を生成しているが、これらは、図1Aに示されるように、たとえば、概してマシーン軸35(図1)に平行となるような、所望の方向に沿って部品20を硬化させるために、協同して磁性強化用繊維25を所望の方向へ配向する。磁気抵抗が最小となるよう縦軸54が電磁場40のパワー37の線と整列するように、磁性繊維25は整列する。詳細は後述するが、電磁場40は、マトリックス24内の所望の領域(図示せず)に繊維25を移動させることにより、それらを配置するためにも使用される。マトリックス材料を凝固するために使用されるエネルギーの適用に対して、電磁石36は、3次元的な空間及び時間で、繊維24の配向及び/または配置を制御する。レーザー33、ヘッド34及び電磁石36は、適切な電源44に結合され、コントローラ45により制御される。電磁場40の形状及び/または配向は、磁性繊維25の種類、サイズ及び/または密度だけではなく、電磁石36の配置及び/または配向にもよって決まる。
【0044】
コントローラ45は、電子ファイル記憶装置48から、CADなどの部品22の3Dデジタル定義にアクセスするプロブラム化されたコンピュータを備える。コントローラ45は、3DのCADファイルを使用し、レーザー33及び電磁石36の作用に同期したヘッド34の移動を制御し、磁性繊維25を配向及び/または配置し、且つ、樹脂24の各々の層42の部分を選択的に凝固し、接着し、または溶解することによって、部品22を生産する。部品22の各々の層42が完成すると、テーブル26は下降し、ヘッド34が次いで部品22の次の層42を形成する。図1で示される例及び以下で述べられる他の実施形態において、レーザー33及び電磁石36はヘッド34に沿って移動可能であるが、その代わりに、それらは固定的に取り付けられてもよい。
【0045】
上述したように、繊維25は、磁性及び非磁性金属材料の組み合わせを有する。たとえば、図2を参照すると、繊維25は、限定はしないが、ニッケルまたはニッケル合金を含む磁性金属カバーまたはコーティング52により囲まれた、限定はしないが、炭素繊維などの高力合成繊維中心部50を有する。他の磁性コーティングも可能である。図3は、適切な磁性金属または磁性合金の磁性外面層52により囲まれた束56に配列された複数の別個のポリマー繊維50を有する磁性繊維25aの代替形態を示す。図1Aに示すように、電磁石36(図1)により作り出される整列された磁場40と結合されると、縦軸54が実質的に互いに平行に整列し且つ磁場40のパワー37の線と平行になるように、磁場40は繊維25及び25aを配向する。
【0046】
開示される方法及び装置は、図1に示されるように、マトリックス材料24が液体樹脂としてよりはむしろ粉末形態で供給される繊維強化部品を組み立てるために使用される。たとえば、図4は、磁性繊維25(または他の磁性粒子)が均一にまたは非均一に混合された乾燥粉末粒子またはビーズ60のマトリックス24を含む層42の一部分を示す。繊維25は、概してランダムな配向を持つ。
【0047】
図5を参照すると、電磁場40(図1)がマトリックス24に適用されると、繊維25は、乾燥粉末粒子60内に一方向に整列して配向される。次いで、図6に示すように、乾燥粉末粒子60は、整列した繊維25を囲む固体マトリックス24に変形される。使用される特定の積層工程によっては、この変形は、マトリックス材料24を硬化させ、溶解させ、または接着させることにより、実現される。粉末粒子60がポリマーである場合は、それらは熱を使用して液体に融解され、次いで、レーザービーム38(図1)などのエネルギービームにより硬化される。粉末粒子60がガラス、セラミックまたは金属あるいは金属合金である場合には、粒子60の少なくとも外面層(図示せず)をともに融解するためのレーザービーム38などのエネルギービームを使用して焼結することにより、それらをともに溶解させ固体にする。代替的に、粒子60をまとめるマトリックス材料24の層42の選択された領域にバインダ(図示せず)をプリントすることにより、粉末粒子が選択的にまとめられる3Dプリント工程を使用して、粉末粒子60が固体に変形される。
【0048】
図4及び図5に関連して上述したように、粉末粒子60が固体または液体に変形される前に、磁場40を使用して、繊維25が配向される一方で、変形工程中にそれらを配向することも可能であるということに、ここでは注目すべきである。たとえば、限定はしないが、粉末粒子60がポリマー樹脂である場合に、粉末粒子60が融解して液体になった後で、且つ、液体ポリマーが硬化して固体になる前に、繊維25は配向される。
【0049】
図7を参照すると、開示される実施形態による部品22のダイレクトな製造方法は、磁性強化用繊維25などの磁性粒子が提供されるステップ62から始まる。先ほど述べたように、強化用繊維25は、一または複数の非磁性繊維を磁性材料でコーティングするまたは包み込むことにより製造される。ステップ64では、磁性強化用繊維25を混合することにより、磁性粒子25がマトリックス材料に導入される。ステップ66では、マトリックス材料の磁性粒子は、一または複数の電磁場40を磁性粒子25と結合させることにより配向される。部品22を支持するテーブルの上昇は、マトリックス材料24及び繊維25の層42を示すために、ステップ68で調節され、次いで、ステップ70で、部品22の特性が、レーザービームなどのエネルギービームを使用して形成され、磁性粒子が配向される間に、層42の選択された領域が凝固する。部品22の層42が形成されるまで、ステップ68及び70は繰り返される。先述の通り、粒子25が配向されるステップ66は、ステップ70と実質的に同時に実行される。
【0050】
図8は、四つの電磁石36の配列に沿った繊維レーザー33が可動ヘッド34上に取り付けられている装置20aの代替的実施形態を示す。各々の組の電磁石36が、繊維レーザー33により作り出されたエネルギービーム38により凝固されている層42の領域76と結合された磁場40を作り出するように、電磁石36は、軸方向に整列したペアの配列で配置される。この例では、乾燥粉末60及び磁性粒子25からなる層58は、選択的に溶解されている。76で示される領域は、繊維レーザー33により作り出されるレーザービーム38により融解及び溶解される工程の中にあり、且つ、磁性粒子25は、粉末60が融解及び溶解されている間に、電磁場36により一方向に整列して配向される。層58の連続層76上のパターン(図示せず)が溶解または凝固するように、ヘッド34は、デジタル3Dの部品定義に基づき、コントローラ45(図1)により制御され、層58上を移動する。粉末24の溶解、及びそれゆえのヘッド34の移動速度は、磁性粒子25の配向または再配置に必要とされる時間に同期しなければならない。このタイミングは、磁場強度及び融解する間の粉末24の粘着性を含む、多くの変わりやすいものにより決定される。
【0051】
図9は、図1及び図8に示された実施形態で使用される可動ヘッド34を必要としない装置の別の実施形態20bを示す。レーザー33は、磁性粒子25を含むマトリックス材料の層42上の連続的パターン(図示せず)を走査するスキャナ78及びレフレクタ80により制御されるレーザービーム38を生成する。この実施形態では、電磁石36は、テーブル26周囲に固定して取り付けられ、コントローラ45(図1)により制御され、ここでは強化用繊維25として示される、所望の磁性粒子を配向する電磁場40を生産する。この例では、部品22は、一般的な円筒体82a、及び、先細ネック82cによって接続された、直径が短く、一般的な円筒上端82bを有する。先述したように、部品82は、部品22の3Dデジタル定義を使用し、積層製造により、層42ごとに形成される。ボディ22の層42を形成する凝固したマトリックス材料24は、マシーン軸35に対して概して垂直に整列した磁性強化用繊維25を含み、上端22bの層42の磁性強化用繊維25は、マシーン軸35に対して実質的に平行に整列している。部品82の先細ネック22cでは、少なくともいくらかの強化用繊維25は、ネック82の先細の外形に適合するよう並べられる。それゆえ、部品82が層42ごとに製造される間に、磁性強化用繊維25の配向及び/または配置を変更するために、電磁石36により作り出された電磁場40の強度及び/または場所が変更されるということが理解できる。
【0052】
電磁石36の数、整列、及びレイアウトは、用途によって変えられる。たとえば、限定はしないが、図10は、マシーン軸35周囲の電磁石36の二列の円形配列を示す。図10に示される配列は、部品の各々の層が形成されるときに、磁性繊維25が異なる角度で配向される電磁場40の場所及び/または配列を形成及び変更する際に、付加的な柔軟性を提供する。
【0053】
図11は、電磁場40の場所及び配列を形成及び変更する際に柔軟性を提供する別の態様を示す。一または複数の組の電磁石36は、電磁石36がマシーン軸35の周囲を回転する及び/または相互に直交するx−y軸82のどちらかに沿って移動することを可能にする構台または他の構造55上に取り付けられる。この方法による電磁石36の配置及び/または配向の変更が使用され、電磁場40を誘導し、これによりマトリックス24内で磁性繊維25の配向及び/または配置を制御する。繊維25の整列及び/または配置は、電磁石36により作り出される磁場40の強度を制御することによっても、制御される。
【0054】
磁性繊維25などの磁性粒子を配向するために使用される電磁場40は、部品22の繊維25の配置を変更することにより、部品22の特性を形成するためにも使用される。たとえば、図12は、磁性の、導電性繊維25を含むマトリックス材料24の層42を示す。電磁場40(図1)は、繊維25を一方向に整列させ、層42の外側境界86に移動させる(矢印88)方法で、マトリックス材料24及び繊維25の混合物に適用される。図13に示すように、外側境界86に繊維25を再配置すると、結果的に、導電性の凝固した層42上に連続的な外側金属層90を形成するために繊維25が蓄積する。そのような導電性の層90は、限定はしないが、落雷からの航空機外板(図示せず)の保護など、広範囲の用途で役立つ。
【0055】
次に、電磁場40が部品特性を形成するための積層製造工程で使用されるさらなる例を示す図14に注目する。この例では、金属繊維25としてもよい、磁性粒子25をマトリックス材料24内に移動させる(矢印88)ために電磁場40を使用して、連続的導電体90が、マトリックス材料24の層42内部で形成される。繊維25が再配置され、磁場40の影響下で共に移動する間に、それらは一方向に整列し配向される。図15は、図14で示される導電体の一部分を拡大した図である。電磁場40は、繊維25を端から端まで整列し、それらを並べて配置する。互いの相対的な関係を示すために、図15においては、繊維25の間にわずかな空間が示されているが、完全に配向され且つ配置されれば、実際には端から端まで並んで電気的に接続される。
【0056】
本発明の実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、例えば航空宇宙、船舶、自動車、及び自動化レイアップ装備が使用される他への応用を含む特に輸送産業の分野に用途を見出すことができる。したがって、図16及び図17に示すように、本発明の実施形態は、図16に示す航空機の製造及び保守方法94、及び図17に示す航空機96に関して使用することが可能である。開示された実施形態の航空機への使用とは、たとえば、限定はしないが、ハッチ、カバー、補強材、外板及び他の部品が含まれる。製造前の段階では、例示的な方法94は、航空機96の仕様及び設計98と、材料調達100とを含みうる。製造段階では、航空機96のコンポーネント及びサブアセンブリの製造102と、システムインテグレーション104とが行われる。したがって、航空機96は運航108に供するために、認可及び納品106が行われる。顧客により運航される間に、航空機96は、改造、再構成、改修なども含む定期的な整備及び保守110を受ける。
【0057】
方法94の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0058】
図17示されるように、代表的方法94によって製造された航空機96は、複数のシステム114及び内装116を有する機体112を含むことができる。高レベルのシステム114の例には、推進システム118、電気システム120、油圧システム122、及び環境システム124のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0059】
本明細書に具現化されたシステムと方法は、製造及び保守方法94の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造プロセス102に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機96の運航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造しうる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機96の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機126のコストを削減することにより、製造段階102及び104の間に利用することができる。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせを、航空機96の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守110の一部に利用することができる。
【0060】
上述した種々の好適な実施形態の説明は、例示及び説明を目的とするものであり、完全な説明であること、又はこれらの実施形態を開示された形態に限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。さらに、種々の好適な実施形態は、他の好適な実施形態に照らして別の利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態の開示と、考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を促すために選択及び記述されている。
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ダイレクトデジタル製造技術に関するもので、特に積層方法、より具体的には繊維強化ポリマー樹脂部品の製造用法及び装置、及びその部品を組み立てるために使用される材料混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
これから積層製造(AM)として述べられる、ダイレクトデジタル製造(DDM)は、コンピュータ制御された積層組立技術を使用して、3DのCAD(コンピュータ支援設計)ファイルから直接物理的部品を製造する工程である。従来の積層製造技術とは、いくつか例を挙げると、ステレオリソグラフィ(SLA)、熱溶解積層法(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)及び3次元印刷(3DP)である。これら各々の工程は、粉末状または液状の建築材料を局部的に溶解または硬化させることによって、層ごとの、3次元的な一体型部品を組み立てる。たとえば、SLA工程では、紫外線レーザー及び紫外線硬化性液体フォトポリマー樹脂のバットを使用する際に、部品層が組み立てられる。各々の層で、レーザーは、部品の3DのCADデータモデルに基づき、液体樹脂の表面の部品断面パターンをトレースする。紫外線レーザー光にさらされると、樹脂上でトレースされたパターンが硬化及び凝固し、層の下に付着する。パターンがトレースされた後に、エレベータープラットフォームは単独の層の厚さ分だけ下降し、且つ樹脂が充填されたブレードが部品の部分を一掃し、未使用の材料で再コーティングされる。この工程は、部品が完成するまで、層ごとに続く。
【0003】
SLSは、高出力レーザーを使用し、プラスチックまたは金属、セラミックまたはガラスの粉末の小粒子を溶解し、所望の3次元形状を有する塊にする。粉末ベッドの表面上で部品の3次元デジタル記述(CADモデル)から生成される断面を走査することにより、レーザーは選択的に粉末の建築材料を溶解する。各々の断面が走査されると、粉末ベッドは一層の厚さ分下げられ、材料の新しい層が最上部に適用され、この工程は部品が完成するまで繰り返される。
【0004】
3DP工程は、部品のCADモデルの各々の層の詳細な情報を得るために、スライスアルゴリズムを使用する。各々の層は、粉末ベッドの表面に粉末を薄く散布することから始まる。インクジェット印刷に類似した技術を使用し、バインダー材料は、物質を形成する粒子に選択的に結合する。次の粉末層が広がり選択的に結合するように、粉末ベッド及び進行中の部品を支持するピストンが下降する。熱処理に続き、組み立てられた部品を残して、結合しない粉末は除去される。
【0005】
積層製造技術により生産される部品を強化するために、強化用粒子、従来は短ミルド繊維または短繊維が、部品を組み立てるために使用される粉末または液体樹脂に導入されていた。しかしながら、繊維に粉末または樹脂混合物がランダムに配合されたので、繊維がランダムな別個の配向を有することになった。このような繊維強化により、それらが組み立てられる機械の軸に対し、高い異方性の強化を生じる結果となった。
【0006】
従って、部品の等方性の強化及び方向性の強度を提供するために、強化用繊維が選択的に配向される繊維強化部品のダイレクトデジタル製造方法及び装置が必要とされている。また、様々な積層製造工程で使用される建築材料における短強化用繊維または他の粒子の配置及び/または整列方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示される実施形態によれば、方法及び装置は、建築材料で使用される繊維強化材料の配向及び/または配置を制御する繊維強化部品のダイレクトデジタル製造を提供する。エネルギー源が選択的に周囲のマトリックス材料を凝固する間に、短い強化用繊維の配置及び/または配向は、繊維を制御された電磁場に結合することにより影響を受ける。3つのデカルトの空間座標及び繊維配向のための各々の体積(別名、ボクセル)のベクトルに沿った組立建築工程中に、時間次元を考慮することにより、繊維配向が制御される。強化繊維の配置及び/または配向のデジタル制御により、部品の機械的及び/または電気的性能、及び/または特徴が結果的に改良される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの開示される実施形態によれば、方法は、磁性粒子を提供するステップ、及び磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップを含む、部品を製造するステップを提供する。方法は、粒子を電磁場内に結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び粒子を配向する間に、マトリックス材料を凝固させるステップをさらに含む。粒子を電磁場に結合するステップは、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接して配置するステップ、電磁石を整列するステップ、及び電磁場を生成するために電磁石を使用するステップを含む。粒子を配向するステップは、所望の方向に粒子を整列するステップ、及び/またはマトリックス材料内に部品特性を形成するために粒子を移動させるステップを含むことができる。マトリックス材料を硬化させるステップは、エネルギービームを使用して実行することができる。粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップ、及び/または合成繊維の束を形成し、各々の束を磁性金属で包み込むまたはコーティングするステップを含む。マトリックス材料は粉末を含むことができ、且つ、マトリックス材料は粉末を焼結することにより凝固される。
【0009】
別の実施形態によれば、方法は、繊維強化複合部品を製造するステップを提供する。方法は、液体ポリマー樹脂の層を提供するステップ、及び液体樹脂に磁性強化用繊維を浮遊させるステップを含む。方法は、液体樹脂内に繊維を配向するために電磁場を使用して電磁場を生成するステップ、及び液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップをさらに含む。方法は、繊維を配向し且つ液体樹脂層内で所望のパターンで樹脂を硬化させるために、液体樹脂層上でエネルギービーム及び電磁場を移動させるステップをさらに含む。液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップは、層を走査して層の部分を選択的に硬化させるためにコンピュータ制御された紫外線レーザーを使用して実行することができる。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、ダイレクトデジタル製造方法は、部品を生産するステップを提供する。方法は、マトリックス材料の混合物及び磁気特性を示す細長い強化用繊維を提供するステップ、及び部品のデジタル定義に基づいて、層ごとの、ポリマー樹脂の部分を選択的に硬化させるためにデジタル的に制御されたエネルギービームを使用するステップを含む。方法は、少なくともエネルギービームにより硬化される部分において磁性繊維を整列するために、エネルギー場を使用するステップをさらに含む。繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップは、電磁石を使用して実行することができる。マトリックス材料は粉末とし、且つ、マトリックス材料の凝固は粉末を焼結することにより実行することができる。マトリックス材料は液体樹脂とし、繊維は液体樹脂で浮遊できる。繊維は、アラミド、ガラス及び炭素のうちの少なくとも一を含む短繊維またはミルド繊維とすることができる。樹脂はポリアミド粉末とすることができる。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、材料混合物は、部品を組み立てるための積層製造工程での使用を提供する。混合物は、選択的に凝固されるマトリックス材料、及び磁性粒子を含む。磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含み、且つ、マトリックス材料は、ポリマー粉末、フォトポリマー液、金属粉末、及びガラスマイクロスフェアのうちの一とすることができる。マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とし、且つ、磁性粒子は、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または、およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含むことができる。磁性粒子は、非磁性の強化用繊維の束、及び各々の束の周囲に磁性材料の層を含むことができる。
【0012】
別の実施形態によれば、装置は、部品のダイレクトデジタル製造を提供する。装置は、磁性粒子を含むマトリックス材料の供給、部品を形成するために層ごとにマトリックス材料を選択的に凝固するためのエネルギービーム、マトリックス内の3次元空間に磁性粒子を配向するための電磁石、及び部品のデジタル定義に基づきエネルギービーム及び電磁石を制御するためのコントローラを有する。電磁石は、マトリックスの磁性粒子と結合された電磁場を生成する整列された組で配列され、且つ、コントローラはエネルギービームの作用を電磁石による粒子の配向に同期させる。
【0013】
つまり、本発明の一態様によれば、磁性粒子を提供するステップ、磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップ、粒子を電磁場と結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む、部品の製造方法が提供される。
【0014】
好適には、方法において、粒子を電磁場に結合するステップは、電磁石を互いに対して整列するステップを含む、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接して配置するステップ、及び電磁場を生成するために電磁石を使用するステップを含む。
【0015】
好適には、方法において、粒子を配向するステップは、マトリックス材料内に粒子を再配置するステップを含む。
【0016】
好適には、方法において、粒子を配向するステップは、粒子を所望の方向に整列するステップを含む。
【0017】
好適には、方法は、磁性粒子を再配置することにより、部品の特性を形成するために、電磁場を使用するステップをさらに含む。
【0018】
好適には、方法において、粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップを含む。
【0019】
好適には、方法において、粒子を提供するステップは、合成繊維の束を形成するステップ、及び各々の束を磁性金属で包み込むステップを含む。
【0020】
好適には、方法において、マトリックス材料は粉末とし、硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される。
【0021】
本発明の別の態様では、繊維強化複合部品の製造方法であって、液体ポリマー樹脂の層を提供するステップ、磁性強化用繊維を液体樹脂に浮遊させるステップ、電磁場を生成するステップ、液体樹脂内に繊維を配向するために電磁場を使用するステップ、及び液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップを含む方法が提供される。
【0022】
好適には、方法は、繊維を配向し、且つ液体樹脂層内であるパターンで樹脂を硬化させるために、液体樹脂層上でエネルギービーム及び電磁場を移動させるステップをさらに含む。
【0023】
好適には、方法において、電磁場を生成するステップは、少なくとも二つの整列した電磁石を使用して実行される。
【0024】
好適には、方法において、繊維は、磁性材料により囲まれた実質的に非磁性の材料を含む。
【0025】
好適には、方法において、液体樹脂を硬化させるためにエネルギービームを使用するステップは、層を走査して層の部分を選択的に硬化させるためにコンピュータ制御された紫外線レーザーを使用して実行される。
【0026】
本発明のさらに別の態様では、部品を生産するためのダイレクトデジタル製造方法であって、マトリックス材料の混合物及び磁気特性を示す細長い強化用繊維を提供するステップ、部品のデジタル定義に基づいて、層ごとの、マトリックス材料の部分を選択的に硬化させるためにデジタル的に制御されたエネルギービームを使用するステップ、及び、3次元空間で磁性繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップを含む方法が提供される。
【0027】
好適には、方法において、繊維を整列するためにエネルギー場を使用するステップは、電磁石を使用して実行される。
【0028】
好適には、方法において、マトリックス材料は粉末とし、マトリックス材料を硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される。
【0029】
好適には、方法において、マトリックス材料液体ポリマー樹脂、及び繊維は、液体樹脂で浮遊する。
【0030】
本発明のさらに別の態様では、部品を組み立てるための積層製造工程で使用する材料混合物であって、選択的に凝固されるマトリックス材料、及び磁性粒子を含む混合物が提供される。
【0031】
好適には、混合物において、磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含む。
【0032】
好適には、混合物において、マトリックス材料は、ポリマー粉末、フォトポリマー液、金属粉末、及びガラスマイクロスフェアのうちの一とする。
【0033】
好適には、混合物において、マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とする。
【0034】
好適には、混合物において、磁性粒子は、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または、およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含む。
【0035】
好適には、混合物において、磁性粒子は、非磁性の強化用繊維の束、及び各々の束の周囲に磁性材料の層を含む。
【0036】
本発明の別の態様では、部品のダイレクトデジタル製造装置であって、磁性粒子を含むマトリックス材料の供給、部品を形成するために層ごとにマトリックス材料を選択的に凝固するためのエネルギービーム、マトリックス内の3次元空間に磁性粒子を配向するための電磁石、及び部品のデジタル定義に基づきエネルギービーム及び電磁石を制御するためのコントローラを有する装置が提供される。
【0037】
好適には、装置において、電磁石は、マトリックスで電磁場を磁性粒子と結合する電磁場を生成する整列された組で配列され、且つ、コントローラは、電磁石により、エネルギービームの作用を粒子の配向に同期させる。
【0038】
上述のフィーチャ、機能、及び利点は、本発明の種々の実施形態において単独で達成することができるか、又は他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態のさらなる詳細は、後述の説明及び図面を参照して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
新規のフィーチャと考えられる好適な実施形態の特徴は、特許請求の範囲に明記される。しかしながら、好適な実施形態と、好ましい使用モードと、さらにはその目的及び利点とは、添付図面とともに本発明の好適な一実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【図1】フォトポリマーを使用する繊維強化部品のダイレクトデジタル製造装置のブロック図及び概略図を組み合わせたものである。
【図1A】図1の装置によって作り出された、整列された磁場のインターセクションを示す、図1内の図1Aとして示される領域を図示したものである。
【図2】磁性強化用繊維の透視図を示すものである。
【図3】磁性外筒によって囲まれた強化用繊維の束の透視図を示すものである。
【図4】乾燥粉末マトリックス及びランダムに配向された磁性強化用繊維の混合物からなる層を示すものである。
【図5】図4に類似した図であるが、電磁場により一方向に整列した粉末マトリックス内に配向された繊維を示すものである。
【図6】図5に類似した図であるが、繊維が配向されている状態で、融解及び硬化、または溶解された粉末を示すものである。
【図7】繊維強化部品のダイレクトデジタル製造方法のフロー概略図を示すものである。
【図8】磁性繊維及び乾燥粉末の混合物から形成される部品層に関する装置の一実施形態の側面図を示す。
【図9】繊維強化部品が完全に形成されたことを示す、装置の別の実施形態のブロック図及び断面図を組み合わせたものである。
【図10】図1、図8及び図9に示させる実施形態における電磁場を生成するために使用される電磁石の配列を示す平面図を示す。
【図11】機械軸に対して電磁石を配向するための構台システムの上面概略図を示す。
【図12】電磁場にさらされる前に、磁性強化用繊維が浮遊される液体樹脂の層を示す。
【図13】図12に類似した図であるが、電磁場が適用された後に、硬化した層に連続した導電性の外表面を形成するために、部品の外側境界に移動した磁性強化用繊維を示すものである。
【図14】図13に類似した図であるが、内部導電体を形成するために、電磁場により配置された繊維を示すものである。
【図15】導電体を形成するために、端から端まで整列された繊維を示す、図14内の図15として示される領域を図示したものである。
【図16】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【図17】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を参照すると、ダイレクトデジタル製造技術を使用して部品22を組み立てる装置20は、概して、実施形態では液体ポリマー樹脂とされる適切な建築材料24を含むバット32内のテーブル26上を移動するヘッド34を備える。後に“マトリックス”または“マトリックス材料”として述べられる建築材料24は、いくつか例を挙げると、エキシポ樹脂またはポリエステル樹脂などの熱硬化性プラスチック、アルミニウム、チタン、鉄及びニッケルなどの金属、ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などのセラミック、及びポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、硫化ポリフェニレン、ポリフタラミド及びガラス質ミクロスフェアなどの熱可塑性物質を含むが限定しない、用途や使用される積層工程によって、硬化性の、接着性のまたは可溶性のいかなる種類の材料をも含むことができる。
【0041】
テーブル26は、セントラルマシーン軸35に沿って、ピストン28または他の適切な機構によって、バット32内を上昇または下降する30。一つの実施形態では、マトリックス材料24は、およそ100cpと2000cpとの間の粘着性を持つフォトポリマー樹脂を有し、それは、UV(紫外線)レーザービーム38を液体樹脂上に向けるヘッド34でUVレーザー33を使用して、連続層42で選択的に凝固される。特定のマトリックス材料24及び使用される積層工程によっては、限定はしないが、IR(赤外線)ビームまたは電子ビームなどのマトリックス材料24を硬化または溶解するために、他のエネルギービームが使用される。限定はしないが、短繊維またはミルド強化用繊維25などの磁性粒子は、マトリックス材料24に混合され且つその中で浮遊され、実質的に均質または均質でない混合物を形成する。繊維25以外の、または繊維25に加えて、磁性粒子は、マトリックス材料24に混合され、所望の部品特性を得る。ここで使用されるように、“磁性粒子”、“磁性繊維”、及び“磁性材料”とは、粒子、繊維、または適用される磁界に応じて磁場を作り出す他の材料、特に強磁性またはフェリ磁性の材料を指す。
【0042】
繊維25は、磁性金属、または、一または複数の磁性金属または金属合金を組み合わせたもの、及び、限定はしないが、ポリマー、ガラスまたはミネラルなどの非磁性の材料を含む。適切な金属をいくつか挙げると、限定はしないが、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの合金である。繊維25は、それ自体が永久磁石を有しており、結果として製造される部品22は、永久磁石複合材料を含む。繊維25の縦横比(長さと直径の比)は、マトリックス材料の粘着性など変わりやすいものだけではなく、特定の用途、マトリックス材料24、電磁場の強度、及び使用される積層工程に合わせて選択される。しかしながら、繊維25及び電磁場40により形成される磁気回路の磁気抵抗を最小限にするために、概して、相対的に高い縦横比を有する繊維を選択することが望ましい。混合物の繊維25の体積は、およそ20%から50%の範囲内の体積分率とされる。一つの例では、繊維25は、磁性金属でコーティングされた、およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短合成繊維が含まれる。別の例では、繊維25は、やはり磁性金属でコーティングされた、50ミクロンと500ミクロンとの間の長さを持つミルド繊維としてもよい。さらに実用的な実施形態では、マトリックス材料は、重量のおよそ20%と99%との間の量で、好ましくは重量の50%と90%との間の量の混合物に存在するポリマー粉末を含む。
【0043】
ヘッド34は、マシーン軸35に対して互いに整列した一または複数の組の電磁石36を有し、電磁場40を生成しているが、これらは、図1Aに示されるように、たとえば、概してマシーン軸35(図1)に平行となるような、所望の方向に沿って部品20を硬化させるために、協同して磁性強化用繊維25を所望の方向へ配向する。磁気抵抗が最小となるよう縦軸54が電磁場40のパワー37の線と整列するように、磁性繊維25は整列する。詳細は後述するが、電磁場40は、マトリックス24内の所望の領域(図示せず)に繊維25を移動させることにより、それらを配置するためにも使用される。マトリックス材料を凝固するために使用されるエネルギーの適用に対して、電磁石36は、3次元的な空間及び時間で、繊維24の配向及び/または配置を制御する。レーザー33、ヘッド34及び電磁石36は、適切な電源44に結合され、コントローラ45により制御される。電磁場40の形状及び/または配向は、磁性繊維25の種類、サイズ及び/または密度だけではなく、電磁石36の配置及び/または配向にもよって決まる。
【0044】
コントローラ45は、電子ファイル記憶装置48から、CADなどの部品22の3Dデジタル定義にアクセスするプロブラム化されたコンピュータを備える。コントローラ45は、3DのCADファイルを使用し、レーザー33及び電磁石36の作用に同期したヘッド34の移動を制御し、磁性繊維25を配向及び/または配置し、且つ、樹脂24の各々の層42の部分を選択的に凝固し、接着し、または溶解することによって、部品22を生産する。部品22の各々の層42が完成すると、テーブル26は下降し、ヘッド34が次いで部品22の次の層42を形成する。図1で示される例及び以下で述べられる他の実施形態において、レーザー33及び電磁石36はヘッド34に沿って移動可能であるが、その代わりに、それらは固定的に取り付けられてもよい。
【0045】
上述したように、繊維25は、磁性及び非磁性金属材料の組み合わせを有する。たとえば、図2を参照すると、繊維25は、限定はしないが、ニッケルまたはニッケル合金を含む磁性金属カバーまたはコーティング52により囲まれた、限定はしないが、炭素繊維などの高力合成繊維中心部50を有する。他の磁性コーティングも可能である。図3は、適切な磁性金属または磁性合金の磁性外面層52により囲まれた束56に配列された複数の別個のポリマー繊維50を有する磁性繊維25aの代替形態を示す。図1Aに示すように、電磁石36(図1)により作り出される整列された磁場40と結合されると、縦軸54が実質的に互いに平行に整列し且つ磁場40のパワー37の線と平行になるように、磁場40は繊維25及び25aを配向する。
【0046】
開示される方法及び装置は、図1に示されるように、マトリックス材料24が液体樹脂としてよりはむしろ粉末形態で供給される繊維強化部品を組み立てるために使用される。たとえば、図4は、磁性繊維25(または他の磁性粒子)が均一にまたは非均一に混合された乾燥粉末粒子またはビーズ60のマトリックス24を含む層42の一部分を示す。繊維25は、概してランダムな配向を持つ。
【0047】
図5を参照すると、電磁場40(図1)がマトリックス24に適用されると、繊維25は、乾燥粉末粒子60内に一方向に整列して配向される。次いで、図6に示すように、乾燥粉末粒子60は、整列した繊維25を囲む固体マトリックス24に変形される。使用される特定の積層工程によっては、この変形は、マトリックス材料24を硬化させ、溶解させ、または接着させることにより、実現される。粉末粒子60がポリマーである場合は、それらは熱を使用して液体に融解され、次いで、レーザービーム38(図1)などのエネルギービームにより硬化される。粉末粒子60がガラス、セラミックまたは金属あるいは金属合金である場合には、粒子60の少なくとも外面層(図示せず)をともに融解するためのレーザービーム38などのエネルギービームを使用して焼結することにより、それらをともに溶解させ固体にする。代替的に、粒子60をまとめるマトリックス材料24の層42の選択された領域にバインダ(図示せず)をプリントすることにより、粉末粒子が選択的にまとめられる3Dプリント工程を使用して、粉末粒子60が固体に変形される。
【0048】
図4及び図5に関連して上述したように、粉末粒子60が固体または液体に変形される前に、磁場40を使用して、繊維25が配向される一方で、変形工程中にそれらを配向することも可能であるということに、ここでは注目すべきである。たとえば、限定はしないが、粉末粒子60がポリマー樹脂である場合に、粉末粒子60が融解して液体になった後で、且つ、液体ポリマーが硬化して固体になる前に、繊維25は配向される。
【0049】
図7を参照すると、開示される実施形態による部品22のダイレクトな製造方法は、磁性強化用繊維25などの磁性粒子が提供されるステップ62から始まる。先ほど述べたように、強化用繊維25は、一または複数の非磁性繊維を磁性材料でコーティングするまたは包み込むことにより製造される。ステップ64では、磁性強化用繊維25を混合することにより、磁性粒子25がマトリックス材料に導入される。ステップ66では、マトリックス材料の磁性粒子は、一または複数の電磁場40を磁性粒子25と結合させることにより配向される。部品22を支持するテーブルの上昇は、マトリックス材料24及び繊維25の層42を示すために、ステップ68で調節され、次いで、ステップ70で、部品22の特性が、レーザービームなどのエネルギービームを使用して形成され、磁性粒子が配向される間に、層42の選択された領域が凝固する。部品22の層42が形成されるまで、ステップ68及び70は繰り返される。先述の通り、粒子25が配向されるステップ66は、ステップ70と実質的に同時に実行される。
【0050】
図8は、四つの電磁石36の配列に沿った繊維レーザー33が可動ヘッド34上に取り付けられている装置20aの代替的実施形態を示す。各々の組の電磁石36が、繊維レーザー33により作り出されたエネルギービーム38により凝固されている層42の領域76と結合された磁場40を作り出するように、電磁石36は、軸方向に整列したペアの配列で配置される。この例では、乾燥粉末60及び磁性粒子25からなる層58は、選択的に溶解されている。76で示される領域は、繊維レーザー33により作り出されるレーザービーム38により融解及び溶解される工程の中にあり、且つ、磁性粒子25は、粉末60が融解及び溶解されている間に、電磁場36により一方向に整列して配向される。層58の連続層76上のパターン(図示せず)が溶解または凝固するように、ヘッド34は、デジタル3Dの部品定義に基づき、コントローラ45(図1)により制御され、層58上を移動する。粉末24の溶解、及びそれゆえのヘッド34の移動速度は、磁性粒子25の配向または再配置に必要とされる時間に同期しなければならない。このタイミングは、磁場強度及び融解する間の粉末24の粘着性を含む、多くの変わりやすいものにより決定される。
【0051】
図9は、図1及び図8に示された実施形態で使用される可動ヘッド34を必要としない装置の別の実施形態20bを示す。レーザー33は、磁性粒子25を含むマトリックス材料の層42上の連続的パターン(図示せず)を走査するスキャナ78及びレフレクタ80により制御されるレーザービーム38を生成する。この実施形態では、電磁石36は、テーブル26周囲に固定して取り付けられ、コントローラ45(図1)により制御され、ここでは強化用繊維25として示される、所望の磁性粒子を配向する電磁場40を生産する。この例では、部品22は、一般的な円筒体82a、及び、先細ネック82cによって接続された、直径が短く、一般的な円筒上端82bを有する。先述したように、部品82は、部品22の3Dデジタル定義を使用し、積層製造により、層42ごとに形成される。ボディ22の層42を形成する凝固したマトリックス材料24は、マシーン軸35に対して概して垂直に整列した磁性強化用繊維25を含み、上端22bの層42の磁性強化用繊維25は、マシーン軸35に対して実質的に平行に整列している。部品82の先細ネック22cでは、少なくともいくらかの強化用繊維25は、ネック82の先細の外形に適合するよう並べられる。それゆえ、部品82が層42ごとに製造される間に、磁性強化用繊維25の配向及び/または配置を変更するために、電磁石36により作り出された電磁場40の強度及び/または場所が変更されるということが理解できる。
【0052】
電磁石36の数、整列、及びレイアウトは、用途によって変えられる。たとえば、限定はしないが、図10は、マシーン軸35周囲の電磁石36の二列の円形配列を示す。図10に示される配列は、部品の各々の層が形成されるときに、磁性繊維25が異なる角度で配向される電磁場40の場所及び/または配列を形成及び変更する際に、付加的な柔軟性を提供する。
【0053】
図11は、電磁場40の場所及び配列を形成及び変更する際に柔軟性を提供する別の態様を示す。一または複数の組の電磁石36は、電磁石36がマシーン軸35の周囲を回転する及び/または相互に直交するx−y軸82のどちらかに沿って移動することを可能にする構台または他の構造55上に取り付けられる。この方法による電磁石36の配置及び/または配向の変更が使用され、電磁場40を誘導し、これによりマトリックス24内で磁性繊維25の配向及び/または配置を制御する。繊維25の整列及び/または配置は、電磁石36により作り出される磁場40の強度を制御することによっても、制御される。
【0054】
磁性繊維25などの磁性粒子を配向するために使用される電磁場40は、部品22の繊維25の配置を変更することにより、部品22の特性を形成するためにも使用される。たとえば、図12は、磁性の、導電性繊維25を含むマトリックス材料24の層42を示す。電磁場40(図1)は、繊維25を一方向に整列させ、層42の外側境界86に移動させる(矢印88)方法で、マトリックス材料24及び繊維25の混合物に適用される。図13に示すように、外側境界86に繊維25を再配置すると、結果的に、導電性の凝固した層42上に連続的な外側金属層90を形成するために繊維25が蓄積する。そのような導電性の層90は、限定はしないが、落雷からの航空機外板(図示せず)の保護など、広範囲の用途で役立つ。
【0055】
次に、電磁場40が部品特性を形成するための積層製造工程で使用されるさらなる例を示す図14に注目する。この例では、金属繊維25としてもよい、磁性粒子25をマトリックス材料24内に移動させる(矢印88)ために電磁場40を使用して、連続的導電体90が、マトリックス材料24の層42内部で形成される。繊維25が再配置され、磁場40の影響下で共に移動する間に、それらは一方向に整列し配向される。図15は、図14で示される導電体の一部分を拡大した図である。電磁場40は、繊維25を端から端まで整列し、それらを並べて配置する。互いの相対的な関係を示すために、図15においては、繊維25の間にわずかな空間が示されているが、完全に配向され且つ配置されれば、実際には端から端まで並んで電気的に接続される。
【0056】
本発明の実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、例えば航空宇宙、船舶、自動車、及び自動化レイアップ装備が使用される他への応用を含む特に輸送産業の分野に用途を見出すことができる。したがって、図16及び図17に示すように、本発明の実施形態は、図16に示す航空機の製造及び保守方法94、及び図17に示す航空機96に関して使用することが可能である。開示された実施形態の航空機への使用とは、たとえば、限定はしないが、ハッチ、カバー、補強材、外板及び他の部品が含まれる。製造前の段階では、例示的な方法94は、航空機96の仕様及び設計98と、材料調達100とを含みうる。製造段階では、航空機96のコンポーネント及びサブアセンブリの製造102と、システムインテグレーション104とが行われる。したがって、航空機96は運航108に供するために、認可及び納品106が行われる。顧客により運航される間に、航空機96は、改造、再構成、改修なども含む定期的な整備及び保守110を受ける。
【0057】
方法94の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0058】
図17示されるように、代表的方法94によって製造された航空機96は、複数のシステム114及び内装116を有する機体112を含むことができる。高レベルのシステム114の例には、推進システム118、電気システム120、油圧システム122、及び環境システム124のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0059】
本明細書に具現化されたシステムと方法は、製造及び保守方法94の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造プロセス102に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機96の運航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造しうる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機96の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機126のコストを削減することにより、製造段階102及び104の間に利用することができる。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせを、航空機96の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守110の一部に利用することができる。
【0060】
上述した種々の好適な実施形態の説明は、例示及び説明を目的とするものであり、完全な説明であること、又はこれらの実施形態を開示された形態に限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。さらに、種々の好適な実施形態は、他の好適な実施形態に照らして別の利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態の開示と、考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を促すために選択及び記述されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の製造方法であって、
磁性粒子を提供するステップ、
磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップ、
粒子を電磁場と結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び
粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む、方法。
【請求項2】
粒子を電磁場に結合するステップは、
電磁石を互いに整列するステップを含む、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接するように配置するステップ、及び
電磁場を生成するために、電磁石を使用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子を配向するステップは、粒子をマトリックス材料内に再配置するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粒子を配向するステップは、粒子を所望の方向に整列するステップを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
磁性粒子を再配置することにより部品の特性を形成するために、電磁場を使用するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
粒子を提供するステップは、
合成繊維の束を形成するステップ、及び
各々の束を磁性金属で包み込むステップを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
マトリックス材料は粉末とし、及び
硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
部品を組み立てるための積層製造工程で使用する材料混合物であって、
選択的に凝固されるマトリックス材料、及び
磁性粒子を含む、材料混合物。
【請求項10】
磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含む、請求項9に記載の材料混合物。
【請求項11】
マトリックス材料は、
ポリマー粉末、
フォトポリマー液、
金属粉末、及び
ガラスマイクロスフェアのうちの一とする、請求項9または10に記載の混合物。
【請求項12】
マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項13】
磁性粒子は、
およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または
およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
磁性粒子は、
非磁性の強化用繊維の束、及び
各々の束の周囲に磁性材料の層を含む、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項1】
部品の製造方法であって、
磁性粒子を提供するステップ、
磁性粒子をマトリックス材料に導入するステップ、
粒子を電磁場と結合することにより、粒子をマトリックス材料に配向するステップ、及び
粒子を配向する間に、マトリックス材料を硬化させるステップを含む、方法。
【請求項2】
粒子を電磁場に結合するステップは、
電磁石を互いに整列するステップを含む、少なくとも一組の電磁石をマトリックス材料に隣接するように配置するステップ、及び
電磁場を生成するために、電磁石を使用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子を配向するステップは、粒子をマトリックス材料内に再配置するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粒子を配向するステップは、粒子を所望の方向に整列するステップを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
磁性粒子を再配置することにより部品の特性を形成するために、電磁場を使用するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子を提供するステップは、細長い合成繊維を磁性金属でコーティングするステップを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
粒子を提供するステップは、
合成繊維の束を形成するステップ、及び
各々の束を磁性金属で包み込むステップを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
マトリックス材料は粉末とし、及び
硬化させるステップは、粉末を焼結することにより実行される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
部品を組み立てるための積層製造工程で使用する材料混合物であって、
選択的に凝固されるマトリックス材料、及び
磁性粒子を含む、材料混合物。
【請求項10】
磁性粒子は、磁気コーティングされた、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維のうちの少なくとも一を含む、請求項9に記載の材料混合物。
【請求項11】
マトリックス材料は、
ポリマー粉末、
フォトポリマー液、
金属粉末、及び
ガラスマイクロスフェアのうちの一とする、請求項9または10に記載の混合物。
【請求項12】
マトリックス材料は、重量でおよそ50%と90%との間の量で混合物に存在するポリマー粉末とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項13】
磁性粒子は、
およそ3mmと6mmとの間の長さを持つ短繊維、または
およそ50micronと500micronとの間の長さを持つミルド繊維を含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
磁性粒子は、
非磁性の強化用繊維の束、及び
各々の束の周囲に磁性材料の層を含む、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の混合物。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−63641(P2013−63641A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−179461(P2012−179461)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179461(P2012−179461)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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