繊維束及びウェブ
【課題】ウェブ、およびウェブを用いて得られる製品の物性や性能と、生産性、操業性、コストのバランスに優れた繊維束を提供する。そのような繊維束を使用するウェブの製造方法を提供する。さらに均一で嵩高い、風合いに優れたウェブを提供する。
【解決手段】繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束。
【解決手段】繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な集束性と開繊性を有する繊維束、及びそれを開繊して得られる嵩高性と柔軟な風合いを特徴とするウェブに関する。本発明は更に詳しくは、梱包、物流、引き上げ工程では繊維密度が高い状態で集束しており、開繊工程において該繊維束を延伸したときに、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現し、そのスパイラル捲縮の発現力によって繊維1本1本が開繊することを特徴とする繊維束に関する。本発明はさらに、その繊維束を開繊して得られる嵩高性を特徴とするウェブ、及びウェブを用いて得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層や、掃除用モップやワイパーのワイピング部などに、例えばPE/PP、PE/PET、PP/PETなどの熱可塑性複合繊維が使用されている。そして、この熱可塑性複合繊維として連続した繊維束を開繊したウェブを用いる場合がある。
【0003】
連続した繊維束は、捲縮が付与された熱可塑性複合連続繊維同士が、お互いに密着するように集束しており、繊維密度が高い状態で存在する。これを前記吸収性物品の表面層や、ワイパーなどのワイピング部などに加工する際には、その製造工程において、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維を幅方向にお互いに分離させて、見かけ幅を広げる工程、すなわち開繊工程を経る。この開繊工程を経ることで、熱可塑性複合連続繊維同士が集束した、繊維密度が高い状態である繊維束から、熱可塑性複合連続繊維同士が解れた、繊維密度が低い状態であるウェブを得ることができる。そうして得られた幅方向にほぼ均一な繊維密度、嵩を有するウェブから、吸収性物品の表面層や、ワイパーなどのワイピング部などが製造される。
【0004】
繊維束を開繊して均一なウェブを得るために、種々の方策が採られている。例えば特許文献1には、顕在捲縮および/または潜在捲縮を有する、単糸繊度0.5〜100デニール、全繊度1万〜30万デニール、顕在捲縮数が10〜50山/25mmであるトウ(繊維束)は、延伸開繊時の開繊幅が適当な範囲にあり、高速度で均一に開繊できることが記載されている。しかしながら、更に効率的に嵩高なウェブが得られる繊維束や、嵩高なウェブが求められている。
特許文献2には、速度差のあるロール間においてトウ(繊維束)に張力を与えた後に弾性的に収縮させ、捲縮に伸びと縮みを与えて開繊する方法において、ロール間のトウに摺動するプレートを接触させることで、繊維に移送方向へのずれが生じ、開繊性が向上することが記載されている。しかしながら、設備に摺動プレートを設置する必要性や、トウと摺動プレートが接触することによる操業性の低下を考慮すると、少なからずコストアップに繋がる。
このように、繊維束を開繊して均一なウェブを高い生産性で得ようとする検討は、材料である繊維束の改良と、開繊方法の改良の、両面からなされている。しかし、得られるウェブ、およびウェブを用いて得られる製品の物性や性能と、生産性、操業性、コストを考えると、未だ満足できるものは得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平9−273037号公報
【特許文献2】特開2002−69781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウェブ、およびウェブを用いて得られる製品の物性や性能と、生産性、操業性、コストのバランスに優れた繊維束を提供することを目的とする。本発明は具体的には、梱包、物流、引き上げ工程では繊維密度が高い状態で集束した繊維束であって、潜在捲縮性を有し、開繊工程においてスパイラル捲縮を発現して嵩高い風合いに優れたウェブを供給することができる繊維束を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような繊維束を使用するウェブの製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、均一で嵩高い、風合いに優れたウェブを提供することを目的とする。本発明はさらに、そのようなウェブを用いて得られた部材及び製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維の繊維束において、所定の単糸繊度、全繊度、顕在捲縮数、繊維束密度及び開繊密度比を満たすことにより、該繊維束から開繊工程を経て均一で嵩高い、風合いに優れたウェブが提供できることを見出した。より詳細には、該繊維束が、開繊する前の繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束されているので充填性、ハンドリング性に優れ、続いての開繊工程において適度な延伸処理を施すと、繊維束を形成する熱可塑性複合連続繊維の潜在捲縮が顕在化することになり、すなわち、その繊維断面構造に起因してスパイラル捲縮を発現するので、その発現力によって開繊性に優れ、また、得られた開繊ウェブは熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を有するがゆえに嵩高く、風合いに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従って本発明は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束である。
上記繊維束において、熱可塑性複合連続繊維の伸度は70%以上であることが適当である。
該熱可塑性複合連続繊維における複合形態として、繊維断面が偏心鞘芯構造、並列構造又は多層構造であることが挙げられる。特に偏心鞘芯構造が挙げられる。該熱可塑性複合連続繊維が偏心鞘芯構造であるとき、芯成分の偏心度は0.2以上であることが適当である。
本発明はまた、上記繊維束に延伸を施し開繊することを含む、ウェブの製造方法であり、具体的に、上記繊維束を延伸倍率1.4〜3.0倍で開繊することを含む、ウェブの製造方法である。
【0009】
本発明はさらに、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブに向けられている。本発明のウェブにおいて、構成繊維の見かけ繊維長とその繊維の長さ方向のウェブの長さとは一般的に一致する。ここで、見かけ繊維長、あるいは繊維の見かけ長とは、繊維に荷重をかけて捲縮を引き伸ばした状態での長さとは異なり、無荷重の状態での長さを意味する。
該熱可塑性複合連続繊維における複合形態として、繊維断面が偏心鞘芯構造、並列構造又は多層構造であることが挙げられる。該熱可塑性複合連続繊維が偏心鞘芯構造であるとき、芯成分の偏心度は0.2以上であることが適当である。
このようなウェブは、上記繊維束を、1.4〜3.0倍で延伸して開繊することにより得ることができる。
【0010】
本発明はさらに、上記ウェブを用いて得られる部材に向けられている。熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2である上記ウェブを熱処理することで、捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有する、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であるウェブを得ることができ、これは伸縮性を有する部材として好適である。この時のウェブの熱処理温度は80〜125℃であることが適当である。
本発明はさらに、前述のウェブもしくは部材を用いて得られる成形品に向けられている。成形品とは例えば、上記の捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有する、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であるウェブと、スパイラル捲縮を有しない他のウェブもしくはシート状物、または、捲縮数が100山/2.54cmよりも少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ状部が形成された成形品である。
また、部材を構成する熱可塑性複合連続繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である前述の複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されている成形品である。
また、本発明はさらに、前述のウェブ、部材、成形品を用いて得られる製品に向けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている繊維束は、開繊する前の繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束しており、梱包容器への充填性や、梱包容器からの引き上げ性に優れる。そして、続いての開繊工程では、その繊維断面構造に起因してスパイラル捲縮を発現するので開繊性に優れる。本発明の繊維束によれば、延伸して開繊することによって、特に風合いのよい、たいへん嵩高い、例えばウェブ密度が5〜80dtex/mm2の範囲にあるウェブを得ることができる。
本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている開繊ウェブは、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を有するがゆえに嵩高く、風合いに優れる。本発明のウェブはまた、それを構成する熱可塑性複合連続繊維が潜在捲縮性を有していることから、2次加工適性を有している。よって、本発明のウェブは、その嵩高性や風合い、またはその細かいスパイラル捲縮の特性、さらには潜在捲縮性を活かして、吸収体物品の表面層やワイピング部材、フィルターなどに好適に用いることができる。本発明のウェブから柔らかい風合いの製品を作ることができ、紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層、傷パッドや汗取りパッド、ハップ材、液を吸い取るシート、ワイパーやモップなどのワイピング部材、エアフィルター、液体フィルターなどの製品に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明の繊維束は、熱可塑性複合連続繊維が一方向に並んで集束されて構成されていることを特徴とする。
該熱可塑性複合連続繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などに代表されるポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分としてイソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマーなどに代表されるポリエステル類、フッ素系樹脂などを複合して溶融紡糸したものである。複合成分の数は特に制限されるものではなく、2成分の複合であっても3成分以上の複合であっても何ら問題ない。また前述の熱可塑性樹脂は単独で、もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0013】
繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維にヒートシールなどの熱接着性を付与できるという観点からは、融点差がある成分の複合が好適であり、その融点差は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。融点差が20℃以上であれば、高融点成分の著しい熱収縮を伴うことなく、熱接着できるので好ましい。また融点差が50℃以上であれば、熱接着温度を更に高く設定できるので、例えばヒートシール時間の短縮につながり、生産性が向上するのでより好ましい。
また、嵩高なウェブを得るためには、クリンパー工程において膠着を生じにくく、開繊工程における延伸処理によってスパイラル捲縮を発現しやすい樹脂構成が好適である。かかる点からは、繊維表面を形成する熱可塑性樹脂の結晶性は高い方が好ましい。すなわち、ポリエチレンの中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンよりは高密度ポリエチレンが好適に用いられる。またポリプロピレン系熱可塑性樹脂の場合では、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体よりは、プロピレンを単独で重合して得られたポリプロピレンが好適に用いられる。
このような組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートなどが例示できる。
【0014】
該熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比は、高融点成分が10〜90質量%、低融点成分が90〜10質量%、好ましくは高融点成分が30〜70質量%、低融点成分が70〜30質量%である。高融点成分が10質量%以上であれば、ヒートシールなどの熱接着時に該熱可塑性複合連続繊維が過度に収縮することなく接着できるので好ましい。また低融点成分は10質量%以上であれば、満足できる熱接着強力が得られるので好ましい。高融点成分が10〜90質量%、低融点成分が90〜10質量%の範囲であれば、熱接着時の形態保持性と接着強力のバランスに優れ、高融点成分が30〜70質量%、低融点成分が70〜30質量%の範囲であれば、更にバランスに優れる。
【0015】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なることを特徴とする。該熱可塑性複合連続繊維は、この断面構造に由来する潜在捲縮を有しており、延伸処理や熱処理などによってこれを顕在化させることができる。複合の形態は、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なっていれば特に限定されるものではなく、偏心鞘芯型、並列型、3成分以上の多層型などが例示できる。なかでも、繊維の風合いや表面摩擦性、ヒートシール特性などを考慮すると、偏心鞘芯型が特に好ましい。偏心鞘芯型の場合には、低融点成分が繊維表面を覆っているので、低融点成分に由来する柔らかい風合いが得られ、またヒートシールなどの熱接着性にも優れる。また繊維断面形状についても特に限定されるものではなく、円形であっても、異形であっても、中空であっても何ら問題なく、紡糸口金の形状を適宜選択することで、様々な断面形状とすることができる。
【0016】
該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、高融点成分である芯成分の偏心度は0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上である。
ここで、偏心度は、繊維断面の顕微鏡撮影写真などから、以下の式により算出できる。
偏心度(h)=d/r
r:繊維全体の半径
d:繊維全体の中心点から芯成分の中心点までの距離
偏心度は溶融紡糸時に使用するノズルの設計や、複合する熱可塑性樹脂の種類、メルトフローレート、溶融紡糸時の温度条件などによって制御することが可能であるが、偏心度は繊維束を開繊する工程での延伸によるスパイラル捲縮発現性に影響する。偏心度が0.2以上である熱可塑性複合連続繊維で構成された繊維束は、良好なスパイラル捲縮発現性を有するので開繊性や風合い、嵩高性に優れ、0.3以上である場合には特に優れる。
【0017】
本発明の繊維束は、1種類の熱可塑性複合連続繊維により構成されていてもよく、2種類以上の熱可塑性複合連続繊維により構成されていてもよい。2種類以上の熱可塑性複合連続繊維で構成されている場合、その混合の形態は特に限定されるものではなく、ランダムに混合されていてもよく、繊維束の幅方向に並列に混合されていてもよく、繊維束の厚み方向に積層するように混合されていてもよい。異なる種類の熱可塑性複合連続繊維としては、樹脂構成、断面形状、単糸繊度、単糸伸度、捲縮数、偏心度、色合いが異なるものなどが例示できる。
【0018】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の原料である熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、及び他の熱可塑性樹脂などが含まれてもよい。
【0019】
本発明の繊維束の製造方法を例示する。
本発明の繊維束の製造には、通常の溶融複合紡糸機を用いることが一般的で、複合紡糸口金としては慣用の並列型、偏心鞘芯型、または多層型などを使用することができる。紡糸温度は200〜330℃の範囲であることが好ましく、引き取り速度は300〜1500m/min程度とするのがよい。こうして得られた未延伸糸は、所望の本数を束ねて延伸機に導入し、適宜延伸及び/または熱処理を行い、続いてのクリンパー工程に導かれる。ここで延伸倍率は通常1.2〜9.0倍程度とすることが好ましい。延伸温度と熱処理温度は特に制限されるものではなく、延伸工程の安定性、延伸して得られる熱可塑性複合連続繊維の熱収縮特性、もしくは二次加工性などを鑑みて適宜選択可能であるが、通常は熱可塑性複合繊維同士が融着しない範囲内で高温にすることが好ましい。
繊維束の製造工程における種々の条件を適宜選択して、本発明の繊維束における熱可塑性複合連続繊維の所定の単糸繊度、及び全繊度を達成することができる。
【0020】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の単糸繊度は0.5〜100dtex/f、好ましくは1.0〜70dtex/f、より好ましくは2.0〜30dtex/fの範囲である。単糸繊度が0.5dtex/f以上の場合には繊維一本が持つ繊維強度が高く、開繊時の単糸切れや毛羽立ちを抑え、高い生産性で開繊を行うことができる。また、単糸繊度が100dtex/f以下の場合には繊維束の集束性が向上し、繊維束引き上げ時のもつれを抑えることができ、開繊性も向上する。単糸繊度が1.0〜70dtex/fの範囲であればより高いレベルの繊維強度、繊維束の集束性、開繊性が得られ、2.0〜30dtexの範囲であれば更に高いレベルの繊維強度、繊維束の集束性、開繊性が得られる。
【0021】
本発明の繊維束は、全繊度が1万〜50万dtex、好ましくは2万〜30万、より好ましくは4万〜20万dtexである。全繊度が1万dtex以上の場合には、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の本数が十分となるので、集束性が向上し、開繊した際に斑が生じるのを抑えられる。また、全繊度が50万dtex以下の場合には、繊維束の捩れや縺れ、絡まりを抑えることができる。したがって、全繊度が1万〜50万dtexの範囲であれば、問題を生じることなく安定した加工を行うことができ、2万〜30万dtex、より好ましくは4万〜20万dtexの範囲であれば、更に加工速度を高速にできるので望ましい。
【0022】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮を有し、その捲縮数は8〜30山/2.54cm、好ましくは10〜20山/2.54cm、より好ましくは12〜18山/2.54cmである。捲縮数が8山/2.54cm以上の場合には繊維束の集束性が高く、梱包容器への充填性が良好で、梱包容器から引き上げる際に繊維束が絡まったり、繊維間が割れて解れたりするといった問題を抑えることができ、開繊工程に悪影響を及ぼすことがない。また、捲縮数が30山/2.54cm以下の場合には、熱可塑性複合連続繊維同士が過度に絡まって開繊性が低下することがなく、やはり開繊工程での悪影響を避けることができる。また、30山/2.54cm以上の捲縮を付与しようとする場合、クリンパー工程において熱可塑性複合繊維に過度の圧力を加える必要があり、捲縮の均一性が低下したり、繊維同士の膠着が生じたりする恐れがある。なお捲縮の形状は山/谷状のジグザグ捲縮、Ω型、スパイラル型など、特に制限されるものではないが、繊維束の集束性、梱包容器への充填性、梱包容器からの引き上げ性などを考慮すると、山/谷状のジグザグ捲縮、もしくはΩ型が特に好ましい。
捲縮付与方法についても特に制限されるものではなく、スタッファーボックス型捲縮機を用いる方法や、高温高圧蒸気や加熱加圧空気による気体押し込みによる方法、更には高速クリンパーのような一対の高速回転体の間に繊維の束を押し込んで捲縮を付与する方法等を挙げることができる。また、前述の捲縮付与方法によってジグザグ捲縮を付与した後に熱処理を施し、捲縮に微妙な変化を生じさせてΩ型の捲縮とすることもできる。
【0023】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の繊維表面は、繊維処理剤で処理されていることが好ましく、その付着量は特に制限されるものではないが、0.01〜1.5質量%であることが好ましい。繊維処理剤の付着量が0.01質量%以上であれば、その繊維処理剤の機能が十分に発揮される。また、繊維処理剤の付着量が1.5質量%以下であれば、繊維処理剤に由来するベタツキなどによって、後の開繊工程でトラブルを生じることがなくなるので好ましい。また、繊維処理剤の種類も特に限定されるものではなく、親水性、撥水性発現や摩擦低減、集束性などの目的に応じて、種々の繊維処理剤を選択することができる。特に、特開2006−002329号公報に記載されている、ソルビタン脂肪酸エステル類およびポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル類からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分として含有する非イオン性の繊維処理剤を付着してなる熱可塑性複合連続繊維によって構成された繊維束の場合には、エレクトレット処理や摩擦処理などによって容易に繊維を帯電させることが可能であり、ゴミ捕集性に優れるワイパーやフィルターの部材として好適に用いることができる。
【0024】
本発明の繊維束は、下記のように定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、好ましくは200〜1800dtex/mm2、より好ましくは400〜1500dtex/mm2である。
繊維束密度=D1/(W1×L1)
(D1:繊維束の全繊度(dtex)、W1:開繊前の繊維束の幅(単位mm)、L1:開繊前の繊維束の厚み(単位mm))
繊維束密度が小さすぎる場合には、繊維束の集束性が劣り、繊維束を構成する繊維間が割れて、これによって発生した単糸が単糸同士で絡んだりして、繊維束同士の縺れや絡まりを引き起こす。これらは梱包容器に梱包した後でも、例えば輸送や移動時の振動によって繊維束同士の縺れや絡まりを引き起こす。こうして発生した繊維束同士の縺れや絡まりは、繊維束の開繊工程において、梱包容器から繊維束を引き上げる際の安定性に悪影響を及ぼす。また、繊維束を構成する繊維間の割れは、繊維束の均一な開繊性を損なうことに繋がり、均一なウェブ密度と嵩高性を有するウェブが得られなくなる。このような問題を避けるためには繊維束密度を100dtex/mm2以上とすることが好ましい。一方、繊維束密度が大きすぎる場合には、捲縮が均一に付与された熱可塑性複合繊維からなる繊維束を得ることができなくなる恐れがある。また得られたとしても、捲縮付与工程において熱可塑性複合繊維に過度の圧力が加わるので繊維間での膠着を生じ、やはり繊維束の均一な開繊性を損なうことに繋がり、均一なウェブ密度と嵩を有するウェブが得られなくなる。このような問題を避けるためには繊維束密度を2000dtex/mm2以下とすることが好ましい。繊維束密度が100〜2000dtex/mm2の範囲であれば、繊維束の集束性、梱包容器からの引き上げ性、繊維束の均一な開繊性が良好であり、200〜1800dtex/mm2であればより良好であり、400〜1500dtex/mm2であれば更に好ましい。
繊維束密度は、繊維束の全繊度とクリンパー工程における捲縮付与部分の容積に強く依存するが、他にクリンパー工程で付与した顕在捲縮数や、その後の熱処理温度などにも依存する。即ち、それら条件を適宜選択することによって、繊維束密度を前述の範囲とすることができる。
【0025】
本発明の繊維束は、下記のように定義される開繊密度比が0.10以下であって、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.06以下である。
開繊密度比=(ウェブ密度/繊維束密度)
(上記開繊密度比は、繊維束をピンチロール形の開繊機で、速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときの密度比であり、開繊による嵩高化の程度を表す。なお、上記の開繊条件は繊維束の開繊密度比を測定するためのものであって、実際に本発明の繊維束を開繊してウェブを得る際の開繊条件はこれに限定されず、種々の条件を設定することができる。)
繊維束密度=D1/(W1×L1)
ウェブ密度=D2/(W2×L2)
(D1:繊維束の全繊度(単位dtex)、W1:開繊前の繊維束の幅(単位mm)、L1:開繊前の繊維束の厚み(単位mm)、D2:ウェブの全繊度(単位dtex)、W2:ウェブの幅(単位mm)、L2:ウェブの厚み(単位mm)、上記繊維束密度およびウェブ密度は、いずれも25℃における測定値である)
繊維束の開繊密度比が0.10以下である場合には、開繊工程を経ることでスパイラル捲縮を発現し、繊維密度が高い状態の繊維束から、繊維密度が低い状態の嵩高なウェブが得られる。すなわち、開繊密度比が小さい繊維束は、繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束しているので梱包容器への充填性に優れ、効率よく物流できるうえに、物流工程における振動などによって繊維束同士が絡み合ったり縺れたりする不都合の発生を抑制でき、よって開繊工程において梱包容器から繊維束を引き上げる際の引き上げ性が良好である。更には、開繊工程を経て得られるウェブは、繊維密度が低い状態であり、嵩高性や風合いに優れるのである。開繊密度比が0.10以下の繊維束であれば、このような効果を十分に発揮するが、0.08以下であればより効果的であるので好ましく、0.05以下であれば更に好ましい。
本発明の繊維束は、複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる繊維断面構造である点などに起因して、前述の数値範囲の開繊密度比を有する。
【0026】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は、伸度が70%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。熱可塑性複合連続繊維の伸度が大きくなると、繊維束を開繊する工程において、例えば1.6倍以上のような高倍率で延伸しても、単糸切れやそれに伴うロール巻き等を生じることがなくなり、良好な操業性で安定的に嵩高いウェブを得ることができる。また、開繊工程の加工速度を高速にして、生産性を高めることも可能になる。熱可塑性複合連続繊維の伸度を70%以上、より好ましくは90%以上とする方法は特に限定されるものではないが、熱可塑性複合連続繊維を生産する際に、その最大延伸倍率(延伸切れを生じる倍率)よりも低い倍率で延伸する方法が簡便である。最大延伸倍率に対する実際の延伸倍率の比(実際の延伸倍率/最大延伸倍率)は特に制限されるものではないが、0.4〜0.7の範囲である場合には、生産性を大きく低下させることなく、得られる熱可塑性複合連続繊維の伸度を高くすることができるので好ましい。
【0027】
上述した本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維で構成された繊維束に、延伸を施し、次いでその延伸張力を開放することによって、熱可塑性複合連続繊維の断面構造に起因した潜在捲縮を顕在化させ、スパイラル状の立体捲縮を発現させることができる。この時、繊維束にはスパイラル捲縮発現による厚み方向、および幅方向への分散力が働くが、これによって容積は広がり、繊維密度の高い繊維束を繊維密度の低いウェブに開繊することができる。こうして得られた開繊ウェブは、熱可塑性複合繊維がスパイラル捲縮を有するので、風合いが柔らかく、非常に嵩高いという特徴を持つ。
開繊工程での延伸倍率は1.4〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.7〜2.5倍である。延伸倍率が低すぎる場合には、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の捲縮が伸びるだけで、熱可塑性複合連続繊維の繊維軸方向に張力が働かず、スパイラル捲縮が発現しなかったり、発現の程度が十分でなかったりする。よって得られるウェブの幅は小さく、またウェブの嵩高さや風合いも劣る傾向にある。このような問題を避けるためには、延伸倍率が1.4倍以上であることが好ましい。一方、延伸倍率が高すぎる場合には、熱可塑性複合連続繊維に過度の張力が働いて単糸切れを生じたり、それによってロール巻きを生じたりする。このような問題を避けるためには、延伸倍率が3.0倍以下であることが好ましい。延伸倍率が1.4〜3.0倍の範囲であれば、単糸切れを生じることなく良好なスパイラル捲縮を発現し、十分なウェブ幅と嵩高さ、風合いを有するウェブが得られ、延伸倍率が1.7〜2.5倍の範囲であれば、延伸速度、すなわち開繊工程のライン速度を高速にできるので、特に好ましい。
【0028】
本発明の繊維束を延伸して開繊する方法は特に限定されるものではなく、例えば、速度差のあるロール間において繊維束に張力を与えた後に弾性的に収縮させ、捲縮に伸びと縮みを与えて開繊する方法、周方向に延びる溝が軸方向へ一定の間隔で形成されたスレッテッドロールを回転させ、このロールの表面に繊維束を供給して開繊する方法、繊維束にエアージェットを吹き付けて開繊する方法などが例示できる。これらの中では、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維に適度な延伸を施すことができるという観点から、速度差のあるロールを用いて開繊する方法が特に好ましい。この時のロール速度比は特に限定されるものではなく、1.4〜3.0の範囲であると本発明の繊維束を生産性よく開繊でき、また開繊して得られたウェブは適度なスパイラル捲縮を発現して嵩高く、柔らかい風合いを有するので好ましい。
【0029】
本発明の繊維束を延伸して開繊するとき、複数本数の繊維束を同時に開繊してもよく、そのとき、同一の種類の繊維束を用いてもよく、異なる種類の繊維束を組み合わせて用いても何ら問題ない。異なる種類の繊維束としては、例えば、樹脂構成が異なる繊維束、単糸繊度が異なる繊維束、全繊度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数が異なる繊維束、繊維束密度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が異なる繊維束などを例示できる。
【0030】
本発明の繊維束を延伸して開繊する際の、繊維束の温度は特に制限されるものではないが、20〜120℃の範囲が好ましい。繊維束温度が低すぎると、延伸によって単糸切れしやすくなり、操業性が低下する。また繊維束温度が高すぎると、熱可塑性複合連続繊維同士が膠着しやすくなり、やはり操業性が低下する。20〜120℃であれば十分満足できる操業性レベルで開繊することができ、この範囲内で、求めるウェブの物性、製品の性能に応じて適宜設定することができる。例えば、繊維束の温度が20〜40℃の場合には、延伸によるスパイラル捲縮の発現が顕著になり、捲縮数が多く、細かいスパイラル捲縮が得られる。40〜80℃の場合には、スパイラル捲縮の発現は中程度であり、風合いが良好で、またウェブを圧縮除重した際の嵩回復性に優れるウェブが得られる。80〜120℃の場合には、ピッチの大きいスパイラル捲縮を発現し、広幅で嵩高性に富んだウェブが得られる。繊維束温度を前述の温度域に制御する方法は特に限定されるものではなく、繊維束を任意の温度に調整されたボックス内を通過させる方法、繊維束に任意の温度の熱風を吹き付ける方法、繊維束に任意の温度の熱板もしくはロールを接触させる方法などを例示することができる。
【0031】
前述のように本発明の繊維束を開繊すると、熱可塑性複合連続繊維が一方向に並んで構成されたウェブを得ることができる。
本発明はそのようなウェブにも関し、本発明は具体的には、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブに向けられる。本発明のウェブにおいて、構成繊維の見かけ繊維長とその繊維の長さ方向のウェブの長さとは一般的に一致する。ここで、見かけ繊維長、あるいは繊維の見かけ長とは、繊維に荷重をかけて捲縮を引き伸ばした状態での長さとは異なり、無荷重の状態での長さを意味する。
本発明の上記ウェブの原料となる繊維束の性状は特に限定されるものではなく、本発明の繊維束はそのひとつであるが、本発明の繊維束以外の繊維束をも、上記ウェブの原料として用いることができる。
【0032】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、熱可塑性樹脂を複合して溶融紡糸することで得られるが、熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の成分として例示した前述の樹脂群をここでも例示することができる。複合成分の数は特に制限されるものではなく、2成分の複合であっても3成分以上の複合であっても何ら問題ない。また前述の熱可塑性樹脂は単独で、もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。ウェブを構成する繊維束にヒートシールなどの熱接着性を付与できるという観点からは、融点差がある成分の複合が好適であり、その融点差は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。融点差が20℃以上であれば、高融点成分の著しい熱収縮を伴うことなく、熱接着できるので好ましい。また融点差が50℃以上であれば、熱接着温度を更に高く設定できるので、例えばヒートシール時間の短縮につながり、生産性が向上するのでより好ましい。また、本発明の特徴である嵩高なウェブを得るという観点からは、クリンパー工程において膠着を生じにくく、開繊工程における延伸処理によってスパイラル捲縮を発現しやすい樹脂構成が好適であり、かかる点からは、繊維表面を形成する熱可塑性樹脂の結晶性は高い方が好ましい。すなわち、ポリエチレンの中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンよりは高密度ポリエチレンが好適に用いられる。またポリプロピレン系熱可塑性樹脂の場合では、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体よりは、プロピレンを単独で重合して得られたポリプロピレンが好適に用いられる。
このような組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートなどが例示できる。
【0033】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比は、特に制限されるものではなく、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比として例示した前述の質量比範囲を、ここでも例示することができる。
【0034】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の原料である熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、及び他の熱可塑性樹脂などが含まれてもよい。
【0035】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の好ましい単糸繊度は0.5〜100dtex/f、さらに好ましくは1.0〜70dtex/f、より好ましくは2.0〜30dtex/fの範囲である。単糸繊度が0.5dtex/f以上の場合には、繊維一本が持つ繊維強度が十分強く、ウェブを切断したりヒートシール加工を施したりして製品に加工する際に、単糸切れや毛羽立ちを抑えることができる。また単糸繊度が100dtex以下の場合には、ウェブを構成する繊維本数が十分多く、嵩高性に富み、また繊維が柔軟で、ウェブの風合いも柔軟になるので、幅広い用途に使用できる。単糸繊度が0.5〜100dtex/fの範囲であれば、嵩高性や風合いなどのウェブ物性と、ウェブを製品に加工する際の生産性を、共に満足することができ、1.0〜70dtex/fの範囲であれば高いレベルで、2.0〜30dtex/fの範囲であれば更に高いレベルで満足することができる。
【0036】
本発明のウェブの全繊度は、好ましくは1万〜100万dtex、さらに好ましくは2万〜60万、より好ましくは4万〜40万dtexである。ウェブの全繊度が1万dtex以上の場合には、ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の本数が十分で、ウェブの嵩高性やボリューム感に富む。一方、ウェブの全繊度が100万dtex以下の場合には、全繊度を大きくし過ぎることなしに、コストに見合った嵩高性やボリューム感の向上効果を保つことができる。なお、本発明のウェブは1本の繊維束を開繊して得てもよく、複数の繊維束をそれぞれ開繊して、それらを重ねたり並べたりして得てもよい。つまり、例えば全繊度が30万dtexのウェブを得ようとする場合には、全繊度が30万dtexの繊維束1本を開繊して得てもよく、全繊度が10万dtexの繊維束3本をそれぞれ開繊して、それらを厚み方向に重ねるか、幅方向に並べることで得てもよい。
【0037】
本発明のウェブを、複数本数の繊維束を同時に開繊して得る場合には、同一の種類の繊維束を用いてもよく、異なる種類の繊維束を組み合わせて用いても何ら問題ない。異なる種類の繊維束としては、例えば、樹脂構成が異なる繊維束、単糸繊度が異なる繊維束、全繊度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数が異なる繊維束、繊維束密度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が異なる繊維束などを例示できる。
【0038】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を有し、その好ましい捲縮数は10〜100山/2.54cm、さらに好ましくは15〜80山/2.54cmである。スパイラル捲縮の捲縮数が10山/2.54cm以上の場合には、十分な捲縮数により風合いが柔軟となり、また例えばワイピング部材に加工した際にはゴミのホールド性が良好となる。また捲縮数が100山/2.54cm以下の場合には、捲縮によって繊維同士が絡まり過ぎて繊維1本1本の解除性が乏しくならず、風合いを良好に保つことができる。捲縮数が15〜80山/2.54cmの範囲である場合には、ウェブの風合いが特に優れるので好ましい。
【0039】
本発明のウェブは、下記のように定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2、好ましくは10〜50dtex/mm2である。
ウェブ密度=D2/(W2×L2)
(D2:全繊度(dtex)、W2:ウェブ幅(単位mm)、L2:ウェブ厚み(単位mm)
ウェブ密度が5dtex/mm2以上の場合には、単位体積あたりの繊維の本数が十分でボリューム感に富む。また、ウェブ密度が80dtex/mm2以下の場合には、単位体積あたりの繊維本数を必要以上に多くせずとも、柔らかい風合いを保つことができる。ウェブ密度が10〜50dtex/mm2の範囲である場合には、ウェブの嵩高性やボリューム感、風合いのバランスに優れるので、特に好ましい。
【0040】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なることを特徴とする。該熱可塑性複合連続繊維は、その断面構造に起因して潜在捲縮性を有しており、これを顕在化させることによってスパイラル捲縮を発現させ、ウェブの構造や風合いを変化させるといった2次加工を施すことができる。例えば水蒸気や熱風に曝したり、熱水中に浸漬したりするなどして熱を加えると、各々の複合成分の熱収縮率差に起因して更に細かいスパイラル捲縮を発現し、繊維が収縮する。弾性収縮率差を利用することでも、同様に繊維を収縮させることができる。複合の形態は、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なっていれば特に限定されるものではないが、偏心鞘芯型、並列型、3成分以上の多層型などが例示できる。なかでも、繊維の風合いや表面摩擦性、ヒートシール特性などを考慮すると、偏心鞘芯型が特に好ましい。偏心鞘芯型の場合には、低融点成分が繊維表面を完全に覆っているので、低融点成分に由来する柔らかい風合いが得られ、またヒートシールなどの熱接着性にも優れる。また繊維断面形状についても特に限定されるものではなく、円形であっても、異型であっても、中空であっても何ら問題なく、紡糸口金の形状を適宜選択することで、様々な断面形状とすることができる。
【0041】
該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、高融点成分である芯成分の偏心度は0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上である。偏心度の定義は前述のとおりである。
偏心度は溶融紡糸時に使用するノズルの設計や、複合する熱可塑性樹脂の種類、メルトフローレート、溶融紡糸時の温度条件などによって制御することが可能である。偏心度が0.2よりも小さいと、スパイラル捲縮の発現が十分でない場合が多く、また熱収縮させるといった2次加工性に劣る傾向にある。よって、本発明のウェブを構成する該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、該ウェブに適度な捲縮発現性、および2次加工性を持たせるには、その偏心度を0.2以上とすることが好ましく、0.3以上であれば更に十分な効果を発揮するのでより好ましい。
【0042】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を有しており、よってウェブは良好な嵩高性と風合いを示す。更には、該熱可塑性複合連続繊維は潜在捲縮性を有していることから、ウェブは様々な2次加工適性も有している。このような特性を活かして、本発明のウェブを種々の製品に加工することができる。製品としては、紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層、傷パッドや汗取りパッド、ハップ材、液を吸い取るシート、ワイパーやモップなどのワイピング部材、エアフィルター、液体フィルターなどを挙げることができるが、ここに例示した製品に特に限定されるものではない。
【0043】
本発明のウェブから前述の製品を得る方法は特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性複合連続繊維で構成されている本発明のウェブを、所望の繊維長に切断して製品部材を得て、それを更に加工して製品とすることもできる。その際の部材を構成するウェブの繊維長は特に限定されるものではないが、その用途や加工性に応じて、例えば500mm以下の長さに切断して使用される。本発明のウェブからなる部材は、それを構成する熱可塑性複合連続繊維の見かけ繊維長と部材の長さが同一であり、すなわち熱可塑性複合連続繊維の両末端は部材の両端に存在するのみである。よって、本発明のウェブ、および部材は、繊維末端に起因するチクチク感がなく、柔らかい風合いを有しており、衛生材料の表面材などに好適に用いられる。また、本発明のウェブ、および部材にエンボス熱処理や部分的なヒートシール処理を施す場合、繊維長とウェブ、および部材の長さは同一であり、かつ繊維は一方向に配列しているので、未接着の熱可塑性複合繊維の脱落を抑制しつつ、エンボス点やヒートシール部の面積率を低下させることが可能であり、嵩高性や柔らかさを損なうことなく製品に加工することができる。すなわち、例えば繊維長が38mmのステープルファイバーを用いてカード法で得られたウェブ、および部材にエンボス熱処理や部分的ヒートシール熱処理を施す場合には、熱可塑性複合繊維の脱落を防止する、つまり未接着の熱可塑性複合繊維が生じないようにするためには、繊維配列方向に少なくとも38mm以下の間隔で該熱処理を施す必要があるのに対して、本発明のウェブ、および部材では該熱処理の間隔を十分に大きくすることが可能なのである。
【0044】
本発明のウェブに熱処理を施すことで、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブが得られる。即ち、熱処理によって極めて細かいスパイラル捲縮を発現し、このスパイラル捲縮の伸縮力によって繊維配列方向に伸縮性を有する伸縮性ウェブが得られる。この伸縮性ウェブに、エンボス熱処理や部分的ヒートシール処理を施すと、シート状の伸縮性部材が得られる。この伸縮性ウェブおよび伸縮性部材は柔らかい風合いと良好な伸縮性を併せ持ち、例えばハップ材や紙おむつのウエスト部材などに好適に使用される。伸縮性ウェブに施すエンボス点やヒートシール部の面積率は、特に限定されるものではないが、柔らかい風合いと良好な伸縮性を併せ持つためには20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。また、エンボス点やヒートシール部の形状や配列は特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0045】
伸縮性ウェブおよび伸縮性部材の伸張回復率は特に制限されるものではないが、60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。伸張回復率が60%以上であれば、その伸縮特性を活かした成形品、製品を得ることができ、伸張回復率が80%以上であれば、よりレベルの高い成形品、製品を得ることができる。伸張回復率を高くするためにはスパイラル捲縮の捲縮数は多い方が好ましい。少なくとも捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有していれば、前述の伸張回復率の伸縮性を示すが、捲縮数が150山/2.54cm以上であれば更に高い伸張回復率を示すので、より好ましい。捲縮数の上限は特に限定されないが、得られる伸縮性ウェブおよび伸縮性部材の風合いの柔らかさを優先するのであれば、250山/2.54cm以下であることが好ましい。伸縮性ウェブおよび伸縮性部材を得る際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、熱風を用いた場合には柔軟性に優れた伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。熱処理の温度も特に制限されるものではないが、80〜125℃の範囲であることが好ましく、100〜120℃であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
【0046】
本発明のウェブから前述の部材および製品を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば複数のウェブを厚み方向に重ねて得てもよく、複数のウェブを横方向に並べて得ても何ら問題ない。組み合わせるウェブは、同種であっても異種であってもよく、ウェブと他の素材、例えば粉砕パルプや高吸収性樹脂、天然系繊維のウェブ、フィルムや不織布などのシート状物、開孔不織布やネットなどの通気、通液性シート、モノフィラメントやスパンデックスのような繊維状物を組み合わせても何ら問題ない。すなわち、例えばウェブに流動パラフィンなどの着塵仕上げ剤を付着させた後に、フィルムやスパンボンド不織布などのシート状物とウェブを積層し、ヒートシール処理により部分熱接着させて製品を得てもよい。
【0047】
熱処理を施すことで得られる、前述の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブと、スパイラル捲縮を有しない他のウェブもしくはシート状物、または前記のウェブより少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品は、伸縮性と表面凹凸構造を併せ持ち、ワイパーやモップなどのワイピング部材、衛生材料などの表面材として好適に用いられる。
【0048】
該成形品は、本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、ウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブを第1層とし、後の熱処理によってスパイラル捲縮を発現しない他のウェブもしくはシート状物、または、捲縮数が10山/2.54cmよりも小さいスパイラル捲縮を発現しうる他のウェブもしくはシート状物を、少なくとも1層以上積層し、これにエンボス熱処理や部分的ヒートシール処理などを施して一体化し、これを熱処理することで得られる。即ち、これらを熱処理すると、第1層はその断面形状に由来して、スパイラル捲縮発現による見かけ長の著しい収縮を生じるのに対して、第1層に積層した、他のウェブもしくはシート状物の層は、第1層に比べて収縮しないので、両層の熱収縮率の差に起因して、前記他のウェブもしくはシート状物の層が隆起したループ部を形成するのである。各層を一体化させる際のエンボス点やヒートシール部の面積率は特に制限されるものではないが、成形品の風合い、伸縮性を考慮すると、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。接着部の面積率が20%以下であれば柔軟な風合いと良好な伸縮性を示すので好ましく、10%以下であればより高レベルの柔軟性と伸縮性を示すので好ましい。エンボス点やヒートシール部の形状やパターンは特に制限されるものではなく、得たい凹凸構造の大きさ、配列などを鑑みて、適宜選択することができる。ループ部を形成させる際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、凹凸構造の対比を鮮明にするためには熱風を用いて、凸部の隆起を大きくすることが好ましい。また、ループ部を形成させる際の熱処理温度も特に制限されるものではないが、前述と同様に、80〜125℃の範囲であることが好ましく、100〜120℃であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、ウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、ウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
他のウェブもしくはシート状物は特に限定されるものではないが、スパンボンド、メルトブローン、カード、エアレイド、抄造などによって得られたウェブ、もしくはそれらに熱処理、ラテックス処理、スパンレースやニードルパンチなどの交絡処理を施して得られた不織布、ウェブや不織布に開孔処理を施して得られた開孔不織布、更にはフィルム、ネット状物、織布、編布などが例示できる。
【0049】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブを用いて得られ、繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されていることを特徴とする成形品は、基材となるウェブもしくはシート状物の表面に隆起して凸部を形成し、更に該凸部を形成する部材は、極めて細かいスパイラル捲縮を有することから、例えば砂塵などの粒径の大きいゴミの捕集性に優れ、ワイパーやモップなどのワイピング部材として好適に用いられる。
【0050】
該成形品は、本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、ウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブと、基材となるウェブもしくはシート状物を積層し、これにエンボス熱処理や部分的ヒートシール処理などを施して一体化した後に、エンボス点間もしくはヒートシール部間で、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる熱可塑性複合連続繊維で構成されたウェブを切断し、これを熱処理して該切断ウェブを熱収縮させることによって得られる。熱処理によって、該切断ウェブを構成する熱可塑性複合繊維は、その断面形状に由来して著しく細かいスパイラル捲縮を生じ、見かけ長が短くなる。この時、スパイラル捲縮は三次元的に発現することから、該切断ウェブは少なからず基材となるウェブもしくはシート状物の表面に立ち上がる形で収縮し、凸部を形成する。更には、該成形品の凸部をワイピング面として床などをワイピングした場合、床との摩擦によって凸部が隆起し、より顕著な凸部を形成する。
熱可塑性複合連続繊維を切断する場所は、エンボス点もしくはヒートシール部などの接着部の間であれば特に限定されず、接着部の中間位置であっても、接着部に隣接する位置であっても何ら問題ない。中間位置で切断した場合には、その接着部の両隣に2つの凸部が形成され、隣接する位置で切断した場合には、その接着部の片隣に1つの凸部が形成される。接着部から切断位置までの長さと、熱処理後の、接着部から切断した端までの長さとで定義される収縮率(((接着部から切断位置までの長さ−熱処理後の接着部から切断した端までの長さ)/接着部から切断位置までの長さ)×100)は特に制限されないが、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。30%以上であれば明確な凸部を形成し、50%以上であれば十分な凸部を形成する。該熱処理後の切断ウェブの見かけ長(熱処理後の切断した端から端までの長さ)は、一般的に3〜50mmの範囲になるのが適当である。
【0051】
エンボスもしくはヒートシールなどの接着部の面積率は特に制限されるものではないが、成形品の風合いを柔らかいものとし、また、成形品単位面積あたりの凸部の面積を多くするためには、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。接着部の面積率が20%以下であれば柔軟な風合いを維持し、単位面積あたりに多くの凸部を有するので示すので好ましく、10%以下であればより高いレベルの柔軟性を示し、また単位面積あたりの凸部の面積が更に多くなるので好ましい。エンボス点やヒートシール部の形状やパターンは特に制限されるものではなく、得たい凸部の大きさ、配列などを鑑みて、適宜選択することができる。凸部を形成させる際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、凸部の立ち上がり方を大きくするためには、熱風を用いて凸部の隆起を大きくすることが好ましい。
凸部を形成させる際の熱処理温度も特に制限されるものではないが、明確な凸部を形成するためには、前述の接着部から切断位置までの長さと、熱処理後の切断ウェブの見かけ長さで定義される収縮率を大きくすることが好ましく、このような熱処理温度としては80〜125℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜120℃である。前述と同様に、熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、基材となるウェブもしくはシート状物から明確に隆起した凸部が形成されている成形品が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、基材となるウェブもしくはシート状物から明確に隆起した凸部が形成されている成形品が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
基材となるウェブもしくはシート状物は特に限定されるものではないが、スパンボンド、メルトブローン、カード、エアレイド、抄造などによって得られたウェブ、もしくはそれらに熱処理、ラテックス処理、スパンレースやニードルパンチなどの交絡処理を施して得られた不織布、ウェブや不織布に開孔処理を施して得られた開孔不織布、更にはフィルム、ネット状物、織布、編布などが例示できる。
【0052】
前述した、本発明の部材もしくは成形品から製品を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば、複数の部材もしくは成形品を組み合わせて製品を得てもよく、その組み合わせる部材もしくは成形品は、同種であっても異種であっても何ら問題ない。また、本発明の部材もしくは成形品と、他の素材を組み合わせて製品を得てもよい。他の素材としては、前述した粉砕パルプや高吸収性樹脂、天然系繊維のウェブ、フィルムや不織布などのシート状物、開孔不織布やネットなどの通気、通液性シート、モノフィラメントやスパンデックスのような繊維状物などが例示できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。なお、実施例中に示した物性値の測定方法又は定義を以下に示す。
(1)単糸繊度
JIS−L−1015に準じて測定した。
(2)単糸伸度
JIS−L−1015に準じて測定した。
(3)全繊度
繊維束、もしくはウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の構成本数と単糸繊度から算出した。
(4)捲縮数
捲縮を付与した延伸糸、およびウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維についてJIS−L−1015に準じて測定した。
(5)繊維束密度、およびウェブ密度
繊維束、もしくはウェブの幅と厚み、熱可塑性複合連続繊維の構成本数から算出した。
繊維束、およびウェブの厚みは、カトーテック株式会社製の「KES−G5:ハンディー圧縮試験機」を用い、0.5gf/cm2の圧縮荷重にて測定した。
(6)偏心度
繊維断面を顕微鏡撮影し、以下の式により算出した。
偏心度(h)=d/r
r:繊維全体の半径
d:繊維全体の中心点から芯成分の中心点までの距離
【0054】
(7)繊維束の集束性
繊維束1mについて繊維束の割れの状態と箇所を観察した。判定基準は、繊維束の割れが生じて完全に分離している箇所が0〜1の場合には良好、2以上の場合には不良とした。
(8)引き上げ性
50cm×50cm×50cmの梱包容器に繊維束を振り込み、10kg、5分間の条件で荷重した後に除重した。この繊維束を15m/minの速度で上方に垂直に引き上げ、この際の繊維束同士の縺れや絡まりの発生具合を観察した。5分間に発生した不具合の回数が0〜1回の場合には良好、2回以上の場合には不良と判定した。
(9)繊維束の開繊試験
ピンチロール形の開繊機にて、ロール間の速度差によって繊維束を延伸し、その延伸張力を開放することで繊維束を開繊してウェブを得た。ライン終速度は25m/minとした。
(10)熱処理ウェブおよび部材の伸張回復率
繊維配列方向の長さが150mm、幅が50mmの試験片を切り出し、島津製作所株式会社製の引張試験機オートグラフAG-Gを用い。チャック間を100mmに設定して試験片を固定した。引張速度100mm/minで100%まで伸張した後に、同じ速度で戻し、試験片に掛かる荷重を0にした。その直後、再び同じ速度で100%まで伸張させ、荷重が再び始まる時の伸びた長さをLmmとし、下記式に従って算出した。
100%伸張時の伸張回復率={(100−L)/100}×100
【0055】
[実施例1]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、7.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.0倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで15.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度3.5dtex/f、全繊度86940dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は960dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.06であった。
【0056】
[実施例2]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンとポリプロピレンを体積比60:40で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、14.7dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸1.1万本を束ね、これを90℃に加温された熱ロール延伸機にて3.0倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで14.0山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度4.9dtex、全繊度51842dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は550dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.09であった。
【0057】
[実施例3]
繊維束の調製
ポリプロピレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、15.6dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸1.2万本を束ね、これを120℃に加温された熱ロール延伸機にて2.6倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで17.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度6.0dtex、全繊度74520dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は710dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.08であった。
【0058】
[実施例4]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比60:40で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、57.2dtex未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.2倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで8.9山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度26dtex、全繊度74360dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は1180dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.02であった。
【0059】
[実施例5]
繊維束の調製
まず、高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートを体積比50:50で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、6.9dtexの未延伸糸:Aを得た。次いで、高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比55:45で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、33.6dtexの未延伸糸:Bを得た。この未延伸糸:Aを2.2万本に束ねたものと、未延伸糸:Bを0.28万本に束ねたものを厚み方向に積層し、80℃に加温された熱ロール延伸機にて2.1倍で延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行った。Aの単糸繊度は3.3dtex、捲縮数は13.5山/2.54cmであり、Bの単糸繊度は16.0dtex、捲縮数は12.0山/2.54cmであった。そして繊維束の全繊度は115590dtexであった。この繊維束の繊維束密度は1500dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.05であった。
【0060】
[比較例1]
同心鞘芯ノズルを用いた以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得た。これを実施例1と同様に延伸し、単糸繊度3.5dtex、捲縮数15.6dtex、全繊度87500dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は990dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、幅方向に広がった。しかし実施例1ではスパイラル捲縮を発現することで拡幅していたのに対して、比較例1ではジグザグ捲縮の伸縮力によって拡幅している様子であった。この影響か、得られたウェブの幅、厚みともに実施例1に比べると小さく、開繊密度比は0.13であった。
【0061】
[比較例2]
高密度ポリエチレンとポリプロピレンを体積比40:60で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、12.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを90℃に加温された熱ロール延伸機にて3.0倍に延伸し、クリンパー工程を経ることなく引き取った。単糸繊度4.0dtex、全繊度99360dtexの繊維束を得た。クリンパー工程を経ていないので実質捲縮はないが、波打つようなピッチの大きいカールが見られた。この繊維束は集束性が著しく低く、繊維束の幅と厚みが一定していないので、繊維束密度は測定不能であった。これを梱包容器から引き上げようとすると、繊維束同士の縺れや絡まりが多発した。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を発現して幅方向に広がるものの、その幅は一定せず、また幅方向に繊維が交差している部分があったりして、均一性に劣るものであった。
【0062】
[比較例3]
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、14.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸3.7万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.8倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで13.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度5.0dtex、全繊度186300dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は2060dtex/mm2と高く、集束性は問題ないものの、繊維束は硬く締まった感じであり、一部には熱可塑性複合繊維同士が膠着した部分が見られた。引き上げ性を確認したところ、この膠着部に起因してか、縺れや絡まりが度々生じた。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に広がるものの、熱可塑性複合連続繊維同士の膠着が生じた部分は開繊せず、開繊幅が安定しないと共に均一性に欠けるものであった。
【0063】
[比較例4]
高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートを体積比50:50で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、250dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸3.7万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.1倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで7.8山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度120dtex、全繊度115200dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は1200であったが、熱可塑性複合連続繊維の単糸繊度が大きく、また捲縮数が7.8山/2.54cmと少なすぎるために集束性が劣り、繊維束に割れが多く見られた。引き上げ性を確認したところ、この繊維束の割れの部分が縺れや絡まりを多発させた。また、この割れの部分は開繊不良をも引き起こし、開繊幅は安定せず、ウェブは均一性に欠けていた。
【0064】
[比較例5]
特開平9−273037号公報の実施例6に記載の方法に従って、融点135℃のプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーを鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分として体積比50:50で複合し、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、6.2dtexの未延伸糸を得た。
この未延伸糸2.5万本を束ね、これを70℃に加温された熱ロール延伸機にて2.8倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで18.0山/2.54cmの捲縮を付与した後に60℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度2.2dtex、全繊度54648dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は510dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに問題なかった。ただし、繊維束の一部に熱可塑性複合繊維同士の著しい膠着が見られていた。この膠着はクリンパー工程での圧力によって生じた様子で、高摩擦性、低融点であるプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーが原因と考えられる。なお、特開平9−273037号公報に記載の、クリンパー直前のトウ(繊維束)に水分をスプレーする方法を採用したところ、膠着の程度を改善することができた。こうして膠着を抑制して得られた繊維束を25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維の一部はスパイラル捲縮を発現したが、多くの部分はスパイラル捲縮を発現しておらず、開繊密度比は0.14で、開繊工程のみでは均一で嵩高いウェブを得ることはできなかった。なお、スパイラル捲縮を発現していない部分を観察すると、繊維束同士が弱くではあるが膠着していた。この現象も高摩擦性、低融点であるプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーが原因と考えられる。
【0065】
[実施例6]
ウェブの調製及びワイパーの製造
実施例1の繊維束を25℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、全繊度が79488dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は17dtex/mm2で、開繊密度比は0.02であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数32山/2.54cmの細かいスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかい触感と風合いであった。
これをスパンボンド不織布に積層し、ウェブの幅方向に5mm幅のヒートシールを50mm間隔で施した。ヒートシール部の面積率は9%であった。次いで、ヒートシール部とヒートシール部の間、すなわち50mmの間隔の中央部分でウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維を切断して図1に示す部材を得た。更にはこれを起毛させてワイパーを試作した。このワイパーは柔らかい風合いを有しており、例えば人形、キーボードの隙間といった細かい凹凸部の埃を取り除くのに適していた。
また、前述のヒートシール部とヒートシール部の間、すなわち50mmの間隔の中央部分でウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維を切断した部材を、100℃のオーブン中で2分間熱処理し、熱可塑性複合繊維にスパイラル捲縮を発現させて、ウェブを収縮させ、図2に示した部材を得た。熱収縮によって、捲縮数は120山/2.54cmまで大きくなり、またウェブ密度は35dtex/mm2となっていた。ウェブの収縮率は56%であり、また基材となるスパンボンド不織布の層に対して45度の角度で隆起し、凸部を形成していた。この凸部をワイピング面として床を前後にワイピングしたところ、床との摩擦によって凸部はより隆起し、スパンボンド不織布の層との角度は70度になっていた。この凸部の隆起によって、ゴミの捕集性が高まっており、砂塵などの粒径が大きいゴミが大量に捕集されていた。
【0066】
[実施例7]
ウェブの調製及び吸収体の作製
実施例2の繊維束を30℃にて1.8倍で開繊したところ、単糸繊度4.6dtex、全繊度が48668dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は26dtex/mm2で、開繊密度比は0.05であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数68山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブを、パルプ吸収体とセカンドシートの上に積層し、両端をヒートシールして一体化させ、ナプキン吸収体を試作した。この吸収体は非常に肌触りが柔らかかった。
また、このウェブを120℃のオーブン中で1分間熱処理したところ、ウェブを構成する熱可塑性連続複合繊維は著しく細かいスパイラル捲縮を発現し、繊維配列方向に収縮した。この熱処理によって収縮したウェブの、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数は170山/2.54cmであり、ウェブ密度は80dtex/mm2であった。該ウェブは良好な伸縮性を有しており、100%伸張時の伸張回復率は85%であった。更には、この伸縮性ウェブを面積率が8%であるエンボスロールを通過させ、伸縮性部材を得た。この部材の100%伸張時の伸縮回復率は70%で、良好な伸縮性を有しており、ハップ材の基材として好適に用いることができた。
【0067】
[実施例8]
ウェブの調製及び吸収体の作製
実施例4の繊維束を50℃にて2.8倍で開繊したところ、単糸繊度20.0dtex、全繊度が57200dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は10dtex/mm2で、開繊密度比は0.01であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数18山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブを、パルプ吸収体とセカンドシートの上に積層し、両端をヒートシールして一体化させ、ナプキン吸収体を試作した。この吸収体は非常に肌触りが柔らかかった。
【0068】
[実施例9]
ウェブの調製及びシートの作製
実施例4の繊維束を30℃にて2.8倍で開繊したところ、単糸繊度20.3dtex、全繊度が58058dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は19dtex/mm2で、開繊密度比は0.02であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数36山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブと、比較例1に示した繊維束を25℃にて1.6倍で開繊して得られたウェブを積層し、ウェブの幅方向に5mm幅のヒートシールを25mm間隔で施し、図3に示す部材を得た。これを100℃のオーブンで、1分間の熱処理したところ、実施例4の繊維束からなるウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維が、非常に細かいスパイラル捲縮を発現し、著しく熱収縮した。この熱収縮によって、実施例4の繊維束からなる層の熱可塑性複合連続繊維の捲縮数は160山/2.54cmとなり、またウェブ密度は43dtex/mm2であった。25mmであったヒートシール間隔は12mmとなっており、比較例1の繊維束からなるウェブの層が隆起して凹凸を形成し、また非常に細かいスパイラル捲縮に起因した伸縮性を有する、図4に示す伸縮性部材が得られた。このシートはフロア用ワイパーとして好適に使用することができた。
【0069】
[実施例10]
ウェブの調製
実施例1の繊維束と、実施例4の繊維束を厚み方向に積層し、50℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、捲縮数26山/2.54cmの熱可塑性複合連続繊維と、単糸繊度21.6dtex、捲縮数20山/2.54cmの熱可塑性複合連続繊維が厚み方向に積層した、全繊度が141106dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は19dtex/mm2であった。こうして得られたウェブは2層からなるが、それら層の境界は明確でなく、互いのウェブ層の繊維が交絡しているので層間剥離しにくいものであった。ウェブの幅方向に幅5mmのヒートシールを100mm間隔で施した。このウェブは厚み方向に密度勾配を有しており、また繊維の自由度が高く、エアフィルターとして用いた場合に有益であった。
【0070】
[比較例6]
比較例1のウェブを25℃にて1.4倍で開繊したところ、単糸繊度3.5dtex、全繊度が86940dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は170dtex/mm2で、開繊密度比は0.17であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維束の状態で有していたジグザグ捲縮を有するのみであり、スパイラル捲縮を発現することはなかった。例えば実施例6のウェブと比較すると、未開繊の部分を多く含み、嵩高性と風合いに劣っていた。
【0071】
[比較例7]
比較例1のウェブを25℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、全繊度が79488dtexのウェブが得られた。比較例5の開繊条件に対して倍率を高めることで開繊性を向上させようとしたわけであるが、熱可塑性複合連続繊維が有する捲縮が伸びきってしまい、開繊性は逆に低下し、更には多量の単糸切れを生じた。その結果、ウェブ密度は212dtex/mm2と高く、風合いは著しく悪かった。
【0072】
[比較例8]
比較例3の繊維束を50℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度4.3dtex、全繊度が160218dtexのウェブが得られた。しかし繊維束に存在した膠着部は2.0倍の延伸によっても開繊せず、ウェブの均一性を損なうと共に、ウェブ幅も安定しなかった。
【0073】
以下の表1及び表2に、上記実施例及び比較例で調製された繊維束及びウェブの物性を示す。
表中の熱可塑性樹脂成分1及び成分2は次のように略記される。
HDPE:高密度ポリエチレン
PET:ポリエチレンテレフタレート
PP:ポリプロピレン
co−PP:プロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマー
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例6で得た熱処理前の部材の断面を概略的に表す。
【図2】実施例6で得た熱処理後の部材の断面を概略的に表す。
【図3】実施例9で得た熱処理前の部材の断面を概略的に表す。
【図4】実施例9で得た熱処理後の部材の断面を概略的に表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な集束性と開繊性を有する繊維束、及びそれを開繊して得られる嵩高性と柔軟な風合いを特徴とするウェブに関する。本発明は更に詳しくは、梱包、物流、引き上げ工程では繊維密度が高い状態で集束しており、開繊工程において該繊維束を延伸したときに、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現し、そのスパイラル捲縮の発現力によって繊維1本1本が開繊することを特徴とする繊維束に関する。本発明はさらに、その繊維束を開繊して得られる嵩高性を特徴とするウェブ、及びウェブを用いて得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層や、掃除用モップやワイパーのワイピング部などに、例えばPE/PP、PE/PET、PP/PETなどの熱可塑性複合繊維が使用されている。そして、この熱可塑性複合繊維として連続した繊維束を開繊したウェブを用いる場合がある。
【0003】
連続した繊維束は、捲縮が付与された熱可塑性複合連続繊維同士が、お互いに密着するように集束しており、繊維密度が高い状態で存在する。これを前記吸収性物品の表面層や、ワイパーなどのワイピング部などに加工する際には、その製造工程において、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維を幅方向にお互いに分離させて、見かけ幅を広げる工程、すなわち開繊工程を経る。この開繊工程を経ることで、熱可塑性複合連続繊維同士が集束した、繊維密度が高い状態である繊維束から、熱可塑性複合連続繊維同士が解れた、繊維密度が低い状態であるウェブを得ることができる。そうして得られた幅方向にほぼ均一な繊維密度、嵩を有するウェブから、吸収性物品の表面層や、ワイパーなどのワイピング部などが製造される。
【0004】
繊維束を開繊して均一なウェブを得るために、種々の方策が採られている。例えば特許文献1には、顕在捲縮および/または潜在捲縮を有する、単糸繊度0.5〜100デニール、全繊度1万〜30万デニール、顕在捲縮数が10〜50山/25mmであるトウ(繊維束)は、延伸開繊時の開繊幅が適当な範囲にあり、高速度で均一に開繊できることが記載されている。しかしながら、更に効率的に嵩高なウェブが得られる繊維束や、嵩高なウェブが求められている。
特許文献2には、速度差のあるロール間においてトウ(繊維束)に張力を与えた後に弾性的に収縮させ、捲縮に伸びと縮みを与えて開繊する方法において、ロール間のトウに摺動するプレートを接触させることで、繊維に移送方向へのずれが生じ、開繊性が向上することが記載されている。しかしながら、設備に摺動プレートを設置する必要性や、トウと摺動プレートが接触することによる操業性の低下を考慮すると、少なからずコストアップに繋がる。
このように、繊維束を開繊して均一なウェブを高い生産性で得ようとする検討は、材料である繊維束の改良と、開繊方法の改良の、両面からなされている。しかし、得られるウェブ、およびウェブを用いて得られる製品の物性や性能と、生産性、操業性、コストを考えると、未だ満足できるものは得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平9−273037号公報
【特許文献2】特開2002−69781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウェブ、およびウェブを用いて得られる製品の物性や性能と、生産性、操業性、コストのバランスに優れた繊維束を提供することを目的とする。本発明は具体的には、梱包、物流、引き上げ工程では繊維密度が高い状態で集束した繊維束であって、潜在捲縮性を有し、開繊工程においてスパイラル捲縮を発現して嵩高い風合いに優れたウェブを供給することができる繊維束を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような繊維束を使用するウェブの製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、均一で嵩高い、風合いに優れたウェブを提供することを目的とする。本発明はさらに、そのようなウェブを用いて得られた部材及び製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維の繊維束において、所定の単糸繊度、全繊度、顕在捲縮数、繊維束密度及び開繊密度比を満たすことにより、該繊維束から開繊工程を経て均一で嵩高い、風合いに優れたウェブが提供できることを見出した。より詳細には、該繊維束が、開繊する前の繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束されているので充填性、ハンドリング性に優れ、続いての開繊工程において適度な延伸処理を施すと、繊維束を形成する熱可塑性複合連続繊維の潜在捲縮が顕在化することになり、すなわち、その繊維断面構造に起因してスパイラル捲縮を発現するので、その発現力によって開繊性に優れ、また、得られた開繊ウェブは熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を有するがゆえに嵩高く、風合いに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従って本発明は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束である。
上記繊維束において、熱可塑性複合連続繊維の伸度は70%以上であることが適当である。
該熱可塑性複合連続繊維における複合形態として、繊維断面が偏心鞘芯構造、並列構造又は多層構造であることが挙げられる。特に偏心鞘芯構造が挙げられる。該熱可塑性複合連続繊維が偏心鞘芯構造であるとき、芯成分の偏心度は0.2以上であることが適当である。
本発明はまた、上記繊維束に延伸を施し開繊することを含む、ウェブの製造方法であり、具体的に、上記繊維束を延伸倍率1.4〜3.0倍で開繊することを含む、ウェブの製造方法である。
【0009】
本発明はさらに、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブに向けられている。本発明のウェブにおいて、構成繊維の見かけ繊維長とその繊維の長さ方向のウェブの長さとは一般的に一致する。ここで、見かけ繊維長、あるいは繊維の見かけ長とは、繊維に荷重をかけて捲縮を引き伸ばした状態での長さとは異なり、無荷重の状態での長さを意味する。
該熱可塑性複合連続繊維における複合形態として、繊維断面が偏心鞘芯構造、並列構造又は多層構造であることが挙げられる。該熱可塑性複合連続繊維が偏心鞘芯構造であるとき、芯成分の偏心度は0.2以上であることが適当である。
このようなウェブは、上記繊維束を、1.4〜3.0倍で延伸して開繊することにより得ることができる。
【0010】
本発明はさらに、上記ウェブを用いて得られる部材に向けられている。熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2である上記ウェブを熱処理することで、捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有する、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であるウェブを得ることができ、これは伸縮性を有する部材として好適である。この時のウェブの熱処理温度は80〜125℃であることが適当である。
本発明はさらに、前述のウェブもしくは部材を用いて得られる成形品に向けられている。成形品とは例えば、上記の捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有する、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であるウェブと、スパイラル捲縮を有しない他のウェブもしくはシート状物、または、捲縮数が100山/2.54cmよりも少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ状部が形成された成形品である。
また、部材を構成する熱可塑性複合連続繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である前述の複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されている成形品である。
また、本発明はさらに、前述のウェブ、部材、成形品を用いて得られる製品に向けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている繊維束は、開繊する前の繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束しており、梱包容器への充填性や、梱包容器からの引き上げ性に優れる。そして、続いての開繊工程では、その繊維断面構造に起因してスパイラル捲縮を発現するので開繊性に優れる。本発明の繊維束によれば、延伸して開繊することによって、特に風合いのよい、たいへん嵩高い、例えばウェブ密度が5〜80dtex/mm2の範囲にあるウェブを得ることができる。
本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている開繊ウェブは、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を有するがゆえに嵩高く、風合いに優れる。本発明のウェブはまた、それを構成する熱可塑性複合連続繊維が潜在捲縮性を有していることから、2次加工適性を有している。よって、本発明のウェブは、その嵩高性や風合い、またはその細かいスパイラル捲縮の特性、さらには潜在捲縮性を活かして、吸収体物品の表面層やワイピング部材、フィルターなどに好適に用いることができる。本発明のウェブから柔らかい風合いの製品を作ることができ、紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層、傷パッドや汗取りパッド、ハップ材、液を吸い取るシート、ワイパーやモップなどのワイピング部材、エアフィルター、液体フィルターなどの製品に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明の繊維束は、熱可塑性複合連続繊維が一方向に並んで集束されて構成されていることを特徴とする。
該熱可塑性複合連続繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などに代表されるポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分としてイソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマーなどに代表されるポリエステル類、フッ素系樹脂などを複合して溶融紡糸したものである。複合成分の数は特に制限されるものではなく、2成分の複合であっても3成分以上の複合であっても何ら問題ない。また前述の熱可塑性樹脂は単独で、もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0013】
繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維にヒートシールなどの熱接着性を付与できるという観点からは、融点差がある成分の複合が好適であり、その融点差は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。融点差が20℃以上であれば、高融点成分の著しい熱収縮を伴うことなく、熱接着できるので好ましい。また融点差が50℃以上であれば、熱接着温度を更に高く設定できるので、例えばヒートシール時間の短縮につながり、生産性が向上するのでより好ましい。
また、嵩高なウェブを得るためには、クリンパー工程において膠着を生じにくく、開繊工程における延伸処理によってスパイラル捲縮を発現しやすい樹脂構成が好適である。かかる点からは、繊維表面を形成する熱可塑性樹脂の結晶性は高い方が好ましい。すなわち、ポリエチレンの中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンよりは高密度ポリエチレンが好適に用いられる。またポリプロピレン系熱可塑性樹脂の場合では、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体よりは、プロピレンを単独で重合して得られたポリプロピレンが好適に用いられる。
このような組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートなどが例示できる。
【0014】
該熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比は、高融点成分が10〜90質量%、低融点成分が90〜10質量%、好ましくは高融点成分が30〜70質量%、低融点成分が70〜30質量%である。高融点成分が10質量%以上であれば、ヒートシールなどの熱接着時に該熱可塑性複合連続繊維が過度に収縮することなく接着できるので好ましい。また低融点成分は10質量%以上であれば、満足できる熱接着強力が得られるので好ましい。高融点成分が10〜90質量%、低融点成分が90〜10質量%の範囲であれば、熱接着時の形態保持性と接着強力のバランスに優れ、高融点成分が30〜70質量%、低融点成分が70〜30質量%の範囲であれば、更にバランスに優れる。
【0015】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なることを特徴とする。該熱可塑性複合連続繊維は、この断面構造に由来する潜在捲縮を有しており、延伸処理や熱処理などによってこれを顕在化させることができる。複合の形態は、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なっていれば特に限定されるものではなく、偏心鞘芯型、並列型、3成分以上の多層型などが例示できる。なかでも、繊維の風合いや表面摩擦性、ヒートシール特性などを考慮すると、偏心鞘芯型が特に好ましい。偏心鞘芯型の場合には、低融点成分が繊維表面を覆っているので、低融点成分に由来する柔らかい風合いが得られ、またヒートシールなどの熱接着性にも優れる。また繊維断面形状についても特に限定されるものではなく、円形であっても、異形であっても、中空であっても何ら問題なく、紡糸口金の形状を適宜選択することで、様々な断面形状とすることができる。
【0016】
該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、高融点成分である芯成分の偏心度は0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上である。
ここで、偏心度は、繊維断面の顕微鏡撮影写真などから、以下の式により算出できる。
偏心度(h)=d/r
r:繊維全体の半径
d:繊維全体の中心点から芯成分の中心点までの距離
偏心度は溶融紡糸時に使用するノズルの設計や、複合する熱可塑性樹脂の種類、メルトフローレート、溶融紡糸時の温度条件などによって制御することが可能であるが、偏心度は繊維束を開繊する工程での延伸によるスパイラル捲縮発現性に影響する。偏心度が0.2以上である熱可塑性複合連続繊維で構成された繊維束は、良好なスパイラル捲縮発現性を有するので開繊性や風合い、嵩高性に優れ、0.3以上である場合には特に優れる。
【0017】
本発明の繊維束は、1種類の熱可塑性複合連続繊維により構成されていてもよく、2種類以上の熱可塑性複合連続繊維により構成されていてもよい。2種類以上の熱可塑性複合連続繊維で構成されている場合、その混合の形態は特に限定されるものではなく、ランダムに混合されていてもよく、繊維束の幅方向に並列に混合されていてもよく、繊維束の厚み方向に積層するように混合されていてもよい。異なる種類の熱可塑性複合連続繊維としては、樹脂構成、断面形状、単糸繊度、単糸伸度、捲縮数、偏心度、色合いが異なるものなどが例示できる。
【0018】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の原料である熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、及び他の熱可塑性樹脂などが含まれてもよい。
【0019】
本発明の繊維束の製造方法を例示する。
本発明の繊維束の製造には、通常の溶融複合紡糸機を用いることが一般的で、複合紡糸口金としては慣用の並列型、偏心鞘芯型、または多層型などを使用することができる。紡糸温度は200〜330℃の範囲であることが好ましく、引き取り速度は300〜1500m/min程度とするのがよい。こうして得られた未延伸糸は、所望の本数を束ねて延伸機に導入し、適宜延伸及び/または熱処理を行い、続いてのクリンパー工程に導かれる。ここで延伸倍率は通常1.2〜9.0倍程度とすることが好ましい。延伸温度と熱処理温度は特に制限されるものではなく、延伸工程の安定性、延伸して得られる熱可塑性複合連続繊維の熱収縮特性、もしくは二次加工性などを鑑みて適宜選択可能であるが、通常は熱可塑性複合繊維同士が融着しない範囲内で高温にすることが好ましい。
繊維束の製造工程における種々の条件を適宜選択して、本発明の繊維束における熱可塑性複合連続繊維の所定の単糸繊度、及び全繊度を達成することができる。
【0020】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の単糸繊度は0.5〜100dtex/f、好ましくは1.0〜70dtex/f、より好ましくは2.0〜30dtex/fの範囲である。単糸繊度が0.5dtex/f以上の場合には繊維一本が持つ繊維強度が高く、開繊時の単糸切れや毛羽立ちを抑え、高い生産性で開繊を行うことができる。また、単糸繊度が100dtex/f以下の場合には繊維束の集束性が向上し、繊維束引き上げ時のもつれを抑えることができ、開繊性も向上する。単糸繊度が1.0〜70dtex/fの範囲であればより高いレベルの繊維強度、繊維束の集束性、開繊性が得られ、2.0〜30dtexの範囲であれば更に高いレベルの繊維強度、繊維束の集束性、開繊性が得られる。
【0021】
本発明の繊維束は、全繊度が1万〜50万dtex、好ましくは2万〜30万、より好ましくは4万〜20万dtexである。全繊度が1万dtex以上の場合には、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の本数が十分となるので、集束性が向上し、開繊した際に斑が生じるのを抑えられる。また、全繊度が50万dtex以下の場合には、繊維束の捩れや縺れ、絡まりを抑えることができる。したがって、全繊度が1万〜50万dtexの範囲であれば、問題を生じることなく安定した加工を行うことができ、2万〜30万dtex、より好ましくは4万〜20万dtexの範囲であれば、更に加工速度を高速にできるので望ましい。
【0022】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮を有し、その捲縮数は8〜30山/2.54cm、好ましくは10〜20山/2.54cm、より好ましくは12〜18山/2.54cmである。捲縮数が8山/2.54cm以上の場合には繊維束の集束性が高く、梱包容器への充填性が良好で、梱包容器から引き上げる際に繊維束が絡まったり、繊維間が割れて解れたりするといった問題を抑えることができ、開繊工程に悪影響を及ぼすことがない。また、捲縮数が30山/2.54cm以下の場合には、熱可塑性複合連続繊維同士が過度に絡まって開繊性が低下することがなく、やはり開繊工程での悪影響を避けることができる。また、30山/2.54cm以上の捲縮を付与しようとする場合、クリンパー工程において熱可塑性複合繊維に過度の圧力を加える必要があり、捲縮の均一性が低下したり、繊維同士の膠着が生じたりする恐れがある。なお捲縮の形状は山/谷状のジグザグ捲縮、Ω型、スパイラル型など、特に制限されるものではないが、繊維束の集束性、梱包容器への充填性、梱包容器からの引き上げ性などを考慮すると、山/谷状のジグザグ捲縮、もしくはΩ型が特に好ましい。
捲縮付与方法についても特に制限されるものではなく、スタッファーボックス型捲縮機を用いる方法や、高温高圧蒸気や加熱加圧空気による気体押し込みによる方法、更には高速クリンパーのような一対の高速回転体の間に繊維の束を押し込んで捲縮を付与する方法等を挙げることができる。また、前述の捲縮付与方法によってジグザグ捲縮を付与した後に熱処理を施し、捲縮に微妙な変化を生じさせてΩ型の捲縮とすることもできる。
【0023】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の繊維表面は、繊維処理剤で処理されていることが好ましく、その付着量は特に制限されるものではないが、0.01〜1.5質量%であることが好ましい。繊維処理剤の付着量が0.01質量%以上であれば、その繊維処理剤の機能が十分に発揮される。また、繊維処理剤の付着量が1.5質量%以下であれば、繊維処理剤に由来するベタツキなどによって、後の開繊工程でトラブルを生じることがなくなるので好ましい。また、繊維処理剤の種類も特に限定されるものではなく、親水性、撥水性発現や摩擦低減、集束性などの目的に応じて、種々の繊維処理剤を選択することができる。特に、特開2006−002329号公報に記載されている、ソルビタン脂肪酸エステル類およびポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル類からなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分として含有する非イオン性の繊維処理剤を付着してなる熱可塑性複合連続繊維によって構成された繊維束の場合には、エレクトレット処理や摩擦処理などによって容易に繊維を帯電させることが可能であり、ゴミ捕集性に優れるワイパーやフィルターの部材として好適に用いることができる。
【0024】
本発明の繊維束は、下記のように定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、好ましくは200〜1800dtex/mm2、より好ましくは400〜1500dtex/mm2である。
繊維束密度=D1/(W1×L1)
(D1:繊維束の全繊度(dtex)、W1:開繊前の繊維束の幅(単位mm)、L1:開繊前の繊維束の厚み(単位mm))
繊維束密度が小さすぎる場合には、繊維束の集束性が劣り、繊維束を構成する繊維間が割れて、これによって発生した単糸が単糸同士で絡んだりして、繊維束同士の縺れや絡まりを引き起こす。これらは梱包容器に梱包した後でも、例えば輸送や移動時の振動によって繊維束同士の縺れや絡まりを引き起こす。こうして発生した繊維束同士の縺れや絡まりは、繊維束の開繊工程において、梱包容器から繊維束を引き上げる際の安定性に悪影響を及ぼす。また、繊維束を構成する繊維間の割れは、繊維束の均一な開繊性を損なうことに繋がり、均一なウェブ密度と嵩高性を有するウェブが得られなくなる。このような問題を避けるためには繊維束密度を100dtex/mm2以上とすることが好ましい。一方、繊維束密度が大きすぎる場合には、捲縮が均一に付与された熱可塑性複合繊維からなる繊維束を得ることができなくなる恐れがある。また得られたとしても、捲縮付与工程において熱可塑性複合繊維に過度の圧力が加わるので繊維間での膠着を生じ、やはり繊維束の均一な開繊性を損なうことに繋がり、均一なウェブ密度と嵩を有するウェブが得られなくなる。このような問題を避けるためには繊維束密度を2000dtex/mm2以下とすることが好ましい。繊維束密度が100〜2000dtex/mm2の範囲であれば、繊維束の集束性、梱包容器からの引き上げ性、繊維束の均一な開繊性が良好であり、200〜1800dtex/mm2であればより良好であり、400〜1500dtex/mm2であれば更に好ましい。
繊維束密度は、繊維束の全繊度とクリンパー工程における捲縮付与部分の容積に強く依存するが、他にクリンパー工程で付与した顕在捲縮数や、その後の熱処理温度などにも依存する。即ち、それら条件を適宜選択することによって、繊維束密度を前述の範囲とすることができる。
【0025】
本発明の繊維束は、下記のように定義される開繊密度比が0.10以下であって、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.06以下である。
開繊密度比=(ウェブ密度/繊維束密度)
(上記開繊密度比は、繊維束をピンチロール形の開繊機で、速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときの密度比であり、開繊による嵩高化の程度を表す。なお、上記の開繊条件は繊維束の開繊密度比を測定するためのものであって、実際に本発明の繊維束を開繊してウェブを得る際の開繊条件はこれに限定されず、種々の条件を設定することができる。)
繊維束密度=D1/(W1×L1)
ウェブ密度=D2/(W2×L2)
(D1:繊維束の全繊度(単位dtex)、W1:開繊前の繊維束の幅(単位mm)、L1:開繊前の繊維束の厚み(単位mm)、D2:ウェブの全繊度(単位dtex)、W2:ウェブの幅(単位mm)、L2:ウェブの厚み(単位mm)、上記繊維束密度およびウェブ密度は、いずれも25℃における測定値である)
繊維束の開繊密度比が0.10以下である場合には、開繊工程を経ることでスパイラル捲縮を発現し、繊維密度が高い状態の繊維束から、繊維密度が低い状態の嵩高なウェブが得られる。すなわち、開繊密度比が小さい繊維束は、繊維束の状態では繊維密度が高い状態で集束しているので梱包容器への充填性に優れ、効率よく物流できるうえに、物流工程における振動などによって繊維束同士が絡み合ったり縺れたりする不都合の発生を抑制でき、よって開繊工程において梱包容器から繊維束を引き上げる際の引き上げ性が良好である。更には、開繊工程を経て得られるウェブは、繊維密度が低い状態であり、嵩高性や風合いに優れるのである。開繊密度比が0.10以下の繊維束であれば、このような効果を十分に発揮するが、0.08以下であればより効果的であるので好ましく、0.05以下であれば更に好ましい。
本発明の繊維束は、複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる繊維断面構造である点などに起因して、前述の数値範囲の開繊密度比を有する。
【0026】
本発明の繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維は、伸度が70%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。熱可塑性複合連続繊維の伸度が大きくなると、繊維束を開繊する工程において、例えば1.6倍以上のような高倍率で延伸しても、単糸切れやそれに伴うロール巻き等を生じることがなくなり、良好な操業性で安定的に嵩高いウェブを得ることができる。また、開繊工程の加工速度を高速にして、生産性を高めることも可能になる。熱可塑性複合連続繊維の伸度を70%以上、より好ましくは90%以上とする方法は特に限定されるものではないが、熱可塑性複合連続繊維を生産する際に、その最大延伸倍率(延伸切れを生じる倍率)よりも低い倍率で延伸する方法が簡便である。最大延伸倍率に対する実際の延伸倍率の比(実際の延伸倍率/最大延伸倍率)は特に制限されるものではないが、0.4〜0.7の範囲である場合には、生産性を大きく低下させることなく、得られる熱可塑性複合連続繊維の伸度を高くすることができるので好ましい。
【0027】
上述した本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる熱可塑性複合連続繊維で構成された繊維束に、延伸を施し、次いでその延伸張力を開放することによって、熱可塑性複合連続繊維の断面構造に起因した潜在捲縮を顕在化させ、スパイラル状の立体捲縮を発現させることができる。この時、繊維束にはスパイラル捲縮発現による厚み方向、および幅方向への分散力が働くが、これによって容積は広がり、繊維密度の高い繊維束を繊維密度の低いウェブに開繊することができる。こうして得られた開繊ウェブは、熱可塑性複合繊維がスパイラル捲縮を有するので、風合いが柔らかく、非常に嵩高いという特徴を持つ。
開繊工程での延伸倍率は1.4〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.7〜2.5倍である。延伸倍率が低すぎる場合には、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の捲縮が伸びるだけで、熱可塑性複合連続繊維の繊維軸方向に張力が働かず、スパイラル捲縮が発現しなかったり、発現の程度が十分でなかったりする。よって得られるウェブの幅は小さく、またウェブの嵩高さや風合いも劣る傾向にある。このような問題を避けるためには、延伸倍率が1.4倍以上であることが好ましい。一方、延伸倍率が高すぎる場合には、熱可塑性複合連続繊維に過度の張力が働いて単糸切れを生じたり、それによってロール巻きを生じたりする。このような問題を避けるためには、延伸倍率が3.0倍以下であることが好ましい。延伸倍率が1.4〜3.0倍の範囲であれば、単糸切れを生じることなく良好なスパイラル捲縮を発現し、十分なウェブ幅と嵩高さ、風合いを有するウェブが得られ、延伸倍率が1.7〜2.5倍の範囲であれば、延伸速度、すなわち開繊工程のライン速度を高速にできるので、特に好ましい。
【0028】
本発明の繊維束を延伸して開繊する方法は特に限定されるものではなく、例えば、速度差のあるロール間において繊維束に張力を与えた後に弾性的に収縮させ、捲縮に伸びと縮みを与えて開繊する方法、周方向に延びる溝が軸方向へ一定の間隔で形成されたスレッテッドロールを回転させ、このロールの表面に繊維束を供給して開繊する方法、繊維束にエアージェットを吹き付けて開繊する方法などが例示できる。これらの中では、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維に適度な延伸を施すことができるという観点から、速度差のあるロールを用いて開繊する方法が特に好ましい。この時のロール速度比は特に限定されるものではなく、1.4〜3.0の範囲であると本発明の繊維束を生産性よく開繊でき、また開繊して得られたウェブは適度なスパイラル捲縮を発現して嵩高く、柔らかい風合いを有するので好ましい。
【0029】
本発明の繊維束を延伸して開繊するとき、複数本数の繊維束を同時に開繊してもよく、そのとき、同一の種類の繊維束を用いてもよく、異なる種類の繊維束を組み合わせて用いても何ら問題ない。異なる種類の繊維束としては、例えば、樹脂構成が異なる繊維束、単糸繊度が異なる繊維束、全繊度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数が異なる繊維束、繊維束密度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が異なる繊維束などを例示できる。
【0030】
本発明の繊維束を延伸して開繊する際の、繊維束の温度は特に制限されるものではないが、20〜120℃の範囲が好ましい。繊維束温度が低すぎると、延伸によって単糸切れしやすくなり、操業性が低下する。また繊維束温度が高すぎると、熱可塑性複合連続繊維同士が膠着しやすくなり、やはり操業性が低下する。20〜120℃であれば十分満足できる操業性レベルで開繊することができ、この範囲内で、求めるウェブの物性、製品の性能に応じて適宜設定することができる。例えば、繊維束の温度が20〜40℃の場合には、延伸によるスパイラル捲縮の発現が顕著になり、捲縮数が多く、細かいスパイラル捲縮が得られる。40〜80℃の場合には、スパイラル捲縮の発現は中程度であり、風合いが良好で、またウェブを圧縮除重した際の嵩回復性に優れるウェブが得られる。80〜120℃の場合には、ピッチの大きいスパイラル捲縮を発現し、広幅で嵩高性に富んだウェブが得られる。繊維束温度を前述の温度域に制御する方法は特に限定されるものではなく、繊維束を任意の温度に調整されたボックス内を通過させる方法、繊維束に任意の温度の熱風を吹き付ける方法、繊維束に任意の温度の熱板もしくはロールを接触させる方法などを例示することができる。
【0031】
前述のように本発明の繊維束を開繊すると、熱可塑性複合連続繊維が一方向に並んで構成されたウェブを得ることができる。
本発明はそのようなウェブにも関し、本発明は具体的には、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブに向けられる。本発明のウェブにおいて、構成繊維の見かけ繊維長とその繊維の長さ方向のウェブの長さとは一般的に一致する。ここで、見かけ繊維長、あるいは繊維の見かけ長とは、繊維に荷重をかけて捲縮を引き伸ばした状態での長さとは異なり、無荷重の状態での長さを意味する。
本発明の上記ウェブの原料となる繊維束の性状は特に限定されるものではなく、本発明の繊維束はそのひとつであるが、本発明の繊維束以外の繊維束をも、上記ウェブの原料として用いることができる。
【0032】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、熱可塑性樹脂を複合して溶融紡糸することで得られるが、熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の成分として例示した前述の樹脂群をここでも例示することができる。複合成分の数は特に制限されるものではなく、2成分の複合であっても3成分以上の複合であっても何ら問題ない。また前述の熱可塑性樹脂は単独で、もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。ウェブを構成する繊維束にヒートシールなどの熱接着性を付与できるという観点からは、融点差がある成分の複合が好適であり、その融点差は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。融点差が20℃以上であれば、高融点成分の著しい熱収縮を伴うことなく、熱接着できるので好ましい。また融点差が50℃以上であれば、熱接着温度を更に高く設定できるので、例えばヒートシール時間の短縮につながり、生産性が向上するのでより好ましい。また、本発明の特徴である嵩高なウェブを得るという観点からは、クリンパー工程において膠着を生じにくく、開繊工程における延伸処理によってスパイラル捲縮を発現しやすい樹脂構成が好適であり、かかる点からは、繊維表面を形成する熱可塑性樹脂の結晶性は高い方が好ましい。すなわち、ポリエチレンの中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンよりは高密度ポリエチレンが好適に用いられる。またポリプロピレン系熱可塑性樹脂の場合では、プロピレンを主体とする他のαオレフィンとの2〜4元共重合体よりは、プロピレンを単独で重合して得られたポリプロピレンが好適に用いられる。
このような組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートなどが例示できる。
【0033】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比は、特に制限されるものではなく、繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維の高融点成分と低融点成分の質量比として例示した前述の質量比範囲を、ここでも例示することができる。
【0034】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の原料である熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、及び他の熱可塑性樹脂などが含まれてもよい。
【0035】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の好ましい単糸繊度は0.5〜100dtex/f、さらに好ましくは1.0〜70dtex/f、より好ましくは2.0〜30dtex/fの範囲である。単糸繊度が0.5dtex/f以上の場合には、繊維一本が持つ繊維強度が十分強く、ウェブを切断したりヒートシール加工を施したりして製品に加工する際に、単糸切れや毛羽立ちを抑えることができる。また単糸繊度が100dtex以下の場合には、ウェブを構成する繊維本数が十分多く、嵩高性に富み、また繊維が柔軟で、ウェブの風合いも柔軟になるので、幅広い用途に使用できる。単糸繊度が0.5〜100dtex/fの範囲であれば、嵩高性や風合いなどのウェブ物性と、ウェブを製品に加工する際の生産性を、共に満足することができ、1.0〜70dtex/fの範囲であれば高いレベルで、2.0〜30dtex/fの範囲であれば更に高いレベルで満足することができる。
【0036】
本発明のウェブの全繊度は、好ましくは1万〜100万dtex、さらに好ましくは2万〜60万、より好ましくは4万〜40万dtexである。ウェブの全繊度が1万dtex以上の場合には、ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の本数が十分で、ウェブの嵩高性やボリューム感に富む。一方、ウェブの全繊度が100万dtex以下の場合には、全繊度を大きくし過ぎることなしに、コストに見合った嵩高性やボリューム感の向上効果を保つことができる。なお、本発明のウェブは1本の繊維束を開繊して得てもよく、複数の繊維束をそれぞれ開繊して、それらを重ねたり並べたりして得てもよい。つまり、例えば全繊度が30万dtexのウェブを得ようとする場合には、全繊度が30万dtexの繊維束1本を開繊して得てもよく、全繊度が10万dtexの繊維束3本をそれぞれ開繊して、それらを厚み方向に重ねるか、幅方向に並べることで得てもよい。
【0037】
本発明のウェブを、複数本数の繊維束を同時に開繊して得る場合には、同一の種類の繊維束を用いてもよく、異なる種類の繊維束を組み合わせて用いても何ら問題ない。異なる種類の繊維束としては、例えば、樹脂構成が異なる繊維束、単糸繊度が異なる繊維束、全繊度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数が異なる繊維束、繊維束密度が異なる繊維束、熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が異なる繊維束などを例示できる。
【0038】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を有し、その好ましい捲縮数は10〜100山/2.54cm、さらに好ましくは15〜80山/2.54cmである。スパイラル捲縮の捲縮数が10山/2.54cm以上の場合には、十分な捲縮数により風合いが柔軟となり、また例えばワイピング部材に加工した際にはゴミのホールド性が良好となる。また捲縮数が100山/2.54cm以下の場合には、捲縮によって繊維同士が絡まり過ぎて繊維1本1本の解除性が乏しくならず、風合いを良好に保つことができる。捲縮数が15〜80山/2.54cmの範囲である場合には、ウェブの風合いが特に優れるので好ましい。
【0039】
本発明のウェブは、下記のように定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2、好ましくは10〜50dtex/mm2である。
ウェブ密度=D2/(W2×L2)
(D2:全繊度(dtex)、W2:ウェブ幅(単位mm)、L2:ウェブ厚み(単位mm)
ウェブ密度が5dtex/mm2以上の場合には、単位体積あたりの繊維の本数が十分でボリューム感に富む。また、ウェブ密度が80dtex/mm2以下の場合には、単位体積あたりの繊維本数を必要以上に多くせずとも、柔らかい風合いを保つことができる。ウェブ密度が10〜50dtex/mm2の範囲である場合には、ウェブの嵩高性やボリューム感、風合いのバランスに優れるので、特に好ましい。
【0040】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なることを特徴とする。該熱可塑性複合連続繊維は、その断面構造に起因して潜在捲縮性を有しており、これを顕在化させることによってスパイラル捲縮を発現させ、ウェブの構造や風合いを変化させるといった2次加工を施すことができる。例えば水蒸気や熱風に曝したり、熱水中に浸漬したりするなどして熱を加えると、各々の複合成分の熱収縮率差に起因して更に細かいスパイラル捲縮を発現し、繊維が収縮する。弾性収縮率差を利用することでも、同様に繊維を収縮させることができる。複合の形態は、繊維断面において複合成分の重心がお互いに異なっていれば特に限定されるものではないが、偏心鞘芯型、並列型、3成分以上の多層型などが例示できる。なかでも、繊維の風合いや表面摩擦性、ヒートシール特性などを考慮すると、偏心鞘芯型が特に好ましい。偏心鞘芯型の場合には、低融点成分が繊維表面を完全に覆っているので、低融点成分に由来する柔らかい風合いが得られ、またヒートシールなどの熱接着性にも優れる。また繊維断面形状についても特に限定されるものではなく、円形であっても、異型であっても、中空であっても何ら問題なく、紡糸口金の形状を適宜選択することで、様々な断面形状とすることができる。
【0041】
該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、高融点成分である芯成分の偏心度は0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上である。偏心度の定義は前述のとおりである。
偏心度は溶融紡糸時に使用するノズルの設計や、複合する熱可塑性樹脂の種類、メルトフローレート、溶融紡糸時の温度条件などによって制御することが可能である。偏心度が0.2よりも小さいと、スパイラル捲縮の発現が十分でない場合が多く、また熱収縮させるといった2次加工性に劣る傾向にある。よって、本発明のウェブを構成する該熱可塑性複合連続繊維の断面が偏心鞘芯断面の場合、該ウェブに適度な捲縮発現性、および2次加工性を持たせるには、その偏心度を0.2以上とすることが好ましく、0.3以上であれば更に十分な効果を発揮するのでより好ましい。
【0042】
本発明のウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を有しており、よってウェブは良好な嵩高性と風合いを示す。更には、該熱可塑性複合連続繊維は潜在捲縮性を有していることから、ウェブは様々な2次加工適性も有している。このような特性を活かして、本発明のウェブを種々の製品に加工することができる。製品としては、紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の表面層、傷パッドや汗取りパッド、ハップ材、液を吸い取るシート、ワイパーやモップなどのワイピング部材、エアフィルター、液体フィルターなどを挙げることができるが、ここに例示した製品に特に限定されるものではない。
【0043】
本発明のウェブから前述の製品を得る方法は特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性複合連続繊維で構成されている本発明のウェブを、所望の繊維長に切断して製品部材を得て、それを更に加工して製品とすることもできる。その際の部材を構成するウェブの繊維長は特に限定されるものではないが、その用途や加工性に応じて、例えば500mm以下の長さに切断して使用される。本発明のウェブからなる部材は、それを構成する熱可塑性複合連続繊維の見かけ繊維長と部材の長さが同一であり、すなわち熱可塑性複合連続繊維の両末端は部材の両端に存在するのみである。よって、本発明のウェブ、および部材は、繊維末端に起因するチクチク感がなく、柔らかい風合いを有しており、衛生材料の表面材などに好適に用いられる。また、本発明のウェブ、および部材にエンボス熱処理や部分的なヒートシール処理を施す場合、繊維長とウェブ、および部材の長さは同一であり、かつ繊維は一方向に配列しているので、未接着の熱可塑性複合繊維の脱落を抑制しつつ、エンボス点やヒートシール部の面積率を低下させることが可能であり、嵩高性や柔らかさを損なうことなく製品に加工することができる。すなわち、例えば繊維長が38mmのステープルファイバーを用いてカード法で得られたウェブ、および部材にエンボス熱処理や部分的ヒートシール熱処理を施す場合には、熱可塑性複合繊維の脱落を防止する、つまり未接着の熱可塑性複合繊維が生じないようにするためには、繊維配列方向に少なくとも38mm以下の間隔で該熱処理を施す必要があるのに対して、本発明のウェブ、および部材では該熱処理の間隔を十分に大きくすることが可能なのである。
【0044】
本発明のウェブに熱処理を施すことで、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブが得られる。即ち、熱処理によって極めて細かいスパイラル捲縮を発現し、このスパイラル捲縮の伸縮力によって繊維配列方向に伸縮性を有する伸縮性ウェブが得られる。この伸縮性ウェブに、エンボス熱処理や部分的ヒートシール処理を施すと、シート状の伸縮性部材が得られる。この伸縮性ウェブおよび伸縮性部材は柔らかい風合いと良好な伸縮性を併せ持ち、例えばハップ材や紙おむつのウエスト部材などに好適に使用される。伸縮性ウェブに施すエンボス点やヒートシール部の面積率は、特に限定されるものではないが、柔らかい風合いと良好な伸縮性を併せ持つためには20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。また、エンボス点やヒートシール部の形状や配列は特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0045】
伸縮性ウェブおよび伸縮性部材の伸張回復率は特に制限されるものではないが、60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。伸張回復率が60%以上であれば、その伸縮特性を活かした成形品、製品を得ることができ、伸張回復率が80%以上であれば、よりレベルの高い成形品、製品を得ることができる。伸張回復率を高くするためにはスパイラル捲縮の捲縮数は多い方が好ましい。少なくとも捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有していれば、前述の伸張回復率の伸縮性を示すが、捲縮数が150山/2.54cm以上であれば更に高い伸張回復率を示すので、より好ましい。捲縮数の上限は特に限定されないが、得られる伸縮性ウェブおよび伸縮性部材の風合いの柔らかさを優先するのであれば、250山/2.54cm以下であることが好ましい。伸縮性ウェブおよび伸縮性部材を得る際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、熱風を用いた場合には柔軟性に優れた伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。熱処理の温度も特に制限されるものではないが、80〜125℃の範囲であることが好ましく、100〜120℃であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、伸縮性ウェブおよび伸縮性部材が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
【0046】
本発明のウェブから前述の部材および製品を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば複数のウェブを厚み方向に重ねて得てもよく、複数のウェブを横方向に並べて得ても何ら問題ない。組み合わせるウェブは、同種であっても異種であってもよく、ウェブと他の素材、例えば粉砕パルプや高吸収性樹脂、天然系繊維のウェブ、フィルムや不織布などのシート状物、開孔不織布やネットなどの通気、通液性シート、モノフィラメントやスパンデックスのような繊維状物を組み合わせても何ら問題ない。すなわち、例えばウェブに流動パラフィンなどの着塵仕上げ剤を付着させた後に、フィルムやスパンボンド不織布などのシート状物とウェブを積層し、ヒートシール処理により部分熱接着させて製品を得てもよい。
【0047】
熱処理を施すことで得られる、前述の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブと、スパイラル捲縮を有しない他のウェブもしくはシート状物、または前記のウェブより少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品は、伸縮性と表面凹凸構造を併せ持ち、ワイパーやモップなどのワイピング部材、衛生材料などの表面材として好適に用いられる。
【0048】
該成形品は、本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、ウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブを第1層とし、後の熱処理によってスパイラル捲縮を発現しない他のウェブもしくはシート状物、または、捲縮数が10山/2.54cmよりも小さいスパイラル捲縮を発現しうる他のウェブもしくはシート状物を、少なくとも1層以上積層し、これにエンボス熱処理や部分的ヒートシール処理などを施して一体化し、これを熱処理することで得られる。即ち、これらを熱処理すると、第1層はその断面形状に由来して、スパイラル捲縮発現による見かけ長の著しい収縮を生じるのに対して、第1層に積層した、他のウェブもしくはシート状物の層は、第1層に比べて収縮しないので、両層の熱収縮率の差に起因して、前記他のウェブもしくはシート状物の層が隆起したループ部を形成するのである。各層を一体化させる際のエンボス点やヒートシール部の面積率は特に制限されるものではないが、成形品の風合い、伸縮性を考慮すると、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。接着部の面積率が20%以下であれば柔軟な風合いと良好な伸縮性を示すので好ましく、10%以下であればより高レベルの柔軟性と伸縮性を示すので好ましい。エンボス点やヒートシール部の形状やパターンは特に制限されるものではなく、得たい凹凸構造の大きさ、配列などを鑑みて、適宜選択することができる。ループ部を形成させる際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、凹凸構造の対比を鮮明にするためには熱風を用いて、凸部の隆起を大きくすることが好ましい。また、ループ部を形成させる際の熱処理温度も特に制限されるものではないが、前述と同様に、80〜125℃の範囲であることが好ましく、100〜120℃であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、ウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、ウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されている成形品が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
他のウェブもしくはシート状物は特に限定されるものではないが、スパンボンド、メルトブローン、カード、エアレイド、抄造などによって得られたウェブ、もしくはそれらに熱処理、ラテックス処理、スパンレースやニードルパンチなどの交絡処理を施して得られた不織布、ウェブや不織布に開孔処理を施して得られた開孔不織布、更にはフィルム、ネット状物、織布、編布などが例示できる。
【0049】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブを用いて得られ、繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されていることを特徴とする成形品は、基材となるウェブもしくはシート状物の表面に隆起して凸部を形成し、更に該凸部を形成する部材は、極めて細かいスパイラル捲縮を有することから、例えば砂塵などの粒径の大きいゴミの捕集性に優れ、ワイパーやモップなどのワイピング部材として好適に用いられる。
【0050】
該成形品は、本発明の、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、ウェブ密度が5〜80dtex/mm2であるウェブと、基材となるウェブもしくはシート状物を積層し、これにエンボス熱処理や部分的ヒートシール処理などを施して一体化した後に、エンボス点間もしくはヒートシール部間で、繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる熱可塑性複合連続繊維で構成されたウェブを切断し、これを熱処理して該切断ウェブを熱収縮させることによって得られる。熱処理によって、該切断ウェブを構成する熱可塑性複合繊維は、その断面形状に由来して著しく細かいスパイラル捲縮を生じ、見かけ長が短くなる。この時、スパイラル捲縮は三次元的に発現することから、該切断ウェブは少なからず基材となるウェブもしくはシート状物の表面に立ち上がる形で収縮し、凸部を形成する。更には、該成形品の凸部をワイピング面として床などをワイピングした場合、床との摩擦によって凸部が隆起し、より顕著な凸部を形成する。
熱可塑性複合連続繊維を切断する場所は、エンボス点もしくはヒートシール部などの接着部の間であれば特に限定されず、接着部の中間位置であっても、接着部に隣接する位置であっても何ら問題ない。中間位置で切断した場合には、その接着部の両隣に2つの凸部が形成され、隣接する位置で切断した場合には、その接着部の片隣に1つの凸部が形成される。接着部から切断位置までの長さと、熱処理後の、接着部から切断した端までの長さとで定義される収縮率(((接着部から切断位置までの長さ−熱処理後の接着部から切断した端までの長さ)/接着部から切断位置までの長さ)×100)は特に制限されないが、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。30%以上であれば明確な凸部を形成し、50%以上であれば十分な凸部を形成する。該熱処理後の切断ウェブの見かけ長(熱処理後の切断した端から端までの長さ)は、一般的に3〜50mmの範囲になるのが適当である。
【0051】
エンボスもしくはヒートシールなどの接着部の面積率は特に制限されるものではないが、成形品の風合いを柔らかいものとし、また、成形品単位面積あたりの凸部の面積を多くするためには、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。接着部の面積率が20%以下であれば柔軟な風合いを維持し、単位面積あたりに多くの凸部を有するので示すので好ましく、10%以下であればより高いレベルの柔軟性を示し、また単位面積あたりの凸部の面積が更に多くなるので好ましい。エンボス点やヒートシール部の形状やパターンは特に制限されるものではなく、得たい凸部の大きさ、配列などを鑑みて、適宜選択することができる。凸部を形成させる際の熱処理方法は特に限定されるものではなく、熱風、水蒸気、温水などのあらゆる加熱媒体を用いることができるが、凸部の立ち上がり方を大きくするためには、熱風を用いて凸部の隆起を大きくすることが好ましい。
凸部を形成させる際の熱処理温度も特に制限されるものではないが、明確な凸部を形成するためには、前述の接着部から切断位置までの長さと、熱処理後の切断ウェブの見かけ長さで定義される収縮率を大きくすることが好ましく、このような熱処理温度としては80〜125℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜120℃である。前述と同様に、熱処理温度が80℃以上であれば、短い熱処理時間で、即ち高い生産性で適度なスパイラル捲縮を発現させ、基材となるウェブもしくはシート状物から明確に隆起した凸部が形成されている成形品が得られるので好ましい。また、熱処理温度が125℃以下であれば、加熱硬化によるウェブの風合い低下を招くことなく適度なスパイラル捲縮を発現させ、基材となるウェブもしくはシート状物から明確に隆起した凸部が形成されている成形品が得られるので好ましい。熱処理温度が100〜120℃である場合には、ウェブの風合いと生産性の良好なバランスが得られるのでより好ましい。
基材となるウェブもしくはシート状物は特に限定されるものではないが、スパンボンド、メルトブローン、カード、エアレイド、抄造などによって得られたウェブ、もしくはそれらに熱処理、ラテックス処理、スパンレースやニードルパンチなどの交絡処理を施して得られた不織布、ウェブや不織布に開孔処理を施して得られた開孔不織布、更にはフィルム、ネット状物、織布、編布などが例示できる。
【0052】
前述した、本発明の部材もしくは成形品から製品を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば、複数の部材もしくは成形品を組み合わせて製品を得てもよく、その組み合わせる部材もしくは成形品は、同種であっても異種であっても何ら問題ない。また、本発明の部材もしくは成形品と、他の素材を組み合わせて製品を得てもよい。他の素材としては、前述した粉砕パルプや高吸収性樹脂、天然系繊維のウェブ、フィルムや不織布などのシート状物、開孔不織布やネットなどの通気、通液性シート、モノフィラメントやスパンデックスのような繊維状物などが例示できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。なお、実施例中に示した物性値の測定方法又は定義を以下に示す。
(1)単糸繊度
JIS−L−1015に準じて測定した。
(2)単糸伸度
JIS−L−1015に準じて測定した。
(3)全繊度
繊維束、もしくはウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維の構成本数と単糸繊度から算出した。
(4)捲縮数
捲縮を付与した延伸糸、およびウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維についてJIS−L−1015に準じて測定した。
(5)繊維束密度、およびウェブ密度
繊維束、もしくはウェブの幅と厚み、熱可塑性複合連続繊維の構成本数から算出した。
繊維束、およびウェブの厚みは、カトーテック株式会社製の「KES−G5:ハンディー圧縮試験機」を用い、0.5gf/cm2の圧縮荷重にて測定した。
(6)偏心度
繊維断面を顕微鏡撮影し、以下の式により算出した。
偏心度(h)=d/r
r:繊維全体の半径
d:繊維全体の中心点から芯成分の中心点までの距離
【0054】
(7)繊維束の集束性
繊維束1mについて繊維束の割れの状態と箇所を観察した。判定基準は、繊維束の割れが生じて完全に分離している箇所が0〜1の場合には良好、2以上の場合には不良とした。
(8)引き上げ性
50cm×50cm×50cmの梱包容器に繊維束を振り込み、10kg、5分間の条件で荷重した後に除重した。この繊維束を15m/minの速度で上方に垂直に引き上げ、この際の繊維束同士の縺れや絡まりの発生具合を観察した。5分間に発生した不具合の回数が0〜1回の場合には良好、2回以上の場合には不良と判定した。
(9)繊維束の開繊試験
ピンチロール形の開繊機にて、ロール間の速度差によって繊維束を延伸し、その延伸張力を開放することで繊維束を開繊してウェブを得た。ライン終速度は25m/minとした。
(10)熱処理ウェブおよび部材の伸張回復率
繊維配列方向の長さが150mm、幅が50mmの試験片を切り出し、島津製作所株式会社製の引張試験機オートグラフAG-Gを用い。チャック間を100mmに設定して試験片を固定した。引張速度100mm/minで100%まで伸張した後に、同じ速度で戻し、試験片に掛かる荷重を0にした。その直後、再び同じ速度で100%まで伸張させ、荷重が再び始まる時の伸びた長さをLmmとし、下記式に従って算出した。
100%伸張時の伸張回復率={(100−L)/100}×100
【0055】
[実施例1]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、7.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.0倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで15.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度3.5dtex/f、全繊度86940dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は960dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.06であった。
【0056】
[実施例2]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンとポリプロピレンを体積比60:40で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、14.7dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸1.1万本を束ね、これを90℃に加温された熱ロール延伸機にて3.0倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで14.0山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度4.9dtex、全繊度51842dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は550dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.09であった。
【0057】
[実施例3]
繊維束の調製
ポリプロピレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、15.6dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸1.2万本を束ね、これを120℃に加温された熱ロール延伸機にて2.6倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで17.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度6.0dtex、全繊度74520dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は710dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.08であった。
【0058】
[実施例4]
繊維束の調製
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比60:40で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、57.2dtex未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.2倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで8.9山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度26dtex、全繊度74360dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は1180dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.02であった。
【0059】
[実施例5]
繊維束の調製
まず、高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートを体積比50:50で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、6.9dtexの未延伸糸:Aを得た。次いで、高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比55:45で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、33.6dtexの未延伸糸:Bを得た。この未延伸糸:Aを2.2万本に束ねたものと、未延伸糸:Bを0.28万本に束ねたものを厚み方向に積層し、80℃に加温された熱ロール延伸機にて2.1倍で延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行った。Aの単糸繊度は3.3dtex、捲縮数は13.5山/2.54cmであり、Bの単糸繊度は16.0dtex、捲縮数は12.0山/2.54cmであった。そして繊維束の全繊度は115590dtexであった。この繊維束の繊維束密度は1500dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に均一に拡がり、開繊密度比は0.05であった。
【0060】
[比較例1]
同心鞘芯ノズルを用いた以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得た。これを実施例1と同様に延伸し、単糸繊度3.5dtex、捲縮数15.6dtex、全繊度87500dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は990dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに良好であった。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、幅方向に広がった。しかし実施例1ではスパイラル捲縮を発現することで拡幅していたのに対して、比較例1ではジグザグ捲縮の伸縮力によって拡幅している様子であった。この影響か、得られたウェブの幅、厚みともに実施例1に比べると小さく、開繊密度比は0.13であった。
【0061】
[比較例2]
高密度ポリエチレンとポリプロピレンを体積比40:60で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、12.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸2.5万本を束ね、これを90℃に加温された熱ロール延伸機にて3.0倍に延伸し、クリンパー工程を経ることなく引き取った。単糸繊度4.0dtex、全繊度99360dtexの繊維束を得た。クリンパー工程を経ていないので実質捲縮はないが、波打つようなピッチの大きいカールが見られた。この繊維束は集束性が著しく低く、繊維束の幅と厚みが一定していないので、繊維束密度は測定不能であった。これを梱包容器から引き上げようとすると、繊維束同士の縺れや絡まりが多発した。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維はスパイラル捲縮を発現して幅方向に広がるものの、その幅は一定せず、また幅方向に繊維が交差している部分があったりして、均一性に劣るものであった。
【0062】
[比較例3]
高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として体積比50:50で複合して、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、14.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸3.7万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.8倍に延伸し、次いで20mm幅の高速クリンパーで13.2山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度5.0dtex、全繊度186300dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は2060dtex/mm2と高く、集束性は問題ないものの、繊維束は硬く締まった感じであり、一部には熱可塑性複合繊維同士が膠着した部分が見られた。引き上げ性を確認したところ、この膠着部に起因してか、縺れや絡まりが度々生じた。これを25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維がスパイラル捲縮を発現して幅方向に広がるものの、熱可塑性複合連続繊維同士の膠着が生じた部分は開繊せず、開繊幅が安定しないと共に均一性に欠けるものであった。
【0063】
[比較例4]
高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートを体積比50:50で複合して、並列ノズルを用いて溶融紡糸し、250dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸3.7万本を束ね、これを60℃に加温された熱ロール延伸機にて2.1倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで7.8山/2.54cmの捲縮を付与した後に100℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度120dtex、全繊度115200dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は1200であったが、熱可塑性複合連続繊維の単糸繊度が大きく、また捲縮数が7.8山/2.54cmと少なすぎるために集束性が劣り、繊維束に割れが多く見られた。引き上げ性を確認したところ、この繊維束の割れの部分が縺れや絡まりを多発させた。また、この割れの部分は開繊不良をも引き起こし、開繊幅は安定せず、ウェブは均一性に欠けていた。
【0064】
[比較例5]
特開平9−273037号公報の実施例6に記載の方法に従って、融点135℃のプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーを鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分として体積比50:50で複合し、偏心鞘芯ノズルを用いて溶融紡糸し、6.2dtexの未延伸糸を得た。
この未延伸糸2.5万本を束ね、これを70℃に加温された熱ロール延伸機にて2.8倍に延伸し、次いで27mm幅のスタファーボックス型クリンパーで18.0山/2.54cmの捲縮を付与した後に60℃で乾燥熱処理を行い、単糸繊度2.2dtex、全繊度54648dtexの繊維束を得た。この繊維束の繊維束密度は510dtex/mm2であり、集束性、引き上げ性ともに問題なかった。ただし、繊維束の一部に熱可塑性複合繊維同士の著しい膠着が見られていた。この膠着はクリンパー工程での圧力によって生じた様子で、高摩擦性、低融点であるプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーが原因と考えられる。なお、特開平9−273037号公報に記載の、クリンパー直前のトウ(繊維束)に水分をスプレーする方法を採用したところ、膠着の程度を改善することができた。こうして膠着を抑制して得られた繊維束を25℃にて1.6倍で開繊したところ、熱可塑性複合連続繊維の一部はスパイラル捲縮を発現したが、多くの部分はスパイラル捲縮を発現しておらず、開繊密度比は0.14で、開繊工程のみでは均一で嵩高いウェブを得ることはできなかった。なお、スパイラル捲縮を発現していない部分を観察すると、繊維束同士が弱くではあるが膠着していた。この現象も高摩擦性、低融点であるプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマーが原因と考えられる。
【0065】
[実施例6]
ウェブの調製及びワイパーの製造
実施例1の繊維束を25℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、全繊度が79488dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は17dtex/mm2で、開繊密度比は0.02であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数32山/2.54cmの細かいスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかい触感と風合いであった。
これをスパンボンド不織布に積層し、ウェブの幅方向に5mm幅のヒートシールを50mm間隔で施した。ヒートシール部の面積率は9%であった。次いで、ヒートシール部とヒートシール部の間、すなわち50mmの間隔の中央部分でウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維を切断して図1に示す部材を得た。更にはこれを起毛させてワイパーを試作した。このワイパーは柔らかい風合いを有しており、例えば人形、キーボードの隙間といった細かい凹凸部の埃を取り除くのに適していた。
また、前述のヒートシール部とヒートシール部の間、すなわち50mmの間隔の中央部分でウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維を切断した部材を、100℃のオーブン中で2分間熱処理し、熱可塑性複合繊維にスパイラル捲縮を発現させて、ウェブを収縮させ、図2に示した部材を得た。熱収縮によって、捲縮数は120山/2.54cmまで大きくなり、またウェブ密度は35dtex/mm2となっていた。ウェブの収縮率は56%であり、また基材となるスパンボンド不織布の層に対して45度の角度で隆起し、凸部を形成していた。この凸部をワイピング面として床を前後にワイピングしたところ、床との摩擦によって凸部はより隆起し、スパンボンド不織布の層との角度は70度になっていた。この凸部の隆起によって、ゴミの捕集性が高まっており、砂塵などの粒径が大きいゴミが大量に捕集されていた。
【0066】
[実施例7]
ウェブの調製及び吸収体の作製
実施例2の繊維束を30℃にて1.8倍で開繊したところ、単糸繊度4.6dtex、全繊度が48668dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は26dtex/mm2で、開繊密度比は0.05であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数68山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブを、パルプ吸収体とセカンドシートの上に積層し、両端をヒートシールして一体化させ、ナプキン吸収体を試作した。この吸収体は非常に肌触りが柔らかかった。
また、このウェブを120℃のオーブン中で1分間熱処理したところ、ウェブを構成する熱可塑性連続複合繊維は著しく細かいスパイラル捲縮を発現し、繊維配列方向に収縮した。この熱処理によって収縮したウェブの、熱可塑性複合連続繊維の捲縮数は170山/2.54cmであり、ウェブ密度は80dtex/mm2であった。該ウェブは良好な伸縮性を有しており、100%伸張時の伸張回復率は85%であった。更には、この伸縮性ウェブを面積率が8%であるエンボスロールを通過させ、伸縮性部材を得た。この部材の100%伸張時の伸縮回復率は70%で、良好な伸縮性を有しており、ハップ材の基材として好適に用いることができた。
【0067】
[実施例8]
ウェブの調製及び吸収体の作製
実施例4の繊維束を50℃にて2.8倍で開繊したところ、単糸繊度20.0dtex、全繊度が57200dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は10dtex/mm2で、開繊密度比は0.01であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数18山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブを、パルプ吸収体とセカンドシートの上に積層し、両端をヒートシールして一体化させ、ナプキン吸収体を試作した。この吸収体は非常に肌触りが柔らかかった。
【0068】
[実施例9]
ウェブの調製及びシートの作製
実施例4の繊維束を30℃にて2.8倍で開繊したところ、単糸繊度20.3dtex、全繊度が58058dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は19dtex/mm2で、開繊密度比は0.02であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は捲縮数36山/2.54cmのスパイラル捲縮を発現しており、非常に柔らかく、嵩高いものであった。このウェブと、比較例1に示した繊維束を25℃にて1.6倍で開繊して得られたウェブを積層し、ウェブの幅方向に5mm幅のヒートシールを25mm間隔で施し、図3に示す部材を得た。これを100℃のオーブンで、1分間の熱処理したところ、実施例4の繊維束からなるウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維が、非常に細かいスパイラル捲縮を発現し、著しく熱収縮した。この熱収縮によって、実施例4の繊維束からなる層の熱可塑性複合連続繊維の捲縮数は160山/2.54cmとなり、またウェブ密度は43dtex/mm2であった。25mmであったヒートシール間隔は12mmとなっており、比較例1の繊維束からなるウェブの層が隆起して凹凸を形成し、また非常に細かいスパイラル捲縮に起因した伸縮性を有する、図4に示す伸縮性部材が得られた。このシートはフロア用ワイパーとして好適に使用することができた。
【0069】
[実施例10]
ウェブの調製
実施例1の繊維束と、実施例4の繊維束を厚み方向に積層し、50℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、捲縮数26山/2.54cmの熱可塑性複合連続繊維と、単糸繊度21.6dtex、捲縮数20山/2.54cmの熱可塑性複合連続繊維が厚み方向に積層した、全繊度が141106dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は19dtex/mm2であった。こうして得られたウェブは2層からなるが、それら層の境界は明確でなく、互いのウェブ層の繊維が交絡しているので層間剥離しにくいものであった。ウェブの幅方向に幅5mmのヒートシールを100mm間隔で施した。このウェブは厚み方向に密度勾配を有しており、また繊維の自由度が高く、エアフィルターとして用いた場合に有益であった。
【0070】
[比較例6]
比較例1のウェブを25℃にて1.4倍で開繊したところ、単糸繊度3.5dtex、全繊度が86940dtexのウェブが得られた。ウェブ密度は170dtex/mm2で、開繊密度比は0.17であった。ウェブを構成する熱可塑性複合連続繊維は、繊維束の状態で有していたジグザグ捲縮を有するのみであり、スパイラル捲縮を発現することはなかった。例えば実施例6のウェブと比較すると、未開繊の部分を多く含み、嵩高性と風合いに劣っていた。
【0071】
[比較例7]
比較例1のウェブを25℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度3.2dtex、全繊度が79488dtexのウェブが得られた。比較例5の開繊条件に対して倍率を高めることで開繊性を向上させようとしたわけであるが、熱可塑性複合連続繊維が有する捲縮が伸びきってしまい、開繊性は逆に低下し、更には多量の単糸切れを生じた。その結果、ウェブ密度は212dtex/mm2と高く、風合いは著しく悪かった。
【0072】
[比較例8]
比較例3の繊維束を50℃にて2.0倍で開繊したところ、単糸繊度4.3dtex、全繊度が160218dtexのウェブが得られた。しかし繊維束に存在した膠着部は2.0倍の延伸によっても開繊せず、ウェブの均一性を損なうと共に、ウェブ幅も安定しなかった。
【0073】
以下の表1及び表2に、上記実施例及び比較例で調製された繊維束及びウェブの物性を示す。
表中の熱可塑性樹脂成分1及び成分2は次のように略記される。
HDPE:高密度ポリエチレン
PET:ポリエチレンテレフタレート
PP:ポリプロピレン
co−PP:プロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマー
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例6で得た熱処理前の部材の断面を概略的に表す。
【図2】実施例6で得た熱処理後の部材の断面を概略的に表す。
【図3】実施例9で得た熱処理前の部材の断面を概略的に表す。
【図4】実施例9で得た熱処理後の部材の断面を概略的に表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束。
【請求項2】
熱可塑性複合連続繊維の伸度が70%以上である請求項1記載の繊維束。
【請求項3】
熱可塑性複合連続繊維の繊維断面が偏心鞘芯構造である請求項1または2記載の繊維束。
【請求項4】
熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が0.2以上である請求項3記載の繊維束。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維束を延伸倍率1.4〜3.0倍で開繊することを含む、ウェブの製造方法。
【請求項6】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2でることを特徴とするウェブ。
【請求項7】
熱可塑性複合連続繊維の繊維断面が偏心鞘芯構造である請求項6記載のウェブ。
【請求項8】
熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が0.2以上である請求項6記載のウェブ。
【請求項9】
請求項1記載の繊維束を、1.4〜3.0倍で延伸して得られる請求項6記載のウェブ。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項記載のウェブを用いて得られる部材。
【請求項11】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブ。
【請求項12】
請求項6記載のウェブを80〜125℃で熱処理して得られることを特徴とする、請求項11記載のウェブ。
【請求項13】
請求項11または12記載のウェブを用いて得られる部材。
【請求項14】
請求項11または12記載のウェブと、スパイラル捲縮を有さない他のウェブもしくはシート状物、または、請求項11または12記載のウェブより少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されていることを特徴とする、成形品。
【請求項15】
部材を構成する繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である請求項13記載の複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されていることを特徴とする、成形品。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の部材もしくは成形品を用いて得られる製品。
【請求項1】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が集束された、全繊度が1万〜50万dtexの繊維束であり、該繊維束を構成する熱可塑性複合連続繊維が顕在捲縮数8〜30山/2.54cmの捲縮を有し、D1/(W1×L1)(D1:全繊度、W1:繊維束幅、L1:繊維束厚み)で定義される繊維束密度が100〜2000dtex/mm2であって、開繊密度比(ピンチロール形開繊機において速度25m/min、繊維束温度25℃、1.6倍で延伸して開繊したときのウェブ密度/繊維束密度)が0.10以下である繊維束。
【請求項2】
熱可塑性複合連続繊維の伸度が70%以上である請求項1記載の繊維束。
【請求項3】
熱可塑性複合連続繊維の繊維断面が偏心鞘芯構造である請求項1または2記載の繊維束。
【請求項4】
熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が0.2以上である請求項3記載の繊維束。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維束を延伸倍率1.4〜3.0倍で開繊することを含む、ウェブの製造方法。
【請求項6】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間でお互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数10〜100山/2.54cmのスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が5〜80dtex/mm2でることを特徴とするウェブ。
【請求項7】
熱可塑性複合連続繊維の繊維断面が偏心鞘芯構造である請求項6記載のウェブ。
【請求項8】
熱可塑性複合連続繊維の芯成分の偏心度が0.2以上である請求項6記載のウェブ。
【請求項9】
請求項1記載の繊維束を、1.4〜3.0倍で延伸して得られる請求項6記載のウェブ。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項記載のウェブを用いて得られる部材。
【請求項11】
繊維断面において複合成分の重心が当該複合成分間で互いに異なる、単糸繊度が0.5〜100dtex/fの熱可塑性複合連続繊維が一方向に並び構成されている、全繊度が1万〜100万dtexのウェブであり、該熱可塑性複合連続繊維が捲縮数100山/2.54cmを越えるスパイラル捲縮を有し、D2/(W2×L2)(D2:全繊度、W2:ウェブ幅、L2:ウェブ厚み)で定義されるウェブ密度が10〜100dtex/mm2であることを特徴とするウェブ。
【請求項12】
請求項6記載のウェブを80〜125℃で熱処理して得られることを特徴とする、請求項11記載のウェブ。
【請求項13】
請求項11または12記載のウェブを用いて得られる部材。
【請求項14】
請求項11または12記載のウェブと、スパイラル捲縮を有さない他のウェブもしくはシート状物、または、請求項11または12記載のウェブより少ないスパイラル捲縮を有する他のウェブもしくはシート状物が、複数の部分熱接着部によって一体化しており、部分熱接着部と部分熱接着部の間に、前記他のウェブもしくはシート状物が隆起したループ部が形成されていることを特徴とする、成形品。
【請求項15】
部材を構成する繊維の見かけ長さが3〜50mmの範囲である請求項13記載の複数の部材が、基材となるウェブもしくはシート状物に、その各部材の一部によって熱接着されていることを特徴とする、成形品。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の部材もしくは成形品を用いて得られる製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2008−63712(P2008−63712A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170684(P2007−170684)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506276907)ESファイバービジョンズ株式会社 (16)
【出願人】(506276712)イーエス ファイバービジョンズ ホンコン リミテッド (16)
【出願人】(506275575)イーエス ファイバービジョンズ リミテッド パートナーシップ (16)
【出願人】(506276332)イーエス ファイバービジョンズ アーペーエス (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506276907)ESファイバービジョンズ株式会社 (16)
【出願人】(506276712)イーエス ファイバービジョンズ ホンコン リミテッド (16)
【出願人】(506275575)イーエス ファイバービジョンズ リミテッド パートナーシップ (16)
【出願人】(506276332)イーエス ファイバービジョンズ アーペーエス (16)
【Fターム(参考)】
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