説明

繊維用粒状洗浄助剤の製造方法

【課題】 水難溶性蛍光増白剤を洗剤中に均一に配合でき、且つ速やかに水中に分散させることのできる技術を提供する。
【解決手段】 水難溶性蛍光増白剤を、エチレングリコール及び分子量200以下のポリエチレングリコールから選ばれる一種以上に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分と混合して繊維用粒状洗浄助剤を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性蛍光増白剤を含有する繊維用粒状洗浄助剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用や家庭用の洗剤には、より一層の“白さえ”を得るために洗浄成分以外に、更に蛍光増白性剤等の洗浄助剤が配合される(特許文献1)。蛍光増白剤には、水易溶性蛍光増白剤及び水難溶性蛍光増白剤があるが、中でも水難溶性蛍光増白剤、例えばジモルホリノ型蛍光増白剤は安価であり、水に溶けにくいため衣料へ留まりやすいことから洗濯後の衣料への単位重量当たりにおける蛍光強度(染着性)が高い有用な洗浄助剤である。
【0003】
しかしながら、かかる水難溶性蛍光増白剤をそのまま粉体中に添加し、混合、造粒して製品化した場合は、洗剤中に均一に配合することが困難であるという欠点がある。しかも、このような方法で得られた洗剤は、温水に溶解させても不溶分が存在し、十分な蛍光増白効果を得ることができない。
【0004】
そのため、洗剤中に均一に配合するための技術として、特許文献2には、平均分子量20000以上の水溶性高分子を用いた、未溶解蛍光増白剤の最小沈降距離が40mm以下である粉末洗剤添加用蛍光増白剤分散液組成物が開示されている。また、特許文献3には、ノニオン界面活性剤に蛍光増白剤を溶解、分散した後、他の洗剤成分と造粒するノニオン洗剤組成物の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平4−285697号
【特許文献2】特開2004−91689号
【特許文献3】特開平7−286198号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水難溶性蛍光増白剤の効果を十分に発揮させるには、上記のように洗剤中に均一に配合されていることに加え、洗浄液中に速やかに且つ均一に分散することが望まれる。
【0006】
本発明の課題は、水難溶性蛍光増白剤を洗剤中に均一に配合でき、且つ速やかに水中に分散させることのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水難溶性蛍光増白剤を、エチレングリコール及び分子量200以下のポリエチレングリコールから選ばれる一種以上〔以下、(A)成分という〕に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分と混合する工程を有する、繊維用粒状洗浄助剤の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、水難溶性蛍光増白剤を、(A)成分に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分と混合することにより得られ、水溶性無機塩を50〜99重量%、水難溶性蛍光増白剤を0.01〜5重量%含有する繊維用粒状洗浄助剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水難溶性蛍光増白剤を洗剤中に均一に配合でき、且つ速やかに水中に分散させることのできる繊維用粒状洗浄助剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<水難溶性蛍光増白剤>
本発明で用いる水難溶性蛍光増白剤には、ジモルホリノ型蛍光増白剤、ヒドロキシエチルアミノ型蛍光増白剤等が挙げられ、中でも、汎用性の観点から、ジモルホリノ型蛍光増白剤が好ましい。ジモルホリノ型蛍光増白剤には、4,4’−ビス{(4−アニリノ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}スチルベン−2,2’−ジスルホン酸二ナトリウム塩、4,4’−ビス{(4−トルイジノ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}スチルベン−2,2’−ジスルホン酸二ナトリウム塩等が挙げられ、本発明では前者のジモルホリノ型蛍光増白剤が特に好ましい。前者のジモルホリノ型蛍光増白剤としては、Photine CBUS−560B(商品名、ヒクソン社製)、BRY−10(商品名、マクテシム社製)、Tinopal DMS−X(商品名、チバガイギー社製)等がある。所望により、上記の種々の水難溶性蛍光増白剤を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
本発明でいう水難溶性蛍光増白剤とは、蛍光増白剤の溶解度を正確に示す方法として下記の計算式によって求めた難溶性度(S値)により決定する。
難溶性度(S値)=(P1−P2)/P1×100 (1)
1;ろ過していない蛍光増白剤溶液または懸濁液(A)の吸光度値
2;ろ過後のろ液(B)の吸光度値
(A)、(B)の蛍光増白剤濃度はいずれも2ppm
【0012】
本発明において、上記式(1)でS値が20%以上を示すものは水難溶性蛍光増白剤であり、S値が20%未満を示すものは水易溶性蛍光増白剤である。下記に具体的な実験方法を示す。
【0013】
1Lのビーカーに1000gの蒸留水(水温25℃)を入れ、蛍光増白剤0.200gを投入し、(株)島津製作所製マグネティックスターラー(商品名:SST−172)、撹拌子(長さ34mm、直径8mm)で900rpm、25℃にて攪拌することにより蛍光増白剤溶液または懸濁液を調製する。10分撹拌した後、蛍光増白剤溶液または懸濁液を(攪拌しながら)シリンジ等でサンプリングする。
【0014】
ろ過していない蛍光増白剤溶液または懸濁液(A)を調製する場合は、100mLメスフラスコに10分攪拌後の蛍光増白剤溶液または懸濁液を10.000g正確にサンプリングし、蒸留水/メタノール=1/1(容量比)を加えて1000倍に希釈する。
【0015】
ろ過後のろ液(B)を調製する場合は、シリンジ等でサンプリングした10分攪拌後の蛍光増白剤溶液または懸濁液をADVANTEC製0.2μフィルター(商品名:DISMIC−25)にてろ過したろ液を100mLメスフラスコに10.0g正確にサンプリングし、蒸留水/メタノール=1/1(容量比)を用いて1000倍に希釈する。なお、(A)、(B)の各液を調製する際に、希釈するために使用する溶媒に蒸留水/メタノール=1/1(容量比)を用いているのは、未溶解の蛍光増白剤を素早く完全に溶解させるためである。
【0016】
その後、未溶解蛍光増白剤を完全に溶解させるため常温にて約90分攪拌して得られた(A)、(B)それぞれの溶液を島津製作所製分光光度計UV−2500PC(商品名)にて吸光度値(λ=350nm)を測定する。
【0017】
例えば本発明に使用するのに好ましいPhotine CBUS−560B(ヒクソン社製)のS値は、約75%であり水難溶性蛍光増白剤に分類される。S値を求めるためには所望される蛍光増白剤の正確な秤量が必要であるが、困難な場合には、蛍光増白剤濃度の異なる(A)、(B)溶液を数点調製した後、吸光度値の検量線を引き、上記蛍光増白剤濃度(2ppm)に相当する吸光度値を読み取っても良い。
【0018】
本発明において、蛍光増白剤としては、前記水難溶性蛍光増白剤に加えて、水易溶性蛍光増白剤を使用してもよい。該水易溶性蛍光増白剤としては、一般に洗浄剤に配合されているものであれば特に限定はないが、ジモルホリノ型蛍光増白剤等の水難溶性蛍光増白剤の紫外線による分解を抑えたり、冬場等の低温洗濯時での衣料への染着性が高いという観点から、ビフェニル型蛍光増白剤が好ましい。該ビフェニル型蛍光増白剤としては、4,4’−ビス(2−スルホスチリル)ビフェニル二硫酸塩)等が挙げられる。中でも、本発明では、チノパール CBS−X(商品名、チバガイギー社製)を使用することが好ましい。なお、チノパール CBS−XのS値は約0%である。
【0019】
衣料への染着性の点から、水難溶性蛍光増白剤/水易溶性蛍光増白剤の比率(重量比)は、100/0〜20/80が好ましい。前記比率は、好ましくは70/30〜30/70、更に好ましくは60/40〜40/60、最も好ましくは50/50である。また最終形態の粉末洗剤組成物中に配合される蛍光増白剤の総量は、0.5重量%以下であれば粉末洗剤組成物の色調が良好である。
【0020】
蛍光増白剤の含有量は、洗浄助剤中0.01〜5重量%、更に0.1〜5重量%、特に0.1〜2重量%が、溶解性、粉末物性、粉末安定性等の点から、好ましい。
【0021】
<(A)成分>
本発明では、水難溶性蛍光増白剤を予め、(A)成分に溶解する。当該(A)成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、重量平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG200)等が挙げられる。
【0022】
<製造方法>
本発明では、上記水難溶性蛍光増白剤を予め、(A)成分に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分に混合する。
【0023】
水難溶性蛍光増白剤は、(A)成分と水難溶性蛍光増白剤の合計に対して、すなわち、〔水難溶性蛍光増白剤/(水難溶性蛍光増白剤+(A)成分)〕×100が、20重量%以下、更に5〜20重量%、特に10〜20重量%の濃度で(A)成分に溶解して用いることが、取り扱い性等の観点から、好ましい。この場合、(A)成分の温度は、60℃以上、更に60〜80℃が好ましい。
【0024】
水難溶性蛍光増白剤を溶解した(A)成分を混合する粉体成分は、炭酸ナトリウム、芒硝等の無機化合物、更に後述のキレート剤等が挙げられる。
【0025】
また、水溶性無機塩としては、炭酸ナトリウム(デンス灰、ライト灰)、硫酸ナトリウムが好ましい。(A)成分と水溶性無機塩の重量比は、粉末物性の観点から、(A)成分/水溶性無機塩=0.01〜0.33が好ましく、特に0.02〜0.1が好ましい。
【0026】
最終的に得られる洗浄助剤中の水難溶性蛍光増白剤の濃度が0.01〜5重量%、更に0.1〜2重量%となるように、水難溶性蛍光増白剤を溶解した(A)成分を用いることが好ましい。
【0027】
本発明に係る洗浄助剤には、増量剤、酵素、香料、色素、他の蛍光増白剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、分散剤、キレート剤等を問題ない範囲で配合してもよく、本発明の製造方法は、これらの成分を配合する工程を含むことができる。特に、キレート剤としては、水溶性キレート剤が好ましく、更にエチレンジアミンテトラ酢酸、ホスホン酸、トリポリリン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
本発明により、水難溶性蛍光増白剤を予め、(A)成分に溶解後、水溶性無機塩を含む粉体成分に混合することにより得られ、水溶性無機塩を50〜99重量%、水難溶性蛍光増白剤を0.01〜5重量%含有する繊維用粒状洗浄助剤が提供される。
【0029】
本発明により得られる洗浄助剤の嵩密度は、0.5〜1.1g/cm3、更に0.6〜1.0g/cm3が好ましい。
【0030】
以下、本発明の製造方法について簡単に説明する。水溶性無機塩を含む粉末成分をナウターミキサー等の混合攪拌装置に入れ、攪拌しながら、水難溶性蛍光増白剤を溶解した(A)成分を滴下、スプレー等により添加し、均一に混合することで、本発明に係る洗浄助剤が得られる。
【0031】
本発明により得られた繊維用粒状洗浄助剤を洗剤成分と混合することで、蛍光増白剤を含有する洗剤を得ることができる。かかる洗剤中、蛍光増白剤の濃度は2重量%以下、更に0.1〜1重量%が好ましい。
【0032】
洗剤は、上記成分以外に(1)エタノール等のアルコール類、(2)パラトルエンスルホン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、尿素等の減粘剤や可溶化剤(防腐剤としての効果を持つものもある)、(3)相調整、洗浄力向上のためのポリオキシアルキレンベンジルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、(4)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤、(5)柔軟性付与を目的としたシリコーン、(6)消泡剤としてのシリカ、シリコーン、(7)香料、抗菌防腐剤等を含有することができる。
【0033】
リネンサプライ等、業務用の洗剤においては、白さえにより優れたものが望まれるため、本発明により得られた洗浄助剤は、業務用洗剤に効率よく水難溶性蛍光増白剤を配合する技術として有用である。
【実施例】
【0034】
実施例1〜4
表1の成分中、蛍光増白剤を60℃の(A)成分に予め溶解させた後、他の成分と混合して洗浄助剤を得た。得られた洗浄助剤を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(1)溶解性
1Lのビーカーに40℃、1Lのイオン交換水を入れ、これに洗浄助剤2gを投入し、マグネチックスターラーにて300回転/分で5分間撹拌し、不溶物の有無を観察した。均一透明から微白濁であるものを「○」、白濁が認められたものを「△」、不溶物が存在したものを「×」として評価した。
【0036】
(2)蛍光増白剤の染着むら
洗浄助剤0.1重量%と残部の水を含有する処理液により、25℃、1時間の条件で木綿白布に対して染着処理をした後、処理した木綿白布に対して紫外線ランプをあて、ムラ付きの有無に対して評価を行った。均一に染着したものを「○」、一部にムラ付きが生じたものを「△」、ムラ付きが甚だしいものを「×」として評価した。
【0037】
(3)蛍光増白性
木綿白布を6cm×6cmに裁断し、洗浄助剤の2重量%水溶液に入れ、ターゴトメータ(回転数80回転/分)にて洗浄を60℃で5分間行い、すすぎ1分(20℃)、脱水、プレス乾燥を行った。洗浄前後の汚染布の蛍光強度(IF値)を測定し(日本電色工業(株)分光色彩・白度計PF−10)、その差(ΔIF値)により、蛍光増白性を判定した。ΔIF値が大きいほど、蛍光増白性に優れることを意味する。
【0038】
比較例1〜2
表1の成分を一括混合して洗浄助剤を得た。得られた洗浄助剤を用いて実施例1等と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
・蛍光増白剤:Photine CBUS−560B(ヒクソン社製)
【0041】
実施例5〜6
表2の成分中、蛍光増白剤をグリコール類に予め溶解させた後、他の成分と混合して洗浄助剤を得た。得られた洗浄助剤を用いて以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
(4)アルカリ溶解性
1Lのビーカーに40℃、1Lの4゜DH硬水を入れ、これにメタ珪酸ナトリウム・9水和物を1g、洗浄助剤2gを投入し、マグネチックスターラーにて300回転/分で5分間撹拌し、溶液の白濁状態を観察した。均一透明から微白濁であるものを「○」、白濁が認められたものを「△」、不溶物が存在したものを「×」として評価した。
【0043】
比較例3〜4
表2の成分を一括混合して洗浄助剤を得た。得られた洗浄助剤を用いて実施例5等と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
・蛍光増白剤:Photine CBUS−560B(ヒクソン社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水難溶性蛍光増白剤を、エチレングリコール及び分子量200以下のポリエチレングリコールから選ばれる一種以上に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分と混合する工程を有する、繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項2】
水難溶性蛍光増白剤が、ジモルホリノ型蛍光増白剤である請求項1記載の繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項3】
水難溶性蛍光増白剤を、前記エチレングリコール及び分子量200以下のポリエチレングリコールから選ばれる一種以上と水難溶性蛍光増白剤の合計に対して20重量%以下の濃度で溶解させる請求項1又は2記載の繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項4】
水難溶性蛍光増白剤の濃度が、繊維用粒状洗浄助剤中の0.01〜5重量%である請求項1〜3の何れか1項記載の繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項5】
水溶性キレート剤を、前記水溶性無機塩を含む粉体成分に添加する工程を有する請求項1〜4の何れか1項記載の繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項6】
水溶性キレート剤が、エチレンジアミンテトラ酢酸、ホスホン酸、トリポリリン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上である請求項5記載の繊維用粒状洗浄助剤の製造方法。
【請求項7】
水難溶性蛍光増白剤を、エチレングリコール及び分子量200以下のポリエチレングリコールから選ばれる一種以上に溶解した後、水溶性無機塩を含む粉体成分と混合することにより得られ、水溶性無機塩を50〜99重量%、水難溶性蛍光増白剤を0.01〜5重量%含有する繊維用粒状洗浄助剤。

【公開番号】特開2006−143812(P2006−143812A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333305(P2004−333305)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】