説明

織機及び織機の駆動装置。

【課題】綜絖や筬の駆動周期が変動しても適切に張力を制御できる織機を提供する。
【解決手段】織機1は、ワープビーム3から経糸Vを送出させる方向へワープビーム3を回転させる送出モータ27と、ワープビーム3から送出された経糸Vを開閉口させる綜絖10と、緯入れ装置11により経糸Vの開口に入れられた緯糸Hを筬打ちする筬13と、筬13により筬打ちされ、経糸V及び緯糸Hにより形成された織布Wを引き込むサーフェスローラ17を織布Wを引き込む方向へ回転させるサーフェスモータ61と、経糸Vの張力を検出する位置検出器35と、位置検出器35の検出した張力をフィルタリングする適応フィルタ部83を有し、当該適応フィルタ部83によりフィルタリングされた張力に基づいて、経糸Vの張力が所定の目標張力になるように、送出モータ27及びサーフェスモータ61を制御する制御装置25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機及び織機の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機においては、経糸が巻かれたワープビームが送出モータにより回転されて経糸が送出され、綜絖により形成された経糸の開口に緯糸が緯入れされ、筬により筬打ちが行われることにより、織布が形成される。形成された織布は、織布に当接するローラが引込モータにより回転されることにより引き込まれて巻き取られる。
【0003】
経糸の張力は、織布の品質を一定に保つ観点等から、一定に制御されることが好ましい。経糸の張力の制御は、経糸の張力の検出値に基づいて、送出モータ及び引込モータを制御することにより行われる。特許文献1では、張力の検出値をローパスフィルタによりフィルタリングすることにより、綜絖や筬が張力に及ぼす影響を除去し、張力制御を安定化させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−288645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタにより変動除去が行われなければ、送出モータ及び引込モータは、綜絖や筬による張力変動に起因して動作が不安定になる。一方、不適切なフィルタ係数の設定などにより、フィルタによる張力の変動除去の効果を大きくしすぎると、本来、送出モータ及び引込モータの回転が追従すべき張力変動まで除去されてしまうことになり、送出モータ及び引込モータの張力変動に対する応答性が低下し、適切な張力が得られない。また、フィルタによる張力の変動除去の効果を大きくしすぎると、張力制御の安定性が損なわれ、オーバーシュート、アンダーシュートや発振が生じ、制御性が著しく悪化する場合がある。従って、フィルタのフィルタ係数は適切に設定される必要がある。
【0005】
一方、綜絖や筬は、送出モータや引込モータとは別のメインモータにより駆動される。メインモータの回転は、歯車機構、カム機構、リンク機構等の伝達機構を介して、綜絖及び筬に伝達されており、綜絖及び筬の周期、及び、これら相互の駆動タイミング(位相差)は、伝達機構により規定されている。そして、これらの周期や位相差は、織機の種類や織物の種類(例えば、平織、綾織、朱子織等)により異なる。また、綜絖、筬、伝達機構、メインモータ及びメインモータの制御を行う制御装置を含む構成と、送出モータ、引込モータ及びこれらモータの制御を行う制御装置を含む構成とは、別個の製造者により製造されることが多い。
【0006】
従って、張力制御のためのフィルタは、メインモータ等を含む構成に応じてフィルタ係数が設定されなければならないにも関らず、メインモータ等を含む構成を製造する製造者とは異なる製造者により製造されており、フィルタ係数を適切に設定することが困難となっていた。
【0007】
本発明の目的は、綜絖や筬の駆動周期が変化しても適切に張力を制御できる織機及び織機の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の織機は、経糸が巻かれたワープビームと、前記経糸を送出させる方向へ前記ワープビームを回転させる送出モータと、前記ワープビームから送出された前記経糸を開閉口させる綜絖と、前記綜絖により形成された前記経糸の開口に緯糸を緯入れする緯入れ装置と、前記緯入れ装置により前記開口に緯入れされた緯糸を筬打ちする筬と、前記筬により筬打ちされ、前記経糸及び前記緯糸により形成された織布を引き込む引込ローラと、前記織布を引き込む方向へ前記引込ローラを回転させる引込モータと、前記ワープビームと前記引込ローラとの間において前記経糸の張力を検出する検出器と、前記検出器の検出した張力をフィルタリングする適応フィルタを有し、当該適応フィルタによりフィルタリングされた張力に基づいて、前記経糸の張力が所定の目標張力になるように、前記送出モータ及び前記引込モータを制御する制御装置と、を有する。
【0009】
好適には、前記綜絖を駆動する、前記綜絖の移動方向を可動子の駆動方向とする綜絖用リニアモータを有する。
【0010】
好適には、前記筬を駆動する、前記筬の移動方向を可動子の駆動方向とする筬用リニアモータを有する。
【0011】
好適には、前記制御装置は、前記綜絖用リニアモータ及び前記筬用リニアモータの駆動周期、並びに、これら相互の駆動タイミングを変更可能な同期動作設定部を有し、当該同期動作設定部により変更された駆動周期及び駆動タイミングに基づいて前記綜絖用リニアモータ及び前記筬用リニアモータを制御する。
【0012】
好適には、前記適応フィルタは、前記検出器の検出した張力を複数の第1フィルタ係数を使用してフィルタリングするフィルタ部と、前記複数の第1フィルタ係数を算出するフィルタ定数推定部と、を有し、前記フィルタ部は、前記検出器の検出した張力を順次遅延させる複数の第1遅延素子と、前記複数の第1遅延素子の出力に対して、各第1遅延素子に対応した前記第1フィルタ係数を乗じる複数の第1乗算器と、前記複数の第1乗算器の乗算結果を累積し、その累積結果をフィルタリングされた張力として出力する第1累積部と、を有し、前記フィルタ定数推定部は、通過域信号を生成する通過域信号発生部と、前記検出器の検出した張力と、前記通過域信号とを加算する加算器と、前記加算器の加算結果を複数の第2フィルタ係数を使用してフィルタリングする推定用フィルタ部と、前記推定用フィルタ部によりフィルタリングされた出力と、前記通過域信号との偏差を算出する減算器と、前記偏差が小さくなるように、前記複数の第2フィルタ係数を算出するタップ定数推定部と、を有し、前記推定用フィルタ部は、前記加算器の加算結果を順次遅延させる複数の第2遅延素子と、前記複数の第2遅延素子の出力に対して、各遅延素子に対応した前記第2フィルタ係数を乗じる複数の第2乗算器と、前記第2乗算器の乗算結果を累積し、その累積結果をフィルタリング結果として出力する第2累積部と、を有し、前記タップ定数推定部は、前記偏差が小さくなるように前記複数の第2フィルタ係数を算出し、算出された前記複数の第2フィルタ係数が前記フィルタ部において前記第1フィルタ係数として設定される。
【0013】
本発明の織機の駆動装置は、経糸を送出させる方向へ前記経糸が巻かれたワープビームを回転させる送出モータと、前記ワープビームから送出された経糸の開口に緯入れされた緯糸を筬打ちして形成された織布を引き込む引込ローラを前記織布を引き込む方向へ回転させる引込モータと、前記ワープビームと前記引込ローラとの間において検出された張力をフィルタリングする適応フィルタを有し、当該適応フィルタによりフィルタリングされた張力に基づいて、前記経糸の張力が所定の目標張力になるように、前記送出モータ及び前記引込モータを制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、綜絖や筬の駆動周期が変化しても適切に張力を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る織機1の全体構成の概要を示す模式図である。なお、織機1は、重力方向に対してどのような向きに配置されてもよいが、本実施形態では、紙面上下方向が実際の上下方向になるように織機1が配置されているものとして説明する。
【0016】
織機1は、複数の経糸Vが巻きつけられており、回転することにより複数の経糸Vを送出するワープビーム3と、ワープビーム3から送出された複数の経糸Vを案内するテンションローラ5と、テンションローラ5に案内された複数の経糸Vを上下の所定位置に分ける複数の綾竹7と、綾竹7により分けられた複数の経糸Vを上下に移動させることによって開口を形成する複数の綜絖枠9と、綜絖枠9により形成された開口に緯糸Hを通す緯入れ装置11と、緯入れ装置11により開口に通された緯糸Hを筬打ちする筬13と、筬13により筬打ちされ、複数の経糸V及び緯糸Hにより形成された織布Wを巻き取る巻取り装置14と、織機1の動作を制御する制御装置25とを有している。
【0017】
ワープビーム3は、例えば、回転式の送出モータ27により、直接的に、若しくは、不図示の歯車列等を介して間接的に、回転駆動される。送出モータ27は、例えば、サーボモータにより構成されており、送出モータ27の回転を検出するエンコーダ29及び送出モータ27に電力を供給するサーボドライバ31と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ31は、制御装置25からサーボドライバ31に入力された制御信号とエンコーダ29の検出信号とに基づいて、送出モータ27の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。
【0018】
テンションローラ5は、複数の経糸Vの移動に伴って回転可能に軸支されている。また、テンションローラ5は、複数の経糸Vの張力を検出する張力検出部を、バネ(付勢部材)33及び位置検出器35と共に構成している。バネ33は、テンションローラ5により複数の経糸Vに張力が加えられる方向にテンションローラ5を付勢している。すなわち、テンションローラ5は、複数の経糸Vの張力により受ける力と、バネ33の付勢力とが釣り合う位置に位置している。そして、複数の経糸Vの張力が変動すると、その変動量に比例した量だけ、テンションローラ5の位置は変動する。位置検出器35は、テンションローラ5の位置を、複数の経糸Vの張力を示す値として検出し、検出結果に応じた検出信号を制御装置25に出力する。
【0019】
綜絖枠9には、複数の経糸Vが挿通される、複数の経糸Vと同数の綜絖10が取り付けられている。複数の綜絖枠9は、例えば、綜絖リニアモータ37により駆動される。綜絖リニアモータ37は、例えば、サーボモータにより構成されており、綜絖リニアモータ37の位置を検出するエンコーダ39及び綜絖リニアモータ37に電力を供給するサーボドライバ41と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ41は、制御装置25からサーボドライバ41に入力された制御信号とエンコーダ39の検出信号とに基づいて、綜絖リニアモータ37の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。
【0020】
筬13は、例えば、筬リニアモータ43により駆動される。筬リニアモータ43は、例えば、サーボモータにより構成されており、筬リニアモータ43の位置を検出するエンコーダ45及び筬リニアモータ43に電力を供給するサーボドライバ47と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ47は、制御装置25からサーボドライバ47に入力された制御信号とエンコーダ45の検出信号とに基づいて、筬リニアモータ43の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。
【0021】
緯入れ装置11は、例えば、レピア式の緯入れ装置により構成されており、緯糸Hを保持可能なレピアヘッド49と、レピアヘッド49が固定されたレピアバンド51と、レピアバンド51が巻かれたレピアホイール53との組み合わせを、緯糸Hの受渡用及び受取用に2組有している。レピアホイール53の回転により、緯糸Hを受け渡すレピアヘッド49及び緯糸Hを受け取るレピアヘッド49が、複数の綜絖枠9により形成された複数の経糸Vの開口に挿入される。この際、受渡用のレピアヘッド49は、緯糸Hを保持していく。そして、受渡用のレピアヘッド49から受取用のレピアヘッド49へ緯糸Hが受け渡された後、レピアホイール53の逆回転により、レピアヘッド49は、複数の綜絖枠9の開口から退避する。これにより、緯糸Hは複数の経糸Vの開口に緯入れされる。
【0022】
レピアホイール53は、例えば、回転式のレピアモータ55により、直接的に、又は、不図示の歯車列若しくはリンク機構等を介して間接的に、回転駆動される。レピアモータ55は、例えば、サーボモータにより構成されており、レピアモータ55の回転を検出するエンコーダ57及びレピアモータ55に電力を供給するサーボドライバ59と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ59は、制御装置25からサーボドライバ59に入力された制御信号とエンコーダ57の検出信号とに基づいて、レピアモータ55の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。なお、本実施形態では、レピア式を用いているが、例えば、コンプレッサで圧縮したエアジェットを利用したエアジェット方式や同じく水を圧縮したウォータージェットを利用したウォータージェット方式でもよい。
【0023】
巻取り装置14は、織布Wを案内するエクスパンションローラ15と、エクスパンションローラ15に案内された織布Wを挟み込み、回転して織布Wを引き込むサーフェスローラ17及びプレスローラ19と、サーフェスローラ17及びプレスローラ19により引き込まれた織布Wのしわを取るしわ取り部材21と、しわ取り部材21によりしわが取られた織布Wを巻き取る巻取りローラ23とを有している。
【0024】
エクスパンションローラ15は、織布Wに当接して配置されるとともに、織布Wの移動に伴って回転可能に軸支されている。サーフェスローラ17は、例えば、回転式のサーフェスモータ61により、直接的に、又は、不図示の歯車列等を介して間接的に、回転駆動される。サーフェスモータ61は、例えば、サーボモータにより構成されており、サーフェスモータ61の回転を検出するエンコーダ63及びサーフェスモータ61に電力を供給するサーボドライバ65と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ65は、制御装置25からサーボドライバ65に入力された制御信号とエンコーダ63の検出信号とに基づいて、サーフェスモータ61の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。プレスローラ19は、サーフェスローラ17とで織布Wを挟み込むように配置されるとともに、織布Wの移動に伴って回転可能に軸支されている。
【0025】
巻取りローラ23は、例えば、回転式の巻取りモータ67により、直接的に、又は、不図示の歯車列等を介して間接的に、回転駆動される。巻取りモータ67は、例えば、サーボモータにより構成されており、巻取りモータ67の回転を検出するエンコーダ69及び巻取りモータ67に電力を供給するサーボドライバ71と共にサーボ機構を構成している。サーボドライバ71は、制御装置25からサーボドライバ71に入力された制御信号とエンコーダ69の検出信号とに基づいて、巻取りモータ67の位置及び/又は速度が、入力された制御信号に追従するようにフィードバック制御を行う。
【0026】
制御装置25は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAN、外部記憶装置を含んで構成されている。制御装置25は、位置検出器35からの検出信号等の各種手段からの信号に基づいて、制御信号を生成し、その制御信号をサーボドライバ31、41、47、59、65、71等の各種駆動手段へ出力する。なお、制御装置25は、例えば、一の筐体に複数の回路基板等が収納されることにより構成されている。また、当該筐体に、サーボドライバ31、41、47、59、65、71等の各種の駆動手段の一部又は全てが収納されていてもよい。ただし、制御装置25は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。
【0027】
図2(a)は、綜絖枠9及び綜絖リニアモータ37の構成を示す、経糸Vの通過方向に見た図である。なお、図2(a)において綜絖10は図示を省略されている。
【0028】
綜絖リニアモータ37は、例えば、複数の綜絖枠9それぞれに対して2つずつ設けられている。一の綜絖枠9に対応する2つの綜絖リニアモータ37は、例えば、綜絖枠9の左右(経糸Vの進行方向に対して側方)両側に設けられている。綜絖リニアモータ37は、例えば、支柱77を介して織機1の土台となる部材に固定された固定子73と、綜絖枠9に固定されており、固定子73に対して綜絖枠9の移動方向(図2の紙面上下方向)に移動可能な可動子75とを有している。
【0029】
なお、綜絖リニアモータ37は、同期式であってもよいし、誘導式であってもよいし、直流式であってもよい。また、固定子73及び可動子75のうち、いずれが界磁でいずれが電機子であってもよい。図2(a)では、軸状の固定子73の周囲に可動子75が配置されている場合を示しているが、図2(b)に示す綜絖リニアモータ37′のように、軸状の可動子75′の周囲に固定子73′が配置されていてもよい。
【0030】
筬リニアモータ43も、特に図示しないが、綜絖リニアモータ37と同様に、織機1の土台となる部材に直接的又は間接的に固定された固定子と、筬13に固定されており、固定子73に対して筬13の移動方向(図1の紙面左右方向)に移動可能な可動子とを有している。また、筬リニアモータ43も、例えば、綜絖リニアモータ37と同様に、筬13の左右両側に2つ設けられている。
【0031】
図3は、制御装置25の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【0032】
まず、経糸Vの張力制御に関る構成を説明する。経糸V及び織布Wの張力は、所定の周期(例えば100μs〜5ms)で実行される、位置検出器35により検出された張力に基づくフィードバック制御により制御される。具体的には以下のとおりである。
【0033】
信号入力処理部79は、位置検出器35からの検出信号(アナログ信号)を増幅する等の処理を行う。信号入力処理部79は、例えば、差動OPアンプを含んで構成され、位置検出器35からの比較的微弱な検出信号を数V程度のAD変換に適したレベルまで増幅する。
【0034】
AD変換部81は、信号入力処理部79により増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。これにより、アナログ信号の電圧値(張力)は、例えば、16ビットや24ビットの情報として、2値のデジタル信号により保持される。
【0035】
なお、AD変換部81以降の処理では、2値のデジタル信号が所定のビット数の情報として保持する数値に対して種々の処理が行われることになるが、2値のデジタル信号が保持している数値の加算等は、概念的にアナログ信号の信号レベル(電圧等)の加算等に置き換えることができるとともに、実際にアナログ信号の信号レベルの加算等により行うこともできることから、本願の説明では、2値のデジタル信号が保持する数値の加算を、単に信号の加算と表現するなど、2値のデジタル信号が保持する数値に対する処理を信号に対する処理として表現することがある。
【0036】
適応フィルタ部83は、AD変換部81からの信号をフィルタリングする。具体的には、適応フィルタ部83は、張力制御に必要な周波数帯域の信号は維持しつつ、張力制御に不必要な周波数帯域の信号を除去する。適応フィルタ部83は、実際にフィルタリングを行うフィルタ部85と、フィルタ部85によるフィルタリングが適切になされるようにフィルタ部85のフィルタ定数を推定するフィルタ定数推定部87とを有している。
【0037】
張力制御部89は、適応フィルタ部83によりフィルタリングされた検出張力と、予め製造者やユーザにより設定された目標張力との差を縮小するように、送出モータ27及びサーフェスモータ61の目標速度を設定する。例えば、張力制御部89は、検出張力が目標張力よりも大きければ、送出モータ27の現在の目標速度を速く補正し、及び/又は、サーフェスモータ61の現在の目標速度を遅く補正し、検出張力が目標張力よりも小さければ、送出モータ27の現在の目標速度を遅く補正し、及び/又は、サーフェスモータ61の現在の目標速度を速く補正する。なお、補正量は、検出張力と目標張力との偏差に応じて連続的に変化してもよいし、検出張力と目標張力との偏差が所定の許容値を超えたときに一定に設定されるものであってもよい。また、偏差に基づいて、比例制御、PD制御、PID制御等の適宜な制御が行われてよい。張力制御部89は、設定した送出モータ27の目標速度に応じた制御信号を送出モータ制御部91に出力するとともに、設定したサーフェスモータ61の目標速度をサーフェスモータ制御部93に出力する。
【0038】
送出モータ制御部91は、張力制御部89から入力された制御信号に応じた制御信号を生成して、サーボドライバ31に出力する。同様に、サーフェスモータ制御部93は、張力制御部89から入力された制御信号に応じた制御信号を生成して、サーボドライバ65に出力する。例えば、張力制御部89は、制御信号として、目標速度を所定のビット数の情報として含む2値のデジタル信号を出力し、送出モータ制御部91及びサーフェスモータ制御部93は、その目標速度に応じた周波数のパルス信号を生成して出力する。サーボドライバ31(65)では、送出モータ制御部91(サーフェスモータ制御部93)から入力されたパルス信号の計数値と、エンコーダ29(63)から出力されるパルス信号の計数値との偏差に基づいてフィードバック制御を行う。
【0039】
次に、綜絖10による経糸Vの開口から筬打ち動作までを中心とする織り動作の制御に係る構成を説明する。
【0040】
同期動作設定部95は、織機1の初期動作として、製造者により予め記憶させられた情報や、ユーザに不図示の入力手段を介して入力された情報等に基づいて、綜絖リニアモータ37、筬リニアモータ43及びレピアモータ55の駆動周期、並びに、これらのモータの相互の駆動タイミング(各駆動周期の位相差)を設定する。すなわち、綜絖10により開口を形成する周期、緯入れ装置11により緯糸Hを緯入れする周期、筬13により筬打ちを行う周期を設定するとともに、これらの動作の相互のタイミングを設定する。
【0041】
なお、図1に示す例では、緯入れの周期と筬打ちの周期とは同一であり、綜絖10の周期(1往復)は、緯入れの周期や筬打ちの周期の2倍である。緯入れや筬打ちの周期は、例えば、25msである。また、駆動タイミングは、綜絖10による開口、緯入れ、筬打ちの順に設定されることになる。
【0042】
同期動作設定部95は、この他に、製造者により予め記憶させられた情報や、ユーザに不図示の入力手段を介して入力された情報等に基づいて、各モータ(37、45、55)について、1周期中における、所定の動作をするときの駆動タイミング(位相)、速度、停止位置等を設定したり、巻取りモータ67の回転速度を設定する。
【0043】
なお、同期動作設定部95は、ユーザに入力された情報等に応じて、上記の周期、位相差、位相等を設定するから、ユーザに入力された情報等に応じてこれらの設定を変更可能であると捉えられる。
【0044】
織り動作制御部97は、所定の周期(例えば100μs〜5ms)で、同期動作設定部95により設定された駆動周期及び駆動タイミング等で各モータ(37、45、55、67)が動作するように制御信号を生成し、綜絖リニアモータ制御部99、筬リニアモータ制御部101、レピアモータ制御部103、巻取りモータ制御部105に出力する。当該制御信号には、例えば、各モータの目標位置、及び/又は、目標速度が含まれている。
【0045】
綜絖リニアモータ制御部99、筬リニアモータ制御部101、レピアモータ制御部103、巻取りモータ制御部105は、送出モータ制御部91やサーフェスモータ制御部93と同様に、入力された制御信号に応じた制御信号(例えばパルス信号)を生成して、サーボドライバ41、47、59、71に出力する。サーボドライバ41、47、59、71は、例えば、サーボドライバ31、65と同様に、各制御部(99、101、103、105)から入力されたパルス信号の計数値と、エンコーダ39、45、57、69から出力されるパルス信号の計数値との偏差に基づいてフィードバック制御を行う。
【0046】
図4は、フィルタ部85の構成を示すブロック図である。
【0047】
フィルタ部85は、例えば、いわゆる有限長インパルス応答(FIR)フィルタにより構成されており、入力された信号(X(1))を順次遅延させるように直列に接続された複数(N−1個)の遅延素子111(2)〜111(N)(以下、(2)、(N)等を省略したり、111(n)のように一般化して表現することがある。他の符号や係数も同様である。)と、入力された信号(X(1))及び複数の遅延素子111により順次遅延された信号(X(2)〜X(N))に対してタップゲイン(フィルタ係数)A(1)〜A(N)を乗算する複数(N個)の乗算器113(1)〜113(N)と、タップゲインAが乗じられたN個の信号を累積するための、直列に接続された複数(N−1個)の加算器115(2)〜115(N)とを有している。フィルタ部85は、フィルタリングした信号を加算器115(N)から出力する。
【0048】
Nは、位置検出器35からの信号をサンプリングする周期や織り動作の周期等を考慮して適宜に設定される。例えば、Nは、5〜250である。なお、一般には、Nを大きくし過ぎると、フィルタの減衰効果が大きくなり過ぎ、張力制御に必要な変動も減衰されてしまうが、フィルタ部85では、後述するように、タップゲインA(n)は、フィルタ定数推定部87により最適化されるから、Nを大きくとっても、nが大きいタップゲインA(n)は小さくなり、そのような弊害は生じない。従って、計算量が過多にならない範囲でNを十分に大きくしておくことが好ましい。
【0049】
図5は、フィルタ定数推定部87の構成を示すブロック図である。
【0050】
フィルタ定数推定部87は、推定用フィルタ部117を有しており、推定用フィルタ部117におけるタップゲインH(1)〜H(N)が、推定終了時若しくは推定中に、フィルタ部85のタップゲインA(1)〜A(N)として乗算器113(1)〜113(N)にコピーされ、使用される。具体的には以下のとおりである。
【0051】
フィルタ定数推定部87は、通過域信号dを生成して出力する通過域信号発生部119を有している。推定用フィルタ部117のタップゲインHは、通過域信号dを推定用フィルタ部117によりフィルタリングしても減衰させないように算出される。
【0052】
推定用フィルタ部117には、AD変換部81から出力された信号と、通過域信号dとが、加算器121により加算されて入力される。推定用フィルタ部117は、入力された信号(Y(1))を順次遅延させるように直列に接続された複数(N−1個)の遅延素子123(2)〜123(N)と、入力された信号(Y(1))及び複数の遅延素子123により順次遅延された信号(Y(2)〜Y(N))に対してタップゲインH(1)〜H(N)を乗算する複数(N個)のタップ定数推定部125(1)〜125(N)と、タップゲインHが乗じられたN個の信号を累積するための、直列に接続された複数(N−1個)の加算器127(2)〜127(N)とを有している。推定用フィルタ部117は、加算器127(N)からフィルタリング後の出力信号mを出力する。
【0053】
出力信号m及び通過域信号dは、減算器129に入力され、その差(適応偏差e)が算出される。適応偏差eは、タップ定数推定部125に入力される。タップ定数推定部125では、適応偏差eをゼロにするように、タップゲインHを推定する。
【0054】
適応偏差eがゼロになるということは、推定用フィルタ部117が、通過域信号dは通過させ、入力信号(AD変換部81からの信号)のみをカットするような特性を持っているとことになる。すなわち、推定用フィルタ部117は、所望しているフィルタ特性を有しているということになる。出力信号mと通過域信号dの差し引きが、通過域の帯域制限をかけていることに相当する。この帯域は、後述する通過域設定フィルタ133にて決定される。
【0055】
図6は、通過域信号発生部119の構成を示すブロック図である。
【0056】
通過域信号発生部119は、例えば、矩形波を発生する矩形波発生部131と、その矩形波をフィルタリングして通過域信号dを生成する通過域設定フィルタ133とを有している。通過域設定フィルタ133は、例えば、ローパスフィルタである。カットオフ周波数は、例えば、筬打ち等の1周期(例えば25ms)内において生じる、綜絖10による経糸Vの開口や筬打ちに起因する張力変動が除去される一方で、張力制御の応答性が高くなるように、筬打ち等の周波数(例えば1/25ms)以上、若しくは、筬打ち及び綜絖の移動の周波数(例えば、筬打ちの1周期内において、筬打ちによる変動1回と、綜絖10の移動による変動1回が生じるとすると、1/(25ms/2))以上の範囲で適宜に設定される。なお、通過域設定フィルタ133は、ローパスフィルタに限らず、バンドイジェクトフィルタ等であってもよい。
【0057】
図7は、タップ定数推定部125の構成を示すブロック図である。
【0058】
タップ定数推定部125は、上述のように、入力された信号Y(n)(AD変換部81からの信号+通過域信号d)に対して、推定したタップゲインH(n)を乗じて出力する。具体的には、タップ定数推定部125は、信号Y(n)に、遅延素子141に保持されている、前回推定したタップゲインH(n)を乗算器135により乗じ、出力する。この出力された信号は、上述のように、加算器127により加算され、出力信号mの生成に供される。
【0059】
また、タップ定数推定部125は、いわゆる最小2乗平均(LMS)アルゴリズムによりタップゲインHを推定し、出力するように構成されている。具体的には、タップ定数推定部125は、適応偏差eに適応ゲイン(ステップサイズパラメータ)μを乗じる乗算器143と、乗算器143の算出した値(μe)を、入力された信号Y(n)に乗じる乗算器137と、乗算器137の算出した値(μeY(n))と、遅延素子141に保持されている前回推定したタップゲインH(n)とを加算する加算器139とを有している。
【0060】
なお、適応ゲインμは、適応の速さを決定する定数であり、小さいと適応に時間がかかり、大きいと応答が振動して発散する可能性があることを考慮して、製造者やユーザにより適宜に設定される。
【0061】
以上の実施形態によれば、織機1は、経糸Vが巻かれたワープビーム3と、経糸Vを送出させる方向へワープビーム3を回転させる送出モータ27と、ワープビーム3から送出された経糸Vを開閉口させる綜絖10と、綜絖10により形成された経糸Vの開口に緯糸Hを通す緯入れ装置11と、緯入れ装置11により経糸Vの開口に入れられた緯糸Hを筬打ちする筬13と、筬13により筬打ちされ、経糸V及び緯糸Hにより形成された織布Wを引き込むサーフェスローラ17と、サーフェスローラ17を織布Wを引き込む方向へ回転させるサーフェスモータ61と、ワープビーム3とサーフェスローラ17との間において経糸Vの張力を間接的に検出する位置検出器35と、位置検出器35の検出した張力をフィルタリングする適応フィルタ部83を有し、適応フィルタ部83によりフィルタリングされた張力に基づいて、経糸Vの張力が所定の目標張力になるように、送出モータ27及びサーフェスモータ61を制御する制御装置25とを有することから、綜絖10や筬打ちの周期が変化しても、綜絖10の上下動や筬打ちによって生じる張力変動を適切に除去しつつ、比較的高い応答性で経糸Vの張力を制御することができる。その結果、織機1の張力制御に関る駆動部(送出モータ27、サーフェスモータ61及びこれらを制御する制御装置25)を提供する製造業者においては、種々の織機や織物に使用可能な駆動部を提供することができる。
【0062】
また、一般に、綜絖10や筬13等の織り動作に関る部材は、メインモータの回転がリンク機構や歯車機構を介して伝達され、メインモータに同期して動作することから、部材間の相互タイミングはリンク機構や歯車機構により機械的に規定されるが、適応フィルタ部83により、織り動作の変化に柔軟に対応して張力制御を行うことができることから、綜絖10や筬13をメインモータによらず、それぞれに対応して設けられたモータにより駆動することの実現性が高くなる。その結果、綜絖10や筬13の移動方向を可動子の駆動方向とするリニアモータ(37、43)を設け、リニアモータの並進運動を直接的に綜絖10や筬13に伝達することも可能となる、換言すれば、回転式モータ(メインモータ)の回転を綜絖10や筬13の並進運動に変換する伝達機構の省略により、バックラッシュ誤差の縮小等の種々の効果を得ることができる。
【0063】
さらに、適応フィルタ部83により、綜絖10の上下動や筬打ち動作の周期や駆動タイミングの変化にも柔軟に対応できることから、ユーザにおいて、綜絖10や筬13の周期やこれら相互の駆動タイミング(位相差)等を設定、変更することの実現性も向上する。
【0064】
適応フィルタ部83のフィルタ定数推定部87は、フィルタ部85とは別個に推定用フィルタ部117を有しており、通過域信号dと入力信号(AD変換部81からの信号)とを加算したものをフィルタリングし、そのフィルタリング結果(出力信号m)と、通過域信号dとの偏差を縮小するように推定用フィルタ部117のタップゲインHを推定し、そのタップゲインHを、フィルタ部85のタップゲインAとして設定することから、不要な周波数帯域の変動を適切にカットできるようにタップゲインAを推定することができる。
【0065】
なお、以上の実施形態において、サーフェスローラ17は本発明の引込ローラの一例であり、サーフェスモータ61は本発明の引込モータの一例であり、位置検出器35は本発明の張力を検出する検出器の一例であり、タップゲインAは本発明の第1フィルタ係数の一例であり、遅延素子111は本発明の第1遅延素子の一例であり、乗算器113は本発明の第1乗算器の一例であり、複数の加算器115の組み合わせは本発明の第1累積部の一例であり、遅延素子123は本発明の第2遅延素子の一例であり、タップゲインHは本発明の第2フィルタ係数の一例であり、乗算器135は本発明の第2乗算器の一例であり、複数の加算器127の組み合わせは本発明の第2累積部の一例であり、織機1のうち送出モータ27、サーフェスモータ61及び制御装置25の組み合わせは本発明の織機の駆動装置の一例である。
【0066】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0067】
綜絖、筬、緯入れ装置、巻取りローラの駆動方法は、それぞれに対応して設けられたモータにより駆動するものに限定されない。例えば、従来のように、一の回転式のモータの運動をリンク機構や歯車機構を介して各部材に伝達してもよい。また、モータは、サーボモータに限定されず、例えば、ステップモータであってもよい。綜絖や筬を回転式のモータにより駆動するなど、各部材を駆動するモータとして回転式のモータ及びリニアモータのいずれかが適宜に選択されてよい。綜絖や筬を駆動するリニアモータは、綜絖枠1つや筬に対して2つずつ設けられなくてもよく、例えば、一のリニアモータで一の綜絖枠が駆動されてもよい。
【0068】
綜絖枠の数や駆動タイミング等は、織布の種類等に応じて適宜に設定されてよい。緯入れ装置は、レピア式に限定されず、例えば、杼(シャットル)式、グリッパ式、エアー式、ウォーター式であってもよい。引込ローラは、巻取りローラよりも手前のサーフェスローラ(17)に限定されない。例えば、引込ローラは、巻取りローラ(23)であってもよい。
【0069】
検出器は、送出ローラと引込ローラとの間で経糸の張力を検出できればよく、綾竹7より上流の張力を検出するものに限定されない。例えば、筬と引込ローラとの間において経糸の張力(織布の張力)が検出されてもよい。また、張力を検出する検出器は、位置検出器に限定されない。例えば、検出器は、テンションローラ5に加わる荷重を直接的に検出する、圧電素子を含むロードセルであってもよい。
【0070】
フィルタ定数推定部(87)は、通過域信号(d)とフィルタ部(85)への信号(AD変換部81からの信号)とを加算したものを、フィルタ部(85)と同様にフィルタリングする推定用フィルタ部117を有するものに限定されない。例えば、フィルタ部(85)の出力と通過域信号(d)との偏差を算出し、その偏差が小さくなるように、第1フィルタ係数(タップゲインA)を推定するものであってもよい。第2フィルタ係数(第1フィルタ係数)を推定するアルゴリズムは、最小2乗平均アルゴリズムに限定されない。例えば、最急降下アルゴリズムが用いられてもよい。
【0071】
通過域信号は、矩形波信号を元に生成されたものに限定されない。例えば、通過域信号は、連続的に変化するSIN波信号等を元に生成されてもよい。また、通過域信号は、通過域設定フィルタ(133)を通過させることにより生成されるものに限定されない。例えば、通過域信号は、予め設定された時系列データに基づいて直接的に生成されてよい。
【0072】
モータ等の回転を検出する検出器(実施形態ではエンコーダ29、39、45、57、63、69)は、エンコーダに限定されない。例えば、レゾルバであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態の織機の全体構成の概要を示す模式図。
【図2】図1の織機の綜絖枠の駆動方法を説明する図。
【図3】図1の織機の制御装置の信号処理系の構成を示すブロック図。
【図4】図3の制御装置のフィルタ部の構成を示すブロック図。
【図5】図3の制御装置のフィルタ定数推定部の構成を示すブロック図。
【図6】図5のフィルタ定数推定部の通過域信号発生部の構成を示すブロック図。
【図7】図5のフィルタ定数推定部のタップ定数推定部の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0074】
1…織機、3…ワープビーム、10…綜絖、11…緯入れ装置、13…筬、17…サーフェスローラ(引込ローラ)、25…制御装置、27…送出モータ、35…位置検出器(検出器)、83…適応フィルタ部、V…経糸、H…緯糸、W…織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸が巻かれたワープビームと、
前記経糸を送出させる方向へ前記ワープビームを回転させる送出モータと、
前記ワープビームから送出された前記経糸を開閉口させる綜絖と、
前記綜絖により形成された前記経糸の開口に緯糸を緯入れする緯入れ装置と、
前記緯入れ装置により前記開口に緯入れされた緯糸を筬打ちする筬と、
前記筬により筬打ちされ、前記経糸及び前記緯糸により形成された織布を引き込む引込ローラと、
前記織布を引き込む方向へ前記引込ローラを回転させる引込モータと、
前記ワープビームと前記引込ローラとの間において前記経糸の張力を検出する検出器と、
前記検出器の検出した張力をフィルタリングする適応フィルタを有し、当該適応フィルタによりフィルタリングされた張力に基づいて、前記経糸の張力が所定の目標張力になるように、前記送出モータ及び前記引込モータを制御する制御装置と、
を有する織機。
【請求項2】
前記綜絖を駆動する、前記綜絖の移動方向を可動子の駆動方向とする綜絖用リニアモータを有する
請求項1に記載の織機。
【請求項3】
前記筬を駆動する、前記筬の移動方向を可動子の駆動方向とする筬用リニアモータを有する
請求項2に記載の織機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記綜絖用リニアモータ及び前記筬用リニアモータの駆動周期、並びに、これら相互の駆動タイミングを変更可能な同期動作設定部を有し、当該同期動作設定部により変更された駆動周期及び駆動タイミングに基づいて前記綜絖用リニアモータ及び前記筬用リニアモータを制御する
請求項3に記載の織機。
【請求項5】
前記適応フィルタは、
前記検出器の検出した張力を複数の第1フィルタ係数を使用してフィルタリングするフィルタ部と、
前記複数の第1フィルタ係数を算出するフィルタ定数推定部と、
を有し、
前記フィルタ部は、
前記検出器の検出した張力を順次遅延させる複数の第1遅延素子と、
前記複数の第1遅延素子の出力に対して、各第1遅延素子に対応した前記第1フィルタ係数を乗じる複数の第1乗算器と、
前記複数の第1乗算器の乗算結果を累積し、その累積結果をフィルタリングされた張力として出力する第1累積部と、
を有し、
前記フィルタ定数推定部は、
通過域信号を生成する通過域信号発生部と、
前記検出器の検出した張力と、前記通過域信号とを加算する加算器と、
前記加算器の加算結果を複数の第2フィルタ係数を使用してフィルタリングする推定用フィルタ部と、
前記推定用フィルタ部によりフィルタリングされた出力と、前記通過域信号との偏差を算出する減算器と、
前記偏差が小さくなるように、前記複数の第2フィルタ係数を算出するタップ定数推定部と、
を有し、
前記推定用フィルタ部は、
前記加算器の加算結果を順次遅延させる複数の第2遅延素子と、
前記複数の第2遅延素子の出力に対して、各遅延素子に対応した前記第2フィルタ係数を乗じる複数の第2乗算器と、
前記第2乗算器の乗算結果を累積し、その累積結果をフィルタリング結果として出力する第2累積部と、
を有し、
前記タップ定数推定部は、前記偏差が小さくなるように前記複数の第2フィルタ係数を算出し、
算出された前記複数の第2フィルタ係数が前記フィルタ部において前記第1フィルタ係数として設定される
請求項1〜4のいずれか1項に記載の織機。
【請求項6】
経糸を送出させる方向へ前記経糸が巻かれたワープビームを回転させる送出モータと、
前記ワープビームから送出された経糸の開口に緯入れされた緯糸を筬打ちして形成された織布を引き込む引込ローラを前記織布を引き込む方向へ回転させる引込モータと、
前記ワープビームと前記引込ローラとの間において検出された張力をフィルタリングする適応フィルタを有し、当該適応フィルタによりフィルタリングされた張力に基づいて、前記経糸の張力が所定の目標張力になるように、前記送出モータ及び前記引込モータを制御する制御装置と、
を有する織機の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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