説明

繰返し学習用情報処理システム及び情報処理方法

【課題】音楽コンテンツを学習教材として活用すべく、音楽コンテンツに教育的付加価値をつけ、誰でも手軽に楽しく学習教材として再利用するための技術を提供する。
【解決手段】本発明による学習用情報処理システム10は、複数のコンテンツデータ(例えば、オリジナル楽曲、朗読、カラオケ)の切換を制御することによって、語学ならびに音楽学習を補助する装置であって、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を規定したマクロを記憶する記憶手段12と、記憶手段12から読み出したマクロに基づいて、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を制御する制御手段11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽コンテンツ等を学習教材として活用するための情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽はユニバーサル・ランゲージと呼ばれることもあるように、良い音楽や演奏者は、時代や言葉を超えて人に愛されている。また、良い音楽は、言語を問わず自然に歌いたくなるものであり、異文化に触れる良い機会を与えてくれる。さらに、世代を問わず、音楽が大好きな人は多い。音楽が好きな人の中には、プロの歌手のように上手く歌いたいとか、楽器を演奏したいといった夢や願望を抱いている人も多い。
【0003】
そこで、発明者は、オリジナル作品を通してユーザの要求する技術を習得できるようなトレーニングであって、個々のユーザの要求やレベルに緻密に対応したトレーニングを提供可能なシステム及び方法を提案している(特許文献1)。特許文献1には、音楽データを任意の区切り単位で繰り返し再生することにより、オリジナル作品を購入したユーザが、そのオリジナル作品を効果的に習得することができる、もしくはオリジナル作品を通してユーザの要求する技術を効果的に習得することができる技術が開示され、また、音楽等の教育サービスを提供する提供者が、オリジナル作品を利用して、場所や時間に限定されないトレーニング方法を提供することができる技術が開示されている。
【特許文献1】国際公開2004/015651号パンフレット
【非特許文献1】決定版!授業で使える英語の歌20、井上謙一他、開隆堂出版
【非特許文献2】“英語の歌”で英語好きにするハヤ技30、中嶋洋一、明治図書出版
【非特許文献3】世界が見える“英語楽習”−英語の授業アイディア集、根岸恒雄、三友社出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、音楽は生活の中に空気のように身近なものとして入り込み、また、エジソンの蓄音機の発明以来、多くのアーティストが貴重な作品をレコードやCDに録音している。一方、歌は聞いて楽しむ意外に日本発のカラオケに代表されるように歌って楽しむ方法がある。しかし、母国語の楽曲の場合は、比較的容易に歌って楽しむことが出来るが、外国語の楽曲は、聴いても発音が聞き取れない、意味が判らない、発音出来ないといった理由で歌うことが難しいため、一般的に音楽鑑賞として利用されるに留まっている。
【0005】
ところで、井上謙一氏、中嶋洋一氏を始め洋楽を用いて英語教育の実践を行っている多くの教育者の報告によると、良い音楽を学習教材として使うことが、特に語学の学習に有効であるとのことである(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。例えば、洋楽を英語教育に用いると、英語に親近感を持ち、また、「上手く歌えるようになりたい」という目的意識が生まれるため、英語の学習意欲向上が見込まれる。また、歌を歌うことによって、楽しく繰り返し暗唱できるため、音読練習の格好の教材であるといえる。さらに、歌には、生の英語表現が多く含まれるし、それぞれの国の文化を学ぶこともできる。
【0006】
このように、音楽を使って語学学習を行うことは、世代を超えてとても有効であるが、音楽を語学学習教材として用いるためには、いくつかの問題点も存在する。例えば、必要な音楽の特定の一部分を繰返し聴くことが難しいし、伴奏やメロディが邪魔をして聞き取りを妨げることもある。また、録音された歌は音読のための手本としては不十分である。さらに、音楽とテキストだけでは独習が難しい。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、楽曲等の音楽コンテンツを学習教材として活用すべく、音楽コンテンツに教育的付加価値をつけ、誰でも手軽に楽しく学習教材として再利用するための技術を提供することを目的とする。
【0008】
本発明に係る幾つかの態様は、複数の独立した時間進行の異なるコンテンツデータを任意の区切単位で繰り返し再生することができ、かつ、出力再生するコンテンツデータを任意の時点で切り換えることのできる学習用情報処理システム及び情報処理方法の提供を目的とする。
【0009】
さらに、本発明に係る幾つかの態様は、人間の記憶のメカニズムに基づいてコンテンツデータの切換えを自動制御することによって、学習者の習得段階や興味に応じて、語学や音楽を楽しみながら効果的かつ効率的に自然習得することのできる学習用情報処理システム及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による学習用情報処理システムは、複数のコンテンツデータ(例えば、オリジナル楽曲、朗読、カラオケ)の切換を制御することによって、語学学習を補助する装置であって、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を規定したマクロを記憶する記憶手段と、記憶手段から読み出したマクロに基づいて、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を制御する制御手段と、を備える。
【0011】
このとき、第1のコンテンツデータと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、を記憶する第1の記憶手段と、第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報と、を記憶する第2の記憶手段と、を備えることが好ましい。また、制御手段は、第1のコンテンツデータ又は第2のコンテンツデータを再生する再生手段と、学習者からの指示又はマクロに基づく切換指示に応じて、再生手段で再生するコンテンツデータを切り換える切換手段と、を備えることが好ましい。また、切換手段は、学習者からの切換指示又はマクロに基づく切換指示を受け付ける受付手段と、受付手段により切換指示を受け付けたとき、再生手段で再生中の第1のコンテンツデータに関して、第1の区切情報に基づいて、再生中の箇所を区切単位で特定する第1特定手段と、第2の区切情報に基づいて、第1特定手段により特定された箇所に対応する第2のコンテンツデータの箇所を区切単位で特定する第2特定手段と、再生手段により再生するコンテンツデータを第2のコンテンツデータに切り換えるとともに、第2特定手段により特定した箇所から第2のコンテンツデータの再生を指示する指示手段と、を備える。
【0012】
なお、本発明において、「コンテンツデータ」とは、音楽等の音声データ、動画等の映像データ、静止画等の画像データ、字幕等の文字データなど、時間の経過と共に変化する再生可能なデータを意味するものである。例えば、MP3、MPEG等のファイル形式で記録される情報がコンテンツデータに該当するが、データ形式はこれらに限定されない。
【0013】
また、本発明は、オリジナル作品としての第1のコンテンツデータと学習者の語学学習のためのトレーニング情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、コンテンツデータを再生する再生手段と、再生するコンテンツデータを切り換える切換手段と、から構成される学習用情報処理システムであって、トレーニング情報は、制御プログラムと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、付属情報とを備え、付属情報は、第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報とを備え、切換手段は、学習者の指示に基づいて、再生中のコンテンツデータに関して、区切情報に基づいて再生中の箇所を区切単位で特定する機能と、区切単位で特定された箇所に基づいて、切換先のコンテンツデータの対応する再生箇所を区切単位で特定する機能と、再生手段により再生するコンテンツデータを切り換えるとともに、特定した再生箇所からコンテンツデータの再生を指示する機能と、を備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、再生手段は、区切情報に基づいてコンテンツデータ中の再生すべき箇所を特定し、当該特定された箇所を繰り返し再生することを特徴とする。
【0015】
さらに、学習用情報処理システムは、アニメーション表示可能な表示手段を備え、記憶手段は、区切情報の区切単位で、強弱等のリズムを示すリズム情報を記憶し、表示手段は、再生手段においてコンテンツデータを再生する際に、リズム情報に基づいて、所定のアニメーション表示を行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による学習用情報処理方法は、複数のコンテンツデータの切換を制御することによって、語学学習を補助する方法であって、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を規定したマクロを記憶手段から取得するステップと、マクロに基づいて、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を制御する制御ステップと、を備える。
【0017】
さらに、本発明は、第1のコンテンツデータと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、を記憶する第1の記憶手段と、第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報と、を記憶する第2の記憶手段と、第1のコンテンツデータ又は第2のコンテンツデータを再生する再生手段と、を備えてなる学習用情報処理システムにおいて、コンテンツデータの切換を制御する学習用情報処理方法であって、学習者からの切換指示又はマクロに基づく切換指示を受け付ける受付ステップと、受付ステップにより切換指示を受け付けたとき、再生手段で再生中の第1のコンテンツデータに関して、第1の区切情報に基づいて、再生中の箇所を区切単位で特定する第1特定ステップと、第2の区切情報に基づいて、第1特定ステップにより特定された箇所に対応する第2のコンテンツデータの箇所を区切単位で特定する第2特定ステップと、再生手段により再生するコンテンツデータを第2のコンテンツデータに切り換えるとともに、第2特定ステップにより特定した箇所から第2のコンテンツデータの再生を指示する指示ステップと、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のプログラムは、本発明の学習用情報処理方法の各ステップをコンピュータ上で実行させることを特徴とする。この場合のプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリ及び通信ネットワークなどの各種の媒体を通じてコンピュータにインストール又はロードすることができる。また、コンピュータプログラムが、PCカード等に記録されて流通する場合も含む。
【0019】
なお、本発明において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の独立した時間進行の異なるコンテンツデータの任意の区切単位における繰り返し再生に好適であるとともに、さらに、出力再生するコンテンツデータを任意の時点で切り換えるのに好適な学習用情報処理システム及び学習用情報処理方法等の提供が可能となる。これにより、楽曲等の音楽コンテンツを学習教材として活用することができるようになる。また、コンテンツデータを任意の区切単位で再生を繰り返しながら練習することに加え、さらに、歌詞とメロディを切り離して別々にトレーニングするのに好適な装置等が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、教育者のノウハウ等を反映させて作成した学習パターンを規定したマクロに従ってコンテンツデータを自動的に切り換え制御することによって、学習者の習得段階や興味に応じて、人間の記憶のメカニズムに基づいた効果的かつ効率的なトレーニングを行うことのできる学習用情報処理システム及び学習用情報処理方法等を提供することが可能となる。これにより、初学者、中級者、上級者といった習得レベルに応じた学習パターンや、所定のスキルを集中的に強化するための学習パターン等、種々の学習パターンを予め規定しておくことによって、対象及び目的に応じたトレーニングを自習できるようになる。
【0022】
さらに、本発明によれば、区切情報を複数のテーブルに分散して保有させることが可能であるから、切り換え対象のコンテンツデータの付加・変更・削除を容易に行うことができる。これにより、学習者は、世界中の様々なコンテンツデータの間で、再生データの切り換えが可能となり、新しい価値連鎖を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る学習用情報処理システム10の概略構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本学習用情報処理システム10は、学習用情報処理システム10の動作を制御するCPU11、HDD12、通信手段13、メモリ14、入力手段15、DVD/CD−ROMドライブ16、及び出力手段17がバス18を介して接続されている。学習用情報処理システム10は、汎用のパーソナルコンピュータを適用可能である。
【0025】
ここで、HDD12には、DVD/CD−ROMドライブ16を介して記録媒体(CD−ROM等)20から読み込んだ音楽データが語学トレーニング用の曲ファイルとして記憶されている。また、HDD12には、音楽データを読み込んだものと同一又は異なる記録媒体20から読み込んだトレーニング情報が記憶されている。さらに、HDD12には、トレーニング情報に基づいて曲ファイルを再生するための学習用情報処理ソフトウェアとしてのユーザトレーニングソフトが記憶されている。なお、音楽データ及び/又はトレーニング情報は、ネットワーク上の所定のサーバから通信手段13を介してダウンロードしてもよい。
【0026】
本実施形態において、音楽データとは、典型的には、著作権法により保護されている音楽の作品が該当するが、音情報のほか動画や静止画情報を含むものでもよい。すなわち、本発明は音楽作品に限られず、繰り返し再生することが学習に適しているものであれば、任意に音楽データとして適用することができる。例えば、語学、映画、映像、朗読、落語、漫才等でもよい。また、本実施形態では、記録媒体20から読み取った音楽データは、HDD12の所定の記憶領域にMP3、MPEG等のファイル形式で曲ファイルとして記録されているものとして説明するが、データ形式はこれらに限定されず、オリジナル作品の内容や媒体の種類によって任意のファイル形式を適用可能である。
【0027】
なお、本実施形態における音楽データの再生は、HDD12にコピーされた曲ファイルとしての音楽データを対象として説明するが、本発明の構成はこれに限られず、記録媒体20に記憶されている音楽データを直接再生する場合に適用することもできる。
【0028】
また、学習用情報処理システム10には、ユーザトレーニングソフト(以下、「トレーニングソフト」という。)が実装されている。トレーニングソフトは、HDD12の所定の記憶領域に記憶された音楽データを、トレーニング情報に基づいて再生する再生機能を備えている。また、トレーニングソフトには、付加情報である楽譜等を表示する表示機能、学習者の声や演奏を録音する録音機能、録音された情報を評価する評価機能、レベルに応じた学習者の進捗状況を管理する管理機能等も備えている。学習用情報処理システム100は、学習者がトレーニングソフトを起動すると、トレーニング情報に従って音楽データ等が再生される。
【0029】
さらに、本実施形態において、トレーニング情報とは、音楽データを学習教材として利用するための付加価値情報であり、曲識別情報、区切情報、制御プログラム(マクロ)、付加情報などを含む。ここで、曲識別情報は、曲を一意に特定するためのキーとして用いられる情報である。
【0030】
区切情報は、ある対象データを所定のまとまり(チャンク)毎に繰り返し再生するための情報であり、ある楽曲を任意の区分に分けるための区切りである。楽曲は、区切情報によって区切られた単位(区切単位)毎に繰り返し再生される。
【0031】
付加情報は、効果的な学習のためにある楽曲とあわせて、又はある楽曲に換えて再生表示される情報である。付加情報は、設定者が任意に設定することができるオプション的な情報である。例えば、朗読(音声)、カラオケ(音声)、歌詞(テキスト)、楽譜(画像)、レッスン情報(音声)などが該当する。
【0032】
制御プログラムは、学習用情報処理システム10の動作を制御するものであり、典型的には、区切情報に基づいて楽曲が再生されるように学習用情報処理システム10の動作を制御する。制御プログラムの設定としては、区切単位を再生する回数や、区切単位毎の再生速度を設定することができる。例えば、区切単位の繰り返し回数として「3回」を設定し、再生速度として「1回目は70%、2回目は85%、3回目は100%」を設定するといった設定が可能である。
【0033】
ここで、トレーニング情報に含まれる区切情報について、図2を用いて説明する。
【0034】
図2は、区切情報テーブルの一例を示す図である。区切情報テーブルは、時間情報と属性情報とを対応付けて記憶するテーブルである。本実施形態にかかる区切情報は、曲データを時間軸に沿って区切る時間情報と、時間情報によって区切られた曲データの属性を示す属性情報とから構成される。属性情報の内容は、トレーニング情報の設定者が任意にこれを設定することができる。図2では、楽曲の全体構成を示す情報と詳細構成を示す情報とが設定され、全体構成により、楽曲の繰り返し単位であるバース(Verse:番)、スタンザ(Stanza:句)、ライン(Line:行)が自動計算される。さらに、ライン毎に繰り返し制御フラグを定義することが可能である。この繰り返し制御フラグは、同じ歌詞が繰り返される場合に、選択された繰り返し単位(UNIT:ユニット)に応じて、2回目以降の練習をスキップするための属性定義である。また、イントロ・間奏・エンディングには、歌詞が含まれていないので、練習をスキップするための属性定義がされている。これにより、楽曲をより短時間で効率よく学習することが出来る。なお、区切情報として時間情報のみを設定することも可能であるが、時間情報に基づく曲データの繰り返し再生を木目細かく制御可能にするには、属性情報を設定しておくことが望ましい。
【0035】
次に、トレーニング情報に含まれる制御プログラムについて説明する。制御プログラムには、区切情報に基づいて曲データの再生を制御する機能だけでなく、学習者の目的に応じてオリジナル作品を体系的にマスターできるように各種機能を設定することができる。この制御プログラムの機能は、学習用情報処理システム10に実装されたトレーニングソフトの機能を前提に設定される。制御プログラムに設定可能な機能としては、例えば、区切情報に基づいて、曲データを繰り返し再生する再生機能(基本機能)、曲データの再生速度を制御する再生速度の制御機能、学習者の音域に従って、適正な音域に自動的に転調させる自動転調機能、ボーカル・楽器の録音機能、歌・演奏の評価機能(音程・リズム・発音等)、インターネットを介して、個人レッスンを行うレッスン機能、曲データの繰り返し回数を、採点結果に応じて変化させる制御機能、出力再生するデータを切り替えるデータ切換機能、カラオケの歌詞の強弱・高低・イントネーションを示す表示機能等が挙げられる。なお、データ切換機能及び表示機能等の詳細については、後述する。
【0036】
図3A、図3B、図3Cは、制御プログラムの一例を示す図である。図3Aから図3Cまでを併せて一つの制御プログラムが構成され、区切情報に基づいて曲データの再生の仕方を制御する3つのパターンがマクロとして設定されている。本実施形態におけるマクロ機能の詳細は後述するが、この3つのパターンは、学習の習熟度に応じて適宜選択される学習ステップに対応する。
【0037】
第1のパターン(ステップ1)は、初学者のための内容で、オリジナルの楽曲を再生するルーチンと、朗読の再生を行うルーチンとから構成される。このステップ1では、まず、オリジナルの楽曲が通常のスピードで再生され、次に、再生された部分の歌詞が朗読される。その後は、これらのルーチンが繰り返され、オリジナル楽曲と朗読が交互に再生され続ける。これは、主に、耳のトレーニングを行うことを意図している。
【0038】
第2のパターン(ステップ2)は、中級者のための内容で、オリジナル楽曲又は朗読を、ゆっくり読むルーチンと、普通に読むルーチンとから構成される。このステップ2では、まず、オリジナル楽曲又は朗読が、通常の再生速度の70%のスピードで再生され、次に、100%のスピードで再生される。その後は、これらのルーチンが繰り返され、70%と100%の再生速度で交互に再生され続ける。これは、主に、発音やリーディングのトレーニングをすることを意図している。
【0039】
なお、このステップ2では、楽曲のスピードを切替え再生するか、或いは、朗読のスピードを切替え再生するかを、学習者が任意に選択することができる。
【0040】
第3のパターン(ステップ3)は、上級者のための内容で、オリジナル楽曲を再生するルーチンと、カラオケ(歌声のない演奏のみの楽曲)の再生を行うルーチンとから構成される。このステップ3では、まず、オリジナル楽曲が再生され、次に、再生された部分のカラオケが再生される。その後は、これらのルーチンが繰り返され、オリジナル楽曲とカラオケが交互に再生され続ける。これは、主に、実際に歌えるようになるためのトレーニングを意図している。
【0041】
なお、本実施形態では、オリジナル楽曲や朗読、カラオケ等を再生する単位は、バース、スタンザ、ラインの中から学習者が任意に選択できる。ラインとは、本実施形態において最も小さな再生単位であり、歌詞を1行単位で再生する。スタンザとは、ラインが幾つか集まって構成される単位である。バースとは、1つの曲を単位とするものである。
【0042】
なお、図3(図3A〜3C)に示した制御プログラムは一例であり、制御プログラムの機能は適宜これを設定することができる。よって、曲データの再生機能のみとするか、録音機能や評価機能なども盛り込むかは、制御プログラムを作製する者等がこれを決定することができる。
次に、トレーニング情報に基づいた曲データの再生処理の詳細な流れについて説明する。
【0043】
図4は、トレーニング情報に基づいた再生処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
まず、学習用情報処理システム10にてトレーニングソフトが起動されると、CPU11は、トレーニング実行画面を表示し、学習者からトレーニング開始指示が入力されるのを待機する。学習者からトレーニング開始の指示が入力されると(S51;Yes)、選択可能な曲のリストを表示し、トレーニングの対象である曲の選択やトレーニング情報の選択を学習者に促す。学習者より曲及びトレーニング情報が選択されると(S52;Yes)、選択された曲の曲コード及びトレーニング情報のトレーニングコードに対応するトレーニング情報をHDD12から読み出し、制御プログラムのパターン(ステップ)の選択を学習者に促す。なお、曲とトレーニング情報が1対1で対応付けられている場合には、曲のみを選択する構成でもよい。
【0045】
学習者よりパターン(ステップ)の選択が入力されると(S53;Yes)、選択されたパターンに従って制御プログラムをHDD12から読み込む(S54)。そして、トレーニング情報に付加情報が含まれている場合には(S55;Yes)、制御プログラムに基づいて区切情報を参照し、曲データと付加情報を表示、再生、録音、評価出力等する(S56)。一方、トレーニング情報に付加情報が含まれていない場合には(S55;No)、制御プログラムに基づいて区切情報を参照し、曲データを再生出力する(S57)。
【0046】
図5は、学習用情報処理システム10のトレーニング実行画面の一例を示す図である。図5に示すように、トレーニング実行画面は、再生中の歌詞や訳等を表示するためのウィンドウ30と、再生するパターン(ステップ)、コンテンツ、再生速度等を切替えるための操作パネル40とを含んで構成される。
【0047】
ウィンドウ30に表示される内容は、学習者が適宜設定することが可能であるが、図5に示す図では、再生中のライン(行)の歌詞34と、再生中のラインの歌詞34の発音を示すカタカナ35と、再生中のラインの歌詞34の日本語訳36とが表示されている。また、再生中のラインの歌詞34には、ストレス(拍)部分に下線が引かれ、音楽に合わせたアニメーション表示で発音のタイミング等を教えるバウンシング・キャラクタ33が表示される。さらに、再生中のラインの一つ前のラインの歌詞32ともう一つ前のラインの歌詞31、及び、一つ後ろのラインの歌詞37ともう一つ後ろのラインの歌詞38も同時に表示される。
【0048】
バウンシング・キャラクタ33は、ボールが弾むような動きをするキャラクタ(図5ではウサギ)により、歌詞の音節やその強弱等を表現するアニメーションであり、音楽の再生にあわせてキャラクタが画面上を走りながら発音のタイミングを教える。学習者は、バウンシング・キャラクタ33を見ながらトレーニングを行うことにより、ストレスの箇所や歌詞のリズム等を直感的に把握することができる。また、図5に示すように、ウサギや犬などの可愛いキャラクタを用いることにより、学習者の親近感が増し、学習意欲の向上が見込まれる。
【0049】
このバウンシング・キャラクタ33のアニメーション表示は、音節のストレス(強い箇所)に関してコンテンツの時間情報を予め抽出して、トレーニング情報の付加情報として記録しておく。そして、音楽の再生時に、制御プログラムがこの時間情報を読み出して解釈することにより、アニメーション表示が実行・制御される。
【0050】
なお、音節とは、シラブル(syllable)ともいい、その母音単独で、あるいはその母音の前後に1個または複数個の子音を伴って構成される音声(群)で、音声の聞こえの一種のまとまりを言う。英語では母音の前にも後にも子音が一つのみならず二つも三つも続くことが多い。例えば、「strikes」では、前に三つ後ろにニつ子音がついているが、これで一音節である。一方、日本語では、「ス(su)・ト(to)・ラ(ra)・イ(i)・ク(ku)・ス(su)」と母音または子音+母音で個別に発音するため六音節である。このように、日本語は英語と音節の数が異なるため、多くの日本人学習者が発音に関する問題を抱えている。学習者に英語の音節を理解させるために、学習用情報処理システム10では動くキャラクタ33を登場させて、歌詞の音節数に基づいて動かすことにより、学習者に英語の音節を自然に理解させ、発音を飛躍的に向上させる効果がある。
【0051】
図6は、学習用情報処理システム10のトレーニング実行画面に表示される操作パネル40の一例を示す図である。
【0052】
本実施形態では、図6に示すように、操作パネル40は、再生するトラック(コンテンツ)を選択するための切換えボタン401、402、403を備え、学習者は切換えボタン401、402、403のどれかを押して、朗読・歌・カラオケの音を任意に切換えることができる。切換えボタン401は、再生するトラックを朗読に切換えるためのボタンである。すなわち、学習者がこの切換えボタン401を押下選択すると、オリジナル楽曲に対応する朗読の音声が再生される。切換えボタン402は、再生するトラックを歌に切換えるためのボタンである。すなわち、学習者がこの切換えボタン402を押下選択すると、オリジナル楽曲が再生される。また、切換えボタン403は、再生するトラックをカラオケに切換えるためのボタンである。すなわち、学習者がこの切換えボタン403を押下選択すると、オリジナル楽曲に対応するカラオケが再生される。なお、切換えボタン401、402、403は、ラジオボタン型のボタンであり、複数のボタンのうち、どれか1つだけを選択できる。
【0053】
このように、学習者は、朗読・歌・カラオケトラックをボタンひとつで切換えることができる。例えば、まず歌を聴いて、英語の歌詞が聴き取れない場合、学習者は切換えボタン401を押して、再生トラックを朗読トラックに切換えることにより、楽器の音やメロディという聞き取りの阻害要因を取り除くことができるため、学習効率が向上する。また、カラオケと歌のトラックを切り替えることで、上手く発音できなかったり、歌えなかった箇所も、瞬時に手本となる歌手のトラックに切り替わるので効率的に楽しみながら学習を行うことができる。
【0054】
ステップ設定ボタン410は、マクロで設定された学習パターン(ステップ)を設定するためのボタンである。図6に示す例では、学習者が、ステップ設定ボタン410で「STEP1」を選択すると、図3に示す第1の学習パターン(ステップ1)が選択される。これにより、オリジナル楽曲と朗読の再生を繰り返す学習を行えるようになる。ステップ設定ボタン410で「STEP2」を選択すると、図3に示す第2の学習パターン(ステップ2)が選択される。これにより、オリジナル楽曲又は朗読のゆっくりした再生と通常スピードの再生とを繰り返す学習を行えるようになる。また、ステップ設定ボタン410で「STEP3」を選択すると、図3に示す第3の学習パターン(ステップ3)が選択される。これにより、オリジナル楽曲とカラオケの再生を繰り返す学習を行えるようになる。
【0055】
キャプション設定ボタン420は、ウィンドウ30に表示する字幕を設定するためのボタンである。図5及び図6に示す例では、「CAPT」を選択すると、オリジナル楽曲の歌詞31、32、34、37、38をウィンドウ30に表示するようになる。「KANA」を選択すると、再生中のラインの歌詞34の発音を示すカタカナ35を表示するようになる。また、「TRANS」を選択すると再生中のラインの歌詞34の日本語訳36を表示するようになる。学習者は、好みに合わせて、歌詞・カナ・訳を、画面に表示したり、消したりすることが、キャプション設定ボタン420を用いた簡単なボタン操作で可能になる。
【0056】
再生単位設定ボタン431は、オリジナル楽曲等の再生単位を設定するためのスピンボタンである。例えば、バース、スタンザ、ラインの中から学習者が任意に選択できる。
【0057】
再生箇所設定ボタン432は、再生する部分を、再生単位で設定するためのスピンボタンである。図6に示す例では、17番目のラインを再生することになる。
【0058】
リピート回数設定ボタン440は、一つの再生単位を何回繰り返して再生するかを設定するためのスピンボタンである。例えば、リピート回数を3回に設定すれば、一つの再生単位(ライン等)を3回繰返して再生した後、次の再生単位に進むことになる。
【0059】
なお、2回以上のリピートが設定されている場合でも、同じフレーズが何箇所かに出てくるときには、当該フレーズをスキップさせて、同じフレーズを繰り返し学習することがないようにしてもよい。このスキップ処理は、繰り返されるフレーズに所定のフラグを立てておくことにより実現することができる。また、曲の間奏も繰り返す必要がないので、スキップ処理を実行してもよい。
【0060】
スピード設定ボタン450は、再生速度を設定するためのスピンボタンである。図6に示すように再生速度を「×0.8」とすると、通常の再生速度の80%のスピード(0.8倍速)で、オリジナル楽曲や朗読がゆっくり再生される。また、例えば、再生速度を「×2.0」とすると、通常の倍のスピード(2倍速)で高速に再生される。このように、学習用情報処理システム10は、歌手の英語が聴き取れない場合や速すぎて歌えない場合のために、スピードを自由に変えられる機能を有する。学習者は、習熟度に合わせて再生速度を自由に変えることができる。好適には、速度が変わっても音程が変わらないようにして、同じ音程のまま練習ができるとよい。また、朗読トラックを利用したリーディングの練習(速読等)にも応用できる。リピート回数設定ボタン440で回数を無限に設定することで、繰り返し範囲を固定した上で、学習者の学習レベルに合わせて速度を変えると音読に関する学習効果が高いことがわかってきている。また、朗読のトラックが通常速度で聞き取れる場合は、高速再生によりリスニングの強化練習にも利用可能である。
【0061】
巻戻しボタン461、早送りボタン464はそれぞれ、学習者が音楽等の巻戻し、早送りを手動で実行するためのボタンであり、設定ボタン431で指定された単位で巻戻しならびに早送りが瞬時に実行される。再生ボタン462、停止ボタン463は、それぞれ再生、停止のためのボタンである。また、レコードボタン465は、学習者の歌い声等を録音するためのボタンである。また、学習用情報処理システム10がカメラ機能を備える場合には、学習者の口元の動画を録画するようにしてもよい。
【0062】
音量スライダ471は、再生される音量を調整するためのスライダである。ミュートボタン472は、音楽等の出力を抑止するためのボタンであり、解除ボタン473によりミュート状態を解除できる。
【0063】
カウンタ480は、繰り返し再生された回数をカウントする。学習者はカウンタ480の表示を参照することにより、繰り返し学習におけるKPI(Key Performance Indicator:数値目標)として効果的な活用が可能である。
【0064】
再生位置スライダ490は、再生中の楽曲等の再生位置を示している。また、再生位置スライダ490を動かすことにより、任意の位置から再生することができる。
【0065】
このように、本実施形態において、学習者は、操作パネル40を用いて任意に再生の仕方を設定できるため、学習の進捗や自分の好みに合わせて、様々な仕方で学習を行える。また、操作パネル40で操作・制御可能なことは、制御プログラム(マクロ)からコントロールしてもよい。そして、練習の目的に合わせて、最適な繰返し機能を選択することで、確実に歌が歌えるようになるだけでなく、楽しく英語の発音や聞き取り練習ができるようになる。
【0066】
次に、学習用情報処理システム10のデータ切換機能について説明する。本実施形態では、オリジナルの楽曲に対して、朗読とカラオケとを切換可能な情報として備え、これらの間で再生単位のフェーズを合わせて切り換えることができる。
【0067】
図7はデータ切換機能の処理の流れを示すフローチャートである。
【0068】
学習用情報処理システム10は、コンテンツデータ(オリジナル楽曲、朗読、カラオケ等)を再生中に、図5に示すような表示画面を表示する。このとき、学習者が操作パネル40の切換えボタン401、402、403の中から、切り換えたいコンテンツデータを選択入力する(S61)。すると、CPU11は切換えボタン401、402、403を選択入力した時点における再生中のコンテンツデータの箇所を区切単位で特定する。具体的には、まず、学習者による切換ボタンの選択入力がなされた時点における再生中のコンテンツデータの再生時間を特定して(S62)、特定した再生時間をキーに、当該コンテンツデータに対応付けて記憶された区切情報を参照して、再生中のコンテンツデータの再生箇所を区切単位で特定する(S63)。次に、学習用情報処理システム10は、切り換え先のコンテンツデータの再生開始時間を特定する。具体的には、切換先のコンテンツデータに対応付けて記憶された区切情報を参照して、再生箇所の区切の開始時間を取得する(S64)。そして、出力再生するコンテンツデータを切り換えて、当該開始時間から再生する(S65)。
【0069】
データ切換機能の処理フローを具体例で説明すると以下のとおりである。ここでは、図2に示す例に基づいて、オリジナルの楽曲(チャンネル2)を再生中に、朗読情報(チャンネル1)に切り換える場合を説明する。まず、オリジナル楽曲を再生中に、学習用情報処理システム10に表示される操作パネル40の朗読切換えボタン401を選択する。すると、CPU11は、朗読切換えボタン401が選択された時点におけるオリジナル楽曲の再生時間を特定する。ここでは、朗読切換えボタン401が選択された時点で、オリジナル楽曲の時間「35(秒)」の箇所を再生していたものとする。次に、オリジナル楽曲の再生時間「35(秒)」をキーに、区切情報テーブルを参照して、時間「35(秒)」時点におけるオリジナル楽曲の区切単位を特定する。この例では図2に示すとおり、ライン番号「10」という区切単位が特定される。次に、切換え先である朗読情報のライン番号「10」を参照して、「31.705(秒)」という区切単位の開始時間を特定する。そして、学習用情報処理システム10は、出力再生するデータをオリジナル楽曲から朗読データに切り換えて、特定した開始時間「31.705(秒)」から朗読データを再生する。このようにして、再生するコンテンツデータの切換制御が実現される。なお、このような切換制御は、トレーニング情報中の制御プログラムにより制御される。
【0070】
なお、本実施形態では、オリジナル楽曲から朗読に切り換える例を示したが、データ切換はこれに限られるものでなく、本実施形態と同様の処理を実行することにより、任意のコンテンツデータに切り換えることができる。
【0071】
例えば、オリジナルの楽曲どうしを切り換えるようにしてもよい。一例として、オリジナルの洋楽曲Aと、曲Aの邦楽版である曲Bとの間で、再生中に曲を切り換えるような場合等が想定される。この場合、曲Aと曲Bとを切換え可能であるか否かは、曲Aのトレーニング情報と曲Bのトレーニング情報に共通の曲識別情報が記憶されているか否かによって、判断することができる。また、曲識別情報によらず、例えば、曲Aの区切情報と曲Bの区切情報との間で、区切単位の数が同一であるかどうかによって判断することもできるし、区切情報が共通の構造を有しているかどうかによって判断してもよい。
【0072】
次に、学習者の習得レベルを自動的に評価して、習得レベルに応じた学習パターンを自動的に選択する処理について説明する。
【0073】
図8は、学習者の習得レベルを自動的に評価する手法の流れを示すフローチャートである。学習用情報処理システム10は、学習者の学習状況を取得して、弱点抽出データベースを照合して、弱点を抽出する(S71)。次に、抽出された弱点等に基づいて、学習パターン(シナリオ)を選択し、学習者の弱点に応じた学習を行う(S72)。このとき、学習者の習得レベルの評価を行い、この評価された習得レベルに基づいて、達成度を表示する(S73)。
【0074】
こうして、人間の記憶のメカニズムに合わせて学習パターンを複数設定しておくことにより、学習者の習得レベルに合わせて自動的に再生の仕方(コンテンツデータの切換え方)を制御できるようになる。さらに、この再生の仕方を調整し、例えば、効率的な教育のノウハウをテンプレート化した学習パターンを複数の工程(ステップ)に分けてマクロ化したトレーニング情報を予め作成しておくことにより、効果的かつ効率的に語学学習を行うことのできる学習用情報処理システム10を実現することができる。
【0075】
以下、このマクロ機能について説明する。
【0076】
本発明において、マクロ機能とは、学習者の習得レベルに応じて、短期間で覚え込ませるために適切な学習パターン(学習ステップ)に基づいて、コンテンツデータを自動的に切り換える機能である。そして、このマクロ機能によって、人間の記憶のメカニズムに合わせて予め設定しておいた学習プロセスに従って、自動的に学習を進めることにより、ユーザの習得段階や興味に応じて、効果的かつ効率的に語学習得を行うことができるようになる。
【0077】
本実施形態では、図3及び図6に示すように、3つの学習パターン(ステップ)が用意される。初学者は、まず、ステップ1として、オリジナル楽曲の再生と、再生された部分の歌詞の朗読とが、通常の再生速度で交互に繰り返される。これは、聞き取り力を向上させるためのトレーニングである。
【0078】
学習者は、歌と朗読の再生を繰り返して、自己申告によりステップ1の学習を終えたと判断したとき、ステップ設定ボタン410を押して、ステップ2に進む。また、学習用情報処理システム10が自動的に学習者のレベル評価を行い、所定のレベルに達していると判断されたときに、ステップ2に自動的に進むようにしてもよい。
【0079】
次に、ステップ2では、まず、オリジナル楽曲又は朗読が通常の再生速度の70%のスピードで再生された後、100%のスピードで再生される。そして、この0.7倍速再生と通常再生が繰り返される。楽曲を再生するか、朗読を再生するかは、学習者が切換えボタン401、402により選択できるようにしてもよい。これは、発音やリーディング力を向上させるためのトレーニングである。
【0080】
学習者は、ステップ1のときと同様に、自己申告によりステップ2の学習を終えたと判断したとき、ステップ設定ボタン410を押して、ステップ3に進む。また、学習用情報処理システム10が自動的に学習者のレベル評価を行い、所定のレベルに達していると判断されたときに、ステップ3に自動的に進むようにしてもよい。
【0081】
最後に、ステップ3では、オリジナル楽曲の再生と、再生された部分のカラオケとが、通常の再生速度で交互に繰り返される。これは、歌による復習を意図したトレーニングである。
【0082】
語学教育は、聞き取り、発音、文法、語彙、英訳、和訳など多岐に渡るが、本実施形態では、複雑になりがちな語学の学習プロセスを、聞き取り(ステップ1)、発音(ステップ2)、歌による復習(ステップ3)の3つの工程に纏めた。また、デジタル化された英語の歌(オリジナル楽曲)に加え、朗読及びカラオケのチャネル(トラック)を準備し、短期記憶が理解できる区切単位に事前に分割している。そして、学習目的や段階に応じて学習ステップを選択し、再生チャネル、画面表示(歌詞、発音、訳)、及び再生速度を自動切換して学習を進め、さらに、3つの学習パターンを経ることにより、効率的かつ効果的に語学を習得できるようになる。なお、本発明のプロトタイプは神奈川県立高校のCALL教室研究会で、80%の教育委員会関係者及び教員から高い評価を頂いている。
【0083】
また、図3に規定するマクロの他にも、様々なマクロを設定可能である。例えば、レコードボタン465により提供される録音・録画機能をコントロールするマクロを備えてもよい。このマクロは、まず、お手本となるオリジナル楽曲を所定の再生単位(スタンザ、ライン等)で、通常の再生速度で再生する。次に、再生された箇所に対応するカラオケを再生し、学習者の歌声を録音する。そして、録音した歌声を再生する。このとき、録音した歌声を単独で再生してもよいし、オリジナル楽曲と録音した歌声をシンクロさせて再生してもよい。学習者は再生された自分の歌声を聞いて、どの点に注意して練習すればよいかを把握できる。その後、最初に戻り、お手本を再生、歌声の録音、歌声の再生を繰り返して学習を進める。なお、歌声を録音する際に、口元の動画を録画し、お手本となる先生の口元の動画とともにシンクロ再生してもよい。このような録音機能を有するマクロを備えることにより、語学の学習をさらに効果的に行うことができるようになる。
【0084】
以上のとおり、本発明は、音楽を用いて楽しく外国語をマスターするための学習用情報処理システムであり、学習者は歌う楽しみと外国語を学ぶ楽しみを享受できる。そして、本発明によれば、楽曲を所定の単位に区切って、繰り返し再生することにより、記憶のメカニズムを応用した効率的な学習を行うことが可能になる。また、再生トラックの選択や再生速度の切換え、再生パターン(ステップ)の切換え等を簡単な操作で行うことができる。これにより、ヒヤリング力、発音・イントネーションの向上が見込まれる。さらに、バウンシング・キャラクタのガイドにより、直感的にリズム感を習得できる。こうして、早すぎて聴き取れなかった速い英語の曲が聴き取れるようになるだけでなく、歌も上手く歌えるようになり、かつ、語学力も向上する。
【0085】
また、本発明は、オリジナル楽曲に日本語曲を適用することにより、日本語を習得するための教材として活用することも可能である。中国や韓国をはじめJ−POPはアジア諸国で人気が高いが、オリジナルの日本語曲で日本語の学習ができるよう付加価値を付けることにより、より効果的に日本語及び日本文化を海外に輸出できるようになる。
【0086】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述の各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。また、上述の各実施例は、各実施例を任意に組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【0087】
また、本実施形態では、バース、スタンザ、及びラインという区切単位を使用する例を説明したが、区切単位はこれに限られるものでなく、区切単位を1階層にしてもよいし、さらに多くの階層を設けてもよい。また、本実施形態では、区切単位に「2番」、「1小節目」等というインデックスを付与していたが、区切単位を一意に識別可能ものであれば、如何なるインデックスを使用してもよい。
【0088】
さらに、本実施形態に示す以外にも、様々な繰返し再生機能を実装可能である。例えば、ある再生単位を数回繰返し再生した後に、1クリックで次の再生単位に自動的に移動する1クリック繰返し機能を設けることにより、さらに効率的な学習が可能である。また、特定の箇所を無限に繰返す機能を設けることにより、徹底的に練習を行うことも有効である。さらに、再生速度を徐々に上げたり、徐々に下げたりしながら繰返し再生する機能や、特定の再生単位を1回だけ再生して自分のペースで聞き取り等の練習をする機能も、効率的な学習に資するものである。
【0089】
なお、本発明は、学校の教育で使用するのみならず、自習教材としても適している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】学習用情報処理システム10の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】区切情報テーブルの一例を示す図である。
【図3A】制御プログラムの一例を示す図(1/3)である。
【図3B】制御プログラムの一例を示す図(2/3)である。
【図3C】制御プログラムの一例を示す図(3/3)である。
【図4】トレーニング情報に基づいた再生処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】トレーニング実行画面の一例を示す図である。
【図6】操作パネル40の一例を示す図である。
【図7】データ切換機能の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】習得レベルを自動的に評価する手法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
10 学習用情報処理システム
11 CPU(制御手段)
12 HDD(記憶手段)
13 通信手段
14 メモリ
15 入力手段
16 DVD/CD−ROMドライブ
17 出力手段
18 バス
20 記録媒体
30 ウィンドウ
33 バウンシング・キャラクタ
40 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンテンツデータの切換を制御することによって、語学ならびに音楽学習を補助する学習用情報処理システムであって、
コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を規定したマクロを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出したマクロに基づいて、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を制御する制御手段と、
を備える学習用情報処理システム。
【請求項2】
第1のコンテンツデータと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、を記憶する第1の記憶手段と、
第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報と、を記憶する第2の記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、
第1のコンテンツデータ又は第2のコンテンツデータを再生する再生手段と、
ユーザからの指示又は前記マクロに応じて、再生手段で再生するコンテンツデータを切り換える切換手段と、
を備え、
前記切換手段は、
ユーザからの切換指示又は前記マクロに基づく切換指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により切換指示を受け付けたとき、前記再生手段で再生中の第1のコンテンツデータに関して、第1の区切情報に基づいて、再生中の箇所を区切単位で特定する第1特定手段と、
第2の区切情報に基づいて、前記第1特定手段により特定された箇所に対応する第2のコンテンツデータの箇所を区切単位で特定する第2特定手段と、
前記再生手段により再生するコンテンツデータを第2のコンテンツデータに切り換えるとともに、前記第2特定手段により特定した箇所から第2のコンテンツデータの再生を指示する指示手段と、
を備える請求項1記載の学習用情報処理システム。
【請求項3】
オリジナル作品としての第1のコンテンツデータとユーザの語学ならびに音楽学習のためのトレーニング情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、
コンテンツデータを再生する再生手段と、
再生するコンテンツデータを切り換える切換手段と、
から構成される情報処理システムであって、
前記トレーニング情報は、制御プログラムと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、付属情報とを備え、
前記付属情報は、第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報とを備え、
前記切換手段は、
ユーザの指示に基づいて、再生中のコンテンツデータに関して、区切情報に基づいて再生中の箇所を区切単位で特定する機能と、
前記区切単位で特定された箇所に基づいて、切換先のコンテンツデータの対応する再生箇所を区切単位で特定する機能と、
前記再生手段により再生するコンテンツデータを切り換えるとともに、前記特定した再生箇所からコンテンツデータの再生を指示する機能と、
を備えることを特徴とする学習用情報処理システム。
【請求項4】
前記再生手段は、
前記区切情報に基づいてコンテンツデータ中の再生すべき箇所を特定し、当該特定された箇所を繰り返し再生する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の学習用情報処理システム。
【請求項5】
複数のコンテンツデータの切換を制御することによって、語学ならびに音楽学習を補助する学習用情報処理方法であって、
コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を規定したマクロを記憶手段から取得するステップと、
前記マクロに基づいて、コンテンツデータの切換え、繰り返し回数、及び、再生速度を制御する制御ステップと、
を備える学習用情報処理方法。
【請求項6】
第1のコンテンツデータと、第1のコンテンツデータの任意の区切を示す第1の区切情報と、を記憶する第1の記憶手段と、
第2のコンテンツデータと、第2のコンテンツデータの任意の区切を示す第2の区切情報と、を記憶する第2の記憶手段と、
第1のコンテンツデータ又は第2のコンテンツデータを再生する再生手段と、を備えてなる情報処理システムにおいて、コンテンツデータの切換を制御する学習用情報処理方法であって、
ユーザからの切換指示又はマクロに基づく切換指示を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにより切換指示を受け付けたとき、前記再生手段で再生中の第1のコンテンツデータに関して、第1の区切情報に基づいて、再生中の箇所を区切単位で特定する第1特定ステップと、
第2の区切情報に基づいて、前記第1特定ステップにより特定された箇所に対応する第2のコンテンツデータの箇所を区切単位で特定する第2特定ステップと、
前記再生手段により再生するコンテンツデータを第2のコンテンツデータに切り換えるとともに、前記第2特定ステップにより特定した箇所から第2のコンテンツデータの再生を指示する指示ステップと、
を備えることを特徴とする学習用情報処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれかに記載の学習用情報処理方法をコンピュータで実行させるための情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−36885(P2009−36885A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199597(P2007−199597)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(502288768)
【Fターム(参考)】