説明

缶の印刷装置、印刷方法及び円筒容器保持用マンドレル

【課題】円筒容器の外周面に印刷や塗装を施す際に、その印圧の均一化を図ることができ、印刷品質を向上させることができる缶の印刷装置、印刷方法及び円筒容器保持用マンドレルを提供する。
【解決手段】円筒容器保持用マンドレルMを備え、ブランケットに、円筒容器保持用マンドレルMに外嵌させた円筒容器20を接触させて回転させることによって円筒容器20の外周に印刷を行う缶の印刷装置において、円筒容器20は、開口端部側が肉厚部24とされ、底部側が肉薄部25とされた胴部23を有し、円筒容器保持用マンドレルMは胴部23が外嵌されるスリーブ1を備え、スリーブ1は、基端側に形成された小径部3aと、先端側に形成された大径部3bと、を有し、小径部3aと大径部3bとの境界が、小径部3aから先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部3cとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用容器等に加工される円筒容器の外周面に印刷や塗装を施す缶の印刷装置、印刷方法及びこの印刷の際に円筒容器を保持する円筒容器保持用マンドレルに関する。
【背景技術】
【0002】
有底筒状の円筒容器から成形される飲料用容器として、開口端部にキャップが螺着されるボトル缶や、開口端部に缶蓋が巻き締められる缶が知られている。このような缶は、アルミニウム等の金属板にDI(Drawing & Ironing)加工を施すことで形成されるため、一般的に缶の胴部の開口端部側は底部側に比べて肉厚なものとなる。そしてこのDI加工の後、円筒容器の外周には印刷が施される。
【0003】
従来、このような円筒容器を印刷時に保持する円筒容器保持用マンドレルとして、円筒容器の内側に挿入されるスリーブを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスリーブは、円筒容器を緊密に挿入して支持するとともに、自由に出し入れできる直径のストレート状の円筒形状を呈している。
【0004】
そして、このような円筒容器保持用マンドレルMが備えられた缶の印刷装置として、図4に示す缶の印刷装置30が知られている(特許文献2参照)。この缶の印刷装置30は円筒容器20に多色印刷を施す印刷装置であり、インキ付着機構Aと缶移動機構Bとから構成されている。インキ付着機構Aは、インキを供給する複数のインカーユニット31と、このインカーユニット31に接触してインキを写し取った後、円筒容器20に接触してインキを該円筒容器20の外周面に印刷するブランケット胴32とから構成されている。
ブランケット胴32はその外周に版胴33の版よりインキを転写されるブランケット35を備えている。
【0005】
一方、缶移動機構Bは、ブランケット胴32の外周に接するように配置され、かつ、自身の円周方向に一定の間隔を空けて多数が備えられた円筒容器保持用マンドレルMを有した円筒容器保持用マンドレルターレット34を備えている。円筒容器保持用マンドレルターレット34は回転(公転)することで、順次、投入された円筒容器20をブランケット胴32に接する位置に送り出し、印刷後の円筒容器20を排出する役目を果たす。
【0006】
この缶の印刷装置では、各インカーユニット31によって版胴33の版に多色のインキよりなる画像を形成し、その画像をブランケット胴32の外周のブランケット35に写し取る。そして、この画像を、ブランケット35と円筒容器保持用マンドレルMに外嵌された円筒容器20との回転接触により該円筒容器20の外周面に印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−227158号公報
【特許文献2】特開平9−267466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の缶の印刷装置における円筒容器保持用マンドレルのスリーブの外周はストレート状に形成されているため、上記のような円筒容器を保持した場合には、肉厚とされた開口端部側はスリーブに密着するものの、開口端部側に比べ肉薄の底部側はスリーブに密着することができず僅かに隙間が生じてしまう。従って、この状態で円筒容器の表面にブランケットが摺接されて押圧された場合、その印圧に差が生じてしまい、印刷品質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、円筒容器の外周面に印刷や塗装を施す際に、その印圧の均一化を図ることができ、印刷品質を向上させることができる缶の印刷装置、印刷方法及び円筒容器保持用マンドレルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る缶の印刷装置は、インキが転写されるブランケットを外周に備えた回転自在なブランケット胴と、該ブランケット胴の外周に接するように配置された円筒容器保持用マンドレルとを備え、前記ブランケットに、前記円筒容器保持用マンドレルに外嵌させた円筒容器を接触させて回転させることによって該円筒容器の外周に印刷を行う缶の印刷装置において、前記円筒容器は、開口端部側が肉厚部とされ、底部側が肉薄部とされた胴部を有し、前記円筒容器保持用マンドレルは前記胴部が外嵌されるスリーブを備え、該スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴の缶の印刷装置においては、スリーブの外径が円筒容器の肉厚部及び肉薄部の内径の径差に追従するようにして、肉厚部に対応する部分の外径が肉薄部に対応する部分の外径より小さくなるように設定されているため、印刷時にブランケットが円筒容器の外周面に摺接して円筒容器が押圧された際には、その印圧によってクリアランスが消失し、円筒容器の肉厚部及び肉薄部の双方とスリーブの外周面とが確実に密着することができる。これによって、円筒容器の胴部の肉厚部と肉薄部とが、同様の印圧を得ることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る缶の印刷装置は、前記小径部と前記大径部との半径差が0.04mm以上0.1mm以下に設定されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る缶の印刷装置は、前記スリーブの前記胴部の開口端部に対応する部分に、前記スリーブの基端部に向かって拡径するように突出するテーパ突起部が設けられたことを特徴としている。
【0014】
円筒容器の成形加工においては、しごき加工時に肉薄部は肉厚部に比較して大きく熱収縮するため肉厚部側の開口端部が胴部に比べて拡径した形状となることがある。このような開口端部が拡径した円筒容器が円筒容器保持用マンドレルのスリーブに外嵌されて、インキが転写されたブランケットが円筒容器の外周面に摺接しながら押圧する場合、開口端部は外径が大きいため、胴部の底部側が一周しても開口端部は一周が終わらない。即ち、開口端部は胴部に比べて一周の長さが長い状態にある。さらに、円筒容器の開口端部が拡径していることから、この開口端部とスリーブとの間には比較的大きなクリアランスが生じる。このような開口端部における回転の遅れとスリーブとのクリアランスの発生が同時に起こった場合、スリップすることにより円筒容器に捩れが発生し品質が低下してしまうおそれがある。
【0015】
ここで本発明においては、円筒容器保持用マンドレルのスリーブの円筒容器の胴部の開口端部に対応する部分にテーパ突起部を設けることにより、円筒容器の開口端部とスリーブとのクリアランスを埋めることができるため円筒容器の捩れを抑制することが可能となる。また、このテーパ突起部は、スリーブの基端部に向かって拡径するように突出しているため、円筒容器を外嵌するに際し、妨げになることはない
【0016】
また、本発明の円筒容器保持用マンドレルは、有底筒状をなし、開口端部側が肉厚部とされ、底部側が肉薄部とされた円筒容器の胴部の内側にスリーブを挿入して、その円筒容器を保持する円筒容器保持用マンドレルであって、前記スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る缶の印刷方法は、回転自在なブランケット胴の外周に設けられたブランケットにインキを転写し、有底筒状をなして開口端部側が肉厚部とされ底部側が肉薄部とされた胴部を有する円筒容器を円筒容器保持用マンドレルに外嵌し、該ブランケットを円筒容器に接触させて回転させることによって該円筒容器の外周に印刷する缶の印刷方法において、前記円筒容器保持用マンドレルは前記胴部が外嵌されるスリーブを備え、該スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされており、前記小径部が前記胴部の肉厚部に対応し、前記大径部が前記胴部の肉薄部に対応するように、前記円筒容器を前記円筒容器保持用マンドレルに外嵌することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の缶の印刷装置、印刷方法及び円筒容器保持用マンドレルによれば、円筒容器の外周面に印刷や塗装を施す際に、その印圧の均一化を図ることができ、印刷品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る缶の印刷装置における円筒容器保持用マンドレルの上半分を断面にして示した側面図である。
【図2】円筒容器を円筒容器保持用マンドレルに外嵌した状態における、円筒容器の内径とスリーブの外径の構成を説明するための図である。
【図3】ブランケットが円筒容器の表面を押圧した状態における、円筒容器の内径とスリーブの外径の構成を説明するための図である。
【図4】缶の印刷装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る缶の印刷装置は図4に示すものと同様の構成をしており、その円筒容器保持用マンドレルMに特徴を有している。よって、図4に示したものをもって本実施形態における缶の印刷装置30とし、その特徴部分である円筒容器保持用マンドレルMについて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る缶の印刷装置の円筒容器保持用マンドレルの上半分を断面にして示した側面図である。
【0021】
本実施形態の缶の印刷装置30における円筒容器保持用マンドレルMは、円筒容器20の外周面に印刷を施す際に円筒容器20を内側から保持するためのもので、PET100、PET200等の樹脂、又は本体がスチール製で表面にDLCコーティング等の滑り性を付加する表面処理を施したもの等からなる円筒状のスリーブ1を備えている。該スリーブ1には、内部が軸線Oに沿ってくり貫かれて先端側に開口する空洞部1aが形成されており、該スリーブ1の長さ方向の中央位置よりも後端側が基端部2とされ、先端側が該基端部2よりも径が小さく形成されたスリーブ主部3とされている。
【0022】
このようなスリーブ1のスリーブ主部3の外周に、アルミニウム等からなる有底筒状の円筒容器20が空洞部1aを介して真空吸引されて、底部22の内面がスリーブ1におけるスリーブ主部3の先端部に接触するようにして外嵌される。
【0023】
この円筒容器20は、胴部23の開口端部23a側にDI加工が施されてボトル缶に成形加工されるものであり、詳しくは図2に示すように、胴部23の開口端部23a側は成形加工に耐え得る厚さを有する肉厚部24とされ、胴部23の底部側は肉厚部24よりも厚さの薄い肉薄部25とされている。
【0024】
また、胴部23の肉厚部24及び肉薄部25は、その外径がストレート状に形成されており、内径がそれぞれの厚さに応じて肉厚部24の方が肉薄部25よりも小さくされている。さらに、胴部23における肉厚部24と肉薄部25との間には、肉厚部24の内径が缶の底部に向かうに従って拡径して肉薄部25の内径に連なるように形成された境界部26が形成されている。なお、このようなボトル缶成形用の円筒容器20においては、肉厚部24と肉薄部25との内径の半径差は、0.04〜0.1mmとされている。
【0025】
そして、この円筒容器20の胴部23が装着されるスリーブ主部3の外径は、円筒容器20の内径に追従すべく、先端部側と基端部側とで大きさの異なるものとなっている。即ち、スリーブ主部3の外径は、円筒容器20の胴部23の肉厚部24に対応する基端部2側の部分が肉薄部25に対応する先端側の部分の外径より小さくなるように形成されて、基端部2側が小径部3aと、先端部側が大径部3bとされている。なお、これら小径部3aと大径部3bの外径の半径差は、円筒容器20の肉厚部24と肉薄部25の内径の半径差に対応して0.04〜0.1mmに設定されている。また、小径部3aと大径部3bとの境界が小径部3aから先端側に向かうに従って拡径して小径部3aに連なるように形成されたテーパ径部3cとされている。
【0026】
そして、これら小径部3a、大径部3b及びテーパ径部3cを有するスリーブ主部3の外径と円筒容器20の内径との間には、円筒容器20がスリーブ主部3に装着された状態において僅かなクリアランスが設けられるようにスリーブ1の外径が設定されている。
【0027】
また、小径部3aと肉厚部24との間のクリアランスlと、大径部3bと肉薄部25との間のクリアランスmとは同一とされ、テーパ径部3cと境界部26との間のクリアランスnは、クリアランスl及びクリアランスmよりも好ましくは0.01〜0.05mmの範囲で小さくなるようにスリーブ主部3の外径が設定されている。
【0028】
さらに、スリーブ主部3の円筒容器20の開口端部23aに対応する部分には、スリーブ主部3の小径部3aの外径が、基端部側に向かうに連れて拡径するようにして突出したテーパ突起部3dが形成されている。このテーパ突起部3dの小径部3aからの径方向外側へ向けての突出量は、肉厚部24と肉薄部25の肉厚差よりも大きく設定されており、例えば肉厚部24と肉薄部25との肉厚差の2〜3倍に設定されている。また、円筒容器20における開口端部23aから底部22に向かって約3〜10mmの範囲は、ブランケット胴32の外周に設けられたブランケット35が接触しない非印刷部Pとされており、テーパ突起部3dの軸線O方向の長さはこの非印刷部Pに対応して、円筒容器20の開口端部23aから円筒容器の底部22に向かって約3〜10mmの寸法となるように設定されている。
【0029】
以上のような構成の円筒容器保持用マンドレルMには、円筒容器20が空洞部1aによって真空吸引されることで外嵌され、さらに、その挿入された円筒容器20が真空引きをされることで強固に保持される。
【0030】
円筒容器保持用マンドレルMに保持された円筒容器20は、円筒容器保持用マンドレルターレット34の回転により缶の印刷装置30のブランケット胴32の外周に配置されたブランケット35と対向する位置に回転させられ、そのブランケット35の押圧回転により円筒容器20の外周面に所定の印刷がなされる。そして円筒容器20への印刷終了後、円筒容器保持用マンドレルターレット34が所定角度で回転されて、円筒容器保持用マンドレルMから円筒容器20が外される。
【0031】
このような缶の印刷装置30における円筒容器保持用マンドレルMは、スリーブ1におけるスリーブ主部3の外径と円筒容器20の胴部23の内径との間にクリアランスl、m、nが設けられているため、容易に円筒容器にスリーブ1を挿入することができる。また、スリーブ主部3の外径は、円筒容器20の肉厚部24及び肉薄部25の内径の径差に追従する小径部3a、大径部3b、テーパ径部3cとされているため、印刷時にブランケット35が円筒容器20の外周面に摺接して円筒容器20が押圧された際には、図3に示すように、印圧によってクリアランスl、m、nが消失し、円筒容器20の肉厚部24、肉薄部25及び境界部26の内径とスリーブ主部3の外径とが確実に密着することができる。これによって、円筒容器20の胴部23の肉厚部24と肉薄部25とが、同様の印圧を得ることが可能となる。
【0032】
また、肉厚部24と肉薄部25との間に位置する境界部26は他の部分に比べて印圧が分散し易いが、この境界部26のクリアランスnは他の部分のクリアランスl、mに比べて好ましくは0.01〜0.05mmの範囲で小さく設定されているため、ブランケット35が円筒容器20の外周面に摺接して押圧する際には、いち早くクリアランスnが消失してこの境界部26がスリーブ主部3のテーパ径部3cに密着し、他の部分よりも有効に印圧を得ることが可能となる。従って、境界部26においても印圧を確実に得ることができるため、円筒容器20の外周面全体としてブランケット35から有効に一様な印圧を得ることが可能となる。なお、クリアランスnがクリアランスl、mよりも0.05mm以上大きい場合には印圧が掛かり過ぎてテーパ径部3cの印刷においてインキが潰れ濃く表現されてしまうが、本実施形態においてはクリアランスnが上記の範囲に設定されているため、テーパ径部3cにおいても良好に印刷を施すことができる。
【0033】
さらに、肉厚部24と肉薄部25とにおけるそれぞれのクリアランスl、mの大きさが同一とされているため、円筒容器20の肉厚部24及び肉薄部25の双方とスリーブ主部3の外周面とをより均一に密着させることができ、同様の印圧を得ることが可能となる。
【0034】
また、円筒容器20の成形加工においては、しごき加工時に肉薄部25は肉厚部24に比較して大きく熱収縮するため肉厚部24側の開口端部23aが胴部23に比べて拡径した形状となることがある。このような開口端部23aが拡径した円筒容器20がスリーブ1のスリーブ主部3に外嵌されて、インキが転写されたブランケット35が円筒容器20の外周面に摺接しながら押圧する場合、開口端部23aは外径が大きいため、胴部23の底部22側が一周しても開口端部23aは一周が終わらない。即ち、開口端部23aは胴部23に比べて一周の長さが長い状態にある。さらに、円筒容器20の開口端部23aが拡径していることから、この開口端部23aとスリーブ主部3との間には比較的大きなクリアランスが生じる。このような開口端部23aにおける周長が長い状態とスリーブ1とのクリアランスの発生が同時に起こった場合、スリップすることにより円筒容器20に捩れが発生し品質が低下してしまうおそれがある。
【0035】
本実施形態においては、スリーブ主部3の円筒容器20の胴部23の開口端部23aに対応する部分にテーパ突起部3dが設けられていることにより、円筒容器20の開口端部23aとスリーブ主部3とのクリアランスを埋めることができるため円筒容器20の捩れを抑制することが可能となる。また、このテーパ突起部3dは、スリーブ1の基端部2に向かって拡径するように突出しているため、円筒容器20を外嵌するに際し妨げになることはない。さらに、テーパ突起部3dの突出量は肉厚部24と肉薄部25の内径の半径差よりも大きく設定されているため、ブランケット35による押圧の有無に係らず、円筒容器20を外嵌させた段階で円筒容器20の開口端部23aとスリーブ1との間のクリアランスが埋められ、より一層円筒容器の捩れの発生を防止することができる。
【0036】
また、テーパ突起部3dが肉厚部24と肉薄部25との肉厚差の2倍より小さい場合は前記スリップが発生し易くなることにより、円筒容器20の捩れが発生しやすくなってしまう。一方、テーパ突起部3dが前記肉厚さの3倍より大きい場合は、テーパ突起部3dにより円筒容器20の開口端部23aに外径方向への折れ曲がりが発生し、ネッキング等の後工程に悪影響を及ぼす。本実施形態においては、テーパ突起部3dは前記肉厚差の2〜3倍に設定されているため、上記のような不具合が生じることなく円滑に印刷加工を行うことができる。
【0037】
なお、このテーパ突起部3dは、ブランケット35が接触しない非印刷部Pに対応して、円筒容器20の開口端部23aから円筒容器の底部22に向かって約3〜10mmの範囲に形成されているため、印刷に影響を及ぼすことはない。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、上述の例では、円筒容器20として肉厚部24と肉薄部25との内径の半径差が約0.04〜0.1mmのボトル缶成形用のものを用いたが、これに限定されず、円筒容器の内径に追従するようにスリーブ1の外径を設定することによって、例えば半径差が約0.04〜0.06mmの通常の缶の成形用の円筒容器に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 スリーブ
3 スリーブ主部
3a 小径部
3b 大径部
3c テーパ径部
3d テーパ突起部
20 円筒容器
23 胴部
24 肉厚部
25 肉薄部
26 境界部
30 缶の印刷装置
32 ブランケット胴
35 ブランケット
M 円筒容器保持用マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキが転写されるブランケットを外周に備えた回転自在なブランケット胴と、該ブランケット胴の外周に接するように配置された円筒容器保持用マンドレルとを備え、前記ブランケットに、前記円筒容器保持用マンドレルに外嵌させた円筒容器を接触させて回転させることによって該円筒容器の外周に印刷を行う缶の印刷装置において、
前記円筒容器は、開口端部側が肉厚部とされ、底部側が肉薄部とされた胴部を有し、
前記円筒容器保持用マンドレルは前記胴部が外嵌されるスリーブを備え、該スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされていることを特徴とする缶の印刷装置。
【請求項2】
前記小径部と前記大径部との半径差が0.04mm以上0.1mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の缶の印刷装置。
【請求項3】
前記スリーブの前記胴部の開口端部に対応する部分に、前記スリーブの基端部に向かって拡径するように突出するテーパ突起部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の缶の印刷装置。
【請求項4】
有底筒状をなし、開口端部側が肉厚部とされ、底部側が肉薄部とされた円筒容器の胴部の内側にスリーブを挿入して、その円筒容器を保持する円筒容器保持用マンドレルであって、
前記スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされていることを特徴とする円筒容器保持用マンドレル。
【請求項5】
回転自在なブランケット胴の外周に設けられたブランケットにインキを転写し、有底筒状をなして開口端部側が肉厚部とされ底部側が肉薄部とされた胴部を有する円筒容器を円筒容器保持用マンドレルに外嵌し、該ブランケットを円筒容器に接触させて回転させることによって該円筒容器の外周に印刷する缶の印刷方法において、
前記円筒容器保持用マンドレルは前記胴部が外嵌されるスリーブを備え、該スリーブは、基端側に形成された小径部と、先端側に形成された大径部と、を有し、前記小径部と前記大径部との境界が、前記小径部から先端側に向かうに従って拡径するテーパ径部とされており、
前記小径部が前記胴部の肉厚部に対応し、前記大径部が前記胴部の肉薄部に対応するように、前記円筒容器を前記円筒容器保持用マンドレルに外嵌することを特徴とする缶の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−176618(P2012−176618A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−81185(P2012−81185)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−275637(P2007−275637)の分割
【原出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】