説明

置き床の施工方法および仮床

【課題】施工された置き床に重量物を積み上げることなく間仕切り壁を施工することのできる置き床の施工方法を提案すること。
【解決手段】置き床の施工方法では、床下地板3の裏面に、高さ調整可能な支持具2を固定し、各床下地板3を、一定の隙間6を開けて床面1上に置き、各隙間6を利用して各床下地板3の裏面に固定されている支持具2の高さを調整して、各床下地板3のレベル出しを行い、床下地板3の敷設後に、隙間6を利用して床面1上に仮床支持脚31を立て、仮床支持脚31に仮床板32を架け渡して、床下地板3よりも高い位置に仮床30を敷設し、この仮床30に、間仕切り壁施工用の軽量鉄骨材、プラスターボードなどの重量物を乗せ、間仕切り壁施工後に仮床30を取り外し、しかる後に、置き床10の仕上げを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの内装工事において採用されている、床組を施工した後にその上に間仕切り壁を施工する床先行工法に用いるのに適した置き床の施工方法に関するものである。さらに詳しくは、敷設された置き床が間仕切り壁の施工時に損傷を受けることの無い様にした置き床の施工方法および、当該方法に用いる仮床に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの床施工法としては、コンクリートスラブの上に、高さ調整可能な支持具が取り付けられた床下地板を敷設し、支持具の高さを調整して床下地板のレベル出しを行い、しかる後に床仕上げを行う置き床工法が知られている。かかる置き床工法は特許文献1に開示されている。
【0003】
支持脚は、一般に、ボルトと、このボルトの上端部に取り付けたナットと、ナットによって支持されている支持板と、ボルトの下端に取り付けられている遮音用ゴム板から構成されている。ボルトの上端は支持板に形成した開口部から露出しており、上側から工具を用いてボルトを回すことができるようになっている。支持板は床下地板、一般にはパーティクルボードの裏面に予め固定されている。床面に置いたパーティクルボードを支持している支持具のボルトを回すと、そこに螺合しているナットおよび支持板が上下に移動し、支持板が固定されているパーティクルボードの部分の高さを調整できる。パーティクルボードを支持している各支持具の高さ調整を行うことにより、各パーティクルボードのレベル出しを行うことができる。
【0004】
ここで、マンションの内装工事現場などにおいては、床先行工法が採用されることが多くなってきている。床先行工法は、床スラブの上に床組を施工した後に、その上に、間仕切壁などの壁組を施工する方法であり、非特許文献1に開示されている。例えば、置き床が施工された後に、その上に、間仕切り材である軽量鉄骨下地材、垂木材が組み付けられて間仕切り枠を施工し、しかる後に、間仕切り枠にプラスターボードが貼り付けられる。
【特許文献1】特開2001−49842号公報
【非特許文献1】万協株式会社,”床先行工法の納まり例”[平成18年7月10日検索],インターネット<URL:http://www.bankyo.co.jp/c/c2.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床先行工法では床組を施工した後に間仕切り壁などの壁組が施工される。このために、間仕切りの施工に当っては、その構成部材が床組の上に積み上げられる。上記の特許文献1に開示されているような置き床の上に部材が積み上げられると、パーティクルボードなどからなる床下地板が破損する、支持具のボルトが曲がる、遮音用ゴム板が押し潰されるなどの弊害が発生するおそれがある。このような弊害が発生すると、床鳴りが発生し、遮音効果が低下するなどの不具合が生ずる。
【0006】
すなわち、間仕切り壁に貼り付けられるプラスターボードは、910mm×1800mmの大きさで厚さが12.5mmのものでも、重量が15kgあり、一室当り180枚ないし200枚も使用される。このため、プラスターボードの重量は一室当り1〜2トンにもなる。このような重量物が置き床に積み上げられると、特に、一箇所に積み上げられると、上記のような弊害が発生する危険性が高い。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、施工された置き床に重量物を積み上げることなく間仕切り壁を施工することのできる置き床の施工方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の置き床の施工方法では、床下地板の裏面に、高さ調整可能な支持具を取り付け、各床下地板を、一定の隙間を開けて、床面上の所定高さの所に水平に置き、各隙間を利用して各床下地板の裏面に固定されている支持具の高さを調整して、各床下地板のレベル出しを行い、床下地板の敷設後に、前記隙間を利用して、床面上に仮床支持脚を立て、仮床支持脚に床板を架け渡して、床下地板よりも高い位置に仮床を敷設し、この仮床に、間仕切り施工用の軽量鉄骨材、プラスターボードなどの重量物を乗せ、間仕切り施工後に、前記仮床を解体し、しかる後に、前記床下地板の上に床仕上げを行うことを特徴としている。
【0009】
ここで、前記仮床支持脚として、複数台の脚立状のものを立て、これらの仮床支持脚に床板を架け渡して前記仮床を構成するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明は、かかる置き床の施工方法に用いる仮床であって、前記床板と、この床板の裏面に取り付けられている複数本の前記仮床支持脚とを有し、前記仮床支持脚は、前記床板に着脱可能、または、当該床面の裏面に折り畳み可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の置き床の施工方法では、支持具が取り付けられているパーティクルボードなどの床下地板を床面上に敷き込み、レベル出しを行った後は、当該床下地板の上方に仮床が敷設される。仮床の仮床支持脚は、敷き込まれた床下地板の間の隙間を利用して床面上に立てられる。よって、間仕切り壁施工用のプラスターボードなどの重量物を仮床に積み上げても、重量物の荷重が床下地板に作用することがない。よって、置き床に過荷重を掛けることなく間仕切り壁の施工を行うことができる。
【0012】
また、本発明の仮床は、その仮床支持脚が着脱可能、あるいは折り畳み可能となっているので、仮床の敷設作業および取り外し作業を簡単に行うことができる。また、繰り返し使用する場合にも便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した置き床の施工方法の例を説明する。
【0014】
図1は本発明の置き床の施工方法によって施工された置き床の部分断面である。この図に示すように、コンクリートスラブ(床面)1の上には、一定の間隔で多数の高さ調整可能な支持具2が立設されており、これらの支持具2の上に、床下地板である20mm厚さのパーティクルボード3(3(1)、3(2)、3(3)・・・)が水平に敷詰められている。各パーティクルボード3は、例えば、横600mm、縦1800mm、厚さ20mmの寸法である。これらの上には、フローリング材などの床仕上げ材5が敷詰められて、置き床10が構成される。
【0015】
支持具2は、外周面部分に雄ねじが形成されたボルト21と、この外周にねじ込まれたナット22と、このナット22によって支持されている支持板23と、ボルト21の下端に取り付けられ、ボルト21を回転自在の状態で支持している防音ゴム板24から構成されている。支持板23に開いている開口23aを介してボルト21を回せば、ナット22をボルト21の軸線方向に沿って一定の範囲内で上下させることができる。したがって、この上端に取り付けられている支持板23の高さ位置を調整できる。このような高さ調整可能な支持板23の上に、パーティクルボード3が支持されている。
【0016】
次に、このように構成した置き床の施工手順を説明する。基本的な手順は、一般的に行われる置き床工法と同様であるので、詳細な説明は省略する。まず、壁面の所定高さの位置にきわ根太(図示せず)を取り付けておき、パーティクルボード3の裏面に支持具2を一定の間隔で固定する。本例では、パーティクルボード3の一方の長辺の縁に沿って一定間隔で、各支持具2の支持板23の一方の側の部分がスクリューネジなどによって固定される。壁際においては、パーティクルボード3(1)の一方の長辺側の縁をきわ根太に乗せた状態で、床面1の上に置き、支持具2の高さを調整してレベル出しを行う。
【0017】
次に、この壁際のパーティクルボード3(1)の隣に、一定幅の隙間、例えば、100mmの隙間6を開けて、パーティクルボード3(2)を水平に置く。すなわち、当該パーティクルボード3(2)における支持具2が取り付けられてない長辺側の縁を、既に設置されているパーティクルボード3(1)の縁に取り付けた支持具2の支持板23の他方の側に乗せ、スクリューネジなどが固定する。この後に、パーティクルボード3(2)の各支持具2の高さ調整を行って、当該パーティクルボード3(2)のレベル出しを行う。
【0018】
このようにして、一定の隙間6を開けて、順次にパーティクルボード3を床面1上の所定高さ位置に敷き込み、隙間6を利用して上側から各支持具2のボルトを回してそれらの高さ調整を行いながら、各パーティクルボード3のレベル出しを行う。したがって、パーティクルボード3を敷き詰めた後においては、各パーティクルボード3の間には、支持具の高さ調整を行うために設けた隙間6が残った状態になる。
【0019】
ここで、従来の床先行工法では、この後に、間仕切り壁施工用の建材が搬入されて、敷設されたパーティクルボード3の上に積み上げられる。間仕切り壁を施工し終えた後に、パーティクルボード3の上に、フローリング材などの床仕上げ材5が敷き詰められる。
【0020】
しかしながら、本例では、パーティクルボード3が敷き詰められた後は、図2に示すように、パーティクルボード3の上方に仮床30を設置する。仮床30は、パーティクルボード3の隙間6を利用して床面1に立てた複数本の仮床支持脚31と、これらの仮床支持脚31の上に架け渡されている穴空き金属板などからなる床板32とを備えている。仮床支持脚31を床板32の裏面に対して着脱可能に取り付けておけば、仮床30の設置工事および取り外し工事が簡単になる。また、仮床支持脚31を床板32の裏面に折り畳み可能に取り付けておいても、仮床30の設置工事および取り外し工事が簡単になる。
【0021】
また、仮床支持脚31として、脚立状のものを多数台用意しておき、これらを隙間6を利用して一定の間隔で立てた後に、これらの間に床板32を架け渡して、仮床30を構成するようにしてもよい。例えば、4本脚の脚立状の仮床支持部を用意し、隣接する2つの隙間6に脚を2本づつ入れて仮床支持部を立てる。2台の仮床支持部をこのようにして立てた後に、これらの間に床板を乗せればよい。
【0022】
このようにして仮床30を施工した後は、間仕切り壁施工用の建材を搬入して、当該仮床30に乗せる。したがって、プラスターボードなどの重量物が敷設したパーティクルボード3の上に積み上げられて、パーティクルボード3、支持具2に過荷重が作用することを防止できる。この結果、過荷重が作用してパーティクルボード3、支持具2が破損あるいは変形して、置き床10に不具合が生ずることを回避できる。
【0023】
間仕切り壁を施工した後は仮床30を解体する。脚立状のものを用いている場合には、床板32を外して、仮床支持脚31を取り外す。しかる後に、パーティクルボード3の隙間6を目張りした後に、フローリング材などの床仕上げ材5が敷き詰められ、置き床10が完成する。
【0024】
以上説明したように、本例の置き床の施工方法によれば、床下地板であるパーティクルボード3を敷設した後に、その上方に仮床30を敷設している。したがって、この後の間仕切り壁施工時に、間仕切り壁施工用の建材を仮床30に乗せることにより、かかる建材を積み上げることによってパーティクルボード3、支持具2に過荷重が作用して、これらに不具合が生ずるという弊害を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の方法によって施工された置き床を示す部分断面図である。
【図2】置き床の床下地板を敷き詰めた後に仮床を設置した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 床面
2 支持具
21 ボルト
22 ナット
23 支持板
24 防振ゴム板
3、3(1)、3(2)、3(3) パーティクルボード
5 床仕上げ材
6 隙間
10 置き床
30 仮床
31 仮床支持脚
32 仮床板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地板の裏面に、高さ調整可能な支持具を取り付け、
各床下地板を、一定の隙間を開けて、床面上の所定高さの所に水平に置き、
各隙間を利用して各床下地板の裏面に固定されている支持具の高さを調整して、各床下地板のレベル出しを行い、
床下地板の敷設後に、前記隙間を利用して、床面上に仮床支持脚を立て、仮床支持脚に床板を架け渡して、床下地板よりも高い位置に仮床を敷設し、
この仮床に、間仕切り施工用の軽量鉄骨材、プラスターボードなどの重量物を乗せ、
間仕切り施工後に、前記仮床を解体し、
しかる後に、前記床下地板の上に床仕上げを行うことを特徴とする置き床の施工方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記仮床支持脚として、複数台の脚立状のものを立て、これらの仮床支持脚に床板を架け渡して前記仮床を構成することを特徴とする置き床の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の置き床の施工方法に用いる仮床であって、
前記床板と、この床板の裏面に取り付けられている複数本の前記仮床支持脚とを有し、
前記仮床支持脚は、前記床板に着脱可能、または、当該床面の裏面に折り畳み可能であることを特徴とする置き床の施工方法に用いる仮床。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−25160(P2008−25160A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197332(P2006−197332)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(591110333)孝和建商株式会社 (6)
【Fターム(参考)】