説明

置換されたトリフェニルアミン繰返し単位を含有するポリマー

【課題】電子冷光放射装置のような光学装置に使用されえるポリマーの提供。
【解決手段】次の一般式(1)を有する第1の繰返し単位を含有する線状ポリマーを製造する方法であって、


この第1繰返し単位は、置換され又は置換されない。この式において、xは0又は1であり、各Arは同じか異なり、独立して置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基であり、並びに、R及びR’はそれぞれ水素又は置換基であり、第2繰り返し単位は第1繰返し単位とは同じか異なり、置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基含む。ポリマーは、スズキ重合により作製され、その際、繰返し単位(1)が導入されるモノマーは、1又は2以上の反応性ボロン基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーとその製造方法に関する。本発明は、特に、ある方法によって得られるホモポリマー、コポリマー及びより高次のポリマー、特に、電子冷光放射装置のような光学装置に使用されえるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
発光用光学材料を採用する電子冷光放射装置は、PCT/WO90/13148及びUS4,539,507に記載されている。これらの装置の基本的構造は、発光有機層、例えば、2つの電極間に挟まれたポリ(p−フェニレンビニレン)の薄膜に関する。電極の一方(カソード)は負電荷輸送体を、他方の電極(アノード)は正電荷輸送体を、有機発光層に注入する。PCT/WO90/13148では、有機発光層はポリマーである有機発光材料から作られる。
【0003】
電子冷光放射装置において半導体共役コポリマーを発光層として用いることは知られている。半導体共役コポリマーは、個々のホモポリマーに存在するときに典型的に異なる半導体バンドギャップを有する少なくとも2つの化学的に異なるモノマー残留物を含む。コポリマーにおける化学的に異なるモノマー残留物の割合は、PCT/GB91/01420に開示されるコポリマーの光学特性を制御するようにコポリマーの半導体バンドギャップを制御するために選択される。
【0004】
有機半導体においては、重要な特性は、電子エネルギーレベルの真空レベル、特に、「最高空準位」(HOMO)及び「最低空準位」(LUMO)レベルに関して測定された結合エネルギーである。異なるポリマーの酸化ポテンシャル及び還元ポテンシャルは、ポリマーの相対的HOMO及びLUMOレベルによって支配される。したがって、HOMO及びLUMOレベルは、発光の測定及び特に、酸化及び還元の電気化学ポテンシャルの測定によって推定され得る。このようなエネルギーは多数の要因によって影響を受けることがこの技術分野においてはよく知られている。したがって、その値の使用は定量的であるというより指標的である。
【0005】
共役ポリマーの1つの製造過程は、ジブロモトリフェニルアミンモノマーと銅のウルマンカップリングを開示するDE3610649から知ることができる。ウルマン法の代替は、”Macromolecules”,31,1099−1103(1998)に開示されるニッケル錯体の使用である。重合反応はジブロミドモノマーのニッケル触媒カップリングを含む。この方法は、「ヤマモト重合」として知られている。ヤマモト重合におけるニッケル触媒の使用は、この触媒が高価であるため大量生産には経済的問題が生じる。
【0006】
共役ポリマーの他の製造過程は、芳香族ボロン酸誘導体及び芳香族ハロゲン化物の間のPdを触媒としたクロスカップリング反応(一般的に「ズズキ効果」として知られる)に基づいている。これは、Synthetic Communications,vol.11,No.7,p513(1981)でスズキにより報告されている。反応は、また、塩基、すなわち、最も好ましくは、水溶性アルカリカーボネート又はバイカーボネートである。「スズキ反応」の開発は、US5,777,070及びWO00/53656の主題であり、その内容は、本明細書の一部としてここで引用する。
【0007】
「スズキ反応」によって製造されるポリマーは、WO99/54385、WO00/46321及びPCT/GB00/00911に記載されている。これらの文献は、それぞれ、トリアリールアミン繰返し単位を有するポリマーを開示する。
日本特許2000−352824は次の化合物を開示する。
【0008】
【化18】

化合物は光重合可能で、リソグラフィープリント基板の構成要素として使用するのに有益であることが開示されている。ここでは、光学装置又は「スズキ効果」について何ら述べられていない。
【0009】
J.Electroanal.Chem.2000,482(2),(211−216)は、新しいルイス塩基感応レドックス受容体としてのボロンエステル置換トリフェニルアミンの調査の一部として、次の化合物を開示する。
【0010】
【化19】

この化合物のポリマーへの組み込みは開示されていない。
【0011】
本発明の発明者は、従来技術において、「スズキ反応」により規則的代替コポリマーを製造する方法における欠点が存在することを見出した。規則的代替コポリマー又は高次ポリマーは、それが同種のランダムコポリマーに比較してより決まった特性を有するため、ある種のポリマーには非常に有利である。例えば、ランダムコポリマーの発光波長は、同様の規則的代替ポリマーに比較してより広い範囲に広がっている(すなわち、あいまいな特性といえる)。理論に縛られないでいえば、ランダムコポリマーにおける2つのモノマー残留物間で共役されることが一部の理由と考えられる。
【0012】
本発明の発明者によって特定された欠点は「スズキ反応」の性質そのものと関係している。A含有モノマー及びB含有モノマーから規則的代替ABコポリマーを得るために、例えば、ジエステルA含有モノマー及びジハロゲン化物B含有モノマー又はその逆を提供することが必要であろう。この欠点は、A含有モノマーとB含有モノマーの両者のみが、例えば、ジハロゲン化物として共に有益であるときに存在する。なぜなら、規則的代替ABコポリマーは「スズキ反応」では製造されず、また、全く製造されないことを意味するからである。
【0013】
同様に、本発明の発明者は、従来技術においては、「スズキ反応」によってはホモポリマーを作る方法に欠点が存在することを見出した。「スズキ反応」によるホモポリマーの製造は、上述したように既知の方法に関連した問題を部分的に克服することに少なくとも有利である。繰り返すと、本発明の発明者によって発見なさた欠点は、「スズキ反応」そのものの性質に関係している。「スズキ反応」によって、ホモポリマー(A)nを得ようとすると、ジエステル及びジハロゲン化物A含有モノマーを提供することが必要であろう。A含有モノマーが、例えば、ジハロゲン化物としてのみ有益である場合は、これはホモ
ポリマー(A)nが「スズキ反応」では得られないことを意味するから、欠点となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術におけるこのような欠点を特定し、本発明の発明者は、「スズキ反応」におけるこれまでに公知でない製造過程によって得られるこれまでに公知でない規則的代替コポリマーを提供することによってこれらの問題点を少なくとも部分的に克服することを意図する。本発明は、さらに、「スズキ反応」又はその変形におけるこれまでに公知でない製造過程によって得られるホモポリマー、他のポリマー及びより高次のポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の第1の側面は、基本構造(1)を有する第1の繰返し単位を含有する線状ポリマーを製造する方法を提供する。
【0016】
【化20】

この第1繰返し単位は、置換され又は置換されない。この式において、xは0又は1であり、各Arは同じか異なり、独立して置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基であり、並びに、R及びR’はそれぞれ水素又は置換基であり、第2繰り返し単位は第1繰返し単位とは同じか異なり、置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基であり、次の反応混合物を重合するステップを含む。
(a)それぞれ、第1繰返し単位を含有し、かつ2つの反応性ボロン誘導基を有する複数の第1モノマー、並びに、それぞれ、第2繰返し単位を有し、かつ少なくとも2つの反応性ハロゲン化物配位基を有する複数の第2モノマー、又は
(b)それぞれ、第1繰返し単位を含有し、1つの反応性ハロゲン化物配位基及び1つの反応性ボロン誘導基及び複数の第2モノマーを含有する複数の第1モノマー、並びに、それぞれ、第2繰返し単位を有し、かつ1つの反応性ハロゲン化物配位基及び反応性ボロン誘導基を有する複数の第2モノマー、
ここで、反応混合物は、塩基及びモノマーの重合の触媒に必要な量の触媒を含有する。
【0017】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面の1実施例の方法によって得られる線状規則的代替コポリマーを提供する。
本発明の第3の側面は、本発明の第1の側面の方法の使用に適したモノマーを提供する。
【0018】
本発明の第4の側面は、本発明の第1の側面の方法又は第2の側面のコポリマーによって得られたポリマーの使用方法を提供する。
【0019】
本発明の第5の側面は、本発明の第1の側面の方法により得られたポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーからなる光学装置又は構成要素を提供する。
本発明の第6の側面は、本発明の第3の側面のモノマーの使用方法を提供する。
【0020】
本発明の目的においては、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及び高次ポリマーを包含するものと解釈される。
【0021】
本発明の目的においては、「アリール及びヘテロアリール基」は置換される又は置換さ
れない単環式及び複環式アリール及びヘテロアリール基を含むものと解される。複環式アリール及びヘテロアリール基は縮合環だけでなく、直共有結合又はS,O,C若しくは類似の他の原子によって結合している環系を含むものと解される。
【0022】
本発明の方法においては、それぞれのボロン誘導基は、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基からなる群から独立して選択される。さらに、それぞれの反応性ハロゲン化物基は、F、Cl、Br及びIからなる群から独立して選択される。
【0023】
好ましくは、反応条件は、WO00/53656又はUS5,777,070のそれに対応している。WO00/53656の方法においては、反応混合物は、芳香族モノマーの重合に適した触媒(パラジウム)の触媒量及び反応ボロン誘導配位基をBX3-(ここで、Xは、F,OR及びOHからなる群より独立して選択される)に変換するのに十分な量の有機塩基を含む。US5,777,070においては、反応混合物は、有機溶媒(溶媒中ポリマーが少なくとも1%含まれる)、pKaの範囲が9〜13である溶液、濃度が最低0.1Nの溶液、パラジウム錯体の触媒量、並びに反応混合物中のボロン酸、ボロン酸エステル及びボラン基の多数モルに基づく相転移触媒の0.01mol%を含む。
【0024】
反応混合物における第1モノマーと第2モノマーの1つの好ましい比率は、1:1である。しかしながら、この比率は、得られるポリマーの特性の制御のために変化しえる。
【0025】
本発明の第1の側面の第1の実施例においては、ステップ(a)により進められる方法、特に、それぞれの第1のモノマーが次の一般式(2)を有することが好ましい。
【0026】
【化21】

ここで、それぞれのEはボロン誘導基である。
【0027】
本発明の第1の側面における方法の1つの実施例においては、それぞれの第2モノマーは次の一般式(3)を有する。
【0028】
【化22】

ここで、E’は、反応性ハロゲン化物配位基であり、第2繰返し単位は、置換される又は置換されないアリール又はヘテロアリール基である。得られるポリマーは、次の一般式(4)で示される。
【0029】
【化23】

ここで、nは、少なくとも2である。
【0030】
第1繰返し単位が第2繰返し単位と異なるときは、得られるポリマーは規則的代替コポリマーである。第1繰返し単位が第2繰返し単位と同じときは、得られるポリマーはホモポリマーである。
本発明の第1の側面における第2の実施例においては、(i)第1繰返し単位が第2繰返し単位と同じであり、(ii)第1モノマーは第2モノマーと同じで、次の一般式(10)を有するとき、この方法はステップ(b)による。
【0031】
【化24】

得られるポリマーは、ホモポリマーである。
【0032】
本発明の第1の側面における第1の実施例において、好ましいR及びR’基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化物(特に、フルオロ)、ハロアルキル(特に、CF3)、シアノ、アリーロキシ、アリール及びチオアルキル基である。好ましい第1繰返し単位は、次の一般式(5)を有する。
【0033】
【化25】

これは置換され又は置換されず、Xは0又は1であり、それぞれのArは他のものと同じか又は異なり、置換される若しくは置換されないアリール又はヘテロアリール基である。好ましいAr基は、置換される又は置換されないフェニル、ビフェニル又はフルオレン基である。これは、これらの基を含むことが第1繰返し単位の正孔輸送特性を改良する効果を有するからである。加えて、これはポリマーの半導体バンドギャップを変更する効果し、光学装置に使用されるポリマーから得られる放射光の波長を緩和する効果を有する。この目的のため、少なくとも1つのAr基が置換される又は置換されないフェニル、ビフェニル又はフルオレン基を含有する。
特に好ましい第1繰返し単位は、次の一般式(6)及び(7)で示される。
【0034】
【化26】

【0035】
【化27】

式(6)及び(7)で示される繰返し単位は、さらに、置換され又は置換されない。X’及びYは、同じか異なる。X,X’及びYは、それぞれ独立して、水素又は置換基であ
る。
式(7)においては、Ar’は、置換される又は置換されないアリール又はヘテロアリール基、又は好ましくは、フェニル、ビフェニル又はフルオレンである。
【0036】
X,X’及びYはポリマーの溶解性を改良するために使用される。この点について、X,X’及びYはいずれも溶解性基である(すなわち、いずれの基も、これを含まない同様のポリマーと比較してポリマーの溶解性を改善する)。これに加えて、X,X’及びYは、特にHOMO及びLUMOレベル、すなわちポリマーの半導体バンドギャップを調整することにより、ポリマーの特性、特に、電気的特性を制御するために使用される。このような目的のために、X,X’又はYとして用いるには、電子引き抜き又は電子寄与基が有益である。特に好ましい基は、アルキル、アルコキシ、カルボキシアルキル、ハロゲン化物、シアノ、アリール及びヘテロアリールである。さらに好ましいX,X’及びY基は、C1〜C10アルキル及びC1〜C10アルコキシ基である。
【0037】
本発明の第1の側面における第1の実施例においては、第2の繰返し単位は、一般式又は好ましい型で上記に定義されるように式(1)、(5)、(6)又は(7)を有することができる。
【0038】
本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー、特に、規則代替コポリマー若しくは高次ポリマー又はホモポリマーも提供される。
【0039】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面の1つの実施例の方法により得ることができる線状規則代替子ポリマーが提供される。
【0040】
あるコポリマー及び高次ポリマーにおいて、各領域が明確なHOMOレベル及び明確のLUMOレベルそして明確な半導体バンドギャップを有するように定義される。単分子残留物としての領域を検討すると、単分子残留物がランダムコポリマー又は高次ポリマーよりは規則代替コポリマー又は高次ポリマーの形で集積される領域の明確さを改善することが可能であることが見出された。したがって、本発明の第2の側面の線状規則的代替コポリマーは、ランダムポリマーに比較して、ポリマーにおける第1及び第2の繰返し単位の個々の特性に関して、より明確な特性を有する。本発明の第2の側面の線状規則的代替コポリマーは、特に光学装置に使用する際により望ましい。
【0041】
本発明の第1の側面の方法により得ることができるこれまでに知られていない規則的代替コポリマーは、2つの異なるトリアリールアミン含有繰返し単位、すなわち、第1及び第2繰返し単位が互いに異なり、共に(5)、(6)又は(7)で示されるか又は関連する一般式を有する線状規則的代替コポリマーである。
【0042】
この点に関して、本発明の第2の側面のコポリマーは、第1の繰返し単位が1つの機能及び第2の繰返し単位が他の機能を有する光学装置に使用されるときは2重の機能を有するものと考えられる。典型的には、2つの機能は、発光するために、正電荷輸送体を輸送し、並びに、正電荷及び負電荷輸送体を受領し結合させるものである。
このようなコポリマーは、次の一般式(8)を有するコポリマーを含む。
【0043】
【化28】

ここで、nは少なくとも2であり、Ar’、X、X’及びYは、本発明の第1の側面との関連で定義されたとおりである。
【0044】
式(8)を有するポリマーにおいては、ポリマーの溶解性及び/又はさらにHOMO及びLUMOレベルを制御するために、さらに置換基が使用され得る。置換基はいずれも窒素に付着した基の上にある。これは、置換基がポリマーを作るのに使用されるモノマーの重合場所に近づきすぎないように働く。しかしながら、置換基は窒素に付着する基の上の場所以外の場所にもまた供給されえる。
【0045】
典型的には、本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー及び本発明の第2の側面のポリマーは、少なくともMnが約10,000ドルトンの平均分子量を有する。好ましくは、これらは10,000から106の範囲の平均分子量を有する。ポリマーの分子
量を制御することは、ポリマーのレオロジー特性を制御する1つの方法である。
【0046】
本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー及び本発明の第2の側面のコポリマーは、電荷輸送、特に、正電荷輸送体の輸送、及び/又は発光装置における発光に有益である。
一般式(8)を有する特別なポリマーは一般式(9)で示される。
【0047】
【化29】

これは、さらに置換され又は置換されず、nは少なくとも2であり、X,X’及びYはC1−C10アルキル又はC1−C10アルコキシ基から独立して選択される。
【0048】
本発明の第3の側面によれば、一般式(11)又は(12)を有する線状ポリマーの作成に好適なモノマーが提供される。
【0049】
【化30】

【0050】
【化31】

ここで、E及びE’は、それぞれ一般式(2)及び(3)に関係した上記のように定義される。また、x及びArは、本発明の第1の側面の一般的又は好ましい実施例において上記のように定義される。
【0051】
本発明の第3の側面のモノマーは、本発明の第1の側面の方法における使用に好適である。一般的に、本発明の第3の側面のモノマーは、ホモポリアミン及び「スズキ反応」による規則的代替アミン含有コポリマー又は高次のポリマーの製造の道を開く。これは、得られるポリマーの正孔注入特性の良好な制御をもたらす。
【0052】
本発明の第4の側面は、光学装置における本発明の第1の側面の方法によって得られたポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーの使用に関する。好ましくは、ポリマーは、光学装置の構成要素として、光を生成するために正電荷輸送体を輸送するため及び/又は負電荷輸送体を受領し結合するために使用される。
【0053】
上記で定義された第1及び第2繰返し単位の性質によって、本発明のポリマーが発光装置において光を発生するために正電荷輸送体と負電荷輸送体を結合するために使用されるときに、このような場合に限るわけではないが、それらは青色発光源として広く有益である。本発明の目的のためには、「青色」発光とは、360nmから490nmの範囲の波長の光を含むものと定義される。しかしながら、上記で定義される第1繰返し単位を有するポリマーは、この範囲外の波長の光源としても有益である。
好ましくは、光学装置は電子冷光放射装置を含む。
【0054】
本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーは、正孔輸送材料としての使用又は光電流装置における使用を含む。
本発明のポリマーが溶解性であるのは、溶液プロセスを使用できるという有利性がある。
【0055】
本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーにより得られるポリマーからなる薄膜又は被覆層も提供される。さらに、本発明の第1の側面の方法で得られた1又はそれ以上のポリマー又は本発明の第2の側面の1又は2以上のコポリマーが提供される。好ましくは、混合物は1又は2つのさらに異なるポリマーを包含する。
【0056】
本発明の第5の側面は、基板上に支持される本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーからなる混合物からなる組成物が提供される。好ましくは、光学装置は冷光放射装置を含む。
【0057】
正孔輸送材料又は構成要素並びに電子輸送材料又は構成要素は、一般に、電荷輸送材料又は構成要素として引用される。
【0058】
本発明の好ましい電子冷光放射装置は、正電荷輸送体注入のための第1電荷注入層、負電荷輸送体注入のための第2電荷注入層、光を発生するために第1及び第2電荷注入層からの正電荷と負電荷を受領し結合させる発光層、及び、選択的に、第1電荷注入層と発光層の間又は第2電荷注入層と発光層の間に位置する1又は2以上の電荷輸送層を包含する。発光層は、発光構成要素及び選択的に1又は2以上の正電荷及び/又は負電荷輸送構成要素を包含する。発光層は、少なくとも1つの本発明の第1の側面の方法により得られる
ポリマー又は少なくとも1つの本発明の第2の側面のコポリマーを包含する。本発明の第1の側面の方法により得られた単一ポリマー又は本発明の第2の側面により得られた単一コポリマーは、発光構成要素及び/又は正電荷輸送構成要素として提供される。
【0059】
発光層は、本発明の第1の側面の方法により得られた1又は2以上のポリマー又は本発明の第2の側面の1又は2以上のコポリマー、並びに選択的にさらに異なるポリマーを含む材料の混合物から構成される。上述したように、本発明の第1の側面の方法により得られる1又は2以上のポリマー、又は本発明の第2の側面の1又は2以上のポリマーは、電極から発光構成要素への電荷輸送の効率の改善、特に、正孔輸送の効率の改善のために含められる。代替的に、又は付加的に、本発明のポリマー(これは、電荷輸送の効率改善のために含められるポリマーと同じであり得る)は発光要素として含められる。本発明のポリマーが少なくとも発光要素として組み込まれる場合、さらなる電荷輸送ポリマーの混合物の残部と共に、その混合物は本発明の第2の側面のポリマーの0.1重量%、好ましくは0.2〜100%、より好ましくは0.5〜50%を占める。
【0060】
代替的に、上述したように、本発明の第1の側面の方法により得られたポリマー又は本発明の第2の側面のコポリマーは、第1又は第2電荷注入層と発光要素を含む分離された層の間に分離された層として供給される。また、発光要素である分離された層としても供給される。これらの分離された層は、1又は2以上の電子輸送層に選択的に接触される。
【0061】
本発明の第6の側面は、本発明の第3の側面のモノマーの使用を提供する。好ましくは、その使用は光学装置の要素として供給されるポリマーの製造のためのものである。
【0062】
より好ましくは、その使用は、ポリマーが発光要素及び/又は光学装置の正電荷輸送要素として供給されるポリマーの製造のためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0064】
PFBホモポリマーの製造
トルエン(100mL)中のPFBボロン酸(5.00g、7mmol)のピナコールジエステル(5.00g,7mmol)及びジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(25mg)溶液を窒素により脱ガスした。1時間後、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(24mL)が反応混合物中に加えられ、縣濁液が120℃まで加熱された。18時間後、反応物はブロモベンゼンにより末端がキャップ化された。反応混合物は、メタノール中に注がれ、ポリマーを沈殿させた。この沈殿物はろ過され、乾燥され、6.3gのポリマー(Mn23,000)を得た。
【実施例2】
【0065】
TFB−PFBコポリマーの製造
PFBの代わりにTFBが使用される点以外実施例1と同様のプロセスが、下記の図のように実施された。
【0066】
【化32】

【実施例3】
【0067】
光学装置
好適な装置が図1に示されている。アノード2は、ガラス又はプラスチック基板1条の透明なインジウム−錫酸層を有する。アノード2層は、厚さ1000〜2000Å、通常1500Åを有する。カソード5は厚さ約1500ÅのCa層である。電極間には、1000Åまでの厚さを有する発光層4がある。発光層4は、結合された発光要素及び正孔輸送要素として、0.5から100重量%の本発明のポリマー並びに残部正孔及び/又は電子輸送材料を含有する。本発明のポリマーは、例えば、TFB−PFB規則的代替コポリマーであり得る。
【0068】
【化33】

【0069】
【化34】

有利には、この装置は厚さ1000ÅのPEDOTの正孔輸送材料層3を含む。層6は、好適な厚さのカプセル層である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】光学装置の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 プラスチック基板
2 アノード
3 正孔輸送層
4 発光層
5 カソード
6 カプセル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)を有する第1の繰返し単位を含有する線状ポリマーを製造する方法であって、
【化1】

この第1繰返し単位は、置換され又は置換されない。この式において、xは0又は1であり、各Arは同じか異なり、独立して置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基であり、並びに、R及びR’はそれぞれ水素又は置換基であり、第2繰り返し単位は第1繰返し単位とは同じか異なり、置換され又は置換されないアリール又はヘテロアリール基であり、次の反応混合物を重合するステップを含む。
(a)それぞれ、第1繰返し単位を含有し、かつ2つの反応性ボロン誘導基を有する複数の第1モノマー、並びに、それぞれ、第2繰返し単位を有し、かつ少なくとも2つの反応性ハロゲン化物配位基を有する複数の第2モノマー、又は
(b)それぞれ、第1繰返し単位を含有し、1つの反応性ハロゲン化物配位基及び1つの反応性ボロン誘導基及び複数の第2モノマーを含有する複数の第1モノマー、並びに、それぞれ、第2繰返し単位を有し、かつ1つの反応性ハロゲン化物配位基及び反応性ボロン誘導基を有する複数の第2モノマー、
ここで、反応混合物は、塩基及びモノマーの重合の触媒に必要な量の触媒を含有する。
【請求項2】
第1の繰返し単位が第2の繰返し単位と同じであり、各第1モノマーが第2モノマーと同じであり、次の一般式(10)を有し、前記反応混合物(b)を使用する請求項1に記載の方法。
【化2】

この式において、Eは、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基からなる群から選択される反応性ボロン誘導基であり、E’は、反応性ハロゲン化物配位基であり、第1繰返し単位は請求項1で定義される。
【請求項3】
各第1モノマーが次の一般式(2)を有する前記反応混合物(a)を使用する請求項1に記載の線状ポリマーを製造する方法。
【化3】

この式において、各Eは、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基からなる群から選択される反応性ボロン誘導基である。
【請求項4】
ポリマーが次の一般式(4)を有するポリマーを含むように、各第2モノマーが次の一般式(3)を有する請求項3に記載の方法。
【化4】

【化5】

この式において、各E’は、反応性ハロゲン化物配位基である。
【請求項5】
第1繰返し単位が第2繰返し単位と同じである請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
第1繰返し単位が第2繰返し単位と異なる請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
第1繰返し単位が次の一般式(5)を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【化6】

この第1繰返し単位は置換され又は置換されない。この式において、xは0又は1であり、Arは同じか異なり、独立して請求項1で定義されるArと同じである。
【請求項8】
少なくとも1つのAr基が置換され又は置換されないフェニル、ビフェニル又はフルオレンン基からなる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1繰返し単位が次の一般式(6)を有する請求項8に記載の方法。
【化7】

これは、さらに置換され又は置換されず、Xは水素又は置換基である。
【請求項10】
繰返し単位が次の一般式(7)を有する請求項8に記載の方法。
【化8】

これは、さらに置換され又は置換されず、この式において、X’及びYは、それぞれ独立して水素又は置換基であり、Ar’は、フェニル、ビフェニル又はフルオレン基である。
【請求項11】
X’及びYが同じか異なり、各X,X’及びYは、アルキル、アルコキシ、カルボキシアルキル、ハロゲン化物、シアノ、アリール及びヘテロアリール基から独立して選択される
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
第2繰返し単位が請求項7ないし11のいずれかに記載される第1繰返し単位を定義する一般式を有する請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載される方法によって得られるポリマー。
【請求項14】
ポリマーがホモポリマー又は規則的代替コポリマーである請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
請求項4に記載される方法によって得られる線状の規則的代替コポリマーにおいて、第1繰返し単位が請求項1又は7ないし11のいずれかで定義され、及び第2繰返し単位が請求項12で定義されるコポリマー。
【請求項16】
次の一般式(8)を有する請求項15に記載の線状の代替コポリマー。
【化9】

これは、さらに置換され又は置換されず、ここでnは少なくとも2であり、Ar’、X,X’及びYは請求項9ないし11のいずれかで定義される。
【請求項17】
次の一般式(9)を有する請求項16に記載の線状の代替コポリマー。
【化10】

これは、さらに置換され、又は置換されず、ここでnは少なくとも2であり、X,X’及びYはC1-10アルキル基又はC1−C10アルコキシ基からなる群から独立して選択される

【請求項18】
平均分子量が10,000〜106の範囲にある請求項15ないし17のいずれかに記載
の線状代替コポリマー。
【請求項19】
次の一般式(11)又は(12)を有する線状のポリマーを製造するのに適したモノマー。
【化11】

【化12】

ここで、E及びE’は、請求項2で定義され、Ar及びxは請求項1又は7ないし11のいずれかで定義され、ただし、次のモノマーは除かれる。
【化13】

【請求項20】
請求項13ないし18のいずれかに記載のポリマーを光学装置の構成要素として使用する方法。
【請求項21】
光学装置において光を生成するために、正電荷を輸送し及び/又は正電荷及び負電荷輸送体を受領し結合するために請求項20に記載のポリマーを使用する方法。
【請求項22】
光学装置が電子冷光放射装置である請求項20又は21に記載のポリマーの使用方法。
【請求項23】
請求項13ないし18のいずれかで定義されるポリマーからなる薄膜。
【請求項24】
請求項13ないし18のいずれかで定義されるポリマーからなる被覆層。
【請求項25】
請求項13ないし18のいずれかで定義されるポリマーからなる混合物を含む組成物。
【請求項26】
混合物が1又は2のさらなるポリマーを含む請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
基板及び基板上に支持される請求項13ないし18のいずれかに記載のポリマーを含む光学装置又は構成要素。
【請求項28】
光学装置が電子冷光放射装置からなる請求項27に記載の光学装置。
【請求項29】
冷光放射装置が次のものを含む請求項28に記載の光学装置。
正電荷輸送体を注入するための第1電荷注入層、
負電荷輸送体を注入するための第2電荷注入層、
光を生成するために正電荷及び負電荷を受領し結合するための発光構成要素並びに選択的に発光構成要素に正電荷を輸送するための正電荷輸送構成要素を含む第1及び第2電荷注入層の間に位置する発光層であって、ここで、発光層は、発光要素及び/又は選択的な正電荷輸送構成要素として請求項13ないし18のいずれかで定義されるポリマーを含む。
【請求項30】
ポリマーを製造するための一般式(11)又は(12)を有するモノマーの使用方法。
【化14】

【化15】

この式において、E及びE’は、請求項2で定義され、Ar及びxは請求項1又は7ないし11のいずれかで定義される。
【請求項31】
光学装置におけるポリマーの製造のための一般式(11)又は(12)を有するモノマーの使用方法。
【化16】

【化17】

この式において、E及びE’は請求項2で定義され、第1繰返し単位は光学装置におけるポリマーの製造のために1ないし7のいずれかで定義される。
【請求項32】
ポリマーが光学装置の発光構成要素及び/又は正電荷輸送構成要素として提供される請求項31に記載のモノマーの使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−19207(P2009−19207A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179260(P2008−179260)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【分割の表示】特願2003−507173(P2003−507173)の分割
【原出願日】平成14年6月20日(2002.6.20)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(304023640)
【出願人】(304023651)
【Fターム(参考)】