説明

置換チエノ[2,3−c]ピラゾール、これらの製造のための方法、これを含む組成物およびこの使用

式(I)の生成物〔R1はR2、NHCO(R2)、CH=CH−(R2)およびNH−R4を表し(R2はアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルを表す。);R3はアルキル、アルキル−アリール、アルキル−ヘテロアリール、−アリール、−ヘテロアリールを表し;R4はアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルを表し、これらの全ては場合により置換されている。〕;あらゆる異性体およびこれらの塩形態である前記の生成物;これらの調製;キナーゼタンパク質の阻害剤として作用する薬剤として;縮合複素環で置換されたヒドロキサメートの調製、これらの調製のための方法、これらを含有する組成物、ならびに薬剤としての、特に抗癌剤としてのこれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、置換チエノ[2,3−c]ピラゾール類、これらを調製するための方法、これらを含有する組成物、およびこれらの薬剤としての使用に関する。
【0002】
より詳細には、また第1の態様によれば、本発明は、抗癌剤として有用な置換チエノ[2,3−c]ピラゾールに関する。
【背景技術】
【0003】
1H−チエノ[2,3−c]ピラゾールは、WO 04/013 146およびWO 03/101 968から公知である。これらの生成物は多数のプロテインキナーゼの阻害剤として提示されている。しかし、このような生成物の患者への投与は、これらの広範囲な作用のために相当な副作用を生じさせる可能性がある。従って、選択されたタンパク質、特にキナーゼの特定の阻害剤の製造が望ましい。
【発明の開示】
【0004】
予想に反して、置換1H−チエノ[2,3−c]ピラゾールにより、キナーゼAurora2(AuroraA)の、および腫瘍学において有用な特定の他のキナーゼの阻害剤を得ることが可能であることが見出された。
【0005】
従って本発明の一対象は、下記一般式(I):
【0006】
【化10】

〔式中:
(i)R1は独立してR2、NHCO(R2)、−CH=CH−(R2)、NH−R4からなる群から選択され、R2は独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
(ii)R3は独立して−(C1−C6)アルキル、−(C1−C6)アルキルアリール、−(C1−C6)アルキルヘテロアリール、−アリール、−ヘテロアリールからなる群から選択され;
(iii)R4はアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルを表し、
基R2、R3およびR4は、同一または異なっていてよく、ハロゲン原子および以下の基:ヒドロキシル、アルコキシ、シクロアルキル、NH2、NHAlk、N(Alk)2、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロシクロアルキルおよびフェニルから選択される1個以上の基(この基は、同一または異なっていてよく、それ自体、ハロゲン原子およびヒドロキシル、NH2、アルコキシ、アルキルおよびヒドロキシアルキル基から選択される1個以上の基で場合により置換される。)で場合により置換され;
但し、R3が−(C1−C6)アルキルの場合、R1は、アリール、ヘテロアリールまたは−CH=CH−(R2)ではなく、この場合のR2はアリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。〕に相当することを特徴とし、前記式(I)の生成物は、任意の可能なラセミ体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態であり、無機酸および有機酸との、または無機塩基および有機塩基との前記式(I)の生成物の付加塩でもある、生成物である。
【0007】
これらの生成物は、下記一般式(I):
【0008】
【化11】

〔式中、
(i)R1は独立してR2、NHCO(R2)/−CH=CH−(R2)からなる群から選択され、R2は独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
(ii)R3は独立して−(C1−C6)アルキル、−(C1−C6)アルキルアリール、−(C1−C6)アルキルヘテロアリール、−アリール、−ヘテロアリールからなる群から選択され;
但し、R3が−(C1−C6)アルキルの場合、R1は、アリール、ヘテロアリールまたは−CH=CH−(R2)ではなく、この場合のR2はアリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。〕に相当する。
【0009】
従って、本発明の対象は、上に定義されているように、R1がアリール、ヘテロアリール、NHCO(R2)およびNH−R4から選択され、R2が独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、R4がアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルを表すことを特徴とする、式(I)の生成物である。
【0010】
従って、本発明の対象は、上に定義されているように、R1がNH−R4を表し、R4がアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルを表すことを特徴とする、式(I)の生成物である。
【0011】
式(I)の生成物および下記において、
用語「アルキル基」とは、12個までの炭素原子を含有する直鎖および分枝鎖基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシル基を意味し、さらにこれらの直鎖または分枝鎖の位置異性体も意味する;
用語「ハロゲン原子」とは、塩素、臭素、ヨウ素またはフッ素原子を意味し、好ましくは、塩素、臭素またはフッ素原子を意味する;
用語「シクロアルキル基」とは、3から10個の炭素原子を含有する飽和炭素環基を意味し、従って、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基ならびに最も特にシクロペンチルおよびシクロヘキシル基を意味する;
従って、用語「ヘテロシクロアルキル基」は、1以上のヘテロ原子(これは同一であっても異なっていてもよく、酸素、窒素および硫黄原子から選択される。)で遮られている単環式または二環式の炭素環基を意味し、言及され得る例としては、モルホリニル、チオモルホリニル、アジリジル、アゼチジル、ピペラジニル、ピペリジル、ホモピペラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、ヘキサヒドロピランおよびオキソジヒドロピリダジニル基が挙げられ、これらの基は全て場合により置換されている;
用語「アリール」および「ヘテロアリール」とは、不飽和または部分的に不飽和の炭素環式または、それぞれ、複素環式、単環式もしくは二環式基を意味し、これらは最大12員であり、場合により−C(O)環員を含み、複素環式基はO、NおよびSから選択される1以上の同一または異なるヘテロ原子を含み、Nは、適切な場合、場合により置換されている;
従って用語「アリール基」とは4から12員の単環式または二環式基、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インデニル、フルオレニルおよびアントラセニル基、より特にフェニルおよびナフチル基、さらにより特にフェニル基を意味する。注意されるべきは、−C(O)環員を含む炭素環基は、例えば、テトラロン基である;
従って、用語「ヘテロアリール基」とは、4から12員の単環式または二環式基を意味し、単環式ヘテロアリール基は、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、チオキソラン、チオオキサン(thiooxane)、チエニル(例えば2−チエニルおよび3−チエニル)、フリル(例えば2−フリルもしくは3−フリル)、ピラニル、ピロリル、ピロリニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル(例えば2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジアゾリル、チアジアゾリル、チアトリアゾリル、オキサジアゾリル、イソキサゾリル(例えば3−もしくは4−イソキサゾリル)、フラザニルおよび遊離のテトラゾリル基またはテトラゾリル基の塩(これらの基は場合により置換されている。)であり、これらの中でもより特に、チエニル(例えば2−チエニルおよび3−チエニル)、フリル(例えば2−フリル)、ピロリル、ピロリニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジルおよびピリダジニル基(これらの全ての基は場合により置換されている。)である;二環式ヘテロアリール基は、例えば、ベンゾチエニル、例えば3−ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、ジヒドロキノリル、キノロン、テトラロン、アダマンチル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ジヒドロベンゾフラン、エチレンジオキシフェニル、チアントレニル、ベンゾピロリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、チオナフチル、インドリル、アザインドリル、インダゾリル、プリニル、チエノピラゾリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロシクロペンタピラゾリル、ジヒドロフロピラゾリル、テトラヒドロピロロピラゾリル、オキソテトラヒドロピロロピラゾリル、テトラヒドロピラノピラゾリル、テトラヒドロピリジノピラゾリルまたはオキソジヒドロピリジノピラゾリル基(これらの全ての基は場合により置換されている。)である。
【0012】
式(I)の生成物のカルボキシル基は、当業者に公知の種々の基で塩にしてよくまたはエステル化してよく、この中でも、言及され得るものは、例えば、
塩にされた化合物の中では、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムまたはアンモニウムなどの無機塩基、または、例えば、メチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチル−アミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ベンジルアミン、プロカイン、リシン、アルギニン、ヒスチジンまたはN−メチルグルカミンなどの有機塩基であり、
エステル化化合物の中では、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基を形成するアルキル基(これらのアルキル基は、例えば、ハロゲン原子およびヒドロキシル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アミノまたはアリール基から選択される基で、例えばクロロメチル、ヒドロキシプロピル、メトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、メチルチオメチル、ジメチルアミノ−エチル、ベンジルおよびフェネチル基から選択される基で、場合により置換されていてよい。)である。
【0013】
式(I)の生成物の無機酸または有機酸での付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、アルキルモノスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸またはプロパンスルホン酸)、アルキルジスルホン酸(例えば、メタンジスルホン酸またはα,β−エタンジスルホン酸)、アリールモノスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸)およびアリールジスルホン酸を用いて形成された塩であってよい。
【0014】
立体異性は、その広い意味において、同一の構造式を有するが、特にこの置換基がアキシアル位またはエクアトリアル位にあり得る一置換のシクロヘキサンにおいてなど、およびエタン誘導体の種々の可能性のある回転構造においてなど、この種々の基が空間中で異なって配置されている化合物の異性として定義され得ることが想起され得る。しかし、二重結合上でも、環上でも、固定された置換基の種々の空間的な配置に起因する別の種類の立体異性があり、これは多くの場合幾何異性またはシス−トランス異性と呼ばれる。用語「立体異性体」は、本特許出願書においてこの最も広い意味で用いられ、従って上に示した全ての化合物に関係する。アリールおよびヘテロアリール基は特に、フェニル、ピリジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリルおよびピロリルを表す。
【0015】
好ましいR1は、アリール;ヘテロアリール;−CH=CH−(R2)(式中、R2はアリールおよびヘテロアリールから選択される);およびNHCO(R2)から選択され得る。
【0016】
好ましいR3は、有利にはアリールおよびヘテロアリールから選択され、好ましくは、フェニル、ピリジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリルおよびピロリルから選択される。
【0017】
本発明の第1の態様に従う本発明の実例となる生成物は、以下から選択され得る:
3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)、
3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)、および
3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)。
【0018】
本発明に従う生成物は、アキラル形態、またはラセミ形態、または1種類の立体異性体が富化された形態、または1種類の鏡像異性体が富化された形態でありおよび場合により塩されている。
【0019】
第2の態様によれば、本発明の目的は、本発明の第1の態様に従う生成物を調製するための方法である。
【0020】
特に、本発明は、下記一般式(I):
【0021】
【化12】

〔式中、R1はNHCO(R2)であり、R2およびR3は、上に定義されているとおりである。〕の生成物を調製するための方法に関し、一般式(I)の前記生成物は、
(i)カップリング剤または酸塩化物もしくは無水物などのカルボン酸誘導体の存在下、三級アミンまたはアルカリ金属炭酸塩などの塩基の存在下、
(i−a)下記一般式(X)
【0022】
【化13】

〔式中、R3は上に定義されているとおりであり、PGはチエノ[2,3−c]ピラゾール核の環内の遊離NH官能基の保護基である。〕のアミンと、
(i−b)カルボン酸R2−COOHとの結合;および、次いで、
(ii)PGの切断
によって得られる。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、一般式(X)のアミンは、一般式(IX)
【0024】
【化14】

〔式中、R3は上に定義されるとおりである。〕の生成物のピラゾール核のNH官能基の保護により得られ、一般式(IX)の生成物は、
(i)トリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウムの存在下でR3ONHと、
(ii)一般式(XIV)の生成物:
【0025】
【化15】

〔式中、アルキルは(C1−C6)アルキルである。〕
との反応によって得られる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、下記一般式(Ia)または(IIIa):
【0027】
【化16】

〔式中、R2およびR3は上に定義されているとおりであり、アルキルは(C1−C6)アルキルである。〕の生成物を調製する方法にも関し、一般式(Ia)または(IIIa)の前記生成物は、以下の段階:
(i) 銅(I)ヨウ化物などの触媒、
トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサン、または、好ましくはN,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタンなどのアミン、および
リン酸三カリウムまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下、
(i−a)下記一般式(V)または(IIa):
【0028】
【化17】

〔式中、R3およびアルキルは上に定義されているとおりであり、PGはチエノ[2,3−c]ピラゾール核の環内の遊離NH官能基の保護基である。〕の生成物と、
(i−b)一般式(R2)CONHの生成物との結合、ならびに
(ii)PGの切断、
によって得られる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、本発明はまた、下記の一般式(IIa):
【0030】
【化18】

〔式中、アルキルおよびPGは上に定義されているとおりである。〕の生成物を調製するための方法であり、一般式(VIIIa):
【0031】
【化19】

の生成物を、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、メルカプト酢酸アルキルであるアルキル−OCO−CH−SHにより環化させる段階を含む方法にも関する。
【0032】
一般式(VIIIa)の生成物は、有利に、(i)3,5−ジブロモ−4−ホルミルピラゾール(VIII)が得られる、3,4,5−トリブロモピラゾールのホルミル化次いで(ii)(VIII)の環内のアミン官能基の保護によって得られる。
【0033】
好ましい保護反応は、エチルビニルエーテルおよび触媒量の酸(例えば塩酸)の存在下で行われ得る。
【0034】
また、本発明の対象は、薬剤としての、上記に定義されている式(I)の生成物、ならびに、医薬的に許容される無機酸および有機酸とのまたは医薬的に許容される無機塩基および有機塩基との前記式(I)の生成物の付加塩でもある。
【0035】
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様の生成物を、医薬的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物に関する。
【0036】
第4の態様によれば、本発明の対象は、第1の態様の生成物の、好ましくは、Aurora2、CDK1、CDK2、CDK4、FAK、KDR、PLK1およびTie2から選択されるプロテインキナーゼの阻害剤としての使用である。
【0037】
従って、本発明の目的は、本発明の第1の態様の生成物の、好ましくは、Aurora2、CDK1、CDK2、CDK4、FAK、KDRおよびTie2から選択されるプロテインキナーゼの阻害剤としての使用である。
【0038】
特に好ましいキナーゼは、Aurora2である。
【0039】
特に好ましいキナーゼは、PLK1である。
【0040】
第5の態様によれば、本発明の対象は、本発明の第1の態様の生成物の、病態、特に癌の治療に有用である薬剤の製造のための使用である。
【0041】
式(I)の化合物は、以下の一般的合成スキーム:
【0042】
【化20】

に従って一般式(II)の化合物から調製され得る。
【0043】
反応(a)および(d)は、不活性溶媒(トルエン、アルコール(好ましくはエタノール)および水の混合物などまたはジメチルホルムアミドなど)中、R1B(OR’)の種類のボロン酸の誘導体(R1は上記と同じ意味を有する。)、パラジウム(0)誘導体(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)または1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)など)、塩基(炭酸ナトリウムまたは炭酸セシウムなど)の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、A.Suzuki,Pure Appl.Chem.,1991,63,419に記載の一般法により、あるいは、不活性溶媒(ジメチルホルムアミドまたはジオキサンなど)中、Sn(R1)の種類の誘導体(R1は上記と同じ意味を有する。)、パラジウム誘導体(ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)など)の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、J.Stille,Angew.Chem.Int.Ed.,1986,25,508に記載の一般法により行うことができる。あるいは、R1がNHCO(R2)(R2は上記と同じ意味を有する。)を表す場合、この反応は、ジオキサンなどの不活性溶媒中、(R2)CONHの種類のアミド、銅(I)ヨウ化物、アミン(トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサンまたは−これも本発明の一態様である−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタンなど)および塩基(リン酸三カリウムまたは炭酸セシウムなど)の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、S.L.Buchwald et al.,J.Am.Chem.Soc,2002,124,7421;J.Am.Chem.Soc,2001,123,7727に記載の一般法に従って行うことができる。
【0044】
または、R1がNHR4(R4は上記と同じ意味を有する。)を表す場合、反応(a)および(d)は、不活性溶媒、例えばジオキサン中、R4NH2の種類のアミン、銅(I)ヨウ化物および塩基(例えば炭酸セシウム)の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、当業者に公知の一般的な方法に従って行うことができる。
【0045】
または、R1がNHR4(R4は上記と同じ意味を有する。)を表す場合、反応(a)および(d)は、通常の芳香族求核置換(ArNS)法に従って行ってもよい。
【0046】
反応(b)および(c)は、トルエンなどの溶媒中、R3ONHの種類の誘導体(R3は上記と同じ意味を有する。)およびトリメチルアルミニウムの存在下、0℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0047】
反応(e)は、一般に、残りの分子に影響を及ぼさない一般的な方法に従って、特にT.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis(2nd edition),A.Wiley−Interscience Publication(1991),or by McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press(1973)に記載の方法またはBradford P.MundyおよびMichael G.Ellerd,Name Reactions and Reagents in Organic Synthesis,A.Wiley−Interscience Publication(1988)に記載の方法を適用して行うことができる。反応(e)は、例えば、塩基性媒質中で、テトラヒドロフランと、水およびアルコール(好ましくは、エタノールもしくはメタノール)との混合物、またはアルコール単独(好ましくは、エタノールもしくはメタノール)との混合物などの不活性溶媒中、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、好ましくは、反応媒質の環流温度にて行うことができる。
【0048】
反応(f)は、好ましくは、R3ONHの種類の誘導体(R3は上記と同じ意味を有する。)およびO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TBTU)などの種類の活性化剤の存在下、不活性溶媒(例えばアセトニトリルまたはジメチルホルムアミド)中、塩基(例えばトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン)の存在下、0℃から媒質の沸点の間の温度にて行うことができ、または、周知のペプチド化学の合成手法(M.Bodanszky et al.,Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,New York,NY,1984,9−58)またはアミドの形成のための方法に従って行うことができる。または、反応(f)は、一般に、残りの分子に影響を及ぼさない一般的な方法に従って、特にBradford P.MundyおよびMichael G.Ellerd,Name Reactions and Reagents in Organic Synthesis,A.Wiley−Interscience Publication(1988)に記載の方法を適用して行うことができる。例えば、反応(f)は、不活性雰囲気下(例えば窒素下またはアルゴン下)、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、塩化オキサリルの存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、好ましくは20℃前後の温度にて、または、クロロホルムなどの不活性溶媒中、塩化スルフィニルの存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、好ましくは反応媒質の還流温度にて行い、その後、ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中、R3ONHの種類の誘導体(R3は上記と同じ意味を有する。)の存在下およびトリエチルアミンまたはピリジンなどの塩基の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度での反応により、行うことができる。
【0049】
脱保護反応(g)は、テトラヒドロフランまたは水などの溶媒中、塩酸などの鉱酸の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0050】
一般式(II)の化合物は、3,4,5−トリブロモピラゾールから、以下の一般的合成スキーム:
【0051】
【化21】

に従って調製することができる。
【0052】
反応(a)は、n−ブチルリチウムなどの有機リチウム試薬の存在下、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどの不化性溶媒中、ジメチルホルムアミドの存在下で、−78℃から室温の間の温度にて行うことができる。
【0053】
保護反応(b)は、エチルビニルエーテルの存在下、トルエンなどの不活性溶媒中、触媒量の酸(例えば塩酸)の存在下で、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うか、またはアミン官能基を保護するための周知の方法(T.W.Greene et al.in Protective Groups in Organic Synthesis,third edition,1999,Wiley−Interscience)に従って行うことができる。
【0054】
反応(c)は、メルカプト酢酸エチルの存在下、アルコール(好ましくは、エタノール)などの不活性溶媒中、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0055】
または、R1がNHCO(R2)(R2は上記と同じ意味を有する。)を表す場合、式(I)の化合物は、一般式(IX)の化合物から、以下の一般的合成スキーム:
【0056】
【化22】

に従って調製することができる。
【0057】
保護反応(a)は、(Pがtert−ブチルオキシカルボニル基を表す場合)二炭酸ジ−tert−ブチルを用いて、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの塩基の存在下、および不活性溶媒(例えばジクロロメタン)中、N,N−ジメチルアミノピリジンの場合により存在下、−10℃から反応媒質の沸点の温度にて行うか、または(Pが1−エトキシエチル基を表す場合)エチルビニルエーテルの存在下、トルエンなどの不活性溶媒中、触媒量の酸、例えば塩酸の存在下に、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うか、またはアミン官能基を保護するための周知の方法(T.W.Greene et al.in Protective Groups in Organic Synthesis,third edition,1999,Wiley−Interscience)に従って行うことができる。
【0058】
反応(b)は、
酸塩化物(R2)C(O)Cl(R2は上記と同じ意味を有する。)を用いて、不活性溶媒(例えばジメチルホルムアミドもしくはテトラヒドロフラン)または有機塩基自体中、塩基(例えばトリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム)の存在下、0℃から反応媒質の沸点の間の温度にて(G.Daidone et al.,Heterocycles,1996,43(11),2385);
無水物((R2)CO)O(R2は上記と同じ意味を有する。)を用いて、不活性溶媒(例えばジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランもしくはジクロロメタン)中または無水物自体中、0℃から反応媒質の沸点の間の温度にて(F.Albericio,Synth.Commun.,2001,31(2),225,G.Procter,Tetrahedron,1995,51(47),12837);
酸(R2)C(O)OH(R2は上記と同じ意味を有する。)を用いて、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)などの活性化剤の存在下、不活性溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中、塩基(例えば、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミン)の存在下、0℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、または、周知のペプチド化学の合成手法(M.Bodanszky et al.,Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,New York,NY,1984,9−58)またはアミドの形成のための方法に従って、
行うことができる。
【0059】
脱保護反応(c)は、(Pがtert−ブチルオキシカルボニル基を表す場合)ヨードトリメチルシランの存在下、または酸性媒質(例えば、トリフルオロ酢酸または塩酸(ジクロロメタンもしくはジオキサンなどの溶媒中の))中、または塩基性媒質(アルコール(好ましくはメタノール)などの溶媒中の炭酸カリウム)中、0℃から反応媒質の沸点の間の温度および場合によりマイクロ波照射にて、あるいは(Pが1−エトキシエチル基を表す場合)テトラヒドロフランまたは水などの溶媒中、塩酸などの無機酸の存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて、あるいはアミン官能基を脱保護するための周知の方法(T.W.Greene et al.in Protective Groups in Organic Synthesis,third edition,1999,Wiley−Interscience)にて、従って行うことができる。
【0060】
一般式(IX)の化合物は、3−アミノ−4−シアノ−5−メチルスルファニルチオフェン−2−カルボン酸エチルから、以下の一般的合成スキーム:
【0061】
【化23】

に従って調製することができる。
【0062】
反応(a)は、ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中、亜硝酸イソペンチルの存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0063】
酸化反応(b)は、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、3−クロロペルオキシ安息香酸の存在下、−20℃から室温の間の温度にて行うことができる。
【0064】
反応(c)は、アルコール(好ましくはエタノール)などの不活性溶媒中、ヒドラジンの存在下、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0065】
環化反応(d)は、アルコール(好ましくはエタノール)などの不活性溶媒中、濃塩酸または濃硫酸などの無機酸の存在下に、20℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0066】
反応(e)は、R3ONHの種類の生成物(R3は上記と同じ意味を有する。)の存在下およびトリメチルアルミニウムの存在下、トルエンなどの溶媒中、0℃から反応媒質の沸点の間の温度にて行うことができる。
【0067】
当業者には、既に説明した本発明の方法を行うためには、副反応を避けるためにアミンおよびカルボキシル官能基の保護基を導入することが必要であり得ることが当然理解される。これらの基は、残りの分子に影響を及ぼすことなく除去できる基である。言及し得るアミン官能基の保護基の例としては、塩酸などの無鉱酸(例えばテトラヒドロフランまたは水などの溶媒中の)の存在下に再生することができる1−エトキシエチル、ヨードトリメチルシランを用いるかまたは酸性媒質(例えばトリフルオロ酢酸または塩酸(ジクロロメタンもしくはジオキサンなどの溶媒中の))中で再生することができるtert−ブチルカルバミン酸塩、水素の存在下またはチオール(例えばベンゼンチオール)とルイス酸(例えば三フッ化ホウ素エーテラート)の混合物の存在下で再生することができるカルバミン酸ベンジル、酸性媒質(例えば塩酸)中で再生することができるアセチル、酸性媒質(例えば塩酸)中で再生することができるベンゾイル、例えばテトラブチルフッ化アンモニウムの存在下または酸性媒質(例えば塩酸)中で再生することができる2−トリメチルシラニルエトキシメチルが挙げられる。言及され得るカルボキシル官能基の保護基としては、T.W.Greene et al.in Protective Groups in Organic Synthesis,third edition,1999,Wiley−Interscienceに記載の方法によって再生することができるエステル(例えばメトキシメチルエステル、ベンジルエステルまたはメチルエステル)が挙げられる。
【0068】
式(I)の化合物を単離し、通常の公知の方法、例えば結晶化、クロマトグラフィーまたは抽出によって精製することができる。
【0069】
式(I)の化合物の鏡像異性体およびジアステレオ異性体も、本発明の一部を成す。
【0070】
塩基性残渣を含む式(I)の化合物は、アルコール、ケトン、エーテルまたは塩素系溶剤などの有機溶媒中、例えば酸の作用によって、無機酸または有機酸との付加塩に場合により変換してよい。
【0071】
酸性残基を含む式(I)の化合物は、それ自体公知の方法に従って、金属塩または窒素含有塩基との付加塩に場合により変換してよい。これらの塩は、溶媒中の式(I)の化合物での金属塩基(例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基)、アンモニア、アミンまたはアミン塩の作用によって得ることができる。形成された塩は、通常の方法で分離される。
【0072】
これらの塩もまた、本発明の一部である。
【0073】
本発明の生成物が少なくとも1つの遊離塩基性官能基を含む場合、前記生成物と無機酸または有機酸との間の反応により医薬的に許容される塩を調製することができる。医薬的に許容される塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アクリル酸塩、4−ヒドロキシ酪酸塩、カプリル酸塩、カプロン酸塩、デカン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、ピメリン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、サリチル酸塩、桂皮酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルクロン酸塩およびガラクツロン酸塩が挙げられる。
【0074】
本発明の生成物が少なくとも1つの遊離酸性官能基を含む場合、前記生成物と無機塩基または有機塩基との間の反応により医薬的に許容される塩を調製することができる。医薬的に許容される塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばLi、Na、K、MgまたはCaの陽イオンの水酸化物、および塩基性アミン化合物、例えばアンモニア、アルギニン、ヒスチジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンまたはトリエチルアミンが挙げられる。
【0075】
本発明は、以下の実施例でも説明され、この実施例は本発明の例示として示される。
【0076】
LC/MS分析を、HP 1100機と接続されたLCTモデルMicromass機で行った。生成物の存在度を、波長範囲200から600nmの間でHP G1315Aダイオードアレイ検出器、およびSedex 65光散乱検出器を用いて測定した。180から800の範囲で質量スペクトルを得た。Micromass MassLynxソフトウェアを用いてデータを解析した。分離は、0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有する水中、0.05%(v/v)のTFAを含有する5%から90%のアセトニトリルの直線勾配で流速1ml/分で3.5分間にわたって溶出するHypersil BDS C18、3μm(50×4.6mm)カラムで行った。合計解析時間はカラムの再平衡化時間を含めて7分である。
【0077】
分取LC−MS精製は、一般に、Watersモデル600勾配ポンプ、Watersモデル515再生ポンプ、Waters Reagent Manager希釈ポンプ、Watersモデル2700自動注入装置、2個のRheodyneモデルLabProバルブ、Watersモデル996ダイオードアレイ検出器、WatersモデルZMD質量分析計およびGilsonモデル204フラクションコレクターからなるWaters FractionsLynxシステムを用いて行った。このシステムをWaters FractionLynxソフトウェアで制御した。2つのWaters Symmetryカラム(C18、5μM、19×50mm、カタログ参照番号186000210)で交互に分離を行い、一方のカラムは0.07%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含有する95/5(v/v)水/アセトニトリル混合物で再生し、もう一方のカラムで分離を行った。0.07%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含有する水中、0.07%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含有する5%から95%のアセトニトリルの直線勾配を用いて流速10ml/分でカラムの溶出を行った。分離カラム出口にて、溶出物の1000分の1を、流速0.5ml/分にてメチルアルコールで希釈するLC Packing Accurateにより分離し、75%をダイオードアレイ検出器、さらに残りの25%を質量分析計という割合で検出器に送った。残りの溶出物(999/1000)はフラクションコレクターへ送り、そこで予期された生成物がFractionLynxソフトウェアで検出されないならば、溶剤を廃棄した。予期された生成物の分子式はFractionLynxソフトウェアへ供給され、このソフトウェアは、検出された質量シグナルがイオン[M+H]および/または[M+Na]に該当した場合に、生成物の回収を引き起こす。特定の場合において、LC/MS分析結果に応じて、[M+2H]++に該当する強いイオンが検出された場合、計算された分子量の半分(MW/2)に該当する値もFractionLynxソフトウェアに供給される。これらの条件下では、イオンの質量シグナル[M+2H]++および/または[M+Na+H]++が検出された場合も回収が引き起こされる。
【実施例1】
【0078】
3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド):
【0079】
【化24】

【0080】
0.165g(0.37mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)を、攪拌しながら20℃前後の温度にて20cmのテトラヒドロフランに溶かし、これに18cm(1.8mmol)の0.1N塩酸溶液を20℃にて滴下する。反応混合物を20℃前後の温度にて15時間攪拌し、その後、20℃前後の温度にて1.8cm(1.8mmol)の1N塩酸溶液を滴下する。反応混合物を20℃前後の温度にて15時間攪拌し、次に40℃にて4時間維持する。2cm(2mmol)の1N塩酸溶液を次に20℃前後の温度にて流し入れ、反応混合物を40℃前後の温度にて15時間攪拌する。反応媒質を、減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固して残渣を得、これを30cmの水に溶かし、2cm(2mmol)の0.1N水酸化ナトリウム溶液で塩基性化した。不溶性物質が生じ、これを50cmのジクロロメタンに溶かす。不溶性物質を濾紙で濾去した後、0.079gの黄色の個体が得られ、これをシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する[(0.04から0.06mm)、溶出剤:95/5 ジクロロメタン/メタノール(容量比)]。予期された生成物を含有する画分を減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固した後、0.026gの3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が黄色の固体の形態で得られ(DAD−TIC分析によるLC/MS純度:40%)、これを分取LC/MSにより精製する。予期された生成物を含有する画分を減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固した後、0.003gの3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が、171℃で溶ける黄色の固体の形態で得られる(DAD−TIC分析によるLC/MS純度:77%)。LC/MS分析:質量:M+=374、t(保持時間)=3.67分。
【0081】
1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)は、以下の方法で調製することができる。
【0082】
0.35g(0.914mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸を、アルゴン下、20℃前後の温度にて、15cmのアセトニトリルに攪拌しながら溶かし、これに0.266g(1.83mmol)のO−フェニルヒドロキシルアミン塩酸塩および0.77cm(5.5mmol)のトリエチルアミンを添加する。反応混合物を20℃前後の温度にて30分間攪拌し、0.29g(0.9mmol)のO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TBTU)を次に添加し、混合物を20℃前後の温度にて15時間攪拌する。次に、3cmのジメチルホルムアミドおよび1cm(7.13mmol)のトリエチルアミンを流し入れ、反応混合物を20℃前後の温度にて15時間攪拌し、次に100cmのジクロロメタンおよび50cmの水に溶かす。相を沈降させて有機層を析出し、飽和炭酸水素カリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。0.47gの糊状の褐色の油状物質が、このようにして得られ、これをシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する[(0.04から0.06mm)、溶出剤:98/2 ジクロロメタン/メタノール(容量比)]。予期された生成物を含有する画分を減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固した後、0.165gの1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が、95℃で溶ける黄色の泡沫の形態で得られる。
【0083】
1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸は、以下の方法で調製することができる。
【0084】
0.53g(1.38mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルを、20℃前後の温度にて40cmのエタノールに攪拌しながら溶かす。2.8cm(2.8mmol)の1N水酸化ナトリウム溶液を次に流し入れ、得られる溶液を次に2時間還流する。反応媒質を次に減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固し、残渣を30cmの水に溶かし、これに0.17gのクエン酸を添加する。混合物を50cmのジクロロメタンで2回抽出し、pH2になるまでクエン酸を添加して水相の酸性化を継続し、次に50cmのジクロロメタンで2回の抽出を続ける。種々の有機相を合わせ、乾燥させ、次に減圧下(2.7kPa)で蒸発乾固させる。0.46gの1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸が、このようにして204℃で溶ける黄色の固体の形態で得られる。
【0085】
1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、以下の方法で調製することができる。
【0086】
1g(2.88mmol)の3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルを、20℃前後の温度にて、20cmのジメチルホルムアミドに攪拌しながら溶かし、これをアルゴンで散布することにより脱気する。1g(3.83mmol)のN−Boc−インドール−2−ボロン酸、0.94g(2.88mmol)の炭酸セシウムおよび0.2g(0.27mmol)の1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセンジクロロパラジウム(II)を、次に添加し、脱気を5分間継続し、次に混合物を15時間還流する。反応媒質を次に減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固し、残渣を100cmの水および200cmのジクロロメタンに溶かす。混合物をセライト(登録商標)で濾過し、静置して相を分離する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固すると1.8gの黒色の油状物質が得られ、これをシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する[(20から45μm)、溶出剤:90/10 シクロヘキサン/酢酸エチル(容量比)]。予期された生成物を含有する画分を減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固した後、0.147gの1−(1−エトキシエチル)−3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルが、糊状の黄色の生成物の形態で得られる。H NMRスペクトル(300MHz,(CDSO−d,δ(ppm)):1.16(t,J=7Hz:3H);1.37(t,J=7.5Hz:3H);1.68(d,J=6.5Hz:3H);3.44(mt:1H);3.64(mt:1H);4.38(q,J=7.5Hz:2H);5.85(q,J=6.5Hz:1H);7.04(分解されたt,J=7.5および1Hz:1H);7.15(分解されたt,J=7.5および1.5Hz:1H);7.20(d,J=1.5Hz:1H);7.47(幅広い d,J=7.5Hz:1H);7.59(幅広い d,J=7.5Hz:1H);8.38(s:1H);11.57(幅広い s:1H)。
【0087】
3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、以下の方法で調製することができる。
【0088】
1.19g(3.81mmol)の3,5−ジブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒドを、20℃前後の温度にて、アルゴン雰囲気下、50cmのエタノールに攪拌しながら導入し、その後0.4g(3.81mmol)の炭酸ナトリウムおよび0.42cm(3.81mmol)の2−メルカプト酢酸エチルを添加する。次に反応混合物を2時間還流し、減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。残渣を60cmの水および60cmのジクロロメタンに溶かし、静置して相を分離する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。1.17gの3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルが、このようにして結晶化すると、69℃で溶けるクリーム色の結晶となる、透明な黄色の油状物質の形態で得られる。
【0089】
3,5−ジブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒドは、以下の方法で調製することができる。
【0090】
1g(3.94mmol)の3,5−ジブロモ−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒド、1.5cm(16mmol)のエチルビニルエーテルおよび3滴の12N濃塩酸を、20℃前後の温度にて、30cmのトルエンに攪拌しながら導入する。反応混合物を20℃前後の温度にて15時間攪拌し、1.5cm(16mmol)のエチルビニルエーテルを次に流し入れ、20℃前後の温度にて攪拌を15時間継続する。次に反応混合物を20cmのトルエンで希釈し、30cmの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で2回洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固すると1.19gの3,5−ジブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒドが黄色の油状物質の形態で得られる。H NMRスペクトル(300MHz,(CDSO−d,δ(ppm)):1.10(t,J=7.5Hz:3H);1.64(d,J=6.5Hz:3H);3.31(mt:1H);3.51(mt:1H);5.88(q,J=6.5Hz:1H);9.73(s:1H)。
【0091】
3,5−ジブロモ−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒドは、以下の方法で調製することができる。
【0092】
81.7g(0.268mol)の3,4,5−トリブロモピラゾールを、20℃前後の温度にておよびアルゴン雰囲気下で1500cmのジエチルエーテルに攪拌しながら導入する。混合物を−78℃前後の温度まで冷却し、1.6mol/lの335cm(0.536mol)のn−ブチルリチウムを、次に3時間15分にわたり滴下する。反応混合物を−75℃前後の温度にて1.5時間攪拌し、その後、温度を−70℃より低く保ちながら100cm(1.34mol)のジメチルホルムアミドを滴下する。攪拌を−75℃前後の温度にて2時間継続し、次に20℃前後の温度にて15時間継続する。次に反応媒質を氷浴中で冷却し、1000cmの水を添加する。静置により相を分離した後、水相を500cmのジエチルエーテルおよび3回の500cmの酢酸エチルで抽出する。次に水相をクエン酸溶液でpH3(沈殿の形成が観察される)まで酸性化し、1000cmのジエチルエーテルで2回抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固し、得られた黄色の固体を300cmの水に溶かし、20℃前後の温度にて2時間攪拌する。次に、混合物を濾過し、固体を50cmの水で2回洗浄し、40℃前後の温度にて換気フード下で乾燥させた後、減圧下(2.7kPa)で乾燥させる。51.3gの3,5−ジブロモ−1H−ピラゾール−4−カルボキシアルデヒドが、このようにして、173℃で溶ける黄色の粉末の形態で得られる。
【実施例2】
【0093】
3−((E)−スチリル−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド:
【0094】
【化25】

【0095】
1.5cm(3.0mmol)の2N塩酸溶液を、0.083g(0.191mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)のテトラヒドロフラン5cm溶液に添加し、このようにして得られた溶液を25℃前後の温度にて48時間攪拌する。次に、反応媒質を40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固し、このようにして得られた残渣を分取LC−MSで精製する。予期された生成物を含有する画分を合わせ、40℃前後の温度にて減圧下(2kPa)で濃縮乾固する。残渣を20℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で乾燥させる。0.030gの3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が、このようにして142℃で溶ける灰白色の固体の形態で得られる。質量スペクトル(EI):m/z 361[M]、m/z 318およびm/z 94(ベースピーク)。
【0096】
1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)は、以下の方法で調製することができる。
【0097】
0.118g(1.17mmol)のトリエチルアミン、0.089g(0.61mmol)のO−フェニルヒドロキシルアミン塩酸塩、および次に0.197g(0.61mmol)のO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸を、10cmのアセトニトリル中の0.20g(0.58mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸を含有する溶液に連続して添加し、25℃前後の温度にてアルゴン下で攪拌する。反応媒質を20℃前後の温度にて24時間攪拌し、次に80℃前後の温度にて3.5時間加熱する。次に、反応媒質を20℃前後の温度まで冷却し、40cmのブラインおよび40cmの酢酸エチルを含有する混合物に投入し、静置して相を分離する。水相を40cmの酢酸エチルで2回抽出し、有機抽出物を合わせ、50cmの5N塩酸水溶液、50cmの水、40cmの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および次に50cmの水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。このようにして得られた残渣を、シクロヘキサン/酢酸エチル混合物(容量比75/25)で溶出する、40gのシリカゲル(20μm 球形)を含有するカートリッジでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。予期された生成物を含有する画分を合わせ、40℃前後の温度にて減圧下(2kPa)で濃縮乾固する。0.094gの1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が、このようにして赤色の固体の形態で得られる。質量スペクトル:EI:m/z 433[M]、m/z 339:433−PhO m/z 267(ベースピーク):339−C−OCH−CH m/z 94:PhO
【0098】
1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸は、以下の方法で調製することができる。
【0099】
2cmのエタノール、2cmの水および0.60g(10.8mmol)の水酸化カリウムを、連続して、2.0g(5.4mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルのテトラヒドロフラン15cm溶液に攪拌しながら添加する。反応媒質を85℃前後の温度にて5時間加熱し、次に25℃前後の温度まで冷却し、40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固した。残渣を150cmの水に溶かし、100cmのジエチルエーテルで2回抽出する。固体のクエン酸を添加することにより水相を約5のpHに酸性化し、次に100cmの酢酸エチルで3回抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。1.8gの1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸が、このようにして160℃で溶ける淡黄色の固体の形態で得られる。質量スペクトル(EI):m/z 342 [M]、270(ベースピーク):[M]−C−O−CH−CH
【0100】
1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、以下の方法で調製することができる。
【0101】
1.7g(1.4mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム[0]、6.6g(43.2mmol)のトランス−β−スチレンボロン酸のエタノール40cm溶液、および次に9.2g(86.4mmol)の炭酸ナトリウムの水40cm溶液を、連続して10.0g(28.8mmol)の3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルのトルエン300cm溶液に添加する。反応混合物を82℃前後の温度にて2.5時間加熱し、次に25℃前後の温度まで冷却し、500cmの水および300cmの酢酸エチルで希釈する。静置により相を分離した後、有機相を、300cmの水で2回、および次に300cmの飽和ブラインで連続して洗浄する。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。残渣を、アルゴンの圧力下(80kPa)、シクロヘキサン/酢酸エチル混合物(容量比90/10)で溶出する、330gのシリカゲル(粒径32から63μm)を含有するカートリッジでのクロマトグラフィーにより精製する。予期された生成物を含有する画分を合わせ、40℃前後の温度にて減圧下(2kPa)で濃縮乾固する。9.3gの1−(1−エトキシエチル)−3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルが、このようにして黄色の固体の形態で得られる。(Rf=0.70、シリカゲルでの薄層クロマトグラフィー、溶出剤:ジクロロメタン/メタノール(容量比98/2)。
【0102】
3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、実施例1に説明される。
【実施例3】
【0103】
3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)塩酸塩:
【0104】
【化26】

【0105】
0.66cm(1.32mmol)の2N塩酸を、0.037g(0.081mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)のテトラヒドロフラン1.7cm溶液に添加する。反応混合物を25℃前後の温度にて18時間攪拌し、次に0.2cmの2N塩酸を添加する。1.5時間後、反応混合物を、40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固し、次にTHFに溶かし、再び濃縮乾固する(操作を2回繰り返す)。残渣を20℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で乾燥させる。34mgの3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)塩酸塩が、このようにして緑色がかった非晶質固体の形態で得られる。(Rf=0.37、シリカゲルでの薄層クロマトグラフィー、溶出剤:ジクロロメタン/メタノール(容量比90/10))。質量スペクトル(EI):m/z 384 [M]、m/z 341、m/z 111(ベースピーク)、およびm/z 94。
【0106】
1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)は、以下の方法で調製することができる。
【0107】
0.119g(1.18mmol)のトリエチルアミン、0.090g(0.62mmol)のO−フェニルヒドロキシルアミン塩酸塩および次に0.198g(0.62mmol)のO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸を連続して0.22g(0.59mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸を11cmのアセトニトリルに含有する溶液に添加し、アルゴン下25℃前後の温度にて攪拌する。反応媒質を80℃前後の温度にて30分間、次に20℃前後の温度にて30分間、最後に80℃前後の温度にて30分間攪拌する。次に、反応媒質を20℃前後の温度まで冷却し、40cmのブラインおよび40cmの酢酸エチルを含有する混合物に投入し、静置して相を分離する。水相を40cmの酢酸エチルで2回抽出し、有機抽出物を合わせ、50cmの2N塩酸水溶液、50cmの水、40cmの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、さらに次に40cmの水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。このようにして得られた残渣を、ジクロロメタン/メタノール混合物(容量比98/2)で溶出する、30gのシリカゲル(40から63μm)を含有するカラムで、さらに次にシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(容量比70/30)で溶出する、30gのシリカゲル(40から63μm)を含有するカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。予期された生成物を含有する画分を合わせ、40℃前後の温度にて減圧下(2kPa)で濃縮乾固する。残渣を分取プレートでのクロマトグラフィーにより精製する。0.040gの1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)が、このようにして黄色の固体の形態で得られる。(Rf=0.56、シリカゲルでの薄層クロマトグラフィー、溶出剤:シクロヘキサン/酢酸エチル(容量比50/50))。
【0108】
1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸は、以下の方法で調製することができる:バッチP−32079−158−1。
【0109】
1cmのエタノール、1cmの水および0.29g(5.1mmol)の水酸化カリウムを、1.0g(2.3mmol)の1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルのテトラヒドロフラン8cm溶液に攪拌しながら連続して添加した。反応媒質を85℃前後の温度にて2時間加熱し、次に25℃前後の温度まで冷却し、40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。残渣を水に溶かし、ジエチルエーテルで抽出する。固体クエン酸を添加して水相を約5から6のpHに酸性化し、次に酢酸エチルで3回抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次に40℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。0.25gの1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸がこのようにして、黄色がかった固体の形態で得られる。約3から4のpHに水相を酸性化し、続いて同じ処理を行うと、0.25gの1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸の第2の画分が、黄色がかった固体の形態で得られる。(Rf=0.15、シリカゲルでの薄層クロマトグラフィー、溶出剤:ジクロロメタン/メタノール(容量比90/10))。
【0110】
1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)−アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、以下の方法で調製することができる。
【0111】
1.1g(5.8mmol)の銅(I)ヨウ化物、0.69cm(5.8mmol)のトランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、4.4g(34.6mmol)の2−チオフェンカルボキサミド、さらに次に12.2g(57.6mmol)のリン酸三カリウムを、10.0g(28.8mmol)の3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルのジオキサン167cm溶液に連続して添加し、アルゴン下、25℃前後の温度にて攪拌する。反応混合物を20時間還流し、次に25℃前後の温度まで冷却し、Clarcel(登録商標)で濾過する。固体を170cmの酢酸エチルで2回洗浄する。濾液を170cmの飽和ブラインで3回抽出し、次に有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、次に35℃前後の温度にて減圧下(2.7kPa)で濃縮乾固する。残渣を、シクロヘキサン/酢酸エチル混合物(容量比90/10、その後85/15)で溶出する約300gのシリカゲル(粒径40から63μm)のカラムでのクロマトグラフィーにより精製する。予期された生成物を含有する画分を合わせ、40℃前後の温度にて減圧下(2kPa)で濃縮乾固する。2.9gの1−(1−エトキシエチル)−3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルが、このようにして黄色の固体の形態で得られる。(Rf=0.18、シリカゲルでの薄層クロマトグラフィー、溶出剤:シクロヘキサン/酢酸エチル(容量比80/20))。
【0112】
3−ブロモ−1−(1−エトキシエチル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−カルボン酸エチルは、実施例1に説明されている。
【0113】
本発明に従う生成物は、アキラル形態、またはラセミ形態、または1種類の立体異性体が富化された形態、または1種類の鏡像異性体が富化された形態であり、および場合により塩にされていてよい。
【0114】
本発明に従う生成物は、病態、特に癌の治療に有用である薬剤の製造に用いてよい。
【0115】
また、本発明は、本発明に従う化合物を、選択される投与様式に従う医薬的に許容される賦形剤を組み合わせて含む治療用組成物に関する。この医薬組成物は、固体または液体の形態またはリポソームの形態であってよい。
【0116】
固体組成物の中で言及され得るものは、粉剤、ゲルカプセル剤および錠剤である。経口形態の中で含まれ得るものは、酸性媒質に関して胃を保護する固体形態である。固体形態に用いられる支持体は、特に、鉱物支持体、例えばリン酸塩または炭酸塩、または有機支持体、例えばラクトース、セルロース、デンプンまたはポリマーからなる。液体形態は、溶液、懸濁液または分散系からなる。これらには分散支持体として水か有機溶媒(エタノール、NMPなど)、または、界面活性剤の混合物および溶媒の混合物、または錯化剤の混合物および溶媒の混合物が含まれる。
【0117】
液体形態は、好ましくは注射可能物質であり、結果として、このような使用に許容される式を有する。
【0118】
注射に許容される投与経路としては、静脈内、腹腔内、筋肉内および皮下経路が挙げられ、静脈内経路が好ましい。
【0119】
本発明の化合物の投薬量は、患者への投与経路および患者の状態に応じて施術者が適合させる。
【0120】
本発明の化合物は、単独で投与してもよいし、または他の抗癌剤との混合物として投与してもよい。可能性のある組合せの中で言及され得るものは、
アルキル化剤および特にシクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、プレドニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、デカルバジン(decarbazine)、テモゾロミド、プロカルバジンおよびヘキサメチルメラミン
白金誘導体、例えば、特に、シスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチン
抗生物質、例えば、特に、ブレオマイシン、マイトマイシンまたはダクチノマイシン
微小管阻害剤、例えば、特に、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンおよびタキソイド類(パクリタキセルおよびドセタキセル)
アントラサイクリン類、例えば、特に、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロンおよびロソキサントロン
IおよびII群のトポイソメラーゼ阻害剤、例えばエトポシド、テニポシド、アムサクリン、イリノテカン、トポテカンおよびトミュデックス
フルオロピリミジン類、例えば5−フルオロウラシル、UFTおよびフロクスウリジン
シチジン類似体、例えば5−アザシチジン、シタラビン、ゲムシタビン、6−メルカプトムリン(mercaptomurine)および6−チオグアニン
アデノシン類似体、例えばペントスタチン、シタラビンまたはリン酸フルダラビン
メトトレキサートおよびフォリン酸
種々の酵素および化合物、例えばL−アスパラギナーゼ、ヒドロキシ尿素、トランス−レチノイン酸、スラミン、デクスラゾキサン、アミフォスチンおよびヘルセプチン、およびまたエストロゲンに基づくホルモンおよびアンドロゲンホルモン
抗血管薬(antivascular agents)、例えばコンブレタスタチン誘導体またはコルヒチン誘導体、およびこれらのプロドラッグ
である。
【0121】
また、本発明の化合物を放射線治療と組み合わせることもできる。これらの治療は、同時に、別々に、または連続して投与してよい。治療は、治療する患者に応じて施術者が適合させる。
【0122】
細胞周期の進行は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)に支配されることが多く、サイクリン依存性キナーゼはサイクリンファミリーに属するタンパク質との相互作用により活性化され、この活性化の結果、基質のリン酸化、および最終的に細胞分裂となる。さらに、活性化したCDKの内因性阻害剤(INK4およびKIP/CIPのファミリー)は、CDKの活性を負に調節する。正常細胞の増殖はCDKアクチベーター(サイクリン類)とCDKの内因性阻害剤との間のバランスに起因する。数種類の癌において、これらの細胞周期制御因子の異常発現または活性がいくつか記載されている。
【0123】
サイクリンEはキナーゼCdk2を活性化させ、これが次にタンパク質pRb(網膜芽細胞腫タンパク質)をリン酸化するために働いて、この結果細胞分裂およびS期への移行への不可逆的な関与となる(PL Toogood,Medicinal Research Reviews(2001),21(6);487−498。キナーゼCDK2および場合によりCDK3は、G1期への進行およびS期への移入に必要である。サイクリンEとの複合体の形成の間、これらはpRbの過剰リン酸化を維持してG1期からS期への進行を助ける。サイクリンAとの複合体では、CDK2はE2Fを不活性化する役割を果たし、S期を達成するために必要である(TD.Davies et al.(2001)Structure 9,389−3)。
【0124】
CDK1/サイクリンB複合体は、G2期とM期の間の細胞周期の進行を調節する。CDK/サイクリンB複合体の負の調節により、G2期が正確に、かつ、完全に終結する前に正常細胞がS期に入るのを妨げられる(K.K.Roy and E.A.Sausville,Current Pharmaceutical Design,2001,7,1669−1687)。
【0125】
CDKの活性の調節レベルが存在する。キナーゼのサイクリン依存性アクチベーター(CAK)は、CDKの調節にプラスの効果を有する。CAKはCDKをトレオニン残基でリン酸化して標的酵素を完全に活性化する。
【0126】
細胞周期に関わる分子に欠点が存在すると、CDKの活性化および周期の進行がもたらされる;当然、癌細胞の細胞増殖を阻害するためにCDK酵素の活性を阻害することが望まれる。
【0127】
染色体分離および紡錘体集合に関与する多くのタンパク質が酵母およびショウジョウバエにおいて同定されている。これらのタンパク質の組織崩壊が、染色体の非分離、および単極のまたは組織の崩壊した紡錘体を引き起こす。これらのタンパク質の中で、それぞれショウジョウバエおよびS.セレビシエに由来する、AuroraおよびIpl1をはじめとする、特定のキナーゼが染色体隔離および中心体の分離に必要である。酵母Ipl1のヒト類似体は、近年、種々の研究室でクローン化され、特性決定されている。このキナーゼは、aurora2、STK15またはBTAKとして知られ、セリン/トレオニンキナーゼファミリーに属する。BischoffらはAurora2が発癌性であり、ヒト結腸直腸癌において増殖することを示している(EMBO J,1998,17,3052−3065)。このことは、乳癌などの上皮腫瘍に関する癌においても明らかにされている。
【0128】
本発明は新規なベンゾチアゾール誘導体に関する。従って本発明は、ベンゾチアゾール誘導体の、キナーゼを阻害するための薬剤としての、またより特には抗癌剤としての使用に関する。これらの中で、本発明は優先的にベンゾチアゾールのスルホン酸エステルに関する。また、本発明は、前記誘導体の、ヒトを治療するための薬剤の調製のための使用に関する。
【0129】
PLK
「Polo様キナーゼ」または「PLK」は、セリン/トレオニンキナーゼのファミリーに属し、細胞周期の調節に、特に有糸分裂に入る期および有糸分裂を終える期において、重要な役割を果たしている。PLKには、PLK1、PLK2、PLK3およびPLK4が含まれる。
【0130】
PLKは、多くの種(例えば、細菌、ショウジョウバエおよびアフリカツメガエル)において、有糸分裂における重要な役割で知られている。ショウジョウバエでのRNAi実験により、poloの抑制がG2/M期での細胞停止、およびアポトーシスを引き起こすことが実証されている。PLK1はヒトpolo同族体である。有糸分裂の間、PLK1が中心体の成熟および紡錘体の形成に関わる微小管の動力学に役割を果たすことが実証されている。また、PLK1は細胞の有糸分裂の終了にも関与している。PLK1もおそらく細胞質分裂に役割を有する。
【0131】
PLK1の過剰発現が癌の場合には予後不良の因子であることも実証されている。
【0132】
これら全ての研究から、PLK1のキナーゼ活性の阻害剤が腫瘍学の分野において無秩序な細胞増殖の阻害を可能にすると示唆される。
【0133】
従って、本特許出願は、特に、とりわけ腫瘍学において、細胞の異常増殖を治療するために用いられ得るPLK1受容体の新規な阻害剤に関する。
【0134】
Tie−2(TEK)は、内皮細胞に特異的なチロシンキナーゼ受容体のファミリーメンバーである。Tie2は、チロシンキナーゼ活性を持つ最初の受容体であり、受容体の自己リン酸化および細胞のシグナル伝達を刺激するアゴニスト(アンジオポエチン1またはAng1)[S.Davis et al.(1996)Cell 87,1161−1169]、およびアンタゴニスト(アンジオポエチン2またはAng2)[P.C.Maisonpierre et al.(1997)Science 277,55−60]の双方にチロシンキナーゼ活性を有することが知られている。アンジオポエチン1は、血管新生の最終段階においてVEGFと協同して作用することができる[Asahara T.Circ.Res.(1998)233−240]。Tie2発現またはAng1発現のノックアウト実験およびトランスジェニック操作は、血管新生化の欠陥を提示する動物をもたらす[D.J.Dumont et al.(1994)Genes Dev.8,1897−1909およびC.Suri(1996)Cell 87,1171−1180]。Ang1とこの受容体との結合は、新血管新生にも、また血管の補充および血管と周皮細胞および平滑筋細胞との相互作用に必須の、Tie2のキナーゼドメインの自己リン酸化を引き起こす;これらの現象は、新しく形成された血管の成熟および安定性に貢献する[P.C.Maisonpierre et al.(1997)Science 277,55−60]。Lin et al.(1997)J.Clin.Invest.100,8:2072−2078およびLin P.(1998)PNAS 95,8829−8834は、黒色腫および乳房腫瘍異種移植片のモデルへのTie−2(Tek)の細胞外ドメインのアデノウイルス感染または注射の間に、腫瘍増殖および血管新生化の阻害、ならびにまた肺転移の減少をも示した。
【0135】
Tie2阻害剤は、新血管新生が不適切に起こる状況(すなわち、糖尿病性網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症に起因する慢性新血管新生、慢性関節リウマチ、小児血管腫および癌において)で用いることができる。
【0136】
FAKは、ヘテロ二量体性の細胞接着受容体のファミリーであるインテグリンによって伝達されるシグナルの変換に重要な役割を果たす細胞質チロシンキナーゼである。FAKおよびインテグリンは、接着斑として知られる膜周囲の構造に共在する。FAKの活性化およびチロシン残基でのこのリン酸化、特にチロシン397でのこの自己リン酸化が、インテグリンとこれらの細胞外リガンドとの結合に依存し、従って細胞接着中に誘導されることが多くの細胞種で示されている[Kornberg L,et al.J.Biol.Chem.267(33):23439−442(1992)]。FAKのチロシン397での自己リン酸化は、別のチロシンキナーゼであるSrcの、このSH2ドメインを介する結合部位を表す[Schaller et al.Mol.Cell.Biol.14:1680−1688.1994;Xing et al.Mol.Cell.Biol.5:413−421.1994]。Srcは次にチロシン925でFAKをリン酸化する、従ってアダプタータンパク質Grb2を補充し、特定の細胞において細胞増殖の制御に関与するrasおよびMAPキナーゼ経路の活性化を誘導する[Schlaepfer et al.Nature;372:786−791.1994;Schlaepfer et al.Prog.Biophy.Mol.Biol.71:435−478.1999;Schlaepfer and Hunter,J.Biol.Chem.272:13189−13195.1997]。FAKの活性化もまた、jun NH2末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達経路を誘導し、細胞周期のG1期への細胞の進行をもたらす[Oktay et al.,J.Cell.Biol.145:1461−1469.1999]。ホスファチジルイノシトール−3−OHキナーゼ(PI3−キナーゼ)もチロシン397においてFAKと結合する。この相互作用はPI3−キナーゼの活性化に必要であると思われる[Chen and Guan,Proc.Nat.Acad.Sci.USA.91:10148−10152.1994;Ling et al.J.Cell.Biochem.73:533−544.1999]。FAK/Src複合体は、種々の基質、例えば、線維芽細胞のパキシリンおよびp130CASをリン酸化する[Vuori et al.Mol.Cell.Biol.16:2606−2613.1996]。
【0137】
多数の研究の結果は、FAK阻害剤が癌の治療に有用であるであろうとの仮説を支持する。研究により、FAKがインビトロでの細胞増殖および/または生存に重要な役割を果たすであろうことが示唆されている。例えば、CHO細胞において、何人かの筆者がp125FAKの過剰発現がG1からSへの移行の加速を引き起こすことを実証しており、p125FAKが細胞増殖を促進することが示唆される[Zhao J.−H et al.J.Cell Biol.143:1997−2008.1998]。他の筆者は、FAKアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した腫瘍細胞がこれらの接着を失ってアポトーシスに入ることを示している(Xu et al.,Cell Growth Differ.4:413−418.1996)。また、FAKがインビトロで細胞の遊走を促進することも実証されている。従って、FAK発現の不十分な線維芽細胞(FAK「ノックアウト」マウス)は丸い形態および走化性シグナルに応答する細胞遊走の欠乏を示し、これらの欠点はFAKの再発現により排除される[DJ.Sieg et al.,J.Cell Science.112:2677−91.1999]。FAK(FRNK)のC−末端ドメインの過剰発現は、接着細胞の伸展を阻害し、インビトロでの細胞遊走を減少させる[Richardson A.and Parsons J.T.Nature.380:538−540.1996]。CHOもしくはCOS細胞またはヒト星状細胞腫細胞でのFAKの過剰発現は細胞の遊走を促進する。多くの細胞種におけるインビトロでの細胞の増殖および遊走の促進へのFAKの関与は、腫瘍形成過程におけるFAKの潜在的役割を示唆する。近年の研究は、ヒト星状細胞腫細胞におけるFAK発現誘導後のインビボでの腫瘍細胞増殖の増加を効果的に実証している[Cary L.A.et al.J.Cell Sci.109:1787−94.1996;Wang D et al.J.Cell Sci.113:4221−4230.2000]。さらに、ヒト生検の免疫組織化学的研究から、FAKの発現レベルが直接に最も攻撃的な表現型を示す腫瘍と相関する、前立腺癌、乳癌、甲状腺癌、結腸癌、黒色腫、脳腫瘍および肺癌においてFAKが過剰発現したことが実証された[Weiner TM,et al.Lancet.342(8878):1024−1025.1993;Owens et al.Cancer Research.55:2752−2755.1995;Maung K.et al.Oncogene.18:6824−6828.1999;Wang D et al.J.Cell Sci.113:4221−4230.2000]。
【0138】
VEGF−R2(血管内皮増殖因子受容体2)としても知られているKDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)は、内皮細胞において単独で発現する。この受容体は脈管形成増殖因子VEGFと結合し、従ってこの細胞内キナーゼドメインの活性化を介して形質導入シグナルメディエーターとして働く。VEGF−R2のキナーゼ活性の直接阻害は、外因性VEGF(血管内皮増殖因子)の存在下で脈管形成の現象を低下させることを可能にする(Strawn et al.,Cancer Research,1996,vol.56,p.3540−3545)。このプロセスは、特にVEGF−R2変異株を用いて実証されている(Millauer et al.,Cancer Research,1996,vol.56,p.1615−1620)。VEGF−R2受容体は、成人においてVEGFの脈管形成活性に関連する機能以外に他の機能を有していないように思われる。従って、VEGF−R2のキナーゼ活性の選択的阻害剤は僅かな毒性しか示さないはずである。
【0139】
動的脈管形成過程におけるこの中心的役割に加えて、最近の結果から、VEGFの発現は化学療法および放射線療法後の腫瘍細胞の生存に寄与すること、KDR阻害剤と他の薬剤との潜在的な相乗効果がにあることを示唆している(Lee et al.Cancer Research,2000,vol.60,p.5565−5570)。
【0140】
生化学的試験の実験プロトコール
1.Aurora2
キナーゼAurora2に関する化合物の阻害効果を、ニッケルキレートを用いる放射能シンチレーション試験により測定する。
【0141】
N末端をヒスチジン標識した完全な組換え型Aurora2酵素を、大腸菌で発現させ、均質に近い品質まで精製した。
【0142】
大腸菌で発現されたNuMA(分裂装置に関連する核タンパク質)のC末端断片(Q1687−H2101)、およびヒスチジン標識したN末端を、ニッケルキレートクロマトグラフィーにより精製し、Aurora2キナーゼ試験の基質として用いた。
【0143】
キナーゼ活性を測定するため、10%(v/v)のグリセロールおよび0.05%(w/v)のNP40を補給したバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.5、50mM NaCl、10mM MgCl)でのPD10 Pharmaciaカラムでのクロマトグラフィーにより基質NuMAを平衡させる。
【0144】
Aurora2のキナーゼ活性は、ニッケルキレートを用いるシンチレーションにより測定する(New England Nuclear,SMP107モデル)。各ウェルには次の溶液100μlが含まれる:Aurora2 0.02μM;NuMA基質 0.5μM;0.5μCiのATP−[33P]を補給したATP 1μM。この溶液を37℃にて30分間インキュベートする。次に、試験バッファーを除去し、300μlのキナーゼバッファーでウェルを2回すすぐ。Packard Model Top Count NXT機を用いて各ウェルの放射能を測定する。
【0145】
他のサンプルと同じに処理された緩衝化されたキナーゼを含有する放射性ATPのみを含有するウェル中において、2通り測定された放射能を測定することにより、バックグラウンドノイズを推定する。
【0146】
試験化合物の不在下での完全な試験混合物(ATP、Aurora2および基質NuMA)における放射能を2通り測定することにより、対照の活性を測定する。
【0147】
本発明の化合物とともにAurora2の活性の阻害を、試験化合物の不在下での対照活性の阻害パーセントとして表す。スタウロスポリンを各プレートに阻害対照として添加する。
【0148】
2.CDK2/サイクリンE:
IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)によるCDK2/サイクリンE−(His)複合体の精製;
CDK2およびサイクリンE(後者はC末端ヘキサヒスチジンタグを有する)をそれぞれコードするヒト配列を有する2種類の組換え型バキュロウイルスを用いてSf21昆虫細胞を共感染させる。共感染の開始から2から3日後、細胞を遠心分離により回収し、次に、使用する時まで−40℃で保存する。細胞を融かし、機械的に溶解した後、溶解上清に存在する複合体をニッケルでのアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製し、−80℃で保存する。
【0149】
96ウェルフォーマットでのCDK2/サイクリンEフラッシュプレート試験
ストレプトアビジンコートされた96ウェルプレートのフォーマットを用いて、CDK2/サイクリンEのキナーゼ活性に関する化合物の活性を試験する。
【0150】
この試験を実施するため、タンパク質pRb(ビオチニル−SACPLNLPLQNNHTAADMYLSPVRSPKKKGSTTR−OH)断片であるビオチン化ペプチド基質を、110μLアリコートの形態で、−20℃で保存される保存溶液を構成するために、キナーゼバッファー(HEPES/NaOH 50mM、NaCl 1mM、MgCl 5mM、pH7.5)に濃度1mMで溶かす。実験当日、この溶液のアリコートを融かし、濃度14.3μMを得るために、その場でバッファーに加えられた1mMのジチオトレイトールを含有するキナーゼバッファーに希釈する。反応媒質の最終量100μLで行われる酵素反応中の最終基質濃度を10μMとするために、この溶液70μLをフラッシュプレートの各ウェルに加える(下記参照)。
【0151】
阻害剤(本発明の生成物)の種々の濃度での中間希釈液を、10mMの保存溶液からDMSOで別個の管に調製する。1000μM、333.3μM、111.1μM、37.03μM、12.35μM、4.11μMおよび1.37μMの希釈液をこのようにして調製する。これらの溶液の各々のうちの1μL(または対照用のDMSOの1μL)を試験プレートのウェルへ移す。
【0152】
キナーゼ緩衝液中のATPの合計濃度5.26μMおよび33Pの52.6μCi/mlの、アデノシン三リン酸(ATP)およびATPγ33Pの混合物の溶液19μlを、次いで、各ウェルに添加する。1mMのジチオトレイトールを含有するキナーゼ緩衝液中のCDK2/サイクリンEの200nM溶液を1ウェルにつき10μL添加して(または反応ブランク用に、1mMのジチオトレイトールを含有する10μLのキナーゼ緩衝液)、酵素反応を開始させる。
【0153】
試薬の各々を添加した後の、各ウェルの最終容量は100μL、基質の終濃度は10μM、阻害剤の最終濃度は(中間希釈液の濃度に従って)10μM、3.33μM、1.11μM、0.37μM、0.123μM、0.041μMおよび0.014μM、最終ATP濃度は1μM、33Pの最終量は1μCi/ウェル、およびCDK2/サイクリンE複合体の終濃度は20nMである。
【0154】
全ての試薬を添加した後、試験プレートを、650rpmで軌道振盪しながら30℃にて温置する。
【0155】
温置が完了すると、プレートを1ウェルあたり300μLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、カルシウムまたはマグネシウムを含まない、参照番号10010−015、Gibco BRL)で3回洗浄する。33Pのペプチドへの取り込みをPackard Topcount.NXT機でシンチレーション計数により定量する。酵素活性の50%減少を可能にする阻害濃度(IC50)を測定することにより、本発明の生成物の阻害活性を評価する。
【0156】
3.Tie2
細胞内ドメイン776−1124のアミノ酸に相当するヒトTie2のコード配列を、モデルとしてヒト胎盤から単離したcDNAを用いるPCRにより作成した。この配列をGST融合タンパク質の形態でpFastBacGTバキュロウイルス発現ベクターに導入した。
【0157】
分子の阻害効果を、約80%の均一性に精製されたGST−Tie2の存在下で、Tie2とPLCのリン酸化試験において測定する。
【0158】
基質はGST融合タンパク質の形態で発現したPLCのSH2−SH3断片からなる。
【0159】
Tie2のキナーゼ活性を、10mM MgCl、10mM MnCl、1mM DTT、10mMグリセロリン酸塩を含有するMOPS 20mM pH7.2バッファー中で測定する。氷上で維持されている96ウェルのフラッシュプレート(Flash Plate)のプレート中で、1ウェルあたり100ngの酵素GST−Tie2を含有するキナーゼバッファー70μLからなる反応混合物を沈着させる。次に、最大濃度10%までDMSOに希釈した試験分子10μLを添加する。所与の濃度について各測定は4回行う。2μgのGST−PLC、2μmのコールドATPおよび1μCiの33P[ATP]を含有する溶液20μLを添加して反応を開始させる。37℃にて1時間の温置の後、1容量(100μl)の200mM EDTAを添加して反応を停止させる。温置用緩衝液を除去した後、ウェルを300μLのPBSで3回洗浄する。MicroBeta1450 Wallacで放射能を測定する。
【0160】
Tie2活性の阻害を計算し、化合物の不在下で測定された対照活性に対する阻害パーセンテージとして表す。
【0161】
調製された生成物の活性:
Aurora2活性の阻害を測定することにより、生成物の活性を判定する。結果を下の表1に示す(IC50、nM)。
【0162】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

〔式中:
(i)R1は独立してR2、NHCO(R2)、−CH=CH−(R2)、NH−R4からなる群から選択され、R2は独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
(ii)R3は独立して−(C1−C6)アルキル、−(C1−C6)アルキルアリール、−(C1−C6)アルキルヘテロアリール、−アリール、−ヘテロアリールからなる群から選択され;
(iii)R4はアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルを表し、
基R2、R3およびR4は、同一または異なっていてよく、ハロゲン原子および以下の基:ヒドロキシル、アルコキシ、シクロアルキル、NH2、NHAlk、N(Alk)2、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロシクロアルキルおよびフェニルから選択される1個以上の基(この基は、同一または異なっていてよく、それ自体、ハロゲン原子およびヒドロキシル、NH2、アルコキシ、アルキルおよびヒドロキシアルキル基から選択される1個以上の基で場合により置換される。)で場合により置換され;
但し、R3が−(C1−C6)アルキルの場合、R1は、アリール、ヘテロアリールまたは−CH=CH−(R2)ではなく、この場合のR2はアリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。〕に相当することを特徴とし、前記式(I)の生成物は、任意の可能なラセミ体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態であり、無機酸および有機酸との、または無機塩基および有機塩基との前記式(I)の生成物の付加塩でもある、生成物。
【請求項2】
(i)R1が独立してR2、NHCO(R2)/−CH=CH−(R2)からなる群から選択され、R2は独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
(ii)R3が独立して−(C1−C6)アルキル、−(C1−C6)アルキルアリール、−(C1−C6)アルキルヘテロアリール、−アリール、−ヘテロアリールからなる群から選択され;
但し、R3が−(C1−C6)アルキルの場合、R1は、アリール、ヘテロアリールまたは−CH=CH−(R2)ではなく、この場合のR2はアリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される、
一般式(I)に相当することを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
R1が、アリール、ヘテロアリール、NHCO(R2)およびNH−R4から選択され、R2が独立して−(C1−C24)アルキル、−(C3−C9)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、R4がアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルを表すことを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
R1がNH−R4を表し、R4がアリール、ヘテロアリール、−(C3−C9)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルを表すことを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項5】
R1が、アリールおよびヘテロアリールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項6】
R1が−CH=CH−(R2)であり、R2はアリールおよびヘテロアリールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項7】
R1がNHCO(R2)であることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項8】
R3がアリールまたはヘテロアリールであることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項9】
アリールおよびヘテロアリールが各々独立してフェニル、ピリジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリルおよびピロリルから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項10】
3−(1H−インドール−2−イル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)、
3−((E)−スチリル)−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)、および
3−[(チオフェン−2−カルボニル)アミノ]−1H−チエノ[2,3−c]ピラゾール−5−(N−フェノキシカルボキサミド)
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生成物。
【請求項11】
1)アキラル形態、または
2)ラセミ形態、または
3)1種類の立体異性体が富化された形態、または
4)1種類の鏡像異性体が富化された形態;
であり、場合により塩にされていることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項12】
下記一般式(I)の生成物を調製するための方法であって、
【化2】

〔式中、R1はNHCO(R2)であり、R2およびR3は、上に定義されているとおりである。〕、
(i)カップリング剤またはカルボン酸誘導体(酸塩化物もしくは酸無水物など)の存在下、三級アミンまたはアルカリ金属炭酸塩などの塩基の存在下、
(i−a)下記一般式(X)
【化3】

〔式中、R3は上に定義されているとおりであり、PGはチエノ[2,3−c]ピラゾール核の環内の遊離NH官能基の保護基である。〕のアミンと、
(i−b)カルボン酸R2−COOHとの結合;および、次いで、
(ii)PGの切断
によって得られることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
一般式(X)のアミンが、一般式(IX)
【化4】

〔式中、R3は上に定義されているとおりである。〕の生成物のピラゾール核のNH官能基の保護により得られることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一般式(IX)の生成物が、
(i)トリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウムの存在下、R3ONH〔式中、R3は上記と同じ意味を有する。〕と、
(ii)一般式(XIV)の生成物
【化5】

〔式中、アルキルは(C1−C6)アルキルである。〕
との反応により得られることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
下記一般式(Ia)または(IIIa)
【化6】

〔式中、R2およびR3は上に定義されているとおりであり、アルキルは(C1−C6)アルキルである。〕の生成物を調製するための方法であって、
(i)銅(I)ヨウ化物などの触媒、
トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサンまたはN,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタンなどのアミン、および
リン酸三カリウムまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下、
(i−a)下記一般式(V)または(IIa)
【化7】

〔式中、R3およびアルキルは上に定義されているとおりであり、PGはチエノ[2,3−c]ピラゾール核の環内の遊離NH官能基の保護基である。〕の生成物と
(i−b)一般式(R2)CONHの生成物との
結合の段階、および
(ii)PGの切断の段階、
の段階を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項16】
前記アミンがN,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタンであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
下記の一般式(IIa)
【化8】

〔式中、アルキルおよびPGは上に定義されているとおりである。〕の生成物を調製するための方法であって、一般式(VIIIa)
【化9】

の生成物を、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、メルカプト酢酸アルキル:アルキル−OCOCH−SHにより環化させる段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
一般式(VIIIa)の生成物が、
(i)3,5−ジブロモ−4−ホルミルピラゾール(VIII)が得られる、3,4,5−トリブロモピラゾールのホルミル化、次いで、
(ii)(VIII)の環内のアミン官能基の保護
によって得られることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
保護反応が、エチルビニルエーテルおよび触媒量の酸(例えば塩酸)の存在下に行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
薬剤としての、請求項1から11に記載の式(I)の生成物、ならびにまた、医薬的に許容される無機酸および有機酸とのまたは医薬的に許容される無機塩基および有機塩基との前記式(I)の生成物の付加塩。
【請求項21】
医薬的に許容される賦形剤と組み合わせた、請求項1から11のいずれか一項に記載の生成物を含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から9のいずれか一項に記載の生成物の、プロテインキナーゼ阻害剤としての使用。
【請求項23】
前記キナーゼが、Aurora2、CDK1、CDK2、CDK4、FAK、KDR、PLK1およびTie2から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記キナーゼが、Aurora2、CDK1、CDK2、CDK4、FAK、KDRおよびTie2から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記キナーゼが、Aurora2であることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
病態、特に癌の治療に有用である薬剤の製造のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の生成物の使用。

【公表番号】特表2008−521781(P2008−521781A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542047(P2007−542047)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002933
【国際公開番号】WO2006/056697
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】