説明

置換ボレート含有イオン液体並びにイオン液体の使用方法及び製造方法

【課題】CO等の酸性ガスを選択的に分離・精製するための吸収剤の提供。
【解決手段】イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、アンモニウム及びホスホニウムから成る群より選ばれるカチオン、並びに下記一般式(7):


{式中、R’、R’、R’及びR’は、明細書に記載の通りである。}
で表されるボレートを含むイオン液体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)等の酸性ガスを物理的に吸収させるか、又は酸性ガスと水素(H)、メタン(CH)、一酸化炭素(CO)、酸素(O)、窒素(N)等の非酸性ガスとが含まれる混合ガスから酸性ガスを物理的に吸収させることにより、酸性ガスを貯蔵・分離・精製するのに有用なイオン液体、及びイオン液体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が問題として取り上げられ、温室効果ガスの1つであるCOの排出量削減の動きが活発になっている。特に火力発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、化学プラント等の排出ガス、又は産出直後の天然ガスにはCOが含まれるため、これらのガスからCOを選択的に分離回収してCOを地中へ貯留する方法、若しくはCOを固定化する方法等が検討されている。
【0003】
従来、排出ガス等からCOを分離回収する方法として、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法、深冷分離法等が知られている。このうち、物理吸収法は、排出ガス等をメタノール、又はポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液と接触させてCOを吸収させた後、減圧もしくは大気圧雰囲気下でCOを放散させる方法であり、吸収液の再生エネルギーコストが低く抑えられる特徴を有する。しかしながら、メタノール及びポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液は蒸気圧を有するため、吸収液がガスに随伴され、蒸発損失が起こる。この問題を回避するため、吸収液を冷却する設備が必要となる(例えば非特許文献1参照)。また、これらの吸収液と水とは相溶性があるため、排出ガス中に水分が存在すると吸収液に水分が溶解してCOの吸収能力が低下することが知られている。
【0004】
近年、上記課題を解決する新たな物理吸収剤としてイオン液体が提案されている(例えば特許文献1〜4、非特許文献1〜2を参照)。イオン液体は、蒸気圧がほぼゼロであるため、蒸発損失がほとんど無く、吸収液を冷却する設備が不要となること、難燃性を有すること、さらにCOを吸収することが知られている。しかしながら、これまでに開発されてきたイオン液体はCOの吸収能力は未だ不十分であり、COの吸収能力が高い新たなイオン液体の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6579343号明細書
【特許文献2】特開2006−305544号公報
【特許文献3】特開2009−106909号公報
【特許文献4】特開2008−296211号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(財)地球環境産業技術研究機構編集「図解 CO2貯留テクノロジー」第3章CO2回収技術 工業調査会(2006年)
【非特許文献2】「CO2の分離・回収と貯留・隔離技術」第6講イオン液体物理吸収法によるCO2の分離・回収技術 NTS(2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、CO等の酸性ガスの吸収能力が高く、且つ水に溶解し難いイオン液体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、CO等の酸性ガスの吸収能力が高いイオン液体を見出すため、イオン液体の分子構造について抜本的な見直しを行い鋭意検討した。その結果、カチオン部位及びアニオン部位を含むイオン液体であって、アニオン部位が4つの置換基を有するボレートであり、前記ボレートの4つの置換基の内の少なくとも1つが、フッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基がエーテル結合を有するアルコキシ基であるイオン液体は、CO等の酸性ガスの吸収能力が高く、水に溶解し難いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
[1] 下記一般式(1):
【化1】

{式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるイミダゾリウム;下記一般式(2):
【化2】

{式中、Rは、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピリジニウム;下記一般式(3):
【化3】

{式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピロリジニウム;下記一般式(4):
【化4】

{式中、R18及びR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピペリジニウム;下記一般式(5):
【化5】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるアンモニウム;及び下記一般式(6):
【化6】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるホスホニウムから成る群より選ばれるカチオン;並びに
下記一般式(7):
【化7】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基から選ばれるいずれかの置換基である。但し、R’、R’、R’及びR’の内の1つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であるか;R’、R’、R’及びR’の内の2つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であるか;又はR’、R’、R’及びR’の内の3つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基である。}
で表されるボレート
を含むイオン液体。
【0010】
[2] 前記一般式(7)において、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基が、1〜20個の炭素数を有する多フッ化アルコラート基であり、そして前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基が、−O(CHCHO)CH、−O(CHCHO)CH、又は−O(CHCHO)7.2CHである、[1]に記載のイオン液体。
【0011】
[3] 前記1〜20個の炭素数を有する多フッ化アルコラート基が、−OCH(CFである、[2]に記載のイオン液体。
【0012】
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のイオン液体に、酸性ガス又は酸性ガスと非酸性ガスの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【0013】
[5] 前記酸性ガスが、二酸化炭素である、[4]に記載の方法。
【0014】
[6] 下記一般式(8):
【化8】

{式中、R、R、R、R及びRは、前記一般式(1)で規定した通りであり、そしてXはハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(9):
【化9】

{式中、R、R、R、R、R10及びR11は、前記一般式(2)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(10):
【化10】

{式中、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、前記一般式(3)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(11):
【化11】

{式中、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は、前記一般式(4)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(12):
【化12】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、前記一般式(5)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(13):
【化13】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、前記一般式(6)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物から成る群より選ばれるハロゲン化合物;並びに
下記一般式(14):
【化14】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、前記一般式(7)で規定した通りであり、そしてMは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。}
で表されるボレート塩を混合する工程を含む、[1]に記載のイオン液体の製造方法。
【0015】
[7] 前記一般式(14)において、前記Mが、リチウム、ナトリウム又はカリウムである、[6]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のイオン液体と、二酸化炭素(CO)等の酸性ガス、又は酸性ガス及び水素(H)、メタン(CH)、一酸化炭素(CO)、酸素(O)、窒素(N)等の非酸性ガスの混合ガスとを接触させると、前記イオン液体に前記酸性ガスを効率的に吸収させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に記述する。本発明は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム、下記一般式(2)で表されるピリジニウム、下記一般式(3)で表されるピロリジニウム、下記一般式(4)で表されるピペリジニウム、下記一般式(5)で表されるアンモニウム及び下記一般式(6)で表されるホスホニウムから成る群より選ばれるカチオン、並びに下記一般式(7)で表されるボレートを含むイオン液体である。
【0018】
<イミダゾリウム>
本発明のイオン液体に含まれるイミダゾリウムは、下記一般式(1):
【化15】

{式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0019】
<ピリジニウム>
本発明のイオン液体に含まれるピリジニウムは、下記一般式(2):
【化16】

{式中、Rは、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0020】
<ピロリジニウム>
本発明のイオン液体に含まれるピロリジニウムは、下記一般式(3):
【化17】

{式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0021】
<ピペリジニウム>
本発明のイオン液体に含まれるピペリジニウムは、下記一般式(4):
【化18】

{式中、R18及びR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0022】
<アンモニウム>
本発明のイオン液体に含まれるアンモニウムは、下記一般式(5):
【化19】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0023】
<ホスホニウム>
本発明のイオン液体に含まれるホスホニウムは、下記一般式(6):
【化20】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表される。
【0024】
<カチオンに含まれる置換基>
前記一般式(1)〜(6)で表されるカチオンの置換基R〜R32において、炭素数1〜20個の炭化水素基の「炭化水素基」とは、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基をいう。
【0025】
飽和炭化水素基としては、具体的には、下記:
−CH
−CHCH
−(CHCH
−CH(CH
−(CHCH
−CHCH(CH
−C(CH
−(CHCH
−(CHCH
−(CHCH
−(CHCH
−(CHCH
−(CHCH
−(CH10CH
−(CH11CH
−(CH12CH
−(CH13CH
−(CH14CH
−(CH15CH
−(CH16CH
−(CH17CH
−(CH18CH
−(CH19CH
が挙げられる。
【0026】
不飽和炭化水素基としては、具体的には、下記:
−CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CHCH=CH
−(CH10CH=CH
−(CH11CH=CH
−(CH12CH=CH
−(CH13CH=CH
−(CH14CH=CH
−(CH15CH=CH
−(CH16CH=CH
−(CH17CH=CH
−(CH18CH=CH
が挙げられる。
【0027】
芳香族炭化水素基としては、具体的には、下記:
【化21】

が挙げられる。
【0028】
また、前記一般式(1)〜(6)で表されるカチオンの置換基R〜R32において、「1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基」の具体例としては、下記:
−CHCHOCH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−(CHCHO)CH
−CHCHOCHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
−(CHCHO)CHCH
が挙げられる。
【0029】
前記一般式(1)〜(6)で表されるカチオンについて、後述する一般式(8)〜(13)で表されるハロゲン化合物の入手性、合成時のハンドリング等を勘案して、好ましいカチオンが選択される。一般式(1)で表されるイミダゾリウムとしては、好ましくは、下記:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム
1−デシル−3−メチルイミダゾリウム
1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム
1−メチル−3−テトラデシルイミダゾリウム
1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム
1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム
1−アリル−3−メチルイミダゾリウム
1−アリル−3−エチルイミダゾリウム
1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム
1,3−ジアリルイミダゾリウム
1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム
1,2,3−トリメチルイミダゾリウム
1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム
1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム
1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム
1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム
1,3−ジデシル−2−メチルイミダゾリウム
が挙げられる。
【0030】
一般式(2)で表されるピリジニウムとしては、好ましくは、下記:
1−エチルピリジニウム
1−プロピルピリジニウム
1−ブチルピリジニウム
1−ペンチルピリジニウム
1−ヘキシルピリジニウム
1−ヘプチルピリジニウム
1−オクチルピリジニウム
1−ノニルピリジニウム
1−デシルピリジニウム
1−エチル−3−メチルピリジニウム
1−エチル−4−メチルピリジニウム
1−プロピル−3−メチルピリジニウム
1−プロピル−4−メチルピリジニウム
1−ブチル−2−メチルピリジニウム
1−ブチル−3−メチルピリジニウム
1−ブチル−4−メチルピリジニウム
が挙げられる。
【0031】
一般式(3)で表されるピロリジニウムとしては、好ましくは、下記:
1,1−ジメチルピロリジニウム
1−エチル−1−メチルピロリジニウム
1−メチル−1−プロピルピロリジニウム
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム
1−メチル−1−ペンチルピロリジニウム
1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム
1−メチル−1−オクチルピロリジニウム
1−メチル−1−ノニルピロリジニウム
1−デシル−1−メチルピロリジニウム
が挙げられる。
【0032】
一般式(4)で表されるピペリジニウムとしては、好ましくは、下記:
1−メチル−1−プロピルピペリジニウム
1−ブチル−1−メチルピペリジニウム
1−メチル−1−ペンチルピペリジニウム
1−ヘキシル−1−メチルピペリジニウム
1−メチル−1−オクチルピペリジニウム
1−メチル−1−ノニルピペリジニウム
1−デシル−1−メチルピペリジニウム
1−メトキシエチル−1−メチルピペリジニウム
が挙げられる。
【0033】
一般式(5)で表されるアンモニウムとしては、好ましくは、下記:
テトラメチルアンモニウム
テトラエチルアンモニウム
テトラブチルアンモニウム
ブチルトリメチルアンモニウム
エチルジメチルプロピルアンモニウム
トリブチルメチルアンモニウム
メチルトリオクチルアンモニウム
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム
が挙げられる。
【0034】
一般式(6)で表されるホスホニウムとしては、好ましくは、下記:
テトラブチルホスホニウム
テトラオクチルホスホニウム
トリエチルペンチルホスホニウム
トリエチルオクチルホスホニウム
トリブチルメチルホスホニウム
トリイソブチルメチルホスホニウム
トリブチルエチルホスホニウム
トリブチルテトラデシルホスホニウム
トリヘキシルテトラデシルホスホニウム
が挙げられる。
【0035】
一般式(1)で表されるイミダゾリウムとしては、より好ましくは、下記:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム
1−デシル−3−メチルイミダゾリウム
1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム
1−メチル−3−テトラデシルイミダゾリウム
1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム
1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム
が挙げられる。
【0036】
一般式(2)で表されるピリジニウムとしては、より好ましくは、下記:
1−エチルピリジニウム
1−プロピルピリジニウム
1−ブチルピリジニウム
1−ヘキシルピリジニウム
1−エチル−4−メチルピリジニウム
1−プロピル−4−メチルピリジニウム
1−ブチル−2−メチルピリジニウム
1−ブチル−4−メチルピリジニウム
が挙げられる。
【0037】
一般式(3)で表されるピロリジニウムとしては、より好ましくは、下記:
1−エチル−1−メチルピロリジニウム
1−メチル−1−プロピルピロリジニウム
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム
が挙げられる。
【0038】
一般式(4)で表されるピペリジニウムとしては、より好ましくは、下記:
1−メチル−1−プロピルピペリジニウム
1−ブチル−1−メチルピペリジニウム
1−メトキシエチル−1−メチルピペリジニウム
が挙げられる。
【0039】
一般式(5)で表されるアンモニウムとしては、より好ましくは、下記:
テトラエチルアンモニウム
テトラブチルアンモニウム
ブチルトリメチルアンモニウム
エチルジメチルプロピルアンモニウム
トリブチルメチルアンモニウム
メチルトリオクチルアンモニウム
が挙げられる。
【0040】
一般式(6)で表されるホスホニウムとしては、より好ましくは、下記:
トリエチルペンチルホスホニウム
トリエチルオクチルホスホニウム
トリブチルメチルホスホニウム
トリブチルエチルホスホニウム
トリブチルテトラデシルホスホニウム
トリヘキシルテトラデシルホスホニウム
が挙げられる。
【0041】
特に好ましくは、一般式(1)で表されるイミダゾリウムは、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであり、一般式(2)で表されるピリジニウムは、1−ブチルピリジニウムであり、一般式(3)で表されるピロリジニウムは、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムであり、一般式(4)で表されるピペリジニウムは、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムであり、一般式(5)で表されるアンモニウムは、テトラエチルアンモニウムであり、そして一般式(6)で表されるホスホニウムは、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムである。
【0042】
<ボレート>
本発明のイオン液体に含まれるボレートは、下記一般式(7):
【化22】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基から選ばれるいずれかの置換基である。但し、R’、R’、R’及びR’の内の1つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;R’、R’、R’及びR’の2つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;又はR’、R’、R’及びR’の3つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基である。}
で表される。
【0043】
<ボレートに含まれる置換基>
前記一般式(7)で表されるボレートの置換基R’〜R’において、「1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基」とは、1〜20個の炭素数を有し、且つ下記多フッ化官能基:
多フッ化カルボキレート基
多フッ化スルホネート基
多フッ化アルコラート基
多フッ化フェニル基
多フッ化フェノレート基
多フッ化スルホンイミド基
多フッ化スルホニルメチド基
のいずれかであることをいう。
【0044】
多フッ化カルボキレート基としては、具体的には、下記:
CFCO
F(CFCO
F(CFCO
F(CFCO
F(CFCO
F(CFCO
F(CFCO
F(CFCO
HCFCO
H(CFCO
CFCFHCO
【0045】
CFCFHCFCO
CFCFO(CFCO
CFCFO(CFCO
CFCFO(CFCO
CFCFO(CFCO
CFCFO(CFCO
CFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFOCFCF(CF)O(CFCO
【0046】
CFCFHO(CFCO
HCFCFO(CFCO
CFCFHO(CFCO
HCFCFO(CFCO
CFCFHO(CFCO
HCFCFO(CFCO
CFCFHO(CFCO
HCFCFO(CFCO
CFCFHO(CFCO
HCFCFO(CFCO
【0047】
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCO
【0048】
CHOCOCFCO
CHOCO(CFCO
CHOCO(CFCO
CHOCO(CFCO
CHOCO(CFCO
CHOCO(CFCO
OCOCFCO
OCO(CFCO
OCO(CFCO
OCO(CFCO
OCO(CFCO
【0049】
FSOCFCO
FSO(CFCO
FSO(CFCO
FSO(CFCO
FSO(CFCO
が挙げられる。
【0050】
多フッ化スルホネート基としては、具体的には、下記:
CFSO
F(CFSO
F(CFSO
F(CFSO
F(CFSO
F(CFSO
F(CFSO
F(CFSO
HCFSO
H(CFSO
CFCFHSO
CFCFHCFSO
【0051】
CFCFO(CFSO
CFCFO(CFSO
CFCFO(CFSO
CFCFO(CFSO
CFCFO(CFSO
CFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFOCFCF(CF)O(CFSO
【0052】
CFCFHO(CFSO
HCFCFO(CFSO
CFCFHO(CFSO
HCFCFO(CFSO
CFCFHO(CFSO
HCFCFO(CFSO
CFCFHO(CFSO
HCFCFO(CFSO
CFCFHO(CFSO
HCFCFO(CFSO
【0053】
CFCFHOCFCF(CF)O(CFSO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFSO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFSO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFSO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFSO
CFCFHOCFCF(CF)O(CFSO
HCFCFOCFCF(CF)O(CFSO
が挙げられる。
【0054】
多フッ化アルコラート基としては、具体的には、下記:
HCFO−
(CFCHO−
CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
F(CFCHO−
【0055】
F(CF10CHO−
F(CF11CHO−
F(CF12CHO−
F(CF13CHO−
F(CF14CHO−
F(CF15CHO−
F(CF16CHO−
F(CF17CHO−
F(CF18CHO−
F(CF19CHO−
【0056】
CF(CHO−
F(CF(CH
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF(CHO−
F(CF10(CHO−
F(CF11(CHO−
F(CF12(CHO−
F(CF13(CHO−
F(CF14(CHO−
F(CF15(CHO−
F(CF16(CHO−
F(CF17(CHO−
F(CF18(CHO−
【0057】
HCFCHO−
H(CFCHO−
CFCFHCHO−
CFCFHCFCHO−
CFCFO(CFCHO−
CFCFO(CFCHO−
CFCFO(CFCHO−
CFCFO(CFCHO−
CFCFO(CFCHO−
【0058】
CFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFHO(CFCHO−
HCFCFO(CFCHO−
CFCFHO(CFCHO−
HCFCFO(CFCHO−
CFCFHO(CFCHO−
HCFCFO(CFCHO−
CFCFHO(CFCHO−
HCFCFO(CFCHO−
CFCFHO(CFCHO−
HCFCFO(CFCHO−
【0059】
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCHO−
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCHO−
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCHO−
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCHO−
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
CFCFHOCFCF(CF)O(CFCHO−
HCFCFOCFCF(CF)O(CFCHO−
が挙げられる。
【0060】
多フッ化フェニル基としては、具体的には、下記:
【化23】

が挙げられる。
【0061】
多フッ化フェノレート基としては、具体的には、下記:
【化24】

が挙げられる。
【0062】
多フッ化スルホンイミド基としては、具体的には、下記:
−N(SOCF)SO
−N(SOCF
−N(SOCFCF)SO
−N(SOCFCF)SOCF
−N(SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF
【0063】
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF
【0064】
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO
−N[SO(CFCF]SOCF
−N[SO(CFCF]SOCFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
−N[SO(CFCF]SO(CFCF
【0065】
−N[SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO
−N(SOCFCFH)SOCF
−N(SOCFCFH)SOCF
−N(SOCFCFH)SOCFCF
−N(SOCFCFH)
−N(SOCFCFH)SOCFHCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
−N(SOCFCFH)SO(CFCF
【0066】
−N(SOCFHCF)SO
−N(SOCFHCF)SOCF
−N(SOCFHCF)SOCF
−N(SOCFHCF)SOCFCF
−N(SOCFHCF)SOCFCF
−N(SOCFHCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
−N(SOCFHCF)SO(CFCF
【0067】
【化25】

が挙げられる。
【0068】
多フッ化スルホニルメチド基としては、具体的には、下記:
(CFSOC−
(CSOC−
(CSOC−
(CSOC−
が挙げられる。
【0069】
後述する一般式(14)で表されるボレート塩の安定性、及び合成時のハンドリング等の理由から、好ましくは、多フッ化官能基は、1〜20個の炭素数を有し、且つ
多フッ化カルボキレート基、
多フッ化スルホネート基、
多フッ化アルコラート基、及び
多フッ化フェノレート基
のいずれかであり、より好ましくは、2〜20個の炭素数を有し、且つ
多フッ化カルボキレート基、及び
多フッ化アルコラート基
のいずれかであり、特に好ましくは、2〜10個の炭素数を有する多フッ化アルコラート基であり、最も好ましくは、(CFCHO−基である。
【0070】
また、前記一般式(7)で表されるボレートの置換基R’〜R’において、1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基の具体例としては、下記:
−OCHCHOCH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)7.2CH
−O(CHCHO)CH
−O(CHCHO)CH
【0071】
−O(CHCHO)10CH
−O(CHCHO)11CH
−O(CHCHO)12CH
−O(CHCHO)13CH
−O(CHCHO)14CH
−O(CHCHO)15CH
−O(CHCHO)16CH
−O(CHCHO)17CH
−O(CHCHO)18CH
−O(CHCHO)19CH
−OCHCHOCHCH
【0072】
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)CHCH
−O(CHCHO)10CHCH
−O(CHCHO)11CHCH
−O(CHCHO)12CHCH
−O(CHCHO)13CHCH
−O(CHCHO)14CHCH
−O(CHCHO)15CHCH
−O(CHCHO)16CHCH
−O(CHCHO)17CHCH
−O(CHCHO)18CHCH
−O(CHCHO)19CHCH
−OCHCH(CH)OCH
【0073】
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)CH
−O(CHCH(CH)O)10CH
−O(CHCH(CH)O)11CH
−O(CHCH(CH)O)12CH
−O(CHCH(CH)O)13CH
が挙げられる。
【0074】
後述する一般式(14)で表されるボレート塩の安定性、合成時のハンドリング等の理由から、1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基は、好ましくは、1〜18個のエーテル結合を有する炭素数3〜37個のアルコキシ基であり、より好ましくは、2〜16個のエーテル結合を有する炭素数5〜33個のアルコキシ基であり、特に好ましくは、3〜10個のエーテル結合を有する炭素数7〜21個のアルコキシ基である。具体的には、1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基としては、−O(CHCHO)CH基、−O(CHCHO)CH基又は−O(CHCHO)7.2CH基が挙げられる。
【0075】
本発明者らは、二酸化炭素(CO)の吸収能力が高いイオン液体を見出すため、様々な分子構造を有するイオン液体を合成した後、イオン液体の単位体積当たりのCO吸収量を測定した。具体的には、合成したイオン液体を圧力容器に入れ40℃に昇温した後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCOとイオン液体とを接触させ、2時間撹拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間攪拌後の圧力の差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO吸収量(mol)を測定・評価した(実施例10を参照)。その結果、カチオン部位及びアニオン部位を含むイオン液体において、前記アニオン部位が、1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基から選ばれるいずれかの置換基を4つ有するボレートであって、4つの置換基の内の1つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;4つの置換基の内の2つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;又は4つの置換基の内の3つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるイオン液体が、従来のアニオン部位にスルホンイミドを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(比較例3のイオン液体(C−3)を参照))、又はヘキサフルオロホスフェートを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(比較例3のイオン液体(C−4)を参照))と比べて、COの吸収能力が高いことを見出した。
【0076】
なぜ、本発明の置換ボレート含有イオン液体のCO吸収能力が高いのか理由は明らかではないが、考えられる理由として、
1)置換ボレートが嵩高いため、電荷が非局在化し、静電相互作用又はファンデルワールス力によりCOを引き付ける力が強くなり、COの吸収能力が高くなった;
2)置換ボレートの少なくとも1つの置換基がフッ素原子含有電子吸引性基であるため、COとフッ素原子との静電相互作用が高くなり、COの吸収能力が高められた;及び
3)置換ボレートの少なくとも1つの置換基がエーテル結合を有するアルコキシ基であるため、側鎖の自由回転が起こりやすく、COが入り込む自由体積が広がった
等が挙げられる。
【0077】
なお、後述する比較例1に示したように、置換ボレートの4つの置換基のすべてが(CFCHO−である場合、得られた化合物は固体状態であった。また、比較例2に示したように、置換ボレートの4つの置換基のすべてが−O(CHCHO)CHである場合、得られた化合物は水に均一に溶解した。
【0078】
上記の通り、いかなる作用機構にも拘束されるものではないが、置換ボレートの4つの置換基が、各々独立に1〜20個の炭素数を有し且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基の中から選択され、少なくとも1〜20個の炭素数を有し且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基と1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基を各々1つ以上含むイオン液体、即ち、より具体的には、置換ボレートの4つの置換基は、1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基から選ばれるいずれかの置換基であって、但し、4つの置換基の内の1つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;4つの置換基の内の2つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるか;又は4つの置換基の内の3つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であり、かつ残余の置換基は、前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基であるようなイオン液体は、COの吸収能力が高く、水に溶解しにくいイオン液体であることが分かった。
【0079】
前記一般式(1)〜(6)から成る群より選ばれるカチオン、及び前記一般式(7)で表されるボレートを含むイオン液体は、下記一般式(8):
【化26】

{式中、R、R、R、R及びRは、前記一般式(1)で規定した通りであり、そしてXはハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(9):
【化27】

{式中、R、R、R、R、R10及びR11は、前記一般式(2)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(10):
【化28】

{式中、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、前記一般式(3)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(11):
【化29】

{式中、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は、前記一般式(4)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(12):
【化30】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、前記一般式(5)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(13):
【化31】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、前記一般式(6)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物から成る群より選ばれるハロゲン化合物;並びに
下記一般式(14):
【化32】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、前記一般式(7)で規定した通りであり、そしてMは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。}
で表されるボレート塩を溶媒存在下で接触・混合させることにより、製造することができる(下記スキーム1〜6を参照)。
【0080】
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【0081】
前記一般式(8)〜(13)で表されるハロゲン化合物において、X、X、X、X、X及びXはハロゲン原子である。前記ハロゲン化合物の合成時の原材料の入手性、ハンドリング等の理由から、X、X、X、X、X及びXは、好ましくは、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは、塩素又は臭素であり、特に好ましくは、臭素である。
【0082】
前記一般式(14)で表されるボレート塩において、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。ボレート塩の合成時の原材料の入手性、ハンドリング等の理由から、Mは、好ましくは、アルカリ金属であり、より好ましくは、リチウム、ナトリウム又はカリウムであり、特に好ましくは、リチウム又はナトリウムである。
【0083】
なお、前記一般式(14)で表されるボレート塩の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、下記スキーム:
【化39】

のように、テトラヒドロフラン等の溶媒中で、水素化ホウ素リチウム(LiBH)1モルに対し、オリゴ(エチレングリコール)モノメチルエーテル等のエーテル結合を有するアルコール(ROH)を2モル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等のフッ素原子含有電子吸引性基を有するアルコール(RfOH)を2モルと反応させると、前記一般式(14)で表されるボレート塩が得られる(例えば、特開2007−115527号公報、特開2004−307481号公報、「Journal of Power Sources」135巻 267頁 (2004年)、「Journal of Power Sources」146巻 407頁 (2005年)、「Electrochimica Acta」50巻 1993頁(2005年)、「Electrochimica Acta」51巻 6451頁(2006年)、「Electrochimica Acta」50巻 3872頁(2005年)参照)。
【0084】
上記スキーム1〜6に示したように、前記一般式(8)〜(13)で表されるハロゲン化合物と前記一般式(14)で表されるボレート塩とを接触・混合させてイオン液体を合成する場合、使用する溶媒は反応物質に対して不活性な溶媒であればよい。本発明で使用される溶媒の例としては、水、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。これらの溶媒は単独または混合して使用できる。
【0085】
前記一般式(8)〜(13)で表されるハロゲン化合物と前記一般式(14)で表されるボレート塩とを接触・混合させてイオン液体を合成する場合の反応温度は、通常、−20℃〜100℃であり、好ましくは、−10℃〜80℃であり、より好ましくは、0℃〜50℃であり、特に好ましくは、10℃〜30℃である。
【0086】
また、前記一般式(8)〜(13)で表されるハロゲン化合物と前記一般式(14)で表されるボレート塩とを接触・混合させてイオン液体を合成する場合の反応時間は、通常、0.01時間〜60時間であるが、好ましくは、0.1時間〜48時間、より好ましくは、0.2時間〜36時間、特に好ましくは、0.5時間〜24時間である。
【0087】
反応終了後、例えば反応溶媒として水を使用する場合、水層とイオン液体層の2層に分離することがあるが、この場合、イオン液体層を分液すればよい。なお、目的物であるイオン液体を高収率で得るために、抽出溶媒としてジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒を使用してもよい。
【0088】
反応溶媒として有機溶媒を使用する場合、例えば、反応混合物中の溶媒を減圧留去した後、残渣にジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒と水を加えて有機層を分液する。一方、水層に対しては前記有機溶媒で抽出操作を2〜3回繰り返す。これらの有機層をまとめて有機溶媒を減圧留去すると、所望のイオン液体を得ることができる。
【0089】
なお、上記で得られたイオン液体は、従来公知の精製方法、例えば、活性炭等の使用、水による洗浄等により、不純物除去又は脱色を行うことができる。
【0090】
以上のように、本発明に係るイオン液体は、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)等の酸性ガス、又は該酸性ガスと水素(H)、メタン(CH)、一酸化炭素(CO)、酸素(O)、窒素(N)等の非酸性ガスを含む混合ガス、特に、二酸化炭素(CO)を吸収する能力に優れているので、工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、核磁気共鳴分析(NMR)は、下記の条件に従って行なった。
H NMR、 19F NMRによる分子構造解析
測定装置:JNM−GSX400G型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム、重メタノール
基準物質:テトラメチルシラン(H NMR)、フレオン−11(CFCl19F NMR)
【0092】
[実施例1]
1)LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHの合成
窒素雰囲気下、−78℃に冷却したLiBH(1.20g、55.10mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(40ml)溶液に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル[HO(CHCHO)CH](18.09g、110.19mmol)を滴下した。滴下終了後、30℃まで温度を上げ、さらに12時間撹拌した。次に、この反応混合物を再び−78℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(18.52g、110.19mmol)を滴下した。滴下終了後、30℃まで温度を上げ、さらに12時間撹拌した。得られた反応混合物からTHFを減圧留去すると、無色透明な粘性液体であるLiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHが36.93g(収率99%)得られた。
【0093】
2)イオン液体(P−1)の合成
【化40】

1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(11.05g、50.42mmol)に水(20ml)を加えて室温で溶解後、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH(36.93g、54.45mmol)を加え室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物を静置すると、水層とイオン液体層の2層に分離した。イオン液体層を分液後、さらに該イオン液体層を精製水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下50℃で24時間加熱するとイオン液体(P−1)(30.64g、収率75%)が得られた。
H NMR 0.96ppm(t、3H)、1.34ppm(m、2H)、1.81ppm(m、2H)、3.37ppm(s、6H)、3.55−3.73ppm(m、24H)、3.90ppm(s、3H)、4.11ppm(m、2H)、4.37ppm(m、2H)、7.23ppm(s、1H)、7.26ppm(s、1H)、9.27ppm(s、1H)
19F NMR −76.70ppm(d、12F)
【0094】
[実施例2]
1)LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHの合成
実施例1の1)において、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル[HO(CHCHO)CH](24.82g、110.19mmol)を用いた以外は、実施例1の1)と同様な操作を行い、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH(41.80g、収率99%)を得た。
【0095】
2)イオン液体(P−2)の合成
【化41】

実施例1の2)において、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHの代わりに、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH(41.72g、54.45mmol)を用いた以外は、実施例1の2)と同様な操作を行い、イオン液体(P−2)(30.36g、収率67%)を得た。
H NMR 0.96ppm(t、3H)、1.35ppm(m、2H)、1.81ppm(m、2H)、3.37ppm(s、6H)、3.54−3.73ppm(m、32H)、3.91ppm(s、3H)、4.14ppm(m、2H)、4.38ppm(m、2H)、7.21ppm(s、1H)、7.23ppm(s、1H)、9.10ppm(s、1H)
19F NMR −76.70ppm(d、12F)
【0096】
[実施例3]
1)LiB[OCH(CF[O(CHCHO)7.2CHの合成
実施例1の1)において、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに、オリゴ(エチレングリコール)モノメチルエーテル[HO(CHCHO)7.2CH](平均分子量350、38.57g、110.19mmol)を用いた以外は、実施例1の1)と同様な操作を行い、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)7.2CH(57.27g、収率99%)を得た。
【0097】
2)イオン液体(P−3)の合成
【化42】

実施例1の2)において、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHの代わりにLiB[OCH(CF[O(CHCHO)7.2CH(57.17g、54.45mmol)を用いた以外は、実施例1の2)と同様な操作を行い、イオン液体(P−3)(43.62g、収率73%)を得た。
【0098】
[実施例4]
1) LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH]の合成
窒素雰囲気下、−78℃に冷却したLiBH(1.20g、55.10mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(40ml)溶液に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル[HO(CHCHO)CH](9.05g、55.10mmol)を滴下した。滴下終了後、30℃まで温度を上げ、さらに12時間撹拌した。次にこの反応混合物を再び−78℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(27.78g、165.3mmol)を滴下した。滴下終了後、30℃まで温度を上げ、さらに12時間撹拌した。得られた反応混合物からTHFを減圧留去すると、無色透明な粘性液体LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH](34.43g、収率98.8%)を得た。
【0099】
2)イオン液体(P−4)の合成
【化43】

実施例1の2)において、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CHの代わりに、LiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH](37.14g、54.45mmol)を用いた以外は、実施例1の2)と同様な操作を行い、イオン液体(P−4)(33.25g、収率75%)を得た。
H NMR 0.96ppm(t、3H)、1.36ppm(m、2H)、1.82ppm(m、2H)、3.38ppm(s、3H)、3.55−3.73ppm(m、12H)、3.90ppm(s、3H)、4.13ppm(m、2H)、4.39ppm(m、3H)、7.20ppm(s、1H)、7.22ppm(s、1H)、9.01ppm(s、1H)
19F NMR −76.87ppm(d、18F)
【0100】
[実施例5] イオン液体(P−5)の合成
【化44】

テトラエチルアンモニウムクロリド(828.5mg、5.0mmol)に水(5ml)を加えて室温で溶解後、実施例1の1)で合成したLiB[OCH(CF[O(CHCHO)CH(3.39g、5.0mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物を静置すると、水層とイオン液体層の2層に分離した。イオン液体層を分液後、さらに該イオン液体層を精製水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下50℃で24時間加熱するとイオン液体(P−5)(3.08g、収率77%)を得た。
H NMR 1.89ppm(t、12H)、3.87−3.92ppm(m、8H)、3.94ppm(s、6H)、4.11−4.26ppm(m、24H)、5.25ppm(m、2H)
19F NMR −77.04ppm(d、12F)
【0101】
[実施例6] イオン液体(P−6)の合成
【化45】

実施例5において、テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりに、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド(1.18g、5.0mmol)を用いた以外は、実施例5と同様な操作を行い、イオン液体(P−6)(3.31g、収率80%)を得た。
H NMR 1.61ppm(t、3H)、2.00−2.06ppm(m、2H)、2.28−2.34ppm(m、4H)、2.51ppm(m、4H)、3.68ppm(s、3H)、3.95ppm(s、6H)、3.98−4.01ppm(m、6H)、4.12−4.27ppm(m、24H)、5.19−5.22ppm(m、2H)
19F NMR − 77.11ppm(d、12F)
【0102】
[実施例7] イオン液体(P−7)の合成
【化46】

実施例5において、テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりに、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムブロミド(1.04g、5.0mmol)を用いた以外は、実施例5と同様な操作を行い、イオン液体(P−7)(3.24g、収率81%)を得た。
H NMR 1.62ppm(t、3H)、2.46ppm(m、2H)、2.84ppm(m、4H)、3.69ppm(s、3H)、3.94−3.98ppm(m、8H)、4.13−4.28ppm(m、28H)、5.19−5.22ppm(m、2H)
19F NMR −77.14ppm(d、12F)
【0103】
[実施例8] イオン液体(P−8)の合成
【化47】

実施例5において、テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりに、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド(2.82g、5.0mmol)を用いた以外は、実施例5と同様な操作を行い、イオン液体(P−8)(5.08g、収率88%)を得た。
H NMR 1.52−1.59ppm(m、12H)、1.93−2.14ppm(m、48H)、2.83−2.86ppm(m、8H)、4.00ppm(s、6H)、4.17−4.31ppm(m、24H)、5.28ppm(m、2H)
19F NMR −77.05ppm(d、12F)
【0104】
[実施例9] イオン液体(P−9)の合成
【化48】

実施例5において、テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりに、1−ブチルピリジニウムブロミド(3.39g、5.0mmol)を用いた以外は、実施例5と同様な操作を行い、イオン液体(P−9)(3.03g、収率75%)を得た。
H NMR 0.96ppm(t、3H)、1.40ppm(m、2H)、2.02ppm(m、2H)、3.36ppm(s、6H)、3.53−3.71ppm(m、24H)、4.51ppm(m、2H)、4.85ppm(m、2H)、8.13ppm(m、2H)、8.53ppm(m、1H)、9.34ppm(m、2H)
19F NMR −76.22ppm(d、12F)
【0105】
[比較例1] (C−1)の合成
【化49】

窒素雰囲気下、−78℃に冷却したLiBH(1.20g、55.10mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(40ml)溶液に、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(37.04g、220.40mmol)を滴下した。滴下終了後、30℃まで温度を上げ、さらに12時間撹拌した。得られた反応混合物からTHFを減圧留去すると、白色固体LiB[OCH(CFが37.04g(収率98%)得られた。
【0106】
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(11.05g、50.42mmol)にアセトニトリル(20ml)を加えて室温で溶解後、LiB[OCH(CF(34.58g、50.42mmol)を加え室温で2時間撹拌した。反応終了後、エバポレータにより、反応混合物からアセトニトリルを減圧留去すると、白色固体状態の残渣が得られた。得られた残渣に水、及びクロロホルムを加え、クロロホルム層を分液した。残った水層はクロロホルムでさらに2回抽出操作を行った。これらのクロロホルム溶液をまとめた後、硫酸ナトリウムで乾燥後、クロロホルムを減圧留去した。さらに真空下、50℃で24時間加熱すると白色固体(C−1)(32.17g、収率78%)が得られたが、液体状態ではなかった。
【0107】
[比較例2] (C−2)の合成
【化50】

比較例1において、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの代わりにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(36.18g、220.40mmol)を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、LiB[O(CHCHO)CH(36.21g、収率98%)を得た。
【0108】
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(11.05g、50.42mmol)にアセトニトリル(20ml)を加えて室温で溶解後、LiB[O(CHCHO)CH(33.81g、50.42mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、固形物を濾過した後、アセトニトリルを減圧留去すると、粘性のある透明な液体(C−2)が得られたが、水を加えると均一に溶解した。
【0109】
[実施例10]
実施例1〜4で得られたイオン液体(P−1)〜(P−4)を各々の圧力容器に入れ、40℃に昇温後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCOを導入し、2時間撹拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間攪拌後の圧力の差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO吸収量(mol)を測定した。表1に1.25MPaにおけるCOの吸収量を示した。
【0110】
【表1】

【0111】
[比較例3]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(下記C−3)(関東化学株式会社製)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(下記C−4)(関東化学株式会社製)を各々の圧力容器に入れ、実施例10と同様の方法で、イオン液体の単位体積(L)当たりのCO吸収量(mol)を測定した。表2に1.25MPaにおけるCOの吸収量を示した。
【0112】
【化51】

【化52】

【0113】
【表2】

【0114】
本発明のイオン液体(P−1)〜(P−4)は、既存のイオン液体(C−3)又は(C−4)と比べて、COの吸収量が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のイオン液体は、CO等の酸性ガスの吸収能力が高いため、酸性ガスを吸収するか、又は酸性ガスと非酸性ガスの混合ガスから酸性ガスを選択的に分離・精製するための吸収剤として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

{式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるイミダゾリウム;下記一般式(2):
【化2】

{式中、Rは、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピリジニウム;下記一般式(3):
【化3】

{式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピロリジニウム;下記一般式(4):
【化4】

{式中、R18及びR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基であり、そしてR20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるピペリジニウム;下記一般式(5):
【化5】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるアンモニウム;及び下記一般式(6):
【化6】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個の炭化水素基、又は1〜10個のエーテル結合を有する炭素数3〜20個の炭化水素基である。}
で表されるホスホニウムから成る群より選ばれるカチオン;並びに
下記一般式(7):
【化7】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基、及び1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基のいずれかから選択される。但し、R’、R’、R’及びR’の内の1つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であるか;R’、R’、R’及びR’の内の2つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基であるか;又はR’、R’、R’及びR’の内の3つが、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基である。}
で表されるボレート
を含むイオン液体。
【請求項2】
前記一般式(7)において、前記1〜20個の炭素数を有し、且つフッ素原子含有電子吸引性基を有する置換基が、1〜20個の炭素数を有する多フッ化アルコラート基であり、そして前記1〜20個のエーテル結合を有する炭素数3〜40個のアルコキシ基を有する置換基が、−O(CHCHO)CH、−O(CHCHO)CH、又は−O(CHCHO)7.2CHである、請求項1に記載のイオン液体。
【請求項3】
前記1〜20個の炭素数を有する多フッ化アルコラート基が、−OCH(CFである、請求項2に記載のイオン液体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン液体に、酸性ガス又は酸性ガスと非酸性ガスの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【請求項5】
前記酸性ガスが、二酸化炭素である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記一般式(8):
【化8】

{式中、R、R、R、R及びRは、前記一般式(1)で規定した通りであり、そしてXはハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(9):
【化9】

{式中、R、R、R、R、R10及びR11は、前記一般式(2)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(10):
【化10】

{式中、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、前記一般式(3)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(11):
【化11】

{式中、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は、前記一般式(4)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(12):
【化12】

{式中、R25、R26、R27及びR28は、前記一般式(5)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物、下記一般式(13):
【化13】

{式中、R29、R30、R31及びR32は、前記一般式(6)で規定した通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}
で表されるハロゲン化合物から成る群より選ばれるハロゲン化合物;並びに
下記一般式(14):
【化14】

{式中、R’、R’、R’及びR’は、前記一般式(7)で規定した通りであり、そしてMは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。}
で表されるボレート塩を混合する工程を含む、請求項1に記載のイオン液体の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(14)において、前記Mが、リチウム、ナトリウム又はカリウムである、請求項6に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−31121(P2012−31121A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173773(P2010−173773)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】