説明

置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン類の調製方法

【課題】 本発明は、TNFαの異常に高いレベル又は活性に関連する疾患又は状態を予防又は治療するのに有用な置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の新規な調製方法に関する。
【解決手段】 本発明は、限定はしないが、治療上有効な3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを始めとする置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の商業的製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 発明の分野)
本発明は、哺乳動物における腫瘍壊死因子αのレベル又は活性を低減するのに有用な化合物の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の合成方法に関する。詳細には、本発明は、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを調製するのに有用な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2. 発明の背景)
腫瘍壊死因子α、即ちTNFαの過度な又は無秩序な産生は、多くの疾患状態に関係している。これらの疾患状態には、エンドトキシン血症及び/又は毒素性ショック症候群(Traceyらの論文, Nature 330, 662〜664(1987)及びHinshawらの論文, Circ. Shock 30, 279〜292(1990))、悪質液(Dezubeらの論文, Lancet 335(8690), 662(1990))、及び成人呼吸窮迫症候群(Millarらの論文, Lancet 2(8665), 712〜714(1989))が含まれる。特定の置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類は、TNFαのレベルを低減することが判っている(引用によりその全体が本明細書に組み込まれている国際公開第98/03502号)。
【0003】
特定の治療上の有望性が立証されたオキソイソインドリンが、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(REVLIMID(商標))である。この化合物は、限定はしないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び癌(固形及び同種癌を含む)を含む広範な範囲の疾患及び状態を治療及び予防するのに有用であることが判っている。REVLIMIDは、多発性骨髄腫及び骨髄異形成症候群の治療に関して米国食品医薬品局から優先審査指定を得ている。さらに、REVLIMIDは、血液及び固形腫瘍癌、並びに免疫性及び炎症性疾患の治療に関する臨床治験の最終段階にある。
【0004】
置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の現存する合成方法は、国際公開第98/03502号(7頁22行〜10頁33行、及び実施例1〜18を参照のこと)及びMullerらの論文, Bioorgan. Med. Chem. Lett. 9, 1625〜1630(1999)に記載されている。現存する1つの方法では、N-保護グルタミンを環化し、次いで脱保護してα-アミノグルタルイミド塩酸塩を生成させる。α-アミノグルタルイミド塩酸塩を置換2-ブロモメチル安息香酸メチルとカップリングし、2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンを形成する。所望なら、次いで、ベンゾ置換基を他の置換基に変換できる。
【0005】
これらの方法は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の調製を可能にし、調製に有用であるが、より効率的な合成をもたらす代替態様の可能性が存在する。
本出願の背景技術の項に記載のいかなる参照文献の引用も、このような参照文献が本出願に対する従来技術であることを承認するものとして解釈すべきでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(3. 発明の要旨)
本発明は、費用効果の高い、且つ市販試薬を用いて容易に大規模に実現可能な、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の商業的製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施態様において、本発明は、(1)N-保護又はN-非保護グルタミンをエステル化するステップ、(2)該エステル化されたグルタミンのα-アミノ基を、それが保護されていたら脱保護するステップ、(3)該N-脱保護され、エステル化されたグルタミンを置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングさせるステップ、(4)該カップリング生成物を環化するステップ、及び(5)該環化生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に場合によっては変換するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。
【0008】
他の実施態様において、本発明は、(1)N-保護又はN-非保護グルタミンをエステル化するステップ、(2)該エステル化されたグルタミンのα-アミノ基を、それが保護されていたら脱保護するステップ、(3)該N-脱保護され、エステル化されたグルタミンを置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、(4)該カップリング生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に変換するステップ、及び(5)該変換生成物を環化するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。
【0009】
さらに別の実施態様において、本発明は、スキーム1に示す通りの、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の調製方法を提供し、該スキーム中、R1〜R9、X、及びProtG1は、後に記載する通りである。R1'〜R4'は、R1〜R4置換基の中の1つ又は複数が1つ又は複数のステップでそれぞれ対応するR1'〜R4'置換基に場合によっては変換されてもよいことを意味する。これらの実施態様の1つは、ステップ1、2、3、4、及び5を含む。他の実施態様は、ステップ1、2、3、6、及び7を含む。
【0010】
さらに別の実施態様において、本発明は、スキーム2に示す通りの、モノ-ベンゾ-置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の調製方法を提供し、該スキーム中、R1〜R9、X、及びProtG1は後に記載する通りである。ベンゾ置換基R1は、所望ならR2に転化できる。これらの実施態様の1つは、ステップ1、2、3、4、及び5を含む。他の実施態様は、ステップ1、2、3、6、及び7を含む。
【0011】
さらに別の実施態様において、本発明は、スキーム3に示す通りの、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの合成方法を提供する。これらの実施態様の1つは、ステップ1、2、3、4、及び5を含む。他の実施態様は、ステップ1、2、3、6、及び7を含む。
【0012】
さらに他の実施態様において、本発明の方法は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体を調製するのに有用である。さらに他の実施態様において、本発明の方法は、TNFαの異常に高いレベル又は活性に関連する疾患又は状態を予防又は治療するのに有用な化合物の調製に役立つ。さらに他の実施態様において、本発明の方法な、腫瘍状態を治療又は予防するのに有用な化合物の調製に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(4. 発明の詳細な説明)
4.1 用語
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「ハロ」、「ハロゲン」等の用語は、-F、-Cl、-Br、又は-Iを意味する。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「低分子量ハロ」は、-F又は-Clを意味する。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「高分子量ハロ」は、-Br又は-Iを意味する。
【0014】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「アルキル」は、飽和で一価の、非分枝又は分枝炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例には、限定はしないが、(C1〜C6)アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルなどが含まれる。より長いアルキル基には、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシル基が含まれる。アルキル基は、非置換でも、或いは1つ又は複数の適切な置換基で置換されていてもよい。
【0015】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「アルコキシ」は、酸素原子を経由して他の基に結合しているアルキル基(即ち、-O-アルキル)を意味する。アルコキシ基は、非置換でも、或いは1つ又は複数の適切な置換基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、限定はしないが、(C1〜C6)アルコキシ基、例えば、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-イソプロピル、-O-2-メチル-1-プロピル、-O-2-メチル-2-プロピル、-O-2-メチル-1-ブチル、-O-3-メチル-1-ブチル、-O-2-メチル-3-ブチル、-O-2,2-ジメチル-1-プロピル、-O-2-メチル-1-ペンチル、3-O-メチル-1-ペンチル、-O-4-メチル-1-ペンチル、-O-2-メチル-2-ペンチル、-O-3-メチル-2-ペンチル、-O-4-メチル-2-ペンチル、-O-2,2-ジメチル-1-ブチル、-O-3,3-ジメチル-1-ブチル、-O-2-エチル-1-ブチル、-O-ブチル、-O-イソブチル、-O-t-ブチル、-O-ペンチル、-O-イソペンチル、-O-ネオペンチル、及び-O-ヘキシルが含まれる。
【0016】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルを意味する。例には、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、及び第四級ブチル(tBu、又はt-ブチル)が含まれる。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「低級アルコキシ」は、酸素原子を経由して他の基に結合している低級アルキル基(即ち、-O-低級アルキル)を意味する。例には、限定はしないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、及び第四級ブトキシ(tOBu、又はt-ブトキシ)が含まれる。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「アルコール」は、-OH基で置換されている任意の化合物を意味する。
【0017】
特記しない限り、本発明の化合物には、本発明の化合物を調製するのに有用で、反応性官能基(限定はしないが、カルボキシ、ヒドロキシ、及びアミノ部分など)を含む中間体を含め、それらの保護誘導体も含まれる。「保護誘導体」とは、その反応部位又は部位群が1つ又は複数の保護基(ブロック基としても知られている)でブロックされている化合物である。カルボキシ部分のための適切な保護基には、ベンジル、t-ブチルなどが含まれる。アミノ及びアミド基のための適切な保護基には、アセチル、t-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。ヒドロキシのための適切な保護基にはベンジルなどが含まれる。その他の適切な保護基は、当業者にとって周知である。保護基の選択及び利用、並びに保護基を組み込み、除去するための反応条件は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、T. W. Greenの著書「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版, Wiley, New York, 1999に記載されている。
【0018】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「置換された」は、化合物又は化学作用部分を説明するのに使用する場合には、該化合物又は化学作用部分の少なくとも1つの水素原子が、第2の化学作用部分で取り替えられていることを意味する。第2の化学作用部分は、化合物の所望される活性に悪影響を与えることのない任意の所望する置換基でよい。置換基の例は、本明細書に開示する例示化合物及び実施態様中に見出される置換基、並びに、ハロゲン、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、ヒドロキシル、C1〜C6アルコキシ、アミノ、ニトロ、チオール、チオエーテル、イミン、シアノ、アミド、ホスファナト、ホスフィン、カルボキシル、チオカルボニル、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、酸素(=O)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、単環式又は縮合若しくは非縮合多環式でよい炭素環式シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル)、又は単環式又は縮合若しくは非縮合多環式でよいヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、又はチアジニル)、炭素環若しくは複素環の単環式又は縮合若しくは非縮合多環式アリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、又はベンゾフラニル)、アミノ(第一級、第二級又は第三級)、O-低級アルキル、O-アリール、アリール、アリール-低級アルキル、CO2CH3、CONH2、OCH2CONH2、NH2、SO2NH2、OCHF2、CF3、OCF3、-NH((C1〜C8)アルキル)、-N((C1〜C8)アルキル)2、-NH((C6)アリール)、-N((C6)アリール)2、-CHO、-CO((C1〜C8)アルキル)、-CO((C6)アリール)、-CO2((C1〜C8)アルキル)、及び-CO2((C6)アリール)であり、このような部分は、縮合環構造又はブリッジ、例えば-OCH2O-で置換されていてもよい。これらの置換基は、このような基から選択される置換基でさらに置換されていてもよい。
【0019】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、ある化合物を「実質上含まない」組成物とは、該組成物が、約20重量%未満の、より好ましくは約10重量%未満の、さらにより好ましくは約5重量%未満の、最も好ましくは約3重量%未満の該化合物を含むことを意味する。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「立体化学的に純粋」とは、ある化合物の1種の立体異性体を含み、且つその化合物の別な立体異性体を実質上含まない組成物を意味する。
【0020】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「エナンチオマーとして純粋」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体化学的に純粋な組成物を意味する。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「ラセミ体」又は「ラセミ化合物」とは、分子中のキラル中心のすべてに関して、本発明化合物の、約50%の一方のエナンチオマー及び約50%の対応するエナンチオマーを意味する。本発明は、本発明化合物の、エナンチオマーとして純粋な、エナンチオマーとして濃縮された、ジアステレオマーとして純粋な、ジアステレオマーとして濃縮されたもの、及びラセミ混合物をすべて包含する。
【0021】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「本発明の方法(群)」とは、本発明の化合物を調製するのに有用である、本明細書に開示する方法を指す。本明細書に開示する方法に対する修正態様(例えば、出発原料、試薬、保護基、溶媒、温度、反応時間、精製)も本発明に包含される。
【0022】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「添加する」等の用語は、ある反応物、試薬、溶媒、触媒などを、他の反応物、試薬、溶媒、触媒などと接触させることを意味する。反応物、試薬、溶媒、触媒などは、個別的に、同時に、又は分割して添加することができ、且つ任意の順序で添加できる。それらは、熱の存在下で又は不在下で添加することができ、場合によっては不活性雰囲気下で添加してもよい。
【0023】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「カップリングする」等の用語は、2種以上の反応物を化学反応によって共有結合で連結することを意味する。該連結は、酸(群)、塩基(群)、活性化剤(群)、触媒(群)等々で促進され得る。該連結は、熱、光、音(音波処理)、マイクロ波照射等々の存在下で又は不在下で行うことができ、場合によっては不活性雰囲気下で行うこともできる。
【0024】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「実質上完全な」又は「実質的完結」まで推進される反応とは、該反応物が、パーセント収率で約80%を超える、より好ましくはパーセント収率で約90%を超える、さらにより好ましくはパーセント収率で約95%を超える、最も好ましくはパーセント収率で約97%を超える所望の生成物を含むことを意味する。
【0025】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「医薬として許容し得る塩」とは、医薬として許容し得る非毒性の無機又は有機酸から調製される塩を指す。適切な非毒性酸には、限定はしないが、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、及びp-トルエンスルホン酸が含まれる。例えば、具体的な医薬として許容し得る塩は、塩酸、マレイン酸及び酒石酸の塩である。
【0026】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「水和物」は、非共有結合性分子間力によって拘束された化学量論的又は非化学量論的量の水をさらに含む本発明の化合物又はその塩を意味する。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「溶媒和物」は、本発明化合物に対する1つ又は複数の溶媒分子の会合により形成された含溶媒化合物を意味する。用語「溶媒和物」は水和物(例えば、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)を含む。
【0027】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、用語「多形体」とは、本発明化合物又はその複合体の固体結晶形態群を意味する。同一化合物の異なる多形体は、異なる物理的、化学的及び/又は分光的特性を示す場合がある。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、句「TNFαの異常に高いレベル又は活性に関連した疾患又は状態」とは、TNFαのレベル又は活性がより低いなら、症状を発生しない、持続しない又は惹起しない疾患又は状態、或いはTNFαのレベル又は活性を低下させることによって予防又は治療することができる疾患又は状態を意味する。
【0028】
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「治療する」、「治療」、「治療すること」等の用語は、疾患又は状態の進行、重症度及び/又は持続期間を低減すること又は寛解すること、或いは、1種又は複数の治療用物質(例えば、本発明の化合物等の1種又は複数の治療薬)の適用に由来する疾患又は状態の1つ又は複数の症状(好ましくは、1つ又は複数の認識できる症状)を寛解することを指す。
本明細書中で使用する場合で且つ特記しない限り、「予防する」、「予防」、「予防すること」等の用語は、所定の疾患又は状態を獲得する又は進行させる危険の低減、或いは、所定の疾患又は条件の1つ又は複数の症状の再発、開始、又は進行の低減又は抑制を指す。
【0029】
基又は試薬に対する頭字語又は記号は、次の定義を有する、即ち、ProtG=保護基、Cbz=ベンジルオキシカルボニル、Boc=t-ブチルオキシカルボニル、Fmoc=9-フルオレニルメトキシカルボニル、p-TsOH=パラ-トルエンスルホン酸、TFA=トリフルオロ酢酸、TMSCl=トリメチルシリルクロリド、DMAP=N,N-ジメチルアミノピリジン、DBU=1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン、CDI=1,1'-カルボニルジイミダゾール、NBS=N-ブロモコハク酸イミド、VAZO(登録商標)=1,1'-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル)、DMF=N,N-ジメチルホルムアミド、THF=テトラヒドロフラン、DCM=ジクロロメタン、MTBE=メチルtert-ブチルエーテルである。
【0030】
描いた構造とその構造に付与した名称の間に不一致がある場合、描いた構造がより重視されるものとする。さらに、構造及びその一部の立体化学が、例えば肉太線又は断続線で示されていない場合には、該構造又はその一部は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈されるものとする。
本発明は、次の詳細な説明、及び本発明の非制限的実施態様を例示することを意図した例示的実施例を参照することによってより十分に理解され得る。
【0031】
4.2 本発明の方法
本発明は、費用効果が高く、且つ効率的な置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の商業的製造方法を提供する。一実施態様において、本発明は、(1)グルタミンのα-アミノ基を保護するステップ、(2)該N-保護グルタミンをエステル化するステップ、(3)該エステル化されたグルタミンのα-アミノ基を脱保護するステップ、(4)該N-脱保護されたグルタミンエステルを置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、(5)該カップリング生成物を環化するステップ、及び(6)該環化生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に場合によっては変換するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。一実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは遊離のアミンである。他の実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは酸付加塩である。特定の実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは塩酸塩である。
【0032】
他の実施態様において、本発明は、(1)グルタミンをエステル化するステップ、(2)該エステル化されたグルタミンを置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、(3)該カップリング生成物を環化するステップ、及び(4)該環化生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に場合によっては変換するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。一実施態様において、エステル化されたグルタミンは遊離のアミンである。他の実施態様において、エステル化されたグルタミンは酸付加塩である。特定の実施態様において、エステル化されたグルタミンは塩酸塩である。
【0033】
さらに他の実施態様において、本発明は、(1)グルタミンのα-アミノ基を保護するステップ、(2)該N-保護グルタミンをエステル化するステップ、(3)該エステル化されたグルタミンのα-アミノ基を脱保護するステップ、(4)該N-脱保護グルタミンエステルを、置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、(5)該カップリング生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に変換するステップ、及び(6)該変換生成物を環化するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。一実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは遊離のアミンである。他の実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは酸付加塩である。特定の実施態様において、N-脱保護グルタミンエステルは塩酸塩である。
【0034】
さらに他の実施態様において、本発明は、(1)グルタミンをエステル化するステップ、(2)該エステル化されたグルタミンを置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、(3)該カップリング生成物上の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に変換するステップ、及び(4)該変換生成物を環化するステップを含む、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンの調製方法を提供する。一実施態様において、エステル化されたグルタミンは遊離のアミンである。他の実施態様において、エステル化されたグルタミンは酸付加塩である。特定の実施態様において、エステル化されたグルタミンは塩酸塩である。
【0035】
一実施態様において、本発明は、式Iの化合物
【化1】

(ここで、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法に関するものであり、
該調製方法は、
(1)(a)グルタミンエステル又はその塩を置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、
(b)該カップリング生成物を環化するステップ、及び
(c)該環化生成物の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に場合によっては変換するステップからなる手順、或いは、
(2)(a)グルタミンエステル又はその塩を置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、
(b)該カップリング生成物の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別の置換基(群)に変換するステップ、及び
(c)該変換生成物を環化するステップからなる手順のいずれかを含む。
【0036】
上記の諸実施態様の場合、グルタミンのα-アミノ基を、例えばアミド(例えば、トリフルオロアセトアミド)として又はカルバミン酸エステル(例えば、Cbz、Boc、又はFmocカーバメート)として保護できる。N-保護基は、限定はしないが、接触水素化分解で(例えば、Cbzカーバメートの場合)、酸性条件下で(例えば、Bocカーバメートの場合)、又は塩基性条件下で(例えばFmocカーバメート又はトリフルオロアセトアミドの場合)を含む種々の方式で除去できる。N-保護又はN-非保護グルタミンのカルボキシル基は、例えばアルキル又はベンジルエステルとしてエステル化できる。種々のエステル化方法が当技術分野で周知である。例えば、エステル化は、対応するアルコール中、酸性条件下で行うことができる。対応するアルコールを、エステル化のための活性化剤、例えばカルボジイミド等の存在下で使用することもできる。エステル化は、塩基性条件下で対応するアルキルハライド又はベンジルハライドを使用して実施することもできる。
【0037】
グルタミンエステル又はその塩は、置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルに、塩基性条件下でカップリングできる。置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルは、対応する置換されていてもよい2-アルキル安息香酸エステルを、例えばフリーラジカルの条件下で適切なハロゲン化剤を使用してハロゲン化することによって生成させることができる。2,6-ピペリジンジオン部分を形成するための環化は、受容基としてエステル基を用い、酸性又は塩基性条件下で行うことができる。環化は、受容基としてカルボキシル基を用い、活性化剤(例えば、塩化チオニル、オキサリルクロリド、CDIなど)の存在下でも実施できる。ベンゾ置換基の可能な各種変換方法の1つとして、ベンゾ-NO2基は-NH2基に還元可能であり、保護されたベンゾ-NHProtG2基を脱ブロックして-NH2基を得ることができる。
【0038】
さらに別の実施態様において、本発明は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の、スキーム1に示す通りの調製方法を提供する。これらの実施態様において、
(a)R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
(b)R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
(c)R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
(d)R8は、水素、アルキル、又はベンジルであり、
(e)R9はアルキルであり、
(f)Xはハロであり、且つ
(g)ProtG1及びProtG2のそれぞれは、出現するごとに独立に、適切なN-保護基である。
【0039】
R1'、R2'、R3'、及びR4'は、R1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数が、1つ又は複数のステップで、それぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基に場合によっては変換されることを意味する。
【0040】
【化2】

【0041】
スキーム1の一実施態様において、
(a)R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、低分子量ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
(b)R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又は低級アルキルであり、
(c)R7は、水素又は低級アルキルであり、
(d)R8は、水素、低級アルキル、又はベンジルであり、
(e)R9は低級アルキルであり、
(f)Xは高分子量ハロであり、且つ
(g)ProtG1及びProtG2のそれぞれは、出現するごとに独立に、適切なアシルN-保護基である。
【0042】
スキーム1の他の実施態様において、
(a)R1、R2、R3、R4のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、-NO2、又は-NHProtG2であり、
(b)R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、-NHProtG2、又は-NH2であり、
(c)R7は、水素又はメチルであり、
(d)R8は、水素又はメチルであり、
(e)R9はメチルであり、
(f)Xはブロモであり、
(g)ProtG1は、Cbz又はBocであり、且つ
(h)ProtG2は、Cbz、Boc、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、又はピバロイルである。
【0043】
一実施態様において、本発明は式Iの化合物
【化3】

(ここで、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法に関するものであり、
該調製方法は、
(1)(a)式5の化合物
【化4】

を環化するステップ、
(b)式6の環化生成物
【化5】

のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の中の1つ又は複数を、1つ又は複数のステップで、式Iの化合物のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及びR4'置換基の1つ又は複数に場合によっては変換するステップからなる手順、或いは、
(2)(a)式5の化合物
【化6】

のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数を、1つ又は複数のステップで、式7の化合物
【化7】

のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及びR4'置換基の1つ又は複数に変換するステップ、
(b)式7の変換生成物を環化するステップからなる手順のいずれかを含み、
ここで、ステップ手順の双方に関して、特記しない限り、
R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
R8は、手順(1)の場合にはアルキル又はベンジルであり、手順(2)の場合には水素、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である。
【0044】
スキーム1の一実施態様では、ステップ1でN-保護グルタミン1をエステル化する。N-保護グルタミンは、商業的に入手可能であるか、或いは当技術分野で周知のようにグルタミンのα-アミノ基を保護することによって調製できる(例えば、T. W. Green, 「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版, Wiley, New York, 1999を参照のこと)。一実施態様において、ProtG1は適切なN-保護基であり、R8は低級アルキル又はベンジルである。特定の実施態様において、ProtG1はCbzであり、R8はメチルである。R8及びエステル化条件の選択は、とりわけN-保護基の性質によって決まる。一実施態様において、ProtG1はFmocであり、R8はt-ブチルであり、エステル化は、2-メチル-プロプ-1-エン及び触媒量の酸を採用して実施される。他の実施態様において、ProtG1はBocであり、R8はメチルであり、エステル化はMeI及びDBUを使用して実施される。
【0045】
さらに他の実施態様において、ProtG1はCbzであり、R8は低級アルキルであり、エステル化は酸性条件下に対応する低級アルコール中で実施される。さらなる実施態様において、エステル化は、触媒量の活性化剤(群)の存在下で低級アルコール中で実施される。特定の実施態様において、活性化剤はTMSClである。他の特定の実施態様において、活性化剤は塩化アセチルである。さらに他の特定の実施態様において、活性化剤は、TMSCl及び塩化アセチルである。低級アルコール中でのエステル化は、一実施態様では高められた温度で実施される。特定の実施態様において、低級アルコール中でのエステル化は、該低級アルコールが還流する温度で実施される。低級アルコール中でのエステル化は、一般に、反応が実質上完結するまで行われる。ある実施態様において、低級アルコール中でのエステル化は少なくとも約4時間行われる。特定の実施態様において、ProtG1はCbzであり、R8はメチルであり、エステル化はメタノール中で行われる。
【0046】
スキーム1のステップ2で、エステル2のN-保護基を開裂する。一実施態様において、N-脱保護エステル3は遊離のアミンである。他の実施態様において、N-脱保護エステル3は酸付加塩である。特定の実施態様において、N-脱保護エステル3は塩酸塩である。ProtG1及びN-ブロック基の開裂条件の選択は、とりわけ、エステル基R8の性質によって決まる。一実施態様において、R8は低級アルキル又はベンジルであり、ProtG1はBocであり、該N-Boc基は酸性条件下で開裂される。特定の実施態様において、N-Boc基はTFAを使用して開裂される。他の特定の実施態様において、N-Boc基は、HClを使用して開裂される。他の実施態様において、R8はt-ブチルであり、ProtG1はFmocであり、該N-Fmoc基は塩基性条件下で開裂される。ある実施態様において、該N-Fmoc基はピペリジンを使用して開裂される。
【0047】
さらなる実施態様において、R8は低級アルキルであり、ProtG1はCbzであり、該N-Cbz基は水素下での接触水素化分解によって開裂される。一実施態様において、該N-Cbz基は金属触媒を使用して開裂される。さらなる実施態様において、該金属触媒はPd触媒である。特定の実施態様において、該触媒は5%Pd/Cである。他の特定の実施態様において、該触媒は10%Pd/Cである。水素化分解は、一般に、反応を実質上の完結まで推進する水素圧下で行われる。ある実施態様において、水素化分解は、約40〜50psiの水素圧下で行われる。水素化分解は、一実施態様においてプロトン性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、該プロトン性溶媒は低級アルコールである。特定の実施態様において、該溶媒はメタノールである。他の実施態様において、該溶媒はエタノールである。水素化分解は、他の実施態様において非プロトン性溶媒中で行われる。特定の実施態様において、該非プロトン性溶媒は酢酸エチルである。水素化分解は、さらに他の実施態様においてプロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の混合物中で行われる。ある実施態様において、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の混合物は、低級アルコール及び酢酸エチルを含む。特定の実施態様において、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の混合物は、メタノール及び酢酸エチルを含む。他の特定の実施態様において、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の混合物は、エタノール及び酢酸エチルを含む。水素化分解は、ある実施態様において酸を添加しないで実施される。他の実施態様において、水素化分解は、酸を添加して実施される。特定の実施態様において、添加される酸はHClである。水素化分解は、一般に、反応が実質上完結するまで行われる。一実施態様において、水素化分解は少なくとも約3時間行われる。
【0048】
スキーム1の他の実施態様において、エステル3は、そのアミノ基及びカルボキシル基が保護されていないグルタミンから直接に形成できる。エステル3は、一実施態様において遊離のアミンである。他の実施態様において、エステル3は酸付加塩である。特定の実施態様において、エステル3は塩酸塩である。一実施態様において、R8は低級アルキルであり、エステル化は酸性条件下に対応する低級アルコール中で行われる。さらなる実施態様において、エステル化は、触媒量の活性化剤(群)の存在下で低級アルコール中で行われる。特定の実施態様において、該活性化剤はTMSClである。他の特定の実施態様において、活性化剤は塩化アセチルである。さらに他の特定の実施態様において、活性化剤は、TMSCl及び塩化アセチルである。低級アルコール中でのエステル化は、一実施態様では高められた温度で実施される。特定の実施態様において、低級アルコール中でのエステル化は、該低級アルコールが還流する温度で実施される。低級アルコール中でのエステル化は、一般に、反応が実質上完結するまで行われる。ある実施態様において、低級アルコール中でのエステル化は、少なくとも約4時間行われる。特定の実施態様において、R8はメチルであり、エステル化はメタノール中で行われる。さらに、エステル3の酸付加塩は、グルタミンメチルエステル塩酸塩のように、商業的に入手できる。
【0049】
スキーム1のステップ3では、ベンジルハライド4を、一実施態様では遊離のアミン3に、或いは他の実施態様では酸付加塩3にカップリングさせる。カップリングは、一実施態様では塩基の存在下で行われる。一実施態様において、該塩基はアルキルアミンである。特定の実施態様において、該塩基はNEt3である。さらなる実施態様において、該塩基はiPrEt2Nである。他の実施態様において、該塩基は、炭酸塩又は重炭酸塩である。特定の実施態様において、該塩基はNaHCO3である。さらに他の実施態様において、該塩基はピリジンである。特定の実施態様において、該塩基は4-DMAPである。カップリングは、一実施態様において極性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、該極性溶媒は非プロトン性である。特定の実施態様において、該溶媒はDMFである。他の特定の実施態様において、該溶媒は、アセトニトリルである。さらに他の特定の実施態様において、該溶媒はTHFである。カップリングは、一実施態様では外界温度で実施される。他の実施態様において、カップリングは、高められた温度で実施される。特定の実施態様において、カップリングは、該溶媒が還流する温度で実施される。カップリングは、一般に、該反応が実施上完結するまで行われる。一実施態様において、カップリングは少なくとも約1時間行われる。
【0050】
ベンジルハライド4は、対応する置換されていてもよい2-アルキル安息香酸エステルをハロゲン化することによって生成させることができる。Xは、一実施態様ではハロである。他の実施態様において、Xは高分子量ハロである。特定の実施態様において、Xはブロモであり、臭化ベンジル4は、対応する置換されていてもよい2-アルキル安息香酸エステルをラジカル開始剤の存在下で臭素化剤を用いて臭素化することによって調製される。特定の実施態様において、該臭素化剤はNBSである。ラジカル開始剤は特定の実施態様では光であり、他の特定の実施態様ではVAZO(登録商標)(即ち、1,1'-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル))である。R9は、一実施態様では低級アルキルである。特定の実施態様において、R9はメチルである。
【0051】
スキーム1の共通中間体5から、2,6-ピペリジンジオン環を形成するための環化、並びに1つ又は複数のステップでの任意選択による、1つ又は複数のベンゾ置換基R1、R2、R3、及び/又はR4の変換は、異なる順序で行うことができる。一実施態様において、環化は、ステップ5における1つ又は複数のベンゾ置換基の任意選択による変換に先立って、ステップ4で行われる(1つ又は複数のステップを含むことができる)。化合物6及びIは、双方とも置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類である。
【0052】
一実施態様において、スキーム1のステップ4での環化は、受容基としてエステル基を用いて行われる。ある実施態様において、R8は低級アルキルである。特定の実施態様において、R8はメチルである。環化は、一実施態様では酸の存在下で実施される。さらなる実施態様では、触媒量の酸が使用される。特定の実施態様において、該酸はp-TsOHである。酸性条件下での環化は、一実施態様では非プロトン性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、該非プロトン性溶媒は非極性である。特定の実施態様において、該溶媒はトルエンである。環化は、ある実施態様では外界温度で行われる。他の実施態様において、環化は、高められた温度で行われる。特定の実施態様において、環化は、該溶媒が還流する温度で行われる。
【0053】
受容基としてエステル基を用いる環化は、他の実施態様では塩基の存在下で行われる。一実施態様において、該塩基はアルコキシドである。さらなる実施態様において、該塩基は立体的にかさばったアルコキシドである。特定の実施態様において、該塩基はKOtBuである。他の実施態様において、該塩基は炭酸塩である。特定の実施態様において、該塩基はK2CO3である。塩基性条件下の環化は、一実施態様では非プロトン性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、該非プロトン性溶媒は極性である。特定の実施態様において、該溶媒はTHFである。他の特定の実施態様において、該溶媒はアセトニトリルである。環化は、一般に、反応を実質上の完結まで推進する温度で行われる。ある実施態様において、環化は外界温度で行われる。他の実施態様において、環化は外界温度未満の温度で行われる。特定の実施態様において、環化は約0〜5℃の間で行われる。環化は、さらに他の実施態様では高められた温度で行われる。特定の実施態様において、環化は、該溶媒が還流する温度で行われる。環化は、一般に、該反応が実質上完結するまで実施される。ある実施態様において、環化は、少なくとも0.5時間の間実施される。
【0054】
他の実施態様において、環化は、受容基としてカルボキシル基(即ち、R8が水素)を用いて行われる。一実施態様において、環化は、カルボキシル基を活性化する活性化剤を用いて実施される。特定の実施態様において、該活性化剤は塩化チオニルである。他の特定の実施態様において、該活性化剤はCDIである。環化は、他の実施態様では第二活性化剤の存在下で実施される。特定の実施態様において、該第二活性化剤は4-DMAPである。環化は、一実施態様では塩基の存在下で行われる。ある実施態様において、該塩基はアルキルアミンである。特定の実施態様において、該塩基はNEt3である。さらなる実施態様において、該塩基はiPrEt2Nである。他の実施態様において、該塩基はピリジン属のアミンに属する。特定の実施態様において、該塩基はピリジンである。環化は、他の実施態様では塩基の混合物の存在下で行われる。ある実施態様において、塩基の混合物は、アルキルアミン、及びピリジン族のアミンに属するアミンを含む。特定の実施態様において、塩基の混合物は、NEt3とピリジンである。環化は、一実施態様において非プロトン性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、該非プロトン性溶媒は極性である。特定の実施態様において、該溶媒はDCMである。他の特定の実施態様において、該溶媒はTHFである。環化は、一般に、該反応を実質上の完結まで推進する温度で行われる。ある実施態様において、環化は、外界温度以下の温度領域で行われる。特定の実施態様において、環化は、約-30℃〜外界温度で行われる。環化は、他の実施態様において高められた温度で行われる。特定の実施態様において、環化は、該溶媒が還流する温度で行われる。環化は、一般に、該反応が実質上完結するまで実施される。ある実施態様において、環化は、少なくとも約3時間実施される。
【0055】
受容基としてカルボキシル基を用いる環化が望まれる場合、該カルボキシル基は、アミン又は酸付加塩3をベンジルハライド4にカップリングした後に、エステル基から、とりわけ中間体5のエステル基及びその他官能基の性質に応じた各種の方法で生成させることができる。一実施態様において、R8はベンジルであり、該ベンジルエステルは、触媒を用いる水素化分解によりカルボキシル基に変換される。ある実施態様において、該触媒は金属触媒である。さらなる実施態様において、該触媒はPd触媒であり、特定の実施態様においてPd/C触媒である。他の実施態様において、R8はt-ブチルであり、該t-ブチルエステルは、酸の存在下でカルボキシル基に転換される。酸は、特定の実施態様においてTFAであり、他の特定の実施態様ではHClである。さらに他の実施態様において、R8は低級アルキルである。R8は、特定の実施態様においてメチルである。ある実施態様において、低級アルキルエステルは、酸及び水の存在下でカルボキシル基に転換される。他の実施態様において、低級アルキルエステルは、塩基の存在下でカルボキシル基に転換される(適切な酸性化処理後に)。ある実施態様において、該塩基は水酸化物である。該塩基は、特定の実施態様ではLiOHであり、他の特定の実施態様ではNaOHであり、さらに他の特定の実施態様ではKOHである。
【0056】
ラセミ体の置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンが所望される場合には、受容基としてエステル基を用いて塩基性条件下で環化を行うと好結果が得られる。塩基は、R7が水素である場合、R7が結合している任意のキラルな立体中心をラセミ化できる。逆に、エナンチオマーとして純粋な置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンが所望される場合には、受容基としてエステル基を用いて酸性条件下で、又は受容基としてカルボキシル基を用いて活性化剤(群)の存在下で環化を行うと有利である可能性がある。これら2つの後者のシナリオにおいて、該反応条件は、R7が結合している任意のキラルな立体中心の立体化学の保持をもたらす。
【0057】
環化してグルタルイミド環を形成した後、1つ又は複数のベンゾR1、R2、R3、及び/又はR4置換基を、1つ又は複数のステップで、それぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基に場合によっては変換できる(スキーム1のステップ5として要約)。一実施態様では、R1、R2、R3、又はR4の中の1つが-NO2であり、それは、還元されて-NH2であるそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、又はR4'になる。特定の実施態様では、R4が-NO2であり、それは、還元されて-NH2であるR4'になる。-NO2から-NH2への還元は、一実施態様において金属触媒を用いて水素下で実施される。さらなる実施態様において、該触媒はPd触媒である。特定の実施態様において、該触媒は10%Pd/Cである。他の実施態様において、該触媒は5%Pd/Cである。還元は、一実施態様においてプロトン性溶媒中で行われる。さらなる実施態様において、プロトン性溶媒はアルコールであり、一実施態様では低級アルコールである。溶媒は、特定の実施態様でエタノールであり、他の実施態様でメタノールである。他の実施態様において、溶媒は、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール又はt-ブタノールである。他の実施態様において、還元は、非極性の非プロトン性溶媒中で行われる。溶媒は、特定の実施態様において1,4-ジオキサンである。さらに他の実施態様において、還元は、極性の非プロトン性溶媒中で行われる。該溶媒は、特定の実施態様においてアセトンである。他の実施態様において、該溶媒はDMSO、DMF又はTHFである。還元は、一般に、反応を実質上の完結まで推進する水素圧で実施される。特定の実施態様において、還元は、約40〜50psiの間の水素圧で実施される。一実施態様において、還元は、外界温度で実行される。還元は、一般に、反応が実質上完結するまで実施される。一実施態様において、還元は少なくとも約2時間実施される。
【0058】
他の実施態様において、R1、R2、R3、又はR4の中の1つが-NHProtG2であり、それを脱保護して、-NH2であるそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、又はR4'が得られる。特定の実施態様では、R4が-NHProtG2であり、それを脱保護して、-NH2であるR4'が得られる。一実施態様において、ベンゾ-NHProtG2置換基の保護基ProtG2は、温和な条件下で選択的に除去できるアシル基である。ProtG2は、特定の実施態様においてホルミルであり、他の特定の実施態様においてアセチル基である。さらなる実施態様において、ProtG2は、カルボニル基のα位で分枝した低級アルカノイル基である。ProtG2は、特定の実施態様においてピバロイルであり、他の特定の実施態様においてトリフルオロアセチルである。特定の実施態様では、ベンゾ-NHC(O)CF3基を塩基性条件下で脱ブロックする。他の実施態様において、-NHProtG2はカルバミン酸エステルである。ProtG2は、特定の実施態様においてBocであり、他の特定の実施態様においてCbzである。特定の実施態様において、ベンゾ-NHBoc基は酸性条件下で脱保護され、ベンゾ-NHCbzは触媒を用いる水素化分解で脱ブロックされる。
【0059】
ProtG2の選択は、とりわけ、その開裂を望まない反応条件下での該保護基の安定性によって、及び該保護基を除去するのに必要な条件下でのその他の官能基の安定性によって決まる。ProtG2及びそれを除去するための条件に関する種々の選択は、例えば、T. W. Green「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版, Wiley, New York, 1999に記載されているように、当技術分野で周知である。ベンゾ-NHProtG2置換基(群)を有する置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類そのものも、生物学的特性を示す場合があり、したがって、ProtG2の除去が所望されない場合もある。
【0060】
別法として、スキーム1の共通中間体5から、1つ又は複数のベンゾR1、R2、R3、及び/又はR4置換基を、1つ又は複数のステップ(ステップ6として要約)で、それぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基に変換し、その後、ステップ7でオキソイソインドリン7を環化すると置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンIが生成する。ステップ4での環化及びステップ5でのベンゾ置換基(群)の変換に関する上記の説明、並びにステップ4及び5について本明細書で説明するさらなる実施態様は、ステップ6でのベンゾ置換基(群)の変換及びステップ7での環化に一般的に当てはまる。さらに、環化がステップ7において受容基としてカルボキシル基を用いて行われる場合には、水素としてのR8を有する化合物7を、アルキル又はベンジルとしてのR8を有する対応化合物7から生成させることができる。
【0061】
ベンゾ置換基(群)の転換に先立って環化を実施するか、或いは環化に先立ってベンゾ置換基(群)の転換を実施するかは、種々の要因によって決めることができる。例えば、ベンゾ置換基を変換すると、環化に所望される条件に適合しない別の置換基が生じる場合には、ステップ5でのベンゾ置換基の変換に先立ってステップ4の環化を行うことが望ましい場合もある。
【0062】
スキーム2は、モノ-ベンゾ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類の合成に関する特定の実施態様を例示する。これらの実施態様において、
(a)R1及びR2のそれぞれは、出現するごとに独立に、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、且つベンゾ環上の任意の位置を占めることができ、
(b)R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
(c)R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
(d)R8は、水素、アルキル、又はベンジルであり、
(e)R9はアルキルであり、
(f)Xはハロであり、且つ
(g)ProtG1及びProtG2のそれぞれは、出現するごとに独立に、適切なN-保護基である。
R2は、R1をR2に場合によっては変換できることを意味する。
【0063】
【化8】

【0064】
スキーム2の一実施態様において、
(a)R1及びR2のそれぞれは、出現するごとに独立に、低分子量ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、且つベンゾ環上の任意の位置を占めることができ、
(b)R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又は低級アルキルであり、
(c)R7は、水素又は低級アルキルであり、
(d)R8は、水素、低級アルキル、又はベンジルであり、
(e)R9は低級アルキルであり、
(f)Xは高分子量ハロであり、且つ
(g)ProtG1及びProtG2のそれぞれは、出現するごとに独立に、適切なアシルN-保護基である。
【0065】
スキーム2の他の実施態様において、
(a)R1は、-NO2又は-NHProtG2であり、且つベンゾ環上の任意の位置を占めることができ、
(b)R2は-NH2であり、且つベンゾ環上でR1と同一の位置を占め、
(c)R7は、水素又はメチルであり、
(d)R8は、水素又はメチルであり、
(e)R9はメチルであり、
(f)Xはブロモであり、
(g)ProtG1は、Cbz又はBocであり、且つ
(h)ProtG2は、Cbz、Boc、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、又はピバロイルである。
【0066】
一実施態様において、本発明は、式IIの化合物
【化9】

(式中、
R2は、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法に関するものであり、
該調製方法は、
(1)(a)式9の化合物
【化10】

を環化するステップ、
(b)式10の環化生成物
【化11】

のR1置換基を式IIの化合物のR2置換基に場合によっては変換するステップからなる手順、或いは
(2)(a)式9の化合物
【化12】

のR1置換基を式11の化合物
【化13】

のR2置換基に変換するステップ、及び
(b)式11の変換生成物を環化するステップからなる手順のいずれかを含み、
ここで、一連の手順の双方について、特記しない限り、
R1、R2のそれぞれは、出現するごとに独立に、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
R8は、手順(1)の場合にはアルキル又はベンジルであり、手順(2)の場合には水素、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である。
【0067】
スキーム1の説明及びスキーム1に関する本明細書に記載のさらなる実施態様は、一般に、スキーム2に当てはまる。具体的には、スキーム1のステップ1、2、3、4、5、6、及び7の説明及びスキーム1に関する本明細書に記載のさらなる実施態様は、一般に、スキーム2のそれぞれ対応するステップ1、2、3、4、5、6、及び7に当てはまる。
【0068】
2,6-ピペリジンジオン環を形成するための環化及びベンゾ置換基R1のR2の任意選択での変換は、スキーム2の共通中間体9から異なる順序で行うことができる。一実施態様において、環化は、ステップ5におけるベンゾ置換基の変換に先立って、ステップ4で行われる。化合物10及びIIは、双方ともモノ-ベンゾ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類である。他の実施態様では、ステップ7で環化してIIを生成させる前に、ステップ6でベンゾ置換基を変換する。
【0069】
スキーム2のステップ4又はステップ7におけるグルタミン側鎖の環化は、種々の方法で実施できる。一実施態様において、環化は、受容基としてエステル基(例えばR8が低級アルキル)を用いて酸性条件下で行われる。他の実施態様において、環化は、受容基としてエステル基(例えば、R8が低級アルキル)を用いて塩基性条件下で行われる。酸性又は塩基性条件下で、R8は、特定の実施態様においてメチルである。さらに他の実施態様において、環化は、受容基としてカルボキシル基(即ち、R8が水素)を用いて活性化剤(群)の存在下で行われる。
【0070】
環化条件の選択は、とりわけ、環化生成物に所望される立体化学によって決まる。塩基性条件下で受容基としてエステル基を用いる環化は、R7が水素である場合、R7が結合している任意のキラルな立体中心のラセミ化を引き起こす。対照的に、酸性条件下で受容基としてエステル基を用いる、又は活性化剤(群)の存在下で受容基としてカルボキシル基を用いる環化は、R7が結合している任意のキラルな立体中心の立体化学を保持することにつながる。
【0071】
所望であれば、ベンゾ置換基R1をR2へ転換する多くの可能な方法が存在する。一実施態様において、R1は-NO2であり、それは-NH2に還元される。特定の実施態様において、R1は4-NO2であり、それは4-NH2に還元される。ベンゾのニトロ基の還元は、一実施態様において金属触媒によって促進される。該触媒は、さらなる実施態様においてPd触媒であり、特定の実施態様においてPd/C触媒である。他の実施態様において、R1は-NHProtG2であり、その保護基ProtG2を開裂して-NH2が得られる。R1は、特定の実施態様において、4-NHProtG2であり、そのProtG2を除去して4-NH2が得られる。さらに他の実施態様において、ProtG2はCbzであり、これは金属触媒を用いる水素化分解によって除去される。該触媒は、さらなる実施態様においてPd触媒であり、特定の実施態様においてPd/C触媒である。金属触媒を用いてベンゾ-NO2基を-NH2に還元する場合、又は金属触媒を用いてベンゾ-NHCbz基を脱ブロックする場合、スキーム2のステップ6での変換の後にステップ7での環化を実施することの1つの潜在的利点は、そのことによって、ステップ4での環化の後にステップ5での変換を行う場合よりも、最終生成物IIに結合する残留金属がより少ない可能性があることである。
【0072】
本発明の特定の実施態様は、スキーム3の治療上有効な3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの合成によって例示される。スキーム1の説明及びスキーム1に関する本明細書に記載のさらなる実施態様は、一般に、スキーム3に当てはまる。具体的には、スキーム1のステップ1、2、3、4、5、6、及び7の説明、及びスキーム1に関する本明細書に記載のさらなる実施態様は、一般に、スキーム3のそれぞれ対応するステップ1、2、3、4、5、6、及び7に当てはまる。限定はしないが、反応溶媒、反応時間、反応温度、試薬、出発原料、及び3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの合成に関する特定の実施態様中の官能基を含む変数の修正態様は、当業者にとって明らかであろう。
【0073】
【化14】

【0074】
一実施態様において、本発明は、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン
【化15】

又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法に関するものであり、該調製方法は、
(1)(a)式16の化合物
【化16】

を環化するステップ、及び
(b)式17の環化生成物
【化17】

の-NO2基を-NH2基に還元するステップからなる手順、或いは
(2)(a)式16の化合物
【化18】

の-NO2基を-NH2基に還元するステップ、及び
(b)式18の還元生成物
【化19】

を環化するステップからなる手順のいずれかを含む。
【0075】
スキーム3に示す3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの合成に関する特定の実施態様では、N-Cbz-グルタミン12(エナンチオマー及びラセミ化合物の双方とも商業的に入手できる)を、還流メタノール中で触媒量の塩化アセチル及びTMSClを用いてメチルエステル13に転換する。ステップ2で、メタノール中、5%Pd/C上で水素化分解することによってN-Cbzブロック基を除去し、遊離のアミン14を得る。グルタミンメチルエステルのエナンチオマー及びラセミ化合物の双方のHCl塩14も商業的にも入手可能であるか、或いは、当技術分野で周知であるように、対応するグルタミンのエナンチオマー又はラセミ化合物からHCl源の存在下でメタノール中で直接製造できる。次いで、グルタミンメチルエステルの遊離アミン又はHCl塩14を、トリエチルアミン/還流アセトニトリル中、又はNaHCO3/還流アセトニトリル中で臭化ベンジル15とカップリングしてオキソイソインドリン16を得る。臭化ベンジル15の合成は、国際公開第98/03502号(19頁、実施例11を参照のこと)に記載されている。
【0076】
スキーム3の共通中間体16から、2つの異なる方法で3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを生成させることができる。グルタルイミド環を形成するための環化は、ステップ5におけるメタノール中、10%Pd/C上でのニトロ基の最終生成物への還元に先立って、ステップ4で酸性条件下(例えば、触媒量のp-TsOH/還流トルエン)又は塩基性条件下(例えば、KOtBu/THF若しくはK2CO3/アセトニトリル)で行うことができる。別法として、オキソイソインドリン16のニトロ基を、ステップ6においてメタノール中、5%Pd/C上でアニリン18に還元することができ、次いで、ステップ7で酸性条件下(例えば、触媒量のp-TsOH/還流トルエン)又は塩基性条件下(例えば、KOtBu/THF若しくはK2CO3/還流アセトニトリル)で環化を実施して最終生成物を得る。
【0077】
環化条件の選択は、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンに所望される立体化学によって決まる。エナンチオマーとして純粋な3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを所望する場合には、スキーム3のステップ4又はステップ7の環化を、酸性条件下(例えば、触媒量のp-TsOH/還流トルエン)で行い、それぞれL-又はD-グルタミンメチルエステル14を使用する合成で(S)又は(R)の最終生成物を得ることができる。一方、ラセミ体の3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを所望する場合には、ステップ4又はステップ7の環化を、塩基性条件下(例えば、KOtBu/THF若しくはK2CO3/アセトニトリル)で行い、より安価なL-グルタミンメチルエステル塩酸塩14を使用する合成でラセミ体の最終生成物を得ることができる。
【0078】
一実施態様において、本発明の方法は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体を調製するのに有用である。他の実施態様において、本発明の方法は、限定はしないが、癌、炎症性疾患、及び自己免疫疾患を含む、TNFαの異常に高いレベル又は活性に関連する疾患又は状態を予防又は治療するのに有用な化合物を調製するのに役立つ。
【0079】
3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの多形体は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、2003年9月4日出願の米国特許仮出願第60/499,723号に記載の方法に従って調製できる。一実施態様において、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの形態Aは、約270℃で融解し、弱吸湿性又は吸湿性のない非溶媒和の結晶性固体である。それは、限定はしないが、1-ブタノール、酢酸ブチル、エタノール、酢酸エチル、メタノール、メチルエチルケトン、及びTHFを始めとする各種の非水性溶媒からの結晶化によって得ることができる。他の実施態様において、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの形態Bは、約267℃で融解する半水和の結晶性固体である。それは、限定はしないが、ヘキサン、トルエン及び水を始めとする各種溶媒からの結晶化によって得ることができる。さらに他の実施態様において、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの形態Cは、約269℃で融解する半溶媒和の結晶性固体である。それは、限定はしないが、アセトン溶媒系を始めとする溶媒系中での蒸発、スラリー化、及び徐冷により得ることができる。上記引用特許出願に記載されているように、3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのその他の多形体も得ることができる。
【実施例】
【0080】
(5. 実施例)
(キラルな及びラセミ体の3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの合成)
L-N-ベンジルオキシカルボニル-グルタミンメチルエステル(13)の調製
L-N-Cbz-グルタミン、塩化アセチル(0.1当量)、及び触媒TMSClのメタノール溶液を4〜6時間還流し、標題化合物を生成させた(収率70〜80%)。
【0081】
L-グルタミンメチルエステル(14)の調製
L-N-Cbz-グルタミンメチルエステルと5%Pd/Cの混合物を、メタノール中、水素下(40psi)で攪拌した。触媒を濾過し、溶媒を真空で除去した。粗生成物を後に続くカップリング反応に使用した。
【0082】
N-(1-オキソ-4-ニトロイソインドリン-2-イル)-L-グルタミンメチルエステル(16)の調製
アセトニトリル(30mL)中のL-グルタミンメチルエステル(0.010ミリモル)と2-ブロモメチル-3-ニトロ安息香酸メチル(0.010ミリモル)の混合物に、トリエチルアミン(0.021ミリモル)を添加した。混合物を1時間還流した後、水(2mL)を添加し、アセトニトリルを真空で除去した。得られた残留物に水(50mL)を添加し、生じた固体を、濾過し、水で洗浄し、乾燥した(2.5g、収率56%)。
【0083】
(S)-又はラセミ体のメチル N-(1-オキソ-4-ニトロイソインドリン-2-イル)-L-グルタミンから(S)-又はラセミ体の3-(4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(17)の調製
(A) メチル N-(1-オキソ-4-ニトロイソインドリン-2-イル)-L-グルタミン (0.2g、1.78ミリモル)のTHF溶液に、N2下で10mLの0〜5℃のKOtBuを添加した。溶液を30分間攪拌し、1時間かけて室温に戻し、続いて水で反応を止めた。THFを真空で除去した。得られた残留物を、CH2Cl2/H2Oとともに磨り潰し、生じた類白色固体を、濾過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥した(0.45g、収率85%)。
(B)別法として、トルエン中のメチル N-(1-オキソ-4-ニトロイソインドリン-2-イル)-L-グルタミン(0.2g、1.78ミリモル)と触媒量のp-TsOHの混合物を16時間還流し、そして室温まで冷却した。類白色の固体を、濾過で分離し、水、10%NaHCO3及びメタノールで洗浄し、真空で乾燥した(0.40g、収率91%)。
【0084】
それぞれ(S)-又はラセミ体の3-(4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンからの(S)-又はラセミ体の3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの調製
メタノール(600ml)中の(S)-又はラセミ体の3-(4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(1.0g、3.5ミリモル)と10%Pd/C(0.3g)の混合物を、Parr-Shaker装置中、50psiの水素で5時間水素化した。混合物を、セライトを通して濾過し、濾液を真空で濃縮した。固体を高温の酢酸エチル中で30分間スラリーとし、濾過、乾燥して、それぞれ0.46g(51%)の(S)又はラセミ体の3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを白色結晶として得た。
【0085】
メチル N-(1-オキソ-4-アミノイソインドリン-2-イル)-L-グルタミン (18)の調製
メタノール(100mL)中のメチル N-(1-オキソ-4-ニトロイソインドリン-2-イル)-L-グルタミン (6.4g、0.02ミリモル)と5%Pd/C(0.6g)の混合物を、水素(40psi)下に外界温度で2時間攪拌した。Pd触媒を、セライトの詰め物を通して濾別した。濾液を濃縮した後、得られた油状残留物をMTBE(30mL)とともに磨り潰し、外界温度に1時間放置すると固体が生じた。類白色固体を、濾過し、MTBE(30mL)で洗浄し、乾燥して、標題化合物を得た(5.4g、収率93%)。
【0086】
メチル N-(1-オキソ-4-アミノイソインドリン-2-イル)-L-グルタミンからラセミ体の3-(4-アミノ-1-オキソイソインドリン-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの調製
(A) メチル N-(1-オキソ-4-アミノイソインドリン-2-イル)-L-グルタミンの0℃THF溶液に、KOtBuを滴加した。得られた混合物を0〜5℃で30分間攪拌し、外界温度まで温め、そして水(2mL)で反応を止めた。THFを真空で除去し、得られた残留物をH2Oとともに磨り潰した。得られた類白色固体を、濾過し、水で洗浄し、乾燥した。生成物は、キラルHPLCで4%のエナンチオマー余剰を有し、68ppmの残留Pdを含んでいた。
(B)別法として、メチル N-(1-オキソ-4-アミノイソインドリン-2-イル)-L-グルタミン (0.0295ミリモル)とK2CO3(0.0295ミリモル)のアセトニトリル(85mL)溶液を1時間還流した。次いで、水(20mL)で反応を止め、アセトニトリルを真空で除去して、類白色固体を得た。固体を、濾過し、水で洗浄し、外界温度で18時間乾燥して、所望の化合物を得た(収率65%)。固体を、アセトニトリル(30mL)中で15分間スラリーとし、濾過し、6時間空気乾燥して、1ppm未満の残留Pdを含む所望の化合物を得た。Pd含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)分光法で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物
【化1】

(ここで、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法であって、
(1)(a)グルタミンエステル又はその塩を、置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、
(b)該カップリング生成物を環化するステップ、及び
(c)該環化生成物の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別な置換基(群)に場合によっては変換するステップからなる手順、或いは、
(2)(a)グルタミンエステル又はその塩を、置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルとカップリングするステップ、
(b)該カップリング生成物の1つ又は複数のベンゾ置換基を、1つ又は複数のステップで別な置換基(群)に変換するステップ、及び
(c)該変換生成物を環化するステップからなる手順のいずれかを含む、前記調製方法。
【請求項2】
式1の化合物がラセミ体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式1の化合物が(+)-又は(-)-エナンチオマーである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
グルタミンエステル又はその塩が、グルタミンをエステル化することによって調製される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
グルタミンエステル又はその塩が、
グルタミンのα-アミノ基を保護すること、
該N-保護グルタミンをエステル化すること、及び
該エステル化グルタミンのα-アミノ基を脱保護することによって調製される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
置換されていてもよい2-ハロアルキル安息香酸エステルが、置換されていてもよい2-アルキル安息香酸エステルをハロゲン化することによって調製される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記のカップリングが塩基性条件下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記の環化が塩基性条件下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記の環化が酸性条件下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記の変換が、ベンゾ-NO2基をベンゾ-NH2基に還元することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記の変換が、ベンゾ-NHProtG2基を脱保護してベンゾ-NH2基を産生することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
式1の化合物
【化2】

(ここで、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法であって、
(1)(a)式2の化合物
【化3】

を環化するステップ、及び
(b)式3の環化生成物
【化4】

のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数を、1つ又は複数のステップで、式1の化合物のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基の1つ又は複数に場合によっては変換するステップからなる手順、或いは
(2)(a)式2の化合物
【化5】

のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数を、1つ又は複数のステップで、式4の化合物
【化6】

のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基の1つ又は複数に変換するステップ、及び
(b)式4の変換生成物を環化するステップからなる手順のいずれかを含む調製方法、
(ここで、ステップからなる前記手順の双方に関して、特記しない限り、
R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
R8は、手順(1)の場合はアルキル又はベンジルであり、手順(2)の場合は水素、アルキル、又はベンジルであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)。
【請求項13】
式1の化合物がラセミ体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式1の化合物が(+)-又は(-)エナンチオマーである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
ステップからなる該手順の双方に関して、特記しない限り、
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、低分子量ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、低分子量ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素又は低級アルキルであり、
R7が、水素又は低級アルキルであり、
R8が、手順(1)の場合は低級アルキルであり、手順(2)の場合は水素又は低級アルキルであり、且つ
ProtG2が、適切なアシルN-保護基である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
ステップからなる前記手順の双方に関して、特記しない限り、
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、-NO2、又は-NHProtG2であり、
R1'、R2'、R3'、及びR4'のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、-NHProtG2、又は-NH2であり、
R7が、水素又はメチルであり、
R8が、手順(1)の場合はメチルであり、手順(2)の場合は水素又はメチルであり、且つ
ProtG2が、Cbz、Boc、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、又はピバロイルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
R8がアルキルである場合に、前記の環化が酸性条件下で行われる、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記の環化がp-トルエンスルホン酸の存在下で行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
R8がアルキルである場合に、前記の環化が塩基性条件下で行われる、請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記の環化が、KOtBuの存在下で行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記の環化が、K2CO3の存在下で行われる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
R8が手順(2)の場合に水素である場合に、前記の環化が活性化剤の存在下で行われる、請求項12記載の方法。
【請求項23】
前記の活性化剤が塩化チオニルである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
式2又は3の化合物のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数を、それぞれ式4又は1のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基の1つ又は複数へ変換することが、1つ又は複数のベンゾ-NO2基を1つ又は複数のベンゾ-NH2基に還元することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項25】
前記の還元が触媒によって促進される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記の金属触媒がPd触媒である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
式2又は3の化合物のR1、R2、R3、及び/又はR4置換基の1つ又は複数を、1つ又は複数のステップで、それぞれ式4又は1の化合物のそれぞれ対応するR1'、R2'、R3'、及び/又はR4'置換基の1つ又は複数へ変換することが、1つ又は複数のベンゾ-NHProtG2基を1つ又は複数のステップで脱保護して1つ又は複数のベンゾ-NH2基を産生することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項28】
前記の脱保護が、触媒を用いる水素化分解により1つ又は複数のベンゾ-NHCbzを開裂して1つ又は複数のベンゾ-NH2基を産生する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記の脱保護が、酸性条件下で1つ又は複数のベンゾ-NHBocを開裂して1つ又は複数のベンゾ-NH2基を与える、請求項27記載の方法。
【請求項30】
手順(2)の場合に、R8が水素である式2又は式4の化合物を、R8がアルキル又はベンジルであるそれぞれ式2又は式4の化合物から生成させることをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項31】
R8が水素である式2又は4の化合物を、R8がアルキルであるそれぞれ式2又は4の化合物から酸性条件下で生成させる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
R8が水素である式2又は4の化合物を、R8がアルキルであるそれぞれ式2又は4の化合物から塩基性条件下で生成させる、請求項30記載の方法。
【請求項33】
R8が水素である式2又は4の化合物を、R8がベンジルであるそれぞれ式2又は4の化合物から触媒を用いる水素化分解によって生成させる、請求項30記載の方法。
【請求項34】
式2の化合物が、式5の化合物
【化7】

(式中、
R7は水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、且つ
R8は、アルキル又はベンジルである)又はその塩を、式6の化合物
【化8】

(式中、
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R9は、アルキルであり、
Xは、ハロであり、且つ
ProtG2は、適切なN-保護基である)とカップリングすることによって調製される、請求項12記載の方法。
【請求項35】
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、低分子量ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素又は低級アルキルであり、
R7が、水素又は低級アルキルであり、
R8が、低級アルキル又はベンジルであり、
R9が、低級アルキルであり、
Xが、高分子量ハロであり、且つ
ProtG2が、適切なアシルN-保護基である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれが、出現するごとに独立に、水素、-NO2、又は-NHProtG2であり、
R7が、水素又はメチルであり、
R8が、メチルであり、
R9が、メチルであり、
Xが、ブロモであり、且つ
ProtG2が、Cbz、Boc、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、又はピバロイルである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記のカップリングが塩基性条件下で行われる、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記のカップリングがNEt3の存在下で行われる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記のカップリングがiPrEt2Nの存在下で行われる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記のカップリングがNaHCO3の存在下で行われる、請求項37記載の方法。
【請求項41】
式5の化合物又はその塩が、式7の化合物
【化9】

(式中、R7は水素、ハロ、アルキル、又はベンジルである)又はその塩をエステル化することによって調製される、請求項34記載の方法。
【請求項42】
前記のエステル化が、式R8OHのアルコール中で酸性条件下で行われる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
式5の化合物又はその塩が、式7の化合物
【化10】

又はその塩のα-アミノ基を保護すること、
式8のN-保護化合物
【化11】

をエステル化すること、及び
式9のエステル化化合物
【化12】

(式中、
R7は、水素、ハロ、アルキル、又はベンジルであり、
R8は、アルキル又はベンジルであり、且つ
ProtG1は、適切なN-保護基である)のα-アミノ基を脱保護することによって調製される、
請求項34記載の方法。
【請求項44】
前記のエステル化が、式R8OHのアルコール中で酸性条件下で行われる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記の脱保護が、触媒を用いる水素化分解によってCbz基を除去することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項46】
式6の化合物が、式10の化合物
【化13】

(ここで、
R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、-CF3、-CN、-NO2、-NHProtG2、又は-NR5R6であり、
R5及びR6のそれぞれは、出現するごとに独立に、水素又はアルキルであり、
R9は、アルキルであり、且つ
ProtG2が、適切なN-保護基である)をハロゲン化することによって調製される、請求項34記載の方法。
【請求項47】
前記のハロゲン化が、フリーラジカルの条件下でブロム化剤を用いてブロム化することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
式11の化合物
【化14】

又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体の調製方法であって、
(1)(a)式12の化合物
【化15】

を環化するステップ、及び
(b)式13の環化生成物
【化16】

の-NO2基を-NH2基に還元するステップからなる手順、或いは
(2)(a)式12の化合物
【化17】

の-NO2基を-NH2基に還元するステップ、
(b)式14の還元生成物
【化18】

を環化するステップからなる手順のいずれかを含む調製方法。
【請求項49】
式11の化合物がラセミ体である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
式11の化合物が(+)-又は(-)-エナンチオマーである、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記の環化が酸性条件下で行われる、請求項48記載の方法。
【請求項52】
前記の環化がp-トルエンスルホン酸の存在下で行われる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記の環化が塩基性条件下で行われる、請求項48記載の方法。
【請求項54】
前記の環化がKOtBuの存在下で行われる、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記の環化がK2CO3の存在下で行われる、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記の還元が、触媒によって促進される、請求項48記載の方法。
【請求項57】
前記の触媒がPd触媒である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
式12の化合物が、式15の化合物
【化19】

又はその塩を、式16の化合物
【化20】

とカップリングすることによって調製される、請求項48記載の方法。
【請求項59】
前記のカップリングが、塩基性条件下で行われる、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記のカップリングがNEt3の存在下で行われる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記のカップリングがNaHCO3の存在下で行われる、請求項59記載の方法。
【請求項62】
式15の化合物又はその塩が、式17の化合物
【化21】

又はその塩をメチルエステルとしてエステル化することによって調製される、請求項58記載の方法。
【請求項63】
前記のエステル化が、メタノール中、酸性条件下で行われる、請求項62記載の方法。
【請求項64】
式15又の化合物はその塩が、式17の化合物
【化22】

又はその塩のα-アミノ基を、ベンジルオキシカルボニルカーバメートとして保護すること、
式18のN-保護化合物
【化23】

をメチルエステルとしてエステル化すること、及び
式19のエステル化化合物
【化24】

のα-アミノ基を脱保護することによって調製される、請求項58記載の方法。
【請求項65】
前記のエステル化が、メタノール中、酸性条件下で行われる、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記の脱保護が、触媒を用いる水素化分解によってベンジルオキシカルボニル基を除去することを含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
前記の触媒がPd触媒である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
式16の化合物が、式20の化合物
【化25】

をブロム化することによって調製される、請求項58記載の方法。
【請求項69】
前記のブロム化が、フリーラジカル開始剤の存在下でブロム化剤によって達成される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記のブロム化剤がN-ブロモコハク酸イミドである、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記のフリーラジカル開始剤が光である、請求項69記載の方法。
【請求項72】
前記のフリーラジカル開始剤が1,1'-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル)である、請求項69記載の方法。

【公表番号】特表2008−512379(P2008−512379A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530398(P2007−530398)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/031318
【国際公開番号】WO2006/028964
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】