説明

美容器

【課題】ボールを円滑に回転させることができるとともに、ボールの外周面に擦過傷が発生するのを抑制することができ、しかもボールの支持構造を簡略化することができる美容器を提供する。
【解決手段】ハンドル12にマッサージ用のボール23を設け、そのボール23をボール径より小さいハンドル12の開口21bから自由回転可能に、かつ出没方向に移動可能に露出させる。ハンドル12の内部にはボール23を受けるためのボール支持部材22を設ける。ボール支持部材22のボール受け面22aをボール23の球面の曲率より大きな曲率で形成する。ボール23がハンドル12の開口21bの周縁部に係合した状態で、そのボール23とボール受け面22aとの間に隙間S1が形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドルに設けられたマッサージ用のボールによって、顔や腕等の肌をマッサージすることにより、血流等を促して美しい肌を実現するための美容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の美容器としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が提案されている。特許文献1に記載の従来構成においては、ハンドルに設けられた円柱状のボールホルダの外周に、軸線方向に延びる複数の縦溝が形成されている。各縦溝内には、マッサージ用の複数のボールがその外周面の一部を露出させた状態で回転自在に収容配置されている。また、特許文献2に記載の従来構成においては、ハンドルとしてのほぼ半球状の本体の端面に、複数のボール取付孔が形成されている。本体の各ボール取付孔には、複数のボールが支持ツメを有するツメ型のボール支え体にそれぞれ回転自在に支持された状態で取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3136068号公報
【特許文献2】実用新案登録第3151598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これらの従来の美容器においては、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来構成では、図6(a)に示すように、ボールホルダ41に設けられたボール受け面41aがボール42の球面の曲率と同一の曲率で形成されている。このため、ボール受け面41aに対するボール42の外周面の接触面積が広くなって、ボールの回転時に大きな摩擦抵抗が作用し、ボールが回転し難くなるという問題があった。しかも、ボールを摩擦抵抗に抗して無理に回転させると、ボールの外周面がボール受け面と擦れあって、ボールの外周面に擦過傷が発生し易いという問題もあった。
【0005】
また、特許文献2に記載の従来構成では、複数のボールをツメ型のボール支え体にそれぞれ回転自在に支持した状態で、本体の各ボール取付孔に取り付ける必要がある。そのため、ボールの支持構造が複雑になって、製造コストの高騰を招くという問題があった。
【0006】
さらに、美容器におけるボールの支持構造としては、例えば図6(b)に示すような構成も従来から知られている。この従来構成においては、円錐筒状のボール支持部材43が設けられ、そのボール支持部材43の先端縁にはボール42の外周面に摺接する球面凹状のボール受け面43aが形成されている。そして、ボール42がボール支持部材43のボール受け面43aに摺接した状態で回転自在に支持されるようになっている。しかしながら、この従来構成においても、ボール支持部材43のボール受け面43aがボール42の球面の曲率と同一の曲率で形成されているため、前記特許文献1に記載の従来構成と同様に、ボール42が回転し難いとともに、ボール42の外周面に擦過傷が発生し易いという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ボールを円滑に回転させることができるとともに、ボールの外周面に擦過傷が発生することを抑制することができ、しかもボールの支持構造を簡略化することができる美容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、ハンドルにマッサージ用のボールを設け、そのボールをボール径より小さいハンドルの開口から自由回転可能に、かつ出没方向に移動可能に露出させるとともに、ハンドルの内部には前記ボールを受けるための支持部材を設けた美容器において、前記支持部材のボール受け面をボールの球面の曲率より大きな曲率で形成したことを特徴としている。
【0009】
従って、この発明の美容器においては、支持部材のボール受け面がボールの球面の曲率より大きな曲率で形成されていることで、ボール受け面に対するボールの外周面の接触面積が狭くなる。このため、使用者がボールを顔等の肌に接触させて回転させた場合、ボール受け面とボールの外周面との間の摩擦抵抗が小さくなって、ボールを円滑に回転させることができる。また、ボールを摩擦抵抗に抗して無理に回転させる必要がないため、ボールの外周面がボール受け面と擦れあうことで、ボールの外周面に擦過傷が発生するおそれを抑制することができる。しかも、支持部材に支持ツメ等の特別の支持構造を設ける必要がなく、ボール受け面をボールの球面の曲率より大きな曲率で形成するという簡単な構成でよいため、ボールの支持構造を簡略化して、コストの低減を図ることができる。
【0010】
前記の構成において、前記ボールが前記ハンドルの開口の周縁部に係合した状態で、そのボールと前記ボール受け面との間に隙間が形成されるようにするとよい。
前記の構成において、前記ボール及びボール受け面を導電材料によって構成し、ボール受け面を電源に接続するとよい。
【0011】
前記の構成において、前記電源は前記ハンドルに設けられた太陽電池パネルより構成するとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、ボールを円滑に回転させることができるとともに、ボールの外周面に擦過傷が発生するのを抑制することができ、しかもボールの支持構造を簡略化することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の美容器を示す平面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図2の3−3線における拡大断面図。
【図4】図2の4−4線における部分拡大断面図。
【図5】図1の美容器の回路構成を示す構成図。
【図6】(a)及び(b)は従来の美容器を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明を具体化した美容器の一実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
図1〜図3に示すように、この実施形態の美容器11の細長いハンドル12は、軸線方向に沿って延びる合成樹脂(例えば、ABS:アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)よりなる第1ハンドル片13と、同じく合成樹脂よりなる第2ハンドル片14とに分割して構成されている。従って、ハンドル12は電気絶縁材料によって形成されている。第1ハンドル片13の上端開口縁の両側部には凹凸部13aが形成されるとともに、第2ハンドル片14下端開口縁の両側部には第1ハンドル片13の凹凸部13aに係合可能な凹凸部14aが形成されている。そして、両ハンドル片13,14の凹凸部13a,14aが互いに係合された状態で、ハンドル片13,14の軸線方向の両端部に円環状の止め輪15,16が嵌着されることにより、ハンドル12が組み付けられている。
【0015】
図2に示すように、前記ハンドル12の一端内部において両ハンドル片13,14間には、支持軸17がその先端部をハンドル12外に突出させた状態で挟着固定されている。支持軸17の先端部には、円筒状をなすマッサージ用の回転ローラ18が支持筒19及び一対の軸受メタル20を介して回転可能に支持されている。回転ローラ18の外周には、複数の突条18aが軸線方向に沿って延びるように形成されている。
【0016】
そして、合成樹脂製の回転ローラ18の外周面にプラチナメッキが施されるため、回転ローラ18の外周面への通電性が確保されている。つまり、回転ローラ18は電気絶縁材料に形成されるとともに、その外周面が導電材料によって構成されている。そして、使用者がハンドル12を把持した状態で、この回転ローラ18の外周面を顔等の肌に接触させて円周方向に相対移動させることにより、回転ローラ18が支持軸17を中心に回転される。
【0017】
図1、図2及び図4に示すように、前記ハンドル12の他端には、ハンドル12の一部を構成するテーパ状のボール収容体21が、その内周面の円環状凹部21aとハンドル12の先端外周の円環状突部12aとの係合により嵌着固定されている。ハンドル12の他端内部において両ハンドル片13,14間には、ボール支持部材22が挟着固定されている。ボール支持部材22の外端面には、球面凹状のボール受け面22aが形成されている。ボール収容体21内においてその外側開口21bとボール支持部材22のボール受け面22aとの間には、マッサージ用の鋼球からなるボール23が自由回転可能に、かつ開口21bから出没する方向へ移動可能に収容配置されている。この場合、ボール収容体21の開口21bがボール23の外径よりも小径となるように形成され、ボール23の一部が開口21bから外部に露出するようになっている。
【0018】
そして、図2及び図4に示すように、前記ボール支持部材22のボール受け面22aがボール23の球面の曲率より大きな曲率で形成されている。この場合、合成樹脂(例えば、ABS:アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)製のボール支持部材22の外面にクロムメッキが施されることにより、ボール受け面22aへの通電性が確保されている。つまり、ボール23及びボール受け面22aが導電材料によって構成されている。さらに、ボール23の外周面には、ゲルマニウムコーティングが施されている。
【0019】
また、図4に実線で示すように、前記ボール23がボール収容体21の開口21b側に移動されて、その開口21bの周縁部に係合した状態で、ボール23の外周面とボール受け面22aとの間に隙間S1が形成されるようになっている。さらに、図4に鎖線で示すように、ボール23がボール支持部材22のボール受け面22a側に移動されて、そのボール受け面22aに接触した状態で、ボール23の外周面と開口21bの周縁部との間に隙間S2が形成されるようになっている。そして、使用者がハンドル12を把持した状態で、ボール23の外周面を顔等の肌に接触させて横方向に相対移動させることにより、ボール23がボール受け面22aに接触した状態で回転されるようになっている。
【0020】
図1〜図3に示すように、前記ハンドル12の第2ハンドル片14の上面には、軸線方向に延びる長孔状の取付孔14bが形成されている。取付孔14b内には上面を開口したほぼ箱形状の合成樹脂製の保持部材24が、その開口端縁部24aをハンドル12の外周面上に露出させた状態で嵌合されて、複数のネジ25により第1ハンドル片13に対して固定されている。この場合、合成樹脂製の保持部材24の前記開口端縁部24aや内周面を含む外側面にクロムメッキが施されることにより、保持部材24の外側面への通電性が確保されている。つまり、保持部材24の外側面(開口端縁部24a)が導電材料によって構成されている。保持部材24の上面開口部には透明な合成樹脂よりなるカバー26が取り付けられるとともに、底面には透孔24bが形成されている。
【0021】
図1〜図3に示すように、前記保持部材24の下面には、電源としての太陽電池パネル27が透孔24bと対応するように配設されている。図5に示すように、太陽電池パネル27の一方(例えば+側)の端子27aには、保持部材24の外側面がリード線28Aを介して接続されている。また、太陽電池パネル27の他方(例えば−側)の端子27bには、回転ローラ18の外周面及びボール支持部材22のボール受け面22aがリード線28Bを介して接続されている。この場合、図4に示すように、ボール支持部材22へのリード線28Bの端部には端子29が接続され、その端子29がネジ30によりボール支持部材22の内端部に固定されている。
【0022】
次に、前記のように構成された美容器の作用を説明する。
図5から明らかなように、使用者がこの美容器11を把持していない状態では、太陽電池パネル27で発電されても、一方の電極を構成する保持部材24のメッキ面と、他方の電極を構成する回転ローラ18のメッキ面及びボール23との間の電気接続が遮断されている。そして美容器11の使用時に際して、使用者がハンドル12を把持した状態で、回転ローラ18の外周面を顔等の肌に接触させて相対移動させると、その回転ローラ18が支持軸17を中心に回転される。この回転ローラ18の回転に伴って、その外周面に形成された複数の突条18aにより、顔等の肌がマッサージされて血流が促進される。このとき、図5に示すように、使用者の人体31における顔等の肌31aが回転ローラ18の外周面に接触しているとともに、人体31の指や掌が31bがハンドル12上の保持部材24の開口端縁部24aに接触している。このため、使用者の人体31が導電路になって、太陽電池パネル27で発電された電力により、回転ローラ18から肌31aに微弱電流が流れて、血流の促進効果が高められる。
【0023】
また、使用者がハンドル12を把持した状態で、ボール23の外周面を顔等の肌に押し当てると、ボール23がボール支持部材22のボール受け面22a側に移動される。この移動により、図4に鎖線で示すように、ボール23がボール受け面22aに接触されるとともに、ボール23の外周面と開口21bの周縁部との間に隙間S2が形成される。この状態で、ハンドル12を横方向に相対移動させると、ボール23が軽く回転され、顔等の肌がマッサージされて血流が促進される。
【0024】
この場合にも、図5に示すように、使用者の人体31における顔等の肌31aがボール23の外周面に接触しているとともに、人体31の指31bがハンドル12上の保持部材24の開口端縁部24aに接触している。このため、使用者の人体31が導電路になって、太陽電池パネル27から、ボール支持部材22のボール受け面22a及びボール23を介して肌31aに微弱電流が流れて、血流の促進効果が高められる。
【0025】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この美容器においては、ボール支持部材22のボール受け面22aがボール23の球面の曲率より大きな曲率で形成されている。このため、ボール受け面22aに対するボール23の外周面の接触面積が狭くなる。よって、使用者がボール23を顔等の肌に接触させて回転させた場合、ボール受け面22aとボール23の外周面との間の摩擦抵抗が小さくなって、ボール23を円滑に回転させることができる。また、ボール23を摩擦抵抗に抗して無理に回転させる必要がないため、ボール23の外周面がボール受け面22aと擦れあうことで、ボール23の外周面に擦過傷が発生するおそれを抑制することができる。さらに、ボール支持部材22に支持ツメ等の特別の支持構造を設ける必要がなく、ボール受け面22aをボール23の球面の曲率より大きな曲率で形成するという簡単な構成でよいため、ボール23の支持構造を簡略化して、コストの低減を図ることができる。加えて、ボール受け面22a及びボール23の外周面が同方向に湾曲する曲面であるため、ボール受け面22aとボール23と通電接触状態を適切に確保できて、通電安定性を得ることができる。
【0026】
(2) この美容器においては、前記ボール23がハンドル12の開口21bの周縁部に係合した状態で、そのボール23とボール受け面22aとの間に隙間S1が形成されるようになっている。このため、使用者がボール23を顔等の肌に接触させて使用する際に、ボール23がボール受け面22a側に移動されて、そのボール受け面22aに狭い接触面積で当接されるとともに、ボール23の外周面とハンドル12の開口21bの周縁部との間に隙間S2が形成される。よって、ボール23を一層円滑に回転させることができる。
【0027】
(3) この美容器においては、前記ボール23及びボール受け面22aが導電材料によって構成され、ボール受け面22aが電源としての太陽電池パネル27に接続されている。よって、使用者がボール23を顔等の肌に接触させて使用する際に、太陽電池パネル27からボール受け面22a及びボール23を介して肌に微弱電流が流れて、血流の促進効果を高めることができる。
【0028】
(4) この美容器においては、前記電源がハンドル12に設けられた太陽電池パネル27より構成されている。このため、乾電池等の電源を設ける必要がなく、太陽電池パネル27で発電された電力を利用して、ボール23から肌に微弱電流を流すことができる。
【0029】
(5) 太陽電池パネル27を保持する保持部材24の内周面にクロムメッキが施されているため、外部からの光がこのメッキ面で反射されて太陽電池パネル27に到達する。このため、太陽電池パネル27に対する光の照射量を充分に確保することができて、有効な発電を行うことができる。しかも、保持部材24の外部露出面のクロムメッキが電極の機能を果たすため、電極や導電路のための専用部品が不要になり、構成を簡素化できる。
【0030】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態においては、電源として太陽電池パネル27を用いたが、乾電池あるいは二次電池を用いること。
【0031】
・ 前記実施形態において、ボール23として、合成樹脂製の球の周面に金属メッキを施したものを用いること。
【符号の説明】
【0032】
11…美容器、12…ハンドル、17…支持軸、18…回転ローラ、21…ボール収容体、21b…開口、22…ボール支持部材、22a…ボール受け面、23…ボール、24…保持部材、27…電源としての太陽電池パネル、31…人体、31a…顔等の肌、S1,S2…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルにマッサージ用のボールを設け、そのボールをボール径より小さいハンドルの開口から自由回転可能に、かつ出没方向に移動可能に露出させるとともに、ハンドルの内部には前記ボールを受けるための支持部材を設けた美容器において、
前記支持部材のボール受け面をボールの球面の曲率より大きな曲率で形成したことを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記ボールが前記ハンドルの開口の周縁部に係合した状態で、そのボールと前記ボール受け面との間に隙間が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記ボール及びボール受け面を導電材料によって構成し、ボール受け面を電源に接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の美容器。
【請求項4】
前記電源は前記ハンドルに設けられた太陽電池パネルであることを特徴とする請求項3に記載の美容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85809(P2012−85809A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234834(P2010−234834)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(599083411)株式会社 MTG (16)
【Fターム(参考)】