説明

美容的ピーリング方法

本発明は、目に見える及び/又は触覚できる人間の皮膚の不均一性のトリートメントのための美容方法であって、
(a)生理学的に許容可能な媒体に少なくとも20重量%の尿素を含む組成物を皮膚に局所適用し、
(b)上記組成物を1分から6時間の間に渡り、皮膚と接触させ、
(c)上記組成物を濯ぐことにより除去する。
ことからなる工程を含む美容方法に関するものである。
本方法は、特に、皺や小皺及び/又は色素沈着痕及び/又はアクネ痕を軽減するため、及び/又は、皮膚の小孔から障害物を取り除くことを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に少なくとも20重量%の尿素を含む組成物を使用するピーリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピーリングは、皮膚の表面外観の向上のための周知の手段であり、とりわけ、光線性のほくろ等の色素沈着欠陥又はアクネ若しくは水痘痕跡を軽減したり、又は皮膚の肌目の不揃い、特に、皺や小皺を平滑にするための手段である。
【0003】
ピーリングは、処置される皮膚の一部(表皮及び恐らくは真皮の上層)を化学的方法(特にグリコール酸又はサリチル酸)を介して除去する効果を持つ。
【特許文献1】米国特許第5919470号
【特許文献2】欧州特許第1293204号
【特許文献3】米国特許第6429231号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、化学的ピーリングを行うために用いられてきた組成物は、一定の満足のいく結果を得ているが、やはり、それらに副作用がないわけではない。この様に、サリチル酸を用いてのピーリングは、過量の投与又は長期の適用の場合にサリチル酸中毒を引き起こす事例を増加させる恐れがある。
【0005】
よって、効果的であると同時に耐容性の高いピーリング組成物への要求が未だに存在する。
【0006】
本出願人は、少なくとも20重量%の尿素を有する組成物が、この目的において有益であることを発見したところである。
【0007】
尿素は、少量で(5重量%未満)、化粧用(美容)組成物に従来用いられてきた湿潤及び保湿剤である。高濃度(10重量%より上)においては、尿素は、表皮のケラチン生成細胞間の細胞結合を構成するコルネオデスモシンを分解する能力に起因する角質溶解特性を有しており、また、静菌的性質を有している。
【0008】
21重量%から40重量%の尿素を含む角質溶解性組成物は、この様に、乾燥皮膚のトリートメントにおいて、皮膚への適用が有効なものと記述されている(米国特許第5919470号)。しかし、これらの組成物は、皮膚上に残ることを意図した半固体クリームの形態で適用され、そのため、刺激及び臭気−尿素の分解に起因するもの−を増加させることとなり、使用者はそれを許容できないものと感じる。使用者は、この様な理由でこれらのクリーム類の適用の間隔を長くしがちであり、または使用を中止さえしがちであり、長期の効能に対して悪影響となる。加えて、上記文献において開示されるクリーム類は、水による濯ぎでは除去し難く、よって、ピーリング組成物としての使用に適するものではない。
【0009】
このことは、欧州特許第1293204号において開示されている、好ましくは10重量%から20重量%の尿素を含むジェル類の場合についても同様である。
【0010】
米国特許第6429231号は、さらに、0.1重量%から40重量%の尿素を含む組成物が開示され、この組成物は、様々な症状、例えば、アクネ、乾癬、皮脂流出、酒/、及び色素沈着過剰を治療するため、様々な剤形、とりわけ、クリーム、ジェル、スティック、又はクレンジング組成物によって適用されることができる。上述の様に、クリームの形態において尿素を高濃度で長期に用いることは、望ましくない。この様に、上記特許において説明される組成物は、10重量%の範囲の尿素を含む。さらに、高濃度の尿素を含むクレンジング組成物の皮膚との接触時間は、組成物が作用するには短か過ぎるものである。したがって、上記文献は、上述の皮膚の症状を軽減するための、充分に効果的で、寛容性の高い方法を開示しているとはいえない。
【0011】
故に、尿素が高濃度において、美容目的のための化学的ピーリングを行うために使用されうるということを示唆しているものは先行技術にない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この様に、本発明の一つの主題は、目に見える及び/又は触覚できる人間の皮膚の不均一性のトリートメントのための美容方法であって、
(a)生理学的に許容可能な媒体に少なくとも20重量%の尿素を含む組成物を、皮膚に局所適用し、
(b)上記組成物と皮膚とを5分から6時間の間に渡り、及び好ましくは5分から30分の間に渡り、接触したままにし、
(c)上記組成物を濯ぐことにより除去する、
ことからなる工程を含む美容方法である。
【0013】
本発明において用いられる組成物は、ピーリングが行われる厚さ、すなわち、除去されるべき表皮及び真皮の層、に応じた量の尿素を含む。そして、例えば、その尿素の量は、20重量%から50重量%の範囲であり、例えば、上記組成物の総重量に対して、20、30、40、又は50重量%である。
【0014】
本発明に係る組成物は、濯ぎにより容易に除去可能という条件の下に、局所適用に従来用いられているいかなる剤形であってよい。とりわけ、水性ジェル、又は水性若しくは水性−アルコール性溶液の形態で調製される。また、本発明に係る組成物は、脂肪又は油相を添加することにより得られる、液体又は半液体のコンシステンシーを有するローションの分散液又はエマルションタイプの形態であってよく、好ましくは脂肪相を水相に分散して得られる(O/W)ものであってもよい。これらの組成物は、通常の方法に基づいて調製される。
【0015】
本発明に係る組成物は、均一な分配を可能とするあらゆる手段により適用してもよく、とりわけ、コットンウールのパッド、棒、ブラシ、ガーゼ、スパチュラ、若しくはスワブを用いるか又は代替的にはスプレーによりなされてもよく、そして、水又は低刺激性洗剤による濯ぎにより、除去されてもよい。
【0016】
本発明の一つの好ましい具体的実施態様によると、上記組成物は、連続水相を含んでいてもよい。
【0017】
上記組成物がエマルションの形態である場合には、エマルションの油相の比率は、全組成物の全重量に対して、例えば、1重量%から30重量%、好ましくは5重量%から20重量%の範囲をとりうる。エマルション形態の組成物において用いられるオイル、乳化剤、共乳化剤は、従来化粧品又は皮膚科学で用いられているものから選ばれる。乳化剤及び共乳化剤は、一般的に、0.3重量%から30重量%の範囲の比率で、好ましくは、0.5重量%から20重量%の範囲の比率で、組成物中に存在する。エマルションは、さらに脂質小胞を含んでもよい。
【0018】
本発明において使用されてもよい脂肪物質として、オイルを使用することが可能であり、特に鉱物油(液体石油ゼリー)、植物由来のオイル(アボガドオイル又は大豆オイル)、合成オイル(パーヒドロスクワレン)、シリコーンオイル(シクロメチコン)及びフッ素化オイル(パーフルオロポリエーテル類)が挙げられる。
【0019】
本発明において使用されてもよい乳化剤及び共乳化剤として例として挙げられるものは、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、例えば、PEG−100ステアレート、PEG−50ステアレート、PEG−40ステアレート;ポリオール類の脂肪酸エステル、例えば、グリセリルステアレート、ソルビタントリステアレート及びオキシエチレン化ソルビタンステアレート類、例えば、商品名Tween(登録商標)20又はTween(登録商標)60として入手可能なもの;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明に係る組成物は、さらに、化粧品又は皮膚科学において一般的に用いられる補助剤を含んでもよく、それらの例としては、増粘剤、活性成分、保存料、溶媒及び充填剤が挙げられる。これら様々の補助剤の量は、ここで考慮されている分野で従来用いられているものであり、例えば、全組成物の重量の0.01%から20%の量をとる。これらの補助剤は、それぞれの性質に応じて、脂肪相か又は水相に導入されてもよい。これら補助剤及びそれらの濃度は、尿素の角質溶解特性を害さない様、決定すべきである。
【0021】
特に挙げられる増粘剤としては:キサンタンガム、任意に架橋されたアクリル酸ホモポリマー又はコポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ホモポリマー又はコポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースを含むセルロース誘導体が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい一つの具体的実施態様によれば、上記組成物は、1〜3の炭素原子を含むアルコール類及びポリオール類から選ばれる少なくとも1の化合物を含む。これらの化合物として挙げられるものの例には、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、及びプロピレングリコールが含まれる。
【0023】
先に言及した様に、この組成物は目に見える及び/又は触覚できる皮膚の不均一性、特に、皺や小皺及び/又は色素沈着痕及び/又は瘢痕−特にアクネ痕−を軽減するため、及び/又は、皮膚の小孔から障害物を取り除くためのピーリング方法で用いられることを意図している。本組成物は、顔面及び/又は首及び/又はネックライン及び/又は手及び/又は背中に適用してもよい。
【0024】
効果を最適なものにするため、本発明に係るピーリング方法は、好ましくは、上述のピーリング組成物に比して少量の尿素を含む組成物を用いてのピーリングのための皮膚の調整、及び/又は、ピーリング後のスキンケアの付加工程を含んでもよい。
【0025】
この様に、本発明に係る組成物は、上述の工程に加え、
− 工程(a)を行う前に、生理学的に許容可能な媒体に0.5重量%から10重量%の尿素を含む組成物を、皮膚に適用する予備工程、及び/又は、
− 工程(c)を行った後、生理学的に許容可能な媒体に0.5重量%から10重量%の尿素を含む組成物を、皮膚に適用する付加工程を含むことが好ましい。
【0026】
上述の予備工程を行うことは、尿素に対する何らかのアレルギーを感知すること及びピーリングの効能と均一性を向上させることを可能とする。
【0027】
これらの予備及び付加工程に於いて用いられる組成物は、朝及び夕方に、例えば、任意に、皮膚をUV光線の影響から保護するための組成物と共に適用されてもよい。例えば、プレトリートメント組成物は、1から4週間に渡って適用されてもよく、ポストトリートメント組成物は、1日から8週間に渡って適用されてもよい。
【0028】
任意の予備及び付加工程を含む、本発明に係る方法は、一度のみ行ってもよいし、必要なら5回まで繰り返してもよく、ピーリングセッションは、好ましくは、1週間から8週間までの間隔をおいて行われる。
【0029】
本発明は、以下の実施例により説明されるが、これらにより限定されることはない。
これらの実施例においては、量は、重量%において表示されている。
【0030】
[実施例]
[実施例1]: ピーリング組成物
尿素 25%
キサンタンガム 1%
保存料 適量
エタノール 10%
精製水 100%まで適量
【0031】
この組成物を、当業者にとっての従来法によって調製する。この組成物は、顔面に、皺や小皺を平滑にするために、以下の方法に基づき適用することが意図されている。
【0032】
皮膚を初めにクレンジングし、脱脂する。例えば、エタノール又はアセトンを含浸したガーゼを用いて、皮脂及び死細胞を取り除き、皮膚のpHを調和させる。皮膚の敏感な部分(唇の端部、鼻孔、及び目の端部)を、次に閉塞軟膏で保護し、眼自体は眼帯により保護する。そして、上述の組成物をブラシを用い皮膚に薄いコートとして適用する。上記組成物を2〜3分放置した後、暖かいお湯を浸した圧迫ガーゼを用いて濯ぐことにより除去する。
【0033】
[実施例2]: ピーリング組成物
尿素 40%
グリセロール 10%
プロピレングリコール 10%
保存料 適量
精製水 100%まで適量
【0034】
この組成物を、当業者にとっての従来法により調製する。この組成物は、実施例1に記述した方法に基づき、年齢徴候を軽減するために、手に適用することが意図されている。
【0035】
[実施例3]: ピーリング組成物
尿素 50%
保存料 適量
精製水 100%まで適量
【0036】
この組成物を、当業者にとっての従来法によって調製する。この組成物は、実施例1に記述した方法に基づき、背中に、面皰のトリートメントの為に適用することが意図されている。
【0037】
[実施例4]: ピーリング組成物
尿素 30%
3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸 10%
保存料 適量
水酸化ナトリウム pH7まで適量
精製水 100%まで適量
【0038】
この組成物を、当業者にとっての従来法によって調製する。この組成物は、実施例1に記述した方法に基づき、色素沈着痕を軽減するために、ネックラインに適用することが意図されている。
【0039】
[実施例5]: ピーリング前処理組成物
尿素 10%
保存料 適量
カルボマー 2%
水酸化ナトリウム pH7まで適量
精製水 100%まで適量
【0040】
この組成物を、当業者にとっての従来法によって調製する。この組成物は前もってクレンジングした皮膚に、朝及び夕方に1から4週間に渡って適用し、実施例1〜4において説明したピーリング組成物の適用のために皮膚を調整することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目に見える及び/又は触覚できる人間の皮膚の不均一性のトリートメントのための美容方法であって、
(a)生理学的に許容可能な媒体に少なくとも20重量%の尿素を含む組成物を、皮膚に局所適用し、
(b)前記組成物を5分から6時間の間、皮膚と接触したままにし、
(c)前記組成物を濯ぐことにより除去する、
ことからなる工程を含む美容方法。
【請求項2】
工程(b)において、前記組成物を、5分から30分の間、皮膚に接触したままにしておくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、20重量%から50重量%の尿素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、連続水相を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、さらに、1〜3の炭素原子を含むアルコール類及びポリオール類から選ばれる少なくとも1の化合物を含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、及びプロピレングリコールから選ばれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、さらに、少なくとも1の増粘剤を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記増粘剤は、キサンタンガム、任意に架橋されたアクリル酸ホモポリマー又はコポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ホモポリマー又はコポリマー、及びセルロース誘導体より選ばれることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)を行う前に、生理学的に許容可能な媒体に0.5重量%から10重量%の尿素を含む組成物を皮膚に適用する予備工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程(c)を行った後、生理学的に許容可能な媒体に0.5重量%から10重量%の尿素を含む組成物を皮膚に適用する付加工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
皺や小皺及び/又は色素沈着痕及び/又はアクネ痕を軽減するため、及び/又は、皮膚の小孔から障害物を取り除くために意図されたことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、顔面及び/又は首及び/又はネックライン及び/又は手及び/又は背中に適用されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の方法。

【公表番号】特表2006−524199(P2006−524199A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505144(P2006−505144)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004005
【国際公開番号】WO2004/093838
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】