説明

耐アルコール性透明乳化組成物及びその製造方法

【課題】アルコール性飲料に配合したとき、透明に溶解し、高温条件での保存、殺菌のための加熱などの過酷な条件を受けても、長期間にわたって十分な透明状態を維持できる耐アルコール性乳化組成物及びその製造方法の提供。さらに本発明は、高濃度のアルコール溶液に混合した場合に乳化状態及び透明状態を維持できる耐アルコール性乳化組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記組成からなる組成物を乳化処理して得られる耐アルコール性透明乳化組成物、
(a)可食性油性材料
(b)精製ポリグリセリン脂肪酸エステル
(c)多価アルコール
(d)水、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐アルコール性透明乳化組成物に関する。さらに詳しくは、アルコール性飲料に配合すると透明に溶解し、高濃度のアルコールを含む溶液と混合した場合でも安定な乳化状態を保ちうる耐アルコール性透明乳化組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料にフレーバーを付与する方法として乳化香料は広く使用されている。乳化香料はフレーバーの付与のみならず、飲料に混濁を与え、果汁感を印象づけることが可能である。近年、スポーツ飲料、果汁飲料などのソフトドリンクなどに加えて、チューハイ、サワー、カクテル、甘味果実酒、その他の雑酒、リキュールなどの混成酒など外観が透明なアルコール性飲料にも乳化香料が使用される機会が増えている。これらの商品は透明な外観が商品価値の一部であるためにフレーバーを付与する目的で添加される乳化香料は透明に溶解するものでなければならない。そこで透明な乳化物を提供する目的で、平均重合度5ないし10のポリグリセリンのミリスチン酸又はオレイン酸のモノエステル、多価アルコール、油溶性物質、水の系で乳化を行う油溶性可溶化組成物(特許文献1)、平均重合度6〜10のポリグリセリンと炭素数12〜14の飽和脂肪酸のモノエステルから選ばれる少なくとも一種のポリグリセリン脂肪酸エステル、油脂および水の系で乳化を行う油溶性可溶化組成物(特許文献2)、HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、キラヤ抽出物から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、可食性油性材料、多価アルコールおよび水を減圧下、平均粒子径0.2ミクロン以下とした飲食品用乳化液組成物(特許文献3)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、テルペン類、水を必須成分としたテルペン類含有可溶化組成物(特許文献4)、HLB8〜10で0.5%水溶液の650nmにおける透過率が60℃以下で90%である新規ポリグリセリン脂肪酸エステル(特許文献5)、油脂、キラヤサポニンおよび糖アルコールからなる油脂組成物(特許文献6)、油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンおよびショ糖脂肪酸エステルから得られる透明度と耐熱性に優れた油脂組成物(特許文献7)、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸ポリグリセリンエステル、油溶性物質、糖及び/又は糖アルコールおよび水とからなる可溶化組成物(特許文献8)などが提案されている。しかしながら、これらの提案は特定の界面活性剤の使用、乳化剤の組み合わせ、特定の乳化方法などに関するものであり、乳化物の透明度が十分なものとは言い難く、乳化安定性も不十分なものであった。また、これら提案の中で高い耐アルコール性を有する乳化香料に関するものはなかった。
【0003】
上記、透明な乳化物を得るための提案の多くで使用される界面活性剤はポリグリセリン脂肪酸エステルである。その理由は乳化安定性が他の界面活性剤を使用する場合に比べて高いこと、および、食品添加物としても使用され、人体、環境への安全性の高いとされる汎用の界面活性剤であるためである。
【0004】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは通常、ポリグリセリン類と脂肪酸類の反応により製造され、親水基として機能するポリグリセリン部分と疎水基として機能する脂肪酸部分を有し、ポリグリセリンの重合度、結合する脂肪酸の鎖長および数により広い範囲のHLB値のエステルが得られる。一般的には、重合度6以上のポリグリセリン混合物と、炭素数が7〜22の脂肪酸混合物を反応させて生成するポリグリセリン脂肪酸エステルは種々の構造の混合物となる。すなわち、ポリグリセリンの複数の水酸基に対して脂肪酸が結合し、ポリグリセリンの末端の水酸基に脂肪酸が結合したモノエステルが主体であるがそれ以外にもジエステル、トリエステルなどの高次エステルが存在し、さらには脂肪酸の種類の異なるモノエステルや高次エステルあるいは複数の脂肪酸が結合したエステルが存在している。また、市販品はエステルの混合物であっても主成分となるモノエステル、例えば、デカグリンモノステアレートなどの製品名で販売されることが一般的である。さらに、製品中には未反応のポリグリセリンが10〜40%程度残存している。高次エステルおよびポリグリセリンは良好な乳化状態の形成の妨げとなっており、これらを減少させる提案が行われている。炭素数7〜22の脂肪酸とグリシドールを反応させた後、水を添加、加熱後、脱水し、未反応グリシドールを減少させ、残存ポリグリセリンを少なくする製造法(特許文献9)、平均重合度が3〜15のポリグリセリン組成物と脂肪酸のエステルにおいて炭素数が2以上の分枝状あるいは環状物を5%以下とする方法(特許文献10)、平均エステル化度20%のポリグリセリン脂肪酸エステルを水又は有機溶媒で2相分離させ、ポリグリセリンが少なく高HLBのエステルを得る方法(特許文献11)、ポリグリセリンと脂肪酸の反応条件、あるいは液液抽出、吸着分離等により、ポリグリセリンの含有率を20%以下とする製造法(特許文献12)、反応物をメチルエチルケトン、水で抽出し、ポリグリセリンを水相へ移行、除去する方法(特許文献13)、反応物を樹脂吸着し、ポリグリセリンを溶出した後、高純度エステルを溶離する方法(特許文献14)、アルカリ触媒で反応後、水性溶媒等でポリグリセリンを除去する方法(特許文献15)、HPLCでポリグリセリンを精製、低分子ポリグリセリンを除去した後、脂肪酸と反応する方法(特許文献16)、3〜10のポリグリセリン含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する食品(特許文献17)、構成脂肪酸の70%以上がパルミチン酸かつ曇点が55℃以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びイオン性乳化剤を含有する低アルコール飲料用乳化ないし可溶化剤(特許文献18)などの提案がなされている。
【0005】
しかしながら、これら改良ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて調製した乳化組成物およびこれを配合したアルコール性飲料は経時的に、または高温下での保存、殺菌目的での加熱、あるいは高濃度のアルコールを含む溶液と混合した場合に、乳化状態が壊れたり、十分に透明状態を維持できなくなるなど依然改良の余地のあるものであった。
【0006】
【特許文献1】特許第3653884号公報
【特許文献2】特許第3528382号公報
【特許文献3】特許第2741093号公報
【特許文献4】特開2004−323638号公報
【特許文献5】特開平10−95749号公報
【特許文献6】特開平8−051928号公報
【特許文献7】特開平10−327753号公報
【特許文献8】特公平6−36862公報
【特許文献9】特許第3436450号公報
【特許文献10】特許第3466252号公報
【特許文献11】特許第3546462号公報
【特許文献12】特許第3344044号公報
【特許文献13】特開平6−228052号公報
【特許文献14】特許第3301150号公報
【特許文献15】特許第3365422号公報
【特許文献16】特許第3549598号公報
【特許文献17】特許第3545126号公報
【特許文献18】特開2005−143424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はアルコール性飲料に配合したとき、透明に溶解し、高温条件での保存、殺菌のための加熱などの過酷な条件を受けても、長期間にわたって十分な透明状態を維持できる耐アルコール性乳化組成物の提供を目的とする。さらに本発明は、高濃度のアルコール溶液に混合した場合に乳化状態及び透明状態を維持できる耐アルコール性乳化組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記組成からなる組成物を乳化処理して得られる耐アルコール性透明乳化組成物を提供する。
(a)可食性油性材料
(b)精製ポリグリセリン脂肪酸エステル
(c)多価アルコール
(d)水。
【0009】
本発明はさらに、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、そのエステル化度が2.5未満、好ましくは2.3未満、さらに好ましくは2未満である上記の乳化組成物を提供する。
【0010】
本発明はさらに、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、該脂肪酸エステル中に存在する未反応のポリグリセリンが5重量%未満、好ましくは1重量%未満である上記の乳化組成物を提供する。
【0011】
さらに本発明は、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記aおよびb
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものである上記の乳化組成物を提供する。
【0012】
さらに本発明は、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記aからd
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、さらに
c. 溶媒留去物を水および水非混和性有機溶媒に溶解し、未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
d. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものである上記の乳化組成物を提供する。
【0013】
さらに本発明は、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記a〜d
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを水および水非混和性有機溶媒に溶解して未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
b. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
c. 溶媒留去物を極性有機溶媒またはその含水物に溶解した後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、
d. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものである上記の乳化組成物を提供する。
【0014】
本発明はさらに、下記aおよびb
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)、多価アルコール(c)及び水(d)からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法を提供する。
【0015】
さらに本発明は、下記aからd
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、さらに
c. 溶媒留去物を水および水非混和性有機溶媒に溶解し、未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
d. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)多価アルコール(c)及び(d)水からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法を提供する。
【0016】
さらに本発明は、下記a〜d
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを水および水非混和性有機溶媒に溶解して未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
b. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
c. 溶媒留去物を極性有機溶媒またはその含水物に溶解した後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、
d. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)、多価アルコール(c)及び水(d)からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高濃度のアルコール水溶液と混合しても、良好な乳化状態が維持され、十分な透明性も維持できる耐アルコール性透明乳化組成物及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使用される可食性油性材料としては次のものが例示される。油性着香料としては、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油、花精油、ペパーミント油、スペアミント油、ジンジャー、ペッパー、オニオンなどのスパイス精油などの植物精油;コーラナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、ワニラエキストラクト、ココアエキストラクト、紅茶エキストラクト、スパイス類エキストラクトなどの油性エキストラクト及びこれらのオレオレジン類;合成香料化合物、油性調合香料組成物及びこれらの任意の混合物の如き油性の着香料;及びβ−カロチン、パブリカ色素、アナトー色素及びクロロフィルなどの油溶性天然色素類;肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンB2、酪酸エステル、天然ビタミンE混合物などの脂溶性ビタミン類;大豆油、ナタネ油、コーン油、オリーブ油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、牛脂、豚油、魚油などの動植物油脂類;ロジン、コーパル、ダンマル、エレミ、エステルガムなどの植物性樹脂類;炭素原子数6〜12の中鎖飽和脂肪酸トリグリセライドなどの加工食用油脂及びこれら可食性油性材料の任意の混合物が挙げられる。
【0019】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルである。好ましくは精製ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度が2.5未満、好ましくは2.3未満、さらに好ましくは2未満及び/又は未反応ポリグリセリンを5重量%未満、好ましくは1重量%未満に精製したものである。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンオレエート、デカグリセリンミリステートなどが挙げられる。エステル化度はエステル中にいくつの脂肪酸が結合しているかを示す指標であり、この値が大きいほど高次エステルの割合が高いことを示している。
【0021】
既に述べたようにポリグリセリン脂肪酸エステルにはモノエステル、高次エステルのほか、未反応のポリグリセリンが混在している。
【0022】
これまでポリグリセリン脂肪酸エステルから未反応のポリグリセリンを除去する技術、特定の組成のエステルを分離・精製する技術、あるいは反応に使用する原料を精製する技術などが提案されているがアルコール性飲料に配合した際の透明性、乳化安定性、保存安定性が不十分であるとともに乳化組成物を高濃度のアルコールを含む溶液と混合した場合に、乳化状態が壊れたり、透明状態を維持できなくなるなどの欠点があった。
【0023】
本発明者らは、透明性および乳化安定性を損なう直接の原因の一つがポリグリセリン脂肪酸エステル中の高次エステルの存在であることを突き止めた。そこで、高次エステルをできるだけ除去し、エステル化度が2.5未満、好ましくは2.3未満、より好ましくは2未満のポリグリセリン脂肪酸エステル、さらには未反応のポリグリセリンを5重量%未満、より好ましくは1重量%未満に精製したポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて透明乳化組成物を調製したところ、それ自身、酸、塩、加熱、アルコールなどに対し非常に安定であり、特にアルコールに対してはアルコール濃度約30%までのアルコール水溶液と混合した場合でも良好な乳化状態が保たれ、かつ透明性も維持できること、およびこれを配合したアルコール性飲料は長期間にわたって、その透明状態を保つとともに従来のポリグリセリン脂肪酸エステルで調製した乳化組成物に比べ、透明性、保存安定性が飛躍的に向上していることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
本発明において、高次エステル及び未反応ポリグリセリンの測定は次のようにして行った。エステル化度は次のようにして算出する。
実測エステル化率(%)=(SV−AV)/[OHV1+(SV−AV)−(PGL×0.01×OHV2)]×100 (式1)
エステル化度=実測エステル化率(%)/ポリグリセリンモノエステル理論エステル化率(%) (式2)
AV=酸価、SV=ケン化価、OHV1=実測水酸基価、OHV2=ポリグリセリン水酸基価理論値、PGL=未反応の残存ポリグリセリン含有率。
【0025】
未反応の残存ポリグリセリンの測定法は下記条件の下でHPLCを実施し、蒸発光散乱検出器を用いて溶出するポリグリセリンを定量した。
HPLC条件
装置: 液体クロマトグラフィー8020(東ソー社製)
使用カラム: CAPCELL PAK G18MG、
4.6mmI.D.×150mm(資生堂社製)
検出器: 蒸発光散乱検出器(ELSD2000、Alltech社製)
溶離液: 水:メタノール=3:7
溶出速度: 1.0ml/min
注入量: 10μl
カラム温度: 50℃。
【0026】
本発明で使用される多価アルコールとしては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、澱粉分解還元物、グルコース、蔗糖、マルトースなどの糖類およびこれらの二種以上の混合物が例示される。
【0027】
本発明の耐アルコール性透明乳化組成物の製造法を次に説明する。可食性油性材料の混合物、所定範囲まで精製されたポリグリセリン脂肪酸エステル、多価アルコールおよび水からなる組成物をホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザーで乳化処理することにより平均乳化粒子0.2μm以下の極めて微細で安定性の優れた乳化液を得ることができる。この乳化組成物の配合割合は適宜に選択することができるが、好ましくは可食性油性材料1〜10重量%、多価アルコール64〜88重量%、精製ポリグリセリン脂肪酸エステル1〜6重量%、水10〜20重量%の範囲を示すことができる。
【0028】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを得るための精製処理方法を次に説明する。未精製のポリグリセリン脂肪酸エステルをイソブタノールなどの水非混和性溶媒へ溶解させ、そこに飽和食塩水を加え加温下で1時間攪拌し、同温度で静置した後に分離してきた水相を除去する。この操作を数回、さらに飽和食塩水を精製水に換えて同様の操作を繰り返し、未反応ポリオール即ち未反応のポリグリセリンを水相へ抽出することで除去する。分離したイソブタノール相は無水硫酸ナトリウムで脱水した後に、溶媒を留去した。未反応ポリグリセリン除去の確認は、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒/アセトン:精製水=75:25(容量比)、検出/リンモリブデン酸10%メタノール溶液を噴霧し100℃で5分間加熱処理し相当スポットの有無を確認)で行った。
【0029】
次に、得られた溶媒留去物を精製水-メタノールなどの極性溶媒(10:90、容量比)の混合溶媒に溶解させ、そこにn-ヘキサンを加え、好ましくは40℃前後で1時間攪拌し、室温まで冷却後、同温度で静置し、分離してきたヘキサン相を除去する。得られた水-メタノール相にn-ヘキサンなどの非極性溶媒を加えて同様の操作をさらに数回繰り返し、高次エステル化物をn-ヘキサン相へ抽出することで除去する。得られた水-メタノール相の溶媒を留去して精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを得る。高次エステル化物除去の確認は、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒/クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)、検出/リンモリブデン酸10%メタノール溶液を噴霧し、100℃で5分間加熱処理し高次エステル化物相当スポットの有無を確認)を用いて行った。
【0030】
水非混和性溶媒としては、イソブタノールの他に、ブタノール、イソアミルアルコール、アミルアルコール、ヘキサノールなどの水不溶性飽和脂肪族アルコールが例示される。
本発明で使用される極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの溶媒およびこれら二種以上の混合物が例示される。
【0031】
非極性溶媒としては、n-ヘキサンの他に、n−ペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン等の常温で液体の飽和脂肪族炭化水素類、及びシクロヘキサン、シクロペンタン等の常温で液体脂環式炭化水素類が例示される。
【実施例】
【0032】
精製例1 デカグリンモノステアレートの精製工程<高次エステルの除去→未反応ポリグリセリンの除去>
未精製のデカグリンモノステアレート(商品名:Decaglyn1-SVF/日光ケミカルズ→ 以下DSEと表記、エステル化度2.7、ポリオール残存率39.4%:未精製品1)80gを720mlのメタノールに溶解する。溶解後にn-ヘキサン800mlを添加して40〜45℃で1時間攪拌する。その後、精製水80mlを加え、攪拌しながら20〜25℃程度まで冷却し静置する。直ちに液は2層に分離し、上層のn-ヘキサンは除去し、下層と同量のn-ヘキサンを新たに加えて同様の工程を再度行う。薄層クロマトグラフィーで高次エステルの除去を確認し(展開溶媒/クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し、100℃で5分間加熱処理し高次エステル化物相当スポットの有無を確認)、結果により精製3回目を実施する。高次エステルの除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い、61.0g(エステル化度1.7、ポリオール残存率51.6%)の精製DSEを回収した(精製品1)。
【0033】
この半量30.5gを取り、さらに未反応ポリグリセリンを除去するためにイソブタノール250mlに60℃で溶解する。溶解したDSE-イソブタノール相に予め50℃に温めておいた25%(W/V)食塩水500mlを添加し80℃で1時間攪拌する。80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。さらに、同様の工程を10%食塩水でも行い、静置後に下層を除去する。その後、約50℃の精製水を添加後、80℃で30分攪拌した後に80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。こうして得られた上層は未反応ポリグリセリンの除去がされていることを、薄層クロマトグラフィーを用いて確認する(展開溶媒/アセトン:精製水=75:25(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し100℃で5分間加熱処理し相当スポットの有無を確認)。除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い14.8g(エステル化度1.7、ポリオール残存率0.1%)の精製DSEを回収した(精製品2)。
【0034】
精製例2 デカグリンモノステアレートの精製工程<未反応ポリグリセリンの除去→高次エステルの除去>
未精製のデカグリンモノステアレート(商品名:Decaglyn1-SVF/日光ケミカルズ→ 以下DSEと表記、エステル化度2.5、ポリオール残存率39.4%)80gをイソブタノール500mlに60℃で溶解する。溶解したDSE-イソブタノール相に予め50℃に温めておいた25%(W/V)食塩水1000mlを添加し80℃で1時間攪拌する。80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。さらに、同様の工程を10%食塩水でも行い、静置後に下層を除去する。その後、約50℃の精製水を添加後、80℃で30分攪拌した後に80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。こうして得られた上層は未反応ポリグリセリンの除去がされていることを、薄層クロマトグラフィーを用いて確認する(展開溶媒/アセトン:精製水=75:25(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し100℃で5分間加熱処理し相当スポットの有無を確認)。除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い48.5g(エステル化度2.5ポリオール残存率0.1%)の精製DSEを回収した(処理品1)。
【0035】
このうち、24.2gを取り、さらに高次エステルを除去するために900mlのメタノールに溶解する。溶解後にn−ヘキサン1000mlを添加して40〜45℃で1時間攪拌する。その後、精製水90mlを加え、攪拌しながら20〜25℃程度まで冷却し静置する。直ちに液は2層に分離し、上層のn-ヘキサンは除去し、下層と同量のn-ヘキサンを新たに加えて同様の工程を再度行う。薄層クロマトグラフィーで高次エステルの除去を確認し(展開溶媒/クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し、100℃で5分間加熱処理し高次エステル化物相当スポットの有無を確認)、結果により精製3回目を実施する。高次エステルの除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い、14.7g(エステル化度1.7、ポリオール残存率0.1%)の精製DSEを回収した(精製品3)。
【0036】
精製例3 デカグリンモノオレエートの精製工程<高次エステルの除去→未反応ポリグリセリンの除去>
未精製のデカグリンモノオレエート(商品名:Decaglyn1-OLV/日光ケミカルズ→ 以下DOEと表記、エステル化度2.5、ポリオール残存率39.9%:未精製品2)80gを720mlのメタノールに溶解する。溶解後にn-ヘキサン800mlを添加して40〜45℃で1時間攪拌する。その後、精製水80mlを加え、攪拌しながら20〜25℃程度まで冷却し静置する。直ちに液は2層に分離し、上層のn-ヘキサンは除去し、下層と同量のn-ヘキサンを新たに加えて同様の工程を再度行う。薄層クロマトグラフィーで高次エステルの除去を確認し(展開溶媒/クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し、100℃で5分間加熱処理し高次エステル化物相当スポットの有無を確認)、結果により精製3回目を実施する。高次エステルの除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い、60.9g(エステル化度1.8、ポリオール残存率52.4%)の精製DOEを回収した(精製品4)。
【0037】
この半量30.5gを取り、さらにポリグリセリンを除去するためにイソブタノール250mlに60℃で溶解する。溶解したDOE-イソブタノール相に予め50℃に温めておいた25%(W/V)食塩水500mlを添加し80℃で1時間攪拌する。80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。さらに、同様の工程を10%食塩水でも行い、静置後に下層を除去する。その後、約50℃の精製水を添加後、80℃で30分攪拌した後に80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。こうして得られた上層は未反応ポリグリセリンの除去がされていることを、薄層クロマトグラフィーを用いて確認する(展開溶媒/アセトン:精製水=75:25(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し100℃で5分間加熱処理し相当スポットの有無を確認)。除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い14.5g(エステル化度1.8、ポリオール残存率0.1%)の精製DSEを回収した(精製品5)。
【0038】
精製例4 デカグリンモノオレエートの精製工程<未反応ポリグリセリンの除去→高次エステルの除去>
未精製のデカグリンモノオレエート(商品名:Decaglyn1-OLV/日光ケミカルズ→ 以下DOEと表記、エステル化度2.3、ポリオール残存率39.9%)80gをイソブタノール500mlに60℃で溶解する。溶解したDSE-イソブタノール相に予め50℃に温めておいた25%(W/V)食塩水1000mlを添加し80℃で1時間攪拌する。80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。さらに、同様の工程を10%食塩水でも行い、静置後に下層を除去する。その後、約50℃の精製水を添加後、80℃で30分攪拌した後に80℃で静置し、上下ともに均一透明になったら下層を除去する。こうして得られた上層は未反応ポリグリセリンの除去がされていることを、薄層クロマトグラフィーを用いて確認する(展開溶媒/アセトン:精製水=75:25(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し100℃で5分間加熱処理し相当スポットの有無を確認)。除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い48.1g(エステル化度2.5ポリオール残存率0.1%)の精製DOEを回収した(処理品2)。
【0039】
このうち、24.0gを取り、さらに高次エステルを除去するために900mlのメタノールに溶解する。溶解後にn−ヘキサン1000mlを添加して40〜45℃で1時間攪拌する。その後、精製水90mlを加え、攪拌しながら20〜25℃程度まで冷却し静置する。直ちに液は2層に分離し、上層のn-ヘキサンは除去し、下層と同量のn-ヘキサンを新たに加えて同様の工程を再度行う。薄層クロマトグラフィーで高次エステルの除去を確認し(展開溶媒/クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)、検出/リンモリブデン酸5%メタノール溶液を噴霧し、100℃で5分間加熱処理し高次エステル化物相当スポットの有無を確認)、結果により精製3回目を実施する。高次エステルの除去が確認できたら、エバポレーターで70℃、3hrの濃縮を行い、14.4g(エステル化度1.8、ポリオール残存率0.1%)の精製DSEを回収した(精製品6)。
【0040】
以下に未精製品、精製品1〜6および処理品1〜2の収量、エステル化度、残存ポリオール%を示す。
【0041】
(表1) 未精製品、処理品および精製品の収量、エステル化度、残存ポリオール

【0042】
乳化物の調製
製造例1
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に前記方法で精製したデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)精製品1の4.5gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.07ミクロン(本発明品1)であった。
【0043】
製造例2
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例1で精製したデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)精製品2の2.2gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.05ミクロン(本発明品2)であった。
【0044】
製造例3
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例1で精製したデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)精製品3の2.2gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.05ミクロン(本発明品3)であった。
【0045】
製造比較例1
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例1で使用したのと同じ未精製のデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.1ミクロン(比較品1)であった。
【0046】
製造比較例2
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例2で調製したデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)処理品1の6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.07ミクロン(比較品2)であった。
【0047】
製造比較例3
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例2で調製したデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製Decaglyn1−SVF)処理品1の3.6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.1ミクロン(比較品3)であった。
【0048】
製造例4
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に前記方法で精製したデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)精製品4の4.5gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.07ミクロン(本発明品4)であった。
【0049】
製造例5
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例3で精製したデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)精製品5の2.2gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.05ミクロン(本発明品5)であった。
【0050】
製造例6
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例4で精製したデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)精製品6の2.2gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.05ミクロン(本発明品6)であった。
【0051】
製造比較例4
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例3で使用したのと同じ未精製のデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.1ミクロン(比較品4)であった。
【0052】
製造比較例5
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例4で調製したデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)処理品2の6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.07ミクロン(比較品5)であった。
【0053】
製造比較例6
グリセリン78g、イオン交換水12gの混合液に精製例4で調製したデカグリセリンモノオレエート(日光ケミカルズ社製Decaglyn 1−OLV)処理品2の3.6gを溶解し水相とする。そこにレモン精油4gをTK−ホモジナイザー(特殊機化工業)により8000rpmで攪拌しながら混合する。10分間の乳化を行う。得られた乳化組成物は平均粒径0.1ミクロン(比較品6)であった。
【0054】
アルコールシロップの調製
(1)シロップA(アルコール濃度6%V/V)
アルコール 60.0ml
ショ糖 45.0g
クエン酸 1.5g
クエン酸ナトリウム 0.3g
水 残量
合 計 1000ml
(2)シロップB(アルコール濃度24%V/V)
アルコール 240.0ml
ショ糖 180.0g
クエン酸 6.0g
クエン酸ナトリウム 1.2g
水 残量
合 計 1000ml
(3)シロップC(アルコール濃度48%V/V)
アルコール 480.0ml
ショ糖 360.0g
クエン酸 12.0g
クエン酸ナトリウム 2.4g
水 残量
合 計 1000ml。
【0055】
実施例1
比較品1〜6及び本発明品1〜6を下記処方に従い、シロップA、シロップB及びシロップCに対してそれぞれ0.1%W/V、0.4%W/V及び0.8%W/V添加して混合溶液を作成した。シロップAは飲用時濃度、シロップB及びCはそれぞれ飲用時濃度の4倍及び8倍のアルコール濃度である。上記混合溶液の調整直後及び24時間後の外観観察、濁度測定を行った。結果を表2に示す。濁度の測定方法は測定波長680nmにおける吸光度を希釈せずに測定した。
【0056】
(表2)

【0057】
本発明品1〜3はシロップA、B、Cのいずれの場合も調整直後および24時間後の外観が透明であり、濁度も0.001〜0.012の範囲と低かった。すなわち、アルコール濃度が飲用時の6%のみならず、24%、48%と高濃度シロップと混合した場合でも安定な乳化物であることが確認された。これに対し、比較品1〜3はアルコール濃度が6%であるシロップAに対しては調整直後および24時間後の外観が透明であり、濁度も0.001であったが、シロップB、Cにたいしては調整直後においてその外観はやや白濁〜白濁、濁度0.022〜0.167であり、24時間後には全て白濁へと変化、濁度0.125〜0.407と急激に増加するなど高濃度のアルコールシロップに対する安定性が悪かった。
【0058】
本発明品4〜6の場合も本発明品1〜3の場合と同様、シロップA、B、Cに対する調整直後および24時間後の外観は透明で濁度も非常に低い値となり、本発明の精製を行うことにより、アルコールに対する乳化安定性が改善されたことが確認された。また、比較品4〜6も比較品1〜3の場合と同様にシロップAに対しては調整直後および24時間後の外観が透明であったが、シロップB,Cに対しては調整直後においてその外観がやや白濁〜白濁、濁度0.020〜0.165であり、24時間後には全て白濁への変化、濁度0.121〜0.410と急激に増加し、アルコール濃度が高くなると安定性が悪いという結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成
(a)可食性油性材料
(b)精製ポリグリセリン脂肪酸エステル
(c)多価アルコール
(d)水
からなる組成物を乳化処理して得られることを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物。
【請求項2】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度が2.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステル中に存在する未反応のポリグリセリンが5重量%未満であることを特徴とする請求項2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記aおよびb
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項2または3に記載の乳化組成物。
【請求項5】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記aからd
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、さらに
c. 溶媒留去物を水および水非混和性有機溶媒に溶解し、未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
d. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項2または3記載の乳化組成物。
【請求項6】
精製ポリグリセリン脂肪酸エステルが、下記a〜d
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを水および水非混和性有機溶媒に溶解して未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
b. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
c. 溶媒留去物を極性有機溶媒またはその含水物に溶解した後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、
d. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られたものであることを特徴とする請求項2または3記載の乳化組成物。
【請求項7】
下記aおよびb
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)、多価アルコール(c)及び水(d)からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法。
【請求項8】
下記aからd
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを極性有機溶媒またはその含水物に溶解後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、b. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、さらに
c. 溶媒留去物を水および水非混和性有機溶媒に溶解し、未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
d. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)
多価アルコール(c)及び(d)水からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法。
【請求項9】
下記a〜d
a. 未精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを水および水非混和性有機溶媒に溶解して未反応のポリグリセリンを水相に移行させて分離する工程、
b. 水非混和性有機溶媒から溶媒を留去する工程、
c. 溶媒留去物を極性有機溶媒またはその含水物に溶解した後、非極性有機溶媒を添加混合し、高次エステルを非極性有機溶媒に移行させて分離する工程、
d. 極性有機溶媒またはその含水物から溶媒を留去する工程、
の各工程を経て得られた精製ポリグリセリン脂肪酸エステル(b)、可食性油性材料(a)、多価アルコール(c)及び水(d)からなる組成物を乳化処理することを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物の製造方法。


【公開番号】特開2007−116930(P2007−116930A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310702(P2005−310702)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】