説明

耐コロナ性電気絶縁電線

【課題】絶縁被膜の外層の自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層について、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れ、併せて、被膜損傷からの保護や高温時での優れた耐熱性などをも具備した電気絶縁電線を提供する。
【解決手段】導体に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外層に自己滑性を有することもある自己融着層3又は被覆保護層3を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層3又は被覆保護層3を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる電気絶縁塗料により構成してなる耐コロナ性電気絶縁電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐コロナ性電気絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁電線は、例えば、図1に示すように、導体1の外周に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外周にオ−バ−コ−ト層3を設けて構成され、当該オ−バ−コ−ト層3を自己融着層3とした自己融着性絶縁電線は、電気機器のコイル例えばテレビやパソコンのデイスプレイの偏向ヨ−クコイルのマグネットワイヤなどに使用されている。当該自己融着性絶縁電線にあっては、当該絶縁被膜2の外周の融着層3の自己融着性により、例えば、コイル巻線してから加熱すると、当該融着層3によりコイル線間を迅速且つ容易に接着できるので、電気機器の生産性の向上や製造コストの低減下等の面から、広く実用化されている。
しかし、近時、電気機器の軽薄小型化等から、巻線間のコロナ放電が起こり易くなり、電気機器の使用寿命の低下などに結びつき、耐コロナ性の巻線やそれに使用される電気絶縁塗料が求められている。
又、電気絶縁電線にあっては、元々、コイル巻線して使用されたりするので、巻線の基本的な特性である可撓性が必要で、当該可撓性の欠如は、コイル巻線の劣化を引き起こし、電気機器の使用寿命の低下などに結びつく。
そこで、上記のような自己融着性絶縁電線やそれに使用の自己融着性電気絶縁塗料にあっては、耐コロナ性が優れている一方で、可撓性を備えていることが要求され、いわば、耐コロナ性が優れていても、可撓性が悪くならないように、即ち、可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れていることが求められている。
上記の電気絶縁電線におけるオ−バ−コ−ト層3として、自己融着性は備えていないが、コイル巻線の劣化から保護すること等を目的として、被覆保護層3が設けられる場合もある。
当該被覆保護層3にあっても、同様に、電気機器の軽薄小型化等から、耐コロナ性の具備が要求される一方で、コイル巻線の基本的な特性である可撓性をも備えていることが必要で、耐コロナ性が優れていても、可撓性が悪くならないことが求められている。
一方、電気機器に組み込まれるコイルの巻線加工では、高速でその作業が行われたりするので、巻線が損傷を受け易くなり、又、電気機器の小型化の要請などから電線外径の細径化、絶縁被膜の薄肉化が必要とされ、コイル加工時の被膜損傷の頻度を増大させることとなる。そこで、滑性剤や潤滑剤の使用により、オ−バ−コ−ト層3に自己滑性を付与し、摩擦係数を低下させることが行われているが、当該オ−バ−コ−ト層3の自己滑性層3にあっても、当該自己滑性の付与と同時に、前記のような可撓性や耐コロナ性を備えていることが必要である。なお、当該自己滑性層は、前記の絶縁被膜2の外周の融着層3や被覆保護層3の外層にオ−バ−コ−ト層として設けられる場合もあり、同様に、当該自己滑性の付与と同時に、前記のような可撓性や耐コロナ性を備えていることが要求される。
又、電気機器に組み込まれるコイルは、その高電圧化などや加熱による自己融着作業が高温下で行われること等の観点から、高温時でも優れた耐熱性を有することも、上記のような耐コロナ性や可撓性や自己滑性の付与と同時に求められている。
耐コロナ放電対策として、前記の導体1の外周に施される絶縁被膜2について、その被膜を構成する電気絶縁塗料に関し、無機化合物を添加して、耐コロナ性を向上させる技術が提案されている(例えば、特開2003−73616、特開平11−130993、特開2006−252852号公報)。
しかしながら、当該技術は、上記のような融着層3の内層の絶縁被膜(層)2の電気絶縁塗料に適用されたもので、絶縁被膜(層)2の耐コロナ性を改良し得ても、その外層における当該融着層や被覆保護層3については、巻線の基本的な特性である可撓性の具備をも要求されので、直ちに、当該技術を以って、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく耐コロナ性を改善し得るものではない。又、当該外層では、上記のような被膜損傷からの保護や高温時での優れた耐熱性なども要求され、それらをも具備させる必要がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−73616、特開平11−130993、特開2006−252852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する欠点を解消し、又、前記要請に答えることの出来る技術を提供することを目的としたものである。
本発明の他の目的や新規な特徴については本件明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1)導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層又は被覆保護層を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる電気絶縁塗料により構成してなることを特徴とする耐コロナ性電気絶縁電線。
(請求項2)無機化合物が、二酸化珪素(SiO)であることを特徴とする、請求項1に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
(請求項3)熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂が、ポリアミド、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリエステル−ウレタン、ポリビニルブチラ−ル、ポリエ−テルサルホン、ポリサルホン、ポリエ−テルケトン、ポリアリレ−ト樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
(請求項4)有機溶剤が、クレゾ−ル、フェノ−ル、Nメチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、ソルベントナフサであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
(請求項5)添加剤が、架橋剤よりなることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
(請求項6)自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層が、滑剤を添加してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の耐コロナ性電気絶縁電線
(請求項7)自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層の外層に自己滑性層を有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、次のような利点がある。
本発明によれば、導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層又は被覆保護層を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる電気絶縁塗料により構成することにより、当該外層の自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層について、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れた電機絶縁電線を得ることができる。特に、当該粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加することにより、当該外層の自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層について、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れた電機絶縁電線を得ることができ、併せて、被膜損傷からの保護や高温時での優れた耐熱性などをも具備させることができる。
本発明によれば、自己融着層又は被覆保護層の外層に自己滑性層を有してなるようにすることにより、その外層において、当該自己滑性の付与と同時に、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れた絶縁電線を得ることができ、又、同時に、高温時でも優れた耐熱性を有する絶縁電線を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層又は被覆保護層を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる。
当該無機化合物は、炭化珪素、窒化珪素、二硫化モリブテンなどであってもよいが、本発明の所望の目的からは、二酸化珪素(SiO)であることが好ましい。
当該二酸化珪素(SiO)は、その粒子径が20μm以下であることが、自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層において、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性を向上させることができる。粒子径は、20μm以下好ましくは、10〜20μmである。
当該二酸化珪素(SiO)は、オルガノシリカゾル(有機溶媒に分散したシリカゾル)の形態で使用することができる。当該オルガノシリカゾルは、市販のものを使用することができる。例えば、DMAC−ST、IPA−ST、EG−ST、NPC−ST−30(日産化学工業株式会社製)が挙げられ、これらオルガノシリカゾルは次のような物性を持つ。
DMAC−STは、そのSiOの含有量が20〜21%、HO含有量が3以下、分散媒がN,N−ジメチルアセトアミド、粒子径が10〜20μm、粘度が1〜10cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
IPA−STは、そのSiOの含有量が30〜31%、HO含有量が2以下、分散媒がイソプロパノ−ル、粒子径が10〜20μm、粘度が3〜20cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
EG−STは、そのSiOの含有量が20〜21%、HO含有量が2以下、分散媒がエチレングリコ−ル、粒子径が10〜20μm、粘度が20〜100cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
NPC−ST−30は、そのSiOの含有量が30〜31%、HO含有量が1.5以下、分散媒がエチレングリコールモノプロピルエーテル、粒子径が10〜15μm、粘度が25cp以下(20℃)のオルガノシリカゾルである。
上記のオルガノシリカゾルの中で、DMAC−STが特に好ましい。
他に、デグサ/アエロシリーズ(東新化成社製)等も使用できる。
【0008】
当該無機化合物は、当該自己融着層又は被覆保護層を構成する電気絶縁塗料を構成する樹脂又は樹脂組成物中の当該樹脂分100重量部に対して5〜50重量部好ましくは、10〜45重量部の割合で添加する。
当該添加量が、5重量部未満では、耐コロナ性(耐コロナ放電破壊性)の効果を奏することができないし、一方、50重量部を超えると、耐コロナ性に優れていても、可撓性を悪化させ、特に、塗料被膜が薄くなると可撓性が悪くなり、又、50重量部を超えて添加しても耐コロナ性の効果が飽和し経済的ではない。
【0009】
本発明で使用される熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリアミド、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリエステル−ウレタン、ポリビニルブチラ−ル、ポリエ−テルサルホン、ポリサルホン、ポリエ−テルケトン、ポリアリレ−ト樹脂が挙げられる。
特に、自己融着層を構成するには、融着性樹脂を使用することが好ましい。
当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上使用することができる。
【0010】
本発明では、当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物であってもよい。
当該添加剤としての架橋剤としては、シランカップリングなどが挙げられる。
当該添加剤としては、他に必要に応じて、層状粘度鉱物やカ−ボンナノチュ−ブ等の無機充填剤やカ−ボンブラックなどの着色剤やフェノ−ル系酸化防止剤等の酸化防止剤(耐候剤)や難燃剤や反応触媒などを使用してもよい。
上記の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂の他の樹脂を混合してもよい。
【0011】
本発明では、当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解させて最外層の自己融着層又は被覆保護層の電気絶縁塗料を構成する。
当該有機溶剤としては、例えば、クレゾ−ル、フェノ−ル、Nメチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、ソルベントナフサが挙げられる。
【0012】
自己融着層又は被覆保護層は、滑剤の添加等により、自己滑性を有してもよい。
本発明によれば、当該自己滑性の付与と同時に、耐コロナ性や可撓性に優れた融着層又は被覆保護層を有してなる電気絶縁電線を得ることができる。
当該滑剤としては、脂肪酸エステル、低分子ポリエチレン、ワックスなどが例示できる。
【0013】
本発明の電気絶縁電線は、図1に示すように、導体1の外周に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外周にオ−バ−コ−ト層3として、自己融着層や被覆保護層3を設ければよい。
当該絶縁被膜2は、例えば、1層〜3層に構成され、例えば、下地及び中地のダブル2層に構成することが出来る。
当該絶縁被膜2の外層に、本発明に係わる自己融着層や被覆保護層3を設け、更に、当該自己融着層や被覆保護層3の外層にオ−バ−コ−ト層として自己滑性層を有しさせることが出来る。当該自己滑性層により、当該オ−バ−コ−ト層に自己滑性を付与し、摩擦係数を低下させることが出来る。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜実施例8
【0015】
表1及び表2に従い、オルガノシリカゾルを、表1及び表2に示すベ−ス塗料の樹脂分(不揮発分)100重量部に対して5重量部を添加して、可撓性と耐コロナ性を測定し、又、破壊電圧とガラス転移温度(Tg)と粘着性を測定した。
その結果を表1及び表2に示す。
(イ)使用したベ−ス塗料は次の通り。
TCV−HR: ポリサルホン系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−MB: ポリアミド−エポキシ系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−NS2−C: アロマチックポリアミド系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−PA: ポリエステル−ウレタン系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−B1: フェノキシ系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−11: ブチラ−ル系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−E102: ポリエステル系塗料(東特塗料株式会社製)
TCV−S300L: 66ナイロン変性(耐熱樹脂配合)系塗料
(東特塗料株式会社製)
(ロ)オルガノシリカゾルは、DMAC−ST(日産化学工業株式会社製)で、SiOの含有量が20〜21%、HO含有量が3以下、分散媒がN,N−ジメチルアセトアミド、粒子径が10〜20μm、粘度が1〜10cp(20℃)のものである。
(ハ)ベ−ス塗料の樹脂分(不揮発分)の測定は、170℃X2hrs.で、1.5gr採取により行った。
(ニ)絶縁電線の仕様
ベ−ス塗料にオルガノシリカゾルを混合分散させて得た本発明に係る塗料を使用して、次の仕様により、絶縁電線を作製した。
(a)焼付炉; 炉長7m、熱風循環炉
(b)導体径;1.0mm
(c)寸法;
下地 NH8645E2
ポリエステルイミド系塗料(東特塗料株式会社製)
中地 NHAI602−28
ポリアミドイミド系塗料(東特塗料株式会社製)
上地 本発明に係わる塗料
(d)皮膜厚;
下地 16ミクロン
中地 16ミクロン
上地 10ミクロン
(e)炉温; 下 370℃、中450℃、上500℃
(f)線速; 20m/mm
(g)絞り方法(ダイス)及び回数
下地 5回
中地 5回
上地 3回
(ホ)電線特性の評価方法
(a)可撓性;
20%伸張巻付時の発生キレツ数を測定。1d(自己径)及び(又は)2d(2倍径)で測定。
(b)耐コロナ性;
1kHz、2.5KV課電時の寿命時間(Hrs)を測定。テスト片は、JIS C 3003のツイストペア−に従った。
(c)破壊電圧;
JIS C 3003に準拠して、絶縁破壊電圧(KV)を測定した。
(d)ガラス転移温度(Tg);
メタルパス法に準拠して、Tg(Tanδ)(℃)を測定した。
(e)粘着性;
絶縁電線を5mmのマンドレルに緊密に巻付てヘリカルコイルを作成し、これを220℃X10分加熱した。このコイルの粘着性(自己融着性)の有無を観察した。
X; 不粘着、 ○:粘着
実施例9〜16
【0016】
表1及び表2に従い、オルガノシリカゾルを、表1及び表2に示すベ−ス塗料の樹脂分(不揮発分)100重量部に対して30重量部を添加して、実施例1〜8と同様にして、可撓性と耐コロナ性を測定し、又、破壊電圧とガラス転移温度(Tg)と粘着性を測定した。
その結果を表1及び表2に示す。
実施例17〜24
【0017】
表1及び表2に従い、オルガノシリカゾルを、表1及び表2に示すベ−ス塗料の樹脂分(不揮発分)100重量部に対して50重量部を添加して、実施例1−8と同様にして、可撓性(自己径及び2倍径)と耐コロナ性を測定し、又、破壊電圧とガラス転移温度(Tg)と粘着性を測定した。
その結果を表1及び表2に示す。
実施例25
【0018】
表3に従い、実施例9の本発明に係る塗料に加えて、自己滑性のNHAI−27CLK−3(ポリアミドイミド系塗料)の塗料を使用して、実施例9の絶縁電線(下地、中地及び上地)の外層に当該自己滑性のNHAI−27CLK−3の塗料を塗布・焼付した。1回塗布で、皮膜厚みは,2ミクロンとした。
実施例1〜8と同様にして、可撓性(自己径及び2倍径)と耐コロナ性を測定し、又、破壊電圧とガラス転移温度(Tg)と粘着性を測定した。
その結果を表3に示す。
比較例1〜5
【0019】
表3に従い、オルガノシリカゾルを添加せずに、実施例1〜8と同様にして、可撓性と耐コロナ性を測定し、又、破壊電圧とガラス転移温度(Tg)と粘着性を測定した。
その結果を表3に示す。





















【0020】
【表1】

















【0021】
【表2】

















【0022】
【表3】


【0023】
結果
実施例及び比較例の結果から、オルガノシリカゾルを添加しない比較例では、耐コロナ性が0.4乃至0.5であるのに対して、本発明の実施例塗料では、実施例1〜8のように当該オルガノシリカゾルを5重量部添加した場合には、2.1乃至4.5と耐コロナ性の1KHz、2.5KVの課電時の寿命時間が比較例に比して5倍から8倍以上と延び、又、本発明の実施例塗料では、実施例9〜16のように当該オルガノシリカゾルを30重量部と増加して添加した場合には、4.3乃至9.5と耐コロナ性の1KHz、2.5KVの課電時の寿命時間が比較例に比して大凡8倍から24倍以上と大幅に延び、更には、本発明の実施例塗料では、実施例17〜24のように当該オルガノシリカゾルを50重量部と増加して添加した場合には、大凡13.8乃至20.3と耐コロナ性の1KHz、2.5KVの課電時の寿命時間が比較例に比して大凡28倍から50倍以上と格段に延びて、本発明のようにオルガノシリカゾルを添加した塗料によれば、耐コロナ性に優れていることが判り、その場合の可撓性を見るに、1dの自己径でもキレツが見られず、即ち、可撓性を損なわずに、耐コロナ性を向上し得たことが判る。
又、上記実施例及び比較例の結果から、破壊電圧も、オルガノシリカゾルを添加しない比較例と同様の値を示しており、また、ガラス転移温度(Tg)もオルガノシリカゾルを添加しない比較例と同様の値を示しており、オルガノシリカゾルを添加しても、当該絶縁電線のショ−ト等による損傷などを受けにくく、耐熱性も保持できることが判る。
更に、実施例25に示すように、自己滑性の塗料を最外層に施した場合にも、表3に示すように、実施例と差がなく、耐コロナ性も同じようで、当該実施例25から、自己滑性で、且つ、可撓性を損なわずに、耐コロナ性を向上し得ることが判る。特に、2倍径でもキレツが見られず、可撓性に優れていることが判る。
上記の実施例の結果から、本発明の実施例塗料によれば、ガラス転移温度(Tg)も高く、耐熱性をも保持できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、自己融着層の他、外層の各種被覆保護層にも適用できる。
又、本発明は、各種電気絶縁電線や電気絶縁塗料に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自己融着層や被覆保護層のオ−バ−コ−ト層を有する電気絶縁電線の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 導体
2 絶縁被膜
3 オ−バ−コ−ト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層又は被覆保護層を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる電気絶縁塗料により構成してなることを特徴とする耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項2】
無機化合物が、二酸化珪素(SiO)であることを特徴とする、請求項1に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項3】
熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂が、ポリアミド、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリエステル−ウレタン、ポリビニルブチラ−ル、ポリエ−テルサルホン、ポリサルホン、ポリエ−テルケトン、ポリアリレ−ト樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項4】
有機溶剤が、クレゾ−ル、フェノ−ル、Nメチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、ソルベントナフサであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項5】
添加剤が、架橋剤よりなることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項6】
自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層が、滑剤を添加してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。
【請求項7】
自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層の外層に自己滑性層を有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の耐コロナ性電気絶縁電線。

【図1】
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【公開番号】特開2009−146753(P2009−146753A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323256(P2007−323256)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(391018710)東特塗料株式会社 (2)
【Fターム(参考)】