説明

耐候性アクリル系フィルムおよびシート

【課題】可塑剤のブリードによる耐候性の低下や粘着不良を起こすことがなく、柔軟で耐候性に優れ、印刷等を施した意匠層を積層する場合には意匠層の紫外線等による変色、劣化を防止することができる耐候性アクリル系フィルム、シートを提供することである。
【解決手段】アクリル系樹脂にアクリル系ゴム状粒子を加えさらに、所定量の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂より形成される耐候性に優れたフィルム、シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルム、シートは、透明性、着色性、加工性に優れるために、建材用途、産業用途などの幅広い用途で使用されている。なかでも、建材用化粧シート、鋼板用シート、マーキングフィルム、表面保護フィルム用途では、シート、フィルムに粘着加工を施し粘着シート、フィルムとして使用される。これらの粘着シート、フィルムは、扉、家具、ドア、屋外広告、看板、家電、自動車内装材等に用いられている。
【0003】
また、粘着シート、フィルムが屋外または、屋内においても日光を受ける場所において使用される時には耐候性が要求される。これらの用途ではフィルム、シート自身が劣化しないこことはもちろんであるが、フィルム、シートが透明でありその内側に印刷等を施した意匠層がある場合は、その意匠層を保護する役割をも担っている。
【0004】
ここで、ポリ塩化ビニル樹脂を使用したフィルム、シートには柔軟性を得るために可塑剤が使用されている。しかし、この可塑剤が経時でフィルムの表面にブリードすることで外観不良となるだけでなく、粘着剤を塗布した粘着剤層を有する場合には、可塑剤が粘着剤層に移行し粘着力低下の原因となることがある。また、耐候性の面でも可塑剤の揮散により柔軟性が低下し、その結果としてフィルムの割れやひびの発生といった不具合を生じるなどの問題がある。そこで可塑剤の揮散を防止する為に分子量400〜480のフタル酸系可塑剤を使用することが提案されているが、充分な耐候性を得られていなかった。(特許文献1)
【0005】
そこで、可塑剤を使用しないという点からポリオレフィン系のフィルム、シートが使用されることがあるが、ポリ塩化ビニル系フィルム、シートと比較して、柔軟性に劣るために曲面への追従性が悪く曲げられた部分が白化するなどの問題点があった。また耐候性においても満足の得られるものではなかった。
【0006】
一方で耐候性という面からはアクリル系フィルムを使用することがあるが、この場合も柔軟性に劣るために曲面への追従性等が十分でない。そこで柔軟性を改善する目的でゴム成分を添加することがある。この場合には柔軟性を得ることが出来るが、ゴム成分を添加することにより逆に耐候性が低下するといった問題があった。(特許文献2)
【0007】
【特許文献1】特開2003−073517号公報
【特許文献2】特開2003−128711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述のような課題を解決しようとするものであって、可塑剤のブリードによる耐候性の低下や粘着不良を起こすことがなく、柔軟で耐候性に優れ、印刷等を施した意匠層を積層する場合には意匠層の紫外線等による変色、劣化を防止することができる耐候性アクリル系フィルム、シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
係る目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討の結果、アクリル系樹脂にアクリル系ゴム状粒子を加えさらに、所定量の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加することにより、シート、フィルムの柔軟性を維持したまま耐候性に優れることを見出し本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は10〜80重量%のアクリル樹脂(a1)と90〜20重量%のアクリル系ゴム状粒子(a2)とからなるアクリル系ポリマー混合物(A)を主成分とし、該アクリル系ポリマー混合物(A)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B)0.05〜3.0重量部とヒンダートアミン系光安定剤(C)0.01〜2.0重量部を添加してなる耐候性アクリル系積層フィルムおよびシートであり(請求項1)、前記の紫外線吸収剤(B)をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(B1)とし、その分子量を250以上かつ600以下としたことであり(請求項2)、前記ヒンダートアミン系光安定剤(C)の分子量を300以上かつ1100以下としたことであり(請求項3)、請求項1から請求項3記載の何れか1項に記載のアクリル系フィルムおよびシートを意匠層の表面に積層したことである(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耐候性アクリル系フィルム、シートは、アクリル樹脂(a1)とアクリル系ゴム状粒子(a2)とからなるアクリル系ポリマー混合物(A)に所定量の紫外線吸収剤(B)とヒンダードアミン系光安定剤(C)を添加しているので、フィルム、シートは適度な柔軟性をもち、曲面追従性に優れ、フィルム、シートの劣化や変色を防止でき耐候性に優れている。
【0012】
本発明においては、紫外線吸収剤(B)自体の紫外線等による劣化をヒンダートアミン系光安定剤(C)が防止するために、これらを単独で使用するよりも優れた耐候性を発揮することができる。
【0013】
また、本発明の耐候性アクリル系フィルムを印刷等が施された意匠層に積層することで、意匠層の変色、劣化を防止でき、耐候性、柔軟性に優れた耐候性アクリル系積層フィルム、シートを得ることが出来る。
【0014】
上記の場合においても、紫外線吸収剤(B)とヒンダードアミン系光安定剤(C)を併用することで紫外線吸収剤(B)の安定化が図られ、紫外線吸収剤(B)自体の耐候性が向上する。その結果、紫外線吸収性能が持続する為に当該意匠層の保護効果を持続的に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適実施の態様について詳細に説明する。
【0016】
本発明で使用するアクリル樹脂(a1)とアクリル系ゴム状粒子(a2)の比率は、10〜80重量%のアクリル樹脂(a1)と90〜20重量%のアクリル系ゴム状粒子(a2)からなることが必要であり、適度の柔軟性が得られ、ブロッキング防止やハンドリング性、成形加工性の面から、上記比率は、10〜50重量%のアクリル樹脂(a1)と90〜50重量%のアクリル系ゴム状粒子(a2)であることがより好ましい。
【0017】
アクリル系樹脂(a1)が80重量%より大きい場合、得られるフィルム、シートの柔軟性に劣るために曲面追従性がないと言った問題点があり、アクリル樹脂(a1)が10重量%未満の場合、成形加工性の低下や、仕上ったフィルム、シートの剛性が不足しハンドリング性が劣り、さらに巻物形状のフィルム、シートがブロッキングを起こすなどの問題点がある。
【0018】
本発明で用いられるアクリル系ポリマー混合物(A)中のアクリル樹脂(a1)は、特に限定されないがポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体などの(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキルエステル化合物の単独重合体あるいは共重合体や、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等があげられる。
【0019】
また、アクリル系ゴム状粒子(a2)は、特に限定されないがアクリル酸エステルとこれと共重合可能な多官能性単量体および他の単官能性単量体からなる単量体混合物によって形成されるゴム弾性を有する層を含む樹脂組成物等が挙げられる。
【0020】
前記アクリル系ゴム状粒子(a2)を形成するアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。
【0021】
前記アクリル系ゴム状粒子(a2)を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0022】
前記アクリル系ゴム状粒子(a2)を形成する、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸とC1〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0023】
本発明におけるアクリル系ポリマー混合物(A)のアクリル系ゴム状粒子(a2)の平均粒子径は特には限定されないが、透明性やフィルムの製造時の成形加工性の点から150nm以下が好ましく、さらに好ましくは40nm〜120nmの範囲である。
【0024】
本発明における紫外線吸収剤(B)として例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−tert−ブチル−4’−(2−メタクロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等のベンゾフェノン系;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−C7 〜C9 混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2' −メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジtert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−tert−アミルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系;2−エチル−2' −エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4' −ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド系;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系等が挙げられる。
【0025】
ベンゾトリアゾール系は吸収波長領域が広く、かつ可視部への吸収のまたがりが少ないために耐候性アクリル系フィルム、シートの黄変が起こりにくいという観点から好ましい。またベンゾエート系、トリアジン系は300nm以下の波長領域での吸収が大きいのに対して、ベンゾトリアゾール系は370nm付近に吸収を持つために、意匠層と積層する場合には、当該意匠層の変色、劣化を効率的に防止するころができるために好ましい。これは、意匠層の顔料、染料等は370nm付近の紫外線により劣化する場合が多く、この波長領域の紫外線を意匠層の表層面に積層された本発明の耐候性アクリル系フィルム、シートにより吸収することで意匠層の保護を図れるからである。
【0026】
また、ベンゾトリアゾール系の中でも分子量が250以上、600以下であるものがブリード、ブルームがより少なく、アクリル系ポリマー混合物(A)に添加した際に分散が良くなるという点から好ましい。すなわち分子量が250以上、600以下のものは、アクリル系ポリマー混合物(A)に添加したときの分散性に優れより少量で紫外線吸収性能を発揮し、さらにブリードやブルームがより防止されるという点で優れている。
【0027】
分子量が250以上かつ600以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0028】
本発明の紫外線吸収剤(B)の添加量は、アクリル系ポリマー混合物(A)100重量部に対して、0.05〜3.0重量部が好ましい。0.05未満では初期の紫外線透過率が劣り本発明のフィルムの耐候性が劣るだけでなく、意匠層を積層した場合の意匠層の変色、劣化を防止することができない。また、3.0重量部より多く添加すると、紫外線吸収剤がブルーム、ブリードするために外観を損ない、また粘着剤層などとの密着不良を起こすために好ましくない。また、ブルーム、ブリードがより少なく、紫外線吸収効果のバランスが優れているという点から0.3〜2.0重量部がさらに好ましい。
【0029】
本発明のヒンダードアミン系光安定剤(C)として、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−tert−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6テトラメチル−1−ピペリジルエタノールの重合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4、7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン等が挙げられる。
【0030】
ここで、本発明のヒンダードアミン系光安定剤はアクリル系ポリマー混合物(A)の耐候性を向上させるだけでなく、紫外線吸収剤(B)の安定化にも寄与し紫外線吸収剤(B)による紫外線吸収機能を持続させる効果を併せ持っている。そうすると紫外線吸収剤(B)とヒンダードアミン系光安定剤(C)が近傍に存在することでヒンダードアミン系光安定剤(C)の効果がより発揮できる。よって、上記の観点からアクリル系ポリマー混合物中での分散性を向上させる為に、ヒンダードアミン系光安定剤(C)の分子量を300以上かつ1100以下とすることが好ましい。
【0031】
300以上かつ1100以下のヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル1等が挙げられる。
【0032】
さらにヒンダードアミン系光安定剤(C)の分散性が向上するという観点から、ヒンダードアミン系光安定剤(C)が液状であることがより好ましい。ここで液状とは、20℃において液体状であり、粉体、固体状態でないものをいう。融点を有するものにおいては10℃以下のものをいう。また液体状には、粘度が高く流動性が悪い状態のものを含む。さらに、当該液状のヒンダードアミン系光安定剤(C)をあらかじめ樹脂等に練り込んだペレット形状のものでも使用できる。
【0033】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の添加量は、アクリル系ポリマー混合物(A)100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましい。0.01重量部未満では紫外線等による影響でフィルム、シートが変色や劣化するのを防止することが出来ず、耐候性が不十分である。さらに添加している(B)紫外線吸収剤の劣化を防ぐことが出来ず、意匠層を積層した場合に紫外線による変色、劣化等から意匠層を保護することができない。また、2.0重量部より多く添加すると、ヒンダードアミン系光安定剤(C)がブリーム、ブリードするために外観を損ない、粘着剤層等との密着不良などを起こすために好ましくない。また、成形加工時に金属ロールへの粘着が見られ成形加工性が低下する。ブルーム、ブリードがより少なく、耐候性に優れるという点から0.05〜1.5重量部がより好ましい。
【0034】
ここで上記意匠層の保護には、耐候性試験の実施後に370nmでの紫外線透過率が0%〜10%であることが好ましく、0%〜7%であることがより好ましい。
【0035】
本発明のアクリル系ポリマー混合物(A)に紫外線吸収剤(B)とヒンダードアミン系光安定剤(C)を添加してなるフィルム、シートには、成形加工中の滑性を保持する目的で滑剤を添加することができる。特にカレンダー成形法でフィルムやシートを作製する場合、酸化防止剤や金属ロールから溶融樹脂が剥離するための離型剤(滑剤)等の添加剤を樹脂に配合すること好ましい。添加する滑剤として特に限定されないが、金属石鹸系化合物、アミド系化合物、エチレンビスアマイド系化合物、ポリエチレンワックスなどが使用できる。好適には、より剥離性が優れるという観点から、例えば、ベヘン酸やモンタン酸などの炭素数が21以上の脂肪酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどのアミド系化合物、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイドなどのエチレンビスアマイド系化合物、モンタン酸とエチレングリコールのジエステル、高分子複合エステルなどのエステル系化合物、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウムなどの金属石鹸、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0036】
更に、本発明の耐候性アクリル系フィルム、シートには、目的を損なわない範囲で酸化防止剤、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、タルクなどの充填剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤などを適宜配合することができる。
【0037】
本発明の耐候性アクリル系フィルム、シートには、鋼板用シート、粘着テープ、化粧フィルム、マスキングテープやマーキングフィルムなどの建築、産業用途、ダイシング用粘着テープ、バックグラインド用粘着テープなど半導体製造用途、保護フィルムなどの基材フィルムやシートに広く使用することができる。
【0038】
特に化粧フィルムやマーキングフィルムの様に印刷を施したり、着色された意匠層の表面側に耐候性フィルム、シートを積層する用途においては、本発明の耐候性アクリル系フィルムは、(B)紫外線吸収剤と(C)ヒンダードアミン系光安定剤を所定量配合したことにより紫外線吸収性能が持続的に得られ、意匠層の劣化や退色を防ぐことができるために、適した使用用途である。
【0039】
上記の意匠層としては、顔料の添加により着色された層や顔料を添加した層または顔料を添加しない層にグラビヤ印刷、オフセット印刷、シルク印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷などの印刷を施した層が使用できる。また、本発明の耐候性アクリル系フィルムの表層側の反対面に印刷を施し、意匠層とすることも出来る。
【0040】
本発明の耐候性アクリル系積層フィルムおよびシートは本発明の耐候性アクリル系フィルムと当該意匠層を積層した構成から成り、図1のように耐候性アクリル系フィルム(1)の表層面(11)の反対面に意匠層(2)を積層した構成や、図2のように耐候性アクリル系フィルム(1)の表層面(11)の反対面に意匠層(2)と基材層(3)を積層した構成があげられる。また図3のように耐候性アクリル系フィルム(1)の表層面(11)の反対面に印刷を施した層(1−2)を形成してなる意匠層付耐候性アクリル系フィルム(1−1)の表層面(11)の反対面に意匠層(2)または基材層(3)から選ばれる層(4)を積層する構成も使用できる。
【0041】
さらに本発明の耐候性アクリル系積層フィルムおよびシートの表層面(11)の反対側の裏面(21)に粘着層と剥離紙または剥離フィルムを順次積層した粘着層付耐候性アクリル系積層フィルムおよびシートとして使用することで被着体に容易に貼り付けを行なうことができる。
【0042】
上記のように本発明の耐候性アクリル系フィルムを当該意匠層と積層して使用する場合には、耐候性アクリル系フィルムは透明であることが要求される。ここでいう透明とは意匠層と積層したときに意匠層を視認できる程度の透明性をいい、いわゆる半透明といわれるものも含み、全光線透過率で30%以上、100%未満のものをいう。
【0043】
また、本発明の耐候性アクリル系フィルムを意匠層と積層して使用する場合には、本発明の耐候性アクリル系フィルムが適度な硬さと柔軟性を有することで意匠層との積層時にシワが入りにくいう点から、当該耐候性アクリル系フィルムの引張弾性率が80MPa以上1200MPa以下であることが好ましい。
【0044】
上記の意匠層、基材層は、合成樹脂を成形してなるフィルム、シートであって、合成樹脂としてはポリ塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS、MBS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。意匠層は表層であるアクリル系ポリマー混合物からなるフィルム、シートとの密着性を考慮すると、ポリ塩化ビニル系樹脂およびアクリル系樹脂からなるフィルム、シートであることが好ましい。また、基材層は意匠層との密着性を考慮すると、ポリ塩化ビニル系樹脂およびアクリル系樹脂からなるフィルム、シートであることが好ましく、また、本発明のアクリル系ポリマー混合物(A)を使用することがより好ましい態様である。
【0045】
ここでポリ塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0046】
ここでアクリル系樹脂としては、特に限定されないがポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体などの(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキルエステル化合物の単独重合体あるいは共重合体や、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等があげられる。
【0047】
また本発明の耐候性アクリル系フィルム、シートの成形は、特に限定されないが、押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法などの方法が利用できる。
【0048】
単層のフィルムやシートは一般的なTダイ押出成形法やカレンダー成形法が適用でき、その中でも、カレンダー成形で生産することができれば、高速生産のメリットを生かし、コスト面でさらに優位となる。カレンダー成形は、溶融樹脂を加熱した金属ロール(カレンダーロール)で圧延することによって所望の厚さのシートやフィルムを作製する成形方法であり、押出成形におけるダイス近傍で発生するトラブルがなく、成形されるフィルムやシートの厚み精度が良好で品質的に優れたものが比較的容易に作製できる。加えて、成形速度が速く生産性に優れているので、同じ規格の製品を多量に生産するのに適した成形法である。
【0049】
また、フィルムやシートを押出成形法により作製する場合、カレンダー成形法に比べて、高温の溶融樹脂が外気に触れることが少なく、しかも溶融樹脂が高温の金属ロールと接触することもないことから、一般には、樹脂ペレットに既に添加されている以上に酸化防止剤を添加することはなく、滑剤を添加することもない。従って、フィルム、シート加工の面ではカレンダー成形法より容易であるが、生産速度がカレンダー成形法に比べて遅くなる。
【0050】
フィルムやシートをカレンダー成形法または押出成形法のいずれで作製する場合でもその厚さについては特に限定されないが、用途に応じた厚みを適時選択すればよいが、0.02mm〜1.0mmの厚さが好適である。0.02mm未満や1.0mmより厚くなると加工が困難となるため好ましくない。意匠層を積層する場合には、紫外線の吸収を考慮すると、0.05mm〜0.50mmがより好ましい。
【0051】
また、本発明のフィルムやシートを作製する際には、樹脂ペレットおよび添加剤を単純に混ぜ合わせたものを材料として用いてもよく、予め混練機で溶融混練したものでもよい。更に、添加剤を樹脂に高濃度で配合した通常、マスターバッチと称される材料を前もって調整し、これらを単純に混合するか、または樹脂ペレットとマスターバッチを溶融混練したものを用いてもよい。ここで使用される混練機としては公知の装置が使用できるが、取り扱いが容易で均一な分散が可能であるロール、1軸または2軸押出機、ニーダー、コニーダー、プラネタリーミキサー、バンバリーミキサーなどが好ましく用いられる。
【0052】
本発明耐候性アクリル系フィルム、シートと意匠層または基材層との積層は、熱ラミネーション、ドライラミネーション、押出ラミネーション等の方法を使用することができる。また、それぞれのフィルム、シートをあらかじめプライマー処理を行なうこともでき、これにより層間の密着性を向上させることができる。意匠層として印刷を施した層を使用する場合には、熱ラミネーションやドライラミネーションを使用することが好ましい。
【実施例】
【0053】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
アクリル系ポリマー混合物(A)として、アクリル系樹脂(a1)20重量%とアクリル系ゴム粒子(a2)80重量%であるパラペットSA−FW001(クラレ社製)(以下、これを(A1)と記す。)を50重量部と、アクリル系樹脂(a1)50重量%とアクリル系ゴム粒子(a2)50重量%であるパラペットGR−F(クラレ社製)(以下、これを(A2)と記す。)50重量部に、紫外線吸収剤(B)として(B1)2重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(C)として(C1)0.05部、とフェノール系酸化防止剤0.1重量部および金属せっけん系滑剤0.3重量部をドライブレンドした後に混練しカレンダー成形機にて厚さ0.10mmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に記す。
【0055】
<実施例2〜8>
実施例2〜8については表1に示した配合にて実施例1と同様に成形しフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果は表1に示した。各評価項目の良否に関する判定は下記の基準に従った。
【0056】
[初期の紫外線透過率]
得られたサンプルについて紫外分光光度計を用いて紫外線透過率を測定し、350〜370nmの吸収率で評価を行なった。
紫外線透過率の評価基準(350〜370nm)
◎:紫外線透過率が0.5%未満
○:紫外線透過率が0.5%以上1.0%未満
△:紫外線透過率が1.0%以上3.0%未満
×:紫外線透過率が3.0%以上
【0057】
[耐候性試験後の紫外線透過率]
メタルハライドランプ方式の耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を使用し、試料面放射強度:2.16MJ/m以下、ブラックパネル温度63℃、相対湿度:50%、照射時間144時間の条件で試験を行い、照射後のサンプルについて[初期の紫外線透過率]と同様の方法にて紫外線透過率の評価を行なった。
紫外線透過率の評価基準(350〜370nm)
◎:紫外線透過率が3.0%未満
○:紫外線透過率が3.0%以上5.0%未満
△:紫外線透過率が5.0%以上8.0%未満
×:紫外線透過率が8.0%以上
【0058】
[耐候性試験後の伸び残率の測定]
伸び率の測定は、幅19mm、長さ120mmのサンプルを、引張試験機を用いて標線間距離50mm、引張速度200mm/minで引張試験を行ないサンプル破断時の標線間距離から次の計算式により算出した。
伸び率=((破断時の標線間距離)−(初期の標線間距離))/(初期の標線間距離))*100。
伸び率は耐候性試験を行なう前後に測定を行い、以下の計算式から伸び残率を算出した。なお、耐候性試験は[耐候性試験後の紫外線透過率]と同様にメタルハライドランプ方式の耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を使用し照射時間144時間の条件で試験を行なった。
伸び残率=((初期の伸び率)−(耐候性試験後の伸び率))/(初期の伸び率))*100。
伸び残率の評価基準(370nm〜350nm)
◎:伸び残率が80%以上
○:伸び残率が60%以上 80%未満
△:伸び残率が40%以上 60%未満
×:伸び残率が40%未満
【0059】
[ブリード、ブルーム試験]
サンプルを気温23℃、湿度60%および気温40℃、湿度70%の恒温恒湿槽に3ヶ月間放置し、サンプルの表面観察を行なった。
ブリード、ブルームの評価基準
◎:ブリード、ブルームが見られない。
○:ブリード、ブルームがほとんど見られない。
△:ブリード、ブルームが僅かに見られる。
×:ブリード、ブルームがサンプルの全面に見られる。
【0060】
[柔軟性の試験]
本発明のフィルム、シートには適度な柔軟性と曲面追従性が要求されるところ、下記の引張弾性率を代用特性とし評価した。ここで本項目の試験は、本発明で要求される柔軟性と曲面追従性の程度を評価し、その際の引張弾性率から基準を作成し、それに基づき評価を行なった。例えば、引張弾性率が80MPa以上600MPa未満の場合に適度な柔軟性と曲面追従性が最も好ましい範囲(◎)となる。また、適度な柔軟性が評価基準のように設定されるのは、柔軟性に劣る(引張弾性率が大きくなる)と曲面追従性、被着体への貼り付け作業性等が低下し、逆に柔軟性が過ぎて(引張弾性率が小さくて)もブッロキングやロール粘着などの加工性の悪化等の原因となることによる。
そこで、引張弾性率は、幅19mm、長さ120mmのサンプルを切り出し、引張試験機により測定を行なった。試験条件は、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minで行い、S−S曲線の初期歪の接線から引張弾性率を算出した。
柔軟性の評価基準
○:引張弾性率が10MPa以上80MPa未満
◎:引張弾性率が80MPa以上600MPa未満
○:引張弾性率が600MPa以上1200MPa未満
△:引張弾性率が1200MPa以上2000MPa未満
×:引張弾性率が2000MPa以上
【0061】
[成形性の評価]
カレンダーロールでの加工において、ロールへの粘着性を以下の基準にて評価した。
評価基準
◎:容易に剥離できる。
○:特に問題なく、剥離できる。
△:粘着傾向はみられるが、剥離できる。
×:ロールに粘着し剥離できない。
【0062】
<実施例9>
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部にDOP30重量部と顔料として二酸化チタン15重量部とBa/Zn系安定剤3重量部からなる組成物を成形加工し厚さ0.08mmの意匠層1を得た。得られた意匠層1と実施例1の耐候性アクリル系フィルムを表層として、熱ラミネートにより積層することで耐候性アクリル系積層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に記す。評価した項目は、上記の[耐候性試験後の伸び残率の測定]と[耐候性試験後の色変化]と[層間密着性]である。
【0063】
[耐候性試験後の色変化]
メタルハライドランプ方式の耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス社製)を使用して[耐候性試験後の紫外線透過率]と同様の試験条件にて照射後のサンプルについて、表面の色変化を目視で観察し、以下の評価基準で評価を行なった。
評価基準
◎:色変化が見られない
○:色変化が殆んど見られない
△:色変化が少し見られる
×:色変化がはっきり見られる
【0064】
[層間密着性]
積層したフィルムから幅19mm、長さ120mmのサンプルを作成し、表層と意匠層の層間を手で剥離させてそのときのフィルムの剥離の状態により評価した。
評価基準
○:剥離できないか、またはフィルムが材破する。
△:抵抗があり、容易ではないが剥離できる。
×:ほとんど抵抗もなく容易に剥離できる。
【0065】
<実施例10>
(A1)を60重量部と、(A2)40重量部に、二酸化チタン20重量部と酸化防止剤等の添加剤を添加した樹脂組成物を成形加工して0.10mmの意匠層2を得た。この意匠層2にインクジェット印刷機を用いて印刷を行なった後に、実施例3の耐候性アクリル系フィルムを表層として、熱ラミネートにより積層することで耐候性アクリル系積層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に記す。
【0066】
<実施例11>
前述の意匠層1と実施例4の耐候性アクリル系フィルムを積層し得られた耐候性アクリル系積層フィルムの評価結果を表3に示した。
【0067】
<実施例12>
前述の意匠層2と実施例6の耐候性アクリル系フィルムを積層し得られた耐候性アクリル系積層フィルムの評価結果を表3に示した。
【0068】
<比較例1〜4>
比較例1〜4については表1に示した配合にて実施例1と同様に成形しフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果は表2に示した。
【0069】
<比較例5>
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部にDOP30重量部とBa/Zn系安定剤3重量部と紫外線吸収剤(B1)0.7重量部からなる組成物を成形加工し厚さ0.10mmのフィルムを成形し評価結果を表2に示した。
【0070】
<比較例6>
前述の意匠層1と比較例1のフィルムを積層し得られたフィルムの評価結果を表3に示した。
【0071】
<比較例7>
前述の意匠層2と比較例2のフィルムを積層し得られたフィルムの評価結果を表3に示した。
【0072】
<比較例8>
ポリオレフィン樹脂としてEG8003(ダウケミカル社製)100重量部に二酸化チタン20重量部と酸化防止剤等の添加剤を添加した樹脂組成物を成形加工して0.10mmの意匠層3を得た。この意匠層3にインクジェット印刷機を用いて印刷を行なった後に、比較例1のフィルムを熱ラミネートにより積層することで積層したフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に記す。
【0073】
表1、表2から明らかなように、実施例1〜12では、各評価項目を満足していて、フィルムは、鋼板用シート、粘着テープ、化粧フィルム、マスキングテープやマーキングフィルムなどの建築、産業用途、ダイシング用粘着テープ、バックグラインド用粘着テープなど半導体製造用途、保護フィルムなどの基材フィルムやシートに広く使用することができる。
【0074】
比較例1では、ヒンダードアミン系光安定剤(C)の添加量が不足している為に耐候性試験後の紫外線透過率と伸び残率が劣っており、また、紫外線吸収剤(B)を3.0部よりも多く添加しても、耐候性試験後の紫外線透過率や伸び残率を満足できる性能を保持することは出来ず、かえってブリードが発生しやすいとの結果となった。
【0075】
比較例2では紫外線透過率で劣り、比較例3ではブリード性と柔軟性に劣り、比較例4ではブルームと加工性に劣っていた。また比較例5では耐候性試験後の紫外線透過率と伸び残率が劣っていた。
【0076】
比較例6では、耐候性試験後の伸び残率と色変化に劣り、比較例7では耐候性試験後の色変化に劣っていた。
【0077】
実施例1と実施例7、実施例6と実施例8をそれぞれ比較すると、分子量が250以上600以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をしようすることで、ブリード、ブルームの発生をより抑制できることがわかる。
【0078】
実施例4と実施例6および実施例8、実施例3と実施例1をそれぞれ比較すると、分子量が300以上1100以下のヒンダードアミン系光安定剤を使用することで、耐候性試験後の伸び残率がより優れていることがわかる。
【0079】
実施例7と実施例6、実施例3と実施例1を比較すると、分子量が300以上1100以下のヒンダードアミン系光安定剤を使用することで耐候性試験後の紫外線透過率がより優れていることがわかる。
【0080】
表3より実施例8、実施例9と比較例8を比較すると、意匠層をアクリルフィルム、塩ビフィルムとすることで層間密着性がよりすぐれることがわかる。
【0081】
【表1】

A1:パラペットSA−FW001(a1/a2=20重量%/80重量% クラレ社製)
A2:パラペットGR−F(a1/a2=50重量%/50重量% クラレ社製)
A3:ポリメタクリル酸メチル樹脂(a1=100重量%)
B1:2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール 分子量:357.9
B2:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール 分子量:447.6
B3:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール 分子量:393.6
B4:化合物1 分子量:659
C1:ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}] 分子量:2000以上
C2:N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4、7−ジアザデカン−1,10−ジアミン 分子量:2286以上
C3:化合物2 分子量:900
C4:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 分子量:481
C5:コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6テトラメチル−1−ピペリジルエタノールの重合物 分子量:3100以上
































【0082】
【表2】






【0083】
(化合物1)

【0084】
(化合物2)

【0085】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によるアクリル系ポリマー混合物(A)に所定量の紫外線吸収剤(B)とヒンダードアミン系光安定剤(C)を添加した耐候性アクリル系フィルムは、柔軟性、耐候性に優れ、さらに紫外線吸収性能を持続的に発揮することができるので、鋼板用シート、粘着テープ、化粧フィルム、マスキングテープやマーキングフィルムなどの建築、産業用途、ダイシング用粘着テープ、バックグラインド用粘着テープなど半導体製造用途、保護フィルムなどの基材フィルムやシートに広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の意匠層を有する耐候性アクリル系積層フィルムを示す断面図
【図2】本発明の意匠層と基材層を有する耐候性アクリル系積層フィルムを示す断面図
【図3】本発明の意匠付耐候性アクリル系フィルム、シートを有する耐候性アクリル系 積層フィルムを示す断面図
【符号の説明】
【0088】
1 耐候性アクリル系フィルム、シート
1−1 意匠付耐候性アクリル系フィルム、シート
1−2 印刷層
2 意匠層
3 基材層
4 基材層または意匠層
11 表層面
21 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜80重量%のアクリル樹脂(a1)と90〜20重量%のアクリル系ゴム状粒子(a2)とからなるアクリル系ポリマー混合物(A)を主成分とし、該アクリル系ポリマー混合物(A)100重量部に対して、紫外線吸収剤(B)0.05〜3.0重量部とヒンダートアミン系光安定剤(C)0.01〜2.0重量部を添加してなることを特徴とする耐候性アクリル系フィルムおよびシート
【請求項2】
前記の紫外線吸収剤(B)がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、その分子量が250以上かつ600以下であることを特徴とする請求項1記載の耐候性アクリル系フィルムおよびシート
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)の分子量が300以上かつ1100以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐候性アクリル系フィルムおよびシート
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のアクリル系フィルムおよびシートを意匠層の表面に積層したことを特徴とする耐候性アクリル系積層フィルムおよびシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−13597(P2010−13597A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176847(P2008−176847)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】