説明

耐切創・磨耗合成繊維製造およびその利用

【課題】防護衣料や防護手袋などの高性能テキスタイルの素材としてまた産業用または民生用のロープ類やネット類、さらに、繊維補強コンクリート製品やヘルメットなどの複合材料用の補強繊維として、産業上、広範囲に応用可能な高強度ポリエチレンとファイバーグラスを混和した繊維を提供すること。
【解決手段】高強度ポリエチレン繊維とグラスファイバー繊維を混和した糸を製造することで、耐切創能力が飛躍的に向上した繊維の提供が可能になる。またファイバーグラスの比率を20%,33%,43%,50%と増やすことにより耐切創能力が向上した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明に属する技術分野】
【0001】
本発明は、非金属の高強度ポリエチレン繊維とファイバーグラス繊維を混和して撚糸して糸の芯(コア)に加工します。それを非切創糸で被覆加工する製造方法で、通常の非金属の耐切創・磨耗繊維よりも、耐切創・磨耗性に富んでなおかつ安価な繊維が製造できます。それにより防護衣料や防護手袋などの高性能テキスタイルの素材としてまた産業用または民生用のロープ類やネット類、さらに、繊維補強コンクリート製品やヘルメットなどの複合材料用の補強繊維として、産業上、広範囲に応用可能な繊維です。
【背景技術】
【0002】
高強度ポリエチレン繊維としては、超高分子量ポリエチレンを原料として「ゲル紡糸法」により製造された高強度・高弾性率繊維としてオランダDSM社の商標であるダイニーマや米国ハネウエル社の商標であるスペクトラが市場流通をしている。これらの高強度ポリエチレン繊維は、産業用または民生用のロープ類やネット類、防弾・防護衣料や防護手袋などの高性能テキスタイル、土木・建築分野におけるジオテキスタイルや作業ネットなど、すでに産業上、広範囲に利用されている。これらの高強度ポリエチレン繊維に対して、一層の性能の向上、やコストの軽減が求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高強度ポリエチレンの耐切創糸に、グラスファイバー繊維を撚糸により混和するとその強度が高まる性質があり、なおかつグラスファイバーが標準品として安価に市場に出回っていることから、安価な価格で耐切創・磨耗力がある合成糸の製造が可能になった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような製造を行います。
1.耐切創・磨耗合成繊維を以下の方法で製造します。
(イ) 少なくとも1本以上の高強度ポリエチレン繊維を芯(コア)として使用します。
(ロ) 少なくとも1本以上のファイバーグラス繊維を芯(コア)として使用します。
(ハ) ファイバーグラス以外の非切創性繊維で、上記の芯を2本以上の繊維で被覆(カバーリング)加工します。
2.高強度ポリエチレン繊維として以下を使用します。
1)米国ハネウエル社 スペクトラ 65デニールから4800デニール
2)オランダDSM社 ダイニ−マ 50デニールから1600デニール
3.ファイバーグラス繊維は50デニールから600デニールを使用しますが、必要により2本3本使いデニール数を変えることができます。
− D450 1/0 1.0Z 100デニール
− E225 1/0 1.0Z 200デニール
− G150 1/0 1.0Z 300デニール
− E225 1/2 4.4S 400デニール
− DE150 1/2 3.8S 600デニール
4.ファイバーグラス以外の非切創繊維として、ポリエステル、ナイロン、アステート、レイヨン、コットン、コットンーポリエステル、防臭コットンなど使用します。
5.ファイバーグラス繊維コアを包むように高強度ポリエチレンで巻きます。
6.上記の撚糸芯(コア)に非切創繊維を2本以上で被覆(カバーリング)する。そのカバーリングのピッチ左右別々の回転方向には1cmに5−20回の範囲にする。
【発明の評価方法】
【0005】
耐切創繊維である高強度ポリエチレン100%で製造した手袋と同じ重量の高強度ポリエチレンにファイバーグラス繊維をコア撚糸してポリエステルでラップした耐切創・磨耗繊維のシームレス手袋を製造して、耐切創強度を比較する。
1)使用機械:島精機株式会社製 全自動シームレス手袋 型式SPG 7ゲージ加工および10ゲージ加工
2)手袋は2本編みで、内側はコットンを使用。外側に下記のサンプル1から8糸を使用する。
3)高強度ポリエチレン繊維は400デニールと1200デニールを使用
4)ファイバーグラス繊維は、100、200、300,400、600デニールを使用して比率の比較をできるようにする。
実施例まず、芯糸として高強度ポリエチレン繊維400デニール糸のみを使用したものを基準のサンプル1として示し、比較例としてファイバーグラス繊維を混ぜたサンプル2からサンプル6にしめす。ポリエステルはサンプル1から6まで同じ条件で150デニール2本で被覆加工した。
また高強度ポリエチレン繊維1200デニールのみを使用した物を基準としてサンプル7に示し、比較例としてファイバーグラス繊維600デニールを混ぜたサンプル8にしめす。サンプル7とサンプル8にはポリエステルの被覆はしなかった。
なお、各実施例および比較例で作製した合成繊維は、下記の測定法および試験法で物性を測定し、性能を評価した。
繊維生地(手袋)の耐切創試験ヨーロッパ規格であるEN388の耐切創試験機Sodemat社のクープ試験機を使い、評価しました。この装置は、円形の刃を試料の上を走行方向と逆方向に回転しながら走らせ、試料を切断していき、切断しきると試料の裏にアルミ箔があり、円形刃とアルミが触れることにより電気が通り、カット試験が終了したことを感知する。カッターが作動している間中、装置に取り付けられているカウンターがカウントを行うので、その数値を記録する。
この試験は、決められた標準サンプル(約200g/mの平織り綿布)をもちいて、試験サンプルとの切創レベルを比較評価する。標準サンプルからテストを開始し、標準サンプルと試験サンプルとを交互にテストを行い、試験サンプルが3回テストし、最後に標準サンプルが4回目のテストをされた後、この1回のテストを終了させた。
ここで算出される評価値はindexと呼ばれ、次式により算出される。
N=(試験サンプルテスト前の標準サンプルのカウント値+試験サンプルテスト後の標準サンプルのカウント値)÷2 index=(試験サンプルのカウント値+N)/N
レベルはindexの数値により分類されます。
レベル1 2.0〜2.5
レベル2 2.5〜5.0
レベル3 5.0〜10.0
レベル4 10.0〜20.0
レベル5 20.0以上
また試験に使用した円形刃はOLFA社製のロータリーカッターL型用の直径45mm(材質SKS−7タングステン鋼;刃厚0.3mm)である。
【表1】

【表2】

【発明の効果】
【0006】
本発明によると高強度ポリエチレン繊維にグラスファイバー繊維を混和させることにより従来なく優れた耐切創性のある、防護衣、防護手袋、ロープ、ネット、ヘルメットを提供することを可能にしました。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ファイバーグラス繊維コアを包むように高強度ポリエチレンで被覆カバーするように巻きコア繊維を加工します。
【図2】ファイバーグラス繊維と高強度ポリエチレンの混和撚糸した芯(コア)に、非切創繊維を被覆撚糸した加工繊維の図です。その撚糸芯(コア)に非切創繊維(ポリエステル、コットン、ナイロンんど)を2本以上で被覆(カバーリング)する。そのカバーリングのピッチ左右別々の回転方向には1cmに5−20回の範囲にします。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度ポリエチレン繊維にグラスファイバー繊維を撚糸混和した繊維を製造すると、従来の高強度ポリエチレン糸の強度が増加する。
【請求項2】
高強度ポリエチレン繊維とグラスファイバー繊維とを混和して芯(コア)加工する。そのコアに非耐切創繊維(ポリエステル、ナイロン、コットン)で被覆(カバーリング)します。グラスファイバー繊維はもろく撚糸が難しく製品です。またグラスファイバー繊維がはみ出た衣料等は、着用者の皮膚を刺激します。グラスファイバー繊維を高強度ポリエチレン繊維で包むように芯を加工します。なおかつその芯を非耐切創糸(ポリエステル、ナイロン、コットン、防臭加工コットン)で被覆(カバーリング)することによりファイバーグラスのはみ出しを防止します。
【請求項3】
高価である高強度ポリエチレン繊維に市場で安価に流通しているグラスファイバー繊維を混和して撚糸製造することによりコストの大幅なコストの軽減をはかりながら実質的な強度も向上させる。
【請求項4】
高強度ポリエチレン繊維にグラスファイバー繊維を混和させることによりEN388の耐切創性試験の結果をLevel2またはLevel3からLevel5に増強する特徴のある繊維になります。
【請求項5】
また高強度ポリエチレン繊維とグラスファイバー繊維の混和の比率で20%、33%、43%、50%とファイバーグラス繊維の混合率をあげることによりEN388の耐切創性試験の結果を最高のLevel5であっても平均indexを増強させる繊維になります。
【請求項6】
請求項1−5による合成繊維を含む防護衣。
【請求項7】
請求項1−5による合成繊維を含む防護手袋
【請求項8】
請求項1−5による合成繊維を含むロープ。
【請求項9】
請求項1−5による合成繊維を含むネット。
【請求項10】
請求項1−5による合成繊維を含むヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−303050(P2007−303050A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156604(P2006−156604)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(504203413)有限会社ジェイショップスドットコム (9)
【Fターム(参考)】