説明

耐圧シール装置

【課題】 短時間でかつ安全で確実に配管を流れる流体を止めることができる耐圧シール装置を提供する。
【解決手段】 シール機構51は、バルブ33内に着脱可能に構成され、このバルブ33内に装着することで、バルブ33に接続される配管32内にシールを達成した状態で取り付けられる。このシール機構51は、押圧ジャッキ53によって、前記配管32内を流れる冷却水から受ける力に抗して支持され、この押圧ジャッキ53は、保持プレート52によって保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備内の配管に接続されるバルブを交換するとき、又はバルブを分解点検するとき等に、配管内を流れる流体を止めるための耐圧シール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、原子力発電プラント1のシステムを概略示す図面である。図7に示す原子力発電プラント1は、いわゆる沸騰水型原子炉であり、原子炉圧力容器2内の炉心3における核分裂反応によって発生した熱を利用して原子炉圧力容器2内の冷却水を加熱して蒸気を生成する。この蒸気は、主蒸気配管4を通って蒸気タービン5に移送され、蒸気タービン5を回転させる。この回転によって蒸気タービン5に接続される発電機6が発電する。前記蒸気は、復水器7を通ることで海水によって冷却されて水に戻される。その後、配管8及び複数のバルブ9を通って、原子炉圧力容器2に注水される。このようにして冷却水が原子力発電プラント1内を循環する。
【0003】
このように原子力発電プラント1は、炉心3における核分裂反応によって発生した熱を利用して、冷却水を加熱し蒸気を生成するので、原子炉の運転中において、炉心3の周囲の圧力及び温度が上昇する。また冷却水を炉心3に強制的に送り込む再循環ポンプ10が設けられており、この再循環ポンプ10が炉心3に送り込む流体の流れによって流体振動が発生する。このような炉心3の周囲の圧力及び温度上昇、ならびに流体振動が発生する厳しい環境下で、配管8及び複数のバルブ9が使用されるため、各部材8,9に大きな負荷が作用することとなる。したがって配管8及びバルブ9等が損傷したり又は破断したりすることが十分予想される。これに関して先行技術文献はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、何らかの原因によって配管8及びバルブ9等にクラック又は破断が生じた場合、前記原子力発電プラント1が高放射線管理区域であるがために、原子炉運転中に前記配管8及びバルブ9等に接近することは、極めて困難なことである。ましてやその補修作業となると不可能である。
【0005】
そこで破損が予測される配管8及びバルブ9の補修手段としては、原子力発電プラント1の定期点検作業時に、配管8及びバルブ9を予め交換しておくことが考えられる。この配管8及びバルブ9の交換作業には耐圧リーク試験がともない、交換後に耐圧リーク試験を行って、その配管8及びバルブ9の安全性の確認を行う必要がある。この耐圧リーク試験は、交換されたバルブ9の上流側及び下流側のバルブ9を閉じて行う必要がある。しかしながら全てのバルブ9は、バルブの開閉の方位が同一である、つまり同一方向の流れに対して同一の開閉動作を行う。それ故に配管8に流体が流れると、上流側及び下流側のバルブ9のうち一方が必ず開いてしまう。それ故、耐圧リーク試験には、上流側及び下流側のバルブ9をともに使用することができず、配管8を止水するための装置を別途用いて行う必要があり、これによって長期間の工事になるという課題がある。このように工事が長期間にわたると、定期検査の期間が長期化して原子力発電プラント1の稼働率が低下するばかりでなく、作業員の放射線被爆量の増加を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、短時間でかつ安全で確実に配管を流れる流体を止めることができる耐圧シール装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バルブが接続される配管内を流れる流体を止めるための耐圧シール装置であって、前記バルブ内に着脱可能に構成され、前記バルブ内に装着することで前記配管内にシールを達成した状態で取り付けられるシール機構と、前記シール機構が前記配管内を流れる流体から受ける力に抗して前記シール機構を支持するジャッキと、前記バルブ内で前記ジャッキを保持する保持プレートとを備える耐圧シール装置である。
【0008】
本発明に従えば、シール機構をバルブ内に装着することで、このシール機構を配管内にシールを達成した状態で取り付けることができる。さらに保持プレートで保持されるジャッキによってシール機構を支持することで、配管内を流れる流体から受ける力に抗するようにシール機構が支持され、配管内の流体を漏れなく止めることができる。このようにシール機構をバルブに装着し、さらにジャッキで支持するだけの簡単な作業で、配管内の流体を漏れることなく止めることができる。これによって短時間でかつ確実に配管内の流体を止めることができる。例えば原子炉の定期点検時に行われるバルブ交換作業の後に行う耐圧リーク試験のためのシール装置の取り付けが短時間でかつ確実に行え、作業員の放射線被爆量を大幅に低減することができる。
【0009】
上記発明において、前記シール機構は、複数のシール部材とシール本体とを有し、前記複数のシール部材は、環状にそれぞれ形成され、かつ圧縮された状態で前記シール本体の外周面に互いに間隔をあけてそれぞれ取り付けられ、前記シール本体は、前記複数のシール部材によって配管の内壁とシール本体の外周面との間が密封された状態で、前記配管内に配設可能な構成であることが好ましい。
【0010】
本発明に従えば、複数のシール部材がシール本体の外周面に間隔をあけて配設され、シール本体と配管の内壁との間が複数のシール部材によって密封されている。これによって配管内に高圧流体が流れても、漏れることなく止めることができる。また各シール部材を圧縮機構で予め圧縮することで、シール部材の変形を抑制し、シール部材と配管の内壁との間に隙間が生じて、この隙間から配管内の高圧流体が漏れることを防ぐことができる。このような構成によれば、例えば前述のような原子炉の定期点検時の止水を短時間でかつ確実に行え、作業員の放射線被爆量を大幅に低減することができ、安全に作業することができる。
【0011】
上記発明において、前記シール機構は、前記複数のシール部材のうち対応するシール部材を押圧して圧縮する複数の押圧機構を更に有することが好ましい。本発明に従えば、シール部材毎に作用する押圧力を調整することができ、適正な押圧力でシール部材を圧縮することができる。これによって各シール部材が適正な状態でシール本体と配管の内壁との間に配設され、良好なシールを達成することができる。
【0012】
上記発明において、前記シール機構は、前記複数のシール部材を押圧して圧縮する押圧機構を更に有することが好ましい。本発明に従えば、一度に複数のシール部材を圧縮することができるので、シール部材を圧縮する作業が容易であり、シール機構を配管内に短時間でかつ確実に装着できる。
【0013】
上記発明において、前記ジャッキは、前記シール機構に向って伸縮可能に構成され、かつ伸縮する方向一端部が保持プレートに保持されると共に伸縮する方向他端部が部分球面状に形成され、前記シール機構は、前記ジャッキの伸縮する方向他端部が着座する座部を有し、前記座部は、球面座であることが好ましい。
【0014】
本発明に従えば、ジャッキを伸縮させることで、ジャッキを確実にシール機構に着座させることができる。またジャッキの伸縮する方向他端部が部分球面状に形成されるとともに、この他端部が着座する座部が球面座であるので、ジャッキが片当たりすることなくシール機構を支持する。これに伴いシール部材の配管内での片当たりも抑制され、どのような状態でジャッキがシール機構の座部に着座しても、シール性能を維持することができる。このようにジャッキを伸縮するだけの簡単な作業であっても、確実にシールした状態でシール機構を配管内に装着することができ、短時間でかつ確実にシール機構を装着することができる。
【0015】
上記発明において、前記保持プレートは、バルブの内壁面に係合可能な係合部を有し、前記係合部をバルブの内壁面に係合させることでバルブ内に配設可能な構成であることが好ましい。
【0016】
本発明に従えば、保持プレートの係合部をバルブの内壁に係合することによって、保持プレートをバルブ内に配設することができる。このような係合させるだけの簡単な作業であるので、保持プレートを短時間でかつ確実に装着することができる。
【0017】
上記発明において、前記係合部は、弾性部材から成ることが好ましい。本発明に従えば、係合部が弾性部材から成るので、バルブの内壁の損傷を防ぐことができる。また前記バルブの内壁の形状に合わせて係合部を弾性変形させることができ、係合させることが容易である。これによって保持プレートの装着を短時間でかつ確実に行うことができる。
【0018】
上記発明において、前記バルブの内壁との間に当て板を介在させて係合していることが好ましい。本発明に従えば、係合部とバルブの内壁との間に当て板を介在させることで、係合部が前記バルブの内壁に食い込むことを抑制できる。これによってバルブの内壁が損傷及び破損することを防止できる。
【0019】
上記発明において、配管に接続している流路を開閉する弁体と、前記弁体を収納する弁室と、前記弁室に前記弁体を挿入して配設すべく前記弁室の上部に連なる弁体挿入孔とを有し、前記保持プレートは、前記弁室と前記弁体挿入孔とにわたって配置され、前記保持部プレートには、前記弁体挿入孔に嵌合可能な支持板が一体的に設けられ、前記保持プレートは、前記支持板が前記弁体挿入孔に嵌合した状態で前記弁室の底部に支持されることで、前記弁室内に保持されていることが好ましい。
【0020】
本発明に従えば、弁体挿入孔から保持プレートを挿入して、弁室及び弁体挿入孔に配置することで、支持板が弁体挿入孔に嵌合され、保持プレートが弁室の底部で支持される。これによって保持プレートが弁室内に保持される。このような簡単な作業で保持プレートを弁室内に装着することができ、短時間でかつ確実に保持プレートをバルブ内に保持させることができる。
【0021】
上記発明において、前記シール機構を吊下げ可能な吊下げ手段を更に備え、前記吊下げ手段は、前記バルブ内に着脱可能であって、吊下げた状態でシール機構を配管内に取付可能に構成されていることが好ましい。
【0022】
本発明に従えば、吊下げ手段によってシール機構を吊下げ、配管内にシール機構を取付けができる。これによって例えば、バルブ内において鉛直下方の手が届かないような位置に配管が配置されている場合であっても、吊下げ手段を用いることでシール機構を取付けることができ、取付け作業が容易になり、短時間でシール機構の取り付けが行える。またこの吊下げ手段をバルブ内に装着することができるので、吊下げ手段をシール機構から取り外す手間が省ける。
【0023】
上記発明において、バルブ内における前記シール機構の位置決めを行うための位置決めガイドを更に有し、前記位置決めガイドは、前記シール機構に着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0024】
本発明に従えば、位置決めガイドによって、バルブ内におけるシール機構の位置が決められる。これによって作業者がバルブ内でシール機構の位置決めに確実に行うことができ、また取り付けが容易になると共に、位置決めに費やす時間を低減することができる。したがってシール機構を短時間でかつ確実に装着することができる。
【0025】
上記発明において、耐圧シール装置は、プラントの配管に接続される複数のバルブのうち一のバルブを交換した後に行われる耐圧リーク試験において、前記一のバルブより上流側及び下流側で配管にそれぞれ接続されるバルブのうち少なくとも一方のバルブ内に配設されて、配管を流れる流体を止めるために用いられることが好ましい。
【0026】
本発明に従えば、耐圧リーク試験を行う際、耐圧シール装置によって短時間でかつ確実に配管内の流体を止めることができる。特に原子炉の定期点検時に行われるバルブ交換作業の後に行う耐圧リーク試験のためのシール装置の取り付けが短時間でかつ確実に行え、作業員の放射線被爆量を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、短時間でかつ安全で確実に配管を流れる流体を止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態に係るバルブ内耐圧シール装置(以下、単に「耐圧シール装置」という)50は、原子力発電プラント等のプラントの配管に介在するバルブ内に設けられ、配管内を流れる流体、例えば冷却水を止水するための装置である。耐圧シール装置50は、原子力発電プラントにおいて、主にバルブを交換した後に耐圧リーク試験を行うために用いる。ただし耐圧シール装置50は、原子力発電プラントに使用されるものに限定されず、他のプラントなどの配管で使用されてもよい。以下では、まず耐圧シール装置50を用いる原子力発電プラントの構成の一例について説明し、次に耐圧シール装置50について説明する。
【0029】
図1は、原子力発電プラント21のシステムを概略示す図面である。原子力発電プラント21は、原子炉圧力容器22を備える。この原子炉圧力容器22の内部には、多数体の燃料集合体(図示せず)により構成される炉心23が収納されている。この炉心23の下部は、炉心支持板24によって支持され、上部は、上部格子板25によって支持されている。さらに原子炉圧力容器22内の炉心23の上方には、炉心上部プレナム26が形成されている。
【0030】
原子炉圧力容器22内には冷却水が供給され、この冷却水が炉心23で加熱され二層流体となって、炉心上部プレナム26に流入する。流入した二層流体は、炉心上部プレナム26で均一に混合され、さらに気液分離される。これによって分離された蒸気は、原子炉圧力容器22の上側に設けられる蒸気乾燥器27によって乾燥される。
【0031】
このようにして乾燥された乾燥蒸気は、原子炉圧力容器22に接続される主蒸気配管28を介して蒸気タービン29に移送される。この移送された乾燥蒸気は、蒸気タービン29を回転させ、これによって蒸気タービン29が接続される発電機30が発電する。このように発電機30の発電に供された乾燥蒸気は、復水器31を通ることで海水によって冷却されて水に戻される。その後、原子炉圧力容器22に接続される配管32及び配管32に介在する複数のバルブ33を通って、原子炉圧力容器22に注水される。このようにして冷却水が原子力発電プラント21内を循環する。また原子炉圧力容器22には、炉心23に冷却水を送り込むための再循環ポンプ34が設けられている。この再循環ポンプ34によって原子炉圧力容器22内の冷却水を炉心23に送り込み、炉心23で冷却水を加熱している。
【0032】
図2は、配管32に介在するバルブ33を示す断面図である。バルブ33は、いわゆる逆止弁であり、弁室41と、弁体挿入孔42と、弁体43と、蓋体44とを有する。弁室41は、配管32に介在しその内壁面45が部分球面状に形成されている。また弁室41には、配管32の上流側の部分32a(図2において左側の部分)の端部から弁室41の内方に向って突出する弁内配管41aが形成されている。この弁内配管41aの内壁面には、周方向全周にわたってシート部46が配設されている。
【0033】
さらに弁室41の上部には、弁体43を弁室41に挿入するための円筒状の弁体挿入孔42が連なっている。弁体43は、この弁体挿入孔42から弁室41に挿入され、シート部46に着座可能に弁室41内に配設される。また弁体43は、揺動部材48に連結され、この揺動部材48が揺動ピン部材47によって弁体挿入孔42に軸支されている。
【0034】
このようにして配設された弁体43は、揺動ピン部材47を支点に、シート部46に着座する位置と前記シート部46から離反する位置とにわたって揺動し、前記弁内配管41aを開閉する。弁室41の内壁面45には、このように揺動する弁体43がシート部46から離反した状態で着座し、これによって弁体43の揺動を制限する着座部45aが形成されている。さらに弁体挿入孔42の開口部には、蓋体44が着脱可能に装着され、複数の締付けボルト49(図2では、1つの締付けボルト49だけが示されている)で締め付け固定されている。これによって前記開口部が閉じられている。
【0035】
このようにして構成されるバルブ33は、配管32内を上流側から下流側に向う方向である図2の矢符Aの方向に冷却水が流れると、弁体43が弁内配管41aを開き、図2の矢符Bの方向に冷却水が流れると、弁体43が弁内配管41aを閉じる。これによってバルブ33は、冷却水が配管32を矢符Bの方向に逆流することを防いでいる。
【0036】
このような構成を有する原子力発電プラント21では、炉心23で加熱された高温高圧の冷却水が配管32内を流れると共に、再循環ポンプ34により流体振動が発生している。このような過酷な環境下に晒されている配管32及びバルブ33は、損傷及び破断しやすい。そのため損傷及び破断する前に、原子力発電プラント21の定期点検時に、配管32及びバルブ33を交換している。配管32及びバルブ33を交換した後には、配管32及びバルブ33の耐圧性能及びリークを調べるため耐圧リーク試験が行われる。この耐圧リーク試験は、交換したバルブ33の上流側および下流側を塞き止めて行う必要があり、本実施の形態では、交換すべきバルブ33の下流側に配設されるバルブ33内に耐圧シール装置50を装着して冷却水を塞き止め、その後バルブ33の交換および耐圧リーク試験が行われる。
【0037】
図3は、本発明の第1の実施形態の耐圧シール装置50を示す正面断面図である。図4は、耐圧シール装置50を示す平面断面図である。図5は、シール機構51を示す正面図である。耐圧シール装置50は、シール機構51と保持プレート52と押圧ジャッキ53とを有している。さらにシール機構51は、シール本体55と、第1シール部材56と、中間リング57と、押圧プレート58と、第2シール部材59とを有する。シール本体55は、ステンレス鋼から成り、大略的に円柱状に形成されている。シール本体55の外周面は、全周にわたって階段状に3段階の切欠きが形成されている。以下では、最も大径の軸線方向一端部の外周面から順に第1外周面55a、第2外周面55b、第3外周面55c及び第4外周面55dという。第2外周面55bには、Oリングである第1シール部材56が嵌装されている。
【0038】
第3外周面55cには、ステンレス鋼から成る有底円筒状の中間リング57が嵌装され、この中間リング57は、第3外周面55cをシール本体55の軸線方向に摺動変位可能に構成されている。押圧機構である中間リング57と第3外周面55cとの間には、Oリング60が介在し、このOリング60によってシールが達成されている。中間リング57の底部57aには、シール本体55の軸線方向他端部が挿通され、また2つの締め付けねじ61が軸線方向に沿って螺着されている。この締め付けねじ61は、前記底部57aを貫通し、シール本体55に形成される2つの雌ねじ部61aにそれぞれ螺着されている。この締め付けねじ61は、専用のレンチで締め付け可能に構成されている。また中間リング57の開口端側には、段部57bが形成される。これによってその外周面に小径の小径外周面57dと大径の大径外周面57eとが形成され、また中間リング57の開口端部57cが第2外周面55bに摺動変位可能に構成されると共に、摺動変位することで第1シール部材56を押圧可能に構成される。
【0039】
中間リング57の大径外周面57eには、ステンレス鋼から成る有底円筒状の押圧プレート58が嵌装され、さらにこの押圧プレート58は、大径外周面57eをシール本体55の軸線方向に摺動変位可能に構成されている。押圧機構である押圧プレート58、その底部58aに貫通孔58bが形成され、この貫通孔58bにシール本体55の軸線方向他端部が挿入されている。さらに底部58aには、各締め付けねじ61の頭部に対応する位置に座ぐり孔62が形成され、前記各締め付けねじ61の頭部が挿入されている。また底部58aには、2つの締め付けねじ63が螺着されている。これら締め付けねじ63は、前記底部57aを貫通して、中間リング57の底部57aにも螺着され、さらにこの中間リング57の底部57aをも貫通し、シール本体55に形成される2つの雌ねじ部63aにそれぞれ螺着されている。この締め付けねじ63は、専用のレンチで締め付け可能に構成されている。
【0040】
このようにして配設された押圧プレート58の開口端部58cと中間リング57の段部57bとの間に配置されるように、Oリングである第2シール部材59が中間リング57の大径外周面57eに嵌装されている。これによって第2シール部材59が中間リング57を介してシール本体55に取り付けられる。
【0041】
このようにして構成される中間リング57及び押圧プレート58は、締め付けねじ61、63を締め込むことで、シール本体55の軸線方向一端部に向ってスライドさせることができる。中間リング57をスライドさせることで、第2外周面55bと第1外周面55aとに連なる第1接触面55eと中間リング57の開口端部57cとによって第1シール部材56が挟持され、さらにスライドさせて押圧することで第1シール部材56が圧縮される。また押圧プレート58をスライドさせることで、小径外周面57dと小径外周面57dとに連なる第2接触面57fと押圧プレート58の開口端部58cと第2接触面55eとによって第2シール部材59が挟持され、さらにスライドさせて押圧することで第2シール部材59が圧縮される。
【0042】
このようにして第1シール部材56および第2シール部材59をそれぞれ挟持する第1接触面55eおよび第2接触面57fは、シール本体55の軸線方向他端部から一端部に行くに従って拡径するように傾斜するテーパ形状に形成されている。これによって第1シール部材56及び第2シール部材59が過度に圧縮されて損傷および破損するを防ぐと共に、適正な押圧力で第1シール部材56及び第2シール部材59が圧縮されることを補助している。
【0043】
このように各シール部材56,59は、締め付けねじ61、63を締め込むだけの容易な作業でその圧縮を実現できると共に、適正な状態でシール本体55に取り付けることができる。また締め付けねじ61、63毎に締め付け量を変えることで、各シール部材56,59の押圧力を適正なものに調整することができ、これによって各シール部材56,59を適正な状態に圧縮できる。
【0044】
このようにして構成されるシール機構51は、弁内配管41aに取り付けられる。これによってシール機構51と弁内配管41aとの間が、第1シール部材56と第2シール部材59とでシールされる。第1シール部材56と第2シール部材59を圧縮して弁内配管41a内に取り付けることで、各シール部材56,59の変形を抑制し、良好にシールを達成することができる。さらに各シール部材56,59の押圧力を調整することで、各シール部材56,59が適正な状態に押しつぶされ、これによって良好な状態でシールを達成することができる。
【0045】
シール機構51には、吊耳64と位置決めガイド65とが設けられている。吊下げ手段である吊耳64は、ステンレス鋼から成り、シール機構51を吊下げた状態でシール機構51を略水平状態で保持できるように、つまりシール機構51を吊下げた状態でシール機構51の軸線が水平方向に略平行になるようにシール機構51に設けられている。本実施の形態では、吊耳64は、押圧プレート58の底部58aの鉛直方向上部(図3の紙面上部に相当)に設けられている。ただしこのような位置に設けられることに限定するものでない。このようにシール機構51を吊下げて弁体挿入孔42に挿入することができるので、本実施の形態のような手が届きにくい位置であっても容易に作業することができる。またシール機構51が略水平状で保持されているので、シール機構51の弁内配管41aに挿入する作業を行い易い。
【0046】
さらに吊耳64は、シール機構51を弁内配管41aに取り付けた状態で、揺動部材48が揺動ピン部材47によって軸支される位置に、ピン部材66によって支持可能に構成されている。これによってシール機構51を吊耳64によって支持することができ、この状態で一度作業を中断することができる。これによって原子力発電プラント21の高放射線管理区域のように、作業員一人一人の作業時間が短時間しか許されない場合であっても、各自分担して作業を行うことができる。またシール機構51を弁内配管41aに取り付けた後の吊耳64を取り外す作業、及び前記シール機構51を弁内配管41aから取り外す際の吊耳64の取り付け作業を省くことができ、取り付け及び取り外しの作業の時間を短縮することができる。
【0047】
位置決めガイド65は、弁内配管41aにシール機構51を案内すると共に、弁内配管41a内におけるシール機構51の位置決めを可能に構成されている。本実施の形態では、位置決めガイド65は、押圧プレート58の底部58aの下部(図3の紙面上部に相当)に設けられている。ただしこのような位置に設けられることに限定されない。この位置決めガイド65は、弁室41の下部の内壁面45に当接可能に構成され、当接することでシール機構51の弁内配管41aへの案内が可能なり、さらに弁内配管41a内におけるシール機構51の位置決めを行うことができる。このような位置決めガイド65を設けることで、吊耳64で吊下げるという不安定な状態であっても、弁内配管41a内にシール機構51を容易に取り付けることができると共に、正確な位置に取り付けることができ、取り付け作業を短時間でかつ確実に行うことができる。
【0048】
また弁室41内の下流側には、シール機構51に対し間隔をあけて保持プレート52が配置されている。保持プレート52は、ステンレス鋼から成り、大略的に円板状に形成される。保持プレート52は、弁室41の内壁面45に係合可能に構成されている。更に詳細に説明すると、保持プレート52の外周部には、弁室41の内壁面45に形成される着座部45aを避けるべく切欠き67が形成されている。この切欠き67は、位置決めの手段として用いることができる。また保持プレート52の外周部には、その切欠き67を除く周方向全周にわたって弾性部材、たとえば合成ゴムから成る係合部68が設けられている。
【0049】
保持プレート52は、弁室41内を下流側に押し込むことで、この係合部68が弁室41の内壁面45に嵌合されて保持される。このとき係合部68が内壁面45の形状に合わせて弾性変形するので、係合作業が容易であり、保持プレート52を短時間でかつ容易に取り付けることができる。またこのように弾性変形するので、内壁面45を損傷させることがない。
【0050】
この保持プレート52とシール機構51との間には、押圧ジャッキ53が介在している。ジャッキである押圧ジャッキ53は、ステンレス鋼から成り、基台71とメートル台形ねじ部72とを有する。基台71は、保持プレート52のシール機構51に対向する面に固定されている。メートル台形ねじ部72は、この基台71に着脱可能に螺着されている。螺着されたメートル台形ねじ部72は、回動することで、シール機構51に向って突出又は引込み可能に構成される。したがって押圧ジャッキ53は、メートル台形ねじ部72を回動させることで、シール機構51に向って伸縮可能に構成される。
【0051】
このように構成される押圧ジャッキ53は、メートル台形ねじ部72の頭部73がシール機構51のシール本体55の球面皿75に当接可能に構成されている。この球面皿75は、保持プレート52に対向する面、具体的にはシール本体55の軸線方向他端部に形成されている。頭部73を球面皿75に当接させることで、押圧ジャッキ53は、配管32を図3の矢符A方向(図2の矢符Aと同一方向)に流れる流体からシール機構51が受ける力に抗して支持することができる。
【0052】
頭部73及び球面皿75について更に詳細に説明すると、メートル台形ねじ部72の頭部73は、球面皿75に着座する面、即ち端面が凸状の部分球面形状に形成され、球面皿75は、凹状の部分球面形状に形成されている、すなわち球面座として形成されている。これによってシール機構51と押圧ジャッキ53とが各々の軸線がずれた状態で当接しても押圧ジャッキ53がシール機構51に片当たりすることを抑制でき、良好なシールを達成できる。それ故、押圧ジャッキ53をシール機構51に当接させる際、各々の相対位置の制限が少なくすることができ、その分取り付け作業が容易になる。
【0053】
さらに各々がずれた状態で当接されても、シール機構51から押圧ジャッキ53に対して作用する力は、押圧ジャッキ53の軸線に略平行な方向に作用する、つまり剛性の高い軸線方向に力を作用させることができる。これによって高圧流体が配管内に供給される耐圧リーク試験であっても、押圧ジャッキ53の損傷又は破損を抑制でき、押圧ジャッキ53を小形化することができる。
【0054】
以下では、このようにして構成される耐圧シール装置50の取り付け方について説明する。まず揺動ピン部材47を外して、揺動部材48及び弁体43を弁体挿入孔42から取り出す。次に予め締め付けねじ61,63を締め付けて、第1シール部材56及び第2シール部材59を圧縮させたシール機構51を吊耳64によって吊下げ、弁体挿入孔42から挿入し、位置決めガイド65が弁室41内の下部の内壁面45に当接するまで下ろす。ここで第1シール部材56及び第2シール部材59は、必ずしも予め圧縮しておく必要はなく、シール機構51を取り付けた後であってもよい。更に位置決めガイド65が当接した状態のままで、シール機構51を弁内配管41aに向って移動させる。これによってシール機構51が内壁面45によって案内され、シール機構51が位置決めされた状態で弁内配管41a内に取り付けられる。そして吊耳64をピン部材66で留めて、弁体挿入孔42内の後述の作業の邪魔にならない位置に配設しておく。
【0055】
その次に押圧ジャッキ53が固定された保持プレート52を弁体挿入孔42から挿入する。このとき押圧ジャッキ53は収縮されている。挿入した保持プレート52を弁室41の下流側の内壁面45に押し込んで係合させ、それによって保持させる。この状態で、メートル台形ねじ部72を回動し、シール機構51に向かって伸ばすことで、メートル台形ねじ部72の頭部73を球面皿75に当接(着座)させる。頭部73を球面皿75に当接させることで、耐圧シール装置50をバルブ33内に取り付けが完了し、これによってバルブ33の交換および耐圧リーク試験を行うことができる。また取り外す場合は、前述した取り付け手順の逆の手順で耐圧シール装置50を取り外し、弁体42を装着することができる。
【0056】
このようにシール機構51、保持プレート52及び押圧ジャッキ53の取り付け作業が簡単であるので、耐圧シール装置50をバルブ33内に短時間でかつ正確に取り付けることができる。特に、本実施の形態のような原子力発電プラント21におけるバルブ33の交換及び耐圧リーク試験などの作業が長時間にわたると、作業員の放射線被爆量が大きくなる。それ故、短時間でかつ漏れのない確実な作業が要求される。耐圧シール装置50は、上述のような簡単な作業で配管内の冷却水を止水することができると共に、保持プレート52、押圧ジャッキ53及び位置決めガイド65によって確実に止水することができるので、原子力発電プラント21において、より好適な止水装置である。この耐圧シール装置50を用いることで、止水時の作業員の作業工数を低減することができる。これによって短時間でかつ確実な止水が可能となり、作業員の放射線被爆量を大幅に低減することができ、耐圧リーク試験を安全に行うことができる。またこのように短時間で作業を終えることができるので、原子力発電プラント21の定期点検の期間を短縮することで稼動停止期間を短縮でき、原子力発電プラント21の稼働率を向上させることができる。
【0057】
図6は、本発明の第2の実施形態の耐圧シール装置50Aを示す正面断面図である。第2の実施形態の耐圧シール装置50Aは、第1の実施形態の耐圧シール装置50と構成が類似している。したがって耐圧シール装置50Aの構成については、第1の実施形態の耐圧シール装置50と異なる構成についてだけ説明し、同一の構成は同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
耐圧シール装置50Aは、基本的に、シール機構51と、保持プレート52Aと、押圧ジャッキ53とを有する。保持プレート52Aは、大略的に円板状に形成され、その外周部との間に当て板81を介在させて、弁室41の内壁面45の下流側底部に支持されている。当て板81は、鋼板であり、これを介在させることで保持プレート52Aの食い込みを防ぎ、前記食い込みに伴う内壁面45の損傷及び破損を防止できる。
【0059】
さらに保持プレート52Aは、その上端部が弁体挿入孔42まで延び、その上端部に支持板82が一体的に固定されている。支持板82は、弁体挿入孔42に嵌合可能に構成されている。したがって保持プレート52Aを弁体挿入孔42に挿入することで、支持板82が嵌合されると共に、保持プレート52Aの下部が内壁面45に支持されるので、保持プレート52Aが保持される。さらに保持プレート52Aには、保持プレート52と同様に押圧ジャッキ53が固定されている。
【0060】
このような構成の保持プレート52Aは、内壁面45に嵌め込んで後に、その上端部を支持板82によって押圧するだけで保持プレート52Aを保持させることができ、作業が容易である。したがって第1の実施形態の耐圧シール装置50と同様の作用効果が得られる。
【0061】
本実施の形態では、第1シール部材56及び第2シール部材59の2つのシール部材が設けられているけれども、3つ以上のシール部材が設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る耐圧シール装置は、短時間でかつ安全で確実に配管の流れを止めることができる優れた作用効果を奏し、例えば原子力発電プラントの配管に用いると有益で有る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】原子力発電プラント21のシステムを概略示す図面である。
【図2】配管32に介在するバルブ33を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の耐圧シール装置50を示す正面断面図である。
【図4】耐圧シール装置50を示す平面断面図である。
【図5】シール機構51を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の耐圧シール装置50Aを示す正面断面図である。
【図7】原子力発電プラント1のシステムを概略示す図面である。
【符号の説明】
【0064】
41 弁室
42 弁体挿入孔
43 弁体
45 内壁面
50,50A 耐圧シール装置
51 シール機構
52,52A 保持プレート
53 押圧ジャッキ
55 シール本体
56 第1シール部材
57 中間リング
58 押圧プレート
59 第2シール部材
64 吊耳
65 位置決めガイド
68 係合部
73 頭部
75 球面皿
81 当て板
82 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブが接続される配管内を流れる流体を止めるための耐圧シール装置であって、
前記バルブ内に着脱可能に構成され、前記バルブ内に装着することで前記配管内にシールを達成した状態で取り付けられるシール機構と、
前記シール機構が前記配管内を流れる流体から受ける力に抗して前記シール機構を支持するジャッキと、
前記バルブ内で前記ジャッキを保持する保持プレートとを備えることを特徴とする耐圧シール装置。
【請求項2】
前記シール機構は、複数のシール部材とシール本体とを有し、
前記複数のシール部材は、環状にそれぞれ形成され、かつ圧縮された状態で前記シール本体の外周面に互いに間隔をあけてそれぞれ取り付けられ、
前記シール本体は、前記複数のシール部材によって配管の内壁とシール本体の外周面との間が密封された状態で、前記配管内に配設可能な構成であることを特徴とする請求項1に記載の耐圧シール装置。
【請求項3】
前記シール機構は、前記複数のシール部材のうち対応するシール部材を押圧して圧縮する複数の押圧機構を更に有することを特徴とする請求項2に記載の耐圧シール装置。
【請求項4】
前記シール機構は、前記複数のシール部材を押圧して圧縮する押圧機構を更に有することを特徴とする請求項2に記載の耐圧シール装置。
【請求項5】
前記ジャッキは、前記シール機構に向って伸縮可能に構成され、かつ伸縮する方向一端部が保持プレートに保持されると共に伸縮する方向他端部が部分球面状に形成され、
前記シール機構は、前記ジャッキの伸縮する方向他端部が着座する座部を有し、
前記座部は、球面座であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の耐圧シール装置。
【請求項6】
前記保持プレートは、バルブの内壁面に係合可能な係合部を有し、前記係合部をバルブの内壁面に係合させることでバルブ内に配設可能な構成であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の耐圧シール装置。
【請求項7】
前記係合部は、弾性部材から成ることを特徴とする請求項6に記載の耐圧シール装置。
【請求項8】
前記係合部は、前記バルブの内壁との間に当て板を介在させて係合していることを特徴とする請求項6に記載の耐圧シール装置。
【請求項9】
前記バルブは、配管に接続している流路を開閉する弁体と、前記弁体を収納する弁室と、前記弁室に前記弁体を挿入して配設すべく前記弁室の上部に連なる弁体挿入孔とを有し、
前記保持プレートは、前記弁室と前記弁体挿入孔とにわたって配置され、
前記保持部プレートには、前記弁体挿入孔に嵌合可能な支持板が一体的に設けられ、
前記保持プレートは、前記支持板が前記弁体挿入孔に嵌合した状態で前記弁室の底部に支持されることで、前記弁室内に保持されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の耐圧シール装置。
【請求項10】
前記シール機構を吊下げ可能な吊下げ手段を更に備え、
前記吊下げ手段は、前記バルブ内に着脱可能であって、吊下げた状態でシール機構を配管内に取付可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の耐圧シール装置。
【請求項11】
バルブ内における前記シール機構の位置決めを行うための位置決めガイドを更に有し、
前記位置決めガイドは、前記シール機構に着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の耐圧シール装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つに記載の耐圧シール装置は、プラントの配管に接続される複数のバルブのうち一のバルブを交換した後に行われる耐圧リーク試験において、前記一のバルブより上流側及び下流側で配管にそれぞれ接続されるバルブのうち少なくとも一方のバルブ内に配設されて、配管を流れる流体を止めるために用いられることを特徴とする耐圧シール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−36524(P2009−36524A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198534(P2007−198534)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【Fターム(参考)】