説明

耐引っかき性コーティングを有するシクロオレフィンコポリマーボトル

本発明は、無機−有機ハイブリッドポリマーのコーティング(ORMOCERコーティング)を含む、又はそれより成る、プラスチックのコーティングを有する、シクロオレフィンコポリマーより作製されたボトルに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐引っかき性コーティングを有するシクロオレフィンコポリマーボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製容器は、重量が軽く、高度の耐破損性を有するという、ガラス容器に勝る利点を有する。また一方、プラスチック容器の欠点は、引っかきによるその高い影響の受けやすさである。
【0003】
プラスチックボトルは、製薬調製物に頻繁に使用される。調製物の産生のために、プラスチックボトルは製薬調製物と共に滅菌されることが多い。市販のプラスチックボトルは、ポリエチレンプロピレン(PEP)又はポリプロピレン(PP)を含有し、オートクレーブ処理できないが、放射線滅菌またはエチレンオキシドによる滅菌を行う必要がある。これらのプラスチックボトルは、乳白色であるという理由により、ボトルの内容の目視検査が不可能であるというさらなる欠点を有する。シクロオレフィンコポリマー(COC)製のボトルは透明であるが、引っかきに非常に影響されやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の問題は、その外面が引っかきに影響されない透明なプラスチックボトルを提供することである。プラスチックボトルは、液体製薬調製物または製薬粉末の通例の充填装置での使用に適するべきである。加えてプラスチックボトルは、オートクレーブ処理可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎を成す問題は今や、無機−有機ハイブリッドポリマーのコーティング(ORMOCERコーティング)を有する、シクロオレフィンコポリマーを含む、又はシクロオレフィンコポリマーより成る、プラスチックより作製されたボトルによって解決される。
【0006】
驚くべきことに、ORMOCERコーティングを有するシクロオレフィンコポリマーより作製されたプラスチックボトルは、オートクレーブ処理が可能であり、引っかきの影響を受けにくい。加えてORMOCERコーティングはCOC表面に良好に粘着する。
【0007】
本発明によるボトルでは、シクロオレフィンコポリマーは、エチレン及びシクロオレフィンのコポリマーであり得る。
【0008】
本発明によるボトルでは、エチレンは非置換であるか、又は置換され得る。
【0009】
さらに本発明によるボトルでは、シクロオレフィンはジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエン誘導体であり得る。
【0010】
本発明によるボトルでは、ジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエン誘導体は非置換であるか、又は置換され得る。
【0011】
さらに本発明によるボトルでは、プラスチックは、シクロオレフィンポリマーと、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、及びポリビニリデンクロライドによって形成される群からのポリマーとの混合物を含み得る、又は該混合物より成り得る。
【0012】
さらに本発明によるボトルは、
(i)次の意味:R=架橋性有機ラジカル、X=加水分解性および縮合性基、m=1又は2又は3(1が好ましい)を有する、式RmSiX4-mのシランから調製できる、加水分解性縮合物、
(ii)シランのラジカルRと架橋可能であるプレポリマー、
(iii)1個以上の(特に1又は2個の)任意の(複数の)非架橋性有機官能性シラン、
(iv)任意の低揮発性オキシド
を含む、又はそれらより成る、ハイブリッドポリマーコーティングが塗布され得る。
【0013】
本発明のボトルでは、シラン式のRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル及びアルキニルアリールによって形成される群からのラジカルであり、それらのラジカルがO原子及び/又はS原子及び/又はN原子によって、及び/又はNH基によって1回以上割り込まれること、あるいは末端OH、SH又はNH2基を有することが可能である。
【0014】
本発明によるボトルでは、シラン式中のラジカルRは、相互から独立して、非置換ラジカルあるいはハロゲン原子、非置換アミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、イソシアノ、シアナート、イソシアナート、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリル、アクリルオキシ、メタクリル、メタクリルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、エポキシ及びビニル基ならびに置換形のそのような基によって形成された群からの1個以上の置換基によって置換されたラジカルであり得る。
【0015】
本発明によるボトルでは、シラン式中のラジカルXは相互から独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル−カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、水素あるいは置換または非置換アミノ基であり得る。
【0016】
本発明によるボトルでは、反応性基として基Rを持つプレポリマーが供給可能であり、Rは上で詳説したような意味を有する。
【0017】
それゆえ本発明によるボトルでは、反応性基として基Rを持つプレポリマーが供給可能であり、プレポリマー中及びシラン中のRは同じ意味を有する。
【0018】
さらに本発明によるボトルでは、シラン及びプレポリマーは次のような組合せであり得る:
(i)プレポリマーとしてのエポキシ樹脂との、エポキシ基を有するシラン及び/又は
(ii)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、ビニルラジカルを有するシラン及び/又は
(iii)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、重合性二重結合を有するシラン及び/又は
(iv)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、メルカプト基含有シラン及び/又は
(v)プレポリマーとしてのポリオールとの、イソシアナート基含有シラン及び/又は
(vi)プレポリマーとしてのイソシアナートとの、ヒドロキシル基含有シラン及び/又は
(vii)プレポリマーとしてのエポキシ樹脂との、アミノ基含有シラン。
【0019】
それゆえ本発明によるボトルは、アクリル基含有シランとプレポリマーアクリレートとの加水分解性縮合物が供給され得る。
【0020】
さらに本発明によるボトルでは、次の意味を有する式R’mSiX4-mの任意の非架橋性有機官能性シランが供給され得る:
R’=非架橋性有機ラジカル
X=加水分解性および縮合性基
m=1又は2又は3。
【0021】
本発明のボトルでは、シラン式のR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールによって形成される群からのラジカルであり、それらのラジカルがO原子及び/又はS原子及び/又はN原子によって、及び/又はNH基によって1回以上割り込まれること、あるいは末端OH、SH又はNH2基を有することが可能である。
【0022】
さらに本発明によるボトルでは、シラン式のラジカルR’は相互から独立して、非置換ラジカルあるいはハロゲン原子、非置換アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、シアノ、アルコキシ及びアルコキシカルボニル基ならびに置換形のそのような基によって形成された群からの1個以上の置換基によって置換されたラジカルであり得る。
【0023】
さらに本発明によるボトルでは、シラン式R’mSiX4-m中のラジカルXは相互から独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、水素あるいは置換または非置換アミノ基であり得る。
【0024】
さらに本発明によるボトルでは、アルミニウムを除く、主族Ia、IIa、IIIa、IVa及び/又はVaの、及び/又は亜族IIb、IIIb、Vb、VIb、VIIb及び/又はVIIIbの元素の化合物の低揮発性オキシドが提供される。
【0025】
それゆえ本発明によるボトルでは、B23、P25及び/又はSnO2が供給され得る。
【0026】
さらに本発明によるボトルは、コーティング材料としてABRASIL GA2−30、ABRASIL GA2−35又はABRASIL VM−26−IPA2が供給され得る。
【0027】
さらに本発明によるボトルは、円筒状またはプリズム状または正方形形状を有し得る。
【0028】
さらに本発明によるボトルは、注射ボトル、スクリュークロージャボトル又はアンプルであり得る。
【0029】
さらに本発明によるボトルは、体積1〜1000mlを有する注射ボトル又はスクリュークロージャボトルであり得る。
【0030】
さらに本発明によるボトルは、体積2〜100mlを有する注射ボトルであり得る。
【0031】
さらに本発明によるボトルは、体積1〜20mlを有するアンプルであり得る。
【0032】
さらに本発明によるボトルは、1〜100μmの、特に2〜30μmの、好ましくは8〜20μmの厚さを有するコーティングが供給され得る。
【0033】
最後に本発明によるボトルは、製薬調製物を充填され、クロージャによって閉じられて供給され得る。
【0034】
本発明は下でさらに詳細に説明される。
【0035】
アルキル基という用語は、特別には1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、より特別には1〜6個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素基、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、2,2−ジメチルブチル又はn−オクチル基を指す。
【0036】
アルケニル及びアルキニルという用語は、特別には2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子、より特別には2〜6個の炭素原子を有する少なくとも部分的に飽和された直鎖または分岐炭化水素基、たとえばエテニル、アリル、アセチレニル、プロパルギル、イソプレニル又はヘキサ−2−エニル基を指す。好ましくはアルケニル基は、1又は2個(好ましくは1個)の二重結合を有し、アルキニル基は1又は2個(好ましくは1個)の三重結合を有する。
【0037】
シクロアルキルという用語は、1個以上の環(好ましくは1又は2個)を有し、特別には3〜14個の環炭素原子、好ましくは3〜10個の環炭素原子を含有する環式基を指す。例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基である。
【0038】
アリール又はArという用語は、特別に6〜14個の環炭素原子、好ましくは6〜10個(特別には6個)の環炭素原子を有する1個以上の環を有する芳香族基を指す。例はフェニル、ナフチル又はビフェニル基である。
【0039】
アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル及びアルキニルアリールという用語は、上の定義に従ってアリール及びアルキル、アルケニル又はアルキニル基の両方を含有する基を指す。具体例はトルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、ベンジル及びクメンである。そのような基は好ましくは、6〜10個の環炭素原子を有する芳香族環ならびに1又は2〜6個の炭素原子を有する1又は2個のアルキル、アルケニル及び/又はアルキニル基を含有する。
【0040】
非架橋性有機官能性シランの例は:ビス−(ジメチルアミノ)−メチルフェニルシラン、ビス−(モノ−n−ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルメチルジクロロシラン、ジ−n−ブチルジクロロシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、8−ブロモオクチルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン、1−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、エチルジクロロシランである。フェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びプロピルトリメトキシシランが特に優先される。
【0041】
架橋性有機官能性シランの例は、ビニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3−イソシアナートポリルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロペニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが特に優先される。
【0042】
金属化合物の例は:TiCl4、ZrCl4、Ti(OC254、Ti(OC374、Ti(O−イソ−C374、Ti(OC494、Zr(O−イソ−C37)、 Zr(OC494、Ti(アセチルアセトナート)2(O−イソ−C372、Zr(アセチルアセトナート)4、Ti(2−エチルヘキシルオキシ)4ならびに好ましくは酸素及び/又は窒素によって配位される他のチタン又はジルコニウム錯体;Al(OCH33、Al(OC253、Al(O−n−C373、Al(O−iso−C373、Al(OC493、Al(O−イソ−C493、Al(O−sec−C493、AlCl3、AlCl(OH)2、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム及びシュウ酸アルミニウムはもちろんのこと、対応する(部分)キレート化合物、たとえばアセチルアセトナートである。室温にて液体である化合物、たとえばAl(O−sec−C493及びAl(O−イソ−C373が好ましい。
【0043】
シクロオレフィンコポリマー(COC)はプラスチックボトル用材料として使用され得る。シクロオレフィンコポリマーは、エチレンと環式オレフィンとのコポリマーである。適切なモノマーは非置換または置換エチレンである。環式オレフィンモノマーは特にジシクロペンタジエンに由来し、同様に非置換または置換形であり得る。シクロオレフィンコポリマーは、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド又はポリビニリデンクロライドと混合して使用され得る。置換エチレン及び置換ノルボルネンの高純度シクロオレフィンコポリマーを使用することが好ましい。それらはTiconaから商標名Topas(登録商標)で入手できる。それらは高い耐破損性、高い透明性ならびに高い耐熱、耐放射線および耐化学薬品性によって識別される。それらはイオン及び重金属を含まない。それらはオートクレーブ処理、エチレンオキシド及びガンマ線または電子放射によって滅菌され得る。加えてそれらは水蒸気および酸素に対して顕著なバリア特性を有する。たとえばTopas8007、6013及び6015は、水蒸気および酸素に対してポリプロピレンよりも低い透過性を示す。
【0044】
ORMOCER(有機修飾セラミックス)は、無機−有機ハイブリッドポリマーであるとして理解される。それらは金属、ガラス、石などのコーティング材料として既知であるシリコーンポリマーである。無機−有機ハイブリッドポリマーの調製はたとえばDE 43 03 570 Cに記載されている。
【0045】
ハイブリッドポリマーの合成では、官能化シランRmSiX4-mが使用され、式中、Xは加水分解性および縮合性基であり、Rは架橋性有機ラジカルである。基Xは相互から独立して、アルコキシ基、アリルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン、水素あるいは置換または非置換アミノ基であり得る。架橋性ラジカルRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリールであり、それらのラジカルがO、S又はN原子によって、あるいはNH基によって割り込まれること、あるいは末端OH、SH又はNH2基を有することと、ハロゲン及び置換または非置換アミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、イソシアノ、シアナート、イソシアナート、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、硫酸、リン酸、アクリル、アシルオキシ、メタクリル、メタクリルオキシ、エポキシ、グリシジル、グリシジルオキシ又はビニル基の基から1個以上の置換基を持つことが可能である。数字mは、値1、2又は3を有し得る。化合物RmSiX4-mは、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンのハロゲン、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ又は水素化合物などの金属化合物と化合される。金属化合物は、キレート化合物形でオリゴマー性であり得る。金属化合物は、有機または無機酸との錯化または非錯化アルミニウム塩でもあり得る。RmSiX4-mの金属化合物との加水分解性縮合物に加えて、コーティング物質はプレポリマーを含む。プレポリマーは架橋性基Rと反応して、それゆえ架橋を推進する。好ましくは、プレポリマーは化合物RmSiX4-mのラジカルRと同じである反応性基を有し得る。たとえばアクリル基含有シランの場合、プレポリマーとしてアクリレートが使用される。コーティング材料は加えて、たとえばアルキル又はアリール基を有する非架橋性有機官能性シラン、及び/又は低揮発性オキシドを含有し得る。
【0046】
無機−有機ハイブリッドポリマーの調製および使用は、開裂加水分解生成物、たとえばアルコールを含有し、ラッカーと呼ばれるコロイド状溶液を形成するために、開始化合物の加水分解によって実施される。該当する場合、ラッカー溶媒を添加することも可能である。そのようなラッカーはコーティングされる材料に塗布され得る。Si−O−Si網目がいったん形成されると、有機分子基の架橋が起こる。それは重合または重付加反応によって実施され得る。
【0047】
コーティング材料として、ORMOCERラッカーABRASIL GA2−30又はGA2−35及びOrmocerラッカーABRASIL VM−26−IPA2が使用され得る。ORMOCERラッカーABRASIL GA2−30は、高度の耐引っかき性、耐湿度および化学薬品性、高光沢表面ならびに高い耐熱性を有する熱硬化性ハイブリッドラッカーである。ABRASIL GA2−30の変形であるABRASIL GA2−35は同様に熱硬化性ハイブリッドラッカーである。ABRASIL GA2−35は、加水分解有機修飾ケイ酸エステル、加水分解アルミニウムアルコキシド及び錯体形成剤を有する調製物である。エポキシ樹脂と、溶媒としての2−ブタノール及びメトキシプロパノールも存在する。ORMOCERラッカーABRASIL VM−26−IPA2は、高度の耐引っかき性を有するUV硬化ハイブリッドラッカーである。好ましくは、ORMOCERラッカーABRASIL GA2−30及びABRASIL GA2−35が使用される。
【0048】
本発明によるプラスチックボトルは、注射ボトル(バイアル)、スクリュークロージャボトル又はアンプルであり得る。
【0049】
プラスチックボトルは、円筒形状を有し得るか、又は長方形基部を有し得る。注射ボトル又はスクリュークロージャボトルは、1〜1000mlの体積を含有し得る。注射ボトルの体積は好ましくは、2〜100mlである。アンプルは1〜20mlの体積を含有し得る。
【0050】
プラスチック注射ボトルは、ゴムストッパによって閉じられ得る。ゴムストッパに適切な材料は、クロロブチル又はブロモブチルゴムストッパである。ストッパは、軽量金属、たとえばアルミニウムの圧着キャップを装備され得る。
【0051】
スクリュークロージャボトルは、たとえばアルミニウムのスクリュークロージャによって閉じられ得る。
【0052】
コーティングされたプラスチックボトルは、次のプロセスによって産生され得る:
−真空蒸着、浸漬、フラッドコーティング、ポーリング、噴射、噴霧またはブラシ塗布による、好ましくは噴霧による、COCボトルへのORMOCERラッカーのコーティング
−UV又はIR照射あるいは60〜150℃、特に130℃での熱処理によるラッカーの完全硬化。
【0053】
ORMOCERラッカーの層厚は、1〜100μm、特に2〜30μmであり得る。8〜20μmの層厚が好ましい。
【0054】
コーティングされたCOCボトルは、製薬調製物で充填され得る。
【0055】
コーティングされたCOCボトルは、オートクレーブ処理され得るか、放射線滅菌され得るか、又はエチレンオキシドによって滅菌され得る。
【0056】
滅菌されたCOCボトルは、充填機に供給され得る;ボトルは、それらが倒れるのを防止するために保持リングによって相互にしっかりと押し付けられる。ボトルはターンテーブルを用いてコンベヤ上に置かれて、ボトルはなお保持リングによって相互にしっかりと押し付けられている。ターンテーブル及び保持リングの作用は、ボトルを相互に摩擦させるが、摩擦は未コーティングプラスチックの場合にはその外面が引っかきされるようになる。ボトルはコンベヤベルトによって充填針まで運搬され、そこで問題の液体を充填される。次にボトルはゴムストッパ及び圧着キャップによって閉じられる。
【0057】
本発明によって充填されたプラスチックボトルは、オートクレーブ処理され得る。オートクレーブ処理は、少なくとも121℃の温度にて、少なくとも2バールの圧力にて、少なくとも15分間実施され得る。あるいはオートクレーブ内での110℃及びより長期間のオートクレーブ処理が可能である。
【0058】
本発明は、次の実施例によってより詳細に説明されるが、本発明の範囲はそれによって制限されない。
【実施例1】
【0059】
基材:Topas製のバイアル
ラッカー:Abrasil GA2−30
予備処理:ラッカー塗布前のマンドレルでの火炎処理、アセトンによる拭取り、そして圧縮空気による吹飛ばし
塗布:噴霧
完全硬化:130℃/1時間
【0060】
COCボトルは、ラッカー塗布前に火炎処理によって予備処理される。ラッカーAbrasil GA2−30は、噴霧処理で塗布される。ラッカー層の完全硬化はオーブンで130℃/1時間にて実施する。フィルムはボトル表面に良好に粘着する。これはクロスカット試験(DIN ISO 2409)を用いた層粘着試験によって示される。
【0061】
コーティングされたボトルはボトル洗浄機で洗浄して、滅菌トンネル内で乾燥させる。ボトルには充填/キャッピング装置(たとえばBosch/StrunkによるVSR F01)でオキサリプラチン溶液を充填して、次に少なくとも121℃/2バール/15分でオートクレーブ処理する。充填装置を通過した後に、ボトルには引っかきがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機−有機ハイブリッドポリマーのコーティング(ORMOCERコーティング)を有する、シクロオレフィンコポリマーを含む、又はシクロオレフィンコポリマーより成る、プラスチックより作製されたボトル。
【請求項2】
シクロオレフィンコポリマーがエチレン及びシクロオレフィンのコポリマーである、請求項1記載のボトル。
【請求項3】
エチレンが非置換であるか又は置換される、請求項2記載のボトル。
【請求項4】
シクロオレフィンがジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエン誘導体である、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項5】
ジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエン誘導体が非置換であるか又は置換される、請求項4記載のボトル。
【請求項6】
プラスチックが、シクロオレフィンポリマーと、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、及びポリビニリデンクロライドによって形成される群からのポリマーとの混合物を含む、又は該混合物より成る、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項7】
(i)次の意味を有する、式RmSiX4-mのシラン:
R=架橋性有機ラジカル
X=加水分解性および縮合性基
m=1又は2又は3(1が好ましい)
と、金属化合物とから調製される、加水分解性縮合物と、
(ii)シランのラジカルRと架橋可能であるプレポリマーと、
(iii)1つ以上の任意の非架橋性有機官能性シランと、
(iv)任意の低揮発性オキシドと、
を含む、又はそれらより成る、ハイブリッドポリマーコーティングを有する、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項8】
シラン式のRが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル及びアルキニルアリールによって形成される群からのラジカルであり、それらのラジカルがO原子及び/又はS原子及び/又はN原子によって、及び/又はNH基によって1回以上割り込まれること、あるいは末端OH、SH又はNH2基を有することが可能である、請求項7記載のボトル。
【請求項9】
シラン式中のラジカルRが、相互から独立して、非置換ラジカルあるいはハロゲン原子、非置換アミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、イソシアノ、シアナート、イソシアナート、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリル、アクリルオキシ、メタクリル、メタクリルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、エポキシ及びビニル基ならびに置換形のそのような基によって形成された群からの1個以上の置換基によって置換されたラジカルである、請求項8記載のボトル。
【請求項10】
シラン式中のラジカルXが相互から独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、水素あるいは置換または非置換アミノ基である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項11】
反応性基として基Rを持つプレポリマーを含み、Rが請求項7〜9のいずれか1項に記載の意味を有する、請求項7〜10に記載のボトル。
【請求項12】
反応性基として基Rを持つプレポリマーを含み、プレポリマー及びシランにおけるRが同じ意味を有する、請求項11記載のボトル。
【請求項13】
シラン及びプレポリマーが次の組合せ:
(i)プレポリマーとしてのエポキシ樹脂との、エポキシ基を有するシラン及び/又は
(ii)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、ビニルラジカルを有するシラン及び/又は
(iii)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、重合性二重結合を有するシラン及び/又は
(iv)架橋性二重結合を有するプレポリマーとの、メルカプト基含有シラン及び/又は
(v)プレポリマーとしてのポリオールとの、イソシアナート基含有シラン及び/又は
(vi)プレポリマーとしてのイソシアナートとの、ヒドロキシル基含有シラン及び/又は
(vii)プレポリマーとしてのエポキシ樹脂との、アミノ基含有シラン
である、請求項7〜12のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項14】
アクリル基含有シランとプレポリマーアクリレートとの加水分解性縮合物を含む、請求項7〜13のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項15】
次の意味:
R’=非架橋性有機ラジカル
X=加水分解性および縮合性基
m=1又は2又は3を有する、
式R’mSiX4-mの任意の非架橋性有機官能性シランを含む、請求項7〜14のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項16】
シラン式のR’が、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールによって形成される群からのラジカルであり、それらのラジカルがO原子及び/又はS原子及び/又はN原子によって、及び/又はNH基によって1回以上割り込まれること、あるいは末端OH、SH又はNH2基を有することが可能である、請求項15記載のボトル。
【請求項17】
シラン式のラジカルR’が相互から独立して、非置換ラジカルあるいはハロゲン原子、非置換アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、シアノ、アルコキシ及びアルコキシカルボニル基ならびに置換形のそのような基によって形成された群からの1個以上の置換基によって置換されたラジカルである、請求項15又は16に記載のボトル。
【請求項18】
シラン式中のラジカルXが相互から独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、水素あるいは置換または非置換アミノ基である、請求項15〜17のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項19】
アルミニウムを除く、主族Ia、IIa、IIIa、IVa及び/又はVaの、及び/又は亜族IIb、IIIb、Vb、VIb、VIIb及び/又はVIIIbの元素の化合物の低揮発性オキシドを含む、請求項7〜18のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項20】
23、P25及び/又はSnO2を含む、請求項19記載のボトル。
【請求項21】
ABRASIL GA2−30、ABRASIL GA2−35又はABRASIL VM−26−IPA2をコーティング材料として含む、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項22】
円筒状またはプリズム状または正方形形状を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項23】
ボトルが注射ボトル、スクリュークロージャボトル又はアンプルである、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項24】
体積1〜1000mlを有する注射ボトル又はスクリュークロージャボトルの形の、請求項22又は23に記載のボトル。
【請求項25】
体積2〜100mlを有する注射ボトルの形の、請求項24記載のボトル。
【請求項26】
体積1〜20mlを有するアンプルの形の、請求項22又は23に記載のボトル。
【請求項27】
1〜100μmの、特に2〜30μmの、好ましくは8〜20μmの厚さを有するコーティングを有する、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。
【請求項28】
製薬調製物を充填され、クロージャで閉じられる、先行請求項のいずれか1項に記載のボトル。

【公表番号】特表2009−503164(P2009−503164A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523234(P2008−523234)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007374
【国際公開番号】WO2007/012474
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500085389)ヘキサル アーゲー (7)
【Fターム(参考)】